説明

カリックスアレーンおよびこれを含むフォトレジスト組成物

【課題】望ましくは高い解像度および低いラインエッジラフネス(LER)を有するフォトレジストについての厳しい要件を満たす向上した解像度を有するカリックス[4]アレーンベースの分子性ガラス化合物、該化合物の形成方法および該化合物を含むフォトレジストを提供する。
【解決手段】式C(R=C(R)−O−(L)−Arの芳香族ビニルエーテル(式中、RおよびRはそれぞれ独立して単結合、H、C1−20アルキル等であり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにArはハロ含有単環式、または置換されているかもしくは非置換の多環式もしくは縮合多環式C6−20芳香族含有部分であり、ここで、RおよびRのいずれかもしくは両方が単結合であってかつnが0である場合にはRおよびRはArに連結される)と、カリックス[4]アレーンとのビニルエーテル付加物を含む分子性ガラス化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2011年9月23日に出願された米国仮出願第61/538,670号のノンプロビジョナル出願であり、かつその米国仮出願についての優先権を主張し、その出願の内容はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
次世代マイクロリソグラフィ(すなわち、193nm液浸リソグラフィを超えて、かつeビーム(e−beam)、X線および13.4nmの非常に短い波長で操作する極端紫外線(EUV)リソグラフィのような次世代光学へ向かう)についての設計規則はますます小さな寸法、例えば、30nm以下に向かっていることである。一般に、焦点深度(DOF)は、より大きな開口数(NA)のせいで解像度が高くなるにつれて必然的に浅くなり、従って、レジスト厚さも、ますます小さくなるフィーチャサイズに対応して薄くなる。線幅がより狭くなり、かつレジスト膜がより薄くなるにつれて、解像度およびラインエッジラフネス(LER)のようなコンシステンシーの問題が、フォトレジストの性能および有用性の制限の有意性を増大させるようになる。これらの現象は半導体デバイスの製造において関心を持たれており;例えば、過剰なLERは、例えば、トランジスタおよびゲートアーキテクチャにおける劣ったエッチングおよびライン幅制御の欠陥をもたらす場合があり、潜在的に短絡および信号遅延を生じさせる場合がある。EUVフォトレジストを製造するために一般的に使用されるポリマー材料の旋回の半径は本質的にLER要件(すなわち、3nm未満)より大きいので、キャストされた場合に非晶質膜を形成し、かつ分子性ガラスとして一般的に知られている、小さく、離散しかつ充分に画定された分子はEUVフォトレジストプラットフォームを開発するための可能な候補物質と考えられてきた。
【0003】
ネガティブおよびポジティブトーンレジストにおいて分子性ガラスが使用されてきた。米国特許出願公開第2010/0266952A1号は、レゾルシノール/ピロガロールと、カルボキシラート基を有し、かつレゾルシノール/ピロガロールのヒドロキシ基に結合される溶解制御基を有するアルデヒドとから製造されるカリックス[4]アレーンの使用を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0266952号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、望ましくは高い解像度および低いLERを有するフォトレジストについての厳しい要件を満たす向上した解像度を有するカリックス[4]アレーンベースのフォトレジストについての必要性が存在したままである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
式C(R=C(R)−O−(L)−Ar(式中、RおよびRはそれぞれ独立して単結合、H、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにArはハロ含有単環式、または置換されているかもしくは非置換の多環式もしくは縮合多環式C6−20芳香族含有部分であり、ここで、RおよびRのいずれかもしくは両方が単結合であってかつnが0である場合にはRおよびRはArに連結される)の芳香族ビニルエーテルと、カリックス[4]アレーンとのビニルエーテル付加物を含む本発明の分子性ガラスによって、先行技術の上記および他の欠点の1以上が克服されうる。
【0007】
フォトレジストは分子性ガラス化合物、溶媒および光酸発生剤も含む。
コーティングされた基体は(a)基体の表面上にパターン形成される1以上の層を有する基体;および(b)前記パターン形成される1以上の層上のフォトレジスト組成物の層を含む。
【0008】
分子性ガラス化合物を形成する方法は、酸性触媒の存在下で、カリックス[4]アレーンと、式C(R=C(R)−O−(L)−Arの芳香族ビニルエーテル(式中、RおよびRはそれぞれ独立して単結合、H、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにArはハロ含有単環式、または置換されているかもしくは非置換の多環式もしくは縮合多環式C6−20芳香族含有部分であり、ここで、RおよびRのいずれかもしくは両方が単結合であってかつnが0である場合にはRおよびRはArに連結される)とを化合させることを含む。
【0009】
パターン形成された基体を形成する方法は前記コーティングされた基体を活性化放射線に露光することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、典型的なフォトレジスト(AおよびB)並びに比較のレジスト(C)の1:1ライン/スペース走査型電子顕微鏡写真(SEM)像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な記載から明らかである。
