説明

カリウムイオンチャネル調節剤としての多環式ピリミジン

【課題】カリウムイオンチャネルの調節剤として有用な多環式ピリミジン類を提供する。
【解決手段】イオンチャンネルは、カルシウム、カリウム、ナトリウム、及び塩素を含むイオンの細胞への流入及び流出を調節する細胞蛋白質である。これらのチャンネルはすべてヒトの細胞に存在し、神経伝達、筋収縮、細胞分泌、心拍の調節、動脈の拡張等の生理的プロセスに影響を及ぼす。カリウムイオンチャンネルが最も広範に存在し、且つ多様で、神経、筋、腺、免疫等に見いだされる。これらのチャンネル調節剤としてピリミジンを含む化合物の錯体を提供。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は2004年4月13日提出の米国特許仮出願第第60/561,990号の恩典を主張し、その内容はあらゆる目的のために全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
イオンチャネルは、カルシウム、カリウム、ナトリウムおよび塩素を含むイオンの細胞への流入および流出を調節する細胞タンパク質である。これらのチャネルはすべてのヒト細胞に存在し、神経伝達、筋収縮、細胞分泌、心搏の調節、動脈の拡張、インスリンの放出、および腎電解質輸送の調節などの生理的プロセスに影響をおよぼす。イオンチャネルの中で、カリウムイオンチャネルが最も広範に存在し、かつ多様で、神経、筋、腺、免疫、生殖、および上皮組織などの様々な動物細胞で見いだされる。これらのチャネルは、特定の条件下でカリウムの細胞への流入および/または流出を可能にする。例えば、これらのチャネル開放時のカリウムイオンの外向きの流れにより、細胞内部がより負となり、細胞にかけられた脱分極性電圧を相殺する。これらのチャネルは、例えば、カルシウム感受性、電圧ゲーティング、二次メッセンジャー、細胞外リガンド、およびATP感受性によって調節される。
【0003】
カリウムイオンチャネルは典型的には4つのアルファサブユニットで形成され、ホモマー(同じアルファサブユニットで形成)であってもよく、ヘテロマー(複数の異なるタイプのアルファサブユニットで形成)であってもよい。加えて、特定のカリウムイオンチャネル(Kv、KQTおよびSloまたはBKサブユニットからなるもの)は、追加の構造的に異なる補助的、またはベータサブユニットを含むことがしばしば見いだされている。これらのサブユニットはカリウムイオンチャネル自体を形成することはないが、代わりにアルファサブユニットによって形成されるチャネルの機能的特性を改変するための補助的サブユニットとしてはたらく。例えば、Kvベータサブユニットは細胞質性で、Kvチャネルの表面発現を増大させ、かつ/またはチャネルの不活化速度を改変することが知られている(Heinemann et al., J. Physiol. 493: 625-633 (1996)(非特許文献1); Shi et al., Neuron 16 (4): 843-852 (1996)(非特許文献2))。もう一つの例において、KQTファミリーベータサブユニットであるminKは主に活性化速度を変化させる(Sanguinetti et al., Nature 384: 80-83 (1996)(非特許文献3))。
【0004】
カリウムイオンチャネルのアルファサブユニットは、推定される構造的および機能的類似性に基づいて、少なくとも8つのファミリーに分かれる(Wei et al., Neuropharmacology 35(7): 805- 829 (1997)(非特許文献4))。これらのファミリーの3つ(Kv、eag関連、およびKQT)は6つの膜貫通ドメインの共通モチーフを有し、主に電圧によってゲーティングされる。2つの他のファミリーであるCNGおよびSK/IKもこのモチーフを含むが、それぞれ環状ヌクレオチドおよびカルシウムによってゲーティングされる。小(SK)および中(IK)コンダクタンスカルシウム活性化カリウムイオンチャネルはそれぞれ2〜20および20〜85pSの単位コンダクタンスを有し、下記のBKチャネルよりもカルシウムに対する感受性が高い。カルシウム活性化カリウムチャネルの総説については、Latorre et al., Ann. Rev. Phys. 51: 385-399 (1989)(非特許文献5)を参照されたい。
【0005】
カリウムチャネルアルファサブユニットの3つの他のファミリーは異なるパターンの膜貫通ドメインを有する。SloまたはBKファミリーカリウムチャネルは7つの膜貫通ドメインを有し(Meera et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94(25): 14066-14071 (1997)(非特許文献6))、電圧とカルシウムまたはpHの両方によってゲーティングされる(Schreiber et al., J. Biol. Chem. 273: 3509-3516 (1998)(非特許文献7))。SloまたはBKカリウムイオンチャネルは、中枢神経系と末梢両方の様々な組織において見いだされる、大コンダクタンスカリウムイオンチャネルである。これらのチャネルは内部カルシウムイオンおよび膜電位の協奏作用によってゲーティングされ、100〜220pSの間の単位コンダクタンスを有する。これらはニューロン統合筋収縮およびホルモン分泌などのプロセスの調節において重要な役割を果たす。また、これらはリンパ球分化および細胞増殖、精母細胞分化および精子運動性などのプロセスにも関与している可能性がある。BK(Atkinson et al., Science 253: 551-555 (1991)(非特許文献8); Adelman et al., Neuron 9: 209-216 (1992)(非特許文献9); Butler, Science 261: 221-224 (1993)(非特許文献10))サブファミリーのメンバーが異種細胞型においてクローニングおよび発現されており、ここでその本来の対応物の基本的性質を反復する。最後に、内向き整流性カリウムチャネル(Kir)は2つの膜貫通ドメインを含む構造ファミリーに属し、8番目の機能的に多様なファミリー(TP、すなわち「二孔」)はこの内向き整流性モチーフの2つの直列型反復配列を含む。
【0006】
カリウムイオンチャネルのそれぞれのタイプは異なる薬理特性を示す。これらのクラスは広く発現され、それらの活性は膜電位を過分極させる。カリウムイオンチャネルは、心搏の調節、動脈の拡張、インスリンの放出、神経細胞の興奮性、および腎電解質輸送の調節を含むいくつかの生理プロセスに関連づけられている。さらに、研究により、カリウムイオンチャネルは、中枢および末梢神経系障害(例えば、偏頭痛、運動失調、パーキンソン病、双極性障害、三叉神経痛、痙縮、気分障害、脳腫瘍、精神病性障害、筋波動症、発作、てんかん、聴力および視力損失、精神病、不安、うつ病、痴呆、記憶および注意欠乏、アルツハイマー病、加齢性記憶喪失、学習障害、不安、外傷性脳傷害、月経困難、睡眠発作、および運動ニューロン疾患)を含むいくつかの疾患の処置における治療標的、および神経保護物質(例えば、卒中などを予防するため)の標的;ならびに胃食道逆流障害(gastroesophogeal reflux disorder)および胃腸低運動障害、過敏性腸症候群、分泌性下痢、喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患および鼻漏、痙攣、血管痙攣、冠動脈痙攣、腎障害、腎嚢胞、膀胱痙攣、尿失禁、膀胱流出閉塞(bladder outflow obstruction)、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈性心疾患、レイノー病、間欠性跛行、シェーグレン症候群、不整脈、高血圧、筋緊張性筋ジストロフィー、口内乾燥、II型糖尿病、高インスリン血症、早期分娩、脱毛症、癌、ならびに免疫抑制などの疾患状態の処置における治療標的であることが示されている。
【0007】
特に、SKチャネルは異なる薬理特性を有することが明らかにされている。例えば、パッチクランプ法を用いて、8つの臨床上関連する精神活性化合物のSK2サブタイプチャネルに対する効果が調べられた(Dreixler et al., Eur. J. Pharmacol. 401: 1-7 (2000)(非特許文献11))。評価された化合物は三環系抗うつ薬に構造的に関連しており、アミトリプチリン、カルバマゼピン、クロルプロマジン、シプロヘプタジン、イミプラミン、タクリンおよびトリフルペラジンを含む。試験された化合物はそれぞれ、SK2チャネル電流をマイクロモル濃度の親和性で阻止することが明らかにされた。SKチャネルに影響をおよぼすいくつかの神経筋阻害剤、例えば、アパミン、アトラクリウム、パンクロニウムおよびツボクラリンがある(Shah et al., Br J Pharmacol 129: 627-30 (2000)(非特許文献12))。
【0008】
さらに、パッチクランプ法を用いて、中枢作用性筋弛緩剤クロルゾキサゾンおよび3つの構造的に関連する化合物、1-エチル-2-ベンズイミダゾリノン(1-EBIO)、ゾキサゾラミン、および1,3-ジヒドロ-1-[2-ヒドロキシ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-5-(トリフルオロメチル)-2H-ベンズイミダゾル-2-オン(NS 1619)の、HEK293哺乳動物細胞において発現された組換えラット脳SK2チャネル(rSK2チャネル)に対する効果も試験されている(Cao et al., J Pharnaacol. Exp. Ther. 296: 683-689 (2001)(非特許文献13))。外部適用した場合、クロルゾキサゾン、1-EBIO、およびゾキサゾラミンは、名目上カルシウムを含まない細胞内溶液で透析した細胞におけるrSK2チャネル電流を活性化した。
【0009】
組換えヒトSK4(hIK1またはhKCa4としても知られている)チャネルの活性化に対する金属カチオンの効果も調べられている(Cao and Houamed, FEBS Lett. 446: 137-41 (1999)(非特許文献14))。イオンチャネルをHEK293細胞において発現させ、パッチクランプ記録を用いて試験が行われた。試験された9つの金属のうち、コバルト、鉄、マグネシウム、および亜鉛はSK4チャネル発現膜パッチの内部に適用した場合にSK4チャネルを活性化しなかった。バリウム、カドミウム、カルシウム、鉛、およびストロンチウムは濃度依存的にSK4チャネルを活性化した。カルシウムが最も強力な金属で、続いて鉛、カドミウム、ストロンチウム、およびバリウムであった。
【0010】
SKチャネルは、孔形成αサブユニットおよびカルシウム結合タンパク質カルモジュリン(CaM)を含むヘテロマー複合体である。CaMは孔近辺のαサブユニットの細胞内領域に位置するCaM結合ドメイン(CaMBD)を通してSKチャネルに結合する。最近発表された結晶構造に基づき、4つのサブユニットそれぞれにおけるCaMタンパク質のN-ローブへのカルシウム結合によって、CaMタンパク質の疎水性部分が隣接サブユニットのCaMBDと相互作用することを可能にする構造変化が始まる。隣接サブユニットの各N-ローブが他のCaMBD C末端領域をつかむのに合わせて、それらの間に回転力が生じると考えられ、これがチャネルの開放を推進すると思われる。
【0011】
カリウムイオンチャネルの開放を調節するよう作用する新しいクラスの化合物は、当技術分野における著しい前進を意味し、これらのチャネルに関連する多くの疾患の処置法を開発する機会を提供することになる。本発明は、新しいクラスのカリウムイオンチャネル調節剤および調節剤の使用法を提供する。
【0012】
【非特許文献1】Heinemann et al., J. Physiol. 493: 625-633 (1996)
【非特許文献2】Shi et al., Neuron 16 (4): 843-852 (1996)
【非特許文献3】Sanguinetti et al., Nature 384: 80-83 (1996)
【非特許文献4】Wei et al., Neuropharmacology 35(7): 805- 829 (1997)
【非特許文献5】Latorre et al., Ann. Rev. Phys. 51: 385-399 (1989)
【非特許文献6】Meera et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94(25): 14066-14071 (1997)
【非特許文献7】Schreiber et al., J. Biol. Chem. 273: 3509-3516 (1998)
【非特許文献8】Atkinson et al., Science 253: 551-555 (1991)
【非特許文献9】Adelman et al., Neuron 9: 209-216 (1992)
【非特許文献10】Butler, Science 261: 221-224 (1993)
【非特許文献11】Dreixler et al., Eur. J. Pharmacol. 401: 1-7 (2000)
【非特許文献12】Shah et al., Br J Pharmacol 129: 627-30 (2000)
【非特許文献13】Cao et al., J Pharnaacol. Exp. Ther. 296: 683-689 (2001)
【非特許文献14】Cao and Houamed, FEBS Lett. 446: 137-41 (1999)
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明は、カリウムイオンチャネルを通過するカリウムイオン流の調節を通じて疾患を処置する際に有用である、多環式ピリミジン、そのプロドラッグ、錯体および薬学的に許容される塩を提供する。
【0014】
第一の局面において、カリウムイオンチャネル調節剤は式Iの化合物である:

