説明

カルシウムチャネルブロッカーとしてのジアリールアミン誘導体

式(1)のN-ジアリールアミノアルキル置換されたピペラジン/4-アミノピペリジン化合物が明らかにされている(式中、AおよびBは各々独立して、6員の芳香族もしくは非芳香族、炭素環式もしくは複素環式部分であるか、またはアミノアルキルであり、ならびにここでひとつおよび唯一のAおよびBは、Hもしくはアルキル(1-8C)であってよく、またはここでAおよびBは一緒に置換されていてもよい6員の芳香族もしくは非芳香族、炭素環式もしくは複素環式部分を形成し;R1は、Hまたはアルキル(1-8C)であり;Zは、NまたはCHNR2であり、ここでR2は、Hまたはアルキル(1-8C)であり;Xは、直鎖アルキレン(1-4C)であり、ここで窒素に隣接した少なくとも1個の炭素は、任意にC=Oの形であってもよく;各R3は、独立した置換基であり;n=0〜2;Arは、6員の芳香族またはヘテロ芳香族環であり;ここで式 (1)のAまたはBおよび各Ar部分に含まれる各環式部分は、1種または複数の置換基により置換されてよい。)。これらの化合物およびそれらの塩または複合体は、N型およびT型カルシウムチャネルをブロックすることができ、慢性疼痛のような、カルシウムイオンチャネル活性により媒介される状態を治療するのに有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、カルシウムチャネル機能に関連した状態を治療するのに有用な化合物に関連している。より詳細に述べると、本発明は、脳卒中および疼痛などの状態の治療に有用である、6員の複素環式部分の置換または未置換のジアリールアミンアミン誘導体を含む化合物に関する。なお、本出願は、2004年4月9日に出願された米国特許出願第10/821,584号の優先権を請求する、2004年8月27日に出願された米国特許出願第10/928,564号の優先権を請求するものであり、その全体が本明細書に参照として組入れられている。
【背景技術】
【0002】
背景技術
電位依存性カルシウムチャネルを通る細胞へのカルシウム流入は、興奮-収縮連関、ホルモン分泌および遺伝子発現を含む、多種多様な細胞反応および生理的反応を媒介している(Miller, 1987; Augustine, et al, 1987)。神経細胞において、カルシウムチャネルは、直接膜電位に作用し、興奮性、反復発火様式およびペースメーカー活性のような電気的特性に貢献する。カルシウム流入は更に、カルシウム依存型イオンチャネルの直接的調節により、ならびにプロテインキナーゼCおよびカルモジュリン依存型プロテインキナーゼIIなどの、カルシウム依存型酵素の活性の変調により、神経細胞機能に影響する。シナプス前神経末端のカルシウム濃度の上昇は、神経伝達物質の放出およびカルシウムチャネルの引金を引き、これは更に神経細胞発達における神経突起伸長および成長錐移動に影響を及ぼす。
【0003】
カルシウムチャネルは、様々な正常な生理的機能を媒介し、更に多くのヒト障害に関与している。カルシウム媒介型ヒト障害の例は、先天性片頭痛、小脳性運動失調、狭心症、てんかん、高血圧、虚血、および一部の不整脈を含むが、これらに限定されるものではない。これらの障害の一部の臨床治療は、治療用カルシウムチャネルアンタゴニスト(例えば、ジヒドロピリジン、フェニルアルキルアミン、およびベンゾジアゼピン、全てL型カルシウムチャネルを標的とする)の開発により支援されている(Janis and Triggle, 1991)。
【0004】
天然のカルシウムチャネルは、それらの電気生理学的特性および薬理学的特性によりT、L、N、P/QおよびR型に分類される(Catterall, 2000;Huguenard 1996で総説)。T型(または、低電位活性型)チャネルは、負電位で一過性に活性化し、および静止電位の変化に対し高感度である分子の広いクラスを説明する。
【0005】
L、NおよびP/Q型チャネルは、より正の電位で活性化し(高電位活性化型)、および多様な速度論および電位依存特性を示す(Catterall, 2000;Huguenard 1996)。L型チャネルは、ジヒドロピリジン(DHP)、フェニルアルキルアミンおよびベンゾチアゼピンを含む治療に使用される小型有機分子のいくつかの種類に対するそれらの感度により識別することができる。対照的に、N型およびP/Q型チャネルは、毒蜘蛛(venous spider)およびウミカタツムリ(marine snail)により産生されるある種のペプチド毒素の高親和性標的であり:N型チャネルは、アンボイナ(Conus geographus)から単離されたω-コノペプチドω-コノトキシンGVIA(ω-CTx-GVIA)、およびヤキイモ(Conus magus)から単離されたω-コノトキシンMVIIA(ω-CTx-MVIIA)によりブロックされるのに対し、P/Q型チャネルは、ω-CTx-MVIIAに対し抵抗性があるが、ジョウゴグモペプチドであるω-アガトキシンIVA(ω-Aga-IVA)に対しては感度がある。R型カルシウムチャネルは、タランチュラ毒素SNX-482によるブロックに対し感度がある。
【0006】
神経細胞の高電位活性型カルシウムチャネルは、確定された薬理学的物質の標的である巨大な(>200kDa)細孔形成α1サブユニット、このα1サブユニットと密に結合しおよびチャネルの生物物理学的特性を変調する、細胞質に局在化した〜50kDa-70kDaのβサブユニット、ならびに〜170kDaのα2δサブユニットにより構成される(Stea, et al, 1994; Catterall, 2000で総説)。分子レベルで、神経系で発現された9種の異なるα1サブユニット遺伝子が同定されており、天然のカルシウム電流の主なクラスの全てをコードしていることが示されている(表1)。
【0007】
表1 神経細胞カルシウムチャネルの分類