【0012】
本明細書において開示されるのは、フォトレジストを製造するのに有用な分子性ガラス(molecular glass)化合物である。この分子性ガラス化合物はアセタール化学を用いて、塩基安定であるが酸開裂性芳香族保護基を含むように修飾された遊離ヒドロキシ基を有するテトラマーカリックス[4]アレーンである。
【0013】
カリックス[4]アレーンは、フェノール系化合物とアルデヒドとの反応から生じる交互構造を有する個別の環式テトラマー化合物である。コア構造は好ましくは、ヒドロキシ基を有する芳香族化合物と、アルデヒド(好ましくはこれもヒドロキシ基を有する)とから形成されるボウル型テトラマーカリックス[4]アレーンであり、これらヒドロキシル基のいくつかもしくは全ては芳香族ビニルエーテルと反応させられてアセタール保護基である付加物を形成している。本明細書において使用される場合、「付加物」とは、他に特定されない限りは、芳香族ヒドロキシ基とこのビニルエーテルとの付加生成物をいう。カリックス[4]アレーンは4つの異なる配座異性体:シス−シス−シス、シス−トランス−シス、シス−シス−トランス、およびトランス−トランス−トランスで存在する。典型的には、熱力学的に最も有利な配座異性体はシス−シス−シスであり、この場合には、カリックス[4]アレーン分子がC4対称軸を有するように4つ全てのアレーン環が同じ方向に反っており、これはC2対称軸を有するトランス−トランス−トランス異性体とは対照的である。例えば、レゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)のようなヒドロキシ芳香族化合物を使用して製造される場合には、これらヒドロキシ基は、隣の芳香環上のヒドロキシ基との間での幾何学的に有利な水素結合相互作用によって配座を効果的に固定する。この固定された配座は「ボウル型」の構造を全−シスカリックス[4]アレーンに付与する。
【0014】
カリックス[4]アレーン上の芳香族ビニルエーテルから得られるアセタール基の存在は、アルカリ現像剤中での溶解抑制をもたらし、これは酸への曝露によって切断されて、このカリックス[4]アレーンの溶解およびコントラストを増大させ、並びに増大したガラス転移温度をもたらす。この保護されたカリックス[4]アレーンおよび光酸発生剤を用いて製造されたフォトレジストの塗膜の露光の際に、このアセタール保護基の酸加水分解がこのコアをアルカリ現像剤に可溶性にする。
【0015】
よって、分子性ガラス化合物は式(I):
C(R=C(R)−O−(L)−Ar (I)
の芳香族ビニルエーテルとカリックス[4]アレーンとのビニルエーテル付加物を含む。式(I)においては、RおよびRはそれぞれ独立して単結合、H、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにArはハロ含有単環式、または置換されているかもしくは非置換の多環式もしくは縮合多環式C6−20芳香族含有部分である。RおよびRが、例えば、水素であって、非置換のビニル基を形成していてよく、またはRおよびRのいずれかもしくは両方が単結合であってかつnが0である場合にはRおよびRはArに連結されることができ、環内ビニルエーテルを形成することができる。本明細書において使用される場合、「置換されている」とはハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシラート、アミド、ニトリル、チオール、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C7−10アルキルアリール、C7−10アルキルアリールオキシ、もしくは前述の少なくとも1種を含む組み合わせのような置換基を含むことを意味する。「ハロ置換されている」とはその基が特にハロゲン置換基(すなわち、F、Cl、Br、I)を含み、かつこれらハロゲンをそれだけでまたは上述の他の置換基と組み合わせて含むことができることを意味する。本明細書において、前記式に関して開示されるあらゆる基または構造は、他に特定されない限りは、または得られる構造の所望の特性にそのような置換が有意に悪影響を及ぼさないであろう限りは、そのように置換されることができることが理解されるであろう。また、本明細書において使用される場合、接頭辞「ハロ」はその基が何らかのハロゲンまたはその組み合わせ(F、Cl、Br、I)を含むことを意味する。
【0016】
好ましくは、芳香族ビニルエーテルは式:
C=CH−O−(L)−Ar (II)
のものであり、式中、LはC1−10連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにArはC6−20アリール、C6−20ヘテロアリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、C7−20ヘテロアラルキル、またはC7−20ハロアラルキルである。また、本明細書において使用される場合、接頭辞「ヘテロ−」は炭素でなく、水素でない原子を意味する。好ましいヘテロ原子には、B、N、P、O、SおよびSiが挙げられる。好ましくは、式(I)および(II)において、Lは−((−CHO−)−、または−((−CH−)−O)−C(O)−であり、式中、mおよびpはそれぞれ独立して0〜10の整数である。好ましくは、より短い連結基Lが使用されることができ、この場合mおよび/またはpは0または1である。
【0017】
典型的な芳香族ビニルエーテルには、下記式:
【化1】

