説明

カリックス[4]アレーン組成物

【課題】製造コストが安く、高解像度、高感度でパターンを形成できる組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)(式中、R、及びRは、それぞれ、アルキル基、アセチル基、又はアリル基であり、nは、0〜3の整数である。)と下記式(2)(式中、Rは、Rと同様の基を表す。)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体を含む組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、半導体集積回路、およびインプリント用モールド等に代表される微細な構造体を形成するためのパターン、又はフォトマスク等に、好適に用いられるカリックス[4]アレーン組成物、該組成物を含むレジスト材、および該レジスト材を使用したパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(LSI)などの半導体素子、透明基板上に電子回路のパターンを遮光性材料で形成したフォトマスク、およびインプリント用モールド等の製造プロセスにおいて、フォトレジストを用いたリソグラフィー法による微細加工がなされている。これは、シリコン基板上、または、遮光性薄膜を積層した石英基板上に、フォトレジストの薄膜を形成させ、これにエキシマレーザー、X線、電子線等の高エネルギー線を選択的に一部のみに照射してパターンの潜像を形成し、その後、現像処理して得られたレジストパターンをマスクとしてエッチングするものである。
【0003】
さらに詳しく説明すると、フォトリソグラフィ技術では、先ず、被加工層を表面に有する基板上に、レジスト材料と呼ばれる感光性材料を有機溶剤に溶かしたものを塗布し、プリベークで有機溶剤を蒸発させてレジスト膜を形成する。次いで、レジスト膜に部分的に光を照射し、さらに、現像液を用いて不要な部分のレジスト膜を溶解除去することにより、基板上にレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをマスクとして有する基板上の被加工層をドライエッチング、またはウエットエッチングする。そして、最後に、レジストパターンを除去することにより、微細加工が完成する。
【0004】
フォトマスクやインプリント用モールドの製造工程では、多くの場合、既に電子線描画装置やレーザー描画装置を用いてパターンが形成されている。また、シリコン基板上に形成するLSIなどの半導体素子についても、さらなる微細化に向けて同様に電子線描画装置等を用いたパターン形成の検討が開始されている。そのため、近年、電子線用レジストを用いたプロセスの開発が盛んに進められている。このような電子線レジストには、高エッチング耐性、高解像度、および高感度であり、且つ低コストで製造できることが望まれている。
【0005】
電子線に感応する有機レジストは多種多様のものが知られており、様々な方法でレジストパターンが形成されている。例えば、ポリメチルメタクリレートのようなエチレン性不飽和単量体の重合体薄膜を基板上にレジスト膜として設けた後、電子線を照射して所定の画像形成を行い、アセトンのような低分子ケトン類を用いて現像することにより、微細パターンを形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、同様にカリックス[4]アレーン誘導体を含むレジスト材料をレジスト膜として設けた後、電子線を照射して所定の画像形成を行い、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、または2−ヘプタノン等を用いて現像することにより、微細パターンを形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法によれば、微細パターンを作製できるが、ポリメチルメタクリレートのようなエチレン性不飽和単量体の重合体は、エッチング耐性が低い。そのため、このレジストをマスクにして被加工層を深くエッチングする場合、レジストパターンのアスペクト比を大きくしてパターン高さを高くする必要があった。また、現像液が低分子ケトン類のため、引火点が低く、防爆設備等を備える必要があった。
【0007】
一方、特許文献2の方法によれば、クロロメチル基を有するカリックス[4]アレーン誘導体(クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体)を含むレジスト材料を使用しているため、エッチング耐性が高く、パターン幅10nm以下のパターンを形成できる。特に、クロロメチル化することにより、感度も改善されたレジスト材料を得ることができる。
【0008】
このクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体は、以下の方法により製造されている。例えば、5,11,17,23−テトラクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーンは、25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーンを原料とし、過剰のホルムアルデヒドと塩化水素によってクロロメチル化することにより製造できる(非特許文献1)。また、前記反応において、反応系の水分量を変えることで、効率よく、5,11,17,23−テトラクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーンと5,11,17−トリクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーンの混合物を製造できることが知られている(特許文献3参照)。
【0009】
前記クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体は、感度が改善され、優れた特性を示すが、生産性という点で改善の余地があった。上記の通り、クロロメチル化の反応は、最終工程で実施されている。そして、その原料となる化合物も、実際には様々な工程を経て製造されている。そのため、最終工程で得られるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体は、製造コストが高くなり、当然、これを用いたレジスト材料のコストも高くなる。さらに、クロロメチル化の反応は、使用する原料にもよるが、通常、収率が70%以下であり、この点からも、クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体を含むレジスト材料はコストが高くなる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−262738号公報
【特許文献2】国際公開第2004/022513号パンフレット
