説明

カリックスアレーン系化合物、カリックスアレーン系化合物の製造方法、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】エポキシ樹脂組成物にした際に溶解性が良好であり、かつ、エポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与できるエポキシ樹脂用硬化剤として用いることができる、新規なカリックスアレーン系化合物を提供する。
【解決手段】下記式(I−1)で示される特定構造を有するカリックスアレーン系化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリックスアレーン系化合物、その製造方法、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物及びそれによって封止された素子を備えてなる電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形材料、積層板用及び接着剤用材料、各種電子電気部品、塗料及びインキ材料等の分野において、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂が広く使用されている。特に、トランジスタ、IC等の電子部品素子の封止技術に関する分野では、封止材料としてエポキシ樹脂組成物が広く使用されている。その理由としては、エポキシ樹脂は、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性においてバランスがとれているためである。
【0003】
一方、近年、電子部品の分野では高速化及び高密度化が進んでおり、それに伴って、電子部品の発熱が顕著となってきている。また、高温下で作動する電子部品も増加している。そのため、電子部品に使用されるプラスチック、特にエポキシ樹脂硬化物には高い耐熱性及び高温において室温と比較して物性の変化が少ないことが要求されている。
【0004】
耐熱性をはじめとするエポキシ樹脂硬化物の各種特性を向上させるために、カリックスアレーン類を硬化剤として使用する方法が報告されている(特許文献1〜5を参照)。これらの方法によれば、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度を向上させ、高い耐熱性を付与することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−264953号公報
【特許文献2】特開2001−106868号公報
【特許文献3】特開平2−123126号公報
【特許文献4】特開平3−66724号公報
【特許文献5】特開平6−136341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記方法で使用する硬化剤は、エポキシ樹脂組成物の構成成分との溶解性が低いため、硬化反応が完全に進行せず、耐湿性及び電気特性等の性能が低下する可能性があり、充分な性能が発揮されないといった問題がある。
【0007】
本発明の課題は、エポキシ樹脂組成物にした際に溶解性が良好であり、かつ、エポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与できるエポキシ樹脂用硬化剤として用いることができる、新規なカリックスアレーン系化合物を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の課題は、前記エポキシ樹脂用硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物及びそれによって封止された素子を備えてなる電子部品装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、カリックスアレーン系化合物のフェノール性水酸基の一部又は全部をβ−アルケニルエーテル化してなる新規なカリックスアレーン系化合物が、エポキシ樹脂用硬化剤として有用であり、所期の課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に関する。
【0010】
(1)下記式(I−1)で示されるカリックスアレーン系化合物。
【化1】

(上記式(I−1)中、nは平均で2〜20の数であり、単位構造内、n個の繰り返しのそれぞれに関して、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、
は、水素原子又は下記式(I−2)で示される1価の置換基であり、1分子中の少なくとも1つのRは水素原子であり、下記式(I−2)中のRは、n個の繰り返しのそれぞれに関して、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す。
【化2】

は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)
【0011】
(2)下記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)のフェノール性水酸基の5〜100%がβ−アルケニルエーテル化されてなる上記(1)に記載のカリックスアレーン系化合物。
【化3】

(上記式(I−3)中、nは平均で2〜20の数であり、単位構造内、n個の繰り返しのそれぞれに関して、R、Rは同一でも異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)
【0012】
(3)上記式(I−1)及び(I−3)のRが水素原子であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のカリックスアレーン系化合物。
(4)上記式(I−1)及び(I−3)のRが(CHであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のカリックスアレーン系化合物。
【0013】
(5)上記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)と、式(I−4)で示されるβ−アルケニルハライドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、を反応させることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のカリックスアレーン系化合物の製造方法。
【0014】
【化4】

(上記式(I−4)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Xは、ハロゲン原子から選ばれる。)
【0015】
(6)下記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体と、下記式(I−5’)で示されるジアルデヒドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、を反応させることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のカリックスアレーン系化合物の製造方法。
【化5】

(上記式(I−5)中、Rは、水素原子又は下記式(I−2)で示される1価の置換基であり、
【化6】

1分子中の少なくとも1つのRは水素原子であり、前記式(I−2)中のRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す。
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。)
【化7】

(上記式(I−5’)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)
【0016】
(7)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のカリックスアレーン系化合物を用いることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤。
(8)エポキシ樹脂及び上記(7)に記載のエポキシ樹脂用硬化剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(9)上記(8)に記載のエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物にした際に溶解性が良好であり、且つエポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与できるエポキシ樹脂用硬化剤としての、新規なカリックスアレーン系化合物を提供することができる。また、本発明によれば、前記エポキシ樹脂用硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物及びそれによって封止された素子を備えてなる電子部品装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例及び比較例における175℃、6時間後硬化の動的粘弾性挙動を示す図である。
【図2】実施例及び比較例における250℃、6時間後硬化の動的粘弾性挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
<カリックスアレーン系化合物>
本発明のカリックスアレーン系化合物は、下記式(I−1)で示されることを特徴とする。
【0020】
【化8】

【0021】
(上記式(I−1)中、nは平均で2〜20の数であり、単位構造内、n個の繰り返しのそれぞれに関して、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、
は、水素原子又は下記式(I−2)で示される1価の置換基であり、1分子中の少なくとも1つのRは水素原子であり、下記式(I−2)中のRは、n個の繰り返しのそれぞれに関して、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す。
【化9】

は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)
【0022】
なお、ここで「置換基を有していても良い炭素数1〜18の炭化水素基」とは、主骨格が炭素数1〜18の炭化水素基であればよく、これらの炭化水素が有する水素原子の一部が他の原子(例えば、ハロゲン等)やアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基等の置換基によって置換されていてもよい。
【0023】
同様に、「置換基を有していても良い炭素数1〜18の炭化水素オキシ基」とは、主骨格が炭素数1〜18の炭化水素オキシ基であればよく、これらの炭化水素が有する水素原子の一部が他の原子(例えば、ハロゲン等)やアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基等の置換基によって置換されていてもよく、「置換基を有していても良い炭素数1〜18の炭化水素チオ基」とは、主骨格が炭素数1〜18の炭化水素チオ基であればよく、これらの炭化水素が有する水素原子の一部が他の原子(例えば、ハロゲン等)やアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基等の置換基によって置換されていてもよい。
【0024】
上記カリックスアレーン系化合物は、溶解性の観点から下記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)のフェノール性水酸基の5〜100%がβ−アルケニルエーテル化されてなる構造を有していることが好ましく、10〜50%がβ−アルケニルエーテル化されてなる構造を有していることがより好ましい。
【0025】
【化10】