式(I)において、AおよびBは独立に置換もしくは無置換5もしくは6員ヘテロシクロアルキルまたは置換もしくは無置換5もしくは6員ヘテロアリールである。記号W1

である。W2は-CH=、-NH-、-N=、または-O-である。記号Z1

である。Z2は-CH=、-NH-、-N=、または-O-である。記号Xは結合、-CH2-、または-NR4-である。Yは結合、-CH=N-NH-、-NH-CH2-、または-NR5-である。
【0015】
記号sおよびtは独立に1〜4の整数である。
【0016】
記号kは1〜2の整数である。
【0017】
R1、R2、およびR3は独立にH、-OH、-NH2、-NO2、-SO2NH2、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換3〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、または-NR7R8である。
【0018】
R7およびR8は独立にH、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールである。R7およびR8はそれらが結合している窒素と任意に結び付いて置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、または置換もしくは無置換ヘテロアリールを形成する。
【0019】
R4およびR5は独立にH、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換3〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールである。
【0020】
複数のR1、R2、および/またはR3基がある場合、R1、R2、および/またはR3はそれぞれ任意に異なる。
【0021】
R1、R2、およびR3は任意に縮合環系の一部を形成してもよい。
【0022】
第二の局面において、本発明は、細胞内のカリウムイオンチャネルを通過するイオン流を低減する方法であって、細胞を本発明の調節剤のカリウムイオンチャネル調節量と接触させる段階を含む方法を提供する。
【0023】
第三の局面において、本発明は、カリウムイオンチャネルを通過するカリウムイオン流の調節を通じて疾患を処置する方法を提供する。調節剤は中枢または末梢神経系障害(例えば、偏頭痛、運動失調、パーキンソン病、双極性障害、三叉神経痛、痙縮、気分障害、脳腫瘍、精神病性障害、筋波動症、発作、てんかん、聴力および視力損失、精神病、不安、うつ病、痴呆、記憶および注意欠乏、アルツハイマー病、加齢性記憶喪失、学習障害、不安、外傷性脳傷害、月経困難、睡眠発作、ならびに運動ニューロン疾患)の処置において、および神経保護物質(例えば、卒中などを予防するため)として有用である。本発明の調節剤は、胃食道逆流障害および胃腸低運動障害、過敏性腸症候群、分泌性下痢、喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患および鼻漏、痙攣、血管痙攣、冠動脈痙攣、腎障害、腎嚢胞、膀胱痙攣、尿失禁、膀胱流出閉塞、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈性心疾患、レイノー病、間欠性跛行、シェーグレン症候群、不整脈、高血圧、筋緊張性筋ジストロフィー、口内乾燥、II型糖尿病、高インスリン血症、早期分娩、脱毛症、癌、ならびに免疫抑制などの疾患状態の処置においても有用である。この方法は、患者に本発明の調節剤の有効量を投与する段階を含む。
【0024】
第四の局面において、本発明は、薬学的に許容される担体と本発明の調節剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0025】
本発明のこれらおよび他の局面および態様は、以下の詳細な説明から明らかになると思われる。
【0026】
発明の詳細な説明
I. 略語および定義
本明細書において用いられる略語は化学および生物学の分野内の通常の意味を有する。
【0027】
部分が左から右に書かれたそれらの通常の化学式で明記される場合、それらは構造を右から左に書くことによって生じる化学的に同一の置換基を等しく含み、例えば-CH2O-は-OCH2-と等しい。
【0028】
「アルキル」なる用語は、それ自体またはもう一つの置換基の一部として、特に記載がないかぎり、直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素基、あるいはその組み合わせを意味し、これは完全飽和でも、一もしくは多不飽和でもよく、指定の炭素原子数を有する二価および多価基を含みうる(すなわち、C1-C10または1〜10員は1〜10個の炭素を意味する)。飽和炭化水素基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えばn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体および同位体などの基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。不飽和アルキル基は、一つまたは複数の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例には、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにより高級の同族体および同位体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。「アルキル」なる用語は、特に記載がない限り、「ヘテロアルキル」などの以下により詳細に定義されるアルキルの誘導体も含むことになる。炭化水素基に限定されるアルキル基は「ホモアルキル」と呼ばれる。
【0029】
「アルキレン」なる用語は、それ自体またはもう一つの置換基の一部として、-CH2CH2CH2CH2-で例示されるとおりであるが、それらに限定されるわけではない、アルカンから誘導される二価の基を意味し、「ヘテロアルキレン」として以下に記載する基をさらに含む。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は1〜24個の炭素原子を有し、本発明においては10個以下の炭素原子を有することが好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する短鎖アルキルまたはアルキレン基である。
【0030】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)なる用語は、それらの通常の意味で用いられ、分子の残りにそれぞれ酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して結合されたアルキル基を意味する。
【0031】
「ヘテロアルキル」なる用語は、それ自体またはもう一つの用語との組み合わせで、特に記載がないかぎり、指定の炭素原子数と、O、N、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含み、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい、安定な直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素基、あるいはその組み合わせを意味する。ヘテロ原子O、NおよびSならびにSiはヘテロアルキル基内部のいかなる位置にあってもよく、またはアルキル基が分子の残りに結合されている位置にあってもよい。例には、

