説明

カルコン型化合物

【課題】短波長記録光用の光学記録媒体の光学記録層の形成に適した光学記録材料及び該光学記録材料に好適な新規な化合物を提供すること。
【解決手段】
下記一般式(I)で表されるカルコン型化合物又は該化合物を配位子として用いた金属錯体を少なくとも一種含有してなる光学記録材料。


(式中、環Aは、五員環又は六員環の複素環又は芳香環を表し、環Bは、五員環又は六員環の複素環、芳香環又はメタロセン構造を表す。上記複素環及び上記芳香環は、他の環と縮合されていたり、置換されていたりしていてもよい。nは、0又は1である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報をレーザ等による情報パターンとして付与することにより記録する光学記録媒体に使用される光学記録材料に関し、詳しくは、紫外及び可視領域の波長を有し且つ低エネルギーのレーザ等による高密度の光学記録及び再生が可能な光学記録媒体に使用される光学記録材料及び該光学記録材料に好適な新規なカルコン型化合物並びに該化合物を配位子とする新規な金属錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学記録媒体は、一般に、記録容量が大きく、記録又は再生が非接触で行なわれること等の優れた特徴を有することから、広く普及している。WORM、CD−R、DVD±R等の追記型の光ディスクでは、記録層の微小面積にレーザを集光させ、光学記録層の性状を変えて記録し、記録部分と未記録部分との反射光量の違いによって再生を行なっている。
【0003】
現在、上記の光ディスクにおいては、記録及び再生に用いる半導体レーザの波長は、CD−Rは750〜830nmであり、DVD−Rは620nm〜690nmであるが、更なる容量の増加を実現すべく、短波長レーザを使用する光ディスクが検討されており、例えば、記録光として380〜420nmの光を用いるものが検討されている。
【0004】
短波長記録光用の光学記録媒体において、光学記録層の形成には、各種化合物が使用されている。例えば、特許文献1にはカルコン型化合物を配位子とする金属錯体を含有する光情報記録媒体が報告されており、特許文献2には特定のカルコン型化合物を含有する光記録媒体が報告されているが、これらの光学記録媒体に使用される化合物は、光学記録層の形成に用いられる光学記録材料としては、その吸収波長特性が必ずしも適合するものではなかった。
【0005】
また、特許文献3には衣料用光吸収剤が報告されており、光吸収剤として好適に用いられる化合物の例として、カルコン型構造を有する有機色素化合物が例示されているが、該カルコン型構造を有する有機色素化合物を光記録材料に用いることができる旨は記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−11511号公報
【特許文献2】特開2004−306306号公報
【特許文献3】特開2000−328039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、短波長記録光用の光学記録媒体の光学記録層の形成に適した光学記録材料及び該光学記録材料に好適な新規な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、検討を重ねた結果、特定のカルコン型化合物及び該カルコン型化合物を配位子とする特定の金属錯体が、短波長の記録光、特に320nm〜420nmのレーザ光により記録及び再生がなされる光学記録媒体の光学記録層の形成に適合することを知見した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記一般式(I)で表されるカルコン型化合物を少なくとも一種含有してなる光学記録材料を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0010】
【化1】