【0026】
(上記式(I−3)中、nは平均で2〜20の数であり、単位構造内、n個の繰り返しのそれぞれに関して、R、Rは同一でも異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)
【0027】
上記式(I−1)〜(I−3)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれるものである。
【0028】
としての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基;
これら脂肪族炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基;
これら脂環式炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等の芳香族炭化水素基;
それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したもの;等が挙げられる。
【0029】
としての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素オキシ基、脂環式炭化水素オキシ基、芳香族炭化水素オキシ基等であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の脂肪族炭化水素オキシ基;
これら脂肪族炭化水素オキシ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロペンテニルオキシ基、シクロヘキセニルオキシ基等の脂環式炭化水素オキシ基;
これら脂環式炭化水素オキシ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
フェノキシ基、トリルオキシ基、ジメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、tert−ブトキシフェノキシ基等の芳香族炭化水素オキシ基;
それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したもの;等が挙げられる。
【0030】
としての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素チオ基、脂環式炭化水素チオ基、芳香族炭化水素チオ基等であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、アリルチオ基、ビニルチオ基等の脂肪族炭化水素チオ基;
これら脂肪族炭化水素チオ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基、シクロペンテニルチオ基、シクロヘキセニルチオ基等の脂環式炭化水素チオ基;
これら脂環式炭化水素チオ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
フェニルチオ基、トリルチオ基、ジメチルフェニルチオ基、エチルフェニルチオ基、ブチルフェニルチオ基、tert−ブチルフェニルチオ基、メトキシフェニルチオ基、エトキシフェニルチオ基、ブトキシフェニルチオ基、tert−ブトキシフェニルチオ基等の芳香族炭化水素チオ基;
それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したもの;等が挙げられる。
【0031】
としての、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中でもRとしては、高耐熱性の観点から水素原子が好ましい。
【0032】
上記式(I−1)〜(I−3)において、Rは炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれるものであり、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基等が挙げられる。
【0033】
なお、ここにおいても「置換基を有していても良い炭素数1〜18の2価の炭化水素基」とは、主骨格が炭素数1〜18の炭化水素基であればよく、これらの炭化水素が有する水素原子の一部が他の原子(例えば、ハロゲン等)やアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基等の置換基によって置換されていてもよい。
【0034】
としての、上記置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の脂肪族炭化水素基;
シクロへキシレン基、シクロペンチレン基等の脂環式炭化水素基;
これら脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの;
フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等の芳香族炭化水素基;
これら芳香族炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの;等が挙げられる。
【0035】
としての、前記炭素数0〜18の2価の有機基のなかでも、合成しやすさ及び合成収率の観点からは、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよいプロピレン基がより好ましく、置換基のないプロピレン基がさらに好ましい。置換基を有していてもよいプロピレン基としては、例えば、メチルプロピレン基、エチルプロピレン基、イソプロピルプロピレン基、フェニルプロピレン基、ジメチルプロピレン基等が挙げられる。
【0036】
上記式(I−1)におけるRは、水素原子又は下記式(I−2)で示される1価の置換基であり、1分子中の少なくとも1つのRは水素原子であり、下記式(I−2)中のRは、n個の繰り返しのそれぞれに関して、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す。
【0037】
【化11】

上記式(I−2)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
【0038】
としての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基;
これら脂肪族炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基;
これら脂環式炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等の芳香族炭化水素基;
それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したもの;等が挙げられる。
【0039】
これらの中でもRとしては、高耐熱性の観点から水素原子が好ましい。
【0040】
上記式(I−1)〜(I−3)において、nは平均で2〜20の数であれば、特に限定されるものではないが、高耐熱性の観点からは、2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明のカリックスアレーン系化合物は、上記式(I−1)で示される化合物であり、上記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)のフェノール性水酸基の5〜100%がβ−アルケニルエーテル化された構造の化合物であることが好ましい。ここで、β−アルケニルエーテル化されるフェノール性水酸基とは、上記式(I−3)のベンゼン環に結合している水酸基の他に、Rとして有するフェノール性水酸基も含まれ、それら水酸基の合計に対して5〜100%がβ−アルケニルエーテル化されることが好ましい。
【0042】
β−アルケニルエーテル化されたフェノール性水酸基の割合が5%未満ではエポキシ樹脂組成物の構成成分との溶解性に劣る可能性がある。上記β−アルケニルエーテル化されたフェノール性水酸基の割合は、10〜60%であることがより好ましい。エポキシ樹脂組成物の構成成分との溶解性の観点から、10%以上であることがより好ましく、高耐熱性の観点からは、60%以下であることがより好ましい。
【0043】
上記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)のフェノール性水酸基の何%がβ−アルケニルエーテル化されているかの確認方法は、例えば、H−NMRにより確認することができる。具体的には、カリックスアレーン系化合物(b1)と比較してそのフェノール性水酸基が、上記式(I−1)で示されるカリックスアレーン系化合物としたときにどれくらい消失したかで確認できる。
【0044】
<カリックスアレーン系化合物の製造方法>
本発明のカリックスアレーン系化合物の製造方法としては、特に、限定されるものではないが、上記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)のフェノール性水酸基に下記式(I−4)で示されるβ−アルケニルハライドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物を反応させる方法が挙げられる。上記カリックスアレーン系化合物(b1)のフェノール性水酸基の5〜100%がβ−アルケニルエーテル化されてなるカリックスアレーン系化合物を得るには、β−アルケニルハライドの使用量をコントロールする、又は反応を途中で停止させる等の方法がある。
【0045】
【化12】

【0046】
(上記式(I−4)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Xは、ハロゲン原子から選ばれる。)
【0047】
上記式(I−4)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基からなる群より選ばれるものである。なお、上記式(I−4)のRは、上記式(I−2)のRと同じものが挙げられる。具体的には以下の通りである。
【0048】
上記式(I−4)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基;
これら脂肪族炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基;
これら脂環式炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等の芳香族炭化水素基;
それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したもの;等が挙げられる。
【0049】
これらの中でも上記式(I−4)のRとしては、高耐熱性の観点から水素原子が好ましい。
また、上記式(I−4)のXとしては、反応性の観点から、臭素原子が好ましい。
【0050】
上記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)と、上記式(I−4)で示されるβ−アルケニルハライドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、を反応させるに際しては、溶媒を用いることもできる。用いることができる溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0051】
反応条件及び単離方法としては、反応が進行して生成物を得られる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、上記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)と上記式(I−4)で示されるβ−アルケニルハライドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを室温〜200℃で反応させて、反応後に必要であれば副生成物、触媒等の不要分を除いた後に、溶媒を留去する方法、冷却して析出した固体をろ過する方法、貧溶媒に投入して析出した固体をろ過する方法等が挙げられる。また、必要に応じて、カリックスアレーン系化合物(b1)のフェノール性水酸基と式(I−4)で示される化合物の群から選ばれる少なくとも1つの化合物の反応を促進する化合物を用いても構わない。用いることのできる反応を促進する化合物としては、反応が促進されれば、特に限定されるものではないが、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、オニウム塩、硬化促進剤として後述する化合物、水酸基と炭化水素ハライドの反応を促進する公知の化合物等が挙げられるが、中でもアンモニウム塩が好ましい。
【0052】
なお、上記カリックスアレーン系化合物(b1)は、公知の方法により製造できる。例えば、R=水素、R=プロピレン、n=3である上記式(I−3)のカリックスアレーン系化合物(b1)は、レゾルシノールにグルタルアルデヒドを溶媒中、濃塩酸等の酸触媒存在下、30〜200℃で反応させることにより得ることができる。
【0053】
本発明のカリックスアレーン系化合物の製造方法としては、特に、限定されるものではないが、上記の製造方法の他に、下記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体と、下記式(I−5’)で示されるジアルデヒドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、を反応させる方法も挙げられる。
【0054】
【化13】