が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH3)3のように、2つまでのヘテロ原子が連続していてもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」なる用語は、それ自体またはもう一つの置換基の一部として、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-で例示されるとおりであるが、それらに限定されるわけではない、ヘテロアルキルから誘導される二価の基を意味する。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子は鎖末端のいずれかまたは両方を占めることもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基について、連結基の式が書かれている方向によって連結基の配向は示されない。例えば、式-C(O)2R'-は-C(O)2R'-および-R'C(O)2-の両方を意味する。
【0032】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」なる用語は、それ自体または他の用語との組み合わせで、特に記載がないかぎり、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状型を意味する。したがって、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは飽和および不飽和環結合を含む。加えて、ヘテロシクロアルキルについて、ヘテロ原子は複素環が分子の残りに結合されている位置を占めることもできる。シクロアルキルの例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ヘテロシクロアルキルの例には、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0033】
「ハロ」または「ハロゲン」なる用語は、それ自体またはもう一つの置換基の一部として、特に記載がないかぎり、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。加えて、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことになる。例えば、「ハロ(C1-C4)アルキル」なる用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことになるが、それらに限定されるわけではない。
【0034】
「アリール」なる用語は、特に記載がないかぎり、一緒に縮合された、または共有結合された単環または多環(好ましくは1〜3環)でありうる多不飽和芳香族炭化水素置換基を意味する。「ヘテロアリール」なる用語は、N、O、およびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含み、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されており、窒素原子は任意に四級化されている、アリール基(または環)を意味する。ヘテロアリール基は分子の残りにヘテロ原子を通じて結合されていてもよい。アリールおよびヘテロアリール基の非限定例には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが含まれる。前述のアリールおよびヘテロアリール環系それぞれの置換基は、下記の許容される置換基群から選択される。
【0035】
簡略のために、「アリール」なる用語は他の用語と組み合わせて用いる場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)には、前述の定義のアリールおよびヘテロアリール両方を含む。したがって、「アリールアルキル」なる用語は、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば酸素原子で置き換えられたアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)を含む、アリール基がアルキル基に結合された基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことになる。
【0036】
本明細書において用いられる「オキソ」なる用語は、炭素原子に二重結合された酸素を意味する。
【0037】
前述の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)はそれぞれ、示された基の置換および無置換型を含むことになる。それぞれのタイプの基の好ましい置換基を以下に示す。
【0038】
アルキルおよびヘテロアルキル基(しばしばアルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと呼ばれる基を含む)の置換基は、下記から選択される様々な基の一つまたは複数でありうるが、それらに限定されるわけではない:ゼロ〜(2m'+1)(m'はそのような基の炭素原子の総数)の範囲の数の-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CNおよび-NO2。R'、R''、R'''およびR''''はそれぞれ好ましくは独立に水素、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換アリール、例えば、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール、置換もしくは無置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を意味する。例えば、本発明の調節剤が複数のR基を含む場合、R基はそれぞれ独立に、R'、R''、R'''およびR''''基の複数がある場合のこれらの基それぞれと同様に選択される。R'およびR''が同じ窒素原子に結合されている場合、これらは窒素原子と組み合わせされて5、6、または7員環を形成することができる。例えば、-NR'R''は1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことになるが、それらに限定されるわけではない。前述の置換基の議論から、当業者であれば「アルキル」なる用語は、ハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)およびアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)などの水素基以外の基に結合された炭素原子を含む基を含むことになることを理解すると思われる。
【0039】
アルキル基について記載された置換基と同様、アリールおよびヘテロアリール基の置換基は様々で、例えば下記から選択される:ゼロから芳香環系の開原子価総数の範囲の数のハロゲン、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CNおよび-NO2、-R'、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシ、およびフルオロ(C1-C4)アルキル;ここでR'、R''、R'''およびR''''は好ましくは水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールから独立に選択される。例えば、本発明の調節剤が複数のR基を含む場合、R基はそれぞれ独立に、R'、R''、R'''およびR''''基の複数がある場合のこれらの基それぞれと同様に選択される。
【0040】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは任意に式-T-C(O)-(CRR')q-U-の置換基で置き換えられていてもよく、ここでTおよびUは独立に-NR-、-O-、-CRR'-または一重結合であり、qは0〜3の整数である。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは任意に式-A-(CH2)r-B-の置換基で置き換えられていてもよく、ここでAおよびBは独立に-CRR'-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または一重結合であり、rは1〜4の整数である。このように形成された新しい環の一重結合の1つは任意に二重結合で置き換えられていてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは任意に式-(CRR')s-X-(CR''R''')d-の置換基で置き換えられていてもよく、ここでsおよびdは独立に0〜3の整数であり、Xは-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、または-S(O)2NR'-である。置換基R、R'、R''、およびR'''は好ましくは水素または置換もしくは無置換(C1-C6)アルキルから独立に選択される。
【0041】
本明細書において用いられる「ヘテロ原子」なる用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)を含むことになる。
【0042】
本明細書において用いられる「置換基」は、下記の部分から選択される基を意味する:
【0043】
(A)-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、オキシ、ハロゲン、無置換アルキル、無置換ヘテロアルキル、無置換シクロアルキル、無置換ヘテロシクロアルキル、無置換アリール、無置換ヘテロアリール、ならびに
【0044】
(B)下記から選択される少なくとも一つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール:
【0045】
(i)オキシ、-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、ハロゲン、無置換アルキル、無置換ヘテロアルキル、無置換シクロアルキル、無置換ヘテロシクロアルキル、無置換アリール、無置換ヘテロアリール、ならびに
【0046】
(ii)下記から選択される少なくとも一つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール:
【0047】
(a)オキシ、-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、ハロゲン、無置換アルキル、無置換ヘテロアルキル、無置換シクロアルキル、無置換ヘテロシクロアルキル、無置換アリール、無置換ヘテロアリール、ならびに
【0048】
(b) オキシ、-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、ハロゲン、無置換アルキル、無置換ヘテロアルキル、無置換シクロアルキル、無置換ヘテロシクロアルキル、無置換アリール、および無置換ヘテロアリールから選択される少なくとも一つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール。
【0049】
本明細書において用いられる「サイズ限定置換基(size-limited substituent)」または「サイズ限定置換基(size-limited substituent group)」は、「置換基」について前述したすべての置換基から選択される基を意味し、ここで置換または無置換アルキルはそれぞれ置換または無置換C1-C20アルキルであり、置換または無置換ヘテロアルキルはそれぞれ置換または無置換2〜20員ヘテロアルキルであり、置換または無置換シクロアルキルはそれぞれ置換または無置換C3-C8シクロアルキルであり、かつ置換または無置換ヘテロシクロアルキルはそれぞれ置換または無置換3〜8員ヘテロシクロアルキルである。
【0050】
本明細書において用いられる「低級置換基(lower substituent)」または「低級置換基(lower substituent group)」は、「置換基」について前述したすべての置換基から選択される基を意味し、ここで置換または無置換アルキルはそれぞれ置換または無置換C1-C8アルキルであり、置換または無置換ヘテロアルキルはそれぞれ置換または無置換2〜8員ヘテロアルキルであり、置換または無置換シクロアルキルはそれぞれ置換または無置換C5-C7シクロアルキルであり、かつ置換または無置換ヘテロシクロアルキルはそれぞれ置換または無置換5〜7員ヘテロシクロアルキルである。
【0051】
「薬学的に許容される塩」なる用語は、本明細書において記載される調節剤上で見られる特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸または塩基と調製される活性調節剤の塩を含むことになる。本発明の調節剤が比較的酸性の官能基を含む場合、そのような調節剤の中性型を所望の塩基の十分な量と、ニートまたは適当な不活性溶媒中のいずれかで接触させることにより、塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、もしくはマグネシウム塩、または類似の塩が含まれる。本発明の調節剤が比較的塩基性の官能基を含む場合、そのような調節剤の中性型を所望の酸の十分な量と、ニートまたは適当な不活性溶媒中のいずれかで接触させることにより、酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素酸、リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、硫酸、硫酸水素酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などの無機酸由来のもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的非毒性の有機酸由来の塩が含まれる。同様に、アルギン酸などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al., ''Pharmaceutical Salts'', Journal of Pharmaceutical Science 66: 1-19 (1977)参照)。本発明の特定の調節剤は、調節剤が塩基または酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする、塩基性および酸性両方の官能基を含む。
【0052】
調節剤の中性型は、好ましくは塩を塩基または酸と接触させ、通常の様式で親調節剤を単離することにより再生する。調節剤の親型は様々な塩とは、極性溶媒への溶解性などの特定の物理的性質において異なる。
【0053】
塩型に加えて、本発明はプロドラッグ型の調節剤を提供する。本明細書に記載の調節剤のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を受け、本発明の調節剤を提供する化合物または錯体である。加えて、プロドラッグはエクスビボ環境において化学的または生化学的方法により本発明の調節剤に変換することができる。例えば、プロドラッグは適当な酵素または化学試薬と共に経皮パッチレザバー内に置かれると、本発明の調節剤にゆっくり変換されうる。
【0054】
本明細書において用いられる「環」なる用語は、置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールを意味する。環は縮合環部分を含む。環内の原子の数は典型的には環の構成員の数で定義される。例えば、「5〜7員環」は環状配列内に5〜7個の原子があることを意味する。環は任意にヘテロ原子を含む。したがって、「5〜7員環」なる用語は、例えば、ピリジニル、ピペリジニルおよびチアゾリル環を含む。
【0055】
本明細書において用いられる「ポリ」なる用語は少なくとも2を意味する。例えば、多価(polyvalent)金属イオンは少なくとも2の原子価を有する金属イオンである。
【0056】
「部分」とは、もう一つの部分に結合された分子の基を意味する。
【0057】
記号

は、結合として用いられているか、または結合に対して垂直に表示されているかにかかわらず、表示の部分が分子の残りに結合されている点を示す。
【0058】
本発明の特定の調節剤は、非溶媒和型ならびに水和型を含む溶媒和型で存在しうる。一般に、溶媒和型は非溶媒和型と等価であり、本発明の範囲内に含まれる。本発明の特定の調節剤は、複数の結晶または非結晶型で存在してもよい。一般に、すべての物理的形態は本発明によって企図される使用のために等価であり、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0059】
本発明の特定の調節剤は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有し;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は本発明の範囲内に含まれる。
【0060】
本発明の調節剤は、そのような調節剤を構成する原子の一つまたは複数で非天然の比率の原子同位体を含むこともある。例えば、調節剤は例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射能標識されていてもよい。本発明の調節剤のすべての同位体変種は、放射性であるかどうかにかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。
【0061】
II. カリウムイオンチャネル調節剤
本発明は、ピリミジニル部分と、第一および第二の環とを含み、それらの環はそれぞれピリミジニル部分に直接またはリンカーを通じて結合されている、カリウムイオンチャネル調節剤を提供する。本発明のカリウムイオンチャネル調節剤(「本発明の調節剤」)は、下記の化合物(本明細書において「本発明の化合物」とも呼ばれる)または金属イオン錯体(本明細書において「本発明の錯体」とも呼ばれる)であってもよい。
【0062】
一つの局面において、カリウムイオンチャネル調節剤は式(I)の化合物である:

式(I)において、AおよびBは独立に置換もしくは無置換5もしくは6員ヘテロシクロアルキル、または置換もしくは無置換5もしくは6員ヘテロアリールである。記号W1

である。W2は-CH=、-NH-、-N=、または-O-である。記号Z1

である。Z2は-CH=、-NH-、-N=、または-O-である。記号Xは結合、-CH2-、または-NR4-である。Yは結合、-CH=N-NH-、-NH-CH2-、または-NR5-である。いくつかの態様において、Xは結合である。
【0063】
記号sおよびtは独立に1〜4の整数である。当業者であれば、Aが5員ヘテロシクロアルキルまたは5員ヘテロアリールであるとき、sは1〜3の整数であり;Aが6員ヘテロシクロアルキルまたは6員ヘテロアリールであるとき、sは1〜4の整数であることをただちに理解すると思われる。同様に、Bが5員ヘテロシクロアルキルまたは5員ヘテロアリールであるとき、tは1〜3の整数であり、Bが6員ヘテロシクロアルキルまたは6員ヘテロアリールであるとき、tは1〜4の整数である
【0064】
記号kは1〜2の整数である。
【0065】
R1、R2、およびR3は独立にH、-OH、-NH2、-NO2、-SO2NH2、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換3〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、または-NR7R8である。
【0066】
R7およびR8は独立にH、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールである。R7およびR8はそれらが結合している窒素と任意に結び付いて置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、または置換もしくは無置換ヘテロアリールを形成する。
【0067】
R4およびR5は独立にH、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換3〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールである。
【0068】
複数のR1、R2、および/またはR3基がある場合、R1、R2、および/またはR3はそれぞれ任意に異なる。例えば、sが1よりも大きい場合、R1はそれぞれ任意に異なり;kが1よりも大きい場合、R2はそれぞれ任意に異なり;tが1よりも大きい場合、R3はそれぞれ任意に異なる。
【0069】
R1、R2、およびR3は任意に縮合環系の一部を形成してもよい。例えば、2つのR1基はそれらが結合している原子と任意に結び付いて置換または無置換5〜7員環を形成し;2つのR2基はそれらが結合している原子と任意に結び付いて置換または無置換5〜7員環を形成し;2つのR3基はそれらが結合している原子と任意に結び付いて置換または無置換5〜7員環を形成する。
【0070】
いくつかの態様において、Aは置換または無置換ヘテロアリールである。Aは置換または無置換ピリジニルであってもよい。
【0071】
他の態様において、Aは

である。式(III)において、R1およびsは上の式(I)の説明において定義したとおりである。いくつかの態様において、R1はH、ハロゲン、-NH2、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールから選択される。
【0072】
Aは