【特許文献3】特開2004−123586号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】長崎、他3名、「水溶性カリックス[4]アレーンの新規な構造異性」、テトラヘドロン(英国)、1992年、第84巻、第5号、p.797〜804
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、感度、解像度が良好であり、製造コスト的に有利な生産性のよいカリックス[4]アレーン組成物、及び該組成物を含むレジスト材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した。そして、様々な化合物の組み合わせを検討したところ、クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と、クロロメチル化前のカリックス[4]アレーン誘導体とを配合したカリックスアレーン[4]組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
下記式(1)
【0015】
【化1】

(式中、
、及びRは、それぞれ、アルキル基、アセチル基、又はアリル基であり、
nは、0〜3の整数であり、
、及びRがそれぞれ複数存在する場合には、その複数のR、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、異なる基であってもよい。)
で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と下記式(2)
【0016】
【化2】

(式中、
は、アルキル基、アセチル基、又はアリル基であり、
4つのRは、互いに同一の基であっても、異なる基であってもよい。)
で示されるカリックス[4]アレーン誘導体とを含むカリックス[4]アレーン組成物である。
【0017】
本発明においては、前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体との合計において、ベンゼン環の全モル数(A)に対するクロロメチル基の全モル数(B)との比(B/A)が0.5以上1.0未満であるカリックス[4]アレーン組成物が好ましい。つまり、全カリックスアレーン[4]誘導体におけるクロロメチル基のモル比(B/A)が、前記範囲を満足することにより、高い感度を維持した組成物とすることができる。
【0018】
また、本発明は、前記カリックス[4]アレーン組成物を含むレジスト材料であり、さらに、該レジスト材料を使用したパターンの形成方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の組成物は、クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と、クロロメチル基を導入する前のカリックス[4]アレーン誘導体を含むものである。そのため、製造コストの高いクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体の使用量を低減してレジスト材料を得ることができる。さらに、カリックス[4]アレーン誘導体の合計において、クロロメチル基を特定の割合とすることにより、高い感度を維持したまま、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1におけるカリックス[4]アレーン組成物を用いた感度曲性である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、詳細に説明する。本発明の組成物は、前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と、前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体とを含むカリックス[4]アレーン組成物である。先ず、各々のカリックス[4]アレーン誘導体について説明する。
【0022】
クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体
本発明の組成物に含まれるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体は、下記式(1)
【0023】
【化3】

(式中、
、及びRは、それぞれ、アルキル基、アセチル基、又はアリル基であり、
nは、0〜3の整数であり、
、及びRがそれぞれ複数存在する場合には、その複数のR、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、異なる基であってもよい。)
前記式(1)において、R、及びRは、それぞれ、アルキル基、アセチル基、又はアリル基である。
【0024】
、及びRにおいて、アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、直鎖状、又は分岐状のものであってもよい。中でも、各種の溶剤への溶解性を高く、レジスト膜の形成を容易にするためには、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。具体的な基を例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0025】
、及びRにおいて、高い感度のレジスト材料を得るためには、炭素数1〜3のアルキル基、アセチル基、又はアリル基であることが好ましく、さらに、より高い感度のレジスト材を得るためには、R、およびRの合計において、少なくとも2つ以上がアリル基となることが好ましい。
【0026】
また、前記の通り、R、及びRが、アリル基であることにより、高い感度のレジスト材料を得ることができるが、このアリル基を有するクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体を使用する場合に、本発明の組成物はより高い効果を発揮する。すなわち、アリル基を有するカリックス[4]アレーン誘導体をクロロメチル化する場合、アルキル基、アセチル基を有するものよりも非常に反応収率が低い。そのため、クロロメチル化されていない前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体を配合することのメリット(コスト的なメリット)が高くなる。
【0027】
前記式(1)において、nは0〜3の整数である。下記に詳述する前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体の配合割合にもよるが、高い感度のレジスト材料を得るためには、nは0〜2であることが好ましく、特にnは0〜1であることが好ましい。
【0028】