【化2】

を有するもの、または前述のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0018】
よって、ビニルエーテルの組み合わせが使用されても良い。例えば、2種以上の異なる芳香族ビニルエーテルがカリックス[4]アレーンと反応させられて、付加物を形成することができる。あるいは、芳香族ビニルエーテルと脂肪族ビニルエーテルとの組み合わせが使用されても良い。好ましくは、脂肪族ビニルエーテルおよび芳香族ビニルエーテルの組み合わせが使用される場合には、ビニルエーテル付加物は式(III)の環式脂肪族ビニルエーテルをさらに含む:
C(R=C(R)−O−(L)−R (III)
式中、RおよびRはそれぞれ独立して、H、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにRは置換されているかもしくは非置換であって、かつC2−30アルキルもしくはC2−40ハロアルキルである。
【0019】
典型的な環式脂肪族ビニルエーテルには、シクロアルキル、並びにアダマンタンおよびノルボルナンのような炭素ケージ構造などをベースにしたもの:
【化3】

が挙げられる。
【0020】
さらに、典型的な芳香族ビニルエーテルには、一般構造:
【化4】

のものが挙げられ、式中、アリールは、例えば、下記構造:
【化5】

の一つを有する芳香族部分、または上述のものの少なくとも1種を含む組み合わせである。
【0021】
カリックス[4]アレーン自体は、好ましくは、式(IV):
(OR (IV)
(式中、RはH、F、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、RはH、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキルであり、xは6−yであり、並びにyは2もしくは3であり、並びに少なくとも2つのOR基は互いにメタである)の芳香族化合物と、アルデヒドとのテトラマー反応生成物を含む。典型的な芳香族化合物には、レゾルシノール、ピロガロール、3−メトキシフェノールまたは3−エトキシフェノールが挙げられる。
【0022】
アルデヒドは好ましくは、式(V):
−CHO (V)
(式中、Rは置換されているかもしくは非置換であって、かつC1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルである)のものである。典型的なアルデヒドには、ベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド、3−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、または3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドが挙げられる。
【0023】
よって、典型的なカリックス[4]アレーンには、以下の構造が挙げられる:
【化6】

【0024】
よって、カリックス[4]アレーンは、1分子あたり、好ましくは4個以上のヒドロキシ基、より好ましくは4〜12個のヒドロキシ基を含み、これらヒドロキシ基においては、この付加物を形成する反応の際に、芳香族ビニルエーテル基または芳香族および脂肪族基の統計学的分布をそれぞれのコア分子上に形成する。よって、この付加物は使用される芳香族または芳香族および脂肪族ビニルエーテルと、カリックス[4]アレーンコア上に存在する利用可能な反応性ヒドロキシ基との化学量論に基づく平均構造を表すことが認識されるであろう。
【0025】
カリックス[4]アレーンは、酸性水溶液、酸性化アルコール−水混合物、または酸性化アルコール混合物のような酸性化極性溶媒中で行われる、上記芳香族化合物と、アルデヒドまたはその誘導体との縮合反応生成物である。この縮合を行うのに適する溶媒および溶媒混合物には、これに限定されないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、および上記アルコールと水との組み合わせ中の塩酸が挙げられる。好ましくは、この溶媒システムはカリックス[4]アレーンのシス−シス−シス異性体が優先的に沈殿するように選択される。この縮合は約70℃を超える、より好ましくは約80℃を超える温度で行われることができる。カリックス[4]アレーンは沈殿物として回収されることができるが、ここでは熱力学的生成物(このシス−シス−シス異性体)は水系溶媒中でより低い溶解性を有することができ、よって沈殿物として単離されうる。
【0026】
縮合は、バッチモードで、反応へのモノマーおよび酸性触媒のバッチ添加によって、反応混合物への成分(芳香族化合物およびアルデヒド)の1以上の別々のフィードの計量された添加によって、または反応物質を一緒にするのに適する他の方法によって行われることができる。本明細書において開示されるように、カリックス[4]アレーンは個別の分子であって、ポリマーではなく、単一種の芳香族化合物と単一種のアルデヒドとの縮合生成物である場合には均質な組成を有し;ポリマー中間体(縮合ホモポリマー)が当初は形成されるが、カリックス[4]アレーンはカリックス[4]アレーンを直接得るためのオリゴマー化、並びに熱力学的に不利な配座異性体(すなわち、シス−シス−トランス、シス−トランス−シス、トランス−トランス−トランス)または中間体ポリマーのテトラマーセグメントの末端基組み替えおよび鎖切断の双方の熱力学的生成物であることが認識されるであろう。
【0027】
カリックス[4]アレーンは2,000g/モル以下、好ましくは1,500g/モル以下の分子量を有することができる。縮合されたテトラマー生成物の性質のせいで、このカリックス[4]アレーンコア自体は個別でかつ特定された化学量論を有し、よって1の理論的多分散度を有することが認識されるであろう。分子量は、例えば、電界脱離質量分析法、レーザーアブレーション質量分析法、またはカリックス[4]アレーンおよび付加物の分子量を得るのに適する他の方法を用いる質量分析法を用いて個別の化合物について決定されうる。
【0028】
付加物は、芳香族ビニルエーテルとカリックス[4]アレーンとのさらなる縮合生成物である。
【0029】
カリックス[4]アレーンと芳香族ビニルエーテルとの付加物は、カリックス[4]アレーン上のヒドロキシ基とビニルエーテルとの反応によって製造されうる。例えば、レゾルシノールと3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合からのカリックス[4]アレーンは、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソランまたは1−メトキシ−2−プロピルアセタートのようなエーテルを含む溶媒中で、触媒量の酸(例えば、トリフルオロ酢酸)の存在下で、かつ低水分量(<0.1%w/w)で、例えば、2−(2−ビニルオキシ)エチルナフタレン−2−カルボキシラート(NCVE)のようなビニルエーテルで、単独で、または2−(2−ビニルオキシ)エチルアダマンタンカルボキシラートと組み合わせて処理されることができる。カリックス[4]アレーンの芳香族ビニルエーテル付加物(すなわち、分子性ガラス化合物)はフォトレジスト組成物を製造するのに有用な適切な溶媒中の溶液として使用されることができ、または沈殿もしくは噴霧乾燥によって固体として単離されうる。
【0030】
この分子性ガラス化合物からフォトレジストが製造される。フォトレジストはこの分子性ガラス化合物に加えて、溶媒および光酸発生剤を含む。
【0031】
溶媒には、フォトレジストにおける使用に適するものが挙げられる。典型的な溶媒には、アニソール、アルコール、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、および1−エトキシ−2−プロパノール、エステル、例えば、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、1−メトキシ−2−プロピルアセタート、メトキシエトキシプロピオナート、メチルヒドロキシイソブチラート、エトキシエトキシプロピオナート、ケトン、例えば、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノン、並びに上記溶媒の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0032】
光酸発生剤には、一般的に、フォトレジストを製造する目的に適する光酸発生剤が挙げられる。光酸発生剤には、例えば、オニウム塩、例えば、モノ−もしくはジアリールヨードニウム、またはモノ−、ジ−もしくはトリアリールスルホニウム塩、ニトロベンジルエステル、スルホン酸エステル、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体およびハロゲン含有トリアジン化合物、または上述のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられ、ここで、塩のアニオンはフッ素化されているかまたはフッ素化されていないC1−40スルホン酸もしくはスルホンイミドアニオンである。
【0033】
フォトレジストに含まれうる他の成分には、光分解性塩基、クエンチャー(quencher)および/または界面活性剤が挙げられる。
【0034】
光分解性塩基には、光分解性カチオン、および好ましくは、例えば、C1−20カルボン酸のような弱酸(pKa>2)のアニオンと対になったPAGを製造するのに有用なものが挙げられる。典型的には、このカルボン酸には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロヘキシルカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、および他のこのようなカルボン酸が挙げられる。典型的には、光分解性塩基には、下記構造のカチオンとアニオンとを組み合わせたものが挙げられ:ここで、カチオンは、トリフェニルスルホニウムまたは下記:
【化7】