であってもよい。R1は上の式(III)の式(I)の説明において記載したとおりである。または、R1はハロゲン、または置換もしくは無置換アルキルである。関連する態様において、R1はClまたは無置換アルキル(例えば、メチル、エチルなど)である。したがって、Aは

であってもよい。
【0073】
他の態様において、Bは置換または無置換ヘテロアリールである。Bは置換または無置換ピリジニルであってもよい。または、Bは

である。式(II)において、R3およびtは上の式(I)の説明において定義したとおりである。式(II)のいくつかの態様において、R3はH、-NH2、-NO2、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換3〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールである。もう一つの態様において、R3はClまたは-NR7R8である。関連する態様において、R3は-NH2、-N(CH3)2

である。
【0074】
他の態様において、Bは

である。R3は上の式(I)または式(II)の説明において記載したとおりである。他の態様において、R3は置換または無置換アルキル(例えば、メチル、エチルなど)である。したがって、Bは

であってもよい。
【0075】
R1、R2、およびR3は独立にH、-NH2、-NO2、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換3〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、または-NR7R8であってもよい。
【0076】
または、R1はH、置換もしくは無置換(C1-C10)アルキル、置換もしくは無置換2〜10員ヘテロアルキル、または置換もしくは無置換アリールであってもよい。R1はH、メチル、-NH2、または無置換フェニルであってもよい。
【0077】
R2はH、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、または置換もしくは無置換アリールであってもよい。R2はH、Cl、メチル、-OCH3、または無置換ピリジニルであってもよい。いくつかの態様において、R2はHまたは-OCH3である。
【0078】
R3はH、-NH2、-NO2、ハロゲン、置換もしくは無置換(C1-C10)アルキル、置換もしくは無置換2〜10員ヘテロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールであってもよい。R3はH、-NH2、-NO2、Cl、Br、F、メチル、フェニル、フルオロフェニル、-CF3、-OCH3、ジメチルアミノ、無置換ピペリジン、p-メチルモルホリノ、無置換ピロリジノニル、無置換2-チオフェニル、無置換3-チオフェニル、無置換フラニル、またはn-メチルピペリジニルであってもよい。
【0079】
または、R3はClまたは-NR7R8であり、ここでR7およびR8は上で定義したとおりである。
【0080】
R3はR3はCl、-NH2、-N(CH3)2

であるから選択されてもよい。
【0081】
いくつかの態様において、Xは結合である。関連する態様において、kは2である。さらに関連する態様において、R2はHまたは-OCH3である。
【0082】
他の態様において、YはNHである。関連する態様において、tは1である。さらに関連する態様において、Bは

である。R3は上の式(II)の説明において定義したとおりである。もう一つの関連する態様において、Bは

である。
【0083】
記号Yは結合を意味していてもよい。関連する態様において、kは1である。もう一つの関連する態様において、R2はHである。
【0084】
XはNHであってもよい。いくつかの関連する態様において、Aは

である。R1およびsは上の式(III)の説明において定義したとおりである。もう一つの関連する態様において、Aは

である。
【0085】
いくつかの態様において、本発明の化合物のために前述した置換部分はそれぞれ、少なくとも一つの置換基で置換されている。本明細書において用いられる「置換基」なる用語は、上の「略語および定義」の項で詳細に定義している。より具体的には、いくつかの態様において、前述の置換アルキル、置換ヘテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、および/または置換ヘテロアリールはそれぞれ、少なくとも一つの置換基で置換されている。置換基はそれぞれ任意に異なる。他の態様において、これらの基の少なくとも一つまたはすべては少なくとも一つのサイズ限定置換基で置換されている。または、これらの基の少なくとも一つまたはすべては少なくとも一つの低級置換基で置換されている。サイズ限定置換基および低級置換基はいずれも、上の「略語および定義」の項で詳細に定義している。
【0086】
他の態様において、置換または無置換アルキルはそれぞれ置換または無置換C1-C20アルキルであり、置換または無置換ヘテロアルキルはそれぞれ置換または無置換2〜20員ヘテロアルキルである。
【0087】
または、置換または無置換アルキルはそれぞれ置換または無置換C1-C8アルキルであり、置換または無置換ヘテロアルキルはそれぞれ置換または無置換2〜8員ヘテロアルキルである。
【0088】
もう一つの態様において、本発明は多価金属イオン(例えば、鉄、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、およびニッケル)および金属イオンキレート剤の多座成分を含む金属錯体調節剤を提供する。多座成分は本発明の化合物(例えば、式(I)、(II)、または(III)の化合物)である。本発明の金属錯体はカリウムイオンチャネル調節剤である。
【0089】
いくつかの態様において、金属錯体調節剤は下記の構造を有する

【0090】
式(IV)において、Mは多価金属イオン(例えば、鉄、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、およびニッケル)である。W2およびZ2は-N=である。W1、Z1、R1、R2、R3、X、Y、s、k、t、A、およびBは上の式(I)の化合物の説明において定義したとおりである。
【0091】
同様に本発明の範囲内に含まれるものは、例えば、本発明の化合物の二量体、三量体、四量体およびより高級の同族体またはその反応性類縁体などの種を含む多価(poly- or multi-valent)種として機能する、本発明の化合物である。多価種は本発明の単一の種または複数の種から組み立てることができる。例えば、二量体構成物は「ホモ二量体」または「ヘテロ二量体」でありうる。さらに、本発明の化合物またはその反応性類縁体がオリゴマーまたはポリマーの枠組み(例えば、ポリリシン、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプンなど)に結合されている多価構成物は、本発明の範囲内である。枠組みは好ましくは多官能性(すなわち、本発明の化合物を結合するための多くの反応性部位を有している)である。さらに、枠組みは本発明の単一の種または本発明の複数の種で誘導体化することもできる。
【0092】
カリウムイオンチャネル調節剤の調製
下記の例示的スキームは本発明の調節剤の調製法を示す。これらの方法は、示した化合物の生成に限定されるものではなく、前述の化合物および錯体などの様々な調節剤を調製するために用いることができる。本発明の調節剤はスキームに明確に示されていない方法によっても生成することができるが、これらは当業者の技術範囲内である。調節剤は容易に入手可能な出発原料または公知の中間体を用いて調製することができる。
【0093】
下記のスキームにおいて、記号YはCH2、N、S、およびOから独立に選択される。記号DはH、-OH、-NH2、-NO2、-SO2NH2、ハロゲン、シアノ、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換3〜7員シクロアルキル、置換または無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換または無置換アリール、および置換または無置換ヘテロアリールから独立に選択される。記号pは1〜5から独立に選択される整数である。記号qは0〜5から独立に選択される整数である。
【0094】
本発明のピリミジニル化合物の置換基は、スキーム1〜8に概略を示す方法を通じて生成することができる。
【0095】
一つの態様において、スキーム1〜6に示すとおり、本発明の置換基はアミノ置換ヘテロアリール部分を含む。
【0096】

【0097】
スキーム1において、化合物1をベンジルアミンと反応させた後、濃硫酸中で脱ベンジル化を行って2を生成する。
【0098】
化合物2を生成するための代替経路をスキーム2に示す。
【0099】

【0100】
スキーム2において、化合物3を還元して化合物2を生成する。
【0101】
スキーム3〜6に示すとおり、置換基をアミノ置換ヘテロアリール部分に付加することができる。
【0102】

【0103】
スキーム3において、化合物4をヨウ素化してハロ置換2-アミノ-アザ-複素環5を生成する。この化合物をボロン酸6とトルエン、エタノール、および水中、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd2(dba)3)存在下で反応させて、2を生成する。
【0104】
もう一つの例において、下記の様式でアミノ置換基をヘテロアリール部分に付加することができる。
【0105】

【0106】
スキーム4において、ヨード置換2-アミノ-アザ-複素環5をアミン7またはアミドと銅触媒カップリング化学を用いて反応させ、2-アミノ-アザ-複素環8を生成する。
【0107】

【0108】
スキーム5において、ブロモ置換2-ニトロ-アザ-複素環9をアミン7またはアミドとパラジウム触媒カップリング化学を用いて反応させ、アミノ置換2-ニトロ-アザ-複素環10を生成する。ニトロ付加物をパラジウム触媒水素添加により還元してアミノ付加物8とする。
【0109】

【0110】
スキーム6において、ブロモ置換2-ニトロ-アザ-複素環9をアミン7またはアミドと銅触媒カップリング化学を用いて反応させ、アミノ置換2-ニトロ-アザ-複素環10を生成する。ニトロ付加物をパラジウム触媒水素添加により還元してアミノ付加物8とする。
【0111】
一つの態様において、スキーム7に示すとおり、本発明の置換基はハロ置換ヘテロアリール部分を含む。
【0112】

【0113】
スキーム7において、化合物11または2または8をハロゲンを含む酸存在下、0℃で、ジアゾ化と、続いて亜硝酸ナトリウムによりハロゲン化して、化合物12を生成する。
【0114】
もう一つの態様において、スキーム8に示すとおり、本発明の置換基はスタンニル置換ヘテロアリール部分を含む。
【0115】

【0116】
スキーム8において、化合物13をn-ブチルリチウムでスタンニル化して、化合物14を生成する。
【0117】
スキーム9に概略を示す方法により、スタンニル置換およびハロ置換ヘテロアリール部分を本発明のピリミジン化合物に付加することができる。
【0118】

【0119】
スキーム9において、化合物14をトルエン中、パラジウム触媒存在下で、2,4-ジクロロピリジン15に付加することにより、化合物16を生成する。
【0120】
化合物16を生成する代替法をスキーム10に示す。
【0121】

【0122】
スキーム10において、化合物12または14をn-ブチルリチウム存在下で2-クロロピリミジン17と反応させて、16を生成する。
【0123】
スキーム11に概略を示す方法により、アミノ置換ヘテロアリール部分を本発明のピリミジン化合物に付加することができる。
【0124】

【0125】
スキーム11において、化合物2または8を水素化ナトリウムと混合し、2または8の化合物15への求核付加を促進して、化合物18を生成する。
【0126】
スキーム12の方法からビス置換ピリミジンを生成する。
【0127】

【0128】
スキーム12において、化合物2または8を水素化ナトリウムと混合し、2または8の化合物16への求核付加を促進する。最終生成物はビス置換ピリミジン19である。
【0129】
本発明のビス置換ピリミジン化合物を生成する代替法をスキーム13に示す。
【0130】

【0131】
スキーム13において、化合物14をトルエン中、パラジウム触媒存在下で、化合物18に付加して、ビス置換ピリミジン20の塩酸塩を生成する。
【0132】
縮合芳香環を伴う置換ピリミジンの生成法をスキーム14に記載する。
【0133】