【0055】
(上記式(I−5)中、Rは、水素原子又は上記式(I−2)で示される1価の置換基であり、1分子中の少なくとも1つのRは水素原子であり、上記式(I−2)中のRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す。
【0056】
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。)
【0057】
【化14】

(上記式(I−5’)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)
【0058】
上記カリックスアレーン系化合物(b1)のフェノール性水酸基の5〜100%がβ−アルケニルエーテル化されてなるカリックスアレーン系化合物を得るには、上記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体のβ−アルケニルエーテル化率を調整することにより達成される。上記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体を得る際に、すなわち、原料のレゾルシノール誘導体水酸基体の水酸基をβ−アルケニルエーテル化して合成する際に、β−アルケニルハライドの使用量をコントロールする、又は反応を途中で停止させる等の方法がある。
【0059】
上記式(I−5)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれるものである。
【0060】
なお、上記式(I−5)のRは、上記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体と、上記式(I−5’)で示されるジアルデヒドの群から選ばれる1つの化合物とを反応させた際に得られる上記式(I−1)のカリックスアレーン系化合物の、Rに対応するものであり、同じものが挙げられる。具体的には以下の通りである。
【0061】
上記式(I−5)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基;
これら脂肪族炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基;
これら脂環式炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等の芳香族炭化水素基;
それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したもの;等が挙げられる。
【0062】
上記式(I−5)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素オキシ基、脂環式炭化水素オキシ基、芳香族炭化水素オキシ基等であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の脂肪族炭化水素オキシ基;
これら脂肪族炭化水素オキシ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロペンテニルオキシ基、シクロヘキセニルオキシ基等の脂環式炭化水素オキシ基;
これら脂環式炭化水素オキシ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
フェノキシ基、トリルオキシ基、ジメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、tert−ブトキシフェノキシ基等の芳香族炭化水素オキシ基;
それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したもの;等が挙げられる。
【0063】
上記式(I−5)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素チオ基、脂環式炭化水素チオ基、芳香族炭化水素チオ基等であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、アリルチオ基、ビニルチオ基等の脂肪族炭化水素チオ基;
これら脂肪族炭化水素チオ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基、シクロペンテニルチオ基、シクロヘキセニルチオ基等の脂環式炭化水素チオ基;
これら脂環式炭化水素チオ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
フェニルチオ基、トリルチオ基、ジメチルフェニルチオ基、エチルフェニルチオ基、ブチルフェニルチオ基、tert−ブチルフェニルチオ基、メトキシフェニルチオ基、エトキシフェニルチオ基、ブトキシフェニルチオ基、tert−ブトキシフェニルチオ基等の芳香族炭化水素チオ基;
それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したもの;等が挙げられる。
【0064】
上記式(I−5)のRとしての、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中でもRとしては、高耐熱性の観点から水素原子が好ましい。
【0065】
上記式(I−5’)において、Rは炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれるものであり、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基等が挙げられる。
【0066】
なお、ここにおいても「置換基を有していても良い炭素数1〜18の2価の炭化水素基」とは、主骨格が炭素数1〜18の炭化水素基であればよく、これらの炭化水素が有する水素原子の一部が他の原子(例えば、ハロゲン等)やアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基等の置換基によって置換されていてもよい。
【0067】
なお、上記式(I−5’)のRは、上記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体と、上記式(I−5’)で示されるジアルデヒドの群から選ばれる1つの化合物とを反応させた際に得られる上記式(I−1)のカリックスアレーン系化合物の、Rに対応するものであり、同じものが挙げられる。具体的には以下の通りである。
【0068】
上記式(I−5’)のRとしての、前記置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の脂肪族炭化水素基;シクロへキシレン基、シクロペンチレン基等の脂環式炭化水素基;
これら脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの;
フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等の芳香族炭化水素基;
これら芳香族炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの;等が挙げられる。
【0069】
上記式(I−5’)のRとしての、前記炭素数0〜18の2価の有機基のなかでも、合成しやすさ及び合成収率の観点からは、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよいプロピレン基がより好ましく、置換基のないプロピレン基がさらに好ましい。置換基を有していてもよいプロピレン基としては、例えば、メチルプロピレン基、エチルプロピレン基、イソプロピルプロピレン基、フェニルプロピレン基、ジメチルプロピレン基等が挙げられる。
【0070】
上記式(I−5)におけるRは、水素原子又は下記式(I−2)で示される1価の置換基であり、1分子中の少なくとも1つのRは水素原子であり、下記式(I−2)中のRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す。なお、上記式(I−5)におけるRは、上記式(I−1)におけるRと同じものが挙げられる。具体的には下記の通りである。
【0071】
【化15】