(式中、nは、0又は1であり、環A及び環Bは、それぞれ独立に、五員環又は六員環の複素環、芳香環又はメタロセン構造を表す。上記複素環及び上記芳香環は、他の環と縮合されていたり、置換されていたりしていてもよい。)
【0011】
また、本発明は、上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物を配位子として用いた金属錯体を含有してなる光学記録材料を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0012】
また、本発明は、基体上に、上記光学記録材料から形成された光学記録層を有することを特徴とする光学記録媒体を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0013】
また、本発明は、上記の光学記録材料として好適な下記一般式(III)で表されるカルコン型化合物を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記の光学記録材料として好適な下記一般式(VI)で表される金属錯体を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、短波長記録光用の光学記録媒体の光学記録層の形成に適したカルコン型化合物及び該化合物を配位子として用いた金属錯体並びにそれらを含有してなる光学記録材料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物を少なくとも一種含有してなる本発明の光学記録材料、上記カルコン型化合物を配位子として用いた金属錯体を含有してなる本発明の光学記録材料(以下、二者を合わせて本発明の光学記録材料ということもある)、本発明の光学記録媒体、本発明の新規カルコン型化合物及び新規金属錯体について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。尚、本発明に係るカルコン型化合物及びこれを配位子とする金属錯体には、エナンチオマー、ジアステレオマー又はラセミ体等の光学異性体が存在する場合があるが、本発明の光学記録材料においてはこれらの如何なる光学異性体を単離して用いても、あるいはそれらの混合物として用いてもよい。以降、特に触れることがない限り、本発明においては、このような光学異性体を区別するものではない。
【0017】
まず、上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物について説明する。
上記一般式(I)における環A及び環Bで表される五員環の複素環としては、例えば、ピロール環、ピラゾリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、イミダゾリジン環、オキサゾール環、イソキサゾール環、イソオキサゾリジン環、チアゾール環、イソチアゾリジン環等が挙げられ、環A及び環Bで表される六員環の複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルフォリン環、チオモルフォリン環、ユロリジン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等が挙げられる。環A及び環Bで表される、五員環又は六員環の複素環、及び芳香環は、他の環と縮合されていたり置換されていたりしていてもよく、例えば、キノリン環、イソキノリン環、インドール環、ユロリジン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェニルベンゼン環等が挙げられる。
また、環Bで表されるメタロセン構造としては、例えば、フェロセニル、ニッケロセニル、コバルトセニル等の構造が挙げられる。環Bがメタロセン構造である場合は、メタロセンの一方のシクロペンタジエン環に、カルボニル基が結合する。
【0018】
上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物の中でも、下記一般式(II)で表される構造を持つものが、光学記録材料としてより適正な光吸収特性を有するので好ましい。
【0019】
【化2】

(式中、環B、nは、一般式(I)と同じであり、環Cは、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、R16は、同一又は異なっていてもよく、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜30の複素環基を表し、X1は、酸素原子、硫黄原子又はN−Rdを表し、Y1は、NH又はC−Re(Rf)を表し、Rd、Re及びRfは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜30の複素環基を表し、tは0〜6の整数を表す。これらの炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基及び炭素原子数2〜30の複素環基はいずれも、置換基を有していてもよい。)
【0020】
また、上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物の中でも、下記一般式(III)で表される構造を持つものが、化学的、熱的に安定であり、しかも安価に製造できるので好ましい。
【0021】
【化3】

(式中、環B、環C、R16、Rd、Re、Rf、t、nは、上記一般式(II)と同じである。)
【0022】
また、上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物の中でも、下記一般式(IV)で表される構造を持つものは、金属と容易に配位することができるので有用である。
【0023】
【化4】

(式中、環C、R16、Rd、Re、Rf、t、nは、上記一般式(II)と同じであり、環B1は五員環又は六員環であり、GはCH又は窒素原子を表し、Jは酸素原子、硫黄原子、CH又はCH2を表す。)
【0024】
また、上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物の中でも、下記一般式(V)で表される構造を持つものは、金属と容易に配位することができ、更に金属と配位することで光学記録材料としてより適正な光吸収特性を得ることができるので有用である。
【0025】
【化5】