【0134】
スキーム14において、化合物21をTHF中、トリエチルアミン存在下で反応させて、化合物23を生成する。
【0135】
スキーム15に概略を示す方法により、ピリミジン環を生成することができる。
【0136】

【0137】
スキーム15において、塩基を加えて化合物23の分子内閉環を起こし、化合物24を生成する。
【0138】
スキーム16に概略を示す方法により、ピリミジン環の4位のOHを塩素に変換することができる。
【0139】

【0140】
スキーム16において、化合物24をオキシ塩化リンと反応させて、化合物25を生成する。
【0141】
スキーム17に示すとおり、ピリミジン環の4位に新しい置換基を付加することができる。
【0142】

【0143】
スキーム17において、化合物2または8を水素化ナトリウムと混合し、2または8の化合物25への求核付加を促進する。生成物はビス置換ピリミジン26である。
【0144】
縮合芳香環を伴う置換ピリミジンを生成する代替法をスキーム18に記載する。
【0145】

【0146】
化合物27をスタンニル誘導体14と反応させて化合物28を生成する。次いで、化合物28を化合物2または8と反応させる。生成物はビス置換ピリミジン29である。
【0147】
本発明の化合物は金属錯体も含む。これらの金属錯体は多価金属イオンおよび本発明のピリミジニル化合物を含む。例示的態様において、多価金属イオンは遷移金属でありうる。もう一つの例示的態様において、多価金属イオンは鉄、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、およびニッケルから選択される構成員である。
【0148】
本発明の金属-ピリミジニウム錯体の調製法の概略をスキーム23に示す。
【0149】

【0150】
スキーム19において、化合物19もしくは20もしくは26もしくは29、またはその組み合わせをまずエーテル中でFeClO4と混合する。この混合物にトリエチルアミンを加え、これが次いで金属錯体30を生成する。
【0151】
III. カリウムイオンチャネル調節剤のアッセイ
SK単量体ならびにSKアレルおよび多形変異体はカリウムイオンチャネルのサブユニットである。SKサブユニットを含むカリウムイオンチャネルの活性を、様々なインビトロおよびインビボアッセイを用いて、例えば、電流を測定する、膜電位を測定する、イオン流、例えばカリウムまたはルビジウムを測定する、カリウム濃度を測定する、セカンドメッセンジャーおよび転写レベルを測定する、カリウム依存性酵母増殖アッセイを用いる、ならびに例えば電位感受性色素、放射性トレーサー、およびパッチクランプ電気生理学を用いることにより、評価することができる。
【0152】
さらにそのようなアッセイを用いて、SKを含むチャネルの阻害剤および活性化剤について調べることができる。チャネルのSKファミリーは治療または予防法の標的であるいくつかの障害に関係するとされており、これらの方法はSKチャネルファミリーの一つまたは複数の構成員の遮断または阻害によってはたらく。本発明の調節剤および方法は、中枢または末梢神経系障害(例えば、偏頭痛、運動失調、パーキンソン病、双極性障害、三叉神経痛、痙縮、気分障害、脳腫瘍、精神病性障害、筋波動症、発作、てんかん、聴力および視力損失、精神病、不安、うつ病、痴呆、記憶および注意欠乏、アルツハイマー病、加齢性記憶喪失、学習障害、不安、外傷性脳傷害、月経困難、睡眠発作および運動ニューロン疾患)を処置するために有用である。本発明の調節剤は、胃食道逆流障害および胃腸低運動障害、過敏性腸症候群、分泌性下痢、喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患および鼻漏、痙攣、血管痙攣、冠動脈痙攣、腎障害、腎嚢胞、膀胱痙攣、尿失禁、膀胱流出閉塞、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈性心疾患、レイノー病、間欠性跛行、シェーグレン症候群、不整脈、高血圧、筋緊張性筋ジストロフィー、口内乾燥、II型糖尿病、高インスリン血症、早期分娩、脱毛症、癌、ならびに免疫抑制などの疾患状態の処置においても有用である。
【0153】
カリウムイオンチャネルの調節剤を、組換えもしくは天然いずれかの生物活性SKを用いて、またはSKチャネルを発現している神経系由来細胞のような自然の細胞を用いて試験する。SKチャネルを単離する、細胞中で同時発現もしくは発現させる、または細胞由来の膜において発現させることができる。そのようなアッセイにおいて、SKを単独で発現させてホモマーのカリウムイオンチャネルを生成するか、または第二のサブユニット(例えば、もう一つのSKファミリー構成員)と同時発現させて、ヘテロマーのカリウムイオンチャネルを生成する。前述のインビトロまたはインビボアッセイの一つを用いて、調節を試験する。カリウムイオンチャネル阻害剤または活性化剤の可能性があるもので処理した試料またはアッセイを、試験調節剤なしの対照試料と比較して、調節の程度を調べる。対照試料(活性化剤または阻害剤で未処理)を相対カリウムイオンチャネル活性値100に割り付ける。SKを含むチャネルの阻害は、対照に対するカリウムイオンチャネル活性値が70%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満の場合に得られる。イオン流を低減する調節剤は、SKを含むチャネルが開く確率を低下させること、チャネルのコンダクタンスを低下させること、およびチャネルの数または発現を低減することにより、イオン電流密度の検出可能な低下を引き起こすことになる。
【0154】
イオン流の変化を、カリウムイオンチャネルを発現している細胞または膜の分極(すなわち、電位)の変化を調べることにより評価してもよい。細胞分極の変化を調べるための好ましい手段は、電圧固定およびパッチクランプ法により、「細胞結合」モード、「インサイドアウト」モード、「アウトサイドアウト」モード、「穿孔細胞」モード、「1または2電極」モード、または「ホールセル」モードを用いて、電流または電圧の変化を測定することによる(例えば、Ackerman et al., New Engl. J. Med. 336: 1575-1595 (1997)参照)。ホールセル電流は、標準の方法を用いて都合よく測定することができる(例えば、Hamil et al., Pflugers. Archiv. 391: 85 (1981)参照)。他の公知のアッセイには下記が含まれる:放射性同位体標識ルビジウムフラックスアッセイおよび電位感受性色素を用いた蛍光アッセイ(例えば、Vestergarrd-Bogind et al., J. Membrane Biol. 88: 67-75 (1988); Daniel et al., J. Pharmacol. Meth. 25: 185-193 (1991); Holevinsky et al., J. Membrane Biology 137: 59-70 (1994)参照)。チャネルタンパク質を通ってのカリウム流を阻害または増大することができる調節剤のアッセイは、本発明のチャネルを有する細胞に接触し、かつそのような細胞を含むバス溶液に調節剤を適用することにより実施することができる(例えば、Blatz et al., Nature 323: 718-720 (1986); Park, J. Physiol. 481: 555-570 (1994)参照)。一般に、試験する調節剤は約1pM〜約100mM、好ましくは約1pM〜約1μMの範囲で存在する。
【0155】
試験調節剤のチャネル機能に対する効果は、電流またはイオン流の変化により、または電流またはイオン流の変化の結果により測定することができる。電流またはイオン流の変化は、カリウムまたはルビジウムイオンなどのイオンの流れの増加または減少いずれかによって測定する。カチオンは様々な標準的方法で測定することができる。これらはイオンの濃度変化により直接、または膜電位もしくはイオンの放射性同位体標識により間接的に測定することができる。試験調節剤のイオン流に対する結果は大きくばらつくことがある。したがって、試験調節剤の本発明のチャネルに対する影響を評価するために、いかなる適当な生理的変化も用いることができる。試験調節剤の効果は毒素結合アッセイによって測定することができる。機能的結果を完全な細胞または動物を用いて調べる場合、伝達物質放出(例えば、ドーパミン)、ホルモン放出(例えば、インスリン)、公知および特徴づけされていない遺伝子マーカーへの転写変化(例えば、ノーザンブロット)、細胞容積変化(例えば、赤血球の)、免疫応答(例えば、T細胞活性化)、細胞成長またはpH変化などの細胞代謝における変化、ならびにカルシウムおよび環状ヌクレオチドなどの細胞内セカンドメッセンジャーなどの様々な効果を測定することもできる。
【0156】
IV. カリウムイオンチャネル調節剤として用いるための薬学的組成物
もう一つの局面において、本発明は、薬学的に許容される担体および本発明の調節剤(例えば、本発明の化合物または本発明の錯体)を含む薬学的組成物を提供する。
【0157】
調節剤の製剤
本発明の調節剤は様々な経口、非経口および局所剤形で調製および投与することができる。したがって、本発明の調節剤は注射により、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内に投与することができる。同様に、本明細書に記載の調節剤は吸入により、例えば、鼻腔内に投与することもできる。加えて、本発明の調節剤は経皮投与することもできる。したがって、本発明は薬学的に許容される担体と、調節剤、または調節剤の薬学的に許容される塩のいずれかとを含む薬学的組成物も提供する。
【0158】
本発明の調節剤から薬学的組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は固体または液体のいずれでもよい。固体製剤には散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤が含まれる。固体担体は一つまたは複数の物質であってもよく、これらは希釈剤、着香料、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としてもはたらきうる。
【0159】
散剤では、担体は細かく分割された固体であり、これは細かく分割された活性成分との混合物である。錠剤では、活性成分を必要な結合性を有する担体と、適当な比率で混合し、所望の形状およびサイズに圧縮する。
【0160】
散剤および錠剤は好ましくは5%または10%〜70%の活性調節剤を含む。適当な担体は炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂などである。「製剤(preparation)」なる用語は、活性調節剤と、他の担体を伴う、または伴わない活性成分が担体で囲まれ、したがってそれと結合しているカプセルを提供する、担体としてのカプセル化材料との製剤(formulation)を含むことが意図される。同様に、カシェ剤およびロゼンジ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびロゼンジ剤を、経口投与に適した固体剤形として用いることができる。
【0161】
坐剤を調製するために、脂肪酸グリセリドまたはカカオ脂などの低融点ワックスをまず融解させ、活性成分を撹拌しながらその中に均質に分散させる。次いで、融解した均質混合物を好都合なサイズの型に注ぎ、冷却し、それにより固化する。
【0162】
液体製剤には、液剤、懸濁剤、および乳剤、例えば、水または水/プロピレングリコール溶液が含まれる。非経口注射のために、液体製剤を水性ポリエチレングリコール溶液中で製剤することができる。
【0163】
経口使用に適した水溶液は活性成分を水に溶解し、必要に応じて適当な着色料、着香料、安定化剤、および増粘剤を加えることにより調製することができる。経口使用に適した水性懸濁液は、細かく分割された活性成分を、天然または合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の周知の懸濁化剤などの粘稠媒質と共に、水に分散させることによって調製することができる。
【0164】
同様に含まれるものは固体製剤で、これらは使用直前に経口投与用の液体製剤に変換されることが意図される。そのような液体剤形には、液剤、懸濁剤、および乳剤が含まれる。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色料、着香料、安定化剤、緩衝剤、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含んでいてもよい。
【0165】
薬学的製剤は、好ましくは、単位用量剤形である。そのような剤形において、製剤は適当な量の活性成分を含む単位用量に細分される。単位用量剤形は包装された製剤であってもよく、この包装は小単位に分けられた錠剤、カプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の散剤などの、個別に分けられた量の製剤を含む。また、単位用量剤形はカプセル剤、錠剤、カシェ剤、もしくはロゼンジ剤自体であってもよく、またはこれらのいずれかの適当な数が包装された形であってもよい。
【0166】
単位用量製剤中の活性成分の量はばらつきがあってもよく、または特定の適用および活性成分の効力に応じて、0.1mg〜10000mg、より典型的には1.0mg〜1000mg、最も典型的には10mg〜500mgに調節してもよい。組成物は、望まれる場合には、他の適合性治療薬を含むこともできる。
【0167】
V. カリウムイオンチャネルにおけるイオン流を低減する方法
さらにもう一つの局面において、本発明は、細胞内のカリウムイオンチャネルを通過するイオン流を低減する方法であって、細胞を本発明の調節剤のカリウムイオンチャネル調節量と接触させる段階を含む方法を提供する。
【0168】
例示的態様において、カリウムイオンチャネルは少なくとも一つのSKサブユニットを含む。
【0169】
本発明の本局面において提供される方法は、カリウムイオン流を通じて仲介される状態の治療において、ならびにカリウムイオンチャネルを通過するイオン流の低減によって処置することができる状態を診断するために有用である。加えて、この方法は、患者がカリウムイオンチャネルを調節することにより作用する治療薬に反応性であるかどうかを調べるためにも有用である。特に、患者の細胞試料を採取して前述のカリウムイオンチャネル調節剤と接触させ、イオン流を調節剤非存在下での細胞のイオン流と比べて測定することができる。イオン流の低減は典型的には、患者が調節剤の治療法に反応性であることを示している。
【0170】
VI. カリウムイオンチャネルにより仲介される状態の処置法
さらにもう一つの局面において、本発明は、カリウムイオンチャネルを通過するカリウムイオン流の調節を通じて疾患を処置する方法を提供する。調節はカリウムイオン流の活性化または阻害でありうる。したがって、本発明の調節剤は、カリウムイオンチャネルを通過するカリウムイオン流の阻害剤(すなわち、調節剤非存在下に比べてイオン流を低減する)の場合もあり、またはカリウムイオンチャネルを通過するカリウムイオン流の活性化剤(すなわち、調節剤非存在下に比べてイオン流を増大する)の場合もある。
【0171】
調節剤は中枢または末梢神経系障害(例えば、偏頭痛、運動失調、パーキンソン病、双極性障害、三叉神経痛、痙縮、気分障害、脳腫瘍、精神病性障害、筋波動症、発作、てんかん、聴力および視力損失、精神病、不安、うつ病、痴呆、記憶および注意欠乏、アルツハイマー病、加齢性記憶喪失、学習障害、不安、外傷性脳傷害、月経困難、睡眠発作、ならびに運動ニューロン疾患)の処置において、および神経保護物質(例えば、卒中などを予防するため)として有用である。本発明の調節剤は、胃食道逆流障害および胃腸低運動障害、過敏性腸症候群、分泌性下痢、喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患および鼻漏、痙攣、血管痙攣、冠動脈痙攣、腎障害、腎嚢胞、膀胱痙攣、尿失禁、膀胱流出閉塞、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈性心疾患、レイノー病、間欠性跛行、シェーグレン症候群、不整脈、高血圧、筋緊張性筋ジストロフィー、口内乾燥、II型糖尿病、高インスリン血症、早期分娩、脱毛症、癌、ならびに免疫抑制などの疾患状態の処置においても有用である。この方法は、患者に本発明の調節剤(本発明の化合物または錯体)の有効量(例えば、治療上有効な量)を投与する段階を含む。
【0172】
したがって、本発明は、細胞内のカリウムイオンチャネルを通過するイオン流を低減する方法を提供する。この方法は、細胞を本発明の調節剤のカリウムイオンチャネル調節量と接触させる段階を含む。いくつかの態様において、カリウムイオンチャネルは少なくとも一つのSKサブユニットを含む。細胞は単離されていてもよく、または臓器もしくは生物の一部を形成していてもよい。
【0173】
本明細書において提供される調節剤は、疾患または状態の処置において、カリウムイオンチャネルの調節を介して治療的に用いられている。典型的に調節されるカリウムイオンチャネルは本明細書に記載されている。前述のとおり、これらのチャネルはホモ多量体およびヘテロ多量体を含みうる。
【0174】
神経学的状態を処置するための治療的使用において、本発明の薬学的方法において用いる調節剤は、1日に約0.001mg/kgから約1000mg/kgの初期用量で用いる。約0.1mg/kg〜約100mg/kgの1日用量範囲がより典型的である。しかし、用量は患者の要求、処置中の状態の重症度、および用いる調節剤に応じて変動することがある。特定の状況に適した用量の決定は、医師の技術範囲内である。一般に、処置は調節剤の最適用量よりも少ない低用量で開始する。その後、その状況下で最適な効果が得られるまで用量を少しずつ増量する。便宜上、1日合計用量を分割し、1日に数回で投与してもよい。
【0175】
本発明の材料および方法を、以下の実施例によってさらに説明する。これらの実施例は特許請求の範囲を例示するために提供するもので、限定するものではない。
【0176】
実施例
一般
以下の実施例において、特に記載がないかぎり、温度は摂氏度(℃)で示す;操作は室温または周囲温度、「rt」または「RT」(典型的には約18〜25℃の範囲)で行った;溶媒の蒸発は減圧下(典型的には4.5〜30mmHg)、浴温60℃までで、ロータリーエバポレーターを用いて行った;反応経過は典型的には薄層クロマトグラフィ(TLC)によって追跡したが、反応時間は例示のために示すにすぎない;融点は未補正である;生成物は満足できる1H-NMRおよび/または微量分析データを示した;収率は例示のために示すにすぎない;以下の通常の略語も用いる:mp(融点)、L(リットル)、mL(ミリリットル)、mmol(ミリモル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、min(分)、およびh(時間)。
【0177】
特に記載がないかぎり、すべての溶媒(HPLC等級)および試薬は供給会社から購入し、それ以上精製せずに用いた。反応は特に記載がないかぎりアルゴンブランケット下で行った。TLCはWhatman Inc. 60シリカゲルプレート(厚さ0.25mm)で実施した。化合物はUVランプ(254nM)下、またはKMnO4/KOH、ニンヒドリンもしくはHanessian's液で展開することにより可視化した。フラッシュクロマトグラフィはSelectro Scientific(粒径32〜63)からのシリカゲルを用いて行った。1H NMR、19F NMRおよび13C NMRスペクトルはVarian 300装置によりそれぞれ300MHz、282MHzおよび75.7MHzで記録した。融点はElectrothermal IA9100装置で記録し、未補正とした。
【0178】
実施例1
1から2の調製
1.1 求核置換
1(14.7mmol)およびベンジルアミン(75mmol)の混合物を密封試験管中220℃で6h加熱した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、N-ベンジルピリジン-2-アミン(7.0mmol)を得た。
【0179】
N-ベンジルピリジン-2-アミン(6.9mmol)の濃H2SO4(15mL)溶液を80℃で1h撹拌した。反応混合物を砕氷に注ぎ、28%NH4OHで中和した。混合物をAcOEtで抽出し、有機相を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、2(5.0mmol)を得た。
【0180】
1.2 結果
構造2の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0181】
1.2.a 5-ヘキシルピリジン-2-イルアミン