、及びRがそれぞれ複数存在する場合には、その複数のR、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、本発明において、前記クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体は、R、R、nの数がそれぞれ異なるものの混合物を使用することもできる。ただし、クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体のそのものの生産性、及び得られる組成物、レジスト材料の生産性を考慮すると、それぞれのR、及びRは、同一の基であることが好ましく、さらに、R、及びRの全ての基が同一の基であることが最も好ましい。この場合、nが0の単独のもの、nが0〜2であるものの混合物であってもよく、さらに好ましくはnが0〜1の混合物を使用することができる。
【0029】
カリックス[4]アレーン誘導体
本発明の組成物は、前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体に加え、下記式(2)
【0030】
【化4】

(式中、
は、アルキル基、アセチル基、又はアリル基であり、
4つのRは、互いに同一の基であっても、異なる基であってもよい。)
で示されるカリックス[4]アレーン誘導体を含む。
【0031】
このカリックス[4]アレーン誘導体は、クロロメチル基を導入する前の原料化合物に相当する。
【0032】
前記式(2)において、Rは、アルキル基、アセチル基、又はアリル基である。
【0033】
において、アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、直鎖状、又は分岐状のものであってもよい。中でも、各種の溶剤への溶解性を高く、レジスト膜の形成を容易にするためには、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。具体的な基を例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0034】
において、高い感度のレジスト材料を得るためには、炭素数1〜3のアルキル基、アセチル基、又はアリル基であることが好ましく、より高い感度のレジスト材を得るためには、Rの少なくとも2つ以上がアリル基となることが好ましい。
【0035】
は、前記式(2)において、4つ存在する。そのため、これら4つのRは、互いに同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、本発明において、前記カリックス[4]アレーン誘導体は、Rがそれぞれ異なるものの混合物を使用することもできる。
ただし、前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体そのものの生産性、及び得られる組成物、レジスト材料の生産性を考慮すると、Rは、同一の基であることが好ましい。さらに、最も好ましい態様としては、前記式(1)におけるR、及びRとRが同一の基であることが好ましい。
【0036】
クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体、及びカリックス[4]アレーン誘導体の製造方法
前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体は、前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体に、クロロメチル基を導入することにより製造できる。先ず、前記カリックス[4]アレーン誘導体の製造方法について説明する。
【0037】
カリックス[4]アレーン誘導体の製造方法
前記カリックス[4]アレーン誘導体は、特に制限されるものではないが、以下の方法により製造することができる。先ず、例えば、市販の5,11,17,23−テトラ−t−ブチル−25,26,27,28−テトラヒドロキシカリックス[4]アレーン(以下、単に「t−ブチルカリックス[4]アレーン」とする場合もある)を脱t−ブチル化し、25,26,27,28−テトラヒドロキシカリックス[4]アレーン(以下、単に「カリックス[4]アレーン」とする場合のある)を準備する。
【0038】
次いで、カリックス[4]アレーンの水酸基部分に、アルキル基、アセチル基、アリル基を導入してやればよい。アルキル基やアリル基を導入する方法は、ウィリアムソンのエーテル合成として一般に知られている方法を採用することができる。例えば、非特許文献(GUTSCHEら:「テトラヘドロン」、第39巻、409〜426頁、1983年)、または非特許文献(van LOONら:「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー」、第55巻、5639〜5646頁、1990年)に記載の方法を採用することができる。
【0039】
また、アセチル基を導入するには、例えば、硫酸やp−トルエンスルホン酸を触媒とし、カリックス[4]アレーンと無水酢酸とを反応させればよい。
【0040】
以上のような方法に従いカリックス[4]アレーンに、アルキル基、アセチル基、アリル基を導入することにより、前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体を合成することができる。次に、このカリックス[4]アレーン誘導体に、クロロメチル基を導入する方法について説明する。
【0041】
クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体の製造方法
カリックス[4]アレーン誘導体にクロロメチル基を導入する方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、特許文献2、特許文献3、非特許文献1(長崎等:「テトラへドロン」、第48巻、797〜804頁、1992年)に記載の方法を採用することができる。この際、反応条件を調整することにより、nの数、クロロメチル基の導入割合を調製することができる。
【0042】
この反応条件を調整すれば、前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体との混合物を製造することも可能である。ただし、前記カリックス[4]アレーン誘導体の反応性を考えると、該混合物を製造しようとすると、高度な制御が必要になったり、クロロメチル基の導入割合が少なくなり過ぎる傾向にある。そのため、本発明の組成物は、前記方法に従い製造した前記クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記カリックス[4]アレーン誘導体とを混合することが好ましい。
【0043】
次に、前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体とを含むカリックス[4]アレーン組成物について説明する。
【0044】
カリックス[4]アレーン組成物