(式中、環C、R16、Rd、Re、Rf、t、nは、上記一般式(II)と同じであり、R15は、同一又は異なっていてもよく、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜30の複素環基を表し、これらの炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基及び炭素原子数2〜30の複素環基はいずれも、置換基を有していてもよい。sは、0〜4の整数を表す。)
【0026】
次に本発明に係る上記一般式(II)〜(V)で表されるカルコン型化合物の構造について説明する。
上記一般式(II)におけるR16は、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜30の複素環基を表す。上記炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロヘキシルプロピル、4−シクロヘキシルブチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノルボルニル等が挙げられ、上記炭素原子数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセン−1−イル、フェナントレン−1−イル、テトラセニル、ペンタセニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、ピセニル、ペリレニル等が挙げられ、上記炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられ、上記炭素原子数10〜30のメタロセニル基としては、例えば、フェロセニル、ニッケロセニル、コバルトセニル等が挙げられ、上記炭素数2〜30の複素環基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ユロリジル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等が挙げられ、上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。また、上記の炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基及び炭素原子数2〜30の複素環基はいずれも、置換基を有していてもよい。該置換基としては、以下のものが挙げられる。尚、R16全体の炭素原子数は、上記で規定された範囲を満たすものである。このような置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ、イソブトキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等の複素環基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基等が挙げられ、これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基及びスルホ基は塩を形成していてもよい。
【0027】
上記一般式(II)におけるX1は、酸素原子、硫黄原子又はN−Rdで表される基であり、Y1は、NH又はC−Re(Rf)を表される基であり、Rd、Re及びRfは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜30の複素環基を表す。
【0028】
上記のRd、Re及びRfで表される炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、炭素原子数2〜30の複素環基及びハロゲン原子としては、R16の説明で例示した基が挙げられ、炭素原子数2〜8のアルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、クロチル、ジメチルアリル、2−ペンテニル、2−ヘキセニル、2−ペプテニル、2−オクテニル等が挙げられる。また、上記の炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基及び炭素原子数2〜30の複素環基はいずれも、R16と同様に置換基を有していてもよい。該置換基としては、R16の説明で例示した基が挙げられる。Rd、Re及びRfが置換基を有する場合の全体の炭素原子数は、上記で規定された範囲を満たすものである。
【0029】
上記一般式(IV)における環B1は、5員環又は6員環であり、これらの環は全て炭素原子で構成されてもよく、複素環でもよい。炭素原子のみで構成されるものとしては、シクロペンタジエン環、ベンゼン環が挙げられ、五員環の複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、イミダゾリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、イソオキサゾリジン環、チアゾール環、イソチアゾリジン環等が挙げられ、六員環の複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルフォリン環、チオモルフォリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、ユロリジン環等が挙げられる。
【0030】
上記一般式(V)におけるR15は、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜30の複素環基を表す。上記炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基及び炭素原子数2〜30の複素環基としては、R16の説明で例示した基が挙げられ、これらの基はいずれも、置換基を有していてもよい。該置換基としては、R16の説明で例示した基が挙げられる。R15が置換基を有する場合の全体の炭素原子数は、上記で規定された範囲を満たすものである。
【0031】
本発明に係る上記一般式(I)〜(V)で表されるカルコン型化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜42が挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物は、いずれも、その製造方法は特に限定されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができる。該製造方法としては、例えばnが0の時は、下記[化9]に示されるルートの如く、該当する活性メチレン基を有する化合物と、該当する酸クロリド化合物との反応により合成する方法が挙げられる。
【0036】
【化9】

(式中、環A及び環Bは、それぞれ独立に、五員環又は六員環の複素環、芳香環又はメタロセン構造を表す。上記複素環及び上記芳香環は、他の環と縮合されていたり、置換されていたりしていてもよい。)
【0037】
また、nが1の時は、下記[化10]に示されるルートの如く、該当するアルデヒド化合物又はホルムアミド誘導体と、該当するケトン化合物との反応により合成する方法が挙げられる。
【0038】
【化10】