【0182】
1.2.b 5-tert-ブチルピリジン-2-イルアミン

【0183】
1.2.c 5-[2-(ベンジルオキシ)エチル]ピリジン-2-イルアミン

【0184】
1.2.d 1-(6-アミノピリジン-3-イル)-4-メチルピペラジン-2-オン

【0185】
実施例2
3から2の調製
2.1 接触還元
3(15mmol)およびPd/C(10%)(0.5g)のメタノール(150mL)溶液または懸濁液をH2(1atm)雰囲気下で終夜撹拌した。セライトを通してろ過した後、溶液を減圧濃縮し、2(15mmol)を得た。
【0186】
実施例3
2の調製
3.1 4のヨウ素化
水(60mL)、濃H2SO4(4mL)、および酢酸(200mL)中の4(240mmol)、HIO4(58mmol)、およびI2(240mmol)の混合物を80℃で4h撹拌した。過剰のI2を飽和Na2S2O3溶液(200mL)の添加により中和した。得られた水溶液をEtOAcで抽出した。有機相を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、5(136mmol)を得た。
【0187】
3.2 鈴木クロスカップリング
トルエン(40mL)、エタノール(20mL)、および水(20mL)中の5(15mmol)、6(15mmol)、Pd2(dba)3(0.35mmol)、およびPPh3(2.4mmol)の混合物をN2雰囲気下で終夜還流した。反応混合物を酢酸エチル(300mL)で希釈し、有機溶液を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、2(13.1mmol)を得た。
【0188】
3.3 結果
構造2の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0189】
3.3.a 5-(2-メトキシ-フェニル)-ピリジン-2-イルアミン

【0190】
3.3.b (5-メチル-フラン-2-イル)-ピリジン-2-イルアミン

【0191】
3.3.c [3,3']ビピリジニル-6-イルアミン

【0192】
3.3.d 5-(4-フルオロ-フェニル)-4-メチル-ピリジン-2-イルアミン

【0193】
3.3.e 5-(3-フルオロ-フェニル)-ピリジン-2-イルアミン

【0194】
3.3.f 5-チオフェン-2-イル-ピリジン-2-イルアミン

【0195】
実施例4
5から8の調製
4.1 ウルマンクロスカップリング
5(50.0mmol)および7(60.0mmol)の1,4-ジオキサン(50.0mL)溶液に、ヨウ化銅(I)(0.500mmol)と、続いてK3PO4(100mmol)およびtrans-シクロヘキサンジアミン(5mmol)を加え、次いで得られた混合物を100℃で16h撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、H2O(500mL)で希釈した。得られた水溶液をCHCl3で抽出した。有機相を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製して、8(43.4mmol)を得た。
【0196】
4.2 結果
構造8の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0197】
4.2.a 4-(6-アミノピリジン-3-イル)-3-オキソピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル

【0198】
4.2.b 5-(4-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル)ピリジン-2-イルアミン

【0199】
4.2.c 4-(6-アミノピリジン-3-イル)-1-メチル-1,4-ジアゼパン-5-オン

【0200】
4.2.d 4-(6-アミノピリジン-3-イル)-5-オキソ-1,4-ジアゼパン-1-カルボン酸tert-ブチル

【0201】
実施例5
8の調製
5.1 ブッフバルトクロスカップリング
9(30mmol)、7(30mmol)、Pd2(dba)3(0.04mmol)、rac-2,2'-ビス(フェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル(BINAP)(0.08mmol)、およびCs2CO3(42mmol)の無水トルエン(100mL)の混合物をN2雰囲気下、80℃で2日間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(400mL)で希釈し、有機溶液を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル中で結晶化して、10(15.8mmol)を得た。
【0202】
10(15mmol)およびPd/C(10%)(0.5g)のメタノール(150mL)溶液または懸濁液をH2(1atm)雰囲気下で終夜撹拌した。セライトを通してろ過した後、溶液を減圧濃縮して8(15mmol)を得た。
【0203】
5.2 結果
構造8の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0204】
5.2.a 5-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)-ピリジン-2-イルアミン

【0205】
5.2.b 4-メチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-[1,3']ビピリジニル-6'-イルアミン

【0206】
5.2.c 1-(6-アミノピリジン-3-イル)-ピロリジン-2-オン

【0207】
5.2.d 1-(6-アミノピリジン-3-イル)ピペリジン-2-オン

【0208】
5.2.e 1-(6-アミノピリジン-3-イル)ピペリジン-4-オール

【0209】
5.2.f 5-ピペリジン-1-イルピリジン-2-イルアミン

【0210】
5.2.g 5-(4-イソプロピルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イルアミン

【0211】
5.2.h 4-(6-アミノピリジン-3-イル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル

【0212】
5.2.i 1-(6-アミノピリジン-3-イル)-4-メチルピペラジン-2-オン

【0213】
5.2.j 5-[3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル]ピリジン-2-イルアミン

【0214】
5.2.k N5-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イルピリジン-2,5-イルジアミン

【0215】
5.2.l 5-(2,4,5-トリメチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イルアミン

【0216】
5.2.m N5-メチル-N5-(1-メチルピロリジン-3-イル)ピリジン-2,5-イルジアミン

【0217】
5.2.n 5-(3-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イルアミン

【0218】
5.2.o 5-(3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イルアミン

【0219】
5.2.p N5-(2-メトキシエチル)-N5-メチルピリジン-2,5-イルジアミン

【0220】
5.2.q 5-(4-メトキシピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イルアミン

【0221】
実施例6
8の調製
6.1 ウルマンクロスカップリング
9(24.6mmol)および7(27.3mmol)の1,4-ジオキサン(50mL)溶液に、ヨウ化銅(I)(4.92mmol)と、続いてK3PO4(49.2mmol)およびtrans-シクロヘキサンジアミン(4.92mmol)を加え、次いで得られた混合物を100℃で12h撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣をCHCl3で希釈し、水に注ぎ、不溶性材料をセライトろ過により除去した。ろ液をCHCl3で抽出し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製して、ニトロ誘導体(7.87mmol)を得た。
【0222】
ニトロ誘導体(7.66mmol)およびPd/C(10%)(0.5g)のメタノール(150mL)溶液をH2(1atm)雰囲気下で終夜撹拌した。セライトを通してろ過した後、溶液を減圧濃縮して8(4.75mmol)を得た。
【0223】
6.2 結果
構造8の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0224】
6.2.a 4-(6-アミノピリジン-3-イル)-1-ベンジル-1,4-ジアゼパン-5-オン

【0225】
実施例7
12の調製
7.1 ハロゲン化
11(30.7mmol)および臭素(5mL)の臭化水素酸(48%)(48mL)溶液を0℃に冷却し、これにNaNO2水溶液(25M)(24mL)を加えた。混合物をrtで1h撹拌した後、3M NaOH(145mL)で中和した。水溶液を酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製して、12(24.6mmol)を得た。
【0226】
7.2 結果
構造12の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0227】
7.2.a 2-ブロモ-5-クロロ-ピリジン

【0228】
7.2.b 2-ブロモ-5-(4-フルオロ-フェニル)-ピリジン

【0229】
実施例8
14の調製
8.1 スタンニル化
13(17.4mmol)の無水THF(60mL)溶液をN2雰囲気下で-78℃に冷却し、これにn-BuLi(ヘキサン中2.5M)(19.2mmol)を加え、得られた褐色溶液を30min撹拌した後、Bu3SnCl(20.9mmol)を加えた。反応混合物を室温に戻して終夜反応させた。飽和NH4Clで反応停止し、混合物を酢酸エチルで抽出した後、合わせた有機相を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、14(10.5mmol)を得た。
【0230】
8.2 結果
構造14の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0231】
8.2.a 4-メチル-2-トリブチルスタンナニル-ピリジン

【0232】
8.2.b 2-メトキシ-6-トリブチルスタンナニル-ピリジン

【0233】
8.2.c 5-メチル-2-トリブチルスタンナニル-ピリジン

【0234】
8.2.d 4-ピロリジン-1-イル-2-トリブチルスタンナニル-ピリジン

【0235】
実施例9
16の調製
9.1 一般法:スティルクロスカップリング
無水トルエン(4mL)中の15(0.3mmol)、14(0.36mmol)、およびPd(PPh3)4(0.015mmol)の混合物をN2雰囲気下、70℃で2日間撹拌した。飽和NH4Cl(10mL)で反応停止した。混合物をEtOAcで抽出した後、有機相を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、16(0.063mmol)を得た。
【0236】
9.2 結果
構造16の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0237】
9.2.a 2-クロロ-4-ピリジン-2-イルピリミジン

【0238】
実施例10
16の調製
10.1 一般法:求核付加および酸化
14(127mmol)の無水THF(400mL)溶液を-78℃に冷却し、これにn-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)(139mmol)を加え、溶液を30min撹拌した後、無水THF(100mL)中の17(139mmol)を10minかけて加えた。得られた混合物を室温に戻して終夜撹拌した。酢酸(10mL)で反応停止した。酸性混合物にDDQ(139mmol)を加え、得られた混合物を室温で2日間撹拌した後、飽和NaHCO3で反応停止した。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮して、16(62mmol)を得た。
【0239】
実施例11
18の調製
11.1 一般法
2または8(1.34mmol)の無水THF(20mL)溶液に、NaH(鉱油中60%)(2.68mmol)を加え、溶液を10min撹拌した後、15(1.34mmol)を加えた。得られた混合物をN2雰囲気下、還流点で1日撹拌し、飽和NH4Clで反応停止した。反応混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、有機溶液を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、18(0.48mmol)を得た。
【0240】
11.2 結果
構造18の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0241】
11.2.a (2-クロロ-ピリミジン-4-イル)-ピリジン-2-イル-アミン

【0242】
11.2.b (5-クロロ-ピリジン-2-イル)-(2-クロロ-ピリミジン-4-イル)-アミン

【0243】
実施例12
19の調製
12.1 一般法:求核置換
2または8(0.58mmol)の無水THF(20mL)溶液に、NaH(鉱油中60%)(1.05mmol)を加え、溶液を10min撹拌した後、16(0.53mmol)を加えた。得られた混合物をN2雰囲気下、還流点で16h撹拌し、次いで飽和NH4Clで反応停止した。反応混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、有機溶液を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、19(定量的収率)を得た。
【0244】
12.2 結果
構造19の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0245】
12.2.a (5-メトキシ-2-ピリジン-2-イル-ピリミジン-4-イル)-ピリジン-2-イル-アミン

【0246】
12.2.b (5-クロロ-ピリジン-2-イル)-(5-メトキシ-2-ピリジン-2-イル-ピリミジン-4-イル)-アミン・2HCl

【0247】
12.2.c (5-メトキシ-2-ピリジン-2-イル-ピリミジン-4-イル)-(5-ピロリジン-1-イル-ピリジン-2-イル)-アミン・2HCl

【0248】
12.2.d [5-(3-フルオロ-フェニル)-ピリジン-2-イル]-(5-メトキシ-2-ピリジン-2-イル-ピリミジン-4-イル)-アミン・2HCl

【0249】
12.2.e 1-[6-(5-メトキシ-2-ピリジン-2-イル-ピリミジン-4-イルアミノ)-ピリジン-3-イル]-ピロリジン-2-オン・2HCl

【0250】
12.2.f (5-メトキシ-2-ピリジン-2-イル-ピリミジン-4-イル)-[5-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)-ピリジン-2-イル]-アミン・3HCl

【0251】
12.2.g (5-メトキシ-2-ピリジン-2-イル-ピリミジン-4-イル)-(4-メチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-[1,3']ビピリジニル-6'-イル)-アミン・2HCl

【0252】
実施例13
20の調製
13.1 根岸クロスカップリング
無水THF(4mL)中の18(0.08mmol)、14(0.08mmol)、およびPd(PPh3)4(0.015mmol)の混合物をN2雰囲気下、還流温度で2日間撹拌した。飽和NH4Cl(10mL)で反応停止した。混合物をEtOAcで抽出した後、有機相を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、20(0.03mmol)を得た。
【0253】
13.2 結果
構造20の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0254】
13.2.a ピリジン-2-イル-(4-ピリジン-2-イル-ピリミジン-2-イル)-アミン

