説明

カラーホイール

本発明は、カラーシーケンシャル式のプロジェクタのためのカラーホイールに関する。本発明によるカラーホイールは、−20℃から+80℃の温度変化を無傷で耐えることができる。そのために、何らかの熱膨張係数を有するフィルタセグメントが、これと熱膨張係数のはるかに異なる支持体へ直接貼りつけられるのではなく、フィルタセグメントに近い熱膨張係数を有するディスクに貼りつけられる。したがってディスクとの結合は、固定的かつ相応に強力であってよい。それから初めてディスクが支持体と結合される。その際には、遠心力が及ぼされることがないので、固定的で強力な結合は必要ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーシーケンシャル式の照明を生起するためにプロジェクタで使用するためのカラーホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
上に述べた種類のカラーホイールは、急速に交代する周期的な色変化が必要とされる用途で用いられている。このようなコンポーネントが使用される光学系の例として、画像生成のための機器やディスプレイ部品などがある。テレビ機器のためのバックプロジェクタやフロントプロジェクタが典型的な用途である。
【0003】
すばやい色変化を生成するために、光学的な照明経路へカラーフィルタが迅速に次々と挿入される。この目的のために、円形の円周を共同で形成するフィルタセグメントが配置された、支持体を備えるコンポーネントが使用される。このコンポーネントはカラーロータを構成しており、セグメントの各部分が支持体から突出している。支持体から突出するセグメントの部分は、光学経路へ挿入するために設けられたカラーリングを形成する。利用時には、カラーロータはその中心軸を中心として回転する。カラーロータの高速回転により、それぞれのフィルタセグメントが交互に光学経路へ出入りし、それによって所望の迅速な色変化が生成される。ロータを回転させるために、ロータはモータの駆動軸に配置されている。カラーロータはモータとともにカラーホイールを構成する。
【0004】
画像生成のための機器は高い品質の画像を生成することができなくてはならないので、色変化はきわめて高速に行われなくてはならない。このことは、フィルタセグメントが非常に高い速度で光路の光学経路を通過しなくてはならないことを意味している。そのため、カラーロータの高速回転は必須である。その結果、重力加速度gを数百倍も上回る加速度が発生する。これに応じて高い力がロータに作用し、特にフィルタセグメントに作用する。非常に優れた画像品質の場合、発生する加速度は1000gを優に超える。これに加えて、カラーホイールの長い耐用寿命を保証するために、カラーロータの非常に優れたバランス調整が必要とされる。画像生成のための機器は、光度に関わる非常に高い要求事項も満たさなくてはならない。このことは、高出力の光源によってのみ実現することができる。そのような高出力の光源に基づき、機器は最高100℃という相応に高い温度にさらされる。
【0005】
その一方で、カラーホイールはしばしば少なくとも一時的に−20℃またはこれ以下の温度にも耐えなくてはならない。プロジェクタ(およびこれに伴なうカラーホイール)は、輸送時にこのように低い温度にさらされる可能性がある。こうした低い温度は、製品が販売前に保管されているときに生じる可能性もある。
【0006】
こうした理由により、支持体へのフィルタセグメントの取付の強度、ならびにフィルタセグメントの色安定性は、非常に高度な要求を満たさなくてはならない。いわゆる低価格ディスプレイの用途で幅広く適用することは、カラーホイールを非常に低い価格と高い品質で製造することが可能にならない限り、現実のものとはならないであろう。
【0007】
画像生成機器で適用するために円周に関して円形に配置されたフィルタセグメントを備えるカラーロータが、欧州特許出願公開第0615142A2号明細書に記載されている。このコンポーネントでは、フィルタセグメントがガラスリングに組み付けられている。同文献に記載されている部材が光学経路へ挿入されると、光は、接着剤が存在している領域を通って伝搬せざるをえない。大半の接着剤は、そこで典型的に発生する光の強さに耐
えることができない。しかもガラスリングは追加の光損失につながり、そのために機器全体の経済性が低下してしまう。
