説明

カルコブトロールの製造方法

本発明は、純粋なガドリニウム錯体(ガドブトロール)から開始する、カルコブトロールとしても知られる10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸のカルシウム錯体の製造方法に関する。さらに、本発明は、これまでには知られていない純度レベルを有するカルコブトロールに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、カルコブトロールとしても知られる、10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸のカルシウム錯体の製造方法、およびガレノス製剤の製造のためのその使用に関する。本発明は、さらにこれまでに知られていない純度レベルを有するカルコブトロール(Calcobutrol)に関する。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
カルコブトロールは、ガドブトロールのガレノス製剤における添加剤であり、該製剤(溶液)中での遊離ガドリニウムの放出を防止するという課題を解決する。ガドブトロールは、核スピン断層撮影法のためのガドリニウム含有造影剤であり、適応“筋肉と脊椎の核磁気共鳴断層撮影法(MRT)による造影増強法”(EP 0 448 181 B1、EP 0 643 705 B1、EP 0 986 548 B1、EP 0 596 586 B1およびCA特許第1341176号)として、ドイツで2000年からGadovist(登録商標)として認められている。ガドブトロールは、非イオン錯体であって、ガドリニウム(III)および大環状リガンドである10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ブトロール)からなるものである。Gadovistは、1 molの水溶液として販売され、該注射用製剤中に以下の成分を有する:ガドブトロール、カルコブトロールナトリウム塩、トロメタモール、塩酸および水。
【0003】
殆どのガドリニウム含有造影剤については、カルシウム錯体形態の製剤(EP 0 270 483 B2)中で過剰量の錯体形成リガンドを用いることが有利であると判っている。カルシウム錯体の役割は、該製剤中の遊離のガドリニウムの放出を防止することである(例えば、数年間の貯蔵による、そのガラスに由来する外来のイオンとの錯体再形成)。
【0004】
カルシウム錯体(カルコブトロール)の合成は、Inorg. Chem. 1997, 36, 6086-6093に詳細に記述される。しかし、この文献に開示された方法は、当分野の専門家が必要とする純度を有するカルコブトロールを提供しない。図式3の方法の正確な再現(p6088-6089)により、HPLC(固定相:SHANDONのHypersil phenyl(5 μm);移動相:アセトニトリル/ホウ酸塩緩衝液(pH 8)、容量比20/100;検出:UV検出器(200 nm);注入量:10 μl)により測定した場合にわずか約94%の純度を有する物質が得られる。ガドブトロール(ブトロール)の合成から得られる該リガンドは、それをカルシウム錯体へと直接変換するために必要な高純度を有さない。該リガンドのさらなる精製は、このリガンドが両性イオンの性質をもつので困難である。1.7-1.8のpHにて結晶化する(US 5,595,714に従えば)リガンドBOPTA、DTPA、およびDOTAとは異なり、いずれのpHであってもブトロールを結晶化することはできず(後記の比較例を参照されたい)、かくして結晶化によりそれを精製することは不可能である。特定の理論に縛られないが、結晶化する能力の差違は、BOPTA、DTPA、またはDOTAにおいて存在しないブトロールのジヒドロキシ-ヒドロキシメチル-プロピル側鎖にある。結晶化がおこらない理由は、極性または水素結合の形成能の相違のようである。最後に、別の起こり得る理由は、いわゆるジヒドロキシ-ヒドロキシメチル-プロピル側鎖に由来する“グリセロール効果”、即ち水の結晶中の水素結合を妨害する0℃で水の結晶化を防止するグリセロールの能力であり得る。
【0005】
中性のガドリニウム錯体(ガドブトロール)は、イオン交換カラム(例えば、Amberlite IRC 50, Amberlite FPC3500, または Amberlite IRA 67)にて精製でき、その後非常に効率的な結晶化により(例えば、エタノールから、好ましくは200 ppm未満の水と共に)非常に高純度(>99.7%)で得られるが、過剰な酸性官能基のためにカルコブトロールには不可能である。カルシウム錯体の精製は、分取HPLCであっても分離できない不純物が主要ピーク付近に存在するために成功しなかった。カルコブトロールをHPLCにより分離するいくつかの異なる方法が試みられたが(移動相、勾配などの改変)、それら何れの方法もかかる分離を達成していない。
【0006】
カルコブトロールの熱力学安定度定数および酸解離定数は、Ca2+イオン(25℃で、0.1N KCl中)の存在下で、Ca2+:リガンドの様々な割合にて、該リガンド(ブトロール)のpH-電位差滴定法により決定される:
【表1】

