カリグラフィー用ペン形式の平面エレクトロスプレー・ソース及びその製造
本発明は、少なくとも1つの平坦かつ薄型の先端(3)を有する構造を持ち前記先端は当該構造の残りの部分(1)に対して片持ち梁となったエレクトロスプレー・ソースであって、先端(3)には、当該先端の全厚みを貫通して形成され、先端(3)の末端(6)で終結した、エレクトロスプレー・ソースの吐出オリフィスを形成する毛管スロット(5)に設けられ、エレクトロスプレー・ソースは、噴霧される液体を毛管スロット(5)に供給する手段(4)と、前記液体にエレクトロスプレー電圧を印加する手段とを備える。
本発明はさらに、エレクトロスプレー・ソースの製造方法に関する。
本発明はさらに、エレクトロスプレー・ソースの製造方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独自のエレクトロスプレー・ソース、その製造方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロスプレーは、高圧の作用で液体を噴霧状態に変換する現象である。(M.クロポー(M. CLOUPEAU)著,「電気力学機能モード:批判的論評」(Electrohydrodynamic spraying functioning modes: a critical review),ジャーナル・オブ・エアロゾル・サイエンス(Journal of Aerosol Science),1994年,25(6),p1021−l036)。このことを達成するために、液体は毛管内へ運ばれ、高圧の直流又は交流電流の電圧あるいはそれらを重ねたものが印加される。(Z.フネイティ(Z. HUNEITI)ら著,「液体ジェット導通に関する交流結合直流電場」(The study of AC coupled DC fields on conducting liquid jets),ジャーナル・オブ・エレクトロスタティクス(Journal of Electrostatics),1997年,40、41,p97−102)。毛管の出口で、液体は電圧の作用で噴霧化される。液体によって形成されたメニスカス(menisucus)の表面は、引き伸ばされて1つ又は複数のテイラー・コーン(Tailor cone)を形成し、そこから液体の荷電液滴が放出され、それが展開して荷電粒子を含むガスを生じる。噴霧状態の形成は、電圧印加による電気の力が、毛管の末端における断面上での液体の表面張力を補償し上回ったときに生じる。
【0003】
毛管、より厳密にはその出口オリフィスのサイズが、噴霧化現象を観測するための、毛管から出てくる液体の流れ、及び印加されるべき電圧に直接関与する。2つの別々のエレクトロスプレー動作条件が存在し、それらはそれぞれの確立特性によって区別される。
【0004】
・100μmの毛管出口サイズ、流体流量が1−20μL/分の範囲及び3〜4kVの高電圧に対応する、従来式と称する動作条件
【0005】
・流体流量が1μL/分未満、1kV前後の高電圧、毛管内経が1―10μmである、ナノエレクトロスプレーとして知られる動作条件(M.ウィルムら(M. WILM et al.)著,「ナノエレクトロスプレー・イオンソースの分析特性」(Analytical Properties of the Nanoelectrospray Ion Source),分析化学(Analytical Chemistry),1996年,68(1),p1−8)。
【0006】
交流成分を有する電圧の印加は、自己周波数への同期化によりエレクトロスプレー・プロセスの安定化を可能にする。(F.シャボニエールら(F. CHARBONNIER et al.)著,「コレクタ側での短絡の開設による,エレクトロスプレー・イオン化中における毛管法と対極法の間の差別化」(Differentiating between Capillary and Counter Electrode Methods during Electrospray lonization by Opening the Short Circuit at the Collector),分析化学(Analytical Chemistry),1999年,71(8),pl585−1591)。エレクトロスプレー現象により生成した滴の化学組成は、液体内に存在する種の化学修飾を電気化学によって可能にする複数で個別の電圧を印加することにより、そのアプリケーションを考慮して改善され得る。(米国特許出願第2003/0015656号明細書、ヴァン・バーケル(G. J. VAN BERKEL)著,薄型チャネル平面電極エミッタを用いたエレクトロスプレーにおける被分析物酸化の高度研究と制御(Enhanced Study and Control of Analyte Oxidation in Electrospray Using a Thin-Channel, Planar Electrode Emitter),分析化学(Analytical Chemistry),2002,74(19),p5047−5056、ヴァン・バーケルら(G. J. VAN BERKEL et al.)著,「エレクトロスプレーイオン化質量分析のための誘導体化 3.電気化学的にイオン化可能な誘導体」(Derivatization for electrospray ionization mass spectrometry. 3. Electrochemically ionizable derivatives),分析化学(Analytical Chemistry),1998年,70(8),p1544−1554、F.ザウら(F. ZHOU et al.)著,「エレクトロスプレー質量分析法とオンラインで統合した電気化学」(Electrochemistry Combined Online with Electrospray Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),1995年,67(20),p3643−3649参照のこと)。
【0007】
エレクトロスプレーの応用分野は以下の如くである。
【0008】
最初に、割合m/zの関数(mは被分析物の質量、zはその電荷である)としての分子の質量分析の前の、分子のイオン化である。この場合、液体の流れは連続的である。(M.ドールら(M.DOLE et al.)著,「マクロイオンの分子線」(Molecular beams of macroions),ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics),1968年,49(5),p2240−2249、L.L.マックら(L. L. MACK et al.)著,「マクロイオンの分子線II」(Molecular beams of macroions. II),ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics),1970年,52(10),p4977−4986、米国特許第4209696号明細書、M.山下ら(M. YAMASHITA et al.)著,「エレクトロスプレーイオンソース、自由噴流主題のもう1つのバリエーション」(Electrospray ion source. Another variation on the free-jet theme),ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(Journal of Physical Chemistry),1984年,88(20),p4451−4459、M.山下ら(M. YAMASHITA et al.)著,「エレクトロスプレーイオンソースでの陰イオン生成」(Negative ion production with the electrospray ion source),ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(Journal of Physical Chemistry),1984年,88(20),p4671−4675)。
【0009】
・エレクトロスプレー・デバイスの第2の応用は較正サイズでの滴の製造である。そのような滴は支持体上に堆積されることができるが(C.J.マクニールら(C. J. McNEAL et al.)著,「カリホルニウム252の不揮発性分子のプラズマ脱離研究のためのエレクトロスプレー方法による薄膜堆積」(Thin film deposition by the electrospray method for californium-252 plasma desorption studies of involatile molecules),分析化学(Analytical Chemistry),1979年,51(12),p2036−2039、R.C.マーフィーら(R. C. MURPHY et al.)著,「電界放出エミッタ及び脱離化学的イオン化プローブのエレクトロスプレー装填」(Electrospray loading of field desorption emitters and chemical ionization probes),分析化学(Analytical Chemistry),1982年,54(2),p336−338)、例えば、支持体は、高率分析専用の、DNAチップ又はペプチドチップなどの分析チップの製造のためのウェーハである(V.N.モロゾフら(V. N. MOROZOV et al.)著,「生物学的物質又は生物活性物質の単一構成要素又は複合構成要素マイクロアレイの量産のための方法としてのエレクトロスプレー堆積」(Electrospray Deposition as a Method for Mass Manufacture of Mono- and Multicomponent Microarrays of Biological and Biologically Active Substances),分析化学(Analytical Chemistry),1999年,71(15),p3110−3117、R.モーマンら(R. MOEMAN et al.)著,「再現性のあるマイクロメータサイズのタンパク質スポットのマイクロアレイ製造のための技法としての微細化エレクトロスプレー」(Miniaturized electrospraying as a technique for the production of microarrays of reproducible micrometer-sized protein spots),分析化学(Analytical Chemistry),2001年5月15日,73(10),p2183−2189、N.V.アブセンコら(N. V. AVSEENKO et al.)著,エレクトロスプレー堆積によって製造された複合構成要素タンパク質マイクロアレイでの免疫学的検定(Immunoassay with Multicomponent Protein Microarrays Fabricated by Electrospray Deposition),分析化学(Analytical Chemistry),2002年,74(5),p927−933)又は、質量分析法による分析の前のMALDIウェーハへの溶液堆積(マトリックス支援レーザー脱離イオン化、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization)、(J.アレックソンら(J. AXELSSON et al.)著,「エレクトロスプレーでのサンプル作成の結果としてマトリックス支援レーザー脱離/イオン化における改善された再現性及び増強された信号強度」(Improved reproducibility and increased signal intensity in matrix-assisted laser desorption/ionization as a result of electrospray sample preparation),質量分析法速報(Rapid Communications in Mass Spectrometry),1997年,1l(2),p209−213)。これらの滴は、独自の滴を取り扱うための流体力学的平衡へと液体を注入するため(M.M.ボーガンら(M. J. BOGAN et al.)著,「電気力学的平衡バランスで調整された液滴のMALDI−TOF−MS分析: 壁のないサンプル調整」(MALDI-TOF-MS analysis of droplets prepared in an electrodynamic balance : " wall - less" sample preparation)、分析化学(Analytical Chemistry),2002年,74(3),p489−496)、又は、それらの集積が、封入された分子又は準安定な結晶状態へとつながる(I.G.ロサテールら(I. G. LOSCERTALES et al.)著,「帯電した同軸液体ジェットを介したマイクロ/ナノ封入」(Micro/nano encapsulation via electrified coaxial liquid jets),サイエンス(Science),ワシントンD.C.米国,2002年,295(5560),p1695−1698)。この場合、噴出は離散的な方式で起こり、ソースの寸法は形成される堆積のサイズに概ね依存する。
【0010】
・第3の応用は、液体内に含有された、制御されたサイズの粒子を堆積することである。(I.W.レンゴロら(I. W. LENGGORO et al.)「エレクトロスプレー及び差動可動性分析器法によるコロイドナノ粒子の定寸」(Sizing of Colloidal Nanoparticles by Electrospray and Differential Mobility Analyzer Methods)、ラングミュアー(Langmuir)2002年、18(12)、4584−4591。この粒子は、セルチップ製造のためのセルと置き換えられてもよい。
【0011】
・第4の応用は、明確に規定されたサイズのエマルジョンにつながる、液体内でエレクトロスプレーによって形成された滴の注入である(R.J.ファイファーら(R. J. PFEIFER et al.)著,「電気流体力学的に噴霧された液体液滴の対質量電荷の関係」(Charge-to-mass relation for electrohydrodynamically sprayed liquid droplets),流体物理学(Physics of Fluids),1958−988年,1967年,1O(10),p2149−54、C.ソーリスら(C. TSOURIS et al.)著,「ナノ導電性流体の導電性流体への静電分散の試験的調査」(Experimental Investigation of Electrostatic Dispersion of Nonconductive Fluids into Conductive Fluid),インダストリアル&エンジニアリングケミストリー・リサーチ(Industrial & Engineering Chemistry Research),1995年,34(4),p1394−1403、R.ヘンゲルモーレンら(R. HENGELMOLEN et al.)著,「エアロゾル・スプレー由来のエマルジョン」(Emulsions from aerosol sprays),ジャーナル・オブ・コロイド・アンド・インターフェース・サイエンス(Journal of Colloid and Interface Science),1997年,196(1),p12−22)。
【0012】
・第5の応用は、分子又は化学溶液によるウェーファへの分子の書き込みであり、(S.N.ジャヤシンゲら(S. N. JAYAS INGHE et al.)著,「濃縮懸濁液からの複数軌道の同時印刷の新規方法」(A novel method for simultaneous printing of tracks from multiple tracks from concentrated suspensions),材料研究イノベーション(Materials Research Innovations),2003年,7(2),p62−64,それは、マイクロメータ未満であり得るスケールでの材料の機能化又は局所的な化学処理を目的としたものである。
【0013】
これらの広範な応用は、互いに組み合わされてもよい。
【0014】
通常、ナノエレクトロスプレーに用いられるソースは、ガラス又は溶融シリカ製の毛管の形態をとる。それらは、1〜10μmの出口オリフィスを製造するために、熱圧伸成形又は材料の酸腐食によって製造される。(M.ウィルムら(M. WILM et al.)著,「エレクトロスプレーとテイラー・コーン理論、ついに巨大分子のドールの光線か?」(Electrospray and Taylor Cone theory, Dole's beam of macromolecules at last?),インターナショナル・ジャーナル・オブ・マススペクトロメトリー・アンド・イオン・メソッド(International Journal of Mass Spectrometry and Ion Methods),1994年,136(2−3),p167−180)。エレクトロスプレー電圧が、適切な外部導電被膜を介して印加されてもよい。金又はAu/Pd合金などの金属被膜の場合(G.A.バラスコビックら(G. A. VALASKOVIC et al.)著,「ナノリットルエレクトロスプレー質量分析法のための長寿命の金属化先端」(Long-lived metalized tips for nanoliter electrospray mass spectrometry),ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティー・フォア・マススペクトロメトリー(Journal of the American Society for Mass Spectrometry),1996年,7(12),p1270−1272、銀の場合(Y.−R.チェンら(Y.-R CHEN et al.)著,「銀被覆シースレス・エレクトロスプレー・エミッタ製造のための簡易な方法」(A simple method for manufacture of silver-coated sheathless electrospray emitters),質量分析法速報(Rapid Communications in Mass Spectrometry),2003年,17(5),p437−441),カーボンベースの材料の場合(X.シュら(X. ZHU et. al.)著,「シースレス毛管電気泳動/ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析法のためのコロイドグラファイト被覆エミッタ」(A Colloidal Graphite-Coated Emitter for Sheathless Capillary Electro phoresis/Nanoelectrospray Ionization Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),2002年,74(20),p5405−5409、又は、ポリアニリンなどの導電性ポリマーの場合(P.A.ビグワーフら(P. A. BIGWARFE et al.)著,「ポリアニリン被覆ナノエレクトロスプレーエミッタ:陰イオンモードでの性能特性」(Polyaniline-coated nanoelectrospray emitters: performance characteristics in the negative ion mode),質量分析法速報(Rapid Communications in Mass Spectrometry),2002年,16(24),p2266−2272)がある。エレクトロスプレー電圧は、ソースへの金属ワイヤ導入を伴って液体を介して印加されてもよい。(K. W. FONGら(K. W. Y. FONG et al.)著,「ナノリットル流量におけるエレクトロスプレー質量分析のための新規非金属化先端」(A novel nonmetallized tip for electrospray mass spectrometry at nanoliter flow rate),ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティー・フォア・マススペクトロメトリー(Journal of the American Society for Mass Spectrometry),1999年,10(1),p72−75)。
【0015】
しかし、ナノエレクトロスプレーに特化した従来技術のデバイスは、いくつかの弱点に苦慮している。(B.フェンら(B. FENG et al.)著,「サブマイクロリットルのタンパク質サンプルの質量分析のための制御可能な流量での単純なナノエレクトロスプレー構成」(A Simple Nanoelectrospray Arrangement With Controllable Flowrate for Mass Analysis of Submicroliter Protein Samples),ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティー・フォア・マススペクトロメトリー(Journal of the American Society for Mass Spectrometry),2000年,11,p94−99。
【0016】
・第1に、これらの毛管はあまり堅牢ではない。それらの製造方法の制御は貧弱なもので、寸法再現性があまり良好ではないソースを提供する。
【0017】
・外部導電性被膜が急激に劣化する。
【0018】
・その針型形状により、それらの使用方式は非常に便利というわけではない。噴霧される液体は、マイクロピペットと適切な先細の先端によって針へと手動で導入されなければならない。
【0019】
・溶液の充填は針への気泡の導入につながり、それは後の段階において噴霧状態の安定性を乱す可能性があるため、消散させなければならない。
【0020】
・最後に、ほとんどの場合、出口オリフィスは液体の通過を許容するには狭すぎるため、結果として毛管はまず1壁面に沿って注意深く決壊されなければならず、それはさらにその寸法の不安定な性質を増長する。
【0021】
このように、標準的な商用のソースは、まず、制御式で再現性のある高品質な噴霧化に対して適合性が乏しく、第2に、その全面的に手動性である使用方式によりロボットの使用に対して適合性が乏しく、第3に、以下に論じる流体マイクロシステムに対して適合性が乏しい。
【0022】
これらの欠点が、現時点でプロセスのロボット化及び自動化を必要とする、いくつかのエレクトロスプレー応用分野の妨げになっている。これは上述した応用分野での実情である。すなわち、質量分析法による分析、較正サイズの滴の堆積、及び先端によるサブマイクロメータスケールでの書き込みである。
【0023】
ここ20年間に、化学及び生物学の分野におけるマイクロ流体工学の出現を目の当たりにしてきた。この領域は、いくぶん実験器具の小型化、また、それによるマイクロテクノロジーと生物学の融合又はマイクロテクノロジーと化学分析の融合に由来する。こうしてマイクロテクノロジーの技法は、マイクロメートルオーダーの特徴的サイズの、一連の反応性及び/又は分析、化学及び/又は生化学的/生物学的プロセスを集積する統合的マイクロシステムの製造に利益をもたらす。
【0024】
今日プロセスの迅速さと自動化が要求される化学分野及び生物学分野でのマイクロ流体工学の進展は以下により説明される。
【0025】
・速度はデバイスのサイズに主に依存するという事実に起因したプロセス速度増加。この速度増加は、即座の応答がしばしば期待される医学的診断又は環境分析型の応用分野で特に重要である。
【0026】
・プロセスの並列化の実現性。マイクロテクノロジーは、多数の同一デバイスの同時製造を可能にする。
【0027】
・自動化プロセスを視野に入れたロボット・インターフェースを伴う微細加工物への適合性。
【0028】
・特に生物学的分析又は環境分析の場合における、実験者が使用可能な分で取り扱われる容量の妥当性。
【0029】
・しばしばエラーと汚染のソースとなる、人間の介入の排除に至る制限
【0030】
・エレクトロスプレーによるイオン化を伴った質量分析法を含む特定の技術分析での感度増強
【0031】
・全体として、器具のスケール縮小や安定した技法に対応するに留まらない新たな性能。
【0032】
マイクロ流体デバイスはマイクロテクノロジー技法によって製造される。これらの微細加工には広範な材料が今や利用可能であり、その範囲はシリコンやクォーツ(マイクロテクノロジーでは一般的な材料)から、ガラス、セラミック及びエラストマーやプラスチックといったポリマー型の材料まで広がっている。こうして、マイクロ流体工学は以下の両方から益する。
【0033】
・マイクロエレクトロニクス・アプリケーション向けに開発され用いられた材料及び製造技法の遺産、及び、
【0034】
・プラスチック型の材料などの、他の新興材料に適合させて平行して開発されており、マイクロ流体への応用にも相当の利益があり、その主要な誘引力はその低コストにある、新規の製造方法。
【0035】
・より詳細には、化学及び生物学に適用可能な技術的製造に想定することができる材料は以下である(T.マクレディ(T. MCCREEDY)著,「マイクロリアクター及びマイクロ化学分析システムに一般に使われる製造技術と材料」(Manufacture techniques and materials commonly used for the production of microreactors and micro total analytical systems),分析化学の動向(TrAC、Trends in Analytical Chemistry),2000年,19(6),p396−401)。
【0036】
・堅牢かつ実証された製造方法から益するマイクロテクノロジーの伝統的材料である、シリコンなどの半導体タイプの材料。これらの製造方法のうち、とりわけ、リソグラフィー、物理的エッチング及び化学エッチングを挙げることができる(P.J.フレンチら(P. J. FRENCH et al.)著,「表面対巨大マイクロマシニング、適切な適用への競争」 (Surface versus bulk micromachining: the contest for suitable applications),ジャーナル・オブ・マイクロメカニクス・アンド・マイクロエンジニアリング(Journal of Micromechanics and Microengineering),1998年,8(2),p45−53)。結果として、特にシリコンが、10あるいは数ナノメータスケールの微小構造の製造に関して最も関心を呼ぶ材料である。さらに、その表面化学は極められており、処理にはその表面に存在するシラノール基を生かす。しかし、目指す応用によってはその半導体の性質が常に適しているとは限らない。それは透明ではなく、そのことで光学的検出技法(吸光UV、蛍光、ルミネッセンス)を一切排除することになる。材料のコスト自体が、或る種の大量製造(特に、独自使用物)には不適合にさせている。
【0037】