(式中、Rは独立してH、C1−20アルキル、C6−20アリールまたはC6−20アルキルアリールである)のもののいずれかであり、アニオンは
【化8】

RC(=O)−O、またはOH(式中、Rは独立してH、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールまたはC6−20アルキルアリールである)である。
他の光分解性塩基には、非イオン性光分解性発色団、例えば、2−ニトロベンジル基およびベンゾイン基などをベースにしたものが挙げられる。
【0035】
界面活性剤には、フッ素化および非フッ素化界面活性剤が挙げられ、かつ好ましくは非イオン性である。典型的なフッ素化非イオン性界面活性剤には、ペルフルオロC界面活性剤、例えば、3Mコーポレーションから入手可能なFC−4430およびFC−4432界面活性剤;並びに、フルオロジオール、例えば、オムノバ(Omnova)からのポリフォックス(POLYFOX)PF−636、PF−6320、PF−656およびPF−6520フルオロ界面活性剤が挙げられる。
【0036】
選択的に、または追加的に、他の添加剤には、光非分解性の塩基であるクエンチャー、例えば、水酸化物、カルボキシラート、アミン、イミンおよびアミドをベースにしたものなどが挙げられうる。好ましくは、このようなクエンチャーには、C1−30有機アミン、イミンもしくはアミドが挙げられ、または強塩基(例えば、ヒドロキシドもしくはアルコキシド)もしくは弱塩基(例えば、カルボキシラート)のC1−30第四級アンモニウム塩であり得る。典型的なクエンチャーには、アミン、例えば、トレーガー(Troger’s)塩基、ヒンダードアミン、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)もしくはジアザビシクロノネン(DBM)、またはイオン性クエンチャー、例えば、第四級アルキルアンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラメチルアンモニウム2−ヒドロキシ安息香酸(TMA OHBA)、もしくはテトラブチルアンモニウムラクタートが挙げられる。他の添加剤、例えば、当該技術分野において一般的に使用される溶解速度抑制剤および増感剤もフォトレジストに含まれうる。
【0037】
本明細書に開示されるフォトレジスト組成物は分子性ガラス化合物を、固形分の全重量を基準にして50〜99重量%、好ましくは55〜95重量%、より好ましくは60〜90重量%、およびさらにより好ましくは65〜90重量%の量で含むことができる。フォトレジスト中の成分のこの文脈に使用される「分子性ガラス化合物」は本明細書に開示される分子性ガラス化合物のみ、またはこの分子性ガラス化合物とフォトレジストにおいて有用な別の分子性ガラス化合物もしくはポリマーとの組み合わせを意味することができることが理解されるであろう。光酸発生剤は、固形分の全重量を基準にして0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、より好ましくは1〜20重量%、およびさらにより好ましくは2〜15重量%の量で含まれうる。使用される場合には、光分解性塩基は固形分の全重量を基準にして0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%、およびさらにより好ましくは0.2〜3重量%で含まれうる。界面活性剤は固形分の全重量を基準にして0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%、およびさらにより好ましくは0.2〜3重量%の量で含まれうる。クエンチャーは、固形分の全重量を基準にして0.03〜5重量%の比較的少量で含まれうる。他の添加剤は、固形分の全重量を基準にして30重量%以下、好ましくは20重量%以下、またはより好ましくは10重量%以下の量で含まれうる。フォトレジスト組成物の全固形分量は固形分および溶媒の全重量を基準にして0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、およびさらにより好ましくは1〜20重量%でありうる。固形分は溶媒を除く、分子性ガラスおよび任意の関連するポリマー、光酸発生剤、並びに任意の光分解性塩基、クエンチャー、界面活性剤、および添加剤を含むことが理解されるであろう。所望の膜厚さを提供するようにフォトレジスト固形分が選択されるであろうし、よって溶液中のその全固形分は用途特異的であって、これら固形分量に限定されるものとは見なされるべきでないことがさらに理解されるであろう。
【0038】
フォトレジスト組成物はキャストされて基体上に層を形成することができる。好ましくは、よって、溶媒、並びに基体の表面に接触している界面活性剤および光分解性塩基のような添加剤の除去後に、フォトレジスト層は分子性ガラス化合物および光酸発生剤を含む。基体は任意の寸法および形状であることができ、かつ好ましくは、ケイ素、二酸化ケイ素、ストレインドシリコン(strained silicon)、ガリウムヒ素、コーティングされた基体、例えば、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタルでコーティングされた基体、超薄型ゲート(ultrathin gate)酸化物、例えば、酸化ハフニウム、金属もしくは金属コーティングされた基体、例えば、チタン、タンタル、銅、アルミニウム、タングステン、これらの合金およびこれらの組み合わせでコーティングされた基体である。好ましくは、本明細書においては、基体の表面はパターン形成される限界寸法層、例えば、1以上のゲートレベル層もしくは半導体製造のための基体上の他の限界寸法層を含む。このような基体には、例えば、直径が20cm、30cm、40cmもしくはより大きい寸法、またはウェハ製造に有用な他の寸法を有する円形ウェハとして形成されるケイ素、SOI、ストレインドシリコンおよび他のこのような基体材料が好ましくは挙げられうる。
【0039】
さらに、電子デバイスを形成する方法は(a)基体の表面上に分子性ガラス化合物を含むフォトレジスト組成物の層を適用し;並びに(b)このフォトレジスト組成物層を活性化放射線にパターン様(patternwise)に露光する;ことを含む。この方法はさらに、(c)露光されたフォトレジスト組成物層を現像してレジストレリーフ像を提供することを含む。