これらの測定値に基づいて、遊離のカルシウムイオン、中性錯体(カルコブトロール、リガンドが2つの負の電荷を有する)およびアニオン錯体(リガンドが3つの負の電荷を有する)の間のカルシウムの分布を、様々なpH値について計算できる。該結果を図1に示す。該中性錯体が任意のpHで20%以上のカルシウム含有種を構成しないことは明白である。カルシウム含有種の間のこの平衡により、水溶液中の分取方法は何らかの不純物をもたらす。
【0007】
このアニオン錯体は、より高いpH値で優勢な種であるが、これは精製目的のためには全く有用ではない。該錯体との塩(例えば、ナトリウム塩)は、処理(work-up)のためには好適ではない。該錯体のナトリウム塩は、吸湿性が高いガラス状物質であって、これを何れの実用スケールであっても取り扱うことが出来ない。それ故、Gadovist溶液の調製において、該ナトリウム塩は、水酸化ナトリウムをカルコブトロールに添加することによりイン・サイチュで調製される。
【0008】
ガドブトロールとカルコブトロールとの安定性における大きな相違は、第一にGadovist製剤においてカルコブトロールが有用となること、即ち、該ガドリニウム錯体と該カルシウム錯体との安定性における大きな相違は、該ガドリニウム錯体を形成することによりあらゆる遊離のガドリニウムイオンを該カルシウム錯体が取り除くことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、最大の可能な収率で、好ましくは結晶形態にて、非常に純粋なカルコブトロールを得ることである。
【0010】
(本発明の詳細な説明)
驚くべきことに、非常に純粋なガドブトロールから開始することにより、効率的にカルコブトロールを調製できることが判った。該ガドリニウムは、後にCa2+イオンと錯体を形成する高純度のリガンドを得るために、該ガドブトロール錯体からの解離により除去される。
【0011】
無機酸(好ましくは塩酸)の添加によるガドリニウム錯体とシュウ酸の解離が、ブトロールとは異なるリガンドについて文献に記述されている。ガドリニウムならびに遊離のリガンドが、どのようにシュウ酸/塩酸を用いる脱錯体によりガドリニウム含有造影剤から得られるのかが米国第5,595,714号に開示されている。カルシウム塩の製造方法の用途は米国第5,595,714号に開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(カルコブトロール)のカルシウム錯体の製造方法に関する:
a) 10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)のガドリニウム錯体を、脱錯化剤を用いて解離させる、
b) 沈殿したガドリニウム塩を除去する、
c) b)から得られる該溶液中の遊離のリガンドを、酸性イオン交換樹脂に結合させる、
d) 該樹脂を、アルカリ水溶液で溶出する、
e) 該溶出液を、酸性イオン交換樹脂で処理する、そして
f) 該リガンドを、Ca2+イオンと錯体化して、結晶化する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、カルコブトロール錯体と関連化合物についてpHの関数としてカルシウム含有種の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の内容において、該用語「脱錯化剤」は、水に難溶性のGd塩を形成できる物質を意味することが意図される。脱錯化試薬の例は、シュウ酸イオン源、例えばシュウ酸、およびリン酸イオン源、例えばリン酸であって、それぞれ不溶性シュウ酸ガドリニウムおよびリン酸ガドリニウム塩を形成する。好ましい脱錯化剤は、シュウ酸およびリン酸であり、最も好ましいのはシュウ酸である。
【0015】
錯体の解離は、75〜100℃の温度、例えば80〜95℃、例えば87.5〜92.5℃、好ましくは約90℃にて水中で十分おこる。
【0016】
該リガンド(ブトロール)の解離後、酸性イオン交換樹脂による処置を、特にpH3.65〜3.80、好ましくは約3.72にて行う。Amberlite 252 C または Amberlite IR 120は、有用なイオン交換樹脂の例である。
【0017】
溶出のための好ましい水性アルカリ試薬は、蒸留により水溶液から除去し得る塩基である。かかる試薬の利点は、水の蒸発により、それらがリガンド含有溶出液から除去される点である。水性アルカリ試薬は、アンモニアまたは揮発性アミンであってもよい。本明細書において、該用語“揮発性アミン”は、中心の窒素原子と結合したアルキル鎖中1〜4個の炭素原子を独立して有し、かつ大気圧が95℃以下、例えば80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、好ましくは30℃以下、または15℃以下の沸点を有するあらゆる第一級、第二級または第三級脂肪族アミンを意味すると意図される。揮発性アミンの例は、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、1-アミノ-2,2-ジメチルプロパン、2-アミノ-2-メチルブタン、2-アミノ-3-メチルブタン、2-アミノペンタン、および3-アミノペンタンである。好ましい実施態様において、溶出のためのアルカリ性試薬はアンモニア、ジメチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、イソ-プロピルアミン、またはその混合物、より好ましいアンモニアまたはジメチルアミン、またはその混合物、最も好ましいものはアンモニアである。
【0018】