(式中、環A及び環Bは、それぞれ独立に、五員環又は六員環の複素環、芳香環又はメタロセン構造を表す。上記複素環及び上記芳香環は、他の環と縮合されていたり、置換されていたりしていてもよい。)
【0039】
本発明の光学記録材料としては、上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物の中でも、上記一般式(II)で表されるものが好ましく、上記一般式(II)で表されるものの中でも、上記一般式(III)で表されるものがより好ましく、上記一般式(III)で表されるものの中でも、上記一般式(IV)で表されるものがより一層好ましく、上記一般式(IV)で表されるものの中でも、上記一般式(V)で表されるものが最も好ましい。これらカルコン型化合物の中では、上記一般式(III)〜(V)で表されるものが新規化合物であり、上記化合物No.1〜No.9、No.11、No.13、No.16〜No.25、No.27〜No.40が該当する。
【0040】
次に上記カルコン型化合物を配位子として用いた金属錯体を含有してなる本発明の光学記録材料について説明する。
上記金属錯体は、上記一般式(I)〜(V)のいずれかで表されるカルコン型化合物を配位子として形成したものである。該金属錯体としては、金属原子に上記一般式(I)〜(V)で表される化合物の配位部分が少なくとも一つ配位したものであって、上記一般式(I)〜(V)で表される化合物中のカルボニル基における酸素原子と環A及び/又は環Bの金属結合性原子が金属原子に結合することにより少なくとも一つのキレート構造を形成しているものを指す。また、配位子が有する2つの配位部が別の金属に結合したものでもよい。
【0041】
上記説明のカルコン型化合物を配位させた金属錯体を光学記録層として使用したものは、光学記録層の耐光性が向上する利点がある。従って、光学記録材料としては、上記カルコン型化合物を配位子として用いた金属錯体を用いることが好ましい。これら金属錯体の中でも、上記一般式(V)で表されるカルコン型化合物を配位させた下記一般式(VI)で表される新規な金属錯体は、光吸収特性が光学記録材料として適正であるのでより好ましい。
【0042】
【化11】

(式中、環C、R16、Rd、Re、Rf、t及びnは、上記一般式(II)と同じであり、R15及びsは、上記一般式(V)と同じであり、Mは、周期表の2族元素、8族元素、9族元素、10族元素、11族元素、12族元素及び13族元素からなる群から選ばれるいずれかの金属原子を表し、M1/kは金属Mに同じ配位子がk個配位した構造であることを表し、kは2〜4の数を表し、Anq-は、q価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0043】
上記一般式(VI)において、Mで表される金属原子としては、銅、ニッケル、コバルト、鉄又はアルミニウム原子が、それから成る錯体を安価に製造でき、錯体の光吸収特性も良好なのでより好ましい。
【0044】
上記一般式(VI)において、Anq-で表されるアニオンとしては、例えば、一価のものとして、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リン酸アニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸アニオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸アニオン、特開2004−53799号公報に記載されたスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドアニオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドアニオン、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホネートアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン等が挙げられ、二価のものとしては、例えば、ベンゼンジスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャーアニオンやシクロペンタジエニル環にカルボキシル基やホスホン酸基、スルホン酸基等のアニオン性基を有するフェロセン、ルテノセン等のメタロセン化合物アニオン等も、必要に応じて用いることができる。
【0045】
上記のクエンチャーアニオンとしては、例えば、下記一般式(A)、(B)又は下記式(C)、(D)で表されるもの、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平5−305770号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平9−323478号公報、特開平10−45767号公報、特開平11−208118号公報、特開2000−168237号公報、特開2002−201373号公報、特開2002−206061号公報、特開2005−297407号公報、特公平7−96334号公報、国際公開98/29257号公報等に記載されたようなアニオンが挙げられる。
【0046】
【化12】

(式中、Mは、上記一般式(VI)と同じであり、R9及びR10は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は−SO2−G基を表し、Gは、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ピペリジノ基又はモルフォリノ基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0〜4の数を表す。また、R11、R12、R13及びR14は、各々独立にアルキル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基又はハロゲン化フェニル基を表す。)
【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
本発明に係る上記一般式(VI)で表される化合物の具体例としては、下記に示す化合物No.43〜58が挙げられる。
【0050】
【化15】