【0008】
米国特許第5,868,482号明細書では、回転方向で見て各フィルタセグメントの間の領域が光学的に透明でない材料によって遮られないように、平坦なフィルタセグメントが支持体に配置されている。フィルタセグメントは表面接着部の形態で、回転軸の方向を向いている帯状の区域で支持体に取り付けられている。表面接着部は、回転中心に向かう方向で細い環状領域に存在しているにすぎないので、フィルタセグメントの表面の主要な構成部分は、回転軸から外方に向かって見たとき、利用可能な透明な環状区域として障害物のない状態に保たれている。この場合、取付けをするための追加の部材を全面的に回避することができる。
【0009】
米国特許第6,705,733号明細書もこれと同様のコンセプトを踏まえているが、フィルタセグメントの上の追加のディスクを記載している。このディスクの外套面は、カラーホイールのバランス調整を保つのに利用できる溝を含んでいる。温度差については一切検討されておらず、温度変化にかかわる問題は解決されていない。材料特性についても検討されていない。
【0010】
米国特許第5,868,482号明細書に基づく支持体にフィルタセグメントを接着しようとする場合、接着剤の選択が特別な関心事となる。この選択は、カラーホイールの動作回転数に依存して行われるべきだからである。
【0011】
4000Umin(Umin=1分あたりの回転数)から10,000Umin以下の動作回転数の場合、低い回転数という表現が使われる。典型的には、この範囲内では7,200Uminの回転数がカラーホイールについて設定される。それに対して10,000Uminから25,000Uminの範囲では、高い回転数という表現が使われる。典型的に具体化される動作回転数は14,400Uminである。
【0012】
軟質の接着剤を用いると、高い動作回転数のときにフィルタセグメントが剥がれやすい傾向が生じる。硬質の接着剤のほうが耐性が高い。しかしながら応力分析においては、特に低い温度での保管のシミュレーションでは、硬質の接着剤はカラーホイールの不具合につながりやすいことが示されている。これはガラスの破損の結果である。
【0013】
したがって、一方では高い動作回転数に適しており、他方では−20℃から+80℃の間の温度変化にも実質的に悪影響なく耐えることができる、典型的な材料をベースとするカラーホイールを求める要請が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで本発明の課題は、このようなカラーホイールを求める要請に応えるとともに、このようなカラーホイールを製造する方法を求める要請に応えることである。
【0015】
ガラスの破損がなぜ生じるのかについての1つの仮説は、セグメント基板の材料(たとえばガラス)と、支持体の材料(たとえばアルミニウム)との異なる熱膨張係数(CTE=coefficient of thermal expansion)に関わるものである。
【0016】
本発明に課された課題は、米国特許第5,868,482号明細書に記載のカラーホイールを改良して、回転可能に支承された支持体に、セグメントが直接接着されないようにすることによって解決することができる。本発明によれば、セグメントと回転可能に支承
された支持体との間に追加のディスクが挿入され、この追加のディスクは、セグメントのCTEに近い、好ましくはこれに等しいCTEを有している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明によるカラーホイールはモータとロータとを備えるカラーホイールであり、ロータは第1の熱膨張係数CTE1を有する材料からなる支持体を含んでおり、ロータは第1のものとは異なる第2の膨張係数CTE2を有する透明なセグメントを含んでおり、セグメントはセグメントを固定的に結合するディスクによって支持体に取り付けられており、セグメントの部分がディスクおよび支持体から突出し、セグメントの突出部分が共同で環状の透明な領域を形成するようになっており、ディスク材料の熱膨張係数CTE3はCTE2に実質的に等しいか、または次式が成り立っている:
【0018】
【数1】

【0019】
ディスク材料は、1つの実施形態では、セグメント材料と実質的に同じであってよい。