【0008】
カルシウムチャネルは、ニューロパシー痛に関連した神経細胞の感作プロセスの発達および維持を媒介することが示されており、鎮痛薬の開発の魅力的標的を提供している(Vanegas and Schaible, 2000において総説)。高閾値型Caチャネルは全て、脊髄において発現され、急性侵害受容におけるL、NおよびP/Q型の寄与は、現在研究中である。対照的に、より慢性的疼痛状態におけるこれらのチャネルの機能的役割の試験は、N型チャネルの病態生理学的役割を強力に示唆している(Vanegas & Schaible, 2000において総説)。
【0009】
動物のカルシウムチャネルα1サブユニット遺伝子の突然変異は、疼痛介入に関する潜在的な治療用標的の重要な手掛かりを提供することができる。α1B N型カルシウムチャネル遺伝子についてヌルに遺伝的に変更されたマウスが、いくつかの独立したグループで報告されている(Ino, et al, 2001;Kim, et al, 2001;Saegusa, et al, 2001;Hatakeyama, et al, 2001)。α1B N型ヌルマウスは、生存し、繁殖力があり、および通常の運動協調を示す。ひとつの研究において、N型遺伝子ノックアウトマウスにおける末梢体温、血圧および心拍数は、全て正常であった(Saegusa, et al, 2001)。別の研究において、交感神経系により媒介された圧反射は、両側性頸動脈閉塞後低下した(Ino, et al, 2001)。別の研究において、マウスは、他の行動変化について試験され、著しく低い不安に関連した行動を示す以外は正常であることがわかり(Saegusa, et al, 2001)、このことはN型チャネルは、疼痛に加え情動障害の潜在的な標的であることを示唆している。全ての研究において、機能性N型チャネルを欠いたマウスは、慢性および炎症性の疼痛反応の顕著な低下を示した。対照的に、N型チャネルを欠いたマウスは一般に、正常な急性侵害受容反応を示した。
【0010】
FDA承認のまたは治験中のN型チャネルに作用する薬物のふたつの例は、ガバペンチンおよびジコノチドである。ガバペンチンは、1-(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸(Neurontin(登録商標))であり、これは多くの動物の痙攣モデルにおいて活性があることが当初判明した抗痙攣薬である(Taylor, et al, 1998)。その後の研究は、ガバペンチンは、慢性狭窄損傷(CCI)、心痛覚過敏、炎症、糖尿病ニューロパシー、術後疼痛に関連した静的および動的機械的異痛(mechanoallodynia)を含む、多くの様々な動物疼痛モデルにおいて痛覚過敏をうまく予防することを明らかにしている(Taylor, et al, 1998;Cesena & Calcutt, 1999;Field, et al, 1999;Cheng, J-K., et al, 2000;Nicholson, 2000)。
【0011】
ガバペンチンの作用機序は完全にはわかっていないが、現在の証拠は、ガバペンチンは、多くの神経細胞系においてGABA受容体とは直接相互作用せず、むしろ高閾値カルシウムチャネルの活性を変調することを示唆している。ガバペンチンは、カルシウムチャネルα2δ補助サブユニットに結合することが示されているが、この相互作用がニューロパシー痛におけるその治療的作用を説明するかどうかは依然決定されていない。
【0012】
ヒトにおいて、ガバペンチンは、広範なニューロパシー痛状態に対する臨床的に有効な抗痛覚過敏活性を示す。多くのオープンラベル症例研究および3種の大規模二重盲検試験は、ガバペンチンが疼痛治療において有用であることを示唆している。投与量範囲300〜2400mg/日が、糖尿病性ニューロパシー(Backonja, et al, 1998)、ヘルペス後神経痛(Rowbotham, et al, 1998)、三叉神経痛、片頭痛ならびに癌および多発性硬化症に関連した疼痛(Di Trapini, et al, 2000;Caraceni, et al, 1999;Houtchens, et al, 1997;同じく、Magnus, 1999;Laird & Gidal, 2000;Nicholson, 2000参照)の治療において研究された。
【0013】
ジコノチド(Prialt(登録商標);SNX-111)は、イモガイペプチドであるヤキイモMVIIAに由来する合成鎮痛薬であり、N型カルシウムチャネルを可逆的にブロックすることが示されている。様々な動物モデルにおいて、ジコノチド髄内投与によるN型チャネルの選択的ブロックは、ホルマリン2相反応、温熱痛覚過敏、機械的異痛、および術後疼痛を著しく抑制する(Malmberg and Yaksh, 1994;Bowersox, et al, 1996;Sluka, 1998;Wang, et al, 1998)。
【0014】
ジコノチドは、ヘルペス後神経痛、幻肢痛、HIV関連ニューロパシー痛および難治癌の疼痛を含む、様々な状態の治療のための髄内投与で、多くの臨床試験において評価されつつある(Mathur, 2000において総説)。髄内アヘン製剤に反応しない患者での第II相および第III相臨床試験において、ジコノチドは、疼痛スコアを有意に低下し、および多くの特異例において数年に渡り続く疼痛の緩和を生じた。ジコノチドは、重症の術後疼痛の管理に加え、脳卒中および重症頭部外傷後の脳損傷についても試験されている(Heading, 1999)。ふたつの症例研究において、ジコノチドは更に、バコルフェンおよびモルヒネに反応しない患者における脊髄損傷後の難治痙縮の管理において、実用的であることが試験されている(Ridgeway, et al, 2000)。一例において、ジコノチドは、痙縮を重症範囲から軽症範囲へ、無症へと軽減し、副作用はほとんどなかった。別の患者においても、ジコノチドは、痙縮を軽症範囲へと軽減したが、必要な用量で、記憶喪失、錯乱および鎮静を含む著しい副作用により、治療の継続が妨害された。
【0015】
T型カルシウムチャネルは、様々な医学的状態に関連している。α1Gサブユニットを発現する遺伝子を欠いているマウスにおいて、欠伸発作に対する抵抗が認められた(Kim, et al., 2001)。別の研究も、てんかんの発症にα1Hサブユニットを関連づけた(Su, et al, 2002)。エトスキシミドのような一部の現存する抗痙攣薬は、T型チャネルのブロックにより機能することの強力な証拠が存在する(Gomora, et al., 2001)。
【0016】
低電位活性化型カルシウムチャネルは、心臓血管系の組織において高度に発現される。ミベフラジルは、L型よりもT型チャネルに10倍〜30倍の選択性があるカルシウムチャネルブロッカーであるが、これは高血圧および狭心症における使用が承認された。これは、他の薬物との相互作用のために、販売後短期間で市場から回収された(Heady, et al., 2001)。
【0017】
T型カルシウムチャネルも、疼痛に関連していることを示唆する証拠が増えつつある。ミベフラジルおよびエトスキシミドの両方は、ラットのニューロパシー痛の脊髄神経結紮モデルにおいて、抗痛覚過敏活性を示した。
【0018】
米国特許第6,011,035号;第6,294,533号;第6,310,059号;および、第6,492,375号;PCT国際公開公報第01375号および国際公開公報第01/45709号;PCT CA 99/00612、PCT CA 00/01586;PCT CA 00/01558;PCT CA 00/01557;PCT CA 2004/000535;および、PCT CA 2004/000539を基にしたPCT公開、ならびに、2003年12月23日に出願された米国特許出願第10/746,932号;2003年12月23日に出願された米国特許出願第10/746,933号;2003年4月8日に出願された米国特許出願第10/409,793号;2003年4月8日に出願された米国特許出願第10/409,868号;2003年9月3日に出願された米国特許出願第10/655,393号;2004年4月9日に出願された米国特許出願第10/821,584号;ならびに、2004年4月9日に出願された米国特許出願第10/821,389号は、ピペリジンまたはピペラジン環が、様々な芳香族部分により置換されている、カルシウムチャネルブロッカーを開示している。これらの出願および公開は、本明細書に参照として組入れられている。
【0019】
米国特許第5,646,149号は、式A-Y-B(式中、Bは、直接Yに結合したピペラジンまたはピペリジン環を含む。)のカルシウムチャネルアンタゴニストを開示している。これらの分子の必須成分は、Aにより表され、これは酸化防止剤でなければならず;ピペラジンまたはピペリジンそれ自身は、重要であると説明されている。例証的化合物は、公知のカルシウムチャネルブロッカー(下記参照)を基に、ベンズヒドリル置換基を含む。米国特許第5,703,071号は、虚血性疾患の治療において有用であると説明される化合物を開示している。この分子の必須部分は、トロポロン残基であり、それらのベンズヒドリル誘導体を含むピペラジン誘導体のような置換基を伴う。米国特許第5,428,038号は、神経保護および抗アレルギー作用を示すことが指摘されている化合物を開示している。これらの化合物は、ピペラジン誘導体および他の6員ヘテロ環を含むことができる、クマリン誘導体である。このヘテロ環上の可能な置換基は、ジフェニルヒドロキシメチルである。従って、カルシウムチャネルブロック活性が関連し得る様々な適応症に関する当該技術分野における取組みは、偶然にも、ベンズヒドリルで置換されたピペリジンまたはピペラジン部分を含むが、機能性の維持のためには追加の置換基が支配している化合物を使用している。
【0020】
ベンズヒドリル部分およびピペリジンまたはピペラジンの両方を含むある化合物は、カルシウムチャネルアンタゴニストおよび神経遮断薬であることが知られている。例えば、Gould, R.J., et al., Proc Natl Acad Sci USA (1983) 80:5122-5125は、リドフラジン、フルスピリレン、ピモジド、クロピモジドおよびペンフルリドールのような、抗精神分裂病性神経遮断薬を説明している。フルスピリレンは、L型カルシウムチャネル上の部位へ結合すること(King, V. K., et al, J Biol Chem, (1989) 264:5633-5641)、更にはN型カルシウム電流をブロックすること(Grantham, C. J., et al, Brit J Pharmacol, (1944) 111 :483-488)も示されている。加えて、Kanebo KKにより開発されたロメリジンは、公知のカルシウムチャネルブロッカーである。しかしロメリジンは、N型チャネルに特異的ではない。ロメリジンに関する文献の総説は、Dooley, D., Current Opinion in CPNS Investigational Drugs (1999) 1:116-125に認められる。
【0021】
前記文献は便宜上の列記であり、先行技術として構成されるものではない。
【発明の開示】
【0022】
発明の開示
本発明は、脳卒中、不安、過活動膀胱、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、間質性大腸炎、頭部外傷、片頭痛、慢性、ニューロパシー性および急性の疼痛、薬物およびアルコール中毒、神経変性障害、精神病、睡眠障害、鬱病、てんかん、糖尿病、癌、男性避妊、高血圧、肺高血圧症、心不整脈、うっ血性心不全、狭心症およびシナプスカルシウムチャネル媒介機能を含むカルシウム代謝に関連した他の適応症などの状態を治療するのに有用な化合物に関する。本発明の化合物は、その化合物のカルシウムチャネルブロック活性を増強する置換基を伴う、ピペラジンまたはアミノピペリジンのジアリールアミノ誘導体である。従ってひとつの局面において、本発明は、下記式の化合物:

および、それらの塩または複合体に関する;
式中、AおよびBは各々独立して、6員の芳香族もしくは非芳香族、炭素環式もしくは複素環式部分であるか、またはアミノアルキルであり、ならびにここでひとつおよび唯一のAおよびBは、Hもしくはアルキル(1-8C)であってよく、またはここでAおよびBは一緒に置換されていてもよい6員の芳香族もしくは非芳香族、炭素環式もしくは複素環式部分を形成し;
R1は、Hまたはアルキル(1-8C)であり;
Zは、NまたはCHNR2であり、ここでR2は、Hまたはアルキル(1-8C)であり;
Xは、直鎖アルキレン(1-4C)であり、ここで窒素に隣接した少なくとも1個の炭素は、任意にC=Oの形であってもよく;
各R3は、独立して、=0、アルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、ハロ、CHF2、CF3、OCHF2、OCF3、CN、NO2、NR2、OR、SR、COR、COOR、CONR2、NROCR、0OCR、SOR、SO2R、SO3R、SONR2、SO2NR2、NRSOR、またはNRSO2Rからなる群より選択される置換基であり、ここでRは、Hまたはアルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、アリールおよびアルキルアリールであり、ならびにここで隣接する炭素上の2個の置換基は、置換されていてもよい5〜7員環を形成してもよく;
n=0〜2、および
Arは、6員の芳香族またはヘテロ芳香族環であり;
ここで式(1)のAまたはBおよび各Ar部分に含まれる各環式部分は、=0(非芳香族環式部分において)、アルキル(1-6C)、ハロ、CHF2、CF3、OCHF2、OCF3、NO2、NR2、OR、SR、COR、COOR、CONR2、NROCR、0OCR、SOR、SO2R、SO3R、SONR2、SO2NR2、NRSOR、およびNRSO2Rからなる群より選択される1個または複数の置換基により置換されてもよく、ここでRは、Hまたはアルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、アリールまたはアルキルアリールであり、ならびにここで隣接する2個の置換基は、5〜7員環を形成してもよく、ならびに
ここで先に列記された任意のアルキル、環式またはアリール基は、それ自身=0、ハロ、CHF2、CF3、OCHF2、OCF3、NO2、NR2、OR、SR、COR、COOR、CONR2、NROCR、0OCR、SOR、SO2R、SO3R、SONR2、SO2NR2、NRSOR、またはNRSO2Rにより置換されてもよく、ならびにここでRは、Hまたはアルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、アリールまたはアルキルアリールである。
【0023】
本発明は、式(1)の化合物を使用し、カルシウムチャネル活性、好ましくはN型およびT型チャネル活性を変調する方法、従って、ある望ましくない生理的状態を治療する方法に関し;これらの状態は、カルシウムチャネル活性に関連している。別の局面において、本発明は、これらの化合物を含有する薬学的組成物、ならびに脳卒中、不安、過活動膀胱、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、間質性大腸炎、頭部外傷、片頭痛、慢性、ニューロパシー性および急性の疼痛、薬物およびアルコール中毒、神経変性障害、精神病、睡眠障害、鬱病、てんかん、糖尿病、癌、男性避妊、高血圧、肺高血圧症、心不整脈、うっ血性心不全および狭心症を含む、カルシウムチャネル活性の変調が必要な状態の治療のために薬剤を調製するためのこれらの化合物の使用に関する。
【0024】
発明の実施態様
本発明の方法において有用な式(1)の化合物は、N型および/またはT型カルシウムチャネルの活性を変調するそれらの能力により、それらの望ましい作用を発揮する。このことは、これらをある状態の治療に有用なものにしている。アンタゴニスト活性が望ましいこのような状態の中には、脳卒中、不安、てんかん、頭部外傷、片頭痛、炎症性腸疾患、過活動膀胱、過敏性腸症候群、間質性大腸炎、ならびに慢性、ニューロパシー性および急性の疼痛がある。カルシウムフラックスも、精神分裂病、不安、鬱病、他の精神病、神経変性障害、ならびに薬物およびアルコール中毒および禁断症状などの、他の神経学的障害に関連している。その他の治療可能な状態は、高血圧、肺高血圧、うっ血性心不全、狭心症、例えば心房細動および心室細動などの心不整脈のような心臓血管状態を含む。加えてT型カルシウムチャネルは、ある種の癌、糖尿病、男性避妊、睡眠障害および性的機能不全に関連している。
【0025】
慢性疼痛は、癌疼痛、骨関節炎、関節リウマチおよび線維筋痛に関連した炎症痛状態、ならびにニューロパシー痛を含むことができる。ニューロパシー痛は、糖尿病性末梢ニューロパシー、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、癌疼痛およびAIDS関連ニューロパシーを含むが、これらに限定されるものではない。急性疼痛状態は、侵害受容性疼痛および術後疼痛を含むことができる。
【0026】
不安は、以下の状態を含むが、これらに限定されるものではない:全身の不安障害、社会的不安障害、パニック障害、強迫性障害、および外傷後ストレス症候群。
【0027】
神経変性障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、ニューロパシー、ハンチントン病および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む。
【0028】
式(1)の化合物は一般にこの活性を有するが、このクラスのカルシウムチャネル変調剤の利用可能性は、特定の障害のための化合物の微妙な選択を可能にしている。この種の化合物の利用可能性は、単にカルシウムチャネル活性により影響を受ける適応症における全身利用性の部類(genus)を提供するのみではなく、カルシウムチャネルの特定の型との特定の相互作用に関して探求および操作することができる多数の化合物も提供する。先に説明されたα1A1Iおよびα1S型の組換えにより作出されたカルシウムチャネルの利用可能性は、この選択プロセスを促進する。Dubel, S. J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89:5058-5062;Fujita, Y., et al., Neuron (1993) 10:585-598;Mikami, A., et al., Nature (1989) 340:230-233;Mori, Y., et al., Nature (1991) 350:398-402;Snutch, T. P., et al., Neuron (1991) 7:45-57;Soong, T. W., et al., Science (1993) 260:1133-1136;Tomlinson, W. J., et al., Neuropharmacology (1993) 32:1117-1126;Williams, M. E., et al., Neuron (1992) 8:71-84;Williams, M. E., et al., Science (1992) 257:389-395;Perez-Reyes, et al., Nature (1998) 391:896-900;Cribbs, L. L., et al., Circulation Research (1998) 83:103-109;Lee, J. H., et al., Journal of Neuroscience (1999) 19:1912-1921;McRory, J. E., et al., Journal of Biological Chemistry (2001) 276:3999-4011。
【0029】
カルシウムチャネル活性が、多様な障害に関連し、および特定型のチャネルは、特定の状態に関連していることは知られている。神経伝達に関連した状態におけるN型およびT型チャネルの関連は、N型チャネルを標的とする本発明の化合物が、これらの状態において最も有用であることを示していると考えられる。式(1)の化合物の部類の多くのメンバーは、N型チャネルおよび/またはT型チャネルに高親和性を示す。従って以下に説明されるように、これらは、望ましい機能の最初の指標として、N型および/またはT型チャネルと相互作用するそれらの能力についてスクリーニングされる。この化合物は、IC50値<1μMを示すことが望ましい。IC50は、特定の加電位で、カルシウム、バリウムまたは他の透過性二価カチオンフラックスを50%阻害する濃度である。
【0030】
3種のカルシウムチャネル阻害の識別可能な種類が存在する。第一に、「開口チャネルブロック」と称されるものは通常、展示(display)された場合に、カルシウムチャネルが人工的に負の静止電位約-100mVで維持されることが(約-70mVの内在性の静止時に維持される電位から区別されるので)明らかにされた。展示されたチャネルが、これらの条件下で突然脱分極した場合は、カルシウムイオンは、このチャネルを通る流れを引き起こし、およびピーク電流を示し、これはその後減衰する。開口チャネルブロック阻害剤は、ピーク流れ時に示された電流を漸減し、電流減衰速度を加速することもできる。
【0031】
この種の阻害は、「失活阻害」と称される第二のブロック型からは区別される。生理的に重要な電位である-70mVのような、低い負の静止電位が維持される場合、これらのチャネルのある割合は、立体配置の変化を受けることがあり、突然の脱分極によりそれらが活性化されること−すなわち開口すること−を不可能にする。従って、開口チャネルがブロックされるからではなく、このチャネルの一部は開口に利用することができない(失活された)ので、カルシウムイオン流れによるピーク電流は漸減すると考えられる。「失活」型阻害剤は、失活された状態の受容体の割合を増加する。
【0032】
第三の型の阻害は、「静止チャネルブロック」と称される。静止チャネルブロックは、通常開口または失活につながる膜の脱分極の存在しない場合に生じるチャネルの阻害である。例えば、静止チャネルブロッカーは、薬物適用後、脱分極の極初期に、ピーク電流の振幅を漸減し、脱分極時には更なる阻害を伴わない。
【0033】