上記式(I−2)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
【0072】
上記式(I−2)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基;
これら脂肪族炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基;
これら脂環式炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が置換したもの;
フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等の芳香族炭化水素基;
それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリロイル基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したもの;等が挙げられる。
【0073】
これらの中でもRとしては、高耐熱性の観点から水素原子が好ましい。
【0074】
上記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体と上記式(I−5’)で示されるジアルデヒドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを反応させるに際しては、溶媒を用いることもできる。用いることができる溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム等が挙げられる。
【0075】
反応条件としては、反応が進行して生成物を得られる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、上記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体と上記式(I−5’)で示されるジアルデヒドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを室温〜200℃で反応させて、反応後に必要であれば副生成物、触媒等の不要分を除いた後に、溶媒を留去する方法、冷却して析出した固体をろ過する方法、貧溶媒に投入して析出した固体をろ過する方法等が挙げられる。
【0076】
また、必要に応じて、上記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体と上記式(I−5’)で示されるジアルデヒドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物との反応を促進する化合物を用いても構わない。用いることのできる反応を促進する化合物としては、反応が促進されれば、特に限定されるものではないが、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、オニウム塩、硬化促進剤として後述する化合物、水酸基と炭化水素ハライドの反応を促進する公知の化合物等が挙げられるが、中でも有機酸及び無機酸が好ましい。
【0077】
なお、前記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体は、公知の方法により製造できる。例えば、一方のR=水素、他方のR=「上記(I−2)式で示される式において全てのR=水素である置換基」で、R=ベンゾイル基である、上記式(I−5)のレゾルシノール誘導体は、モノベンゾイルレゾルシノールの水酸基に臭化アリルを反応させてアリルエーテルとした後に、塩基を用いて脱安息香酸することにより得ることができる。
【0078】
<エポキシ樹脂用硬化剤>
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、上記式(I−1)で示される本発明のカリックスアレーン系化合物を用いることを特徴とする。
【0079】
<エポキシ樹脂組成物>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び本発明のカリックスアレーン系化合物をエポキシ樹脂用硬化剤として含有することを特徴とする。
【0080】
(エポキシ樹脂)
本発明において使用可能なエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。エポキシ樹脂として、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等のジグリシジルエーテル(ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂);
ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;
フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
アニリン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したもの等のグリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂;
分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;
ハイドロキノン型エポキシ樹脂;
トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;
オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;
硫黄原子含有エポキシ樹脂;
ナフタレン型エポキシ樹脂;等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
上記エポキシ樹脂の中でも、耐リフロークラック性及び流動性の点でビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、それらのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、それらの性能を発揮するためには、エポキシ樹脂全量に対して、それらを合計で30質量%以上使用することが好ましく、50質量%以上使用することがより好ましい。以下、好ましいエポキシ樹脂の具体例を示す。
【0082】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記式(II)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記式(II)で示されるエポキシ樹脂の中でもRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位のRがメチル基で、それ以外のRが水素原子であるYX−4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、全てのRが水素原子である4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのRが水素原子の場合及びRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位のRがメチル基で、それ以外のRが水素原子である場合の混合品であるYL−6121H(ジャパンエポキシレジン株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0083】
【化16】

【0084】
(上記式(II)中、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数4〜18のアリール基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0085】
スチルベン型エポキシ樹脂としては、スチルベン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記式(III)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記式(III)で示されるエポキシ樹脂の中でも、Rのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位のRがメチル基で、それ以外のRが水素原子であり、R10の全てが水素原子の場合と3,3´,5,5´位のうちの3つがメチル基、1つがtert−ブチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合の混合品であるESLV−210(住友化学株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0086】
【化17】

【0087】
(上記式(III)中、R及びR10は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0088】
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、ジフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記式(IV)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記式(IV)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子でありR12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位のR12がメチル基で、それ以外のR12が水素原子であるYSLV−80XY(新日鐵化学株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0089】
【化18】

【0090】
(上記式(IV)中、R11及びR12は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0091】
硫黄原子含有型エポキシ樹脂としては、硫黄原子を含有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば下記式(V)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記式(V)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´位のR13がtert−ブチル基で、6,6´位のR13がメチル基で、それ以外が水素原子であるYSLV−120TE(新日鐵化学株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0092】
【化19】

【0093】
(上記式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0094】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂をグリリシジルエーテル化等の手法を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましく、例えば下記式(VI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記式(VI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子でありR15がメチル基でi=1であるESCN−190、ESCN−195(住友化学株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0095】
【化20】

【0096】
(上記式(VI)中、R14及びR15は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0097】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料としてエポキシ化したエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記式(VII)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記式(VII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP−7200(大日本インキ化学株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0098】
【化21】

【0099】
(上記式(VII)中、R16は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0100】
ヒドロキシベンズアルデヒド型エポキシ樹脂としては、ヒドロキシベンズアルデヒド骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば特に制限はないが、ヒドロキシベンズアルデヒド骨格を持つ化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とのノボラック型フェノール樹脂等のヒドロキシベンズアルデヒド型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等のヒドロキシベンズアルデヒド型エポキシ樹脂が好ましく、下記式(VIII)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記式(VIII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、k=0である1032H60(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、EPPN−502H(日本化薬株式会社、製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0101】
【化22】

【0102】
(上記式(VIII)中、R17及びR18は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0103】
ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂としては、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を用いたノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記式(IX)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記式(IX)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でi=1であり、j=0、k=0であるNC−7300(日本化薬株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0104】
【化23】

【0105】
(上記式(IX)中、R19〜R21は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示し、pは平均値で0〜1の数を示し、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の数であり(l+m)は1〜11の数を示す。)
【0106】
上記式(IX)で示されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記式(X)及び(XI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記式(X)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、R38が水素原子であるNC−3000S(日本化薬株式会社製)、i=0、R38が水素原子であるエポキシ樹脂と上記式(II)の全てのRが水素原子であるエポキシ樹脂を重量比80:20で混合したCER−3000(日本化薬株式会社製、商品名)等が市販品として入手可能である。また、下記式(XI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、j=0、k=0であるESN−175(新日鐵化学株式会社)等が市販品として入手可能である。
【0108】
【化24】

【0109】
(上記式(X)及び(XI)において、R37〜R41は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す。nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0110】
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、ナフタレン環を含有するエポキシ化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ジメチルナフトール等のナフトール類の誘導体から合成されるナフトール化合物をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記式(XI−a)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記式(XI−a)で示されるエポキシ樹脂の中でも、n=1であり、R42及びR43の全てが水素原子、R44の全てがグリシジルオキシ基であるEXA−4700、EXA−4701(大日本インキ化学株式会社製)、n=0であり、R42及びR43の全てが水素原子、R44がグリシジルオキシ基であるHP−4032(大日本インキ化学株式会社製)、n=1であり、R42及びR43の全てが水素原子、R44の一方が水素原子であり、他方がグリシジルオキシ基であるEXA−4750(大日本インキ化学株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0111】
【化25】