ディスク材料としては、たとえば金属が考慮の対象となる。特にこれは鋼材であり、ステンレス鋼を使用するのが特別に好ましい。
【0020】
支持体は実質的にアルミニウム支持体であってよく、セグメント材料は実質的にガラスおよび/またはプラスチックであってよい。
【0021】
セグメントをディスクへ取り付けるために、たとえば第1の接着剤を使用することができ、ディスクを支持体へ取り付けるために、たとえば第2の接着剤を使用することができ、第1の接着剤によって成立する結合は、第2の接着剤によって成立する結合よりも明らかに強力であるのが好ましい。
【0022】
本発明による別のカラーホイールはモータとロータとを備えるカラーホイールであり、ロータは第1の熱膨張係数CTE1を有する材料からなる支持体を含んでおり、ロータは第1のものとは異なる第2の膨張係数CTE2を有する透明なセグメントを含んでおり、セグメントは支持体コーティングによって支持体に取り付けられており、セグメントの部分が支持体から突出し、セグメントの突出部分が共同で環状の透明な領域を形成するようになっており、支持体コーティングの熱膨張係数については次式が成り立つ:
CTE4=CTE2または
【0023】
【数2】

【0024】
コーティング材料は、たとえば実質的にチタンであってよい。
支持体材料としては、たとえば実質的にアルミニウムが考慮の対象となり、セグメント材料としては、たとえば実質的にガラスおよび/またはプラスチックが考慮の対象となる。
【0025】
本発明によるカラーホイールを製造するために、たとえば次のようなステップに従って
手順が進められる:
−第1の熱膨張係数CTE1を有する支持体材料を選択し、
−CTE1とは異なる第2の熱膨張係数CTE2を有する特にガラスまたはプラスチックからなる複数のセグメントを準備し、
−熱膨張係数CTE3を有するディスクを準備し、このとき次式:CTE3=CTE2または
【0026】
【数3】

【0027】
が成り立ち、
−好ましくは接着剤によってセグメントをディスクに取り付け、セグメントの部分がディスクから突出し、セグメントの突出部分が環状領域を形成するようにし、
−選択された支持体材料からなる回転可能に支承された支持体を備えるモータを準備し、支持体の円周はセグメントの突出部分によって形成される環状領域よりも小さくなっており、
−セグメントと向かい合うディスクの側に支持体を実質的にセンタリングして取り付ける。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】本発明の第1の実施形態の分解図を示している。
【図1B】図1Aの実施形態を組立形態で示している。
【図2A】本発明の第3の実施形態を分解図として示している。
【図2B】図2Aの実施形態を組立状態で示している。
【図3】本発明の第4の実施形態の断面図を示している。
【図4A】本発明のさらに別の実施形態を示している。
【図4B】本発明のさらに別の実施形態を示している。
【図4C】本発明のさらに別の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
引き続いて、カラーホイールのバランス調整をすることができる。
次に、一例として図面を参照しながら本発明を詳しく説明する。
【0030】
図1Aは、本発明の第1の実施形態の分解図を示している。図1Bは、図1Aの実施形態を組立形態で示している。回転可能に支承された支持体3と、カラーフィルタセグメント5,5’,5’’と、ディスク7とを備えるカラーロータ1が示されている。
【0031】
回転可能に支承された支持体3は簡単に製作できるのがよく、少ない重量を有しているのがよい。この理由により、支持体は典型的にはアルミニウムで製作される。アルミニウムは、20℃でおよそ23・10−6/KのCTEを有している。以下においてはCTEを省略形で引用し、「23のCTE」は「20℃のとき23・10−6/K」の意味である。
【0032】
カラーフィルタセグメント5,5’,5’’は、透明なガラス板が薄膜干渉コーティングによりコーティングされることによって製造される。このようにして可視スペクトルの一部が透過され、一部が反射される。ガラス板がコーティングされてから、これが所要のセグメント形態に断裁される。ガラスは、割れ目をいれて破断することにより、簡単かつ