・最初のマイクロシステムの開発に用いられたクォーツ(J.S.ダネルら(J.S.DANEL et al.)著,「クォーツ:マイクロデバイスのための材料」(Quartz : material for microdevices),ジャーナル・オブ・マイクロメカニクス・アンド・マイクロエンジニアリング(Journal of Micromechanics and Microengineering),1991年,1(4),p187−98、は、その非常に高いコストにより魅力のあるものではなくなってきた。したがって、その物理的及び化学的特性にもかかわらず、次第に打ち捨てられるようになった。
【0038】
・クォーツやシリコンよりも安価な材料であるガラスは、電気浸透流の確立に適した表面特性により、広範に用いられてきた(K.佐藤ら(K. SATO et al.)著,「ガラス製マイクロチップへの化学分析と生化学分析システムの統合」(Integration of chemical and biochemical analysis systems into a glass microchip),分析科学(Analytical Sciences),2003年,19(1),p15−22)。シリコンと同じように、シラノール基がガラスの表面を覆っている。それらは、引き続いたガラス表面の化学修飾を想定することを可能にする。さらに、その透明な特性は、それらを光学的検出の場合に選択できる材料としている。しかし、その製造手法はシリコンほど極められていない。エッチング形状の切れが甘く、アスペクト比は劣っている。(T.R.ディートリッヒら(T. R. DIETRICH et al.)著,「光エッチング可能なガラスを利用したマイクロシステムのための製造技術」(Manufacture technologies for microsystems utilizing photoetchable glass),マイクロエレクトロニック・エンジニアリング(Microelectronic Engineering),1996年,30(1−4),p497−504)。さらに、それは脆くて砕けやすい材料である。
【0039】
・プラスチックとエラストマーをまとめたポリマー型材料。それらの主たる利点は、低原価での量産に適合するその低コストにある。これらの材料の多様性は広範な物理的及び化学的特性につながる。それらの主要な欠点は、材料の劣化や分解にさえつながりかねない、高温耐性の低さ、及び、化学及び生物学で通常使われる溶媒条件、有機、酸及び塩基媒体への感応性である。さらに、これらの材料の表面化学はよく知られていないため、その特性を修正するために導入される後続処理を困難なものにする。その製造手法は全く異なるものであり、成形/射出、レーザ・アブレーション及びLIGA技法に基づく(ドイツ語「Llthographie, Galvanoformung, Abformung」の頭字語)(J.ルービー(J . HRUBY)著,「LIGAマイクロマニュファクチャ概説」(Overview of LIGA micromanufacture),AIP会議予稿集,2002年,625「高エネルギー密度及び高パワーRF」(High Energy Density and High Power RF),p55−61)、フォトリソグラフィー、プラズマエッチング)。
【0040】
・プラスチック材料を雛形にしている製造費が嵩まない無機基板である、セラミック型の材料(W.バウワー(W.Bauer)著,「マイクロシステム技術におけるセラミック材料」(Ceramic materials in the microsystem technology),Keramische Zeitschrift,2003年,55(4),p266−27O )。主要な利点は、それらの製造には、クリーンルームのようなメンテナンスが高くつく専用のデバイスを要さず、単純で迅速なプロセス(レーザ・アブレーション、貼合せ、成形、ゾルゲル法)に基づいており、微細加工された構造の原価をさらに引き下げているということである。それらの表面状態はガラス又はシリコンの表面状態に匹敵し、最後に、ガラスなどの他の材料に比べてキャッピングが容易である。
【0041】
特に以下を期して、エレクトロスプレー・ソース又は針型先端の形成に、マイクロマニュファクチャリング手法が適用されてきた。
【0042】
・製造方法の制御、ソースとその寸法の再現性に関して毛管の全体的な質を向上させる
【0043】
・エレクトロスプレーイングの自動化とロボット化を促進するために、同じ材料のウェーハ上にマイクロ電子マイクロ部品を雛形にした、同一又は異なるデバイスを、1つ又はいくつかの寸法で多数個製造する
【0044】
マイクロテクノロジー技法によるエレクトロスプレー先端の製造は、2つの傾向に従う。
【0045】
・従来の形状を再現するエレクトロスプレー先端の製造、すなわち、微細加工された毛管、さらに通常は環状の断面を持つもの。このクラスには、化学物質を注入したり生物学的電位を計測したりといった、別の応用を意図した微細加工された針が含まれてよい。
【0046】
・マイクロテクノロジー技法によって製造され、先細の断面を有した、マイクロチャネル又は毛管出口としてのエレクトロスプレー・ソースの設計
【0047】
これらの微細加工されたエレクトロスプレー・デバイスは、流体マイクロシステムを雛形に、異なる種類の材料と異なる種類の方法を用いることに基づいている。
【0048】
技術的ルートにより毛管型形状の製造を目指す第1の傾向に従って、以下の説明を列挙することができる。
【0049】
・この手法により、伝統的なフォトリソグラフィー及びエッチング技法により窒化シリコンでエレクトロスプレー・ソースが製造されている(A.デサイ(A. DESAI et al.)著,「質量分析法のためのMEMSエレクトロスプレーノズル」(MEMS Electrospray Nozzle for Mass Spectrometry),1997年固体状態センサ及びアクチュエータ、トランスデューサ国際会議(Int. Conf. on Solid-State Sensors and Actuators, Transducers' 97)。前記デバイスの寸法は、40μmの長さと、1〜3μmの出口オリフィス内径である。前記ソースは、4kV近い噴霧化電圧と50nL/分の液体流量で質量分析法により、濃度が数マイクロモルの標準ペプチドで試験された。噴霧化電圧は前記デバイスの上流にて、液体供給毛管とこのプラチナ金属結合の接点のレベルで印加された。
【0050】
・フォトリソグラフィー材料であるポリマー型材料、パリレンで製造されたエレクトロスプレー・ソースについても記述されている。(国際公開第00/30167号パンフレット、L.リックリダーら(L. LICKLIDER et al.)著,「質量分析法のための微小機械加工されたチップベース・エレクトロスプレー・ソース」(A Micromachined Chip-Based Electrospray Source for Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),2000年,72(2),p367−375)。これらのソースは5x10μmの出口オリフィスを有し、シリコン製流体マイクロシステムの一体化部品として説明されている。それらは幅100μm高さ5μmのマイクロチャネルに結合されている。ここで噴霧化に必要な電圧は低く、同等な濃度と流体流量条件において1.2〜1.8kV前後である。電圧は、噴霧される溶液と接触させられる金属ワイヤに印加される。
【0051】
・シリコンも、針型構造の微小製造に用いられている。国際公開第00/1532l号パンフレットは、外径20μmに対して内径が10μm、高さ50ミクロンの、煙突様のエレクトロスプレー・デバイスを記載している。G.A.シュルツら(G. A. SCHULTZ et al.)著,タイトルが「質量分析法のための完全統合型モノリシック・マイクロチップ・エレクトロスプレー・デバイス」(A Fully Integrated Monolithic Microchip Electrospray Device for Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),2000年,2072(17),p4058−4063、の論文を参照することもよい。これらのソースは、材料への、ディープエッチングとして知られる物理的エッチングに由来するものである。それらのエレクトロスプレーでの動作は、1.25kVの高電圧を伴うものとして説明されているが、該電圧は、ソースの背後に配置されている導電性材料製の流体供給毛管に印加される。その試作品は、この種の、同様であって互いに独立して動作する100個のソースを備えたウェーハに一体化されたものとして記述されている。シリコン及び同様な製造方法が、針型構造の形成にも用いられ、それはエレクトロスプレーとして用いられるか(P.グリスら(P.GRISS et al.)著,「ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析法に基づくタンパク質分析のための微小機械加工された中空先端の開発」(Development of micromachined hollow tips for protein analysis based on nanoelectrospray ionization mass spectrometry),ジャーナル・オブ・マイクロメカニクス・アンド・マイクロエンジニアリング(Journal of Micromechanics and Microengineering),2002年,12(5),p682−687、J.ジョーダルら(J. SJODAHL et al.)著,「2次元ナノエレクトロスプレー質量分析法のための微小機械加工された中空先端のキャラクタライゼーション」(Characterization of micromachined hollow tips for two-dimensional nanoelectrospray mass spectrometry),質量分析法速報(Rapid Communications in Mass Spectrometry),2OO3年,17(4),p337−341、又は、生物学的電位計測針として用いられる(国際公開第03/15860号、P.グリスら(P. GRISS et al.)著,「生体電位測定のための微小機械加工された電極」(Micromachined electrodes for biopotential measurements),IEEE/ASMEジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システムズ(IEEE/ASME Journal of Microelectromechanical systems),2001年,10,p10−16)。それらの形状はそのアプリケーションに応じて多少変動がある。このエレクトロスプレー・デバイスは、その先端で断面が狭まってより狭い出口オリフィスになっていて上述したシリコン製のデバイスに似ているものの、生物学的電位計測向けの針は非常に先細りの先端を有している。前記デバイスを、ディープエッチング技法によりシリコンで製造する方法は非常に複雑であって、高コストかつ嵩張るデバイスを余儀なくさせ、特に、得られる構造の噴霧化電圧に関する性能は、標準的な商用のソースの性能に比べて劣っている。さらにそれらの形状は、流体マイクロシステムへの一体化に役立つとはいえない。
【0052】
L.リンら(L. LlN et al.)の、タイトルが「シリコン処理した極微針」(Silicon processed microneedles),IEEEジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システムズ(IEEE Journal of Microelectromechanical Systems),1999年,8,p78−84,の論文は、マイクロ流体ネットワークに結合された極微針について記述している。これらの針は、化学物質の現場(in situ)注入向けに開発されたのであって、噴霧化向けではないが、それらのデバイスの針状形状はナノスプレーソースの形状と類似している。これらの針は窒化シリコンで製造され、9x30〜50μm及び1〜6mmの方形の出口オリフィスを有している。
【0053】
・針型構造は最終的に別のポリマー材料であるポリカーボネートで、レーザ・アブレーション法で製造された。(K.タンら(K. TANG et al.)著,「改善された質量分析感応性のための微細加工されたエミッタ・アレイを用いた複数のエレクトロスプレーの発生」(Generation of multiple electrosprays using microfabricated emitter arrays for improved mass spectrometric sensitivity),分析化学(Analytical Chemistry),2001年,73(8),p1658−1663)。それらの寸法は以下の如くである。出口オリフィスの内径が30μmで高さ250μmである。噴霧状態の観測に必要な7kVで、流体流量は30μL/分と予測されるため、この例においても、ナノスプレーでの動作条件には寸法が大きすぎる。さらには製造方法も複雑である。これらのソースは3x3の四角に沿って配列された一連の9個のソースの形状をしている。それらは同時に動作し、同じ溶液を噴霧化する。
【0054】
第2の傾向は、マイクロチャネルの出口に先端を機械加工するか、又は、エレクトロスプレー・ソースとして機能する先端構造を製造することである。先端構造の角度は噴霧化現象に何ら影響を与えていないようである。第2の傾向によれば、
【0055】
・マイクロシステムのウェーハ上のマイクロチャネルの出口での噴霧化の試みは非常に決定的なものにはならなかった。印加されるべき電圧は非常に高く、これらの条件下では、液体はマイクロシステムのウェーハ上の出口表面に拡散しがちとなる(R.ラムゼイら(R. RAMSEY et al.)著,「電気浸透流ポンピングを用いたマイクロチップ・デバイスからのエレクトロスプレーの生成」(Generating Electrospray from Microchip Devices Using Electroosmotic Pumping),分析化学(Analytical Chemistry),1997年,69(6),p1174−1178、シュエら(XUE et al.)著,「マルチチャネル・マイクロチップ・エレクトロスプレー質量分析法」(Multichannel Microchip Electrospray Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),1997年,69(3),p426−430、B.シャンら(B. ZHANG et al.)著,「毛管電気泳動−エレクトロスプレー質量分析法のための微小加工されたデバイス」(Microfabricated Devices for Capillary Electrophoresis-Electrospray Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),1999年,71(15),p3258−3264)。これらの試験は、出口表面の適切な化学処理や、圧縮空気方式で噴霧化状態の形成を補助することにより改良されてきた。このことが、電界の集積につながるとともにそれにより噴霧化を可能にする先端の構造に取り組むことの重要さを実証する。
【0056】
・点の効果は、マイクロチャネルを郭成している材料の2枚のウェーハの間に平坦で三角形の構造(マイクロチャネルが機械加工される支持体であり被覆)を挿入することにより達成され得る。この平坦で三角形の構造の平面は、5μm厚さのパリレンのシートから構成される。(J.カメオカら(J. KAMEOKA et al.)著、「マイクロ流体との統合に向けたエレクトロスプレー・イオン化ソース」(An electrospray ionization source for integration with microfluidics)、分析化学(Analytical Chemistry)、2002年、74(22)、5897−5901。このシステムは並列に配置された4つの同じエレクトロスプレー・デバイスを組み込んでいる。300nL/分の流体流量に必要な噴霧化電圧は2.5〜3kVである。ソース内干渉は全く観察されなかった。
【0057】
・8つに分岐した星の形状のデバイスがポリメチルメタクリレート(PMMA)で製造された。C.H.ユアンら(C.-H. YUAN et al.)著,「プラスチック・チップ上に製造された鋭利な先端を用いた逐次エレクトロスプレー分析」(Sequential Electrospray Analysis Using Sharp-Tip Channels Fabricated on a Plastic Chip),分析化学(Analytical Chemistry),2001年,73(6),p1080−l083)。その星の各分岐は独立したマイクロ流体システムを構成し、各分岐の先端は噴霧化ソースである。こうして各分岐は断面が300x376μmのマイクロチャネルを一体化し、先端構造は90°の角度を形成し、星の中央に液体の槽が8つ集められている。テイラー・コーンを確立するために印加される電圧は高く、3.8kVに匹敵し、そのことはマイクロチャネルの端部における断面の寸法が非常に大きいことにより説明される。さらに、説明された製造方法は、ナイフによるチャネルの機械加工に基づいており、それは小さな寸法のチャネルや噴霧化デバイスが形成されることを可能にはしない。
【0058】
・別のポリマータイプの材料である、ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、材料のアブレーションに基づく方法、フォトリソグラフィック樹脂の二重層を用いる方法、及び、樹脂成形方法という3つの異なるマイクロ技術ルートによるエレクトロスプレー向けの先端構造の形成に使われてきた。(国際公開第02/55990号パンフレット、J.S.キムら(J. S. KIM et al.)著,「ポリジメチルシロキサン・エレクトロスプレー・イオン化エミッタの微細加工」(Micromanufacture of polydimethylsiloxane electrospray ionization emitter),ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(Journal of Chromatography),A 2001年、924(1−2),p137−145、J.S.キムら(J.-S. KIM et al.)著,「エレクトロスプレー・イオン化質量分析法のための微細加工されたPDMSマルチチャネル・エミッタ」(Microfabricated PDMS multichannel emitter for electrospray ionization mass spectrometry),ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティ・フォア・マス・スペクトロメトリー(Journal of the American Society for Mass Spectrometry),2001年,12(4),p463−469,J.S.キムら(J.-S. KIM et al.)著、「ポリ(ジメチルシロキサン)マイクロ流体デバイスでの微小マイクロチャネルエレクトロスプレーイオン化エミッタ」(Miniaturized multichannel electrospray ionization emitters on poly(dimethylsiloxane) microfluidic devices),電気泳動(Electrophoresis),2001年,22(18),p3993−3999)。噴霧化オリフィスは方形であり、その製造に用いられるマイクロテクロジーの方法によって、寸法が30x100μmから30x50μmまでと可変である。別の場合では、噴霧化電圧は1〜10μmの溶液には2.5〜3.7kVまで、高流量では数百nL/分から数μL/分までの幅があった。
【0059】
・最後に、もう1つの比較的疎水性のポリマー型材料であるポリイミドが、マイクロシステムに組み込まれているか、又は、少なくとも、断面が120x45μmのマイクロチャネルに結合されている噴霧化ソースの製造に用いられた(英国特許出願公開第2379554号明細書、V.ゴブリーら(V. GOBRY et al.)著,「直接質量分析カップリングのための微細加工されたポリマー注入器」(Microfabricated polymer injector for direct mass spectrometry coupling),プロテオミクス(Proteomics),2002年,2(4),p405−412、J.S.ロシアーら(J. S. ROSSIER et al.)著,「バイオポリマーの高性能フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析法のための薄型チップマイクロスプレーシステム」(Thin-chip microspray system for high-performance Fourier-transform ion-cyclotron resonance mass spectrometry of biopolymers),Angewandte Chemie,International Edition,2003年,42(1),p54−58)。そのシステム、マイクロチャネル及び先端構造はポリイミドのプラズマエッチングにより製造されている。そのシステムの被覆はポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート製である。前記エレクトロスプレー・ソースの動作は、140nL/分の流量、1.6〜1.8kVの噴霧化電圧で、5μMの標準的なペプチドのサンプルに関して実証された。同材料で製造された別のデバイスが説明されているが、その開放されたトポロジーとその製造に使われる材料の薄さ(50μm)の適応度によって従前の材料とは異なる。薄型と名づけられたこの構造は、ここではデバイスに組み込まれた炭素電極に印加された1〜2.3kVのイオン化電圧で試験された。
【0060】
総括して、上記に詳述した噴霧化デバイスは小規模な噴霧化に適合しない動作条件を有し(寸法が大きすぎ、噴霧化電圧が高すぎる)、たいてい非常に複雑な製造方法に由来する。さらに、これら種々のデバイスから選択される種の構造は、それらの形成に用いられる材料から事実上分離できない。
【0061】
上記に挙げた種々のデバイスに関して、噴霧化電圧は、デバイスが槽を含む場合は通常デバイスの槽のレベルで印加され、そうでない場合は液体供給のレベルで印加されるが、それはデバイスに結合された毛管によって達成される。この場合、毛管が導電性(例えばステンレス鋼製)であるか、又は結合が金属結合に基づくかのいずれかとなる。しかし、噴霧化電圧が印加される電極又は導電区域を噴霧化デバイスに組み込むことが提案されている。(T.C.ローナーら(T. C. ROHNER et al.)、「厚膜マイクロ電極が一体化されたポリマーマイクロスプレー」(Polymer microspray with an integrated thick-film microelectrode)、分析化学(Analytical Chemistry)2001年、73(22)、5353−5357。言及された例では、この導電区域はカーボンインクに基づいて形成される。
【0062】
最後に、これらのデバイスの適用は、質量分析法による分析に先行するエレクトロスプレーを対象としたものであり、他の種類の応用には役立たない。
【0063】
さらに、マイクロテクノロジーから生じる較正された滴を堆積するデバイスは、溶液の噴霧化に基づくのでなく、微細加工された先端を堆積面に接触させることを伴う機械的効果に基づいている。したがって、
【0064】
・較正された滴の平滑な表面への通常の堆積によるDNAチップ型ウェーハの加工に関して、つけペンの構造マイニングが記載された(国際公開第O 3/ 53583号パンフレット参照)。このデバイスは、材料内にエッチングされ先端で終結する溝(trench)を備え、そこから液体が退出するこの構造は可撓性であることが知られており、堆積される液体は、その可撓性先端を堆積基板に接触させることにより退出し、接触角度は垂直に対して20〜30°である。この発明が対照とする主な応用は、DNAチップ又は分析対象の他の化合物の作製である。
【0065】
・P.ベローブルら(P. BELAUBRE et al.)は、その論文「マイクロカンチレバーを用いた生物学的マイクロアレイの製造」(Manufacture of biological microarrays using microcantilevers),応用物理レターズ(Applied Physics Letters),2003年,82(18),p3122−3124,において、再現性のあるサイズの滴の堆積のために開放梁型の構造を提案している。このデバイスの応用は、DNA又はタンパク質チップの自動化方式での作製である。この梁型構造はまず堆積される溶液に浸され、次に堆積面に接触させられる。液体の吐出は、先端と前記表面を接触させることによりなされる。このデバイス固有の特徴は、堆積される溶液に浸されたときに先端の液体充填を静電効果により増加させることを可能にする、アルミニウム電極の梁型構造を一体化していることである。その先端で210μmの幅を持つこれらの梁型構造は、同じシステムで並列して製造される。それらは、フェムトリットルからピコリットルの範囲にわたる容量を有した滴の吐出を可能にし、堆積容量は先端と表面の接触時間に正比例し、その率は毎分100堆積に達し得る。
【0066】
最後に、つけペンを雛形にして、化学溶液に浸されるAFM(原子間力顕微鏡)先端で、ナノメータスケール周辺の分子書き込みが主に説明された。(G.アガーワルら(G . AGARWAL et al.)著,「タッピングモードのつけペンナノリソグラフィー」(Dip Pen Nanolithography in Tapping Mode),アメリカ化学会ジャーナル(Journal of the American Chemical Society),2003年,125(2),p580−583、国際公開03/48314号パンフレット及び国際公開03/52514号パンフレット、H.シャンら(H. ZHANG et al.)著,「改質された酸化シリコン表面上のタンパク質の直接書き込みつけペンナノリソグラフィー」(Direct-write dip-pen nanolithography of proteins on modified silicon oxide surfaces)、Angewandte Chemie, International Edition,2003年,42(20),p2309−2312、L.フーら(L. FU et al.)著,「つけペンナノリソグラフィーとゾルベースのインクを介した「ハード」磁性微小構造のナノパターニング」(Nanopatterning of "Hard" Magnetic Nanostructures via Dip-Pen Nanolithography and a Sol-Based Ink),ナノレターズ(Nano Letters),2003年, 3(6),p757−760、H.シャンら(H. ZHANG et al.)著、「つけペンナノリソグラフィーに基づくサブ50nm固体状態ナノ構造の製造」(Manufacture of sub-50-nm solid-state nanostructures on the basis of dip-pen nanolithography),ナノレターズ(Nano Letters),2003年,3(1),p43−45)。そして書き込みは、選択されたAFMの使用モード次第で、先端と平滑な表面の接触又は集結の後に発生する。化学溶液は、それが堆積される材料を腐食する溶液であってよく、そのことでチャネルや他の構造のエッチングに役立つ。AFM技法は高精細及び高書き込み精度の利点を持つ。3つの動作モードが可能であり、選択されたモードに従って、分子書き込み化学溶液の通過の前後に表面状態が制御されることができる。とはいえ、この技法は重厚巨大でコストが高く複雑なデバイスを強いるものである。