(上記式(XI−a)中、R42及びR43は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、R44は水素原子又はグリシジルオキシ基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0112】
上記式(II)〜(XI)及び(XI−a)中のR〜R21及びR37〜R44について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、上記式(II)中の8〜88個のRの全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR〜R21及びR37〜R44についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R〜R21及びR37〜R44はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、RとR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0113】
上記式(II)〜(XI)及び(XI−a)中の「n」は、0〜10の範囲である必要があり、10を超えた場合はエポキシ樹脂成分の溶融粘度が高くなるため、エポキシ樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。エポキシ樹脂1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0114】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂と本発明のカリックスアレーン系化合物との配合比率は、エポキシ樹脂の全エポキシ基数と、カリックスアレーン系化合物の全フェノール性水酸基数と全アリルエーテル基数の和との比率、すなわち、エポキシ樹脂の全エポキシ基数/(カリックスアレーン系化合物の全フェノール性水酸基数+全アリルエーテル基数)が、0.5〜2.0であることが好ましく、0.7〜1.5であることがより好ましく、0.8〜1.3であることが特に好ましい。上記配合比率が2.0を超えると、エポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が低下する傾向にある。一方、前記配合比率が0.5未満では、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性が低下する傾向にある。
【0115】
(その他の硬化剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤として先に示した本発明のカリックスアレーン系化合物以外のその他の硬化剤を併用することができる。その他の硬化剤として併用可能な化合物としては、エポキシ樹脂を硬化させることができる化合物であれば特に限定されるものではない。
【0116】
例えば、フェノール樹脂等のフェノール化合物;ジアミン、ポリアミン等のアミン化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の無水有機酸;ジカルボン酸、ポリカルボン酸等のカルボン酸化合物;等が挙げられ、これらは1種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、1分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を併用することが好ましい。以下、好ましいその他の硬化剤の具体例を示す。
【0117】
上記フェノール化合物としては、硬化剤として一般に使用される1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物であれば特に限定されない。
【0118】
フェノール化合物の具体例は、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;
これら樹脂の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂;等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
上記フェノール化合物のなかでも、耐リフロークラック性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。これらアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂は、そのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、本発明のカリックスアレーン系化合物の効果を発揮させるために、これらフェノール樹脂は、本発明のカリックスアレーン系化合物とその他の硬化剤との総量に対して、合計で好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下となるよう併用することが望ましい。
【0120】
アラルキル型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記式(XII)〜(XIV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0121】
【化26】

【0122】
(上記式(XII)〜(XIV)において、R22〜R28は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、jは0〜2の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0123】
上記式(XII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、R23が全て水素原子であるMEH−7851(明和化成株式会社)等が市販品として入手可能である。
【0124】
上記式(XIII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、k=0であるXL−225、XLC(三井化学株式会社製)、MEH−7800(明和化成株式会社)等が市販品として入手可能である。
【0125】
上記式(XIV)で示されるフェノール樹脂の中でも、j=0、R27のk=0、R28のk=0であるSN−170(新日鐵化学株式会社)等が市販品として入手可能である。
【0126】
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記式(XV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。下記式(XV)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0であるDPP(新日本石油化学株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0127】
【化27】

【0128】
(上記式(XV)中、R29は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0129】
ヒドロキシベンズアルデヒド型フェノール樹脂としては、ヒドロキシベンズアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記式(XVI)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
下記式(XVI)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0であるMEH−7500(明和化成株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0130】
【化28】

【0131】
(上記式(XVI)中、R30及びR31は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0132】
ベンズアルデヒド型とアラルキル型との共重合型フェノール樹脂としては、ベンズアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記式(XVII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0133】
下記式(XVII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0、q=0であるHE−510(エア・ウォーター・ケミカル株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0134】
【化29】

(上記式(XVII)中、R32〜R34は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、qは0〜5の整数、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の数であり、(l+m)は1〜11の数を示す。)
【0135】
ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記式(XVIII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0136】
下記式(XVIII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0、R35が全て水素原子であるタマノル758、759(荒川化学工業株式会社製)、HP−850N(日立化成工業株式会社)等が市販品として入手可能である。
【0137】
【化30】

【0138】
(上記式(XVIII)中、R35及びR36は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
【0139】
上記式(XII)〜(XVIII)におけるR22〜R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、上記式(XII)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23〜R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22〜R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22及びR23の全てについて同一でも異なってもよく、R30及びR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0140】
上記式(XII)〜(XVIII)における「n」は、0〜10の範囲である必要があり、10を超える場合は、本発明のカリックスアレーン系化合物とその他の硬化剤とを含む硬化剤成分の溶融粘度が高くなるため、エポキシ樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0141】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のカリックスアレーン系化合物に加えてその他の硬化剤を併用する場合、上記カリックスアレーン系化合物とその他の硬化剤の総量に対して、上記カリックスアレーン系化合物の配合量を30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましい。上記カリックスアレーン系化合物の配合量が30質量%未満では、硬化物の耐熱性の特性が低下する可能性があり、本発明によって達成可能な効果が低減する傾向がある。
【0142】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のカリックスアレーン系化合物に加えて、その他の硬化剤としてフェノール化合物を併用する場合、上記カリックスアレーン系化合物とフェノール化合物の総量に対して、上記カリックスアレーン系化合物の配合量を30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましい。前記カリックスアレーン系化合物の配合量が30質量%未満では、硬化物の耐熱性の特性が低下する可能性があり、本発明によって達成可能な効果が低減する傾向がある。
【0143】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のカリックスアレーン系化合物に加えて、その他の硬化剤として1分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を併用する場合、エポキシ樹脂の全エポキシ基数と、上記カリックスアレーン系化合物の全フェノール性水酸基数と全アルケニルエーテル基数とその他の硬化剤のフェノール性水酸基数とを合計した全フェノール性水酸基数と全アルケニルエーテル基数の和との比率、すなわち、エポキシ樹脂の全エポキシ基数/(カリックスアレーン系化合物の全フェノール性水酸基数+全アリルエーテル基数+その他の硬化剤のフェノール性水酸基数)が、0.5〜2.0であることが好ましく、0.7〜1.5であることがより好ましく、0.8〜1.3であることが特に好ましい。上記配合比率が2.0を超えると、エポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が低下する傾向にある。一方、上記配合比率が0.5未満では、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性が低下する傾向にある。
【0144】
(硬化促進剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を含有することができる。使用可能な硬化促進剤としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物、その誘導体、それらのフェノールノボラック塩;
及びこれらの化合物に、無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;
トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類、及びこれらの誘導体;
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類;
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩;
トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類、又はこれら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体;
これら有機ホスフィン類と、無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;
これら有機ホスフィン類と、4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036号公報参照);等が挙げられる。
【0145】
これら硬化促進剤を併用する場合、なかでも、流動性の観点からは有機ホスフィン類とπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物が好ましく、硬化性の観点からは有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物が好ましい。特に、下記式(I−6)で示されるホスホニウム化合物又はその分子間塩を使用することが好ましい。
【0146】
【化31】