迅速に断裁することができる。このことが、フィルタセグメントを製造するのに典型的にはガラスが用いられる理由のひとつである。ガラスのCTEは20℃で典型的には0.5から10の間である。ここで検討している例ではBK7ガラスが用いられる。BK7は7.1のCTEを有している。
【0033】
したがって、回転可能に支承されたアルミニウム支持体3と、ガラスでできたカラーフィルタセグメント5,5’,5’’とは大きく異なる熱膨張係数(CTE)を有している。ガラスでできたカラーフィルタセグメント5,5’,5’’を、回転可能に支承されたアルミニウム支持体3の上に接着剤で直接貼りつける場合、この接着剤は、このような差異を緩衝できるようにするために軟質でなくてはならない。しかし大半のケースでは、接着剤の強度はその硬質さと直接結びついている。
【0034】
本発明の第1の実施形態によると、ガラスからなるカラーフィルタセグメント5,5’,5’’は、ガラスでできたディスク7の上に貼りつけられる。ガラスからなるディスク7は、ガラスからなるフィルタセグメント5,5’,5’’と同じCTEを有している。この理由により、カラーフィルタセグメント5,5’,5’’をディスク7へ固定するために、硬質で強力な接着剤を用いることができる。ディスク7は、環状のディスク(またはより一般的には)円形のディスクであってよい。ディスク7の直径は、カラーフィルタセグメントによって形成されるカラーフィルタリングの直径に比べて小さい。したがってカラーフィルタセグメントは、光に対して透過性である外側の透明なリングを形成する。たとえば欧州特許出願公開第0615146A2号明細書に記載されているような従来技術とは異なり、光が2つのガラス板および場合により接着層を通過する必要はない。そのうえ、より硬質およびそれに伴ってより強力な接着剤を使用できるので、米国特許第5,868,482号明細書に比べて接着区域を狭く選択することができる。
【0035】
そして、このように組み立てられたリングを、回転可能に支承されたアルミニウム支持体3へ取り付けることができる。ディスク7は、遠心力に関して、フィルタセグメント5,5’,5’’を固定して安定化する。したがって、回転可能に支承されたアルミニウム支持体3とディスク7との結合は、組み立てられたリングを回転させ、回転状態を保つために必要となる回転力に耐えられるだけでよい。この結合には、カラーフィルタセグメント5,5’,5’’とディスク7との間の結合よりはるかに低い要求しか課されない。この理由により、動作回転数の高い用途の場合には、回転可能に支承されたアルミニウム支持体3へディスク7を取り付けるために、比較的弱い接着剤を使うことさえできる。したがって、支持体3のアルミニウムと、ディスク7のガラスとの間のCTE差を緩衝することができる、軟質の接着剤を用いることが可能である。
【0036】
本発明の第2の実施形態によると、ガラスからなるディスク7が金属ディスクで置き換えられており、このとき、CTEがアルミニウムのCTEを明らかに下回っているが、フィルタセグメントのCTEより低くはない金属が選択される。その例は鉄(CTE=12.2)、鋼材(CTE=13.0)、ニッケル(CTE=13.0)、白金(CTE=9.0)、チタン(CTE=10.8)、または前掲の金属の合金である。硬度の観点、および回転可能に支承されたアルミニウム支持体での保持の観点から、チタンが1つの良い選択であろう。ただしコスト面の理由からすると、ステンレス鋼(SST−410)を用いるのが好ましい。これは20℃で9.9のCTEを有している。ガラスからなるカラーフィルタセグメントを、強力な接着剤によって鋼材ディスクに固定することができる。それが可能である理由は、ステンレス鋼のCTEがガラスのCTEに類似しているからである。ガラスとは異なり、金属は脆性ではなく比較的高い可塑性を有している。したがって十分に厚みのある鋼材ディスクを選択すれば、回転可能に支承された支持体にディスクを固定的に配置することができる。金属の可塑性は、温度変化が生じた場合、全体的に低い応力につながる。金属ディスクそれ自体が、回転可能に支承されたアルミニウム支持体と
、ガラスからなるカラーフィルタセグメントとの異なるCTEの効果を緩衝する。
【0037】