本発明は、前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体とを含むカリックス[4]アレーン組成物である。この組成物は、前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体とを混合することにより製造できる。
【0045】
該カリックス[4]アレーン組成物は、複数種類の前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と、複数種類の前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体との混合物であってもよい。つまり、複数存在するR、R、およびRが、それぞれ異なる基となるものの混合物であってもよい。ただし、生産性を考慮すると、前記の通り、R、R、及びRが同一の基であるものの混合物であることが好ましい。なお、この場合、前記クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体は、nが0の単独種のもの、nが0〜2、より好ましくはnが0〜1の混合物であってもよい。
【0046】
本発明において、前記クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記カリックス[4]アレーン誘導体との割合は、特に制限されるものではないが、高い感度を維持するためには、クロロメチル基のモル数が以下の範囲を満足することが好ましい。具体的には、前記クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記カリックス[4]アレーン誘導体との合計において、ベンゼン環の全モル数に対するクロロメチル基の全モル数(B)との比(B/A)が0.5以上1.0未満とすることが好ましい。ベンゼン環の全モル数(A)とは、前記クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記カリックス[4]アレーン誘導体とからなるカリックス[4]アレーン混合物に含まれるベンゼン環の合計モル数である。また、クロロメチル基の全モル数(B)とは、前記カリックス[4]アレーン混合物に含まれるクロロメチル基の合計モル数である。つまり、本発明においては、前記カリックス[4]アレーン混合物において、ベンゼン環の全個数(合計個数)に対して、クロロメチル基の全個数(合計個数)が、0.5以上1.0未満となることが好ましい。なお、このモル比は、のH−NMRにより確認することができる。
【0047】
(B/A)が1.0の場合には、全てのベンゼン環が1つのクロロメチル基を有する組成物であり、前記カリックス[4]アレーン誘導体を含まない組成物となり、製造コストの高いものとなる。また、(B/A)が0.5以上であることにより、高い感度を維持することができる。下記の実施例で証明するが、(B/A)が0.5以上となることにより、前記クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体単独のものとほぼ同じ感度を有するものとなる。製造コスト、及び高感度の点から考慮すると、(B/A)は、より好ましくは0.6以上0.9以下、さらに好ましくは0.6以上0.8以下である。
【0048】
(B/A)の比を調製するためには、前記クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記カリックス[4]アレーン誘導体との配合割合を調製してやればよい。
【0049】
次に、前記カリックス[4]アレーン組成物を含むレジスト材料について説明する。
【0050】
(レジスト材料)
本発明のレジスト材料は、前記カリックス[4]アレーン組成物以外に、乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノンなどの有機溶剤を含むことができる。また、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、界面活性剤などを含ませることができる。
【0051】
本発明のレジスト材料は、カリックス[4]アレーン組成物、及び必要に応じて配合される添加剤等の全ての成分を上記有機溶剤に溶解させた後、必要に応じメンブレンフィルターなどを用いて濾過することにより調製される。なお、この調製されたレジスト材料中に含まれるカリックス[4]アレーン組成物の含有量は、所望とするレジスト膜の膜厚、カリックス[4]アレーン組成物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜10質量%である。このカリックス[4]アレーン組成物の含有量とは、前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体の合計量を基準したものである。
【0052】
このようなレジスト材料を使用して、パターンを形成することができる。次に、このレジストパターンの形成方法について説明する。
【0053】
(レジストパターンの形成方法)
前記レジスト材料を使用してレジストパターンを形成するには、以下の方法を採用すればよい。具体的には、前記レジスト材料を被処理基板上に塗布した後、プリベークしてレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜を高エネルギー線で選択的に露光して所望のパターンの潜像を形成する工程と、前記潜像を現像する工程を実施することにより、レジストパターンを形成することができる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0054】
(レジスト膜を形成する工程)
本発明において、レジスト材料を塗布する被処理基板は、特に制限されるものでなく、公知の基板、例えば、シリコン基板、フォトマスク、および先の基板に酸化膜、窒化膜、金属薄膜等を成膜した基板が使用される。
【0055】
これら被処理基板上に、公知の方法、例えば、スピンコーティング法等により上記レジスト材料を塗布した後、ベーク(プリベーク)することにより、上記カリックス[4]アレーン誘導体を含むレジスト膜を形成する。この時、プリベークは、ホットプレート等を用いて80〜130℃の温度で10秒〜5分程度加熱処理することが好ましい。この形成されたレジスト膜の膜厚は、使用する用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、5〜300nmである。
【0056】
以上の方法により、被処理基板上に上記カリックス[4]アレーン誘導体を含むレジスト膜を形成することができる。次に、前記レジスト膜に高エネルギー線を選択的に露光させ、パターンの潜像を形成する工程について説明する。
【0057】
(パターンの潜像を形成する工程)
本発明おいては、上記レジスト膜形成工程により得られた基板上のレジスト膜に、高エネルギー線を選択的に露光させ、パターンの潜像を形成する。
【0058】