【0051】
【化16】

【0052】
【化17】

【0053】
上記一般式(VI)で表されるもののほかの金属錯体の具体例としては、下記に示す化合物No.59〜64が挙げられる。
【0054】
【化18】

【0055】
本発明に係る上記一般式(I)〜(V)のいずれかで表されるカルコン型化合物を配位子として用いた金属錯体は、その製造方法により特に制限を受けることはない。例えば、該当する配位子であるカルコン型化合物と金属化合物とのキレート化反応により合成する方法が挙げられる。
【0056】
上記キレート化反応に用いられる金属塩化合物としては、例えば、ハロゲン化金属塩、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機金属塩;酢酸塩等の有機酸金属塩;メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等の低級金属アルコキシド;アセチルアセトン塩、EDTA塩等のキレート錯体等が挙げられる。また、キレート化反応には、必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、リチウムアミド、有機アミン化合物等の塩基性化合物を反応剤として用いてもよい。
【0057】
本発明の光学記録材料は、上記一般式(I)〜(V)のいずれかで表されるカルコン型化合物を少なくとも一種、あるいはこれらを配位子として用いた金属錯体を含有してなり、これら化合物、あるいは該化合物と後述する有機溶媒や各種化合物との混合物として用いられる。このような本発明の光学記録材料を用いて光学記録媒体の光学記録層を形成する方法については、特に制限を受けない。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に、上記カルコン型化合物あるいは金属錯体及び必要に応じて後述の各種化合物を溶解して溶液状の光学記録材料を作成し、該光学記録材料を基体上にスピンコート、スプレー、ディッピング等で塗布する湿式塗布法が用いられる。その他の方法としては蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。上記有機溶媒を使用する場合、その使用量は、本発明の光学記録材料中における上記カルコン型化合物あるいは金属錯体の含有量が0.1〜10質量%となる量にするのが好ましい。
【0058】
上記光学記録層は薄膜として形成され、その厚さは、通常、0.001〜10μmが適当であり、好ましくは0.01〜5μmの範囲である。
また、上記光学記録層は、光学記録層中に上記一般式(I)〜(V)のいずれかで表されるカルコン型化合物あるいはこれらを配位子とする金属錯体を10〜100重量%含有するように形成されることが好ましく、特に50〜100質量%含有するように形成されることが好ましい。このようなカルコン型化合物あるいは金属錯体含有量の光学記録層を形成するために、本発明の光学記録材料は、本発明の上記一般式(I)〜(V)のいずれかで表されるカルコン型化合物あるいはこれらを配位子とする金属錯体を、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で50〜100質量%含有するのが好ましい。
【0059】
また、上記光学記録層は、上記一般式(I)〜(V)で表されるカルコン型化合物あるいはその金属錯体のほかに、必要に応じて、シアニン系化合物、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、スクアリリウム化合物等の光学記録層に用いられる化合物;ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類を含有してもよく、また、界面活性剤;帯電防止剤;滑剤;難燃剤;ヒンダードアミン等のラジカル捕捉剤;フェロセン誘導体等のピット形成促進剤;分散剤;酸化防止剤;架橋剤;耐光性付与剤等を含有してもよい。さらに、上記記録層は、一重項酸素等のクエンチャーとして芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属ジチオールキレート化合物等を含有してもよい。
これらの各種化合物は、光学記録層中における含有量が合計で好ましくは0〜50質量%の範囲で使用される。そのためには、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で0〜50質量%とするのが好ましい。
【0060】
このような光学記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み(記録)光および読み出し(再生)光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの樹脂、ガラスなどが用いられる。また、その形状は、用途に応じ、テープ、ドラム、ベルト、ディスク等の任意の形状のものを使用できる。
【0061】
また、上記光学記録層上には、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて蒸着法あるいはスパッタリング法により反射膜を形成することもできるし、スパッタリング法により誘電体層を片面又は両面に形成することもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂等により保護層を片面又は両面に形成することもできる。
【0062】
本発明の光学記録材料は、記録、再生に半導体レーザを用いる光学記録媒体に好適であり、特に高速記録タイプのCD−R、DVD±R、HD−DVD―R、BD−R等の公知の単層式、二層式、多層式光ディスクに好適である。
【0063】
上述の通り、上記一般式(III)で表される本発明の新規カルコン型化合物は、光学記録材料として好ましく用いられる他、光学フィルター等にも用いられる。