一実施態様において、遊離のリガンドを、イオン交換樹脂による処置後、即ち最初に該リガンドを単離せずにCa2+イオンと直接錯体形成させる。別の実施態様において、遊離のリガンドを、最初に、Ca2+イオンとの錯体形成前に凍結乾燥により単離する。
【0019】
炭酸カルシウム、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムは、錯体形成のためのCa2+イオンの好ましい源である。該錯体形成は、75〜100℃、例えば、80〜95℃、例えば87.5〜92.5℃、好ましくは約90℃の温度の水溶液中で実施されることが好ましい。
【0020】
驚くべきことに、US 5,595,714に記載したような無機酸の添加は解離には必要ではないということを見出した。高純度のガドブトロールを、水中で化学量論のシュウ酸などの脱錯化剤と直接反応させれば、定量的な脱錯体およびシュウ酸ガドリニウムの濾去後に、優れた品質および純度のブトロールの無色水溶液が得られる。即ち、一実施態様において、シュウ酸などの脱錯化剤を、例えば2よりも高いpHにて、例えば3よりも高いpH、例えば4よりも高いpH、好ましくは4.5よりも高いpHにてガドブトロールに添加する。該カルコブトロール錯体を、さらなる精製ステップの後にブトロール溶液から直接調製し得る。
【0021】
遊離のガドリニウムがブトロール溶液に存在しないことを確かめるために、それをイオン交換処理に供する。あらゆる残存イオンを除去するために、ブトロール溶液を、イオン交換カラム上に重層し、水により完全に洗浄する。次に、該リガンドを、水性アルカリ試薬、例えばアンモニア水により溶出し、該溶出水溶液を真空下で穏やかに蒸留させた。該残留液を水で希釈した。活性炭素による処置後、pH値は、酸性イオン交換樹脂の添加により3.7に設定される。該交換樹脂を濾去し、その後該溶液を凍結乾燥した。
【0022】
リン酸を、シュウ酸の代わりに使用し得る。この場合、ガドリニウムリン酸塩(GdPO4)は沈殿する。該リガンドを、同様の方法で処理できる。
【0023】
原理上は、直接継続させて、カルシウム塩との錯体化を行うことができる。しかし、穏やかに凍結乾燥することにより、該リガンドを単離できることを見出した、即ち便利な貯蔵形態がこの方法で得られる。
【0024】
カルコブトロールに対する最終反応は、加熱しながら水中でブトロールを化学量論の炭酸カルシウムと錯体化することにより行われる。しかし、CaOおよびCa(OH)2を使用してもよい。
【0025】
粒子および核を除去するために、活性炭素による処置に続いて濾過を用いる。該濾液を、出来る限り真空で蒸発させて、エタノールの添加により結晶化させる。このために、還流加熱およびその後冷却を適用した。沈殿した結晶生成物を、濾去し、少量のエタノールで洗浄した。次に、70℃で真空チャンバー内にて乾燥させた。アセトンまたはイソプロパノールからも結晶化を行い得ることが判ったが、しかしエタノールが好ましい溶媒である。
【0026】
特定の論理にしばられないが、エタノールまたは他の好適な溶媒中でのカルコブトロールの結晶化は、一方で遊離のカルシウムイオンおよびリガンドの間の水溶液中の平衡、もう一方では安定な結晶化錯体に向かうカルコブトロール錯体(図1で説明した)を推し進める。即ち、錯体形成段階の開始時のカルシウムイオンおよびブトロールの化学量論の量にて、該錯体のみが結晶化後に残存する。しかし、該錯体形成法として、純粋なカルコブトロールを得るためには純粋なブトロールを使用すべきであることも判った。もしブトロールが純粋でなければ、カルコブトロールは同等レベルの不純物を含有する。このことは、Inorg. Chem. 1997, 36, 6086-6093の方法について観察された。
【0027】
一実施態様において、本発明は、10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸(ガドブトロール)の該ガドリニウム錯体を、加熱しながら水中でシュウ酸またはリン酸で脱錯体化し、沈殿したガドリニウムシュウ酸塩/リン酸塩を濾去し、遊離のリガンドを、酸性イオン交換樹脂に結合させ、該樹脂をアンモニア水溶液により溶出させ、溶液蒸発後にpHを酸性イオン交換樹脂により3.6-3.8に設定し、該溶液を凍結乾燥させ、該リガンドを加熱しながらCa2+イオンと錯体化させて、該錯体を反応完了後にエタノールから結晶化させ、該結晶単離後に真空下で乾燥させる、方法に関する。
【0028】
この方法で調製したカルコブトロールは、非常に高い品質を特徴とする。該生成物は、無色であり、水溶性であり、99.0%以上の純度、あるバッチ内では99.4%以上の純度(HPLC法に従う純度 100%)を有する。ガドブトロールからカルコブトロールへのこの全ての過程は、高い再現性および作業性を特徴とする。91.2%の全収率は非常に良好である。該生成物は、貯蔵に安定であって、Gadovist溶液の製剤のために使用され得る。カルコブトロールのナトリウム塩を、イン・サイチュにて化学量論の水酸化ナトリウムの添加により得ことができる。この方法で調製したGadovist溶液は、数年間安定であり、毒性のガドリニウムが該溶液中には決して放出されないという安全性を提供する。
【0029】
即ち、専門家や施術者の要望を満たし、さらなる処理およびGadovistの製造に直接使用できる低コストで高い純度を有するカルコブトロールを提供することを達成する。
【0030】
本発明はまた、ガドブトロールの市販ガレノス製剤の調製のためのカルシウム錯体の10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸の使用に関する。
【実施例】
【0031】
実施例
HPLC 100% 方法
【表2】