【0067】
文献に記載された2つの分子書き込みデバイスをも引用することができる。それらはAFM先端を用いた技法から派生するが、微細加工された先端を使用することに基づいている。第1のデバイス(A.ルイスら(A. LEWIS et al.)著,「つけペンナノケミストリー:クロムエッチングの原子間力制御」(Dip pen nanochemistry: Atomic force control of chrome etching),応用物理レターズ(Applied Physics Letters),1999年,75(17),p2689−2691、H.タハら(H. TAHA et al.)著,「原子間力感知ナノ万年筆でのタンパク質書き込み」(Protein printing with an atomic force sensing nanofountainpen),応用物理レターズ(Applied Physics Letters),2003年,83(5),p1041−1043,は、マイクロテクノロジーによって製造された、内径と外径がそれぞれ3nmと10nmという小寸法を有していてよいマイクロピペットの形状をしている。しかしこのマイクロピペットは使用するためにAFMデバイスに一体化されている。この場合の吐出は接触させることによってではなく、液体のカラムに圧力を印加することによって誘発される。このデバイスは、ガラスウェーハ上に堆積されたクロム層のエッチング溶液を配給する適性を試験された。第2のデバイス(I.W.ランセローら(I. W. RANCELOW et al.)著,「ナノジェット:微小製造のツール」(NANOJET: Tool for the nanomanufacture),真空化学技術ジャーナル(Journal of Vacuum Science & Technology)B:マイクロエレクトロニクス及びナノメータ構造(Microelectronics and Nanometer Structures)2001年,19(6),p2723−2726、J.ヴォイトら(J. VOIGT et al.)著,「走査ナノノズル、ナノジェットでのナノマニュファクチャ」(Nanomanufacture with scanning nanonozzle 'Nanojet'),マイクロエレクトロニック・エンジニアリング(Microelectronic Engineering),2001年,57―58,pl035−1042)は、ピラミッド型形状で出口オリフィスのサイズが100nmに満たない、Cr/Auで被覆されたシリコンで形成された先端からなる。このデバイスは先行例のように化学溶液を配給するのではなく、先端の反対側に配置された材料を腐食する、プラズマ放電により生成した気相内のフリーラジカルを配給する。このように、このデバイスは微細加工された先端のみで形成されるのではなく、高周波やマイクロ波プラズマ放電といった、基板を腐食することができる非常に反応性の高い種を生成することができる機械をも含む。
【0068】
これら2つの例は正に従来のAFM先端に取って代わる微細加工された先端を有しているが、その動作に必要な重厚で高コストの周辺機械なしで済ませることを可能にしない。さらにこの技法は、先端と基板を接触又は擬似接触させることに基づいている。したがって、先端レベルに印加される過度に強い力による表面状態の劣化を一切回避するため、その動作は非常に慎重に制御されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0069】
本発明は、カリグラフィーペン型の形状を有し、その先端が噴霧のための箇所の機能を果たす、2次元エレクトロスプレー・デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0070】
したがって、本発明の主題は、少なくとも1つの平坦かつ薄型の先端を有する構造を持ち、前記先端は当該構造の残りの部分に対して片持ち梁(cantilever)となったエレクトロスプレー・ソースであって、前記先端は、当該先端の厚みを貫通して形成され、前記先端の末端で終結した、前記エレクトロスプレー・ソースの噴出オリフィスを形成する毛管スロットに設けられ、前記エレクトロスプレー・ソースは、噴霧される液体を前記毛管スロットに供給する供給手段と、前記液体にエレクトロスプレー電圧を印加する手段を備える。
【0071】
1つの有利な実施形態によれば、前記供給手段は、前記毛管スロットと流体接続(fluidic communication)している少なくとも1つの槽(reservoir)を有する。
【0072】
好ましくは、前記構造は、支持体と、前記支持体と一体化され、その一部が前記先端を構成するウェーハとを有する。また、前記供給手段は、前記ウェーハに形成された凹部によって構成され、前記毛管スロットと流体接続している槽を有しても良い。
【0073】
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、前記噴霧される液体に接触するように配置された少なくとも1つの電極を有しても良い。
【0074】
前記構造が前記支持体と、当該支持体と一体化された前記ウェーハを備えている場合、前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、少なくとも部分的に導電性がある前記支持体及び/又は少なくとも部分的に導電性がある前記ウェーハを有しても良い。好ましくは、前記ウェーハは前記噴霧される液体に対して疎水性の表面を有する。
【0075】
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、前記噴霧される液体と接触できるように配置された導電性ワイヤを有しても良い。
【0076】
前記供給手段は毛管チューブを有しても良い。それらは、前記構造を支持し前記毛管スロットと流体接続しているマイクロシステムで形成されたチャネルを有しても良い。
【0077】
1つの有利な実施形態によれば、前記電圧を印加する手段(電極、支持体、ウェーハ、ワイヤ)は、本発明の主題の上流に配置されて流体導通している(fluidic continuity)任意のデバイスに必要な電圧を印加することもできる。
【0078】
本発明の別の主題は、エレクトロスプレー・ソースである構造を製造する方法であり、以下のステップを含む。
−基板から支持体を形成するステップ
−平坦かつ薄型の先端を構成する部品を含むウェーハを、前記先端の全厚みを貫通して形成され、前記先端の末端で終結した、噴霧される液体を送るための毛管スロットが前記先端に設けられた状態で形成するステップ
−前記先端が前記支持体に対して片持ち梁となる状態で前記ウェーハを前記支持体上に一体化させるステップ
【0079】
上記方法は以下のステップを含んでも良い。
−前記支持体を形成するための前記基板を配設するステップ
−前記基板上にエッチングされた溝によって前記支持体を区切るステップ
−前記構造の将来前記先端になる部分に対応する前記基盤の区域に、定められた厚みで犠牲材料(sacrificial material)を堆積するステップ
−前記ウェーハの前記先端を前記犠牲材料上に配置した状態で、前記基板で区切られた前記支持体上に前記ウェーハを堆積するステップ
−前記犠牲材料を除去するステップ
−前記溝レベルでの劈開によって前記支持体を前記基板から分離するステップ
【0080】
前記ウェーハを堆積するステップでは、槽を構成するために前記毛管スロットと流体接続する凹部を有するウェーハを堆積しても良い。この方法は、前記噴霧される液体との電気的な接触が確保される少なくとも1つの電極を堆積するステップをさらに含んでも良い。
【0081】
本発明に係るエレクトロスプレー・ソースは、質量分析法によるその分析の前に、エレクトロスプレーによる液体のイオン化を行うために用いられても良い。また、較正サイズ(calibrated size)の滴の形成又は固定サイズの粒子の吐出を行うために用いられても良いい。また、化合物による分子書き込み(molecular writing)を実行するために適用されても良い。さらに、流体導通(fluidic continuity)状態にあるデバイスの電気接合電位を規定するために適用されても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
非限定的な例として挙げられた以下の説明を、添付の図面を参照して読めば、本発明はより良く理解され、他の利点や特定の特徴が明白になろう。
【0083】
本発明は、カリグラフィーのペンの構造と動作モードから着想を得ている。本発明の主題である平坦な面はカリグラフィーのペンと同じ構成要素、すなわち液体の槽と、先端に形成された2次元の毛管スロットから構成されている。本発明は、必要に応じて、噴霧化状態を確立するために必要な電圧が印加される電気接触区域を備えてもよい。この接触区域は、複数の独立した接触子、詳細には、エレクトロスプレー・プロセスに便宜を与える、又は研究する目的での電気化学による化学修飾を可能にするための、同様にエレクトロスプレー電圧が印加されることを可能にする作用電極、参照電極、及び測定電極に対応する3つの接触子によって構築されている。これらの電極は、自己周波数への同期化によってエレクトロスプレー・プロセスの制御を可能にもする。カリグラフィーのペンと同様に、液体はスロット内を毛管現象によってつけペン型の構造の先端の末端へと運ばれ、そこから吐出される。吐出は機械的動作によって起こるが、液体への高電圧の印加による噴霧化の形態をとる。
【0084】
本発明に係るエレクトロスプレー・ソースは図1A及び図1Bに示されており、図1Aは上面図で図1Bは側面図である。
【0085】
このエレクトロスプレー・ソースは、支持体1と、支持体1に一体化されたウェーハ2を備えている。ウェーハ2の一部は、支持体1に対して片持ち梁(cantilever)である先端3を形成する。ウェーハ2はその中央に、支持体1の表面を露呈していて槽を形成している凹部4を有する。同様に、支持体1を露呈している毛管スロット5は、槽4を先端3の末端6に接続しており、それはエレクトロスプレー・ソースの吐出オリフィスを形成する。
【0086】
このデバイスの動作は、以下の考案された原理に基づく。液体槽4は、液体を収容、すなわち、液体の供給での転移部として機能する。液体は次いで、その上流に液体槽4が位置している毛管スロット5により導かれる。この構造の先端はエレクトロスプレーの確立を可能にする。
【0087】
以下の動作モードについて以下説明する。対象の液体は適切な方法で液体槽4へと堆積あるいは運ばれる。それは構造の末端6へと毛管現象により導かれる。ソースは使用場所へと運ばれる(例えば質量分析計の正面)。先端3の末端6で噴霧化状態を観察するために液体に電位が印加される。
【0088】
つけペン型の形状を有したソースの物理的過程は、それを構成する材料の特性とその種々の構成要素の寸法に基づく。図2は、先端3の末端6でのレベルにおける、毛管スロットの3次元図である。
【0089】
槽4の役割は、噴霧される液体を収容することと、毛管スロット5に漸次供給することである。この構造のトポロジーは2次元である。ウェーハ2は疎水性の性質がある材料製であり、槽の底部を覆っている材料である、ウェーハ2を支持する支持体1を構成する材料よりもずっと疎水性が高い。このことが、槽4の外部での液体の損失を制限することを可能にする。この点において、興味深いことに、噴霧される液体は、例えばメタノール/水の50/50混合液といった、純粋な水溶液又は半水溶性溶液又は半アルコール溶液などの、先験的にむしろ親水性の材料である。
【0090】
毛管スロット5と、先端3の末端6はウェーハ2を形成している材料で形成されており、それらの寸法は製造方法の間に決定される。図2は、エレクトロスプレー・ソースの動作のために考慮すべき寸法、すなわちスロットの幅w、高さhと長さlを示している。液体が毛管スロット5内に存在していると想定する。噴霧化が望まれる区域の向い側にエレクトロスプレー・ソースが差し出されたとき、この液体への重力効果は取るに足らないものである。毛管スロットへの液体の充填に干渉すると思われる要因は、ウェーハ2を構成している材料への液体の接触角度(α)、液体の表面張力(γ)及び毛管スロット5の寸法(lとh)である。毛管チューブ内の液体の毛管現象効果を決定する式1によれば、接触角度αのコサインは、毛管現象効果を観察するためには正でなければならず、これは独立に重力の効果である。
【0091】
【数1】
【0092】
但し、(γ)は毛管チューブの内半径であり、(hr)は液体が毛管チューブ内を上昇する高さであり、(ρ)は液体の濃度であり、(α)は液体の毛管チューブ内壁への接触角度であり、(g)は重力加速度である。
【0093】
【数2】
【0094】
但し、γSVは固体−気体界面での表面張力であり、γSLは固体−液体界面での表面張力である。
【0095】
まず、α<90°(cosα>0)である場合、ヤングの式(式2)は、γSV>γSLであることを示唆し、固体−液体相互作用が固体―気体相互作用よりも優位にあることを示している。式1に項rが現れている。毛管現象効果の観察又は観察できないことは、この値次第である。項rは毛管チューブの半径に対応し、本発明の主題であるデバイスの場合は、毛管スロット5の寸法に対応する。液体が毛管スロットに貫入すれば、毛管スロットの2つの壁面をつなぐ液体ブリッジが形成される。こうして、率h/wに対応する毛管スロット5のアスペクト比Rを規定することができる。以上から導き出されることは、毛管スロット5内で毛管現象効果を観察するためにRは臨界値よりも大きくなくてはならず、したがって、エネルギーの観点から、毛管スロット5内のブリッジの形成が有利であるということである。
【0096】
噴霧化デバイスは導電区域を含んでいても含んでいなくてもよい(図3H参照)。これらの導電区域は、液体槽4のレベルに配置されていれば、噴霧化電圧を伝える電極として機能する。他方、それらが毛管スロット5のレベルに配置されていれば、これらの電極は液体内に存在している種を改質する働きをする。質量分析法による分析前のエレクトロスプレー型の応用の場合は、電気化学プロセスが分子のイオン化中に干渉する。先端3の末端6のレベルで毛管スロット5の両側に配置された導電区域は、それらを調査することを可能にする。さらにこれらの現象はイオン化効率を向上させることにつながり、結果として分析条件の改良につながる。分子書き込み型の応用の場合は、より大量のラジカル種の存在が基板のエッチング率を上げる。
【0097】
しかし、エレクトロスプレー・ソースの支持体1を形成するために選択される材料の性質次第では、これらの導電区域は、特にそれらの役割が噴霧化電圧を伝えることである場合、必要でないことがある。実際、支持体1又はウェーハ2を形成するために導電材料(金属、Si等)が用いられた場合、電圧はこの導電材料に直接印加されることになる。最終的に、電気接合が液体を介して達成されるならば、導電区域を含まず、その材料が導電性でないデバイスが用いられることができる。槽4又は任意の他の導電性接触のレベルで、噴霧される溶液に浸された金属ワイヤは、こうして噴霧化電圧を印加するといった役割を確実に果たす。
【0098】
このデバイスは、他のデバイスや他の構造由来の溶液を運ぶ毛管などの、槽4の上流にある液体供給ソースに接続されていてもよい。例えば、質量分析法型の応用においては、この毛管は分離カラム出力に相当し得る。較正サイズの滴の堆積又は分子書き込み型の応用では、この毛管は液体をその初期位置から噴霧化デバイスへと運ぶ。前記毛管は、溶融シリカ製の従来型商用毛管であってよい。それは微細加工された毛管、すなわち、ソースを支えているシステムに一体になったマイクロチャネルであってよい。毛管は、支持体1上に実現された親水性のトラックであってよい。これら後者2件の場合、ウェーハ2は流体マイクロシステムと一体になって、前記マイクロシステムと、該マイクロシステムから退出する溶液が用いられる外界との界面の役割を果たす。最後に、デバイス又はその構成要素のひとつの導電性特性は、デバイスと流体的関連性がある任意のシステムに給電するために用いられてよい。
【0099】
さらに、前記つけペン型のウェーハは隔離方式で使われても、又は、同じ支持体上に多数個で一体化されていてもよく、それは噴霧化の並列化を目論んでのことである。この場合、前記つけペン型のウェーハは互いに独立していてもしていなくてもよく、噴霧化溶液は前記溶液の噴霧化を増強するために同じものであってもよいし、又は異なっていてもよく、異なっている場合は、つけペンは噴霧化において逐次的に機能する。前記つけペン型のウェーハの一体化は、前記ウェーハを支持体の1つの側に整列させた線状方式で行われてもよいし、円形の支持体上で環状に行われてもよい。その場合、1つのソースから別のソースへの移行はそれぞれ、支持体の移動又は支持体の回転により達成される。
【0100】
広範な材料が今や微細技術製造、特に流体マイクロシステムに想定されることができる。それらは、ガラス、シリコンベースの材料、(Si、SiO2、窒化シリコン、その他)、クォーツ、セラミックス及び多数の巨大分子材料、プラスチック又はエラストマーなどである。
【0101】
本発明で留保される形状は、いかなる種類の材料を使用しても製造に適合し、エレクトロスプレー・ソースを構成する種々の部品、すなわち、支持体1、つけペン型ウェーハ2及び導電区域、の製造にも適合している。さらに、技術的製造の方法は、1つ又はいくつかの他の材料を伴い、その選択は、構成要素1、2及び3のために留保される材料に応じて適応される。
【0102】
本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを製造する包括的方法が、図3A〜図3Hに示されている。この製造方法は、いかなる種類の材料にも適用できるように7つの主なステップに分けることができ、それらを下記に詳述する。
【0103】
この方法の最初のステップは、エレクトロスプレー・ソースの支持体を構成することを目的とした基板の選択である。この基板10(図3A参照)は、巨大分子材料製、ガラス製、シリコン製であってよく、又は金属製であってさえよい。本実施形態の場合、それは250μm厚のシリコン基板である。
【0104】
この方法の始動はエレクトロスプレー・デバイスの製造の終了を調整する。それは、ソースの先端を解放して噴霧化を可能にするための基板の劈開を補助する線を、デバイスの支持体上に実現することを伴う。
【0105】
第2のステップにより、保護層として知られる材料の層11が基板10の一部に堆積される。層11の材料は、基板10の材料の性質に応じて、層11の腐食が基板10に影響を与えないようにするべく選択される。本実施形態において、保護材料の層は20nm厚の窒化シリコンの層である。層11は、基板10と層11の材料の性質次第で変化する厚みのものである。層11は、構造の支持体を区切る(delimit)劈開線を規定するための、基板の腐食される区域を露出させる目的でリソグラフィー工程が行われる。層11の相当する区域は、基板10を露呈する開口12を提供するために腐食される(図3B参照)。基板のこれらの区域が露呈されると、それらは劈開線13を実現するために適切な腐食が行われる。最後に、残った層11が除去される。図3Cは得られた結果を示す。V字型断面の溝から構成される線13は、得られるべき構造の支持体を区切る。
【0106】
第3のステップの間、犠牲材料が基板10に堆積される。犠牲材料14のこの層は、製造の最後に、構造の先端が劈開操作の前にその支持体から突き出ることを可能にする。基板10は十分な厚みの犠牲材料の薄膜で被覆されるが、犠牲材料の薄さは、犠牲的材料除去の後で先端が基板10から十分に分離されるが、支持体から突き出ている先端に応力がかかったり湾曲する問題を一切排除するに足る薄さである。本実施形態では、犠牲材料の層は150nm厚のニッケル層である。
【0107】
犠牲材料の層は次いで、この材料を構造の先端に相当する区域14のみに残すために、リソグラフィー工程及び適切な腐食が行われる(図3D参照)。
【0108】
第4のステップが実施されることとなる。基板10は次に、構造のウェーハを構成することを目的とした材料の層で被覆される。基板材料に応じて、この層の材料はシリコン又はシリコンベースの材料、金属又はポリマー又はセラミック型の材料であってよい。本実施形態では、ウェーハを構成することを目的とした材料の層は35μm厚の、マイクロケム社(Microchem)から予備重合した形態で購入し、フォトリソグラフィー法で重合したSU−8 2035ポリマー層である。この層の厚みは適切な方式で選択されている。実際、噴霧化デバイスのイオン化性能は、前述したようにこの厚み次第である。この層の厚みは毛管スロットの高さhに直接影響し、高さhが大きくなるほど、率Rを変えないために幅wも大きくしなければならない。しかし、噴霧化ソースの最終適用次第で、性能を上げるためにできるだけ幅wを減らすことが課題である。他方、ウェーハを構成する目的の層の厚みが薄すぎた場合、突き出た先端は、支持体から剥離されると、材料にかかる応力のために曲がることがある。当業者ならば、この仕様をこの層の材料に応じて適用することができ、そのようにして、堆積される材料の最適な厚みを決めることが可能であろう。
【0109】
この層は次いで、つけペン型のウェーハ2を形成するためのリソグラフィー工程と腐食を経るが、それはすなわちそのサイズに加えて、槽4、毛管スロット5及び先端3も含む。(図3E参照)。この腐食は層の材料に応じて適用される。それは、化学的エッチング技法、シリコン又は金属ベースの材料の場合は物理的腐食、フォトリソグラフィー材料の場合には現像に続いて物理的腐食又はフォトリソグラフィーを伴う。
【0110】
第5のステップが次いで行われることとなる。ウェーハ2の形成が終わると、先端3の下の犠牲材料の区域14は除去される。犠牲材料は適切な化学的腐食によって除去されてよい。この化学的腐食の化学溶液は、支持体及びウェーハのいずれも腐食されることのないように注意深く選択されなければならない。これらの要素の材料はこの化学溶液に対して感応性があってはならない。図3Fに示した構造を得ることができる。
【0111】
第6のステップは導電性層の構造への埋め込みに関する。上述したように、このステップは、そのような導電性区域が配設される場合に限って製造方法に含まれる。
【0112】
これらの区域が槽4のレベル(噴霧化電圧の印加)に配置されていても、先端(物理的/化学的試験電極)のレベルに配置されていても、製造方法は同じである。槽のレベルにある導電性区域3の形成のみについてここでは詳述する。
【0113】
これらの導電性区域は金属又はカーボン製であってよい。この構造はまず、導電性区域の形成に対応する区域のみが除去されるように、マスキングステップにかけられる。選択された導電性材料は構造上にPECVD(プラズマ増幅化学気相蒸着)技法で堆積される。本実施形態では、導電性区域はパラジウム製で厚みが400nmである。図3Gは、得られた構造を示す。2つの導電性区域7と8が槽4の側面に位置し、そこに電位が印加されることを可能にする。
【0114】
噴霧化ソースを製造する本方法の第7のステップは、支持体1を基板10から切り離すことであり、詳細には、本製造方法の第2のステップで実現された劈開線13を用いて、支持体1に対して先端3を片持ち梁状に配置することである。得られた構造を図3Hに示す。
【0115】
先端を片持ち梁状に配置した場合の有利な劈開技法を図4Aと図4Bに示す。固定された金属ワイヤ20が、支持体1の下の、先端の両側に形成された劈開溝13のレベルに配置されている。2つの応力が合同して、図4Aの基板の矢印で示した位置に印加される。支持体1からの先端3の分離が前もって実行され、それにより、先端が劈開ステップ中にダメージを受けないことを保証する。図4Bは、劈開の実行の様子を示す。
【0116】
次にこの包括的な製造法はエレクトロスプレー・ソースの各構成要素に関して選択された材料に応じて適用される。
【0117】
本発明が目指す第1の応用分野は、質量分析法によって分析される生物学的又は化学溶液のエレクトロスプレーである。現在の質量分析法は、タンパク質の分析、キャラクタライゼーション及び同定のために選択される技法である。しかし、ゲノム解読の完結以来、特に生物学者は、個人のすべてのタンパク質を研究して特徴付ける科学である、プロテオミクスにますます興味を持つようになってきた。すべての人間にあるこれらのタンパク質は、翻訳後修飾(post-traductional modifications)を含めて数としては106を超える様々な分子で存在する。この点が現在、特にタンパク質研究の範囲内でのその適切さに起因して、高率分析を視野に入れた質量分析法のための自動化対応の分析技法とツールの必要を正当化する。生物学者たちに利用可能なサンプル(すなわち、被分析溶液)は、制限されたサイズ(1μL以下)であることが多く、生物学的物質をほとんど含んでおらず、そのことが、非常に微妙な分析技法を扱い、サンプルを極く僅かのみ使うことを強いる。このことが、ナノエレクトロスプレーによるイオン化を伴った質量分析法を、タンパク質のキャラクタライゼーションにおける最も広範に用いられる分析技法の1つたらしめている。この意味において、主要な課題はできる限りソースの先端の末端寸法を小さくすることである。実際、導入部で言及したように、この種の応用のための2つのエレクトロスプレー動作条件で、自動化と感度増強の点で最も興味深いのはナノエレクトロスプレー動作条件である。しかし、現在、ナノESI−MS(ナノエレクトロスプレーイオン化−質量分析法の略)が全面的に手動プロセスに基づいているという事実によって、分析速度には限度があり、サンプル流量は制限されている。現在利用可能なツールは、ロボット化した自動化分析には役立たない。このことが、この種の応用への本発明の開発の動機付けを説明している。
【0118】