また、上記一般式(VI)で表される本発明の新規金属錯体は、光学記録材料として好ましく用いられる他、光学フィルター等にも用いられる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例、比較例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
下記製造例1〜10は、本発明のカルコン型化合物である化合物No.1〜No.8、No.22及びNo.30の製造例を示し、下記製造例11〜25は、該化合物No.1〜No.6を配位子とする本発明の金属錯体である化合物No.43〜No.57の製造例を示す。
また、下記実施例1〜19は、製造例1〜8で得られた化合物No.1〜No.8又は製造例14〜24で得られた化合物No.46〜No.56を含有する本発明の光学記録材料の調製並びに該光学記録材料を用いた本発明の光学記録媒体No.1〜No.19の製造例を示す。
【0065】
下記比較例1は、本発明の化合物とは異なる構造を持つカルコン型化合物を用いた比較光学記録材料の調製及び該比較光学記録材料を用いた比較光学記録媒体No.1の製造例を示す。
【0066】
下記評価例1−1〜1−19及び比較評価例1−1では、実施例1〜19で得られた光学記録媒体No.1〜19、並びに比較例1で得られた比較光学記録媒体No.1について、短波長レーザによる記録の適否をUV吸収スペクトルの測定により評価を行った。それらの結果を〔表7〕に示す。
また、下記評価例2−1〜2−9及び比較評価例2−1では、実施例9〜11,13及び15〜19で得られた光学記録媒体No.9〜11,13及び15〜19、並びに比較例1で得られた比較光学記録媒体No.1についての耐光性を、UV吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)における吸光度残存率の測定により評価を行った。それらの結果を〔表8〕に示す。
【0067】
〔製造例1〜10〕カルコン型化合物の製造
以下に示す合成方法1〜3を用いて、化合物No.1〜No.8、No.22及びNo.30を合成した。得られた化合物についての収率及び分析結果(λmax、融点、分解点、IR吸収スペクトル、1H−NMR)を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
なお、〔表1〕において、分解点は10℃/分の昇温速度における示差熱分析の質量減少開始温度である。
【0068】
(合成方法1)化合物No.1〜No.8の合成
インドレニン四級塩30mmol、ピコリン酸クロリド塩酸塩33mmol及び1,2−ジクロロエタン47gを仕込み、0℃でトリエチルアミン90mmolを滴下し、室温で17時間撹拌した。1N塩酸15mlを滴下後、水酸化カリウムの50%水溶液を塩基性になるまで加え、油層を分離した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製し、メタノールから再結晶を行い、目的物であるカルコン型化合物を得た。
【0069】
(合成方法2)化合物No.22の合成
インドレニンアルデヒド30mmol、メチルピリジルケトン33mmol及びエタノール47gを仕込み、0℃でトリエチルアミン90mmolを滴下し、100℃で17時間撹拌した。1N塩酸15mlを滴下後、水酸化カリウムの50%水溶液を塩基性になるまで加え、油層を分離した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製し、メタノールから再結晶を行い、目的物であるカルコン型化合物を得た。
【0070】
(合成方法3)化合物No.30の合成
<ステップ1>四級塩の製造
窒素置換した反応フラスコに、2−ナフチルヒドラジン0.500モル及びエタノール275gを仕込み、窒素気流下、55℃で4−フェニルブタン−2−オン0.600molを滴下した。30分撹拌した後、発熱に注意しながら硫酸0.5molを滴下して、1時間還流した。冷却後にトルエン1000g及び水1000gを加え、続いて50%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを8以上にして油水分離を行った。油層を温水500gで3回洗浄し、脱水、脱溶媒を行った。トルエン137gから再結晶を行い、乾燥を行い、粗結晶を得た。得られた粗結晶にヨウ化メチル0.200mol及びメタノール20gを加え、オートクレーブ中100℃で15時間反応させた。脱溶媒後、酢酸エチル100g/メタノール6.00gの混合溶媒から再結晶した。乾燥を行い、目的物の粗結晶をそれぞれ得た。
【0071】
<ステップ2>化合物No.30の製造
窒素置換した反応フラスコに、ステップ1で得られた四級塩0.02mol、ピリジン0.04mol及び酸無水物0.2molを仕込み、50℃で1〜20間撹拌した。クロロホルム20g及び水20gを加えて油水分離を行い、脱溶媒、酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒から再結晶を行い、目的物であるカルコン型化合物を得た。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
〔製造例11〜25〕化合物No.43〜No.57(金属錯体)の製造
以下に示す合成方法を用いて、化合物No.43〜No.57を合成した。得られた化合物についての収率及び分析結果(分解点、IR吸収スペクトル、元素分析)を〔表4〕〜〔表6〕に示す。
なお、〔表4〕において、分解点は10℃/分の昇温速度における示差熱分析の質量減少開始温度である。
【0076】
(合成方法)化合物No.43〜No.57の合成
製造例1〜6又は製造例9で得られた化合物No.1〜No.6又はNo.22の4mmol過塩素酸金属塩の水和物又は金属塩化物4mmol及びメタノール30gを仕込み、60℃で3時間撹拌した。析出物をろ別し、メタノールで洗浄を行ない、目的物である金属錯体を得た。
【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