【0040】
適用はスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディングなどをはじめとするあらゆる好適な方法によって達成されうる。フォトレジストの層の適用は好ましくは、回転するウェハ上にフォトレジストが分配されるコーティングトラックを使用して、溶媒中のフォトレジストをスピンコーティングすることにより達成される。分配中に、ウェハは4,000rpm以下、好ましくは約500〜3,000rpm、およびより好ましくは700〜2,500rpmの速度で回転させられうる。コーティングされたウェハは回転させられて溶媒を除去し、そして適用後ベーク(post−apply bake;PAB)(当該技術分野においては「ソフトベーク」とも称される)において一般的にホットプレート上でベークされて、残留する溶媒をさらに除去し、そして膜から自由体積を除いて、膜を均一に密にする。好ましくは、上に述べたように、適用は適用後ベークをさらに含む。適用後ベークは任意の適する温度で行われうる。例えば、PABは約120℃以下、好ましくは110℃以下、およびより好ましくは100℃以下で行われうる。適用後ベークは任意の好適な時間にわたって、例えば、約120秒以下、好ましくは110秒以下、およびより好ましくは100秒以下にわたって行われることができる。
【0041】
次いで、ステッパのような露光ツールを用いてパターン様露光が行われ、露光ツールにおいてはパターンマスクを通して膜が照射され、それによりパターン様に露光される。この方法は好ましくは高解像が可能な波長で活性化放射線を発生させる改良型の露光ツールを使用する。よって、露光は、好ましくは、eビーム放射線もしくは極端紫外線(EUV)を使用して行われる。活性化放射線を使用する露光は露光領域でPAGを分解して、酸および分解副生成物を発生させ、次いでその酸はポリマーの化学変化をもたらす(酸感受性基をデブロッキング(deblocking)して塩基可溶性基を生じさせるか、あるいは露光領域において架橋反応を触媒する)ことが認識されるであろう。この露光ツールの解像度は30nm未満であり得る。
【0042】
露光後に、露光後ベーク(PEB)を行って、露光中に発生した酸を拡散させることによって、デブロッキングおよび/または架橋反応の触媒がさらにもたらされる。露光後ベークは任意の適する温度で行われうる。例えば、PEBは約150℃以下、好ましくは140℃以下、およびより好ましくは130℃以下で行われうる。露光後ベークは任意の適する時間にわたって、例えば、約120秒以下、好ましくは110秒以下、およびより好ましくは100秒以下にわたって行われうる。
【0043】
次いで、露光された層を、その膜の露光部分を選択的に除去できる(この場合、フォトレジストはポジティブトーンである)、またはその膜の未露光部分を選択的に除去できる(この場合、フォトレジストはネガティブトーンである)好適な現像剤で処理することにより、露光されたフォトレジスト層の現像が達成される。好ましくは、フォトレジストは、酸感受性(脱保護性)基を有するポリマーをベースにしたポジティブトーンであり、そして現像剤は好ましくは金属イオンを含まない、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液、例えば、水性の0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。パターンは現像後に形成される。PEB工程が行われるので、我々はそれを現像工程とは別に言及する必要があるか、またはそれは現像工程の一部分である。
【0044】
フォトレジストは電子および光電子デバイス、例えば、メモリデバイス、プロセッサチップ(CPU)、グラフィックチップおよび他のこのようなデバイスを製造するために使用されることができる。
【実施例】
【0045】
本発明は以下の実施例によってさらに例示される。ここで使用される全ての化合物は、手順が以下に提示されているものを除いて商業的に入手可能である。構造的な特徴付けはOMNI−PROBEを用いるINOVA 400または500NMRスペクトロメータ(それぞれ、プロトンについて400または500MHzで操作する)、またはGEMINI300NMRスペクトロメータ(フッ素について282MHzで操作する)(それぞれ、Varianから)における核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析によって行われた。分子性ガラスの分子量は、ウォーターズアソシエーテズによって製造されたウオーターズe2695LC/3100マスディテクター(Mass Detector)を用いて、C18カラムを通す逆相液体クロマトグラフを行って、アセトニトリル/水(80/20)〜(100/0)(v/v)グラジェントでのグラジェント溶離で、0.5mL/分の流量で、高解像質量分析検出器(LC−MS)を用いてm/zを提供することにより決定された。ガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメントインコーポレーティドによって製造されたDSC Q2000示差走査熱量計を用いて、10℃/分の勾配速度で操作して決定された。他に特定されない限りは、全ての試薬は商業的に入手された。
【0046】
PAGである4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムシクロ(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩、および4−ビニルオキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムシクロ(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩(TPSVE Cy6、が東洋合成工業株式会社から商業的に得られた。
【0047】
異なる数の遊離ヒドロキシ基を含むように、いくつかのカリックス[4]アレーンコアが合成された。これら生成物は以下に提示される。
【0048】
カリックスアレーン1(C−4−ヒドロキシ−3−エトキシフェニル−カリックス[4]−3−エトキシ−フェノールアレーン)が以下の手順に従って製造された。
【化9】