【0147】
(上記式(I−6)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、
は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基及び置換基を有していてもよい炭素数1〜18の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、
は、1以上の放出可能なプロトン(H)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0148】
上記式(I−6)において、Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等であり、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基;
これら脂肪族炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したもの;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基;
これらの脂環式炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等が置換したもの;
フェニル基、トリル基等の芳香族炭化水素基;ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基、それらがさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したもの;等が挙げられる。
【0149】
上記式(I−6)のRは、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、2つ又は3つのRが結合し、全体としてそれぞれ2価又は3価の炭化水素基となる。例えば、P原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エテニル、プロペニル、ブテニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0150】
上記式(I−6)のRとしては、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の置換基であることが好ましい。なかでも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましい。フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基であることがさらに好ましい。
【0151】
上記式(I−6)において、Rは、水素原子、水酸基及び置換基を有していてもよい炭素数1〜18の有機基からなる群より選ばれるものであり、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素オキシ基、脂環式炭化水素オキシ基、芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素カルボニル基、脂環式炭化水素カルボニル基、芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、脂環式炭化水素オキシカルボニル基、芳香族炭化水素オキシカルボニル基、脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、脂環式炭化水素カルボニルオキシ基、芳香族炭化水素カルボニルオキシ基等である。
【0152】
上記式(I−6)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基の具体例は、上記式(I−6)のRで挙げたものと同様のものが用いられる。
【0153】
上記式(I−6)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素オキシ基、脂環式炭化水素オキシ基、芳香族炭化水素オキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の脂肪族炭化水素オキシ基;
シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基等の脂環式炭化水素オキシ基;
フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の芳香族炭化水素オキシ基;
これら炭化水素オキシ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したもの;等が挙げられる。
【0154】
上記式(I−6)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素カルボニル基、脂環式炭化水素カルボニル基、芳香族炭化水素カルボニル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基;
シクロヘキシルカルボニル基等の脂環式炭化水素カルボニル基;
フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基;
これら炭化水素カルボニル基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したもの;等が挙げられる。
【0155】
上記式(I−6)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、脂環式炭化水素オキシカルボニル基、芳香族炭化水素オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基;
シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂環式炭化水素オキシカルボニル基;
フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基;
これら炭化水素オキシカルボニル基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したもの;等が挙げられる。
【0156】
上記式(I−6)のRとしての、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、脂環式炭化水素カルボニルオキシ基、芳香族炭化水素カルボニルオキシ基の具体例としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基;
シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂環式炭化水素カルボニルオキシ基;
フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基;
これら炭化水素カルボニルオキシ基にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したもの;等が挙げられる。
【0157】
上記のRは、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、2つ〜4つのRが結合し、全体としてそれぞれ2価〜4価の有機基となる。例えば、環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基;エテニル、プロペニル、ブテニル基等のアルケニル基;メチレンフェニレン基等のアラルキレン基;フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基;それらアルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基にオキシ基又はジオキシ基が結合した基;等が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0158】
上記式(I−6)のRとしては、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。なかでも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基、及びメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のRが互いに結合して環状構造を形成する場合は、Rが結合しているベンゼン環と併せて、1−(−2−ヒドロキシナフチル)基、1−(−4−ヒドロキシナフチル)基等の多環芳香族基を形成する有機基が好ましい。
【0159】
上記式(I−6)において、Yは、1以上の放出可能なプロトン(H)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい。例えば、Yは水酸基、メルカプト基、ハイドロセレノ基等の16族原子に水素原子が結合した1価の有機基からプロトンが脱離した基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシフェニル基、カルボキシナフチル基等のカルボキシル基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からカルボン酸のプロトンが脱離した基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からフェノール性プロトンが脱離した基等が挙げられる。
【0160】
上記Yは、1以上のRと結合して環状構造を形成してもよく、例えば、Yは、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基を形成する2価の有機基が挙げられる。
【0161】
先に例示したYの中でも、水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオン、又はヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオンを有する1価の有機基であることが好ましい。
【0162】
また、上記Yが1以上のRと結合して環状構造を形成する場合、例えば、Yは、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基であることが好ましい。
【0163】
また、上記式(I−6)で示されるホスホニウム化合物の分子間塩としては、限定されるものではないが、上記式(I−6)で示されるホスホニウム化合物と、フェノール、ナフトール、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物として先に例示した化合物等のフェノール性水酸基を有する化合物、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール基を有する化合物、シュウ酸、酢酸、安息香酸等の有機酸、塩酸、臭化水素、硫酸、硝酸等の無機酸等との分子間塩化合物が挙げられる。
【0164】
本発明のエポキシ樹脂組成物における硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成されれば特に制限はない。しかし、エポキシ樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性における改善の観点からは、エポキシ樹脂の合計100質量部に対し、硬化促進剤を合計で0.1〜10質量部配合することが好ましく、1〜7.0質量部配合することがより好ましい。上記硬化促進剤の配合量が0.1質量部未満ではエポキシ樹脂組成物を短時間で硬化し難く、10質量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない場合がある。
【0165】
(無機充填剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機充填剤を含有することができる。特に、エポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、無機充填剤を配合することが好ましい。
【0166】
本発明において用いられる無機充填剤としては、一般に封止用成形材料に用いられるものであればよく、特に限定されるものではない。無機充填剤の具体例として、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の微粉未、又はこれらを球形化したビーズ等が挙げられる。難燃効果のある無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛等が挙げられる。これら無機充填剤のなかでも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。これら無機充填剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0167】
無機充填剤の配合量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、エポキシ樹脂組成物に対して、55〜90体積%の範囲であることが好ましい。これら無機充填剤は硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の改良を目的に配合するものであり、配合量が55体積%未満ではこれらの特性の改良が不十分となる傾向にあり、90体積%を超えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇して流動性が低下し成形が困難になる傾向がある。
【0168】
また、無機充填剤の平均粒径(D50)は1〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。上記平均粒径が1μm未満ではエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しやすく、50μmを超えると樹脂成分と無機充墳剤とが分離しやすくなり、硬化物が不均一になったり硬化物特性がばらついたり、狭い隙間への充填性が低下する傾向がある。
【0169】
流動性の観点からは、無機充填剤の粒子形状は角形よりも球形が好ましく、無機充填剤の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。例えば、エポキシ樹脂組成物に対して無機充填剤を75体積%以上配合する場合、無機充填剤の70質量%以上が球状粒子であり無機充填剤の粒度分布が0.1〜80μmの広範囲に分布したものであることが好ましい。このような無機充填剤は最密充填構造をとりやすいことから配合量を増加させてもエポキシ樹脂組成物の粘度上昇が少なく、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0170】
(各種添加剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上述のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、その他の硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、難燃剤、着色剤といった各種添加剤を必要に応じて含有することができる。しかし、本発明のエポキシ樹脂組成物には、以下の添加剤に限定することなく、必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を追加してもよい。
【0171】
(カップリング剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。
【0172】
カップリング剤の配合量は、無機充填剤に対して0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜2.5質量%であることがより好ましい。上記配合量が0.05質量%未満ではフレームとの接着性が低下する傾向があり、5質量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0173】
上記カップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤;等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、二級アミノ基を有するカップリング剤が流動性及びワイヤ流れの観点から好ましい。
【0174】
(イオン交換体)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、陰イオン交換体を必要に応じて含有することができる。特にエポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を含有することが好ましい。本発明において用いられる陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができ、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなか、下記式(XIX)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO ……(XIX)
(上記式(XIX)中、0<X≦0.5、mは正の数である。)
【0175】
これらの陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオン等の陰イオンを捕捉できる十分な量であれば特に制限はないが、エポキシ樹脂に対して0.1〜30質量%の範囲が好ましく、1〜5質量%の範囲がより好ましい。
【0176】
(離型剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、成形時に金型との良好な離型性を持たせるため離型剤を配合してもよい。本発明において用いられる離型剤としては特に制限はなく従来公知のものを用いることができる。例えば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0177】
これらのなかでも、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン系ワックスが好ましく、ポリオレフィン系ワックスの配合量としてはエポキシ樹脂に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの配合量が0.01質量%未満では離型性が不十分な傾向があり、10質量%を超えると接着性が阻害される可能性がある。ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば市販品ではヘキスト社製のH4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンが挙げられる。
【0178】
また、ポリオレフィン系ワックスに他の離型剤を併用する場合、その配合量はエポキシ樹脂に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。
【0179】
(応力緩和剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤を必要に応じて配合することができる。応力緩和剤を配合することにより、パッケージの反り変形量、パッケージクラックを低減させることができる。使用できる応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の可とう剤(応力緩和剤)であれば特に限定されるものではない。
【0180】
一般に使用されている可とう剤としては、例えば、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル−シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体等のコア−シェル構造を有するゴム粒子が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、シリコーン系可とう剤が好ましく、シリコーン系可とう剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したものが挙げられる。
【0181】
(難燃剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、難燃性を付与するために必要に応じて難燃剤を配合することができる。本発明において用いられる難燃剤としては特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む公知の有機若しくは無機の化合物、金属水酸化物が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。難燃剤の配合量は、難燃効果が達成されれば特に制限はないが、エポキシ樹脂に対して1〜30質量%であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましい。
【0182】
(着色剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を配合しても良い。
【0183】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練、冷却し、粉砕する等の方法で得ることができる。エポキシ樹脂組成物は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると取り扱いが容易である。
【0184】
<電子部品装置>
本発明の電子部品装置は、上記の本発明のエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする。かかる電子部品装置としては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載したものが挙げられ、それら素子部を本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したものが挙げられる。
【0185】
より具体的には、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてトランスファー成形等によって封止した、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等が挙げられる。
【0186】
中でも、本発明のエポキシ樹脂組成物は高温における弾性率低下が少ないため、耐熱性、高温動作保証等が要求されている用途に好適に使用することができる。具体的には、パワーモジュールパッケージ、車載用途パッケージ、SiC等の高温でも動作する半導体のパッケージ等が挙げられる。また、プリント回路板においても本発明のエポキシ樹脂組成物を有効に使用することができる。
【0187】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的ではあるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等の方法を用いてもよい。
【実施例】
【0188】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0189】
<カリックスアレーン系化合物の合成1>
(合成例1):カリックスアレーン系化合物1の合成
500mlの4つ口フラスコを用い、レゾルシノール88.0g(0.8mol)をエタノール90mlに溶かし、氷冷下、濃塩酸30mlを加え、約5℃で30分間攪拌した。これにグルタルアルデヒド50%水溶液20.2g(0.1mol)を滴下した後、約80℃で48時間反応させた。反応混合物を室温まで冷却し、メタノール300mlで希釈し、30分撹拌した後、炉過により生成した固体を得た。得られた固体をメタノールで3回洗浄し、60℃で24時間真空乾燥することにより、褐色固体を22.2g得た。
【0190】
得られた白色固体についてH−NMRスペクトルの測定、IRスペクトルの測定、マススペクトルの測定を行った結果、下記式で示される構造のカリックスアレーン系化合物であることを確認した。収率は78%であった。なお、下記式(I−3a)で示される構造のカリックスアレーン系化合物は既知の化合物であるため、各種スペクトルの測定結果は省略する。
【0191】
【化32】