本発明が目指す第2の種類の応用は、較正サイズの滴を平滑又は粗い表面に堆積することである。これは、DNA、ペプチド、PNAチップ又は任意の他種の分子においては主たる関心事である。この種の応用は、そのサイズは通常は分析ウェーハの作製に望まれる精細度に依存する、較正サイズの液体の滴という、離散的形式で流体を運ぶことができるデバイスを必要とする。滴が小さいほど、ウェーハへの堆積はより互いに密なものになって堆積密度がより高くなり、したがって分析対象の物質の密度が高くなる。本発明の主題であるデバイスはこの目的に用いられることができる。毛管スロット5の幅、及び滴の吐出のために印加される電圧値が、前記噴霧化デバイスによって吐出される滴のサイズを調整する。こうして分析ウェーハの精細度は、デバイスのスロットの幅の関数として調節されることができる。最後に、噴霧化電圧は交流であるので、交流電圧の周波数に直接依存した滴/分での堆積率を与える。上記に示した較正された滴の堆積は、DNAチップなどの分析ウェーハの作製に用いられることができる。それは、MALDI(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization、マトリックス支援レーザーデソープション/イオナイゼーション)ターゲットの作製にも適用されることができ、このMALDIイオン化を伴って質量分析法で分析されるサンプルは、その結晶化と質量分析計への導入前に離散的方法で堆積される。こうして、つけペン型形状を有した本発明の噴霧化デバイスは、例えば分離カラムの出力に結合されて、分離技法と質量分析法によるインラインMALDI方式分析との間の結合を可能にする。液滴は最終的にセルによって置き換えられることができる。この場合、セルは同様に離散的方式で吐出され、例えばセルチップを精緻加工する目的でウェーハ上に堆積される。
【0119】
本発明により目指される第3の応用は、100ナノメータ前後のスケールでの分子書き込みである。現在、この種の動作は、重厚かつ嵩張るデバイスによって機能しているAFM先端によって実行されている。液体の吐出は、AFMの場合、先端と堆積表面を擬似接触させることに基づくか、又は、液体への圧力の印加に基づく。この技法の適用は、電圧の作用によって液体を吐出することであって、圧力や、接触を起こすことによってではない。実際両方の場合において、吐出は、ピペットの先端のレベルでの液体の表面張力が液体のカラムにかけられた別の力を凌駕したときに誘起される。このことは、電気的な力が表面張力を凌駕し、それが液滴の形成に結びつくエレクトロスプレー・デバイスで想定されてよい。さらに、反応種の形成はエレクトロスプレー・プロセスに固有のものである。この流体吐出技法は、液体を運ぶ構造の上流に、フリーラジカルなどの反応種を作成するデバイス、プラズマ放電又はマイクロ波放電といった複雑なデバイスを一切置かずに済む。
【0120】
したがって本発明は、平滑又は粗い基板上への書き込みの目的に用いられてよく、その場合書き込み溶液(擬似インク)の解放は電圧の印加によって支配されている。第1の応用分野と同様に、主要な目標は先端の末端のサイズを最小限にすることであり、この寸法は噴霧化による吐出のサイズを調整しており、ひいては最終基板への所望の書き込み精細度を調整している。先端の幅は1マイクロメートル以下である。吐出のサイズと流体流量に影響している別の要因は、液体に印加される噴霧化電圧である。最後に、基板を腐食する溶液を基板が分注するために該デバイスが使われる場合は、反応種の生成は、流体を運ぶつけペン型構造内に電極を埋め込むことによって強化されることができる。そこでこれらの電極は反応種の形成につながる電気化学反応の場となる。
【0121】
次に、以下の実施例について説明する。
【実施例1】
【0122】
第1の実施例:本発明に係る微細加工されたナノエレクトロスプレー・ソースの設計
【0123】
第1の実施例は、本発明に説明される噴霧化デバイスを形成するために選択される寸法と形状に関する。
【0124】
この第1のデバイスは、対象応用分野、すなわち溶液の、質量分析法による分析前のイオン化のためのナノエレクトロスプレーに起因して小さな先端寸法を有している。このデバイスは図1Aと図1Bに従って形成される。このデバイスの槽4は2.5mmx2.5mmxe(μm)の寸法を有し、eはウェーハ2を形成するために用いられる材料の層厚みである。eの値は、以後考察する、100ナノメータ前後である犠牲材料の厚みhの厚みに近い。毛管スロット5の幅は、先端3の末端6で8μmである。毛管現象効果と毛管スロット5内への液体の有効な貫入を観察するためのウェーハ2の厚みは、スロット厚みの値に追従する。これは、スロットの高さhと幅wの間の割合によって定められるパラメータR、すなわちR=h/w、の値によって支配される。毛管現象効果を観察するためにはこの割合は1より大きくなければでなければならないようである。したがって、ウェーハの厚みは10マイクロメータ前後よりも大きくなければならない。さらに、末端6での構造の湾曲につながる機械的制約の問題を免れるために、この厚みは35μmに設定された。
【実施例2】
【0125】
第2の実施例:第1の実施例に説明された設計ソースの、シリコン及びSU−8材料による製造
【0126】
第2の実施例は、第1の実施例に説明された噴霧化ソースの、微細技術による製造に関する。使用される材料は支持体1に関してはシリコンであり、つけペン型ウェーハ2に関しては、ネガ型フォトリソグラフィー樹脂SU−8である。製造方法は上述した方法に由来する。それは選択された材料に適用される。
【0127】
3インチの、シリコン配向され(100)、nドープされた基板は、200nmの酸化シリコン(SiO2)層で被覆され、リソグラフィーによってマスキングされる。SiO2の層は、HF:H2Oの酸性溶液によって、マスキングされていない区域が腐食される。露光されたシリコンは次いで、劈開線を実現するために苛性ソーダ溶液(KOH)によって腐食される。次に、シリコンの表面に、150nm厚のニッケル層が、アルゴン存在下の噴霧技法(Plassys MP 450S)によって堆積される。つけペンの先端の下にニッケルのみが残るように、ニッケル層は局所的にUVフォトリソグラフィーによって腐食される(ポジ型感光樹脂AZ1518[1.2μm]、エッチング溶液HNO3/H2O(1:3))。フォトリソグラフィー樹脂の痕跡を完全に除去した後で、シリコン表面への樹脂SU−8の粘着を最適化するためシリコンのウェーハは170℃で30分間脱水される。樹脂SU−8の35μmの層は、フォトリソグラフィーのステップを踏む前に厚みを均一化するために旋回子によってシリコン基板上に広げられる。つけペン方式のウェーハ2はこの樹脂SU−8層で、従来のUVフォトリソグラフィー技法によって形成される。適切な試薬(1−メトキシ−2−プロパノールアセタート、PGMEA)による樹脂SU−8の現像の後で、ニッケル層は上述の酸性溶液(HNO3/H2O)によって腐食される。このニッケルの化学的腐食のステップは、この方法が数時間かかることあったとしても樹脂SU−8を腐食することはない。最後に、デバイスを乾燥した後で、シリコン基板1は図4A及び図4Bに示される技法で切られる。ここで用いられる技法は、前もって支持体から剥離されているので、つけペンの構造を保存する。本方法に従って製造されたつけペン型噴霧化ソースの走査型電子顕微鏡写真(日立S4700)が、先端のその支持体からの適正な剥離を確認している。
【0128】
上述した製造方法は電極の形成は含まない。
【実施例3】
【0129】
第3の実施例:100マイクロメータ前後の粒子吐出デバイスの設計
【0130】
第3の実施例は、本発明で説明された、100マイクロメータ前後のサイズを持つ粒子吐出デバイスを形成するために選択される寸法と形状に関する。
【0131】
このデバイスは第1の実施例で説明されたものよりも大きな寸法を有している。ここで、毛管スロット5と槽4の寸法は、100マイクロメータ前後の物体を取り扱うのに適合したものでなければならない。この寸法範囲により、第3の実施例で説明されるデバイスもまた、例えばセルチップの作製のための、100μm直径に近いサイズのセルを取り扱うために適用される。
【0132】
前記デバイスの槽4は、1cmx1cmxe(μm)の寸法であり、eはウェーハ2の厚みである。第1の実施例と同様に、eの値は、ウェーハの末端6でのアスペクト比Rを1より大きくするために、毛管スロット5の幅の関数として規定される。このデバイスによって処理される粒子は100マイクロメートル前後のサイズを有しており、したがって毛管スロット5は100μmより大きな幅を有していなければならない。しかし、粒子は凝集する傾向にあるので、この幅は過大に大きく選択してはならない。それは、取り扱う粒子のサイズの倍近くであることが好ましい。結果として、スロットの幅は150μm、ウェーハの幅は200μmに選択される。
【0133】
つけペン型ウェーハ2の製造のために留保される材料は、ここでもネガ型フォトリソグラフィー樹脂SU−8であり、支持体1として選択される材料はガラスである。樹脂SU−8は、セルなどの粒子を取り扱うためにここで興味を引くが、それは、これらのセルはこの材料に粘着しないからである。結果としてガラス製の支持体1は、デバイスへのセルの望ましくない粘着を防ぐため、それ自体も樹脂SU−8の薄膜で被覆されている。
【実施例4】
【0134】
第4の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。I:プラチナ製ワイヤによる電圧の印加。
【0135】
第4の実施例は、質量分析法分析向けに第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの、質量分析による試験である。本実施例では、噴霧化電圧は、図5に示すように槽のレベルで液体に浸されたプラチナ製ワイヤによって噴霧される液体に印加される。
【0136】
噴霧化デバイスは、xyzに移動できる可動部品30上に配置されている。この可動部品30は、質量分析計25でのイオン化電圧が印加される金属部品31を備える。シリコン支持体1は、前記可動部品30へのデバイス固定中に、予防手段としてこの金属部品31から隔離されるが、それはこの材料の半導体特性に起因する。金属部品31とデバイスの槽の間の電気結合は、槽内に導入され分析対象溶液33に浸されているプラチナ製ワイヤ32によって確保されている。噴霧化試験に用いられる溶液である、標準的ペプチド溶液(グラミシジンS、Gramicidene S)は、デバイスの槽に堆積され、可動部品30は質量分析計25の入力側に導入される。試験はサーモフィニガン社(Thermo Finnigan)製イオントラップ型質量分析計(LCQ DECA XP+)で実行される。そして電圧が液体に印加される。イオントラップに装備されたカメラは、電圧が印加されるとテイラー・コーンを可視化させる。毛管スロットは8μmの幅を有している。
【0137】
図6は、グラミシジンSの5μM溶液及びイオン化電圧0.8kVで2分間行われた実験の質量分析計により記録された総イオン電流を示すグラフである。Y軸は相対強度IRを表す。X軸は時間を表す。図7は、グラミシジンSの5μM溶液、1.2kVの電圧で得られた質量スペクトルに対応する。質量スペクトルは2分間の信号取得、すなわち80スキャンにわたって平均される。
【実施例5】
【0138】
第5の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。II:シリコン支持体への電圧の印加。
【0139】
第5の実施例は第4の実施例と同様であるが、こちらでは電圧はプラチナ製ワイヤによって印加されるのではなく、シリコンの半導体特性を用いている。
【0140】
第5の実施例はしたがって、第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの、噴霧化デバイスの支持体1を構成している材料へのイオン化電圧の印加を伴った質量分析法による試験である。
【0141】
前の実施例と同じ方式で、噴霧化デバイスは、xyzに移動でき金属部品41を有した可動部品40上に配置されている。ここで、シリコン支持体1は、質量分析計25でのイオン化電圧が印加される可動部品40の金属部品41と電気接合させられる。デバイスはテフロンテープによって可動部品40に固定され、テープは槽の上流部分でデバイスを包囲している。試験は前と同様に、可動部品40のイオントラップ25への導入と、電圧印加の後に実行される。毛管スロットは8μmの幅を有している。
【0142】
試験は別の標準的ペプチドである、グル−フィブリノペプチドB(Glu-Fibrinopeptide B)で実行された。この場合のイオン化電圧は前と同範囲で、1μM未満の濃度のペプチドに対して1〜1.4kVである。図9は、0.1μM溶液及び1.1kVの電圧での3分間の信号取得で計測された総イオン電流を表す。IRは相対時間であり、tは時間である。図10は、この取得で得られ、3分間すなわち120スキャンにわたり平均化された質量スペクトルである。IRは相対強度である。
【実施例6】
【0143】
第6の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。III:フラグメンテーション実験(MS/MS)。
【0144】
第6の実施例は試験実行方式に関しては第5の実施例と同じである。試験アセンブリは前の実施例と同じであり、噴霧化デバイスは第1の実施例に説明したものに対応し、第2の実施例に説明された製造方法に従って実行される。電圧は、質量分析計25に導入された可動部品40上に含まれた金属区域41を介して、支持体1の材料であるシリコンに直接印加される(図8参照)。毛管スロットは8μmの幅を有している。
【0145】
溶液は前と同じ、1μM以下濃度の標準的ペプチド、グル−フィブリノペプチドBの溶液である。ここではペプチドはフラグメンテーション実験にかけられる。二重荷電形態(M+2H)2+のペプチドはイオントラップで特定的に分離されてフラグメンテーションされる(標準化衝突エネルギーパラメータ30%、高周波駆動因子0.25に設定)
【0146】
図11は、0.1μM溶液で1.1kVの電圧でのこの実験中に得られたフラグメンテーションスペクトルを表す。IRは相対強度である。スペクトルは2〜3分にわたる噴霧化取得信号にわたり平均化された。異なるMS/MSフラグメンテーションはそのシーケンスで注釈を付けられた。
【実施例7】
【0147】
第7の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。IV:生物学的混合物の分析への応用。
【0148】
第7の実施例は第5の実施例と同様(同じ方法で製造された同じデバイス、及びシリコン支持体1への電圧印加という同じ条件で試験された)であるが、ここで分析されるサンプルは標準的なペプチドではなく、タンパク質の消化によって得られるペプチドの複合混合物、シトクロムC(Cytochrome C)であるという点のみが異なっている。この消化物は、異なる長さと異なる物理/化学特性を持つ13のペプチドによって構成される。この消化物は、1μM濃度及び1.1〜1.2kVのイオン化電圧で試験される。毛管スロットの幅は8μmである。
【0149】
図12は、1μM濃度及び1.2kVでシトクロムCの消化物に関して得られた質量スペクトルを表す。IRは相対強度である。ピークにはフラグメントのシーケンスとその荷電状態で注釈を付けた。この実験中に15個のペプチドのうち、11個は明確に同定された。
【実施例8】
【0150】
第8の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。V:上流に配置されたシリンジポンプ又はナノLCチェーン(nano LC chain)による前記デバイスの継続的供給
【0151】
第8の実施例は第5の実施例と同様(同じ方法で製造された同じデバイス、及びシリコン支持体1への電圧印加という同じ条件で試験された)であるが、ここでは分析されるサンプルは、上流に配置されたシリンジポンプ又はナノLCチェーンによって前記デバイスへ継続的に運ばれるという点が異なっている。
【0152】
シリンジポンプへのカップリングのため、液体の流量は500nL/分に固定された。この試験のための溶液は第5の実施例のものと同じであるが、ここではペプチド、グル−フィブリノペプチドBの濃度は1μMであり、噴霧化電圧は1.2kVに設定されているという点が異なる。毛管スロットの幅は8μmである。
【0153】
図13は、前記条件下で6分間実行された噴霧化試験中に記録された総イオン電流を示す。IRは相対強度であり、tは時間を表す。図14は、この6分の取得期間、すなわち240スキャンにわたって平均化された質量スペクトルに対応する。IRは相対強度である。
【0154】
ナノLCチェーン(流量1〜1000nL/分の液体クロマトグラフィー)へのカップリングは、ナノLCの分離部と、イオントラップでの質量分析法によるインライン分析との間という従来条件で実行された。流体流量は100nL/分であり、イオン化は1.5kVであった。分離実験は、800fmol/μLでシトクロムCの消化物に実行され、この消化物800fmolは分離カラムに注入された。毛管スロットの幅は10μmである。図15は、分離実験中に質量分析計で検出された総イオン電流を表す。IRは相対強度である。図16は、図15で示したピークに関して、保持時間23.8分で得られた質量スペクトルである。それは、シトクロムCのフラグメント92〜99の溶出及び分析に対応する。IRは相対強度である。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1A】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースの上面図
【図1B】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースの側面図
【図2】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースの先端の末端の斜視図
【図3A】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3B】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3C】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3D】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3E】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3F】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3G】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3H】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図4A】図3A〜図3Hに示した製造方法を実行するために用いられることができる劈開技法を示す図
【図4B】図3A〜図3Hに示した製造方法を実行するために用いられることができる劈開技法を示す図
【図5】その実行中に、本発明に係るエレクトロスプレー・ソースが質量分析計と関連付けられる試験の間で用いられるアセンブリを表す図
【図6】図5のアセンブリで、本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを用いた試験中に得られた総イオン電流を表すグラフ
【図7】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを図5のアセンブリに用いた試験中に得られた質量スペクトルを示すグラフ
【図8】その実行中に、本発明に係るエレクトロスプレー・ソースが質量分析計と関連付けられる試験の間で用いられる別のアセンブリを表す図
【図9】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを図8のアセンブリに用いた試験中に得られた総イオン電流を表すグラフ
【図10】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを図8のアセンブリに用いた試験中に得られた質量スペクトルを示すグラフ
【図11】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースで得られたグル−フィブリノペプチドのフラグメンテーション質量スペクトルを示すグラフ
【図12】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースの媒介によりシトクロムCの消化物に関して得られた質量スペクトルを示すグラフ
【図13】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを用いた試験中に得られた総イオン電流を示すグラフ
【図14】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを用いた試験中に得られた質量スペクトルを示すグラフ
【図15】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを用いたカップリング試験中にイオントラップ型質量分析計に記録された総イオン電流を示すグラフ
【図16】図15のグラフに対応する質量スペクトルを示すグラフ
【技術分野】
【0001】
本発明は、独自のエレクトロスプレー・ソース、その製造方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロスプレーは、高圧の作用で液体を噴霧状態に変換する現象である。(M.クロポー(M. CLOUPEAU)著,「電気力学機能モード:批判的論評」(Electrohydrodynamic spraying functioning modes: a critical review),ジャーナル・オブ・エアロゾル・サイエンス(Journal of Aerosol Science),1994年,25(6),p1021−l036)。このことを達成するために、液体は毛管内へ運ばれ、高圧の直流又は交流電流の電圧あるいはそれらを重ねたものが印加される。(Z.フネイティ(Z. HUNEITI)ら著,「液体ジェット導通に関する交流結合直流電場」(The study of AC coupled DC fields on conducting liquid jets),ジャーナル・オブ・エレクトロスタティクス(Journal of Electrostatics),1997年,40、41,p97−102)。毛管の出口で、液体は電圧の作用で噴霧化される。液体によって形成されたメニスカス(menisucus)の表面は、引き伸ばされて1つ又は複数のテイラー・コーン(Tailor cone)を形成し、そこから液体の荷電液滴が放出され、それが展開して荷電粒子を含むガスを生じる。噴霧状態の形成は、電圧印加による電気の力が、毛管の末端における断面上での液体の表面張力を補償し上回ったときに生じる。
【0003】
毛管、より厳密にはその出口オリフィスのサイズが、噴霧化現象を観測するための、毛管から出てくる液体の流れ、及び印加されるべき電圧に直接関与する。2つの別々のエレクトロスプレー動作条件が存在し、それらはそれぞれの確立特性によって区別される。
【0004】
・100μmの毛管出口サイズ、流体流量が1−20μL/分の範囲及び3〜4kVの高電圧に対応する、従来式と称する動作条件
【0005】
・流体流量が1μL/分未満、1kV前後の高電圧、毛管内経が1―10μmである、ナノエレクトロスプレーとして知られる動作条件(M.ウィルムら(M. WILM et al.)著,「ナノエレクトロスプレー・イオンソースの分析特性」(Analytical Properties of the Nanoelectrospray Ion Source),分析化学(Analytical Chemistry),1996年,68(1),p1−8)。
【0006】
交流成分を有する電圧の印加は、自己周波数への同期化によりエレクトロスプレー・プロセスの安定化を可能にする。(F.シャボニエールら(F. CHARBONNIER et al.)著,「コレクタ側での短絡の開設による,エレクトロスプレー・イオン化中における毛管法と対極法の間の差別化」(Differentiating between Capillary and Counter Electrode Methods during Electrospray lonization by Opening the Short Circuit at the Collector),分析化学(Analytical Chemistry),1999年,71(8),pl585−1591)。エレクトロスプレー現象により生成した滴の化学組成は、液体内に存在する種の化学修飾を電気化学によって可能にする複数で個別の電圧を印加することにより、そのアプリケーションを考慮して改善され得る。(米国特許出願第2003/0015656号明細書、ヴァン・バーケル(G. J. VAN BERKEL)著,薄型チャネル平面電極エミッタを用いたエレクトロスプレーにおける被分析物酸化の高度研究と制御(Enhanced Study and Control of Analyte Oxidation in Electrospray Using a Thin-Channel, Planar Electrode Emitter),分析化学(Analytical Chemistry),2002,74(19),p5047−5056、ヴァン・バーケルら(G. J. VAN BERKEL et al.)著,「エレクトロスプレーイオン化質量分析のための誘導体化 3.電気化学的にイオン化可能な誘導体」(Derivatization for electrospray ionization mass spectrometry. 3. Electrochemically ionizable derivatives),分析化学(Analytical Chemistry),1998年,70(8),p1544−1554、F.ザウら(F. ZHOU et al.)著,「エレクトロスプレー質量分析法とオンラインで統合した電気化学」(Electrochemistry Combined Online with Electrospray Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),1995年,67(20),p3643−3649参照のこと)。
【0007】
エレクトロスプレーの応用分野は以下の如くである。
【0008】
最初に、割合m/zの関数(mは被分析物の質量、zはその電荷である)としての分子の質量分析の前の、分子のイオン化である。この場合、液体の流れは連続的である。(M.ドールら(M.DOLE et al.)著,「マクロイオンの分子線」(Molecular beams of macroions),ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics),1968年,49(5),p2240−2249、L.L.マックら(L. L. MACK et al.)著,「マクロイオンの分子線II」(Molecular beams of macroions. II),ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics),1970年,52(10),p4977−4986、米国特許第4209696号明細書、M.山下ら(M. YAMASHITA et al.)著,「エレクトロスプレーイオンソース、自由噴流主題のもう1つのバリエーション」(Electrospray ion source. Another variation on the free-jet theme),ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(Journal of Physical Chemistry),1984年,88(20),p4451−4459、M.山下ら(M. YAMASHITA et al.)著,「エレクトロスプレーイオンソースでの陰イオン生成」(Negative ion production with the electrospray ion source),ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(Journal of Physical Chemistry),1984年,88(20),p4671−4675)。