勾配スケジュール:
【表3】

【表4】

【0032】
比較例
カルコブトロールの調製のためには、US 5,595,714に開示された方法を使用することはできない。このUS特許に記述されたとおりに、ガドブトロールを、塩酸、次いで水(pH 0.8)中でシュウ酸と20℃で約6h攪拌し、沈殿したシュウ酸ガドリニウムを濾去した。該濾液を、いくつかの分割容量に分けて、20%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH値を調整した。該リガンドが結晶化するpHが知られていないため、各々0.1のpHの差違毎に、いくつかの溶液を試験した。結晶化実験の結果を以下の表に提供される:
【表5】

【0033】
US特許の教示による該リガンドの結晶化に対する試みは成功していない。HPLC試験により、強酸性条件下では新規の不純物の出現が認められ、該リガンドの品質を低下させることが示された。さらに、元々無色のリガンドが6時間後に黄色に変色すること、および該不純物を除去できないことが認められた。従って、このリガンドのさらなる処理が93%の純度の着色したカルコブトロールを生じさせる(HPLC、100% 方法)ので、上記US特許による方法は、カルコブトロールの調製のためには不適切である。
【0034】
しかし、驚くべきことに、結晶化による単離は必要ではないということを見出した。溶液中で高純度のリガンドを直接反応させ得るか、または凍結乾燥により単離できるような、該錯体からガドリニウムを除去することができる非常に穏やかな条件を見出した。
【0035】
実施例1:ブトロールの調製
ガドブトロール(水分含量4.78%、純度>99%、イオン交換および結晶化により確認した)(26.255 kg)およびシュウ酸二水和物(固体、99%)(10.108 kg)を、攪拌しながら容器内に入れて、脱塩水(175 l)を添加し、該混合物を90℃で5時間攪拌した。該混合物を、20℃に冷却した(pH測定により3.1〜3.5の値を示した)。沈殿したシュウ酸ガドリニウムをサイホンで吸い上げて、水(50 l)で2回洗浄した。該濾液を、Amberlite 252 C(250 l)により充填したカチオン交換カラム上に重層し、次いで該カラムを水で洗浄した。
【0036】
脱塩水(250 l)および25% アンモニア(125 l)の混合物を用いて該カラムから生成物を溶出し、13画分に集めた。
【表6】

画分が生成物を含有するかどうかはTLC(薄層クロマトグラフィー)により決定した。
【0037】
溶出画分5から10を、真空下に70℃の浴温度のロータリーエバポレーターにて約35 lまで蒸発させた。この濃縮物のpH値は6.7である。
【0038】
油状残渣を、脱塩水(125 l)中に取り出して、活性炭素(3.75 kg)(Norit SX PLUS, 最初に水で完全に洗浄した)を添加し、次いで該溶液を1時間90℃の内部温度まで加熱した。この温溶液を濾過し、活性炭素を除去し、炭素を各時点で70℃の水(25 l)を用いて3回洗浄した。
【0039】
混合物を20℃に冷却して、pHを酸性イオン交換樹脂の添加によりpH3.72に調整した(Amberlite IR 120, 該樹脂を分割容量で6.5 l−全体で45.5 lにて添加した;プローブ(100 ml)を取る-追加の樹脂はpH交換しなかった)。イオン交換樹脂を、濾去し、各時点で4回、脱塩水(25 l)を用いて洗浄した。洗浄水と共に濾液を、真空下に70℃で熱攪拌器内で蒸発させて約100 lの容量とした。該溶液を、20℃に冷却し、その後凍結乾燥器内で凍結乾燥させた。
収量:18.15 kg (17.69 kg = 95% 理論値、水で補正)の無色無定型粉末。
【0040】
水分含量(Karl-Fischer):2.60%
元素分析(水で補正):
【表7】