【0192】
<カリックスアレーン系化合物の合成2>
(実施例1):カリックスアレーン系化合物2の合成
合成例1で得られた上記式(I−3a)で示される構造のカリックスアレーン系化合物1と臭化アリルを上述した方法により反応させ、下記式(I−1a)で示される構造のカリックスアレーン系化合物2を得た。
【0193】
H−NMRスペクトル及びIRスペクトルの測定結果、下記式(I−1a)で示される構造のカリックスアレーン系化合物であることを確認した。なお、カリックスアレーン系化合物2のβ−アルケニルエーテル化率は53%(Rの水素原子/β−アルケニルエーテル基の比率は47/53)であった。
【0194】
【化33】

【0195】
<レゾルシノール誘導体の合成>
(合成例2):レゾルシノール誘導体の合成
上述した方法により、レゾルシノールの水酸基に臭化アリルを反応させてアリルエーテルとした後に、塩基を用いて脱安息香酸とすることで、下記式(I−5a)で表されるレゾルシノール誘導体を得た。
【0196】
H−NMRスペクトルの測定結果、下記式(I−5a)で表される化合物であることを確認した。既知の化合物であるため、スペクトルチャートは省略する。
【0197】
【化34】

【0198】
<カリックスアレーン系化合物の合成3>
(実施例2):カリックスアレーン系化合物3の合成
合成例2で得られた上記式(I−5a)で示される構造のレゾルシノール誘導体とグルタルアルデヒドを上述した方法により反応させ、下記式(I−1b)で示される構造のカリックスアレーン系化合物3を得た。
【0199】
H−NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル及びGPCの測定結果、下記式(I−1b)で表される化合物を主成分として、下記式(I−1c)で表されるオリゴマー成分を副生成物として含む化合物であることを確認した。なお、下記式(I−1b)及び(I−1c)の同じベンゼン環上の2つのRのうち、一方は水素原子、他方はβ−アルケニルエーテル基であった。
【0200】
【化35】