【0009】
・エレクトロスプレー・デバイスの第2の応用は較正サイズでの滴の製造である。そのような滴は支持体上に堆積されることができるが(C.J.マクニールら(C. J. McNEAL et al.)著,「カリホルニウム252の不揮発性分子のプラズマ脱離研究のためのエレクトロスプレー方法による薄膜堆積」(Thin film deposition by the electrospray method for californium-252 plasma desorption studies of involatile molecules),分析化学(Analytical Chemistry),1979年,51(12),p2036−2039、R.C.マーフィーら(R. C. MURPHY et al.)著,「電界放出エミッタ及び脱離化学的イオン化プローブのエレクトロスプレー装填」(Electrospray loading of field desorption emitters and chemical ionization probes),分析化学(Analytical Chemistry),1982年,54(2),p336−338)、例えば、支持体は、高率分析専用の、DNAチップ又はペプチドチップなどの分析チップの製造のためのウェーハである(V.N.モロゾフら(V. N. MOROZOV et al.)著,「生物学的物質又は生物活性物質の単一構成要素又は複合構成要素マイクロアレイの量産のための方法としてのエレクトロスプレー堆積」(Electrospray Deposition as a Method for Mass Manufacture of Mono- and Multicomponent Microarrays of Biological and Biologically Active Substances),分析化学(Analytical Chemistry),1999年,71(15),p3110−3117、R.モーマンら(R. MOEMAN et al.)著,「再現性のあるマイクロメータサイズのタンパク質スポットのマイクロアレイ製造のための技法としての微細化エレクトロスプレー」(Miniaturized electrospraying as a technique for the production of microarrays of reproducible micrometer-sized protein spots),分析化学(Analytical Chemistry),2001年5月15日,73(10),p2183−2189、N.V.アブセンコら(N. V. AVSEENKO et al.)著,エレクトロスプレー堆積によって製造された複合構成要素タンパク質マイクロアレイでの免疫学的検定(Immunoassay with Multicomponent Protein Microarrays Fabricated by Electrospray Deposition),分析化学(Analytical Chemistry),2002年,74(5),p927−933)又は、質量分析法による分析の前のMALDIウェーハへの溶液堆積(マトリックス支援レーザー脱離イオン化、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization)、(J.アレックソンら(J. AXELSSON et al.)著,「エレクトロスプレーでのサンプル作成の結果としてマトリックス支援レーザー脱離/イオン化における改善された再現性及び増強された信号強度」(Improved reproducibility and increased signal intensity in matrix-assisted laser desorption/ionization as a result of electrospray sample preparation),質量分析法速報(Rapid Communications in Mass Spectrometry),1997年,1l(2),p209−213)。これらの滴は、独自の滴を取り扱うための流体力学的平衡へと液体を注入するため(M.M.ボーガンら(M. J. BOGAN et al.)著,「電気力学的平衡バランスで調整された液滴のMALDI−TOF−MS分析: 壁のないサンプル調整」(MALDI-TOF-MS analysis of droplets prepared in an electrodynamic balance : " wall - less" sample preparation)、分析化学(Analytical Chemistry),2002年,74(3),p489−496)、又は、それらの集積が、封入された分子又は準安定な結晶状態へとつながる(I.G.ロサテールら(I. G. LOSCERTALES et al.)著,「帯電した同軸液体ジェットを介したマイクロ/ナノ封入」(Micro/nano encapsulation via electrified coaxial liquid jets),サイエンス(Science),ワシントンD.C.米国,2002年,295(5560),p1695−1698)。この場合、噴出は離散的な方式で起こり、ソースの寸法は形成される堆積のサイズに概ね依存する。
【0010】
・第3の応用は、液体内に含有された、制御されたサイズの粒子を堆積することである。(I.W.レンゴロら(I. W. LENGGORO et al.)「エレクトロスプレー及び差動可動性分析器法によるコロイドナノ粒子の定寸」(Sizing of Colloidal Nanoparticles by Electrospray and Differential Mobility Analyzer Methods)、ラングミュアー(Langmuir)2002年、18(12)、4584−4591。この粒子は、セルチップ製造のためのセルと置き換えられてもよい。
【0011】
・第4の応用は、明確に規定されたサイズのエマルジョンにつながる、液体内でエレクトロスプレーによって形成された滴の注入である(R.J.ファイファーら(R. J. PFEIFER et al.)著,「電気流体力学的に噴霧された液体液滴の対質量電荷の関係」(Charge-to-mass relation for electrohydrodynamically sprayed liquid droplets),流体物理学(Physics of Fluids),1958−988年,1967年,1O(10),p2149−54、C.ソーリスら(C. TSOURIS et al.)著,「ナノ導電性流体の導電性流体への静電分散の試験的調査」(Experimental Investigation of Electrostatic Dispersion of Nonconductive Fluids into Conductive Fluid),インダストリアル&エンジニアリングケミストリー・リサーチ(Industrial & Engineering Chemistry Research),1995年,34(4),p1394−1403、R.ヘンゲルモーレンら(R. HENGELMOLEN et al.)著,「エアロゾル・スプレー由来のエマルジョン」(Emulsions from aerosol sprays),ジャーナル・オブ・コロイド・アンド・インターフェース・サイエンス(Journal of Colloid and Interface Science),1997年,196(1),p12−22)。
【0012】
・第5の応用は、分子又は化学溶液によるウェーファへの分子の書き込みであり、(S.N.ジャヤシンゲら(S. N. JAYAS INGHE et al.)著,「濃縮懸濁液からの複数軌道の同時印刷の新規方法」(A novel method for simultaneous printing of tracks from multiple tracks from concentrated suspensions),材料研究イノベーション(Materials Research Innovations),2003年,7(2),p62−64,それは、マイクロメータ未満であり得るスケールでの材料の機能化又は局所的な化学処理を目的としたものである。
【0013】
これらの広範な応用は、互いに組み合わされてもよい。
【0014】
通常、ナノエレクトロスプレーに用いられるソースは、ガラス又は溶融シリカ製の毛管の形態をとる。それらは、1〜10μmの出口オリフィスを製造するために、熱圧伸成形又は材料の酸腐食によって製造される。(M.ウィルムら(M. WILM et al.)著,「エレクトロスプレーとテイラー・コーン理論、ついに巨大分子のドールの光線か?」(Electrospray and Taylor Cone theory, Dole's beam of macromolecules at last?),インターナショナル・ジャーナル・オブ・マススペクトロメトリー・アンド・イオン・メソッド(International Journal of Mass Spectrometry and Ion Methods),1994年,136(2−3),p167−180)。エレクトロスプレー電圧が、適切な外部導電被膜を介して印加されてもよい。金又はAu/Pd合金などの金属被膜の場合(G.A.バラスコビックら(G. A. VALASKOVIC et al.)著,「ナノリットルエレクトロスプレー質量分析法のための長寿命の金属化先端」(Long-lived metalized tips for nanoliter electrospray mass spectrometry),ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティー・フォア・マススペクトロメトリー(Journal of the American Society for Mass Spectrometry),1996年,7(12),p1270−1272、銀の場合(Y.−R.チェンら(Y.-R CHEN et al.)著,「銀被覆シースレス・エレクトロスプレー・エミッタ製造のための簡易な方法」(A simple method for manufacture of silver-coated sheathless electrospray emitters),質量分析法速報(Rapid Communications in Mass Spectrometry),2003年,17(5),p437−441),カーボンベースの材料の場合(X.シュら(X. ZHU et. al.)著,「シースレス毛管電気泳動/ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析法のためのコロイドグラファイト被覆エミッタ」(A Colloidal Graphite-Coated Emitter for Sheathless Capillary Electro phoresis/Nanoelectrospray Ionization Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),2002年,74(20),p5405−5409、又は、ポリアニリンなどの導電性ポリマーの場合(P.A.ビグワーフら(P. A. BIGWARFE et al.)著,「ポリアニリン被覆ナノエレクトロスプレーエミッタ:陰イオンモードでの性能特性」(Polyaniline-coated nanoelectrospray emitters: performance characteristics in the negative ion mode),質量分析法速報(Rapid Communications in Mass Spectrometry),2002年,16(24),p2266−2272)がある。エレクトロスプレー電圧は、ソースへの金属ワイヤ導入を伴って液体を介して印加されてもよい。(K. W. FONGら(K. W. Y. FONG et al.)著,「ナノリットル流量におけるエレクトロスプレー質量分析のための新規非金属化先端」(A novel nonmetallized tip for electrospray mass spectrometry at nanoliter flow rate),ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティー・フォア・マススペクトロメトリー(Journal of the American Society for Mass Spectrometry),1999年,10(1),p72−75)。
【0015】
しかし、ナノエレクトロスプレーに特化した従来技術のデバイスは、いくつかの弱点に苦慮している。(B.フェンら(B. FENG et al.)著,「サブマイクロリットルのタンパク質サンプルの質量分析のための制御可能な流量での単純なナノエレクトロスプレー構成」(A Simple Nanoelectrospray Arrangement With Controllable Flowrate for Mass Analysis of Submicroliter Protein Samples),ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティー・フォア・マススペクトロメトリー(Journal of the American Society for Mass Spectrometry),2000年,11,p94−99。
【0016】
・第1に、これらの毛管はあまり堅牢ではない。それらの製造方法の制御は貧弱なもので、寸法再現性があまり良好ではないソースを提供する。
【0017】
・外部導電性被膜が急激に劣化する。
【0018】
・その針型形状により、それらの使用方式は非常に便利というわけではない。噴霧される液体は、マイクロピペットと適切な先細の先端によって針へと手動で導入されなければならない。
【0019】
・溶液の充填は針への気泡の導入につながり、それは後の段階において噴霧状態の安定性を乱す可能性があるため、消散させなければならない。
【0020】
・最後に、ほとんどの場合、出口オリフィスは液体の通過を許容するには狭すぎるため、結果として毛管はまず1壁面に沿って注意深く決壊されなければならず、それはさらにその寸法の不安定な性質を増長する。
【0021】
このように、標準的な商用のソースは、まず、制御式で再現性のある高品質な噴霧化に対して適合性が乏しく、第2に、その全面的に手動性である使用方式によりロボットの使用に対して適合性が乏しく、第3に、以下に論じる流体マイクロシステムに対して適合性が乏しい。
【0022】
これらの欠点が、現時点でプロセスのロボット化及び自動化を必要とする、いくつかのエレクトロスプレー応用分野の妨げになっている。これは上述した応用分野での実情である。すなわち、質量分析法による分析、較正サイズの滴の堆積、及び先端によるサブマイクロメータスケールでの書き込みである。
【0023】
ここ20年間に、化学及び生物学の分野におけるマイクロ流体工学の出現を目の当たりにしてきた。この領域は、いくぶん実験器具の小型化、また、それによるマイクロテクノロジーと生物学の融合又はマイクロテクノロジーと化学分析の融合に由来する。こうしてマイクロテクノロジーの技法は、マイクロメートルオーダーの特徴的サイズの、一連の反応性及び/又は分析、化学及び/又は生化学的/生物学的プロセスを集積する統合的マイクロシステムの製造に利益をもたらす。
【0024】
今日プロセスの迅速さと自動化が要求される化学分野及び生物学分野でのマイクロ流体工学の進展は以下により説明される。
【0025】
・速度はデバイスのサイズに主に依存するという事実に起因したプロセス速度増加。この速度増加は、即座の応答がしばしば期待される医学的診断又は環境分析型の応用分野で特に重要である。
【0026】
・プロセスの並列化の実現性。マイクロテクノロジーは、多数の同一デバイスの同時製造を可能にする。
【0027】
・自動化プロセスを視野に入れたロボット・インターフェースを伴う微細加工物への適合性。
【0028】
・特に生物学的分析又は環境分析の場合における、実験者が使用可能な分で取り扱われる容量の妥当性。
【0029】
・しばしばエラーと汚染のソースとなる、人間の介入の排除に至る制限
【0030】
・エレクトロスプレーによるイオン化を伴った質量分析法を含む特定の技術分析での感度増強
【0031】
・全体として、器具のスケール縮小や安定した技法に対応するに留まらない新たな性能。
【0032】
マイクロ流体デバイスはマイクロテクノロジー技法によって製造される。これらの微細加工には広範な材料が今や利用可能であり、その範囲はシリコンやクォーツ(マイクロテクノロジーでは一般的な材料)から、ガラス、セラミック及びエラストマーやプラスチックといったポリマー型の材料まで広がっている。こうして、マイクロ流体工学は以下の両方から益する。
【0033】
・マイクロエレクトロニクス・アプリケーション向けに開発され用いられた材料及び製造技法の遺産、及び、
【0034】
・プラスチック型の材料などの、他の新興材料に適合させて平行して開発されており、マイクロ流体への応用にも相当の利益があり、その主要な誘引力はその低コストにある、新規の製造方法。
【0035】
・より詳細には、化学及び生物学に適用可能な技術的製造に想定することができる材料は以下である(T.マクレディ(T. MCCREEDY)著,「マイクロリアクター及びマイクロ化学分析システムに一般に使われる製造技術と材料」(Manufacture techniques and materials commonly used for the production of microreactors and micro total analytical systems),分析化学の動向(TrAC、Trends in Analytical Chemistry),2000年,19(6),p396−401)。
【0036】
・堅牢かつ実証された製造方法から益するマイクロテクノロジーの伝統的材料である、シリコンなどの半導体タイプの材料。これらの製造方法のうち、とりわけ、リソグラフィー、物理的エッチング及び化学エッチングを挙げることができる(P.J.フレンチら(P. J. FRENCH et al.)著,「表面対巨大マイクロマシニング、適切な適用への競争」 (Surface versus bulk micromachining: the contest for suitable applications),ジャーナル・オブ・マイクロメカニクス・アンド・マイクロエンジニアリング(Journal of Micromechanics and Microengineering),1998年,8(2),p45−53)。結果として、特にシリコンが、10あるいは数ナノメータスケールの微小構造の製造に関して最も関心を呼ぶ材料である。さらに、その表面化学は極められており、処理にはその表面に存在するシラノール基を生かす。しかし、目指す応用によってはその半導体の性質が常に適しているとは限らない。それは透明ではなく、そのことで光学的検出技法(吸光UV、蛍光、ルミネッセンス)を一切排除することになる。材料のコスト自体が、或る種の大量製造(特に、独自使用物)には不適合にさせている。
【0037】
・最初のマイクロシステムの開発に用いられたクォーツ(J.S.ダネルら(J.S.DANEL et al.)著,「クォーツ:マイクロデバイスのための材料」(Quartz : material for microdevices),ジャーナル・オブ・マイクロメカニクス・アンド・マイクロエンジニアリング(Journal of Micromechanics and Microengineering),1991年,1(4),p187−98、は、その非常に高いコストにより魅力のあるものではなくなってきた。したがって、その物理的及び化学的特性にもかかわらず、次第に打ち捨てられるようになった。
【0038】
・クォーツやシリコンよりも安価な材料であるガラスは、電気浸透流の確立に適した表面特性により、広範に用いられてきた(K.佐藤ら(K. SATO et al.)著,「ガラス製マイクロチップへの化学分析と生化学分析システムの統合」(Integration of chemical and biochemical analysis systems into a glass microchip),分析科学(Analytical Sciences),2003年,19(1),p15−22)。シリコンと同じように、シラノール基がガラスの表面を覆っている。それらは、引き続いたガラス表面の化学修飾を想定することを可能にする。さらに、その透明な特性は、それらを光学的検出の場合に選択できる材料としている。しかし、その製造手法はシリコンほど極められていない。エッチング形状の切れが甘く、アスペクト比は劣っている。(T.R.ディートリッヒら(T. R. DIETRICH et al.)著,「光エッチング可能なガラスを利用したマイクロシステムのための製造技術」(Manufacture technologies for microsystems utilizing photoetchable glass),マイクロエレクトロニック・エンジニアリング(Microelectronic Engineering),1996年,30(1−4),p497−504)。さらに、それは脆くて砕けやすい材料である。
【0039】
・プラスチックとエラストマーをまとめたポリマー型材料。それらの主たる利点は、低原価での量産に適合するその低コストにある。これらの材料の多様性は広範な物理的及び化学的特性につながる。それらの主要な欠点は、材料の劣化や分解にさえつながりかねない、高温耐性の低さ、及び、化学及び生物学で通常使われる溶媒条件、有機、酸及び塩基媒体への感応性である。さらに、これらの材料の表面化学はよく知られていないため、その特性を修正するために導入される後続処理を困難なものにする。その製造手法は全く異なるものであり、成形/射出、レーザ・アブレーション及びLIGA技法に基づく(ドイツ語「Llthographie, Galvanoformung, Abformung」の頭字語)(J.ルービー(J . HRUBY)著,「LIGAマイクロマニュファクチャ概説」(Overview of LIGA micromanufacture),AIP会議予稿集,2002年,625「高エネルギー密度及び高パワーRF」(High Energy Density and High Power RF),p55−61)、フォトリソグラフィー、プラズマエッチング)。
【0040】
・プラスチック材料を雛形にしている製造費が嵩まない無機基板である、セラミック型の材料(W.バウワー(W.Bauer)著,「マイクロシステム技術におけるセラミック材料」(Ceramic materials in the microsystem technology),Keramische Zeitschrift,2003年,55(4),p266−27O )。主要な利点は、それらの製造には、クリーンルームのようなメンテナンスが高くつく専用のデバイスを要さず、単純で迅速なプロセス(レーザ・アブレーション、貼合せ、成形、ゾルゲル法)に基づいており、微細加工された構造の原価をさらに引き下げているということである。それらの表面状態はガラス又はシリコンの表面状態に匹敵し、最後に、ガラスなどの他の材料に比べてキャッピングが容易である。
【0041】
特に以下を期して、エレクトロスプレー・ソース又は針型先端の形成に、マイクロマニュファクチャリング手法が適用されてきた。
【0042】
・製造方法の制御、ソースとその寸法の再現性に関して毛管の全体的な質を向上させる
【0043】
・エレクトロスプレーイングの自動化とロボット化を促進するために、同じ材料のウェーハ上にマイクロ電子マイクロ部品を雛形にした、同一又は異なるデバイスを、1つ又はいくつかの寸法で多数個製造する
【0044】
マイクロテクノロジー技法によるエレクトロスプレー先端の製造は、2つの傾向に従う。
【0045】
・従来の形状を再現するエレクトロスプレー先端の製造、すなわち、微細加工された毛管、さらに通常は環状の断面を持つもの。このクラスには、化学物質を注入したり生物学的電位を計測したりといった、別の応用を意図した微細加工された針が含まれてよい。
【0046】
・マイクロテクノロジー技法によって製造され、先細の断面を有した、マイクロチャネル又は毛管出口としてのエレクトロスプレー・ソースの設計
【0047】
これらの微細加工されたエレクトロスプレー・デバイスは、流体マイクロシステムを雛形に、異なる種類の材料と異なる種類の方法を用いることに基づいている。
【0048】
技術的ルートにより毛管型形状の製造を目指す第1の傾向に従って、以下の説明を列挙することができる。
【0049】
・この手法により、伝統的なフォトリソグラフィー及びエッチング技法により窒化シリコンでエレクトロスプレー・ソースが製造されている(A.デサイ(A. DESAI et al.)著,「質量分析法のためのMEMSエレクトロスプレーノズル」(MEMS Electrospray Nozzle for Mass Spectrometry),1997年固体状態センサ及びアクチュエータ、トランスデューサ国際会議(Int. Conf. on Solid-State Sensors and Actuators, Transducers' 97)。前記デバイスの寸法は、40μmの長さと、1〜3μmの出口オリフィス内径である。前記ソースは、4kV近い噴霧化電圧と50nL/分の液体流量で質量分析法により、濃度が数マイクロモルの標準ペプチドで試験された。噴霧化電圧は前記デバイスの上流にて、液体供給毛管とこのプラチナ金属結合の接点のレベルで印加された。
【0050】
・フォトリソグラフィー材料であるポリマー型材料、パリレンで製造されたエレクトロスプレー・ソースについても記述されている。(国際公開第00/30167号パンフレット、L.リックリダーら(L. LICKLIDER et al.)著,「質量分析法のための微小機械加工されたチップベース・エレクトロスプレー・ソース」(A Micromachined Chip-Based Electrospray Source for Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),2000年,72(2),p367−375)。これらのソースは5x10μmの出口オリフィスを有し、シリコン製流体マイクロシステムの一体化部品として説明されている。それらは幅100μm高さ5μmのマイクロチャネルに結合されている。ここで噴霧化に必要な電圧は低く、同等な濃度と流体流量条件において1.2〜1.8kV前後である。電圧は、噴霧される溶液と接触させられる金属ワイヤに印加される。