上記高エネルギー線は、エネルギー照射により上記レジスト膜に潜像を形成できる線源であれば特に制限されるものではく、例えば、電子線、X線、イオンビームを挙げることができる。
【0059】
また、該高エネルギー線を露光させる部分は、形成しようとするパターンに応じて適宜決定すればよい。そのため、高エネルギー線を選択的に露光させる方法は、公知の方法を採用することができ、直接描画、または、マスクを介して照射してやればよい。
【0060】
以上の方法により、レジスト膜にパターンの潜像を形成することができる。
【0061】
(現像工程)
次に、本発明においては、上記方法により得られた基板、すなわち、上記カリックス[4]アレーン誘導体を含むレジスト膜が積層され、該レジスト膜に高エネルギー線を選択的に露光させ、パターンの潜像が形成された基板(以下、単に、潜像形成工程で得られた基板とする場合もある)を、有機溶剤を含む現像液で現像してやればよい。
【0062】
本発明においては、上記潜像形成工程で得られた基板において、前記高エネルギー線に露光させていないレジスト膜の部分を、有機溶剤を含む現像液で除去することにより前記潜像を現像する。
【0063】
この現像において使用する現像液は、基本的に露光部と未露光部の溶解速度が異なる溶媒を使用する。本発明で使用する現像液は、レジスト材料の溶媒として用いた乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノンの他に、キシレン、エタノール、もしくはイソプロピルアルコール等のアルコール類、グリコールエーテル類、またはハイドロフルオロアルキルエーテルなどが用いられる。これらの現像液は、単独でも、混合での使用もできる。
【0064】
次に、前記現像液を使用し、上記潜像形成工程で得られた基板の現像を行う方法について説明する。
【0065】
前記現像液を用いて潜像形成工程で得られた基板を現像する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができる。具体的には、上記現像液が満たされた槽の中に該基板を浸漬する方法(ディップ法)、上記現像液を該基板表面に載せる方法(パドル法)、上記現像液を該基板に噴霧する方法(スプレー法)が一般的に用いられる。これらの方法は、特に制限されないが、パーティクルを低減するためにはパドル法、またはスプレー法が好ましい。
【0066】
より具体的な現像方法を説明すると、潜像形成工程で得られた基板に、通常、10℃以上35℃以下、好ましくは15℃以上30℃以下の温度の上記現像液を塗布して静置するか、又は所定時間、該基板に該現像液を噴霧し続ける。静置する時間、又は現像液を噴霧する時間は、特に制限されるものではないが、スループットを考慮すると30秒以上5分以下とすることが好ましい。上記カリックス[4]アレーン誘導体と上記現像液との組み合わせであれば、上記温度範囲であれば、上記時間で十分にパターンを形成することができる。
【0067】
以上の工程を実施することによりレジストパターンを形成することができる。次に、これら工程の後処理について説明する。
【0068】
(後処理)
上記方法により現像してレジストパターンが形成された基板は、必要に応じてリンス液によって残存現像液等を除去する。リンス液として用いられる有機溶剤は、前記現像液と同じものものでも、異なっていてもよいが、大気圧下での沸点が150℃以下のものが好ましい。中でも、乾燥しやすさを考慮すると沸点が120℃以下のものがより好ましい。また、上記の現像工程とこのリンス工程を2〜10回程度交互に繰り返し行うこともできる。
【0069】
この後、基板を高速で回転させるなどして薬液を振り切り、除去乾燥を行う。上記で説明したように、上記カリックス[4]アレーン誘導体と上記現像液とを組み合わせることにより、微細なレジストパターンが形成される。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。先ず、以下の実施例、比較例、参考例で使用した化合物の合成例について説明する。
【0071】
合成例1(比較例1で使用したカリックス[4]アレーン誘導体の製造方法)
メトキシカリックス[4]アレーンの合成を行った。
【0072】
2Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、滴下ロート、ガス導入管を取り付け、反応装置を組み立てた。フラスコに原料であるカリックス[4]アレーン45.0g(0.11mol)、脱水N,N−ジメチルホルムアミド680mlを仕込み、窒素フロー下、300rpmで撹拌した。原料のカリックス[4]アレーンはすぐに溶解し、無色透明溶液になった。次に、カリウムt−ブトキシド71.4g(0.64mol)を素早くフラスコに投入した。無色透明溶液から白色スラリー状になった。ヨウ化メチル180.6g(1.27mol)を1時間程度かけて滴下した。滴下終了後2時間反応させた後、1規定の塩酸600mlをゆっくり加えて、反応をクエンチした。反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム800mlを加えて有機層を分液した。次に有機層を20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで予備乾燥し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去し、オレンジ色固体を得た。このオレンジ色固体をクロロホルム600mlに溶かし、次にメタノール1200mlを撹拌しながら、ゆっくり加えて、再沈殿させた。桐山ロートにて固体をろ過し、メタノール200mlで洗浄した。得られた白色固体を真空乾燥(50℃、12時間以上)し、目的物であるメトキシカリックス〔4〕アレーン37.0gを得た。収率は72.7%、HPLC純度は98.8%であった。構造はH−NMRとLC−MSにて同定を行った。結果を示す。H−NMR(500MHz、CDCl3):δ3.2〜4.4ppm(br、8H)、δ3.81ppm(s、12H)、δ6.2〜7.5ppm(br、12H)、LC−MS:M=480、M+1=481。以上の結果から、表4の比較例1に示すメトキシカリックス[4]アレーンであることが分かった。
【0073】
合成例2(参考例1で使用したクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体の製造方法)
合成例1のメトキシカリックス[4]アレーンを用い、クロロメチルメトキシカリックス[4]アレーンの合成を行った。
【0074】
1Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロートを取り付け、反応装置を組み立てた。フラスコに原料であるメトキシカリックス[4]アレーン30.0g(0.06mol)、パラホルムアルデヒド36.0g(1.20mol)、ジオキサン500ml、濃塩酸100ml、酢酸50ml、85%リン酸75mlを仕込み、350rpmで撹拌した。白色スラリー状になり、すべては溶解しなかった。液温が80〜85℃になるようにオイルバスで加熱した。液温が70℃を超えたあたりから、均一に溶解し、無色透明液体になった。80〜85℃で4時間反応させた後、オイルバスを外し、放冷した。