【0255】
13.2.b (5-クロロ-ピリジン-2-イル)-(4-ピリジン-2-イル-ピリミジン-2-イル)-アミン

【0256】
13.2.c (5-フェニル-ピリジン-2-イル)-(4-ピリジン-2-イル-ピリミジン-2-イル)-アミン

【0257】
実施例14
23の調製
14.1 一般法
22の対応するカルボン酸(20.0mmol)、SOCl2(15mL)、およびDMF(5滴)の混合物を60℃で3h撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した。粗製22のTHF(50mL)溶液に21(20mmol)およびEt3N(60mmol)を加え、室温で2h撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣を水およびAcOEtで希釈した。沈殿をろ取し、EtOHで洗浄して、23(1.1mmol)を得た。
【0258】
実施例15
24の調製
15.1 一般法
THF(20mL)およびt-BuOH(20mL)中の23(6.9mmol)の溶液にtBuOK(15mmol)を加え、80℃で2h撹拌した。反応混合物をNH4Cl(3g)で反応停止し、AcOEtで抽出した。有機相を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。残渣をAcOEt-n-ヘキサン(1:2)で洗浄して、24(6.1mmol)を得た。
【0259】
実施例16
25の調製
16.1 一般法
POCl3(15mL)中の24(5.5mmol)の混合物を120℃で1h撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、AcOEtおよびH2Oで希釈し、K2CO3で反応停止した。沈殿をろ取して、25(4.7mmol)を得た。
【0260】
16.2 結果
構造25の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0261】
16.2.a 4-クロロ-2-ピリジン-2-イルキナゾリン

【0262】
実施例17
26の調製
17.1 一般法
25(1.66mmol)のDMF(15mL)溶液に、室温で油中60%NaH(5mmol)および2または8(1.66mmol)を加え、得られた混合物を60℃で4h撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を水およびAcOEtで希釈した。混合物をAcOEtで抽出し、有機相を希HClで抽出した。水相をK2CO3でアルカリ性としてAcOEtで抽出し、次いで有機相を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、26の約1:1互変異性混合物(0.94mmol)を得た。
【0263】
17.2 一般法
構造26の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0264】
17.2.a N,2-ジピリジン-2-イルキナゾリン-4-アミンおよびN-[(4Z)-2-ピリジン-2-イルキナゾリン-4(3H)-イリデン]ピリジン-2-アミン(約1:1互変異性混合物)

【0265】
実施例18
29の調製
18.1 一般法
トルエン(20mL)中の27(3.0mmol)、14(3.0mmol)、およびPd(PPh3)4(0.09mmol)の混合物を100℃で20h撹拌した。反応混合物をAcOEtおよびH2Oで希釈し、セライトを通してろ過し、次いでAcOEtで抽出した。有機相を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、28(0.46mmol)を得た。
【0266】
18.2 結果
構造28の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0267】
18.2.a 2-クロロ-4-ピリジン-2-イルキナゾリン

【0268】
18.3 一般法
28(1.66mmol)のDMF(15mL)溶液に、室温で油中60%NaH(5mmol)および2または8(1.66mmol)を加え、得られた混合物を60℃で4h撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を水およびAcOEtで希釈した。混合物をAcOEtで抽出し、有機相を希HClで抽出した。水相をK2CO3でアルカリ性としてAcOEtで抽出し、次いで有機相を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製して、29(0.90mmol)を得た。
【0269】
18.4 結果
構造29の例示的化合物の分析データを以下に示す。
【0270】
18.4.a N,3-ジピリジン-2-イルキナゾリン-2-アミン

【0271】
実施例19
金属錯体30の調製
19.1 合成
エーテル中1.0M FeClO4(0.1mL)を20(0.2mmol)のEtOH溶液に60℃で加えた。ただちに白色沈殿が生じた。この混合物にトリエチルアミン(0.06mL)を加え、得られた混合物を20min撹拌した。混合物をrtまで冷却した後、白色沈殿をろ過して、30を得た。
【0272】
実施例20
20.1 hSKチャネルに対する化合物活性のアッセイ
SK様チャネルなどの小コンダクタンス、カルシウム活性化カリウムチャネルを発現する細胞に、86RbClを含む培地中での培養により、86Rb+を取り込ませた。取り込み後、培地を除去し、細胞をEBSS中で洗浄して、残留する86Rb+の痕跡を除去した。細胞を薬物(EBSS中0.01〜30μM)と共にプレインキュベートし、細胞を持続的に薬物存在下、イオノマイシンなどのカルシウムイオノフォアを補足したEBSS溶液に曝露することにより、86Rb+外向きフラックスを刺激した。適当な外向きフラックス期間の後、EBSS/イオノフォア溶液を細胞から除去し、86Rb+含有量をチェレンコフ計数(Wallac Trilux)で定量した。次いで、細胞をSDS溶液で溶解し、溶解物中の86Rb+含有量を求めた。86Rb+外向きフラックスのパーセントを、下記の式によって計算した:
(EBSS中の86Rb+含有量/(EBSS中の86Rb+含有量+溶解物中の86Rb+含有量))×100
【0273】
20.2 結果
このアッセイで試験した化合物を、それらのhSK2阻害活性と共に表1に示す。
【0274】
【表1】


記号:+は30μM>IC50>5.0μMを示し;++は5.0μM>IC50>1.0μMを示し;+++は1.0μM>IC50>0.1μMを示い;++++は0.1μM>IC50>0.0μMを示す。
【0275】
本明細書に記載の実施例および態様は例示のために示すにすぎず、当業者にはそれらに照らして様々な改変または変更が示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書において引用されるすべての出版物、特許、および特許出願はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有する化合物:

式中、
AおよびBは独立に置換または無置換5もしくは6員ヘテロシクロアルキル、または置換または無置換5もしくは6員ヘテロアリールであり、
W1

であり;
W2は-CH=、-NH-、-N=、または-O-であり;
Z1

であり;
Z2は-CH=、-NH-、-N=、または-O-であり;
Xは結合、-CH2-、または-NR4-であり;
Yは結合、-CH=N-NH-、-NH-CH2-、または-NR5-であり;
sおよびtは独立に1〜4の整数であり;
kは1〜2の整数であり;
R1、R2、およびR3は独立にH、-OH、-NO2、-SO2NH2、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換3〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、または-NR7R8であって、ここで、R7およびR8は独立にH、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールであって、ここでR7およびR8はそれらが結合している窒素と任意に結び付いて置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、または置換もしくは無置換ヘテロアリールを形成し;かつ
R4およびR5は独立にH、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換3〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールであり;
ここでsが1より大きい場合、それぞれのR1は任意に異なり;
ここでkが2である場合、それぞれのR2は任意に異なり;
ここでtが1より大きい場合、それぞれのR3は任意に異なり;
ここで2つのR1基はそれらが結合している原子と任意に結び付いて置換または無置換環を形成し;
ここで2つのR2基はそれらが結合している原子と任意に結び付いて置換または無置換環を形成し;かつ
ここで2つのR3基はそれらが結合している原子と任意に結び付いて置換または無置換環を形成する。
【請求項2】
Aが置換または無置換ピリジニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Bが置換または無置換ピリジニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R1、R2、およびR3が独立にH、-NH2、-NO2、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
R1がH、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、または置換もしくは無置換アリールであり;
R2がH、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、または置換もしくは無置換アリールであり;
R3がH、-NH2、-NO2、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールである、
請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R1がH、メチル、-NH2、または無置換フェニルであり;
R2がH、Cl、メチル、-OCH3、または無置換ピリジニルであり;かつ
R3がH、-NH2、-NO2、Cl、Br、F、メチル、フェニル、フルオロフェニル、-CF3、-OCH3、ジメチルアミノ、無置換ピペリジン、p-メチルモルホリノ、無置換ピロリジノニル、無置換2-チオフェニル、無置換3-チオフェニル、無置換フラニル、またはn-メチルピペリジニルである、
請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Xが結合であり、kが2であり、かつR2がHまたは-OCH3である、請求項2記載の化合物。
【請求項8】
Yが-NH-であり、tが1であり、かつBが

であって、
式中、
R3はH、-NH2、-NO2、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換3〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールである、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
R3がClまたは-NR7R8であって、ここで、R7およびR8は独立にH、ハロゲン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールであって、ここでR7およびR8はそれらが結合している窒素と任意に結び付いて置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、または置換もしくは無置換ヘテロアリールを形成する、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
R3がCl、-NH2、-N(CH3)2

である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
Yが-NH-であり、かつBが

である、請求項7記載の化合物。
【請求項12】
Yが結合であり、kが1であり、かつR2がHである、請求項3記載の化合物。
【請求項13】
Xが-NH-であり、かつAが

であり、
式中、
sは1〜4の整数であり;かつ
R1はH、ハロゲン、-NH2、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員シクロアルキル、置換もしくは無置換5〜7員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換ヘテロアリールである、
請求項12記載の化合物。
【請求項14】
Aが

である、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
多価金属イオンおよび金属イオンキレート剤の多座成分を含む金属錯体であって、多座成分が請求項1記載の化合物である金属錯体。
【請求項16】
多価金属イオンが鉄、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、およびニッケルから選択される、請求項15記載の錯体。
【請求項17】
細胞内のカリウムイオンチャネルを通過するイオン流を低減する方法であって、細胞を請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物または請求項15もしくは16のいずれか一項記載の金属錯体のカリウムイオンチャネル調節量と接触させる段階を含む方法。
【請求項18】
カリウムイオンチャネルが少なくとも一つのSKサブユニットを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
カリウムイオンチャネルの調節を通じて疾患を処置する方法であって、そのような処置を必要としている対象に請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物または請求項15もしくは16のいずれか一項記載の金属錯体の有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項20】
障害または状態が、中枢または末梢神経系障害、胃食道逆流障害(gastroesophogeal reflux disorder)、胃腸低運動障害、過敏性腸症候群、分泌性下痢、喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、鼻漏、痙攣、血管痙攣、冠動脈痙攣、腎障害、腎嚢胞、膀胱痙攣、尿失禁、膀胱流出閉塞(bladder outflow obstruction)、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈性心疾患、レイノー病、間欠性跛行、シェーグレン症候群、不整脈、高血圧、筋緊張性筋ジストロフィー、口内乾燥、II型糖尿病、高インスリン血症、早期分娩、脱毛症、癌、および免疫抑制から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
中枢または末梢神経系障害が、偏頭痛、運動失調、パーキンソン病、双極性障害、三叉神経痛、痙縮、気分障害、脳腫瘍、精神病性障害、筋波動症、発作、てんかん、聴力および視力損失、精神病、不安、うつ病、痴呆、記憶および注意欠乏、アルツハイマー病、加齢性記憶喪失、学習障害、不安、外傷性脳傷害、月経困難、睡眠発作、ならびに運動ニューロン疾患を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
薬学的に許容される担体および、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物または請求項15もしくは16のいずれか一項記載の金属錯体を含む薬学的組成物。

【公開番号】特開2008−247916(P2008−247916A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113282(P2008−113282)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【分割の表示】特願2007−508533(P2007−508533)の分割
【原出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(506344664)イカジェン インコーポレイテッド (3)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】