【0051】
・シリコンも、針型構造の微小製造に用いられている。国際公開第00/1532l号パンフレットは、外径20μmに対して内径が10μm、高さ50ミクロンの、煙突様のエレクトロスプレー・デバイスを記載している。G.A.シュルツら(G. A. SCHULTZ et al.)著,タイトルが「質量分析法のための完全統合型モノリシック・マイクロチップ・エレクトロスプレー・デバイス」(A Fully Integrated Monolithic Microchip Electrospray Device for Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),2000年,2072(17),p4058−4063、の論文を参照することもよい。これらのソースは、材料への、ディープエッチングとして知られる物理的エッチングに由来するものである。それらのエレクトロスプレーでの動作は、1.25kVの高電圧を伴うものとして説明されているが、該電圧は、ソースの背後に配置されている導電性材料製の流体供給毛管に印加される。その試作品は、この種の、同様であって互いに独立して動作する100個のソースを備えたウェーハに一体化されたものとして記述されている。シリコン及び同様な製造方法が、針型構造の形成にも用いられ、それはエレクトロスプレーとして用いられるか(P.グリスら(P.GRISS et al.)著,「ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析法に基づくタンパク質分析のための微小機械加工された中空先端の開発」(Development of micromachined hollow tips for protein analysis based on nanoelectrospray ionization mass spectrometry),ジャーナル・オブ・マイクロメカニクス・アンド・マイクロエンジニアリング(Journal of Micromechanics and Microengineering),2002年,12(5),p682−687、J.ジョーダルら(J. SJODAHL et al.)著,「2次元ナノエレクトロスプレー質量分析法のための微小機械加工された中空先端のキャラクタライゼーション」(Characterization of micromachined hollow tips for two-dimensional nanoelectrospray mass spectrometry),質量分析法速報(Rapid Communications in Mass Spectrometry),2OO3年,17(4),p337−341、又は、生物学的電位計測針として用いられる(国際公開第03/15860号、P.グリスら(P. GRISS et al.)著,「生体電位測定のための微小機械加工された電極」(Micromachined electrodes for biopotential measurements),IEEE/ASMEジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システムズ(IEEE/ASME Journal of Microelectromechanical systems),2001年,10,p10−16)。それらの形状はそのアプリケーションに応じて多少変動がある。このエレクトロスプレー・デバイスは、その先端で断面が狭まってより狭い出口オリフィスになっていて上述したシリコン製のデバイスに似ているものの、生物学的電位計測向けの針は非常に先細りの先端を有している。前記デバイスを、ディープエッチング技法によりシリコンで製造する方法は非常に複雑であって、高コストかつ嵩張るデバイスを余儀なくさせ、特に、得られる構造の噴霧化電圧に関する性能は、標準的な商用のソースの性能に比べて劣っている。さらにそれらの形状は、流体マイクロシステムへの一体化に役立つとはいえない。
【0052】
L.リンら(L. LlN et al.)の、タイトルが「シリコン処理した極微針」(Silicon processed microneedles),IEEEジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システムズ(IEEE Journal of Microelectromechanical Systems),1999年,8,p78−84,の論文は、マイクロ流体ネットワークに結合された極微針について記述している。これらの針は、化学物質の現場(in situ)注入向けに開発されたのであって、噴霧化向けではないが、それらのデバイスの針状形状はナノスプレーソースの形状と類似している。これらの針は窒化シリコンで製造され、9x30〜50μm及び1〜6mmの方形の出口オリフィスを有している。
【0053】
・針型構造は最終的に別のポリマー材料であるポリカーボネートで、レーザ・アブレーション法で製造された。(K.タンら(K. TANG et al.)著,「改善された質量分析感応性のための微細加工されたエミッタ・アレイを用いた複数のエレクトロスプレーの発生」(Generation of multiple electrosprays using microfabricated emitter arrays for improved mass spectrometric sensitivity),分析化学(Analytical Chemistry),2001年,73(8),p1658−1663)。それらの寸法は以下の如くである。出口オリフィスの内径が30μmで高さ250μmである。噴霧状態の観測に必要な7kVで、流体流量は30μL/分と予測されるため、この例においても、ナノスプレーでの動作条件には寸法が大きすぎる。さらには製造方法も複雑である。これらのソースは3x3の四角に沿って配列された一連の9個のソースの形状をしている。それらは同時に動作し、同じ溶液を噴霧化する。
【0054】
第2の傾向は、マイクロチャネルの出口に先端を機械加工するか、又は、エレクトロスプレー・ソースとして機能する先端構造を製造することである。先端構造の角度は噴霧化現象に何ら影響を与えていないようである。第2の傾向によれば、
【0055】
・マイクロシステムのウェーハ上のマイクロチャネルの出口での噴霧化の試みは非常に決定的なものにはならなかった。印加されるべき電圧は非常に高く、これらの条件下では、液体はマイクロシステムのウェーハ上の出口表面に拡散しがちとなる(R.ラムゼイら(R. RAMSEY et al.)著,「電気浸透流ポンピングを用いたマイクロチップ・デバイスからのエレクトロスプレーの生成」(Generating Electrospray from Microchip Devices Using Electroosmotic Pumping),分析化学(Analytical Chemistry),1997年,69(6),p1174−1178、シュエら(XUE et al.)著,「マルチチャネル・マイクロチップ・エレクトロスプレー質量分析法」(Multichannel Microchip Electrospray Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),1997年,69(3),p426−430、B.シャンら(B. ZHANG et al.)著,「毛管電気泳動−エレクトロスプレー質量分析法のための微小加工されたデバイス」(Microfabricated Devices for Capillary Electrophoresis-Electrospray Mass Spectrometry),分析化学(Analytical Chemistry),1999年,71(15),p3258−3264)。これらの試験は、出口表面の適切な化学処理や、圧縮空気方式で噴霧化状態の形成を補助することにより改良されてきた。このことが、電界の集積につながるとともにそれにより噴霧化を可能にする先端の構造に取り組むことの重要さを実証する。
【0056】
・点の効果は、マイクロチャネルを郭成している材料の2枚のウェーハの間に平坦で三角形の構造(マイクロチャネルが機械加工される支持体であり被覆)を挿入することにより達成され得る。この平坦で三角形の構造の平面は、5μm厚さのパリレンのシートから構成される。(J.カメオカら(J. KAMEOKA et al.)著、「マイクロ流体との統合に向けたエレクトロスプレー・イオン化ソース」(An electrospray ionization source for integration with microfluidics)、分析化学(Analytical Chemistry)、2002年、74(22)、5897−5901。このシステムは並列に配置された4つの同じエレクトロスプレー・デバイスを組み込んでいる。300nL/分の流体流量に必要な噴霧化電圧は2.5〜3kVである。ソース内干渉は全く観察されなかった。
【0057】
・8つに分岐した星の形状のデバイスがポリメチルメタクリレート(PMMA)で製造された。C.H.ユアンら(C.-H. YUAN et al.)著,「プラスチック・チップ上に製造された鋭利な先端を用いた逐次エレクトロスプレー分析」(Sequential Electrospray Analysis Using Sharp-Tip Channels Fabricated on a Plastic Chip),分析化学(Analytical Chemistry),2001年,73(6),p1080−l083)。その星の各分岐は独立したマイクロ流体システムを構成し、各分岐の先端は噴霧化ソースである。こうして各分岐は断面が300x376μmのマイクロチャネルを一体化し、先端構造は90°の角度を形成し、星の中央に液体の槽が8つ集められている。テイラー・コーンを確立するために印加される電圧は高く、3.8kVに匹敵し、そのことはマイクロチャネルの端部における断面の寸法が非常に大きいことにより説明される。さらに、説明された製造方法は、ナイフによるチャネルの機械加工に基づいており、それは小さな寸法のチャネルや噴霧化デバイスが形成されることを可能にはしない。
【0058】
・別のポリマータイプの材料である、ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、材料のアブレーションに基づく方法、フォトリソグラフィック樹脂の二重層を用いる方法、及び、樹脂成形方法という3つの異なるマイクロ技術ルートによるエレクトロスプレー向けの先端構造の形成に使われてきた。(国際公開第02/55990号パンフレット、J.S.キムら(J. S. KIM et al.)著,「ポリジメチルシロキサン・エレクトロスプレー・イオン化エミッタの微細加工」(Micromanufacture of polydimethylsiloxane electrospray ionization emitter),ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(Journal of Chromatography),A 2001年、924(1−2),p137−145、J.S.キムら(J.-S. KIM et al.)著,「エレクトロスプレー・イオン化質量分析法のための微細加工されたPDMSマルチチャネル・エミッタ」(Microfabricated PDMS multichannel emitter for electrospray ionization mass spectrometry),ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサエティ・フォア・マス・スペクトロメトリー(Journal of the American Society for Mass Spectrometry),2001年,12(4),p463−469,J.S.キムら(J.-S. KIM et al.)著、「ポリ(ジメチルシロキサン)マイクロ流体デバイスでの微小マイクロチャネルエレクトロスプレーイオン化エミッタ」(Miniaturized multichannel electrospray ionization emitters on poly(dimethylsiloxane) microfluidic devices),電気泳動(Electrophoresis),2001年,22(18),p3993−3999)。噴霧化オリフィスは方形であり、その製造に用いられるマイクロテクロジーの方法によって、寸法が30x100μmから30x50μmまでと可変である。別の場合では、噴霧化電圧は1〜10μmの溶液には2.5〜3.7kVまで、高流量では数百nL/分から数μL/分までの幅があった。
【0059】
・最後に、もう1つの比較的疎水性のポリマー型材料であるポリイミドが、マイクロシステムに組み込まれているか、又は、少なくとも、断面が120x45μmのマイクロチャネルに結合されている噴霧化ソースの製造に用いられた(英国特許出願公開第2379554号明細書、V.ゴブリーら(V. GOBRY et al.)著,「直接質量分析カップリングのための微細加工されたポリマー注入器」(Microfabricated polymer injector for direct mass spectrometry coupling),プロテオミクス(Proteomics),2002年,2(4),p405−412、J.S.ロシアーら(J. S. ROSSIER et al.)著,「バイオポリマーの高性能フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析法のための薄型チップマイクロスプレーシステム」(Thin-chip microspray system for high-performance Fourier-transform ion-cyclotron resonance mass spectrometry of biopolymers),Angewandte Chemie,International Edition,2003年,42(1),p54−58)。そのシステム、マイクロチャネル及び先端構造はポリイミドのプラズマエッチングにより製造されている。そのシステムの被覆はポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート製である。前記エレクトロスプレー・ソースの動作は、140nL/分の流量、1.6〜1.8kVの噴霧化電圧で、5μMの標準的なペプチドのサンプルに関して実証された。同材料で製造された別のデバイスが説明されているが、その開放されたトポロジーとその製造に使われる材料の薄さ(50μm)の適応度によって従前の材料とは異なる。薄型と名づけられたこの構造は、ここではデバイスに組み込まれた炭素電極に印加された1〜2.3kVのイオン化電圧で試験された。
【0060】
総括して、上記に詳述した噴霧化デバイスは小規模な噴霧化に適合しない動作条件を有し(寸法が大きすぎ、噴霧化電圧が高すぎる)、たいてい非常に複雑な製造方法に由来する。さらに、これら種々のデバイスから選択される種の構造は、それらの形成に用いられる材料から事実上分離できない。
【0061】
上記に挙げた種々のデバイスに関して、噴霧化電圧は、デバイスが槽を含む場合は通常デバイスの槽のレベルで印加され、そうでない場合は液体供給のレベルで印加されるが、それはデバイスに結合された毛管によって達成される。この場合、毛管が導電性(例えばステンレス鋼製)であるか、又は結合が金属結合に基づくかのいずれかとなる。しかし、噴霧化電圧が印加される電極又は導電区域を噴霧化デバイスに組み込むことが提案されている。(T.C.ローナーら(T. C. ROHNER et al.)、「厚膜マイクロ電極が一体化されたポリマーマイクロスプレー」(Polymer microspray with an integrated thick-film microelectrode)、分析化学(Analytical Chemistry)2001年、73(22)、5353−5357。言及された例では、この導電区域はカーボンインクに基づいて形成される。
【0062】
最後に、これらのデバイスの適用は、質量分析法による分析に先行するエレクトロスプレーを対象としたものであり、他の種類の応用には役立たない。
【0063】
さらに、マイクロテクノロジーから生じる較正された滴を堆積するデバイスは、溶液の噴霧化に基づくのでなく、微細加工された先端を堆積面に接触させることを伴う機械的効果に基づいている。したがって、
【0064】
・較正された滴の平滑な表面への通常の堆積によるDNAチップ型ウェーハの加工に関して、つけペンの構造マイニングが記載された(国際公開第O 3/ 53583号パンフレット参照)。このデバイスは、材料内にエッチングされ先端で終結する溝(trench)を備え、そこから液体が退出するこの構造は可撓性であることが知られており、堆積される液体は、その可撓性先端を堆積基板に接触させることにより退出し、接触角度は垂直に対して20〜30°である。この発明が対照とする主な応用は、DNAチップ又は分析対象の他の化合物の作製である。
【0065】
・P.ベローブルら(P. BELAUBRE et al.)は、その論文「マイクロカンチレバーを用いた生物学的マイクロアレイの製造」(Manufacture of biological microarrays using microcantilevers),応用物理レターズ(Applied Physics Letters),2003年,82(18),p3122−3124,において、再現性のあるサイズの滴の堆積のために開放梁型の構造を提案している。このデバイスの応用は、DNA又はタンパク質チップの自動化方式での作製である。この梁型構造はまず堆積される溶液に浸され、次に堆積面に接触させられる。液体の吐出は、先端と前記表面を接触させることによりなされる。このデバイス固有の特徴は、堆積される溶液に浸されたときに先端の液体充填を静電効果により増加させることを可能にする、アルミニウム電極の梁型構造を一体化していることである。その先端で210μmの幅を持つこれらの梁型構造は、同じシステムで並列して製造される。それらは、フェムトリットルからピコリットルの範囲にわたる容量を有した滴の吐出を可能にし、堆積容量は先端と表面の接触時間に正比例し、その率は毎分100堆積に達し得る。
【0066】
最後に、つけペンを雛形にして、化学溶液に浸されるAFM(原子間力顕微鏡)先端で、ナノメータスケール周辺の分子書き込みが主に説明された。(G.アガーワルら(G . AGARWAL et al.)著,「タッピングモードのつけペンナノリソグラフィー」(Dip Pen Nanolithography in Tapping Mode),アメリカ化学会ジャーナル(Journal of the American Chemical Society),2003年,125(2),p580−583、国際公開03/48314号パンフレット及び国際公開03/52514号パンフレット、H.シャンら(H. ZHANG et al.)著,「改質された酸化シリコン表面上のタンパク質の直接書き込みつけペンナノリソグラフィー」(Direct-write dip-pen nanolithography of proteins on modified silicon oxide surfaces)、Angewandte Chemie, International Edition,2003年,42(20),p2309−2312、L.フーら(L. FU et al.)著,「つけペンナノリソグラフィーとゾルベースのインクを介した「ハード」磁性微小構造のナノパターニング」(Nanopatterning of "Hard" Magnetic Nanostructures via Dip-Pen Nanolithography and a Sol-Based Ink),ナノレターズ(Nano Letters),2003年, 3(6),p757−760、H.シャンら(H. ZHANG et al.)著、「つけペンナノリソグラフィーに基づくサブ50nm固体状態ナノ構造の製造」(Manufacture of sub-50-nm solid-state nanostructures on the basis of dip-pen nanolithography),ナノレターズ(Nano Letters),2003年,3(1),p43−45)。そして書き込みは、選択されたAFMの使用モード次第で、先端と平滑な表面の接触又は集結の後に発生する。化学溶液は、それが堆積される材料を腐食する溶液であってよく、そのことでチャネルや他の構造のエッチングに役立つ。AFM技法は高精細及び高書き込み精度の利点を持つ。3つの動作モードが可能であり、選択されたモードに従って、分子書き込み化学溶液の通過の前後に表面状態が制御されることができる。とはいえ、この技法は重厚巨大でコストが高く複雑なデバイスを強いるものである。
【0067】
文献に記載された2つの分子書き込みデバイスをも引用することができる。それらはAFM先端を用いた技法から派生するが、微細加工された先端を使用することに基づいている。第1のデバイス(A.ルイスら(A. LEWIS et al.)著,「つけペンナノケミストリー:クロムエッチングの原子間力制御」(Dip pen nanochemistry: Atomic force control of chrome etching),応用物理レターズ(Applied Physics Letters),1999年,75(17),p2689−2691、H.タハら(H. TAHA et al.)著,「原子間力感知ナノ万年筆でのタンパク質書き込み」(Protein printing with an atomic force sensing nanofountainpen),応用物理レターズ(Applied Physics Letters),2003年,83(5),p1041−1043,は、マイクロテクノロジーによって製造された、内径と外径がそれぞれ3nmと10nmという小寸法を有していてよいマイクロピペットの形状をしている。しかしこのマイクロピペットは使用するためにAFMデバイスに一体化されている。この場合の吐出は接触させることによってではなく、液体のカラムに圧力を印加することによって誘発される。このデバイスは、ガラスウェーハ上に堆積されたクロム層のエッチング溶液を配給する適性を試験された。第2のデバイス(I.W.ランセローら(I. W. RANCELOW et al.)著,「ナノジェット:微小製造のツール」(NANOJET: Tool for the nanomanufacture),真空化学技術ジャーナル(Journal of Vacuum Science & Technology)B:マイクロエレクトロニクス及びナノメータ構造(Microelectronics and Nanometer Structures)2001年,19(6),p2723−2726、J.ヴォイトら(J. VOIGT et al.)著,「走査ナノノズル、ナノジェットでのナノマニュファクチャ」(Nanomanufacture with scanning nanonozzle 'Nanojet'),マイクロエレクトロニック・エンジニアリング(Microelectronic Engineering),2001年,57―58,pl035−1042)は、ピラミッド型形状で出口オリフィスのサイズが100nmに満たない、Cr/Auで被覆されたシリコンで形成された先端からなる。このデバイスは先行例のように化学溶液を配給するのではなく、先端の反対側に配置された材料を腐食する、プラズマ放電により生成した気相内のフリーラジカルを配給する。このように、このデバイスは微細加工された先端のみで形成されるのではなく、高周波やマイクロ波プラズマ放電といった、基板を腐食することができる非常に反応性の高い種を生成することができる機械をも含む。
【0068】
これら2つの例は正に従来のAFM先端に取って代わる微細加工された先端を有しているが、その動作に必要な重厚で高コストの周辺機械なしで済ませることを可能にしない。さらにこの技法は、先端と基板を接触又は擬似接触させることに基づいている。したがって、先端レベルに印加される過度に強い力による表面状態の劣化を一切回避するため、その動作は非常に慎重に制御されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0069】
本発明は、カリグラフィーペン型の形状を有し、その先端が噴霧のための箇所の機能を果たす、2次元エレクトロスプレー・デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0070】
したがって、本発明の主題は、少なくとも1つの平坦かつ薄型の先端を有する構造を持ち、前記先端は当該構造の残りの部分に対して片持ち梁(cantilever)となったエレクトロスプレー・ソースであって、前記先端は、当該先端の厚みを貫通して形成され、前記先端の末端で終結した、前記エレクトロスプレー・ソースの噴出オリフィスを形成する毛管スロットに設けられ、前記エレクトロスプレー・ソースは、噴霧される液体を前記毛管スロットに供給する供給手段と、前記液体にエレクトロスプレー電圧を印加する手段を備える。
【0071】
1つの有利な実施形態によれば、前記供給手段は、前記毛管スロットと流体接続(fluidic communication)している少なくとも1つの槽(reservoir)を有する。
【0072】
好ましくは、前記構造は、支持体と、前記支持体と一体化され、その一部が前記先端を構成するウェーハとを有する。また、前記供給手段は、前記ウェーハに形成された凹部によって構成され、前記毛管スロットと流体接続している槽を有しても良い。
【0073】
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、前記噴霧される液体に接触するように配置された少なくとも1つの電極を有しても良い。
【0074】
前記構造が前記支持体と、当該支持体と一体化された前記ウェーハを備えている場合、前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、少なくとも部分的に導電性がある前記支持体及び/又は少なくとも部分的に導電性がある前記ウェーハを有しても良い。好ましくは、前記ウェーハは前記噴霧される液体に対して疎水性の表面を有する。
【0075】
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、前記噴霧される液体と接触できるように配置された導電性ワイヤを有しても良い。
【0076】
前記供給手段は毛管チューブを有しても良い。それらは、前記構造を支持し前記毛管スロットと流体接続しているマイクロシステムで形成されたチャネルを有しても良い。
【0077】
1つの有利な実施形態によれば、前記電圧を印加する手段(電極、支持体、ウェーハ、ワイヤ)は、本発明の主題の上流に配置されて流体導通している(fluidic continuity)任意のデバイスに必要な電圧を印加することもできる。
【0078】
本発明の別の主題は、エレクトロスプレー・ソースである構造を製造する方法であり、以下のステップを含む。
−基板から支持体を形成するステップ