治療において有用性を最大とするために、起こり得る副反応を評価することも有用である。従ってこれらの化合物は、特定のカルシウムチャネルを変調することができることに加え、心臓に発現されるHERG K+チャネルに関して、非常に低い活性を有することが望ましい。高い効力でこのチャネルをブロックする化合物は、致命的反応を引き起こし得る。従ってカルシウムチャネルを変調する化合物に関して、HERG K+チャネルが阻害されないことも示されるべきである。同様に、シトクロムp450を阻害する化合物は、この酵素は薬物の解毒に必要であるので、望ましくないと考えられる。最後に、この化合物は、様々な型のカルシウムチャネル間のその活性を比較することにより、カルシウムイオンチャネル型の特異性について評価されると考えられ、ひとつの特定のチャネル型への特異性が好ましい。これらの試験を通じうまく進捗する化合物は、その後実際の薬物候補として、動物モデルにおいて試験される。
【0034】
本発明の化合物は、カルシウムチャネルの活性を変調し;一般には、該変調は、チャネルのカルシウム輸送能の阻害である。以下に説明されるように、特定の化合物のカルシウムチャネル活性に対する作用は、日常的アッセイにより容易に確認することができ、これによりその条件は、チャネルが活性化され、および化合物のこの活性化に対する作用(陽性または陰性のいずれか)が評価されるように定められる。典型的アッセイは、以下に説明される。
【0035】
本発明の化合物
式(1)の基本構造上の置換基は、先に説明されている。これらは、アルキル、アルケニル、アルキニルなどの置換基を含む。
【0036】
本明細書において使用される用語「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」は、それらが置換されないかまたは特に注記されない場合は、CおよびHのみを含む、直鎖、分枝鎖および環式の一価の置換基である。例は、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2-プロペニル、3-ブチニルなどを含む。典型的には、アルキル、アルケニルおよびアルキニル置換基は、1-10Cもしくは1-8C(アルキル)または2-10Cもしくは2-8C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。好ましくはこれらは、1-6Cもしくは1-4C(低級アルキル)または2-6Cもしくは2-4C(低級アルケニルまたは低級アルキニル)である。
【0037】
ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテロアルキニルは、同様に定義されるが、主鎖残基内に、1個または複数のO、SもしくはNヘテロ原子またはそれらの組合せを含んでよい。これらは指示対象炭素部分の「ヘテロ形」である。
【0038】
不飽和型を含む、アルキル、ヘテロアルキルなどの環式形は、先に定義されたものである。これは、シクロアルキルまたはシクロヘテロアルキルとしても明確に説明される。従って、シクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロブチルなどを含み;シクロアルケニルは、シクロヘキシニル、シクロヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニルなどを含むと考えられる。これらのヘテロ型は、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、チアゾリジンなどを含む置換基を含む。一部の態様において、置換基AおよびBは、それらが結合した炭素と組合せて、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、ベンゼン、ピリジンなどを含む、6員環を形成することに注意する。
【0039】
本明細書において使用される「アシル」は、その各々は、カルボニル基を介して追加の残基に結合される、アルキル、アルケニル、アルキニルの定義を包含している。ヘテロアシルは、関連したヘテロ型を含む。
【0040】
「芳香族」部分または「アリール」部分は、フェニルまたはナフチルのような、単環式または融合二環式部分を意味し;「ヘテロ芳香族」も同じく、O、SおよびNから選択された1個または複数のヘテロ原子を含む、単環式または融合二環式系を意味する。ヘテロ原子の混在は、6員環に加え、芳香族と考えられる5員環の混在を許容する。従って、典型的芳香族/ヘテロ芳香族系は、ピリジル、ピリミジル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、チエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリルなどを含む。互変異性体が理論的に可能であるので、フタルイミドも芳香族と考えられる。環系全体の電子分布に関して芳香性の特徴を有する単環式または融合二環式系は、この定義に含まれる。典型的には、この環系は、5〜12個の環員原子を含む。
【0041】
同様に、「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」は、置換または未置換の飽和または不飽和の炭素鎖、典型的には1-8C、またはそれらのヘテロ型を含む、炭素鎖を介して別の残基に結合される、芳香族およびヘテロ芳香族系を意味する。これらの炭素鎖は、カルボニル基も含み、従ってそれらはアシルまたはヘテロアシル部分として置換基を提供することができる。
【0042】
一般に、置換基に含まれる任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、アシルまたはアリール(ヘテロ型を含む)基は、追加の置換基によりそれ自身任意に置換されていてもよい。これらの置換基の性質は、主な置換基それら自身に関して列記されたものに類似している。従って置換基の態様がアルキルである場合に、このアルキルは、これが化学的意味を持つような、およびこれがそれ自身アルキルのサイズ限界を損なう(undermine)ような置換基として列記された残りの置換基により任意に置換されていてもよく;例えば、アルキルまたはアルケニルにより置換されたアルキルは、これらの態様に関する炭素原子の上限を簡単に拡大すると考えられる。しかしアリール、アミノ、アルコキシなどで置換されたアルキルは、含まれるであろう。
【0043】
一般に、干渉しない置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アシル、=0、ハロ、OR、NR2、SR、-SOR、-SO2R、SO2R、-OCOR、-NRCOR、-NRCONR2、-NRCOOR、-OCONR2、-RCO、-COOR、NRSOR、NRSO2R、-CONR2、SONR2、および/またはSO2NR2(ここで各Rは、独立して、Hまたはアルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、アリールもしくはアリールアルキルである)、-CN、-CF3、およびNO2などの置換基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明の化合物において、Arは好ましくは、置換されていてもよいフェニル、2-, 3-もしくは4-ピリジル、インドリル、2-もしくは4-ピリミジル、ピリダジニル、ベンゾトリアジニル、またはベンズイミダゾリルである。より好ましいArは、フェニル、ピリジル、またはピリミジルである。最も好ましいArはフェニルである。これらの態様の各々は任意に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、O-アリール、O-アルキルアリール、O-アロイル、NR-アリール、N-アルキルアリール、NR-アロイル、ハロ、OR、NR2、SR、-OOCR、-NROCR、RCO、-COOR、-CONR2、および/もしくはSO2NR2(ここで各Rは、独立して、Hまたはアルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、アリールもしくはアリールアルキルである)、ならびに/または-CN、-CF3、および/もしくはNO2など、先に定義された1種または複数の基で置換されていてもよい。これらのアルキル、アルケニル、アルキニル、環式およびアリール部分は更に、類似の置換基により置換されてよい。
【0045】
Ar上の中でも好ましい置換基は、アルキル、CF3、CHF2、OR、SR、NR2(ここでRは先に定義されたものである)、およびハロである。R1の好ましい態様は、メチルおよびHである。R3の好ましい態様は、=Oならびにエステルおよびアミドを含むカルボキシ、更にはCOOHそれ自身を含む。
【0046】
本発明の化合物は、薬学的に許容できる塩としての調製が可能であるための、イオン化可能な基を有することができる。これらの塩は、無機酸もしくは有機酸が関与する酸付加塩であることができるか、またはこれらの塩は、本発明の化合物が酸性形である場合は、無機塩基もしくは有機塩基から調製される。塩酸、硫酸、クエン酸、酸性(acidic)または酒石酸および水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、カフェイン、様々なアミンなどの、適当な薬学的に許容できる酸および塩基は、当該技術分野において周知である。適当な塩の調製法は、当該技術分野においてよく確立されている。
【0047】
場合によっては、本発明の化合物は、1個または複数のキラル中心を含む。本発明は、単離された立体異性体型に加え、キラル純度(chiral purity)が変動する立体異性体の混合物を含む。
【0048】
加えて本発明の化合物は、薬物動態の変更、標的化、または他の理由でデザインされた物質への複合により結合することができる。従って本発明は、これらの化合物の複合体を更に含む。例えばポリエチレングリコールを、半減期を延長するために、この物質へ結合することが多く;これらの化合物は、共有的もしくは非共有的にリポソームへ、または他の粒子担体へ結合することができる。これらは、抗体またはペプチド模倣体などの標的化剤へ、時にはリンカー部分を介して、結合することもできる。従って本発明は、この型の複合体に含まれるように修飾される式(1)の化合物にも関する。
【0049】
本発明の化合物の合成
本発明の化合物は、従来の方法を用いて合成することができる。
【0050】
反応スキーム1は、例であり、C=Oに隣接するピペラジン環を伴う化合物を調製するために使用することができる。このピペリジンアナログは、置換されることができ、CHNH2の窒素の反応は、ピペラジン窒素と置き換わる。同じくアルキレン成分(例えばCH2)が、ピペラジンまたはピペリジンのCHNHのNに隣接する場合の経路が示されている。
【0051】
反応スキーム1