【0080】
〔実施例1〜19〕光学記録材料の調製及び光学記録媒体の製造
上記の製造例1〜8で得たカルコン型化合物及び上記製造例14〜24で得た金属錯体それぞれを、カルコン型化合物又は金属錯体の濃度が濃度1.0質量%となるように2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液に溶解して、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液として実施例1〜24の光学記録材料をそれぞれ得た。チタンキレート化合物(T−50:日本曹達社製)を塗布、加水分解して下地層(0.01μm)を設けた直径12cmのポリカーボネートディスク基板上に、上記の光学記録材料をスピンコーティング法にて塗布して、厚さ100nmの光学記録層を形成し光学記録媒体をそれぞれ得た。
【0081】
〔比較例1〕
カルコン型化合物として下記比較化合物No.1を用いた以外は上記実施例1〜19と同様にして、比較光学記録材料を調製し、該比較光学記録材料を用いて比較光学記録媒体を得た。
【0082】
【化19】

【0083】
〔評価例1〕
実施例1〜19の光学記録媒体及び比較例1の比較光学記録媒体について、UVスペクトル吸収を測定した。結果を〔表7〕に記す。なお、〔表7〕において、405nmの吸光度比は、UVスペクトルのλmaxにおける吸光度に対する相対値である。
【0084】
【表7】

【0085】
光ディスクに代表される光学記録媒体では、UVスペクトルにおいて、レーザ光の波長に近いところで適度な吸収を示すものが好ましく、λmaxに対する吸光度比が5〜70%であるのが好ましく、10〜60%であるのがさらに好ましい。吸光度比が5%であると、十分な感度や変調度が得られず、吸光度比が70%以上であると、適度な反射率が得られなかったり再生光による劣化がおこったりする可能性がある。
本発明の光学記録材料により形成された光学記録層を有する光学記録材媒体では、λmaxに対する吸光度比が30〜60%であり、短波長レーザ用光ディスク等の405nmのレーザ光を用いる光学記録媒体の光学記録材料として好適であることが確認できた。
【0086】
〔評価例2〕耐光性評価
実施例9〜11,13,15〜19及び比較例1の光学記録媒体について、耐光性評価を行なった。評価は、該光学記録媒体に55000ルクスの光を照射し、100時間照射した後、照射前のUV吸収スペクトルのλmaxでの吸光度残率を測定することにより行なった。結果を〔表8〕に示す。
【0087】
【表8】