ここまででは、セグメントと支持体の間に介在するディスクは、ガラスまたは金属でできていてよいとしか述べてこなかった。これ以外の材料も、それが適当なCTEを有していさえすれば、これにセグメントを確実に固定できるようにするために採用することができる。したがって、特に、さまざまなセラミック材料やプラスチック材料も考えられる。このような材料がさらに十分な可塑性を有していれば、支持体との結合部も同じく硬質に、かつしたがって安定的に構成することができる。
【0038】
図2Aは、本発明の第3の実施形態を分解図として示している。図2Aには、回転可能に支承されたアルミニウム支持体203と、2つのディスク207,209と、ガラス製フィルタセグメント205,205’,205’’とを備えるカラーロータの態様が示されている。これらの実施例では、それぞれ3つのセグメントしか検討していない。しかしながら、2つ以上のセグメントを備えるあらゆるカラーホイールへコンセプトを適用可能であることは明白である。ガラス製フィルタセグメント205,205’,205’’は、第1のディスク207と第2のディスク209の間に挿入されている。ディスクの材料はガラスまたは金属である。この材料は、アルミニウム支持体203のCTEを明らかに下回るCTEを有している。ディスク材料としては、ステンレス鋼(SST−410)を用いるのが好ましい。
【0039】
図2Aに示すように、ディスク207,209とアルミニウム支持体203は鍵・鍵穴システムの部材を含むことができる。それに応じてディスク207,209は、回転対称ではない中央の穴211,213を含んでいる。アルミニウム支持体203は、形状が適合化された鍵部材を含んでいる。
【0040】
図2Bは、図2Aの実施形態を組立状態で示している。ガラス製フィルタセグメント205,205’,205’’は、第1のディスク207または第2のディスク209またはこれら両方のディスクと接着することができる。付言しておくと、鍵部材215とディスク209は、スナップ嵌め機構によってディスク209を鍵部材215に取り付けることを可能にする、追加の構造を含むことができる。このような種類の取付は接着剤を使わずにすむが、当然ながら、追加的に接着剤を用いることもできる。代替案として、またはスナップ嵌め機構の追加として、ディスク209をアルミニウム支持体203に固定するための溶接を行う手段が設けられていてもよい。
【0041】
ディスク7,207,307の厚みに関しては、良好に取り扱うことができるように十分に厚くなくてはならないと言うことができる。このとき下限は、現実的には20μm程度である。ディスクの厚みは機能面からは制限されない。しかしながら、カラーホイールの寸法を過度に大きくしないために、5mmを下回る厚みが好ましい。
【0042】
特定の材料の組み合わせでどれだけのディスクの厚みが十分であるかテストするために、支持体、ガラスセグメント、およびディスクを含むテストロータを、−20℃から+80℃の温度サイクルに曝露することができる。次いで、想定される用途のために必要な回転数でこれを回転させれば、負荷に耐えたかどうかを判断することができる。このようなテストを、異なるディスク厚みを有するロータで実施することができる。
【0043】
図3は、本発明の第4の実施形態の断面図を示している。回転可能に支承されたアルミニウム支持体303に取り付けられた、2つのガラスセグメント305,305’が示されている。アルミニウム支持体303は金属層307でコーティングされている。この金属層は、アルミニウムよりも有意に低いCTEを有している。この場合、金属層の好ましい層材料はチタンである。しかしながら、アルミニウムより低いCTEを有するその他の
金属を用いることもできる。ガラスセグメント305,305’は、硬質かつそれにより潜在的に強力な接着剤によって、金属層に貼りつけられている。金属層307はその可塑性に基づき、アルミニウム支持体303とガラスセグメント305,305’の間の応力を低減するための緩衝材として作用することができる。応力の有益な低減を効率的に得るために、金属層は十分に厚く選択しなくてはならない。明確な応力緩和を得るためには、少なくとも250nmの層厚を選択すべきであることが示されている。20μmを超える層厚は、経済的な製造プロセスにとってはあまりに高価である。
【0044】