【0052】
この合成は、式(1)において、R1がHであり、ならびにaおよびbが両方とも置換されていてもよいフェニルであり、ZがNであり、XがCH2COであり、ならびに両方のArが未置換のフェニルである場合に関して例示されている。同じスキームが、これらの指定された(named)置換基について可能である残りの態様に適用されることは明らかであると考えられる。第一の工程において、化合物1および2は、グリニャール反応により結合され、ジフェニルメタノールを形成し、これは次にジフェニルメチルクロライドに転換される。得られる化合物4は次に、ピペラジン(またはあるいは、4-アミノピペリジン)により処理され、化合物5を得る。化合物5は次に、これにより未置換のピペラジン環窒素またはピペリジンの4-アミノ基によりアミドが形成されるような条件下で、ジフェニルアミノ酢酸と反応される。あるいは、式(5)の化合物が、アミド7のα-臭素化された形と反応され、示されたような所望の化合物を得る。ZがCHNR2である場合、この反応において4-アミノ基は、ピペラジンの窒素と置換する。
【0053】
ライブラリーおよびスクリーニング
本発明の化合物は、それ自身当該技術分野において公知の方法を用いるか、またはコンビナトリアルライブラリーの一員として、個別に合成することができる。
【0054】
コンビナトリアルライブラリー合成は、現在当該技術分野において一般的である。そのような合成に関する適当な説明は、例えば、Wentworth, Jr., P., et al, Current Opinion in Biol. (1993) 9:109-115;Salemme, F. R, et al, Structure (1997) 5:319-324に認められる。これらのライブラリーは、様々な置換基および異なる程度の不飽和、更には異なる鎖長を有する化合物を含む。少なくとも10程、しかし典型的には数百のメンバーから数千のメンバーを含むライブラリーは、その後、カルシウムチャネルの特定の亜型、すなわちN型チャネルに対し特に有効である化合物についてスクリーニングされる。加えて標準のスクリーニングプロトコールを使用し、これらのライブラリーは、ナトリウムチャネル、カリウムチャネルなどの追加のチャネルまたは受容体をブロックする化合物についてスクリーニングすることができる。
【0055】
これらのスクリーニング機能を行う方法は、当該技術分野において周知である。これらの方法は、このチャネルとアゴナイズ(agonize)または拮抗する化合物の能力の個別の確定のためにも使用され得る。典型的には、標的化されたチャネルは、ヒト胚性腎細胞のような組換え宿主細胞の表面上に発現される。ライブラリーのメンバーの被験チャネルへの結合能は、例えばライブラリーの化合物の、通常チャネルに会合したリガンドまたはチャネルに対する抗体のような標識された結合リガンドを置き換える能力により測定される。より典型的には、チャネルに拮抗する能力は、カルシウム、バリウムまたは他の透過性二価カチオンの存在下で測定され、ならびに発生したシグナルと干渉する化合物の能力は、常法を用い測定される。より詳細に述べると、ひとつの方法は、カルシウムチャネルと相互作用する放射標識した物質の結合、ならびにオン速度(on rate)、オフ速度(off rate)、Kd値および他の分子との競合結合を含むが、これらに限定されるものではない、平衡結合測定値の引き続きの分析が関与している。
【0056】
別法は、個々の細胞に微小電極が穿刺され、カルシウムチャネルを介した電流が関心のある化合物の適用の前後に記録される、電気生理学的アッセイによる化合物の作用のスクリーニングが関与している。
【0057】
別の方法、ハイスループット分光光度アッセイは、細胞内カルシウム濃度に感受性のある蛍光色素を伴う細胞株の負荷、および塩化カリウムによる脱分極能または細胞内カルシウムレベルを変更する他の手段に対する化合物の作用のその後の試験を利用する。
【0058】
先に説明されたように、より信頼のおけるアッセイを使用し、チャネルの失活の促進により機能するものまたは静止チャネルブロッカーとは対照的に、開口チャネルブロッカーとして機能する、カルシウム流れの阻害剤を識別することができる。これらの種類の阻害を識別する方法は、下記実施例においてより詳細に説明される。一般に、開口チャネルブロッカーは、候補化合物の存在および非存在下で、脱分極がバックグラウンド静止電位約-100mVへ課された時の、ピーク電流レベルを測定することにより評価される。成功した開口チャネルブロッカーは、観察されるピーク電流を低下させ、この電流の減衰を促進することができる。失活されたチャネルブロッカーである化合物は一般に、失活の電位依存性を負の電位へ向けてシフトするそれらの能力により決定される。これは、より脱分極された保持電位(例えば-70mV)での、ならびに例えば0.2Hz対0.03Hzのようなより高い刺激周波数での、ピーク電流を低下するそれらの能力においても反映される。最後に静止チャネルブロッカーは、脱分極時の追加の阻害を伴わない薬物適用後の、極初期の脱分極ピーク電流振幅を漸減するであろう。
【0059】
有用性および投与
ヒトおよび動物対象の治療に使用するために、本発明の化合物は、薬学的または獣医学的組成物として製剤することができる。治療される対象、投与様式、および望ましい治療型、例えば防止、予防、治療などに応じて、これらの化合物は、これらのパラメータと調和する方法で製剤される。このような技術の概要は、Remington's Pharmaceutical Sciences(最新版)Mack Publishing Co., Easton, PAに認めることができ、これは本明細書に参照として組入れられている。
【0060】
一般に、治療に使用するために、式(1)の化合物は、単独で、2種もしくはそれよりも多い式(1)の化合物の混合物として、または他の薬剤と組合せて使用することができる。投与様式に応じて、これらの化合物は、手軽な送達を可能にするのに適した組成物に製剤される。
【0061】
製剤は、全身投与または表面もしくは局所投与に適した様式で調製することができる。全身用製剤は、注射(例えば、筋肉内、静脈内もしくは皮下注射)用にデザインされたものを含むか、または経皮、経粘膜または経口投与のために調製することができる。この製剤は一般に、希釈剤、更には場合によってはアジュバント、緩衝剤、保存剤などを含む。これらの化合物は、リポソーム組成物またはマイクロエマルジョン中で投与することもできる。
【0062】
注射のために、製剤は、液体の液剤もしくは懸濁剤、または注射直前に液体中の液剤もしくは懸濁剤とするのに適した固形剤形、または乳剤のような通常の形で調製することができる。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなどを含む。このような組成物は、無毒の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレートなどを含む。
【0063】
薬物の様々な徐放系も考案されている。例えば米国特許第5,624,677号を参照のこと。
【0064】
全身投与は、坐薬の使用、経皮貼付剤、経粘膜送達および鼻腔内投与のような、比較的非侵襲性の方法も含む。経口投与も、本発明の化合物に適している。適当な形は、当該技術分野において理解されるような、シロップ剤、カプセル剤、錠剤を含む。
【0065】
動物またはヒト対象への投与に関し、本発明の化合物の用量は、典型的には0.1mg/kg〜15mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜1mg/kgである。しかし、用量レベルは、状態の特徴、薬物の有効性、患者の状態、医師の判断、ならびに投与頻度および様式に高度に依存している。
【0066】
下記実施例は、本発明を例示することを意図するが、限定するものではない。
【0067】
実施例1 1-{4-[(4-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン- 1-イル}-2-ジフェニルアミノエタノンの合成