HPLC 純度(100% 方法): > 99%
【0041】
実施例2:カルコブトロールの調製
全量3.356 kgの炭酸カルシウム(99.3%)を、分割容量にて脱塩水(120 l)に溶解したブトロール(水含量:2.6%)(15.39 kg)を添加し、1時間90℃の内部温度で攪拌した。次に、20℃に冷却し、活性炭素(1.5 kg)(Norit SX PLUS;該炭素を、最初に水を用いて完全に洗浄した)を加えた。それを20℃で1時間攪拌し、次に該炭素を濾去した。該炭素を、各時点で3回水(15 l)により洗浄した。
【0042】
次に、洗浄水と共に濾液を、加熱攪拌器において80℃で真空の下で蒸発させて油状物とし、これは依然攪拌可能であり、1.4倍の元々のブトロールに相当する。エタノール(150 l)を該油状物に添加し、次に3時間還流下で沸騰させた。それを20℃に冷却し、沈殿した結晶懸濁液を濾去した。該結晶を、各時点でエタノール(15 l)にて2回洗浄した。
【0043】
エタノール由来の湿気を依然として有する該生成物を、重量が一定となるまで、70℃に設定した真空乾燥器内で乾燥させる。
収量:16.27 kg (96% 理論値)の無色結晶
【0044】
元素分析:
【表8】

HPLC純度(100% 方法):>99.0%
【0045】
この実施例に対応する研究室規模での実験を、結晶化のための溶媒としてエタノールの代わりにアセトンおよびイソプロパノールを用いて行った。同様の純度を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
99.0%以上の純度を有する10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸のカルシウム錯体。
【請求項2】
99.4%以上の純度である、請求項1記載の錯体。
【請求項3】
ガドブトロールのガレノス製剤の製造のための、請求項1または2記載の錯体の使用。
【請求項4】
10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸 (カルコブトロール)のカルシウム錯体の製造方法であって、以下を含む方法:
a)10-(2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸 (ガドブトロール)のガドリニウム錯体を、脱錯化剤を用いて解離させる、
b)沈殿したガドリニウム塩を除去する、
c)ステップb)から得られる溶液中の遊離のリガンドを、酸性イオン交換樹脂に結合させる、
d)樹脂を、アルカリ水溶液で溶出する、
e)溶出液を、酸性イオン交換樹脂で処理する、そして
f)リガンドを、Ca2+イオンと錯体化し、結晶化させる。
【請求項5】
ステップa)における脱錯化剤が、シュウ酸イオン源またはリン酸イオン源である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ステップa)における脱錯化剤がシュウ酸である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ステップa)の錯体解離反応が、75〜100℃の温度にて水中で実施される、請求項4〜6いずれか一項記載の方法。
【請求項8】
ステップd)のアルカリ水溶液が、アンモニアまたは揮発性アミン、あるいはその混合物の溶液である、請求項4〜7いずれか一項記載の方法。
【請求項9】
ステップd)におけるアルカリ水溶液が、アンモニア、ジメチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、イソ-プロピルアミン、またはその混合物の溶液である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ステップd)におけるアルカリ水溶液が、アンモニア溶液である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ステップe)から得られる生成物が、凍結乾燥により単離される、請求項4〜10いずれか一項記載の方法。
【請求項12】
ステップe)から得られる生成物を、最初にそれを単離せずに、カルシウムイオン源と直接反応させる、請求項4〜10いずれか一項記載の方法。
【請求項13】
ステップf)におけるカルシウムイオン源が、炭酸カルシウム、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムである、請求項4〜12いずれか一項記載の方法。
【請求項14】
脱錯化剤を添加する前のステップa)におけるpHが、2より高い、請求項4〜13いずれか一項記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−510117(P2013−510117A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537372(P2012−537372)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066655
【国際公開番号】WO2011/054827
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(507113188)バイエル・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】