図4Aから図4Cは、本発明のさらに別の実施形態を示している。これまでの図面ではカラーロータだけを図示してきた。このロータを駆動するモータは、より良い図示のために省略してきた。それに対して図4Aは、回転可能に支承された円筒状の第1の支持体423を含むモータ421を備えるカラーホイールの分解図を示している。この第1の支持体423の上に、環状の第2の支持体403が嵌められている。第1の支持体423は、環状の第2の支持体403にストッパを形成し、それによってこれを位置に関して保つ構造部401を含んでいる。
【0045】
環状の第2の支持体403は、結合リング429によって結合された、直径の異なる2つの中空円筒425,427で構成されている。小さいほうの中空円筒の内側表面は、第1の支持体423の外套面に密着する。結合リング429は、上側表面431と下側表面433とを含んでいる。下側表面407には、ステンレス鋼(SST−410)からなるディスク407が取り付けられている。「−410」という数字は材料の種類を一例として規定するものであり、図面の符号として理解されるものではないことに留意されたい。ディスク407には、ガラス製フィルタセグメント405,405’が配置されている。ステンレス鋼(SST−410)は、アルミニウムに比べてガラスのCTEに近いCTEを有している。したがって、カラーホイールが温度変化をうけたとき、ガラス製フィルタセグメント405,405’に対して小さい応力しか及ぼされない。
【0046】
ガラス製フィルタセグメント405,405’をディスク407へ取り付けるために、硬質かつしたがって強力な接着剤を使用することができる。それに対して、ディスクを第2の支持体403へ取り付けるには、軟質の接着剤を使用することができる。組み立てられたカラーホイールが図4Bに断面図として示されている。
【0047】
図4Cに示すように、ディスク407を第2の支持体403へ取り付けるのに接着剤は必要ないことに留意されたい。ステンレス鋼(SST−410)からなる第2のディスク435がガラス製フィルタセグメント405,405’に(第1のディスク407と向かい合う側で)取り付けられ、構造部401の幾何学形状が、第2のディスク435がその上に載るように選択されていれば、いかなる場合にも接着剤は必要ない。あとは第2の支持体403と構造部401とが、ディスク407,435およびガラス製セグメント405,405’からなる組み合わせによって形成されるリングを固定的に挟み込むように配慮するだけで、安定したコンポーネントが成立する。
【0048】
カラーホイールは、ロータをバランス調整するための手段も含んでいるのが好ましい。図4A−Cで説明した実施形態では、このことが該当する。1番目に、第2の支持体403の大きいほうの中空円筒427は、結合リング429および第1の支持体423の外套面の一部とともに、バランス調整のための材料を中に充填することができる環状のコンテナを形成している。2番目にこれらの図面は、第1の支持体423の上側の底面にある環状の溝437を追加的に示している。この溝にも、バランス調整のための材料を充填することができる。このようにして、2つの平面でカラーロータをバランス調整することさえ可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 カラーロータ
3 支持体
5 カラーフィルタセグメント
5’ カラーフィルタセグメント
5’’ カラーフィルタセグメント
7 ディスク
203 支持体
205 フィルタセグメント
205’ フィルタセグメント
205’’ フィルタセグメント
207 ディスク
209 ディスク
211 穴
213 穴
215 鍵部材
303 支持体
305 ガラスセグメント
305’ ガラスセグメント
307 金属層
401 構造部
403 第2の支持体
405 フィルタセグメント
405’ フィルタセグメント
407 第1のディスク
423 第1の支持体
425 中空円筒
427 中空円筒
429 結合リング
431 上側表面
433 下側表面
435 第2のディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータとロータとを備えるカラーホイールにおいて、