【0068】
A. (4-クロロ-フェニル)-フェニル-メタノールの合成

無水エーテル(10ml)中の4-クロロベンズアルデヒド(1.03g, 7.34mmol)の溶液を、臭化フェニルマグネシウム(2.3ml, 6.98mmol, エーテル中3.0M)の溶液へ、窒素下でゆっくりと添加した。この混合物を、1時間還流加熱し、その後0℃に冷却し、1N HCl(40ml)で加水分解した。水相を、エーテル(3×)で抽出し、一緒にした有機相をMgSO4上で乾燥した。粗生成物を、溶離液としてヘキサン:酢酸エチル(5:1)を用いて精製し、純粋な生成物1.5gを得た。
【0069】
B. 1-クロロ-4-(クロロ-フェニル-メチル)-ベンゼンの合成

無水ベンゼン(20ml)中の(4-クロロ-フェニル)-フェニル-メタノール(2.41g, 11.06mmol)の溶液へ、SOCl2(8.25ml, 110mmol)および無水CaCl2(2g)を添加した。この混合物を、2時間還流加熱し、その後冷却し、室温で一晩攪拌した。その後濾過し、溶媒を減圧除去し、淡黄色の油状物を得、これを更に精製することなく次工程に使用した。
【0070】
C. 1-[(4-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジンの合成

ブタノン(20ml)中の1-クロロ-4-(クロロ-フェニル-メチル)-ベンゼン(4.12g, 17.4mmol)、無水ピペラジン(5.98g, 69.6mmol)、無水K2CO3(2.40g, 17.4mmol)およびKI(2.88 g, 17.4 mmol)の混合物を、窒素下で18時間還流した。この混合物をその後冷却し、濾過し、溶媒を減圧除去した。残渣をCH2Cl2(100ml)中に溶解し、水(30ml)で洗浄した。溶媒の乾燥および除去後、クロマトグラフィー(CH2Cl2:CH3OH:NH4OH 90:10:0.5)を行い、所望の生成物を収率57%で得た。
【0071】
D. 最終生成物の合成
無水CH2Cl2(40ml)中の1-[(4-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン(0.59g, 2.08mmol)の溶液に、ジフェニルアミノ酢酸(0.472g, 2.08mmol)を窒素下で添加した。この反応液に、EDC(0.797g, 4.16mmol)およびDMAP(cat(触媒量))を添加し、反応混合物を、窒素下、室温で一晩攪拌した。その後反応液を、減圧下で濃縮した。残渣を、酢酸エチル:水(10:1)(150ml)に溶解した。有機相を、水(30ml, 2×)および10%NaOH(30ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、蒸発乾固した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィーによりヘキサン:酢酸エチル(3:1)を用いて精製し、収率76%で所望の生成物を得た。
【0072】
実施例2 2-ジフェニルアミノ-1-[4-(フェニル-ピリジン-4-イル-メチル)-ピペラジン-1-イル]-エタノンの合成

【0073】
無水CH2Cl2(40ml)中の1-(フェニル-ピリジン-4-イル-メチル]-ピペラジン(0.58g, 2.29mmol)の溶液へ、ジフェニルアミノ酢酸(0.51g, 2.29mmol)を窒素下で添加した。この反応液へ、EDC(0.878g, 4.58mmol)およびDMAP(cat(触媒量))を添加し、反応混合物を、窒素下、室温で一晩攪拌した。その後反応液を、減圧下で濃縮した。残渣を、酢酸エチル:水(10:1)(150ml)に溶解した。有機相を、水(30ml, 2×)および10%NaOH(30ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、蒸発乾固した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィーによりヘキサン:酢酸エチル(1:1)を用いて精製し、収率79%で所望の生成物を得た。
【0074】
実施例3 2-(4-ベンズヒドリル-ピペラジン-1-イル)-N,N-ジフェニル-アセトアミドの合成

【0075】
無水CH3CN(20ml)中のジフェニルメチルピペラジン(0.6g, 2.37mmol)の溶液へ、2-ブロモ-N,N-ジフェニルアセトアミド(0.68g, 2.37mmol)およびNaHCO3(0.4g, 4.74mmol)を窒素下で添加した。この反応混合物を一晩還流した。冷却後、溶媒を蒸発させ、残渣を水(15ml)に溶解し、CHCl3(3×50ml)で抽出した。有機相を、MgSO4上で乾燥し、蒸発乾固した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィーによりヘキサン:酢酸エチル(2:1)を用いて精製し、収率84%で所望の生成物を得た。
【0076】
実施例4 2-[4-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメチル)-ピペラジン-1-イル]-N,N-ジフェニル-アセトアミドの合成

【0077】
無水CH3CN(20ml)中の1-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメチル)-ピペラジン(0.5g, 2.7mmol)の溶液へ、2-ブロモ-N,N-ジフェニルアセトアミド(0.61g, 2.7mmol)およびNaHCO3(0.45g, 5.4mmol)を窒素下で添加した。この反応混合物を一晩還流した。冷却後、溶媒を蒸発させ、残渣を水(15ml)に溶解し、CHCl3(3×50ml)で抽出した。有機相を、MgSO4上で乾燥し、蒸発乾固した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィーによりCH2Cl2:CH3OH(10:1)を用いて精製し、収率80%で所望の生成物を得た。
【0078】
実施例5 調製された化合物の要約
先に説明された一般的手法に従い、下記の化合物を調製した。









【0079】
前記化合物1〜34および39〜47では、Zを介してジフェニルアミンに結合されたピペラジンの窒素は、CHNHにより置換されたもの、および化合物35〜38で、該ZはNであるものも調製される。
【0080】
実施例6 本発明の様々な化合物のN型チャネルブロック活性
A. HEK細胞の形質転換
N型カルシウムチャネルブロック活性を、ラット脳N型カルシウムチャネルサブユニット(α1B+α2δ+β1b cDNA サブユニット)が安定してトランスフェクトされた、ヒト胚性腎細胞HEK293においてアッセイした。あるいは、N型カルシウムチャネル(α1B+α2δ+β1b cDNA サブユニット)、L型チャネル(α1C+α2δ+β1b cDNA サブユニット)およびP/Q型チャネル(α1A+α2δ+β1b cDNA サブユニット)を、HEK293細胞において一過性に発現した。簡単に述べると、細胞を、10%ウシ胎仔血清、200U/mlペニシリンおよび0.2mg/mlストレプトマイシンを補充したダルベッコ変更イーグル培地(DMEM)において、37℃で、5%CO2下培養した。細胞の集密度85%で、0.25%トリプシン/1mM EDTAで懸濁し(split)、ガラス製カバースリップ上に10%集密度で配置した。12時間で、培地を交換し、標準リン酸カルシウムプロトコールおよび適当なカルシウムチャネルcDNAを用い、細胞を一過性にトランスフェクトした。新鮮なDMEMを供給し、細胞を、28℃/5%CO2に移した。細胞を記録する前に、細胞を1日〜2日間インキュベーションした。
【0081】
B. 阻害の測定
ホールセルパッチクランプ実験を、pCLAMPソフトウェアを実装したパーソナルコンピューターに連結されたAxopatch 200B増幅装置(Axon Instruments, Burlingame, Calif.)を用いて行った。外部および内部記録溶液は、各々、5mM BaCl2、10mM MgCl2、10mM HEPES、40mM TEACl、10mMグルコース、87.5mM CsCl(pH7.2)、および108mM CsMS、4mM MgCl2、9mM EGTA、9mM HEPES(pH7.2)を含有した。電流は、典型的には、Clampexソフトウェア(Axon Instruments)を用い、保持電位-80mVから+10mVまで誘発した。典型的には電流は、最初に低周波数刺激(0.067Hz)で誘起され、本化合物の適用前に安定化させた。その後化合物を、緊張(tonic)ブロックを評価するために、2分〜3分間の低周波数パルストレイン時に適用し、周波数依存型ブロックを評価するために、引き続きパルス周波数を0.2Hzに増加した。データを、Clampfit(Axon Instruments)およびSigmaPlot 4.0(Jandel Scientific)を用いて解析した。
【0082】
N型チャネルについて得られた特異的データを、下記表1に示した。構造については実施例5を参照のこと。
【0083】
表1 N型カルシウムチャネルブロック