【0049】
フラスコに3−エトキシフェノール(20.0g、141.8mmol)、濃HCl(10ml)およびエタノール(150ml)が入れられ、そして得られた混合物が室温で10分間にわたって攪拌された。あらかじめ50mlのエタノールに溶かされた3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(23.8g、141.8mmol)がこの混合物に10分間にわたって滴下添加され、そして還流で12時間にわたって加熱された。次いで、この反応混合物は室温まで冷却され、そして冷却された溶液から沈殿した固体が真空ろ過によって集められた。この粗生成物は、次いで、水および冷メタノールで3回(3×100mL)洗浄され、メタノールから再結晶させられ、そして精製された物質が集められ、真空で70℃で乾燥させられて、10gの白色固体生成物(25%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO−d、TMSi):ppm 8.3−8.6(m,フェノキシ 4H)、7.7−8.0(m,フェノキシ 4H)、5.9−6.4(m,芳香族 20H)、5.4−5.5(m,ベンジル 4H)、3.4−4.0(m,メチレン 16H)、1.0−1.4(m,CH 24H)。質量分析:m/z 1145.85。
【0050】
カリックスアレーン2(C−4−ヒドロキシ−3−エトキシフェニル−カリックス[4]−3−メトキシ−フェノールアレーン)およびカリックスアレーン3(C−4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル−カリックス[4]−3−メトキシ−フェノールアレーン)が上記手順に従って製造されたが、ただし式2のカリックスアレーンについては、2−ヒドロキシアニソールおよび3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドが使用され、そして式3のカリックスアレーンについては、2−ヒドロキシアニソールおよび3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドが使用された。式1、2および3のカリックスアレーンの構造は以下に示される。
【0051】
【化10】

【0052】
カリックスアレーンコアについての分析データは以下の表1に列挙される。
【表1】

【0053】
次いで、これらカリックス[4]アレーンとナフトイルエチルビニルエーテル(2−ナフチルカルボン酸(2−ナフトエ酸とも称される)2−エチルビニルエーテルエステル、略してNCVE)(下記)との反応によって、カリックスアレーン1、2および3のビニルエーテル付加物が形成された。
【0054】
【化11】