【0075】
反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム200mlを加えて有機層を分液した。水層をクロロホルム200mlで3回抽出し、有機層と合わせた。有機層を水300mlで3回洗浄し、水層のpHが中性になったことを確認した。有機層を無水硫酸マグネシウムで予備乾燥し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去し、オレンジ色液体を得た。この粗体をカラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/5)にて精製し、白色固体25.3gを得た。収率は48.2%、HPLC純度は99.0%であった。構造はH−NMRとLC−MSにて同定を行った。結果を示す。H−NMR(500MHz、CDCl3):δ3.02ppm(s、3H)、δ3.10ppm(d、J=12.0Hz、2H)、δ3.59ppm(s、4H)、δ3.68ppm(s、9H)、δ4.03ppm(d、J=12.0Hz、2H)、δ4.24ppm(s、2H)、δ4.30ppm(s、2H)、δ4.60ppm(s、4H)、δ6.37ppm(s、2H)、δ6.94ppm(s、2H)、δ7.10ppm(s、2H)、δ7.28(s、2H)、LC−MS:M=672、M+2=674、M+4=676、M+6=678。以上の結果から、表3の参考例1に示すクロロメチルメトキシカリックス[4]アレーンであることが分かった。
【0076】
合成例3(比較例2で使用したカリックス[4]アレーン誘導体の製造方法)
合成例1で使用したカリックス[4]アレーンを用い、アセトキシカリックス[4]アレーンの合成を行った。
【0077】
1Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロートを取り付け、反応装置を組み立てた。フラスコに原料であるカリックス[4]アレーン20.0g(0.05mol)、無水酢酸600g(5.9mol)、p−トルエンスルホン酸10mlを仕込み、300rpmで撹拌した。オイルバスで加熱し、還流条件下で5時間反応させた後、オイルバスを外し、放冷した。反応混合物を0.2規定の硫酸600mlにゆっくり注ぎ、反応をクエンチした。その後、1時間以上よく撹拌し、分液ロートに移し、クロロホルム500mlを加えて有機層を分液した。水層をクロロホルム200mlで3回抽出し、有機層と合わせた。有機層を水300mlで3回洗浄し、水層のpHが中性になったことを確認した。有機層を無水硫酸マグネシウムで予備乾燥し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去し、白色固体を得た。この白色固体をクロロホルム600mlに溶かし、次にメタノール1200mlを撹拌しながら、ゆっくり加えて、再沈殿させた。桐山ロートにて固体をろ過し、メタノール200mlで洗浄した。得られた白色固体を真空乾燥(50℃、12時間以上)し、目的物であるアセトキシカリックス[4]アレーン17.6gを得た。収率は63.0%、HPLC純度は98.5%であった。構造はH−NMRとLC−MSにて同定を行った。結果を示す。H−NMR(500MHz、CDCl3):δ1.53ppm(s、12H)、δ3.72ppm(s、8H)、δ7.01ppm(s、12H)、LC−MS:M=592、M+1=593。以上の結果から、表4の比較例2に示すアセトキシカリックス[4]アレーンであることが分かった。
【0078】
合成例4(参考例2で使用したクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体の製造方法)
合成例3のアセトキシカリックス[4]アレーンを用い、クロロメチルアセトキシカリックス[4]アレーンの合成を行った。
【0079】
合成例2において、原料であるメトキシカリックス[4]アレーンの代わりに、アセトキシカリックス[4]アレーンを用いた以外は同様の操作を行った。収率は、52.8%、HPLC純度は、98.7%であった。構造はH−NMRとLC−MSにて同定を行った。結果を示す。H−NMR(500MHz、CDCl3):δ1.52ppm(s、12H)、δ3.5〜4.5ppm(m、16H)、δ7.02ppm(s、8H)、LC−MS:M=784、M+2=786、M+4=788、M+6=790。以上の結果から、表3の参考例2に示すクロロメチルアセトキシカリックス[4]アレーンであることが分かった。
【0080】
合成例5(比較例3で使用したカリックス[4]アレーン誘導体の製造方法)
合成例1で使用したカリックス[4]アレーンを用い、アリロキシカリックス[4]アレーンの合成を行った。
【0081】
1Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、滴下ロート、ガス導入管を取り付け、反応装置を組み立てた。フラスコに原料であるカリックス[4]アレーン24.0g(0.057mol)、脱水N,N−ジメチルホルムアミド40ml、脱水テトラヒドロフラン400mlを仕込み、窒素フロー下、300rpmで撹拌した。原料のカリックス[4]アレーンはすぐに溶解し、無色透明溶液になった。次に、カリウムt−ブトキシド38.1g(0.339mol)を素早くフラスコに投入した。30℃程度まで発熱し、無色透明溶液からオレンジ色スラリー状になった。液温が室温程度になってから、臭化アリル82.1g(0.678mol)を30分かけて滴下した。液温は40℃程度になった。滴下終了後2時間反応させた後、1規定の塩酸400mlをゆっくり加えて、反応をクエンチした。反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム700mlを加えて、有機層を分液した。次に有機層を20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで予備乾燥し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去し、黄色透明液体を得た。この黄色液体にメタノール200mlを撹拌しながら、ゆっくり加えて、再沈殿させた。桐山ロートにて結晶をろ過し、メタノール100mlで洗浄した。得られた白色結晶を真空乾燥(50℃、12時間以上)し、目的物であるアリロキシカリックス[4]アレーン23.2gを得た。収率は70.4%、HPLC純度は94.5%であった。構造はH−NMRとLC−MSにて同定を行った。結果を示す。H−NMR(500MHz、CDCl3):δ3.0〜4.5ppm(m、16H)、δ4.8〜5.4ppm(m、8H)、δ5.8〜6.2ppm(m、4H)、δ6.3〜7.3ppm(m、12H)、LC−MS:M=584、M+1=585。以上の結果から、表4の比較例3に示すアリロキシカリックス[4]アレーンであることが分かった。