前記ロータは第1の熱膨張係数CTE1を有する材料からなる支持体を含んでおり、前記ロータは第1のものとは異なる第2の膨張係数CTE2を有するセグメントを含んでおり、前記セグメントは前記セグメントを固定的に結合するディスクによって前記支持体に取り付けられており、前記セグメントの部分が前記ディスクおよび前記支持体から突出し、前記セグメントの突出部分が共同で環状領域を形成するようになっており、前記ディスク材料の熱膨張係数CTE3はCTE2に実質的に等しいか、または
【数1】

が成り立っているカラーホイール。
【請求項2】
前記ディスク材料はセグメント材料と実質的に同じであることを特徴とする、請求項1に記載のカラーホイール。
【請求項3】
前記ディスク材料は金属、好ましくは鋼材、格別に好ましくはステンレス鋼であることを特徴とする、請求項1に記載のカラーホイール。
【請求項4】
前記支持体は実質的にアルミニウム支持体であり、前記セグメント材料は実質的にガラスおよび/またはプラスチックであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のカラーホイール。
【請求項5】
前記セグメントを前記ディスクへ取り付けるために第1の接着剤が使用され、前記ディスクを前記支持体へ取り付けるために第2の接着剤が使用され、前記第1の接着剤によって成立する結合は前記第2の接着剤によって成立する結合よりも明らかに強力であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のカラーホイール。
【請求項6】
モータとロータとを備えるカラーホイールにおいて、前記ロータは第1の熱膨張係数CTE1を有する材料からなる支持体を含んでおり、前記ロータは第1のものとは異なる第2の膨張係数CTE2を有する透明なセグメントを含んでおり、前記セグメントは支持体コーティングによって前記支持体に取り付けられており、前記セグメントの部分が前記支持体から突出し、前記セグメントの突出部分が共同で環状の透明な領域を形成するようになっており、前記支持体コーティングの熱膨張係数については
CTE4=CTE2または
【数2】

が成り立つカラーホイール。
【請求項7】
前記コーティング材料は実質的にチタンであることを特徴とする、請求項6に記載のカラーホイール。
【請求項8】
前記支持体材料は実質的にアルミニウムであり、前記セグメント材料は実質的にガラスおよび/またはプラスチックであることを特徴とする、請求項7に記載のカラーホイール

【請求項9】
カラーホイールを製造する方法において、
第1の熱膨張係数CTE1を有する支持体材料を選択するステップと、
CTE1とは異なる第2の熱膨張係数CTE2を有する特にガラスまたはプラスチックからなる複数のセグメントを準備するステップと、
熱膨張係数CTE3を有するディスクを準備し、このとき
CTE3=CTE2または
【数3】

が成り立つステップと、
特に接着剤によって前記セグメントを前記ディスクに取り付け、前記セグメントの部分が前記ディスクから突出し、前記セグメントの突出部分が環状領域を形成するようにするステップと、
選択された前記支持体材料からなる回転可能に支承された支持体を備えるモータを準備し、前記支持体の円周は前記セグメントの前記突出部分によって形成される環状領域よりも小さくなっているステップと、
前記セグメントと向かい合う前記ディスクの側に前記支持体を実質的にセンタリングして取り付けるステップとを有している方法。
【請求項10】
前記カラーホイールは前記請求項9に基づいて実行される方法ステップの後でバランス調整されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2010−501883(P2010−501883A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524916(P2009−524916)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006559
【国際公開番号】WO2008/022686
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(596013501)オー・ツェー・エリコン・バルザース・アクチェンゲゼルシャフト (55)
【氏名又は名称原語表記】OC Oerlikon Balzers AG
【Fターム(参考)】