−平坦かつ薄型の先端を構成する部品を含むウェーハを、前記先端の全厚みを貫通して形成され、前記先端の末端で終結した、噴霧される液体を送るための毛管スロットが前記先端に設けられた状態で形成するステップ
−前記先端が前記支持体に対して片持ち梁となる状態で前記ウェーハを前記支持体上に一体化させるステップ
【0079】
上記方法は以下のステップを含んでも良い。
−前記支持体を形成するための前記基板を配設するステップ
−前記基板上にエッチングされた溝によって前記支持体を区切るステップ
−前記構造の将来前記先端になる部分に対応する前記基盤の区域に、定められた厚みで犠牲材料(sacrificial material)を堆積するステップ
−前記ウェーハの前記先端を前記犠牲材料上に配置した状態で、前記基板で区切られた前記支持体上に前記ウェーハを堆積するステップ
−前記犠牲材料を除去するステップ
−前記溝レベルでの劈開によって前記支持体を前記基板から分離するステップ
【0080】
前記ウェーハを堆積するステップでは、槽を構成するために前記毛管スロットと流体接続する凹部を有するウェーハを堆積しても良い。この方法は、前記噴霧される液体との電気的な接触が確保される少なくとも1つの電極を堆積するステップをさらに含んでも良い。
【0081】
本発明に係るエレクトロスプレー・ソースは、質量分析法によるその分析の前に、エレクトロスプレーによる液体のイオン化を行うために用いられても良い。また、較正サイズ(calibrated size)の滴の形成又は固定サイズの粒子の吐出を行うために用いられても良いい。また、化合物による分子書き込み(molecular writing)を実行するために適用されても良い。さらに、流体導通(fluidic continuity)状態にあるデバイスの電気接合電位を規定するために適用されても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
非限定的な例として挙げられた以下の説明を、添付の図面を参照して読めば、本発明はより良く理解され、他の利点や特定の特徴が明白になろう。
【0083】
本発明は、カリグラフィーのペンの構造と動作モードから着想を得ている。本発明の主題である平坦な面はカリグラフィーのペンと同じ構成要素、すなわち液体の槽と、先端に形成された2次元の毛管スロットから構成されている。本発明は、必要に応じて、噴霧化状態を確立するために必要な電圧が印加される電気接触区域を備えてもよい。この接触区域は、複数の独立した接触子、詳細には、エレクトロスプレー・プロセスに便宜を与える、又は研究する目的での電気化学による化学修飾を可能にするための、同様にエレクトロスプレー電圧が印加されることを可能にする作用電極、参照電極、及び測定電極に対応する3つの接触子によって構築されている。これらの電極は、自己周波数への同期化によってエレクトロスプレー・プロセスの制御を可能にもする。カリグラフィーのペンと同様に、液体はスロット内を毛管現象によってつけペン型の構造の先端の末端へと運ばれ、そこから吐出される。吐出は機械的動作によって起こるが、液体への高電圧の印加による噴霧化の形態をとる。
【0084】
本発明に係るエレクトロスプレー・ソースは図1A及び図1Bに示されており、図1Aは上面図で図1Bは側面図である。
【0085】
このエレクトロスプレー・ソースは、支持体1と、支持体1に一体化されたウェーハ2を備えている。ウェーハ2の一部は、支持体1に対して片持ち梁(cantilever)である先端3を形成する。ウェーハ2はその中央に、支持体1の表面を露呈していて槽を形成している凹部4を有する。同様に、支持体1を露呈している毛管スロット5は、槽4を先端3の末端6に接続しており、それはエレクトロスプレー・ソースの吐出オリフィスを形成する。
【0086】
このデバイスの動作は、以下の考案された原理に基づく。液体槽4は、液体を収容、すなわち、液体の供給での転移部として機能する。液体は次いで、その上流に液体槽4が位置している毛管スロット5により導かれる。この構造の先端はエレクトロスプレーの確立を可能にする。
【0087】
以下の動作モードについて以下説明する。対象の液体は適切な方法で液体槽4へと堆積あるいは運ばれる。それは構造の末端6へと毛管現象により導かれる。ソースは使用場所へと運ばれる(例えば質量分析計の正面)。先端3の末端6で噴霧化状態を観察するために液体に電位が印加される。
【0088】
つけペン型の形状を有したソースの物理的過程は、それを構成する材料の特性とその種々の構成要素の寸法に基づく。図2は、先端3の末端6でのレベルにおける、毛管スロットの3次元図である。
【0089】
槽4の役割は、噴霧される液体を収容することと、毛管スロット5に漸次供給することである。この構造のトポロジーは2次元である。ウェーハ2は疎水性の性質がある材料製であり、槽の底部を覆っている材料である、ウェーハ2を支持する支持体1を構成する材料よりもずっと疎水性が高い。このことが、槽4の外部での液体の損失を制限することを可能にする。この点において、興味深いことに、噴霧される液体は、例えばメタノール/水の50/50混合液といった、純粋な水溶液又は半水溶性溶液又は半アルコール溶液などの、先験的にむしろ親水性の材料である。
【0090】
毛管スロット5と、先端3の末端6はウェーハ2を形成している材料で形成されており、それらの寸法は製造方法の間に決定される。図2は、エレクトロスプレー・ソースの動作のために考慮すべき寸法、すなわちスロットの幅w、高さhと長さlを示している。液体が毛管スロット5内に存在していると想定する。噴霧化が望まれる区域の向い側にエレクトロスプレー・ソースが差し出されたとき、この液体への重力効果は取るに足らないものである。毛管スロットへの液体の充填に干渉すると思われる要因は、ウェーハ2を構成している材料への液体の接触角度(α)、液体の表面張力(γ)及び毛管スロット5の寸法(lとh)である。毛管チューブ内の液体の毛管現象効果を決定する式1によれば、接触角度αのコサインは、毛管現象効果を観察するためには正でなければならず、これは独立に重力の効果である。
【0091】
【数1】
【0092】
但し、(γ)は毛管チューブの内半径であり、(hr)は液体が毛管チューブ内を上昇する高さであり、(ρ)は液体の濃度であり、(α)は液体の毛管チューブ内壁への接触角度であり、(g)は重力加速度である。
【0093】
【数2】
【0094】
但し、γSVは固体−気体界面での表面張力であり、γSLは固体−液体界面での表面張力である。
【0095】
まず、α<90°(cosα>0)である場合、ヤングの式(式2)は、γSV>γSLであることを示唆し、固体−液体相互作用が固体―気体相互作用よりも優位にあることを示している。式1に項rが現れている。毛管現象効果の観察又は観察できないことは、この値次第である。項rは毛管チューブの半径に対応し、本発明の主題であるデバイスの場合は、毛管スロット5の寸法に対応する。液体が毛管スロットに貫入すれば、毛管スロットの2つの壁面をつなぐ液体ブリッジが形成される。こうして、率h/wに対応する毛管スロット5のアスペクト比Rを規定することができる。以上から導き出されることは、毛管スロット5内で毛管現象効果を観察するためにRは臨界値よりも大きくなくてはならず、したがって、エネルギーの観点から、毛管スロット5内のブリッジの形成が有利であるということである。
【0096】
噴霧化デバイスは導電区域を含んでいても含んでいなくてもよい(図3H参照)。これらの導電区域は、液体槽4のレベルに配置されていれば、噴霧化電圧を伝える電極として機能する。他方、それらが毛管スロット5のレベルに配置されていれば、これらの電極は液体内に存在している種を改質する働きをする。質量分析法による分析前のエレクトロスプレー型の応用の場合は、電気化学プロセスが分子のイオン化中に干渉する。先端3の末端6のレベルで毛管スロット5の両側に配置された導電区域は、それらを調査することを可能にする。さらにこれらの現象はイオン化効率を向上させることにつながり、結果として分析条件の改良につながる。分子書き込み型の応用の場合は、より大量のラジカル種の存在が基板のエッチング率を上げる。
【0097】
しかし、エレクトロスプレー・ソースの支持体1を形成するために選択される材料の性質次第では、これらの導電区域は、特にそれらの役割が噴霧化電圧を伝えることである場合、必要でないことがある。実際、支持体1又はウェーハ2を形成するために導電材料(金属、Si等)が用いられた場合、電圧はこの導電材料に直接印加されることになる。最終的に、電気接合が液体を介して達成されるならば、導電区域を含まず、その材料が導電性でないデバイスが用いられることができる。槽4又は任意の他の導電性接触のレベルで、噴霧される溶液に浸された金属ワイヤは、こうして噴霧化電圧を印加するといった役割を確実に果たす。
【0098】
このデバイスは、他のデバイスや他の構造由来の溶液を運ぶ毛管などの、槽4の上流にある液体供給ソースに接続されていてもよい。例えば、質量分析法型の応用においては、この毛管は分離カラム出力に相当し得る。較正サイズの滴の堆積又は分子書き込み型の応用では、この毛管は液体をその初期位置から噴霧化デバイスへと運ぶ。前記毛管は、溶融シリカ製の従来型商用毛管であってよい。それは微細加工された毛管、すなわち、ソースを支えているシステムに一体になったマイクロチャネルであってよい。毛管は、支持体1上に実現された親水性のトラックであってよい。これら後者2件の場合、ウェーハ2は流体マイクロシステムと一体になって、前記マイクロシステムと、該マイクロシステムから退出する溶液が用いられる外界との界面の役割を果たす。最後に、デバイス又はその構成要素のひとつの導電性特性は、デバイスと流体的関連性がある任意のシステムに給電するために用いられてよい。
【0099】
さらに、前記つけペン型のウェーハは隔離方式で使われても、又は、同じ支持体上に多数個で一体化されていてもよく、それは噴霧化の並列化を目論んでのことである。この場合、前記つけペン型のウェーハは互いに独立していてもしていなくてもよく、噴霧化溶液は前記溶液の噴霧化を増強するために同じものであってもよいし、又は異なっていてもよく、異なっている場合は、つけペンは噴霧化において逐次的に機能する。前記つけペン型のウェーハの一体化は、前記ウェーハを支持体の1つの側に整列させた線状方式で行われてもよいし、円形の支持体上で環状に行われてもよい。その場合、1つのソースから別のソースへの移行はそれぞれ、支持体の移動又は支持体の回転により達成される。
【0100】
広範な材料が今や微細技術製造、特に流体マイクロシステムに想定されることができる。それらは、ガラス、シリコンベースの材料、(Si、SiO2、窒化シリコン、その他)、クォーツ、セラミックス及び多数の巨大分子材料、プラスチック又はエラストマーなどである。
【0101】
本発明で留保される形状は、いかなる種類の材料を使用しても製造に適合し、エレクトロスプレー・ソースを構成する種々の部品、すなわち、支持体1、つけペン型ウェーハ2及び導電区域、の製造にも適合している。さらに、技術的製造の方法は、1つ又はいくつかの他の材料を伴い、その選択は、構成要素1、2及び3のために留保される材料に応じて適応される。
【0102】
本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを製造する包括的方法が、図3A〜図3Hに示されている。この製造方法は、いかなる種類の材料にも適用できるように7つの主なステップに分けることができ、それらを下記に詳述する。
【0103】
この方法の最初のステップは、エレクトロスプレー・ソースの支持体を構成することを目的とした基板の選択である。この基板10(図3A参照)は、巨大分子材料製、ガラス製、シリコン製であってよく、又は金属製であってさえよい。本実施形態の場合、それは250μm厚のシリコン基板である。
【0104】
この方法の始動はエレクトロスプレー・デバイスの製造の終了を調整する。それは、ソースの先端を解放して噴霧化を可能にするための基板の劈開を補助する線を、デバイスの支持体上に実現することを伴う。
【0105】
第2のステップにより、保護層として知られる材料の層11が基板10の一部に堆積される。層11の材料は、基板10の材料の性質に応じて、層11の腐食が基板10に影響を与えないようにするべく選択される。本実施形態において、保護材料の層は20nm厚の窒化シリコンの層である。層11は、基板10と層11の材料の性質次第で変化する厚みのものである。層11は、構造の支持体を区切る(delimit)劈開線を規定するための、基板の腐食される区域を露出させる目的でリソグラフィー工程が行われる。層11の相当する区域は、基板10を露呈する開口12を提供するために腐食される(図3B参照)。基板のこれらの区域が露呈されると、それらは劈開線13を実現するために適切な腐食が行われる。最後に、残った層11が除去される。図3Cは得られた結果を示す。V字型断面の溝から構成される線13は、得られるべき構造の支持体を区切る。
【0106】
第3のステップの間、犠牲材料が基板10に堆積される。犠牲材料14のこの層は、製造の最後に、構造の先端が劈開操作の前にその支持体から突き出ることを可能にする。基板10は十分な厚みの犠牲材料の薄膜で被覆されるが、犠牲材料の薄さは、犠牲的材料除去の後で先端が基板10から十分に分離されるが、支持体から突き出ている先端に応力がかかったり湾曲する問題を一切排除するに足る薄さである。本実施形態では、犠牲材料の層は150nm厚のニッケル層である。
【0107】
犠牲材料の層は次いで、この材料を構造の先端に相当する区域14のみに残すために、リソグラフィー工程及び適切な腐食が行われる(図3D参照)。
【0108】
第4のステップが実施されることとなる。基板10は次に、構造のウェーハを構成することを目的とした材料の層で被覆される。基板材料に応じて、この層の材料はシリコン又はシリコンベースの材料、金属又はポリマー又はセラミック型の材料であってよい。本実施形態では、ウェーハを構成することを目的とした材料の層は35μm厚の、マイクロケム社(Microchem)から予備重合した形態で購入し、フォトリソグラフィー法で重合したSU−8 2035ポリマー層である。この層の厚みは適切な方式で選択されている。実際、噴霧化デバイスのイオン化性能は、前述したようにこの厚み次第である。この層の厚みは毛管スロットの高さhに直接影響し、高さhが大きくなるほど、率Rを変えないために幅wも大きくしなければならない。しかし、噴霧化ソースの最終適用次第で、性能を上げるためにできるだけ幅wを減らすことが課題である。他方、ウェーハを構成する目的の層の厚みが薄すぎた場合、突き出た先端は、支持体から剥離されると、材料にかかる応力のために曲がることがある。当業者ならば、この仕様をこの層の材料に応じて適用することができ、そのようにして、堆積される材料の最適な厚みを決めることが可能であろう。
【0109】
この層は次いで、つけペン型のウェーハ2を形成するためのリソグラフィー工程と腐食を経るが、それはすなわちそのサイズに加えて、槽4、毛管スロット5及び先端3も含む。(図3E参照)。この腐食は層の材料に応じて適用される。それは、化学的エッチング技法、シリコン又は金属ベースの材料の場合は物理的腐食、フォトリソグラフィー材料の場合には現像に続いて物理的腐食又はフォトリソグラフィーを伴う。
【0110】
第5のステップが次いで行われることとなる。ウェーハ2の形成が終わると、先端3の下の犠牲材料の区域14は除去される。犠牲材料は適切な化学的腐食によって除去されてよい。この化学的腐食の化学溶液は、支持体及びウェーハのいずれも腐食されることのないように注意深く選択されなければならない。これらの要素の材料はこの化学溶液に対して感応性があってはならない。図3Fに示した構造を得ることができる。
【0111】
第6のステップは導電性層の構造への埋め込みに関する。上述したように、このステップは、そのような導電性区域が配設される場合に限って製造方法に含まれる。
【0112】
これらの区域が槽4のレベル(噴霧化電圧の印加)に配置されていても、先端(物理的/化学的試験電極)のレベルに配置されていても、製造方法は同じである。槽のレベルにある導電性区域3の形成のみについてここでは詳述する。
【0113】
これらの導電性区域は金属又はカーボン製であってよい。この構造はまず、導電性区域の形成に対応する区域のみが除去されるように、マスキングステップにかけられる。選択された導電性材料は構造上にPECVD(プラズマ増幅化学気相蒸着)技法で堆積される。本実施形態では、導電性区域はパラジウム製で厚みが400nmである。図3Gは、得られた構造を示す。2つの導電性区域7と8が槽4の側面に位置し、そこに電位が印加されることを可能にする。
【0114】
噴霧化ソースを製造する本方法の第7のステップは、支持体1を基板10から切り離すことであり、詳細には、本製造方法の第2のステップで実現された劈開線13を用いて、支持体1に対して先端3を片持ち梁状に配置することである。得られた構造を図3Hに示す。
【0115】
先端を片持ち梁状に配置した場合の有利な劈開技法を図4Aと図4Bに示す。固定された金属ワイヤ20が、支持体1の下の、先端の両側に形成された劈開溝13のレベルに配置されている。2つの応力が合同して、図4Aの基板の矢印で示した位置に印加される。支持体1からの先端3の分離が前もって実行され、それにより、先端が劈開ステップ中にダメージを受けないことを保証する。図4Bは、劈開の実行の様子を示す。
【0116】
次にこの包括的な製造法はエレクトロスプレー・ソースの各構成要素に関して選択された材料に応じて適用される。
【0117】
本発明が目指す第1の応用分野は、質量分析法によって分析される生物学的又は化学溶液のエレクトロスプレーである。現在の質量分析法は、タンパク質の分析、キャラクタライゼーション及び同定のために選択される技法である。しかし、ゲノム解読の完結以来、特に生物学者は、個人のすべてのタンパク質を研究して特徴付ける科学である、プロテオミクスにますます興味を持つようになってきた。すべての人間にあるこれらのタンパク質は、翻訳後修飾(post-traductional modifications)を含めて数としては106を超える様々な分子で存在する。この点が現在、特にタンパク質研究の範囲内でのその適切さに起因して、高率分析を視野に入れた質量分析法のための自動化対応の分析技法とツールの必要を正当化する。生物学者たちに利用可能なサンプル(すなわち、被分析溶液)は、制限されたサイズ(1μL以下)であることが多く、生物学的物質をほとんど含んでおらず、そのことが、非常に微妙な分析技法を扱い、サンプルを極く僅かのみ使うことを強いる。このことが、ナノエレクトロスプレーによるイオン化を伴った質量分析法を、タンパク質のキャラクタライゼーションにおける最も広範に用いられる分析技法の1つたらしめている。この意味において、主要な課題はできる限りソースの先端の末端寸法を小さくすることである。実際、導入部で言及したように、この種の応用のための2つのエレクトロスプレー動作条件で、自動化と感度増強の点で最も興味深いのはナノエレクトロスプレー動作条件である。しかし、現在、ナノESI−MS(ナノエレクトロスプレーイオン化−質量分析法の略)が全面的に手動プロセスに基づいているという事実によって、分析速度には限度があり、サンプル流量は制限されている。現在利用可能なツールは、ロボット化した自動化分析には役立たない。このことが、この種の応用への本発明の開発の動機付けを説明している。
【0118】
本発明が目指す第2の種類の応用は、較正サイズの滴を平滑又は粗い表面に堆積することである。これは、DNA、ペプチド、PNAチップ又は任意の他種の分子においては主たる関心事である。この種の応用は、そのサイズは通常は分析ウェーハの作製に望まれる精細度に依存する、較正サイズの液体の滴という、離散的形式で流体を運ぶことができるデバイスを必要とする。滴が小さいほど、ウェーハへの堆積はより互いに密なものになって堆積密度がより高くなり、したがって分析対象の物質の密度が高くなる。本発明の主題であるデバイスはこの目的に用いられることができる。毛管スロット5の幅、及び滴の吐出のために印加される電圧値が、前記噴霧化デバイスによって吐出される滴のサイズを調整する。こうして分析ウェーハの精細度は、デバイスのスロットの幅の関数として調節されることができる。最後に、噴霧化電圧は交流であるので、交流電圧の周波数に直接依存した滴/分での堆積率を与える。上記に示した較正された滴の堆積は、DNAチップなどの分析ウェーハの作製に用いられることができる。それは、MALDI(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization、マトリックス支援レーザーデソープション/イオナイゼーション)ターゲットの作製にも適用されることができ、このMALDIイオン化を伴って質量分析法で分析されるサンプルは、その結晶化と質量分析計への導入前に離散的方法で堆積される。こうして、つけペン型形状を有した本発明の噴霧化デバイスは、例えば分離カラムの出力に結合されて、分離技法と質量分析法によるインラインMALDI方式分析との間の結合を可能にする。液滴は最終的にセルによって置き換えられることができる。この場合、セルは同様に離散的方式で吐出され、例えばセルチップを精緻加工する目的でウェーハ上に堆積される。
【0119】
本発明により目指される第3の応用は、100ナノメータ前後のスケールでの分子書き込みである。現在、この種の動作は、重厚かつ嵩張るデバイスによって機能しているAFM先端によって実行されている。液体の吐出は、AFMの場合、先端と堆積表面を擬似接触させることに基づくか、又は、液体への圧力の印加に基づく。この技法の適用は、電圧の作用によって液体を吐出することであって、圧力や、接触を起こすことによってではない。実際両方の場合において、吐出は、ピペットの先端のレベルでの液体の表面張力が液体のカラムにかけられた別の力を凌駕したときに誘起される。このことは、電気的な力が表面張力を凌駕し、それが液滴の形成に結びつくエレクトロスプレー・デバイスで想定されてよい。さらに、反応種の形成はエレクトロスプレー・プロセスに固有のものである。この流体吐出技法は、液体を運ぶ構造の上流に、フリーラジカルなどの反応種を作成するデバイス、プラズマ放電又はマイクロ波放電といった複雑なデバイスを一切置かずに済む。
【0120】
したがって本発明は、平滑又は粗い基板上への書き込みの目的に用いられてよく、その場合書き込み溶液(擬似インク)の解放は電圧の印加によって支配されている。第1の応用分野と同様に、主要な目標は先端の末端のサイズを最小限にすることであり、この寸法は噴霧化による吐出のサイズを調整しており、ひいては最終基板への所望の書き込み精細度を調整している。先端の幅は1マイクロメートル以下である。吐出のサイズと流体流量に影響している別の要因は、液体に印加される噴霧化電圧である。最後に、基板を腐食する溶液を基板が分注するために該デバイスが使われる場合は、反応種の生成は、流体を運ぶつけペン型構造内に電極を埋め込むことによって強化されることができる。そこでこれらの電極は反応種の形成につながる電気化学反応の場となる。
【0121】
次に、以下の実施例について説明する。
【実施例1】
【0122】
第1の実施例:本発明に係る微細加工されたナノエレクトロスプレー・ソースの設計
【0123】
第1の実施例は、本発明に説明される噴霧化デバイスを形成するために選択される寸法と形状に関する。
【0124】
この第1のデバイスは、対象応用分野、すなわち溶液の、質量分析法による分析前のイオン化のためのナノエレクトロスプレーに起因して小さな先端寸法を有している。このデバイスは図1Aと図1Bに従って形成される。このデバイスの槽4は2.5mmx2.5mmxe(μm)の寸法を有し、eはウェーハ2を形成するために用いられる材料の層厚みである。eの値は、以後考察する、100ナノメータ前後である犠牲材料の厚みhの厚みに近い。毛管スロット5の幅は、先端3の末端6で8μmである。毛管現象効果と毛管スロット5内への液体の有効な貫入を観察するためのウェーハ2の厚みは、スロット厚みの値に追従する。これは、スロットの高さhと幅wの間の割合によって定められるパラメータR、すなわちR=h/w、の値によって支配される。毛管現象効果を観察するためにはこの割合は1より大きくなければでなければならないようである。したがって、ウェーハの厚みは10マイクロメータ前後よりも大きくなければならない。さらに、末端6での構造の湾曲につながる機械的制約の問題を免れるために、この厚みは35μmに設定された。
【実施例2】
【0125】
第2の実施例:第1の実施例に説明された設計ソースの、シリコン及びSU−8材料による製造
【0126】
第2の実施例は、第1の実施例に説明された噴霧化ソースの、微細技術による製造に関する。使用される材料は支持体1に関してはシリコンであり、つけペン型ウェーハ2に関しては、ネガ型フォトリソグラフィー樹脂SU−8である。製造方法は上述した方法に由来する。それは選択された材料に適用される。
【0127】
3インチの、シリコン配向され(100)、nドープされた基板は、200nmの酸化シリコン(SiO2)層で被覆され、リソグラフィーによってマスキングされる。SiO2の層は、HF:H2Oの酸性溶液によって、マスキングされていない区域が腐食される。露光されたシリコンは次いで、劈開線を実現するために苛性ソーダ溶液(KOH)によって腐食される。次に、シリコンの表面に、150nm厚のニッケル層が、アルゴン存在下の噴霧技法(Plassys MP 450S)によって堆積される。つけペンの先端の下にニッケルのみが残るように、ニッケル層は局所的にUVフォトリソグラフィーによって腐食される(ポジ型感光樹脂AZ1518[1.2μm]、エッチング溶液HNO3/H2O(1:3))。フォトリソグラフィー樹脂の痕跡を完全に除去した後で、シリコン表面への樹脂SU−8の粘着を最適化するためシリコンのウェーハは170℃で30分間脱水される。樹脂SU−8の35μmの層は、フォトリソグラフィーのステップを踏む前に厚みを均一化するために旋回子によってシリコン基板上に広げられる。つけペン方式のウェーハ2はこの樹脂SU−8層で、従来のUVフォトリソグラフィー技法によって形成される。適切な試薬(1−メトキシ−2−プロパノールアセタート、PGMEA)による樹脂SU−8の現像の後で、ニッケル層は上述の酸性溶液(HNO3/H2O)によって腐食される。このニッケルの化学的腐食のステップは、この方法が数時間かかることあったとしても樹脂SU−8を腐食することはない。最後に、デバイスを乾燥した後で、シリコン基板1は図4A及び図4Bに示される技法で切られる。ここで用いられる技法は、前もって支持体から剥離されているので、つけペンの構造を保存する。本方法に従って製造されたつけペン型噴霧化ソースの走査型電子顕微鏡写真(日立S4700)が、先端のその支持体からの適正な剥離を確認している。
【0128】
上述した製造方法は電極の形成は含まない。
【実施例3】
【0129】
第3の実施例:100マイクロメータ前後の粒子吐出デバイスの設計
【0130】
第3の実施例は、本発明で説明された、100マイクロメータ前後のサイズを持つ粒子吐出デバイスを形成するために選択される寸法と形状に関する。
【0131】
このデバイスは第1の実施例で説明されたものよりも大きな寸法を有している。ここで、毛管スロット5と槽4の寸法は、100マイクロメータ前後の物体を取り扱うのに適合したものでなければならない。この寸法範囲により、第3の実施例で説明されるデバイスもまた、例えばセルチップの作製のための、100μm直径に近いサイズのセルを取り扱うために適用される。