【0084】
実施例7 本発明の様々な化合物のT型チャネルブロック活性
標準パッチクランプ技術を用い、T型電流のブロッカーを同定した。簡単に述べると、先に説明したヒトα1G T型チャネルを安定して発現しているHEK細胞株を、全ての記録に使用した(継代数:4〜20、37℃、5%CO2)。T型電流を得るために、半集密的な細胞を含有するプラスチック皿を、培養培地を外部溶液(下記参照)と交換した後、ZEISS AXIOVERT S100顕微鏡のステージ上に配置した。ホールセルパッチを、ピペット(フィラメントを含むホウケイ素ガラス、外径:1.5mm、内径:0.86mm、長さ10cm)を用いて得、抵抗値〜5MΩを持つSUTTER P-97プラー上で製作した(fabricate)した(内部溶液については下記参照)。
【0085】
表2 外部溶液500ml-pH7.4、265.5mOsm

【0086】
表3 内部溶液50ml-CsOHでpH7.3、270mOsm

T型電流は、2種の電位プロトコールを使用し、信頼できるものを得た:
(1)「非不活性化」および
(2)「不活性化」
【0087】
非不活性化プロトコールにおいて、-40mVでの試験パルス50ミリ秒間に先立ち、保持電位を-110mV、-100mVでのプレパルス1秒間に設定した。不活性化プロトコールにおいて、プレパルスは、約-85mVで1秒間であり、これはT型チャネルの約15%を不活性化した。

【0088】
被験化合物は、外部溶液0.1%〜0.01%DMSOに溶解した。〜10分放置した後、これらを、WPIマイクロフィルチューブを用い、細胞近くに重力により適用した。「非不活性化」プレパルスを使用し、化合物の静止時(resting)のブロックを試験した。「不活性化」プロトコールを使用し、電位依存型ブロックを試験した。しかし、以下に示した最初のデータは、非不活性化プロトコールのみを用いて主に得られた。表4に、本発明の様々な化合物のIC50値を示した。
【0089】
表4 T型カルシウムチャネルブロック

【0090】
実施例8 ホルマリン誘導型疼痛モデルにおける本発明の化合物の活性
ラットホルマリンモデルに対する髄内送達された本発明の化合物の作用を測定した。これらの化合物は、プロピレングリコール中約10mg/mlのストック液に再構成した。サイズ275g〜375gの8匹のHoltzman雄ラットを、被験物質毎に無作為に選択した。
【0091】
下記試験群を使用し、被験物質、ビヒクル対照(プロピレングリコール)および生理食塩水と共に、腹腔内(IP)送達した。
【0092】
表5 ホルマリンモデル投与群

N/A=該当なし
【0093】
薬物送達の開始前に、ベースライン行動および試験データを集めた。被験物質または対照物質の注入後選択された時点で、これらのデータを再度収集した。
【0094】
試験日の朝、小さい金属バンド(0.5g)を、右後足の周りにゆるくはめた。ラットは、馴化のために最低30分間、円筒状プレキシガラス製チャンバー内に入れた。被験物質またはビヒクル対照物質を、ラット右後足の背面に、ホルマリン注射(5%ホルマリン50μl)前10分に投与した。次に動物を、ホルマリン注射した足の運動をモニタリングする、自動式ホルマリン装置のチャンバーに入れ、1分間に集計される足ひるみ回数(number of paw flinches tallied by minute)を60分間モニタリングした(Malmberg, A.B., et al., Anesthesiology (1993) 79:270-281)。
【0095】
結果は、最大可能性のある作用±SEMで表し、生理食塩水対照を100%とした。

【0096】
実施例9 ニューロパシー痛の脊髄神経結紮モデル
脊髄神経結紮(SNL)損傷を、KimおよびChungの手法(Kim and Chung 1992)を用い、体重200g〜300gのオスのSprague-Dawleyラット(Harlan;Indianapolis, IN)において、誘導した。感覚消失を、O2中の2%ハロタン2L/分で誘導し、O2中の0.5%ハロタンで維持した。ラットの外科的処置およびL4からS2の背側脊柱の露出の後、L5およびL6脊髄神経を、4-0シルク縫合糸を用い、後根神経節に対して末梢側に固く結紮した。切開部を縫合し、動物を5日間回復させた。運動障害(足の引きずりなど)を表すまたはそれに続く触覚異痛(tactile allodynia)を表すことに失敗したラットは、更なる試験から排除した。偽対照ラットは、SNL以外は、実験動物と同じ手術および管理を行った。
【0097】
Hargreavesと同僚の方法(Hargreaves, et al., 1988)を用い、温熱性侵害受容刺激に対する足引っ込め潜伏時間(paw-withdrawal latency)を評価した。ラットは、30℃に維持した透明なガラス板上のプレキシガラス囲い内で順応させた。放射熱源(すなわち高輝度プロジェクターランプ)を、タイマーで点灯し、神経損傷したラットまたはカラゲナン注射したラットの罹患した足の足底面に焦点を当てた。足引っ込め潜伏時間は、足を引っ込めた時点でランプとタイマーの両方を停止する光電セルにより決定した。放射熱源からの足の引っ込めの潜伏時間は、カラゲナンまたはL5/L5 SNLの前、カラゲナンの3時間後またはL5/L6 SNLの7日後で、薬物投与前および薬物投与後に決定した。40秒の最大カットオフを用い、組織損傷を防いだ。従って足引っ込め潜伏時間は、ほぼ0.1秒で決定した。温熱性痛覚過敏の逆行を、足引っ込め潜伏時間の治療前ベースライン潜伏時間(すなわち、21秒)までの回復により示した。抗痛覚を、このベースラインを上回る足引っ込め潜伏時間の有意な(p<0.05)増加で示した。データは、下記式により、%抗痛覚過敏に転換した:
100qx(試験潜伏時間−ベースライン潜伏時間)/(カットオフ−ベースライン潜伏時間)
ここで、抗痛覚過敏の決定のためのカットオフは21秒である。
【0098】
化合物7は、プロピレングリコール溶液を、投与量30mg/kgで経口投与した。活性の割合(%)を、温熱性痛覚過敏について計算した。
【0099】
表6 ニューロパシー痛のSNLモデルにおける%活性

【0100】
参考文献







【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の化合物:

および、それらの塩または複合体;
式中、AおよびBは各々独立して、6員の芳香族もしくは非芳香族、炭素環式もしくは複素環式部分であるか、またはアミノアルキルであり、ならびにここでひとつおよび唯一のAおよびBは、Hもしくはアルキル(1-8C)であってよく、またはここでAおよびBは一緒に置換されていてもよい6員の芳香族もしくは非芳香族、炭素環式もしくは複素環式部分を形成し;
R1は、Hまたはアルキル(1-8C)であり;
Zは、NまたはCHNR2であり、ここでR2は、Hまたはアルキル(1-8C)であり;
Xは、直鎖アルキレン(1-4C)であり、ここで窒素に隣接した少なくとも1個の炭素は、任意にC=Oの形であってもよく;
各R3は、独立して、=0、アルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、ハロ、CHF2、CF3、OCHF2、OCF3、CN、NO2、NR2、OR、SR、COR、COOR、CONR2、NROCR、0OCR、SOR、SO2R、SO3R、SONR2、SO2NR2、NRSOR、またはNRSO2Rからなる群より選択される置換基であり、ここでRは、Hまたはアルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、アリールおよびアルキルアリールであり、ならびにここで隣接する炭素上の2個の置換基は、置換されていてもよい5〜7員環を形成してもよく;
n=0〜2、および
Arは、6員の芳香族またはヘテロ芳香族環であり;
ここで式(1)のAまたはBおよび各Ar部分に含まれる各環式部分は、=0(非芳香族環式部分において)、アルキル(1-6C)、ハロ、CHF2、CF3、OCHF2、OCF3、NO2、NR2、OR、SR、COR、COOR、CONR2、NROCR、0OCR、SOR、SO2R、SO3R、SONR2、SO2NR2、NRSOR、およびNRSO2Rからなる群より選択される1個または複数の置換基により置換されてもよく、ここでRは、Hまたはアルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、アリールまたはアルキルアリールであり、ならびにここで隣接する2個の置換基は、5〜7員環を形成してもよく、ならびに
ここで先に列記された任意のアルキル、環式またはアリール基は、それ自身=0、ハロ、CHF2、CF3、OCHF2、OCF3、NO2、NR2、OR、SR、COR、COOR、CONR2、NROCR、0OCR、SOR、SO2R、SO3R、SONR2、SO2NR2、NRSOR、またはNRSO2Rにより置換されてもよく、ここでRは、Hまたはアルキル(1-8C)、アルケニル(2-8C)、アルキニル(2-8C)、アリールまたはアルキルアリールである。
【請求項2】
ZがNである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
各Arが独立して、フェニルまたはピリジニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R1がHである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
AおよびBの各々が独立して、置換されたもしくは未置換のフェニルまたは置換されたもしくは未置換のピリジルである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Ar、Aおよび/またはB上の置換基が、CF3、アルキル、ハロ、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
nが0であり、または各R3が独立して=0もしくはCOOHである、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
Xが、1個のC=O基を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
C=O基が、Arが結合した窒素に隣接している、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
C=O基が、Zに隣接している、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
AおよびBが一緒に、置換されていてもよい6員の芳香族または非芳香族、炭素環式または複素環式部分を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
環式部分がピペリジンである、請求項9記載の化合物。
【請求項13】
下記からなる群より選択される、請求項1記載の化合物:
1-(4-ベンズヒドリル-ピペラジン-1-イル)-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(2,4-ジメチル-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(2,4-ジクロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(4-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(3-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(2-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(2,3-ジクロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-[4-(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-フェニル-メチル)-ピペラジン-1-イル]-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
2-ジフェニルアミノ-1-{4-[(4-メトキシ-フェニル)-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-メチル]-ピペラジン-1-イル}-エタノン;
2-ジフェニルアミノ-1-[4-(1-メチル-ピペリジン-3-イルメチル)-ピペラジン-1-イル]-エタノン;
2-ジフェニルアミノ-1-(4-ピリジン-3-イルメチル-ピペラジン-1-イル)-エタノン;
2-ジフェニルアミノ-1-(4-ピリジン-2-イルメチル-ピペラジン-1-イル)-エタノン;
2-ジフェニルアミノ-1-[4-(フェニル-ピリジン-3-イル-メチル)-ピペラジン- 1-イル]-エタノン;
2-ジフェニルアミノ-1-[4-(フェニル-ピリジン-2-イル-メチル)-ピペラジン-1-イル]-エタノン;
1-{4-[(4-tert-ブチル-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
2-(4-ベンズヒドリル-ピペラジン-1-イル)-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(2,4-ジクロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(2,4-ジメチル-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(4-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(3-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(2-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(2,3-ジクロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-[4-(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-フェニル-メチル)-ピペラジン-1-イル]-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(4-メトキシ-フェニル)-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-[4-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメチル)-ピペラジン-1-イル]-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-[4-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-ピペラジン-1-イル]-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-[4-(1-メチル-ピペリジン-3-イルメチル)-ピペラジン-1-イル]-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
N,N-ジフェニル-2-[4-(フェニル-ピリジン-3-イル-メチル)-ピペラジン-1-イル]-アセトアミド;
N,N-ジフェニル-2-[4-(フェニル-ピリジン-2-イル-メチル)-ピペラジン-1-イル]-アセトアミド;
2-{4-[(4-tert-ブチル-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(4-メトキシ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-(4-ベンズヒドリル-2,3-ジオキソ-ピペラジン-1-イル)-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-(4-ベンズヒドリル-2,5-ジオキソ-ピペラジン-1-イル)-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
1-ベンズヒドリル-4-(2-ジフェニルアミノ-アセチル)-ピペラジン-2,5-ジオン;
2-[(1-ベンズヒドリル-ピペリジン-4-イル)-メチル-アミノ]-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
N-(1-ベンズヒドリル-ピペリジン-4-イル)-N-メチル-N',N'-ジフェニル-エタン-1,2-ジアミン;
N-(1-ベンズヒドリル-ピペリジン-4-イル)-2-ジフェニルアミノ-N-メチル-アセトアミド;
N-(1-ベンズヒドリル-ピペリジン-4-イル)-N-メチル-N',N'-ジフェニル-マロンアミド;
4-ベンズヒドリル-1-(2-ジフェニルアミノ-アセチル)-ピペラジン-2-カルボン酸;
4-ベンズヒドリル-1-[(ジフェニルカルバモイル)-メチル]-ピペラジン-2-カルボン酸エチルエステル;
4-ベンズヒドリル-1-[(ジフェニルカルバモイル)-メチル]-ピペラジン-2-カルボン酸;
2-ジフェニルアミノ-1-[4-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメチル)-ピペラジン-1-イル]-エタノン;
2-[4-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメチル)-ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-ジフェニルアミノ-1-[4-(1-フェニル-ピペリジン-4-イルメチル)-ピペラジン-1-イル]-エタノン;
2-オキソ-N,N-ジフェニル-2-[4-(1-フェニル-ピペリジン-4-イルメチル)-ピペラジン-1-イル]-アセトアミド;
2-{4-[(4-クロロ-フェニル)-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-オキソ-N,N-ジフェニル-アセトアミド;および
4-ベンズヒドリル-1-(2-ジフェニルアミノ-アセチル)-ピペラジン-2-カルボン酸。
【請求項14】
下記からなる群より選択される、請求項13記載の化合物:
1-(4-ベンズヒドリル-ピペラジン-1-イル)-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(2,4-ジメチル-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(2,4-ジクロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(4-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(3-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(2-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
1-{4-[(2,3-ジクロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノン;
2-ジフェニルアミノ-1-[4-(1-メチル-ピペリジン-3-イルメチル)-ピペラジン- 1-イル]-エタノン;
2-(4-ベンズヒドリル-ピペラジン-1-イル)-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(2,4-ジクロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(2,4-ジメチル-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(4-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(3-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(2-クロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-{4-[(2,3-ジクロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジフェニル-アセトアミド;
2-[4-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメチル)-ピペラジン-1-イル]-N,N-ジフェニル-アセトアミド;および
2-[4-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-ピペラジン-1-イル]-N,N-ジフェニル-アセトアミド。
【請求項15】
1-{4-[(2,3-ジクロロ-フェニル)-フェニル-メチル]-ピペラジン-1-イル}-2-ジフェニルアミノ-エタノンである、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
請求項1記載の化合物を、薬学的に許容される賦形剤と混合して含む、薬学的組成物。
【請求項17】
カルシウムチャネル活性により媒介される状態を治療する方法であり、請求項1記載の化合物を該状態を治療するのに十分量、そのような治療が必要な対象へ投与する段階を含む、方法。
【請求項18】
状態が、脳卒中、不安、てんかん、頭部外傷、片頭痛、炎症性腸疾患、過活動膀胱、過敏性腸症候群、間質性大腸炎および慢性疼痛、炎症性疼痛、ニューロパシー痛、急性疼痛、精神分裂病、不安、鬱病、神経変性障害、薬物およびアルコール中毒および禁断症状;心臓血管の状態;睡眠障害、癌、糖尿病、男性避妊および性的機能障害からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項1記載の化合物を状態を治療するのに十分量、そのような治療が必要な対象へ投与する段階を含む、脳卒中、不安、てんかん、頭部外傷、片頭痛、炎症性腸疾患、過活動膀胱、過敏性腸症候群、間質性大腸炎および慢性疼痛、炎症性疼痛、ニューロパシー痛、急性疼痛、精神分裂病、不安、鬱病、神経変性障害、薬物およびアルコール中毒および禁断症状;心臓血管の状態;睡眠障害、癌、糖尿病、男性避妊および性的機能障害からなる群から選択される状態を治療する方法。

【公表番号】特表2007−532492(P2007−532492A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506628(P2007−506628)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000544
【国際公開番号】WO2005/097779
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506340297)ニューロメッド ファーマシューティカルズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】