【0082】
合成例6(参考例3で使用したクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体の製造方法)
合成例5のアリロキシカリックス[4]アレーンを用い、クロロメチルアリロキシカリックス[4]アレーンの合成を行った。
【0083】
合成例2において、原料であるメトキシカリックス[4]アレーンの代わりに、アリロキシカリックス[4]アレーンを用いた以外は同様の操作を行い、粗体を得た。この粗体をカラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲルC−200、展開溶媒:テトラヒドロフラン/ヘキサン=1/4)にて精製し、白色固体1.0gを得た。収率は7.5%、HPLC純度は99.6%であった。構造はH−NMRとLC−MSにて同定を行った。結果を示す。H−NMR(500MHz、CDCl3):δ3.56ppm(s、8H)、δ4.18ppm(m、8H)、δ4.38ppm(s、8H)、δ5.08ppm(dd、J=17.0、2.0Hz、4H)、δ5.22ppm(dd、J=10.0、2.0Hz、4H)、δ5.94ppm(m、4H)、δ6.99ppm(s、8H)、LC−MS:M=776、M+2=778、M+4=780、M+6=782。以上の結果から、表3の参考例3に示すクロロメチルアリロキシカリックス[4]アレーンであることが分かった。
【0084】
合成例7(実施例7で使用したクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体の製造方法)
合成例1で使用したカリックス[4]アレーンを用い、まず、ジメトキシカリックス[4]アレーンを合成し、次いで、アリル基の導入、最後にクロロメチル基の導入を行い、カリックスアレーン誘導体を合成した。まず、ジメトキシカリックス[4]アレーンの合成
を下記の方法で行った。
【0085】
(ジメトキシカリックス[4]アレーンの合成)
1Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロートを取り付け、反応装置を組み立てた。フラスコに原料であるカリックス[4]アレーン50.0g(0.12mol)、p−トルエンスルホン酸メチル44.0g(0.24mol)、無水炭酸カリウム18.0g(0.13mol)、脱水アセトニトリル600mlを仕込み、300rpmで撹拌した。オイルバスで加熱し、還流条件下で5時間反応させた。その後、1規定の塩酸200mlをゆっくり加えて、反応をクエンチした。反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム600mlを加えて有機層を分液した。次に有機層を20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで予備乾燥し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去し、白色固体を得た。この白色固体をクロロホルム500mlに溶かし、次にメタノール1000mlを撹拌しながら、ゆっくり加えて、再沈殿させた。桐山ロートにて固体をろ過し、メタノール200mlで洗浄した。得られた白色固体を真空乾燥(50℃、12時間以上)し、目的物であるジメトキシカリックス[4]アレーン41.4gを得た。収率は77.4%、HPLC純度は98.3%であった。次いで、アリル基の導入を行い、ジメトキシジアリロキシカリックス[4]アレーンの合成を行った。
【0086】
(ジメトキシジアリロキシカリックス[4]アレーンの合成)
1Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、滴下ロート、ガス導入管を取り付け、反応装置を組み立てた。フラスコに原料であるジメトキシカリックス[4]アレーン40.0g(0.094mol)、脱水N,N−ジメチルホルムアミド50ml、脱水テトラヒドロフラン500mlを仕込み、窒素フロー下、300rpmで撹拌した。次に、カリウムt−ブトキシド31.5g(0.281mol)を素早くフラスコに投入した。30℃程度まで発熱し、淡黄色スラリー状になった。液温が室温程度になってから、臭化アリル68.0g(0.562mol)を10分かけて滴下した。液温は40℃程度になった。滴下終了後5時間反応させた後、1規定の塩酸200mlをゆっくり加えて、反応をクエンチした。反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム800mlを加えて、有機層を分液した。次に有機層を20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで予備乾燥し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去し、白色固体を得た。この白色固体をクロロホルム300mlに溶かし、次にメタノール1000mlを撹拌しながら、ゆっくり加えて、再沈殿させた。桐山ロートにて固体をろ過し、メタノール200mlで洗浄した。得られた白色固体を真空乾燥(50℃、12時間以上)し、目的物であるジメトキシジアリロキシカリックス[4]アレーン36.4gを得た。収率は72.7%、HPLC純度は98.7%であった。最後にクロロメチル基を導入した。
【0087】
(クロロメチルジメトキシジアリロキシカリックス[4]アレーンの合成)
1Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロートを取り付け、反応装置を組み立てた。フラスコに原料であるジメトキシジアリロキシカリックス[4]アレーン32.0g(0.060mol)、パラホルムアルデヒド36.0g(1.20mol)、ジオキサン500ml、濃塩酸100ml、酢酸50ml、85%リン酸75mlを仕込み、350rpmで撹拌した。白色スラリー状になり、すべては溶解しなかった。液温が80〜85℃になるようにオイルバスで加熱した。液温が70℃を超えたあたりから、白色スラリー状からほぼ無色透明に溶解した。80〜85℃で7時間反応させた後、オイルバスを外し、放冷した。反応混合物を分液ロートに移し、クロロホルム200mlを加えて有機層を分液した。水層をクロロホルム200mlで3回抽出し、有機層と合わせた。有機層を水300mlで5回洗浄し、水層のpHが中性になったことを確認した。有機層を無水硫酸マグネシウムで予備乾燥し、ろ過した。エバポレーターで溶媒を留去し、オレンジ色固体を得た。この粗体をカラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲルC−200、展開溶媒:テトラヒドロフラン/ヘキサン=1/4)にて精製し、白色固体4.5gを得た。収率は10.3%、HPLC純度は97.4%であった。構造は1H−NMRとLC−MSにて同定を行った。結果を示す。1H−NMR(500MHz、CDCl3):δ3.0〜4.6ppm(m、26H)、δ5.3〜6.1ppm(m、6H)、δ7.0〜7.3ppm(m、8H)、LC−MS:M=724、M+2=726、M+4=728、M+6=730。以上の結果から、表2の実施例7のクロロメチル基含有カリックスアレーン誘導体の欄に示す化合物であることが分かった。