【0055】
ナフトイルエチルビニルエーテル(NCVE)が以下の手順に従って製造された。磁気攪拌装置を備えたオーブン乾燥された300mLの三ツ口丸底フラスコにおいて、25g(0.145mol)の2−ナフトエ酸および24.07g(0.17mol)の炭酸カリウム(KCO)が100mlのジオキサン中に懸濁され、そしてその混合物が室温で1時間にわたって攪拌され、濃厚スラリーを形成した。10mlのジオキサンに溶かした18.53g(0.17mol)の2−クロロエチルビニルエーテルがこの反応混合物に滴下漏斗を用いて1時間にわたってゆっくりと添加され、そして薄層クロマトグラフィ(TLC)分析(シリカプレート;溶離液 クロロホルム中1%(v/v)メタノール)によって完全な反応が確認されるまで、この反応はさらに12時間にわたって一晩還流された。この混合物をゆっくりと0.01%(v/v)塩酸(HCl)溶液400ml中に注ぎ込むことによってこの反応はクエンチされ、この粗生成物は300mlの酢酸エチル中に抽出され、そしてこの酢酸エチル抽出物が水およびブラインで中性のpHになるまで逐次的に洗浄された。次いで、この酢酸エチル抽出物は硫酸ナトリウムで乾燥させられ、ろ過され、ロータリーエバポレーションで濃縮されて、32g(92%収率)の琥珀色オイルを得て、これは静値すると固化する。この生成物はさらなる精製なしに使用された。H NMR(500MHz、アセトン−d):δ8.64(s,1H)、8.08(d,2H,8Hz)、7.89(d,2H,8.5Hz)、7.64−7.59(q,2H)、6.56−6.52(d/d,1H,7Hz)、5.58(s,1H)、4.60(m,2H)、4.49(m,2H)、2.30(s,3H)、1.90(s,3H)。13C NMR(125MHz、CDCl):δ166.6、151.5、135.6、132.4、131.3、129.4、128.3、128.1、127.7、127.0、126.6、125.2、87.1、65.9、63.3。
【0056】
ナフトイルエチルビニルエーテル(NCVE)を用いた、ビニルエーテル保護カリックス[4]アレーン(カリックス[4]アレーン1〜3)の合成についての一般的手順は以下の通りである。
【0057】
カリックス[4]アレーン(式1〜3)(1mmol)が10gの乾燥ジオキサンに添加される。この溶液に3〜6当量のナフトイルエチルビニルエーテル(NCVE)および1〜2モル%のトリフルオロ酢酸(TFA)が添加される。この混合物が2〜8時間にわたって70℃で攪拌される。トリエチルアミンを添加することによって残留酸が中和され、そして揮発性物質が真空で除去される。溶離液としてアセトニトリル/水(C18、80/20〜100/0 v/v)を使用する逆相カラムクロマトグラフィによって、生じたビニルエーテル−カリックス[4]アレーン付加物が分離される。
【0058】
様々な数のビニルエーテル保護基を有する分子性ガラスが単離された。特定の分子量の生じたどの分子性ガラス/ビニルエーテル付加物についても、コア上のビニルエーテルの明確な置換パターンは存在しないが、単離後にそれぞれ同じ分子量を有するが異なる置換異性体の分布が得られると認識されるであろう。それぞれの付加物についての置換異性体の分布についての分子量に基づく分析的特徴付けデータが表2に示される。
【0059】
【表2】

【0060】
フォトレジストポリマー、ポリ(スチレン/ヒドロキシスチレン/ヒドロキシスチレン−NCVE/ヒドロキシスチレン−TPSVE−C6);Sty/HS/NCVE/TPSVE−Cy6、70/10/10/10モル比)が以下の手順に従って製造された。
【0061】
ポリ(スチレン/ヒドロキシスチレン)コポリマー、70:30モル比(30g、0.25mol;丸善から入手可能)がジオキソランに溶かされた。このポリマー溶液が共沸蒸留によって乾燥させられた。TPSVE−CY6(16g、0.025mol)、トリフルオロ酢酸(0.221g)、NCVE(6.05g、0.025mol)がこの反応混合物に添加され、そしてその内容物が72℃で12時間にわたって加熱された。この反応混合物はテトラヒドロフラン(THF)で希釈され、そしてこの反応混合物はトリエチルアミンを用いてクエンチされた。次いで、この反応混合物は酢酸エチルおよび水(3×100mL)で数回抽出され、次いで真空乾燥させられた。得られたポリマーはTHFに12重量%で再溶解させられ、ヘプタン/イソプロパノール(95/5)から沈殿させられ、ヘプタンから再沈殿させられ、そして真空で乾燥させられて48gのSty/HS/NCVE/TPSVE−Cy6ポリマーを生じた。
【0062】
上記分子性ガラスはフォトレジストに配合されて、そしてEUV露光によってリソグラフィー評価された。
【0063】
ポジティブトーンフォトレジスト組成物(レジスト1)が以下の手順によって製造された。実施例1の分子性ガラス化合物0.819g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のPOLYFOX(ポリフォックス)PF656界面活性剤(オムノバから入手可能)の1重量%溶液0.108g、乳酸エチル中の塩基添加剤(TMA−OHBA)の1重量%溶液3.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のトリフェニルスルホニウムシクロ(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩の5重量%溶液3.0g、19.51gのシクロヘキサノン、および13.59gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートの組み合わせが混合されそしてろ過された(0.1μmろ過)。
【0064】
ポジティブトーンフォトレジスト組成物(レジスト2)が以下の手順によって製造された。実施例1(示されるデータは実施例1について)の分子性ガラス化合物0.452g、0.452gのフォトレジストポリマー(Sty/HS/NCVE/TPSVE−Cy6、70/10/10/10モル比)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のポリフォックスPF656界面活性剤(オムノバから入手可能)の1重量%溶液0.108g、乳酸エチル中の塩基添加剤(TMA−OHBA)の1重量%溶液2.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のトリフェニルスルホニウムシクロ(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩の5重量%溶液1.51g、19.5gのシクロヘキサノン、および16.01gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートの組み合わせが混合されそしてろ過された(0.1μmろ過)。
【0065】
ポジティブトーンフォトレジスト組成物(比較レジスト)が以下の手順を用いて製造された。ポジティブトーンフォトレジスト組成物は、市販の分子性ガラス(HSIIA2、出光から入手可能)0.81g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のポリフォックスPF656界面活性剤(オムノバから入手可能)の1重量%溶液0.10g、乳酸エチル中の塩基添加剤(TMA−OHBA)の1重量%溶液3.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のトリフェニルスルホニウムシクロ(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩の5重量%溶液3.0g、19.5gのシクロヘキサノン、および13.58gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート溶媒の混合物を一緒にすることにより製造された。
【0066】
各レジストは以下のようにリソグラフィ処理された。フォトレジストはTEL ACT−8(東京エレクトロン株式会社)コーティングトラックまたは同様の装置を使用して、有機下層を有する200mmシリコンウェハ上にスピンコートされ、90℃で60秒間ベークされて、約60nm厚さのレジスト膜を形成した。得られたフォトレジスト層は28nm 1:1ライン/スペースフィーチャを目標とするパターン形成されたマスクを通して露光された(eMET;EUV放射線、13.4nm)。露光されたウェハは70℃(レジスト1および2)または100℃(比較レジスト)で60秒間露光後ベークされ、そして0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド現像剤水溶液で現像されて、ポジティブトーンフォトレジストパターンを形成した。
【0067】
レジスト1および2について、および比較レジスト(レジスト3)について1:1解像度を提供するのに必要とされる露光線量が表3に示される。得られた限界寸法(CD)および露光量対サイズ(dose−to−size)(Esize)についてのデータがその表に示される。パターン形成されたレジストのトップダウン像が図(A〜C)に示される。
【0068】
【表3】