【0088】
〔表8〕から明らかなように、本発明の光学記録材料は高い耐光性を有しており、光学記録媒体の光学記録層の形成に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるカルコン型化合物を少なくとも一種含有してなる光学記録材料。
【化1】

(式中、環Aは、五員環又は六員環の複素環又は芳香環を表し、環Bは、五員環又は六員環の複素環、芳香環又はメタロセン構造を表す。上記複素環及び上記芳香環は、他の環と縮合されていたり、置換されていたりしていてもよい。nは、0又は1である。)
【請求項2】
上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物が、下記一般式(II)で表されるものである請求項1に記載の光学記録材料。
【化2】

(式中、環B、nは、一般式(I)と同じであり、環Cは、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、R16は、同一又は異なっていてもよく、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜30の複素環基を表し、X1は、酸素原子、硫黄原子又はN−Rdを表し、Y1は、NH又はC−Re(Rf)を表し、Rd、Re及びRfは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜30の複素環基を表し、tは0〜6の整数を表す。これらの炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基及び炭素原子数2〜30の複素環基はいずれも、置換基を有していてもよい。)
【請求項3】
上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物が、下記一般式(III)で表されるものである請求項1に記載の光学記録材料。
【化3】

(式中、環B、環C、R16、Rd、Re、Rf、t、nは、上記一般式(II)と同じである。)
【請求項4】
上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物が、下記一般式(IV)で表されるものである請求項1に記載の光学記録材料。
【化4】

(式中、環C、R16、Rd、Re、Rf、t、nは、上記一般式(II)と同じであり、環B1は五員環又は六員環であり、GはCH又は窒素原子を表し、Jは酸素原子、硫黄原子、CH又はCH2を表す。)
【請求項5】
上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物が、下記一般式(V)で表されるものである請求項1に記載の光学記録材料。
【化5】

(式中、環C、R16、Rd、Re、Rf、t、nは、上記一般式(II)と同じであり、R15は、同一又は異なっていてもよく、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜30の複素環基を表し、これらの炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数10〜30のメタロセニル基及び炭素原子数2〜30の複素環基はいずれも、置換基を有していてもよい。sは、0〜4の整数を表す。)
【請求項6】
上記一般式(I)で表されるカルコン型化合物を配位子として用いた金属錯体を含有してなる光学記録材料。
【請求項7】
上記金属錯体が下記一般式(VI)で表される金属錯体である請求項6に記載の光学記録材料。
【化6】

(式中、環C、R16、Rd、Re、Rf、t及びnは、上記一般式(II)と同じであり、R15及びsは、上記一般式(V)と同じであり、Mは、周期表の2族元素、8族元素、9族元素、10族元素、11族元素、12族元素及び13族元素からなる群から選ばれるいずれかの金属原子を表し、M1/kは金属Mに同じ配位子がk個配位した構造であることを表し、kは2〜4の数を表し、Anq-は、q価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【請求項8】
上記金属錯体を構成する金属原子が、銅、ニッケル、コバルト、鉄又はアルミニウムから選ばれるものである請求項6又は7に記載の光学記録材料。
【請求項9】
上記一般式(I)〜(V)のいずれかで表されるカルコン型化合物を光学記録材料に含まれる固形分基準で50〜100質量%含有してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学記録材料。
【請求項10】
上記一般式(VI)で表される金属錯体を光学記録材料に含まれる固形分基準で50〜100質量%含有してなる請求項7に記載の光学記録材料。
【請求項11】
基体上に、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学記録材料から形成された光学記録層を有することを特徴とする光学記録媒体。
【請求項12】
上記一般式(III)で表されるカルコン型化合物。
【請求項13】
上記一般式(VI)で表される金属錯体。

【公開番号】特開2012−232599(P2012−232599A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182418(P2012−182418)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【分割の表示】特願2008−513205(P2008−513205)の分割
【原出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】