【0088】
以上の方法で得られた化合物を以下の実施例、比較例、及び参考例において、表1、表2、表3、及び表4に示す割合で組成物を製造し、評価を行った。なお、表2の実施例8におけるクロロメチル基含有カリックスアレーン誘導体は、非特許文献1、特許文献3に記載の方法に従い合成を行った。
【0089】
実施例1
(カリックス[4]アレーン組成物の製造)
表1の実施例1に示すクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体とカリックス[4]アレーン誘導体とからなるカリックス[4]アレーン組成物を準備した。ただし、クロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体とカリックス[4]アレーン誘導体の配合割合は、ベンゼン環の全モル数(A)に対するクロロメチル基の全モル数との比(B/A)が表1の値を満足するような値とした。
【0090】
(レジスト材料の製造、及びパターンの形成方法)
前記カリックス[4]アレーン組成物とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とを、カリックス[4]アレーン組成物の濃度が2質量%になるように混合溶解した。次いで、得られた溶液をポアサイズ0.05μmの高密度ポリエチレン(HDPE)製メンブランフィルターで濾過してレジスト材料を調製した。4インチシリコンウエハに、前記レジスト材料をスピンコートした後、110℃のホットプレート上で60秒間ベークして膜厚が約35nm(固形物として)のレジスト膜を形成した(レジスト膜形成工程)。
【0091】
次いで、シリコンウエハ上に形成されたレジスト膜に、電子線描画装置CAVL−9410NA(クレステック社製)を用い、加速電圧50kV、ビーム電流100pAで、電子線照射量を調節して(露光量を調節して)、感度評価用に200μm幅のライン&スペースパターンを描画した(潜像形成工程)。
【0092】
次いで、上記潜像形成工程で得られた基板上に、23℃でイソプロピルアルコール(IPA)を塗布して60秒間現像を行った(現像工程)。現像後、分速300回転で基板を回転させながらリンス液(IPA)を30秒間滴下し、リンスを行った。最後に、分速2000回転でリンス液を乾燥除去させてレジストパターンを形成した。
【0093】
このようにして得られたレジストパターンは、以下の方法により、感度、および、解像度を評価した。
【0094】
図1に、この実施例1についての感度曲線を示した。この感度曲線は、膜厚測定器を用いて露光部分の膜厚を測定し、横軸に露光量、縦軸に膜厚を表したものである。各実施例、比較例において同様にして、このような感度曲線を作成し、露光量(D)を求めた。具体的には、図1に示すように、感度曲線の立ち上がり部の近似直線(図中に点線で示される右上がりの直線)と平坦部の近似直線(図中に点線で示される水平な直線)との交点を求め、その交点における露光量(図1では約1.0mC/cm)を露光量(D)として求めた。
【0095】
実施例2〜8、比較例1〜3、参考例1〜3
実施例1において、表1、及び表2に示すカリックス[4]アレーン組成物(実施例)、表4に示すカリックス[4]アレーン誘導体(比較例)、表3に示すクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体(参考例)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、感度を評価した。その結果を表1、表2、表3及び表4に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
実施例のカリックス[4]アレーン組成物を使用したものは、比較例のものよりも、感度が高いことが分かった。さらに、B/Aを0.5以上にしたものは、参考例のクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体のみを使用したものと同等の感度を有することが分かった。実施例のカリックス[4]アレーン組成物は、クロロメチル化する前のカリックス[4]アレーン誘導体を含むものであり、参考例のクロロメチル基含有カリックスアレーン誘導体のみのものを使用した場合よりも、コスト的に有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、
、及びRは、それぞれ、アルキル基、アセチル基、又はアリル基であり、
nは、0〜3の整数であり、
、及びRがそれぞれ複数存在する場合には、その複数のR、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、異なる基であってもよい。)
で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と下記式(2)
【化2】

(式中、
は、アルキル基、アセチル基、又はアリル基であり、
4つのRは、互いに同一の基であっても、異なる基であってもよい。)
で示されるカリックス[4]アレーン誘導体とを含むカリックス[4]アレーン組成物。
【請求項2】
前記式(1)で示されるクロロメチル基含有カリックス[4]アレーン誘導体と前記式(2)で示されるカリックス[4]アレーン誘導体との合計において、ベンゼン環の全モル数(A)に対するクロロメチル基の全モル数(B)との比(B/A)が0.5以上1.0未満となる請求項1に記載のカリックス[4]アレーン組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカリックス[4]アレーン組成物を含むレジスト材料。
【請求項4】
請求項3に記載のレジスト材料を被処理基板上に塗布した後、プリベークしてレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜を高エネルギー線に選択的に露光して所望のパターンの潜像を形成する工程と、前記潜像を現像する工程とを含むレジストパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−224583(P2012−224583A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93848(P2011−93848)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】