【0132】
前記デバイスの槽4は、1cmx1cmxe(μm)の寸法であり、eはウェーハ2の厚みである。第1の実施例と同様に、eの値は、ウェーハの末端6でのアスペクト比Rを1より大きくするために、毛管スロット5の幅の関数として規定される。このデバイスによって処理される粒子は100マイクロメートル前後のサイズを有しており、したがって毛管スロット5は100μmより大きな幅を有していなければならない。しかし、粒子は凝集する傾向にあるので、この幅は過大に大きく選択してはならない。それは、取り扱う粒子のサイズの倍近くであることが好ましい。結果として、スロットの幅は150μm、ウェーハの幅は200μmに選択される。
【0133】
つけペン型ウェーハ2の製造のために留保される材料は、ここでもネガ型フォトリソグラフィー樹脂SU−8であり、支持体1として選択される材料はガラスである。樹脂SU−8は、セルなどの粒子を取り扱うためにここで興味を引くが、それは、これらのセルはこの材料に粘着しないからである。結果としてガラス製の支持体1は、デバイスへのセルの望ましくない粘着を防ぐため、それ自体も樹脂SU−8の薄膜で被覆されている。
【実施例4】
【0134】
第4の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。I:プラチナ製ワイヤによる電圧の印加。
【0135】
第4の実施例は、質量分析法分析向けに第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの、質量分析による試験である。本実施例では、噴霧化電圧は、図5に示すように槽のレベルで液体に浸されたプラチナ製ワイヤによって噴霧される液体に印加される。
【0136】
噴霧化デバイスは、xyzに移動できる可動部品30上に配置されている。この可動部品30は、質量分析計25でのイオン化電圧が印加される金属部品31を備える。シリコン支持体1は、前記可動部品30へのデバイス固定中に、予防手段としてこの金属部品31から隔離されるが、それはこの材料の半導体特性に起因する。金属部品31とデバイスの槽の間の電気結合は、槽内に導入され分析対象溶液33に浸されているプラチナ製ワイヤ32によって確保されている。噴霧化試験に用いられる溶液である、標準的ペプチド溶液(グラミシジンS、Gramicidene S)は、デバイスの槽に堆積され、可動部品30は質量分析計25の入力側に導入される。試験はサーモフィニガン社(Thermo Finnigan)製イオントラップ型質量分析計(LCQ DECA XP+)で実行される。そして電圧が液体に印加される。イオントラップに装備されたカメラは、電圧が印加されるとテイラー・コーンを可視化させる。毛管スロットは8μmの幅を有している。
【0137】
図6は、グラミシジンSの5μM溶液及びイオン化電圧0.8kVで2分間行われた実験の質量分析計により記録された総イオン電流を示すグラフである。Y軸は相対強度IRを表す。X軸は時間を表す。図7は、グラミシジンSの5μM溶液、1.2kVの電圧で得られた質量スペクトルに対応する。質量スペクトルは2分間の信号取得、すなわち80スキャンにわたって平均される。
【実施例5】
【0138】
第5の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。II:シリコン支持体への電圧の印加。
【0139】
第5の実施例は第4の実施例と同様であるが、こちらでは電圧はプラチナ製ワイヤによって印加されるのではなく、シリコンの半導体特性を用いている。
【0140】
第5の実施例はしたがって、第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの、噴霧化デバイスの支持体1を構成している材料へのイオン化電圧の印加を伴った質量分析法による試験である。
【0141】
前の実施例と同じ方式で、噴霧化デバイスは、xyzに移動でき金属部品41を有した可動部品40上に配置されている。ここで、シリコン支持体1は、質量分析計25でのイオン化電圧が印加される可動部品40の金属部品41と電気接合させられる。デバイスはテフロンテープによって可動部品40に固定され、テープは槽の上流部分でデバイスを包囲している。試験は前と同様に、可動部品40のイオントラップ25への導入と、電圧印加の後に実行される。毛管スロットは8μmの幅を有している。
【0142】
試験は別の標準的ペプチドである、グル−フィブリノペプチドB(Glu-Fibrinopeptide B)で実行された。この場合のイオン化電圧は前と同範囲で、1μM未満の濃度のペプチドに対して1〜1.4kVである。図9は、0.1μM溶液及び1.1kVの電圧での3分間の信号取得で計測された総イオン電流を表す。IRは相対時間であり、tは時間である。図10は、この取得で得られ、3分間すなわち120スキャンにわたり平均化された質量スペクトルである。IRは相対強度である。
【実施例6】
【0143】
第6の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。III:フラグメンテーション実験(MS/MS)。
【0144】
第6の実施例は試験実行方式に関しては第5の実施例と同じである。試験アセンブリは前の実施例と同じであり、噴霧化デバイスは第1の実施例に説明したものに対応し、第2の実施例に説明された製造方法に従って実行される。電圧は、質量分析計25に導入された可動部品40上に含まれた金属区域41を介して、支持体1の材料であるシリコンに直接印加される(図8参照)。毛管スロットは8μmの幅を有している。
【0145】
溶液は前と同じ、1μM以下濃度の標準的ペプチド、グル−フィブリノペプチドBの溶液である。ここではペプチドはフラグメンテーション実験にかけられる。二重荷電形態(M+2H)2+のペプチドはイオントラップで特定的に分離されてフラグメンテーションされる(標準化衝突エネルギーパラメータ30%、高周波駆動因子0.25に設定)
【0146】
図11は、0.1μM溶液で1.1kVの電圧でのこの実験中に得られたフラグメンテーションスペクトルを表す。IRは相対強度である。スペクトルは2〜3分にわたる噴霧化取得信号にわたり平均化された。異なるMS/MSフラグメンテーションはそのシーケンスで注釈を付けられた。
【実施例7】
【0147】
第7の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。IV:生物学的混合物の分析への応用。
【0148】
第7の実施例は第5の実施例と同様(同じ方法で製造された同じデバイス、及びシリコン支持体1への電圧印加という同じ条件で試験された)であるが、ここで分析されるサンプルは標準的なペプチドではなく、タンパク質の消化によって得られるペプチドの複合混合物、シトクロムC(Cytochrome C)であるという点のみが異なっている。この消化物は、異なる長さと異なる物理/化学特性を持つ13のペプチドによって構成される。この消化物は、1μM濃度及び1.1〜1.2kVのイオン化電圧で試験される。毛管スロットの幅は8μmである。
【0149】
図12は、1μM濃度及び1.2kVでシトクロムCの消化物に関して得られた質量スペクトルを表す。IRは相対強度である。ピークにはフラグメントのシーケンスとその荷電状態で注釈を付けた。この実験中に15個のペプチドのうち、11個は明確に同定された。
【実施例8】
【0150】
第8の実施例:第2の実施例に従って製造された噴霧化ソースの質量分析法による試験。V:上流に配置されたシリンジポンプ又はナノLCチェーン(nano LC chain)による前記デバイスの継続的供給
【0151】
第8の実施例は第5の実施例と同様(同じ方法で製造された同じデバイス、及びシリコン支持体1への電圧印加という同じ条件で試験された)であるが、ここでは分析されるサンプルは、上流に配置されたシリンジポンプ又はナノLCチェーンによって前記デバイスへ継続的に運ばれるという点が異なっている。
【0152】
シリンジポンプへのカップリングのため、液体の流量は500nL/分に固定された。この試験のための溶液は第5の実施例のものと同じであるが、ここではペプチド、グル−フィブリノペプチドBの濃度は1μMであり、噴霧化電圧は1.2kVに設定されているという点が異なる。毛管スロットの幅は8μmである。
【0153】
図13は、前記条件下で6分間実行された噴霧化試験中に記録された総イオン電流を示す。IRは相対強度であり、tは時間を表す。図14は、この6分の取得期間、すなわち240スキャンにわたって平均化された質量スペクトルに対応する。IRは相対強度である。
【0154】
ナノLCチェーン(流量1〜1000nL/分の液体クロマトグラフィー)へのカップリングは、ナノLCの分離部と、イオントラップでの質量分析法によるインライン分析との間という従来条件で実行された。流体流量は100nL/分であり、イオン化は1.5kVであった。分離実験は、800fmol/μLでシトクロムCの消化物に実行され、この消化物800fmolは分離カラムに注入された。毛管スロットの幅は10μmである。図15は、分離実験中に質量分析計で検出された総イオン電流を表す。IRは相対強度である。図16は、図15で示したピークに関して、保持時間23.8分で得られた質量スペクトルである。それは、シトクロムCのフラグメント92〜99の溶出及び分析に対応する。IRは相対強度である。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1A】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースの上面図
【図1B】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースの側面図
【図2】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースの先端の末端の斜視図
【図3A】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3B】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3C】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3D】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3E】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3F】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3G】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図3H】図1A及び図1Bに示したエレクトロスプレーの製造方法を示した上面図
【図4A】図3A〜図3Hに示した製造方法を実行するために用いられることができる劈開技法を示す図
【図4B】図3A〜図3Hに示した製造方法を実行するために用いられることができる劈開技法を示す図
【図5】その実行中に、本発明に係るエレクトロスプレー・ソースが質量分析計と関連付けられる試験の間で用いられるアセンブリを表す図
【図6】図5のアセンブリで、本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを用いた試験中に得られた総イオン電流を表すグラフ
【図7】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを図5のアセンブリに用いた試験中に得られた質量スペクトルを示すグラフ
【図8】その実行中に、本発明に係るエレクトロスプレー・ソースが質量分析計と関連付けられる試験の間で用いられる別のアセンブリを表す図
【図9】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを図8のアセンブリに用いた試験中に得られた総イオン電流を表すグラフ
【図10】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを図8のアセンブリに用いた試験中に得られた質量スペクトルを示すグラフ
【図11】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースで得られたグル−フィブリノペプチドのフラグメンテーション質量スペクトルを示すグラフ
【図12】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースの媒介によりシトクロムCの消化物に関して得られた質量スペクトルを示すグラフ
【図13】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを用いた試験中に得られた総イオン電流を示すグラフ
【図14】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを用いた試験中に得られた質量スペクトルを示すグラフ
【図15】本発明に係るエレクトロスプレー・ソースを用いたカップリング試験中にイオントラップ型質量分析計に記録された総イオン電流を示すグラフ
【図16】図15のグラフに対応する質量スペクトルを示すグラフ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの平坦かつ薄型の先端(3)を有する構造を持ち、前記先端は当該構造の残りの部分に対して片持ち梁となったエレクトロスプレー・ソースであって、
前記先端(3)は、当該先端の全厚みを貫通して形成され、前記先端(3)の末端(6)で終結した、前記エレクトロスプレー・ソースの吐出オリフィスを形成する毛管スロット(5)に設けられ、
前記エレクトロスプレー・ソースは、
噴霧される液体を前記毛管スロット(5)に供給する供給手段(4)と、
前記液体にエレクトロスプレー電圧を印加する手段と、
を備えることを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記供給手段は、前記毛管スロット(5)と流体接続している少なくとも1つの槽(4)を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項3】
請求項1に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記構造は、支持体(1)と、前記支持体に一体化され、その一部が前記先端(3)を構成するウェーハ(2)と、を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項4】
請求項3に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記供給手段は、前記ウェーハ(2)に形成された凹部によって構成され、前記毛管スロット(5)と流体接続している槽(4)を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、前記噴霧される液体に接触するように配置された少なくとも1つの電極(7,8)を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、少なくとも部分的に導電性がある前記支持体及び/又は少なくとも部分的に導電性がある前記ウェーハを有することを特徴とするに記載のエレクトロスプレー・ソース。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、前記噴霧される液体と接触できるように配置された導電性ワイヤ(32)を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記供給手段は毛管チューブを有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記供給手段は、前記構造を支持し前記毛管スロットと流体接続しているマイクロシステムで形成されたチャネルを有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項10】
請求項3又は4に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記ウェーハ(2)は、前記噴霧される液体に対して疎水性の表面を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項11】
エレクトロスプレー・ソースである構造を製造する方法であって、
基板(10)から支持体(1)を形成するステップと、
平坦かつ薄型の先端(3)を構成する部分を含むウェーハ(2)を、前記先端の全厚みを貫通して形成され、前記先端の末端で終結した、噴霧される液体を送るための毛管スロット(5)が前記先端に設けられた状態で形成するステップと、
前記先端(3)が前記支持体に対して片持ち梁となる状態で前記ウェーハ(2)を前記支持体(1)上に一体化させるステップと、を含むエレクトロスプレー・ソース製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のエレクトロスプレー・ソース製造方法であって、
前記支持体(1)を形成するための前記基板(10)を配設するステップと、
前記基板(10)上にエッチングされた溝(13)によって前記支持体(1)を区切るステップと、
前記構造の将来前記先端になる部分に対応する前記基板の区域に、定められた厚みで犠牲材料(14)を堆積するステップと、
前記ウェーハ(2)の前記先端(3)を前記犠牲材料(14)上に配置した状態で、前記基板(10)で区切られた前記支持体(1)上に前記ウェーハ(2)を堆積するステップと、
前記犠牲材料(14)を除去するステップと、
前記溝(13)レベルでの劈開によって前記支持体(1)を前記基板(10)から分離するステップと、
を含むことを特徴とするエレクトロスプレー・ソース製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載のエレクトロスプレー・ソース製造方法であって、
前記ウェーハ(2)を堆積するステップでは、槽(4)を構成するために前記毛管スロット(5)と流体接続する凹部を有するウェーハを堆積することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のエレクトロスプレー・ソース製造方法であって、
前記噴霧される液体との電気的な接触が確保される少なくとも1つの電極(7,8)を堆積するステップをさらに含むことを特徴とするエレクトロスプレー・ソース製造方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースの使用であって、
質量分析法によるその分析の前に、エレクトロスプレーによる液体のイオン化を行うエレクトロスプレー・ソースの使用。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースの使用であって、
較正サイズの滴の形成又は固定サイズの粒子の吐出を行うエレクトロスプレー・ソースの使用。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースの使用であって、
化合物による分子書き込みを実行するエレクトロスプレー・ソースの使用。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースの使用であって、
流体導通状態にあるデバイスの電気接合電位を規定するエレクトロスプレー・ソースの使用。
【請求項1】
少なくとも1つの平坦かつ薄型の先端(3)を有する構造を持ち、前記先端は当該構造の残りの部分に対して片持ち梁となったエレクトロスプレー・ソースであって、
前記先端(3)は、当該先端の全厚みを貫通して形成され、前記先端(3)の末端(6)で終結した、前記エレクトロスプレー・ソースの吐出オリフィスを形成する毛管スロット(5)に設けられ、
前記エレクトロスプレー・ソースは、
噴霧される液体を前記毛管スロット(5)に供給する供給手段(4)と、
前記液体にエレクトロスプレー電圧を印加する手段と、
を備えることを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記供給手段は、前記毛管スロット(5)と流体接続している少なくとも1つの槽(4)を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項3】
請求項1に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記構造は、支持体(1)と、前記支持体に一体化され、その一部が前記先端(3)を構成するウェーハ(2)と、を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項4】
請求項3に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記供給手段は、前記ウェーハ(2)に形成された凹部によって構成され、前記毛管スロット(5)と流体接続している槽(4)を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、前記噴霧される液体に接触するように配置された少なくとも1つの電極(7,8)を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、少なくとも部分的に導電性がある前記支持体及び/又は少なくとも部分的に導電性がある前記ウェーハを有することを特徴とするに記載のエレクトロスプレー・ソース。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記エレクトロスプレー電圧を印加する手段は、前記噴霧される液体と接触できるように配置された導電性ワイヤ(32)を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記供給手段は毛管チューブを有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記供給手段は、前記構造を支持し前記毛管スロットと流体接続しているマイクロシステムで形成されたチャネルを有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項10】
請求項3又は4に記載のエレクトロスプレー・ソースであって、
前記ウェーハ(2)は、前記噴霧される液体に対して疎水性の表面を有することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース。
【請求項11】
エレクトロスプレー・ソースである構造を製造する方法であって、
基板(10)から支持体(1)を形成するステップと、
平坦かつ薄型の先端(3)を構成する部分を含むウェーハ(2)を、前記先端の全厚みを貫通して形成され、前記先端の末端で終結した、噴霧される液体を送るための毛管スロット(5)が前記先端に設けられた状態で形成するステップと、
前記先端(3)が前記支持体に対して片持ち梁となる状態で前記ウェーハ(2)を前記支持体(1)上に一体化させるステップと、を含むエレクトロスプレー・ソース製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のエレクトロスプレー・ソース製造方法であって、
前記支持体(1)を形成するための前記基板(10)を配設するステップと、
前記基板(10)上にエッチングされた溝(13)によって前記支持体(1)を区切るステップと、
前記構造の将来前記先端になる部分に対応する前記基板の区域に、定められた厚みで犠牲材料(14)を堆積するステップと、
前記ウェーハ(2)の前記先端(3)を前記犠牲材料(14)上に配置した状態で、前記基板(10)で区切られた前記支持体(1)上に前記ウェーハ(2)を堆積するステップと、
前記犠牲材料(14)を除去するステップと、
前記溝(13)レベルでの劈開によって前記支持体(1)を前記基板(10)から分離するステップと、
を含むことを特徴とするエレクトロスプレー・ソース製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載のエレクトロスプレー・ソース製造方法であって、
前記ウェーハ(2)を堆積するステップでは、槽(4)を構成するために前記毛管スロット(5)と流体接続する凹部を有するウェーハを堆積することを特徴とするエレクトロスプレー・ソース製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のエレクトロスプレー・ソース製造方法であって、
前記噴霧される液体との電気的な接触が確保される少なくとも1つの電極(7,8)を堆積するステップをさらに含むことを特徴とするエレクトロスプレー・ソース製造方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースの使用であって、
質量分析法によるその分析の前に、エレクトロスプレーによる液体のイオン化を行うエレクトロスプレー・ソースの使用。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースの使用であって、
較正サイズの滴の形成又は固定サイズの粒子の吐出を行うエレクトロスプレー・ソースの使用。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースの使用であって、
化合物による分子書き込みを実行するエレクトロスプレー・ソースの使用。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー・ソースの使用であって、
流体導通状態にあるデバイスの電気接合電位を規定するエレクトロスプレー・ソースの使用。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2007−516071(P2007−516071A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538911(P2006−538911)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050580
【国際公開番号】WO2005/046881
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506160112)ユニバシテ デ シオンス エ テクノロジ ド リール (1)
【出願人】(503434139)ソントル ナショナル ド ラ ルシェルシュ ションティフィーク (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050580
【国際公開番号】WO2005/046881
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506160112)ユニバシテ デ シオンス エ テクノロジ ド リール (1)
【出願人】(503434139)ソントル ナショナル ド ラ ルシェルシュ ションティフィーク (20)
【Fターム(参考)】
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