【0201】
【化36】

【0202】
合成例、実施例におけるH−NMRスペクトル及びIRスペクトルの測定方法の詳細は以下の通りである。
(1)H−NMRスペクトルの測定
試料を重ジメチルスルホキシドに溶かして溶液とし、φ5mmの試料管に入れて測定に用いた。日本電子株式会社製、500MHz核磁気共鳴装置「JEOL ECA−500」を用いて測定した。
【0203】
(2)IRスペクトルの測定
Thermo ELECTRON株式会社製「Nicolet380FT−IR」を用いてフィルム法で測定した。
【0204】
〔エポキシ樹脂組成物の調製及びその特性評価〕
以下の成分をそれぞれ表1に示す質量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、それぞれ実施例3〜4、比較例1〜3のエポキシ樹脂組成物を得た。
なお、各エポキシ樹脂組成物中の無機充填剤の配合量は、質量基準で85%、体積基準で75%とした。
【0205】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂:エポキシ当量170、軟化点67℃のヒドロキシベンズアルデヒド型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「EPPN−502H」)
【0206】
(硬化剤)
硬化剤1:実施例1で得たカリックスアレーン系化合物2
硬化剤2:実施例2で得たカリックスアレーン系化合物3
硬化剤3:合成例1で得たカリックスアレーン系化合物1
硬化剤4:下記式で示されるカリックスアレーン系化合物
【0207】
【化37】

硬化剤5:水酸基当量103のヒドロキシベンズアルデヒド型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、商品名「MEH−7500」)
【0208】
(硬化促進剤)
硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物
【0209】
(無機充填剤)
無機充填剤:平均粒径(D50)17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカ
【0210】
(各種添加剤)
カップリング剤:エポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名「MA−100」)
離型剤:カルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)
【0211】
実施例3〜4、及び比較例1〜3で得た各エポキシ樹脂組成物を、以下に示す各試験によって評価した。評価結果を表1及び図1〜2に示す。
【0212】
なお、エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は175℃で6時間又は250℃で6時間行った。
【0213】
(1)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、各エポキシ樹脂組成物を上記条件で成形して流動距離(cm)を測定した。結果を表1に示す。
【0214】
(2)熱時硬度
実施例3〜4、及び比較例1〜3で得た各エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計(上島製作所製、HD−1120(タイプD))を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0215】
(3)動的粘弾性挙動(耐熱性の指標)
実施例3〜4、及び比較例1〜3で得た各エポキシ樹脂組成物を上記条件で長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの大きさに成形し、175℃で6時間又は250℃で6時間、後硬化した。次いで、ダイヤモンドカッターで幅5mm、長さ55mmに切断し、粘弾性測定装置RSA3(TAインスツルメンツ社製)を用い、3点曲げモードで昇温速度5℃、周波数6.28rad/sの条件で測定した。175℃で6時間後硬化した硬化物を試料として測定した結果を図1に、250℃で6時間後硬化した硬化物を試料として測定した結果を図2に示す。
【0216】
【表1】

【0217】
(4)硬化剤のエポキシ樹脂への溶解性(均一性の指標)
エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「EPPN−502H」)100質量部に対し、エポキシ樹脂の全エポキシ基数/(硬化剤の全フェノール性水酸基数+硬化剤の全アリルエーテル基数)が1となるよう各硬化剤を混合し、ホットプレートを用い120℃で3分間加熱して、混合物の外観を目視で観察した。透明になったものを○、濁ったままのものを×として表2に示す。
なお、硬化剤がエポキシ樹脂に均一に溶解している場合は混合物は透明になり、溶解が不十分の場合は混合物が濁る。
【0218】
【表2】

【0219】
本発明のカリックスアレーン系化合物2及び3はエポキシ樹脂への溶解性が優れ、それを硬化剤1及び2として用いた実施例3及び4は、流動性及び熱時硬度に問題なく、図1及び図2により高温弾性率に優れ高耐熱性であることが分る。特に250℃で後硬化することにより、優れた性能を示す。
【0220】
これに対して、比較例1で使用したカリックスアレーン系化合物1はエポキシ樹脂への溶解性が極端に劣り、それを硬化剤3として用いた比較例1は硬化しなかった。また、比較例2で使用した硬化剤4(カリックスアレーン系化合物)はエポキシ樹脂への溶解性が劣り、それを用いた比較例2は流動性に劣っていることが分る。また、ヒドロキシベンズアルデヒド型フェノール樹脂を硬化剤5として用いた比較例3は、図1及び図2により高温弾性率の点で劣っていることが分る。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物にした際に溶解性が良好であり、且つエポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与できるエポキシ樹脂用硬化剤としての、新規なカリックスアレーン系化合物を提供することができる。また、本発明によれば、前記エポキシ樹脂用硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物及びそれによって封止された素子を備えてなる電子部品装置を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I−1)で示されるカリックスアレーン系化合物。
【化1】

(前記式(I−1)中、nは平均で2〜20の数であり、単位構造内、n個の繰り返しのそれぞれに関して、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、
は、水素原子又は下記式(I−2)で示される1価の置換基であり、1分子中の少なくとも1つのRは水素原子であり、下記式(I−2)中のRは、n個の繰り返しのそれぞれに関して、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す。
【化2】

は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)
【請求項2】
下記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)のフェノール性水酸基の5〜100%がβ−アルケニルエーテル化されてなる請求項1に記載のカリックスアレーン系化合物。
【化3】

(前記式(I−3)中、nは平均で2〜20の数であり、単位構造内、n個の繰り返しのそれぞれに関して、R、Rは同一でも異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)
【請求項3】
前記式(I−1)及び(I−3)のRが水素原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカリックスアレーン系化合物。
【請求項4】
前記式(I−1)及び(I−3)のRが(CHであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のカリックスアレーン系化合物。
【請求項5】
前記式(I−3)で示されるカリックスアレーン系化合物(b1)と、式(I−4)で示されるβ−アルケニルハライドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、を反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のカリックスアレーン系化合物の製造方法。
【化4】

(前記式(I−4)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Xは、ハロゲン原子から選ばれる。)
【請求項6】
下記式(I−5)で示されるレゾルシノール誘導体と、下記式(I−5’)で示されるジアルデヒドの群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、を反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のカリックスアレーン系化合物の製造方法。
【化5】

(前記式(I−5)中、Rは、水素原子又は下記式(I−2)で示される1価の置換基であり、
【化6】

1分子中の少なくとも1つのRは水素原子であり、前記式(I−2)中のRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す。
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。)
【化7】

(前記式(I−5’)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数0〜18の2価の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のカリックスアレーン系化合物を用いることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項8】
エポキシ樹脂及び請求項7に記載のエポキシ樹脂用硬化剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−53239(P2013−53239A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192499(P2011−192499)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】