【0069】
表3に示されるように、3つのレジスト全てを像形成するために同じマスクが使用されたが、レジスト1およびレジスト3(比較レジスト)は28nmライン/スペースを解像しなかった。レジスト2(組み合わせた分子性ガラス化合物およびポリマーを使用)は、比較レジストと比べてEsizeでの向上したフォトスピードを有しており、かつ分子性ガラス化合物を含んでいるだけであるレジスト1と比べて有意により良好なEsizeを有することが表3におけるデータおよび図A〜Cに認められうる。しかし、この図に認められるように、レジスト1は最もきれいなプロファイルを示す。よって、フォトレジストに分子性ガラス化合物を含ませることは、フォトレジストポリマーだけの使用が可能にするよりもフォトスピードおよび解像度の向上、並びによりきれいなプロファイルの双方を提供できる。
【0070】
本明細書に開示された全ての範囲は終点を含み、その終点は互いに独立して組み合わせ可能である。「場合によって」および「任意の」とはその後に記載された事象もしくは状況が起こってよく、または起こらなくてよく、そしてその記載はその事象が起こる例およびその事象が起こらない例を含む。本明細書において使用される場合、「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金もしくは反応生成物を包含する。全ての参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
さらに、用語「第1」、「第2」などは、本明細書においては、順序、品質もしくは重要性を示すものではなく、1つの要素を他のものから区別するために使用されることもさらに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式 C(R=C(R)−O−(L)−Arの芳香族ビニルエーテル
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して単結合、H、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにArはハロ含有単環式、または置換されているかもしくは非置換の多環式もしくは縮合多環式C6−20芳香族含有部分であり、ここで、RおよびRのいずれかもしくは両方が単結合であってかつnが0である場合にはRおよびRはArに連結される)と、
カリックス[4]アレーンと
のビニルエーテル付加物を含む分子性ガラス化合物。
【請求項2】
前記芳香族ビニルエーテルが、式
C=CH−O−(L)−Ar
(式中、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにArはC6−20アリール、C6−20ヘテロアリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、C7−20ヘテロアラルキル、またはC7−20ハロアラルキルである)のものである、請求項1に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項3】
Lが−((−CHO−)−、または−((−CH−)−O)−C(O)−であり、mおよびpがそれぞれ独立して0〜10の整数である、請求項1に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項4】
前記ビニルエーテル付加物が、式
C(R=C(R)−O−(L)−R
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、H、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにRは置換されているかもしくは非置換であって、かつC2−30シクロアルキルもしくはC2−40ハロシクロアルキルである)
の環式脂肪族ビニルエーテルをさらに含む、請求項1に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項5】
前記カリックス[4]アレーンが、
式 C(OR
(式中、RはH、F、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、RはH、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキルであり、xは6−yであり、並びにyは2もしくは3であり、少なくとも2つのOR基は互いにメタである)の芳香族化合物と、
式 R−CHO
(式中、Rは置換されているかもしくは非置換であって、かつC1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルである)のアルデヒド
とのテトラマー反応生成物を含む、請求項1に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項6】
前記芳香族化合物がレゾルシノール、ピロガロール、3−メトキシフェノール、または3−エトキシフェノールである、請求項5に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項7】
前記アルデヒドがベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド、3−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、または3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドである、請求項5に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項の前記分子性ガラス化合物、溶媒および光酸発生剤を含むフォトレジスト。
【請求項9】
(a)基体の表面上にパターン形成される1以上の層を有する基体;および(b)前記パターン形成される1以上の層上の、請求項8のフォトレジスト組成物の層;を含むコーティングされた基体。
【請求項10】
酸性触媒の存在下で、
カリックス[4]アレーンと、
式 C(R=C(R)−O−(L)−Arの芳香族ビニルエーテル
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して単結合、H、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにArはハロ含有単環式、または置換されているかもしくは非置換の多環式もしくは縮合多環式C6−20芳香族含有部分であり、ここで、RおよびRのいずれかもしくは両方が単結合であってかつnが0である場合にはRおよびRはArに連結される)と
を化合させることを含む、分子性ガラス化合物を形成する方法。
【請求項11】
請求項9のコーティングされた基体を活性化放射線に露光することを含む、パターン形成された基体を形成する方法。
【請求項12】
露光がeビームおよび/またはEUV放射線を用いるものである請求項11に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−79230(P2013−79230A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−205765(P2012−205765)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】