説明

カルシウム塩型スタチンの製造方法

【課題】容易に再現可能で、かつ、大規模な生産に耐えられる過程を使用する少ないステップで、安定したカルシウム・スタチン塩を提供することを目的とする。
【解決手段】水酸化カルシウムを使用することによって、そのスタチンのエステル誘導体又は保護されたエステル誘導体からスタチンのカルシウム塩を製造する方法が提供される。前記エステル又は保護されたエステル誘導体を、水酸化カルシウムと接触させて、カルシウム塩を得る。好ましいスタチンは、ロスバスタチン、ピタバスタチン及びアトルバスタチン、シンバスタチン及びロバスタチンである。保護されたスタチン・エステル誘導体を用いて始める方法において、保護基を、水酸化カルシウムとの接触により塩形成中に加水分解するか、又は酸触媒と接触させた後に水酸化カルシウムと接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年8月16日に出願された仮出願番号第60/312,812号、及び2000年11月16日に出願された仮出願番号第60/249,319号の利益を主張する2001年10月24日に出願された米国特許番号第10/037,412号の利益を主張し、上記文献の全体を本明細書中に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明はカルシウム塩型スタチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
スタチンと呼ばれるクラスの薬物は、心疾患の危険性が高い患者の血流中の低比重リポタンパク質(LDL)粒子濃度を減少させるために利用可能な、現在最も治療効果が高い薬物であり、そのため、スタチンは、高コレステロール血症、高リポタンパク血症及びアテローム硬化症の治療に使用される。血流中の高レベルのLDLは、血液の流れを邪魔し、そして裂きうる冠動脈病変の形成と結び付き、そして血栓症を促進する。Goodman and Oilman、The Pharmacological Basis of Therapeutics, page 879 (9th Ed. 1996)。
【0004】
スタチンは、3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル補酵素(「HMG-CoA」)レダクターゼ酵素を抑えることによってヒトのコレステロール生合成を抑える。HMG-CoAレダクターゼは、メバロン酸塩へのHMGの転換を触媒する。それはコレステロールの生合成速度を決定するステップである。減少したコレステロール産生は、LDL受容体の数の増加と、血流中のLDL粒子の濃度の対応する削減を引き起こす。血流中のLDLレベルの削減は、冠状動脈疾患の危険性を減らす。J.A.M.A.1984, 251, 351-74。
【0005】
現在利用可能なスタチンは、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン及びアトルバスタチンを含んでいる。ロバスタチン(米国特許番号第4,231,938号に開示された)及びシンバスタチン(ZOCOR;米国特許番号第4,444,784号及びWO00/53566に開示された)は、ラクトン型で投与される。吸収後、ラクトン環は、肝臓で化学的又は酵素的加水分解によって開環され、活性ヒドロキシ酸を生じる。プラバスタチン(PRAVACHOL;米国特許番号第4,346,227号に開示された)は、ナトリウム塩として投与される。同様にナトリウム塩として投与される、フルバスタチン(LESCOL;米国特許番号第4,739,073号に開示された)及びセリバスタチン(米国特許番号第5,006,530号及び同第5,177,080号に開示された)は、ヘキサヒドロナフタレン環を含むこのクラスの真菌誘導体とは一部構造的に異なる完全な合成化合物である。アトルバスタチンと2つの新しい「スーパースタチン(superstatins)」、ロスバスタチンとピタバスタチンが、カルシウム塩として投与される。これらのスタチンの構造式を、以下に示す。
【0006】
【化1】

【0007】
アトルバスタチンは、[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-ヘプタン酸に関する一般的な化学名である。アトルバスタチンの遊離酸は、ラクトン化しやすい。アトルバスタチン・ラクトンの系統的な化学名は、(2R-trans)-5-(4-フルオロフェニル)-2-(1-メチルエチル)-N,4-ジフェニル-1-[2-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル)エチル]-1H-ピロール-3-カルボキサミドである。アトルバスタチン及びその対応するラセミ・ラクトンが、米国特許番号第4,681,893号に開示されている。
【0008】
ラクトン型は、米国特許番号第5,273,995号に開示されている。'995特許の実施例4及び5において、上記ラクトンは、テトラヒドロフラン及びトリエチル・ボラン中、1,1-ジメチルエチル(R)-7-[2-(4-フルオロフェニル)-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-イル]-5-ヒドロキシ-3-オキソ-1-ヘプタノエートが溶かされ、その後のt-ブチルカルボン酸の添加によって製造される。冷却後に、メタノールが、次に水素化ホウ素ナトリウムが加えられる。この混合物が、氷/過酸化水素/水混合物に注ぎ入れられる。トリクロルメタンが加えられ、上記混合物が分離される。有機層が、硫酸マグネシウム上で乾かされ、ろ過され、そして溶媒を留去される。前記産物が、テトラヒドロフラン及びメタノール中に溶かされ、水酸化ナトリウム溶液に加えられる。この混合物が濃縮され有機溶媒が取り除かれ、水中に加えられ、そしてジエチルエーテルを用いて抽出される。水層は、塩酸を用いて酸性化され、酢酸エチルにより抽出される。有機層は、無水硫酸マグネシウムを用いて乾かされ、ろ過され、そして溶媒を留去される。残渣は、トルエン中に溶かされ、濃縮される。産物は、酢酸エチル及びヘキサンから再結晶化され、ラクトンが製造される。
【0009】
ラクトンは、米国特許番号第5,003,080号に開示された手順に従っても準備されうる。例えば、実施例2、方法Aにおいて、cis-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-(フェニルアミノ)カルボニル-1H-ピロール-1-ヘプタン酸、メチルエステルが、水酸化ナトリウムを用いて処理され、そして水により希釈され、そして分離させた後、残った層をヘキサン及び酢酸エチルを用いて、その後濃縮した塩酸溶液を用いて洗浄される。分離により、上層は、塩酸を用いて洗浄され、そして濃縮される。前記残渣がトルエン中に溶かされる。
【0010】
'080特許に開示されるとおり、前記ラクトンは、ジメチルスルホキシド中、(±)-cis-6-(2-アミノエチル)-2,2ジメチル-1,3-ジオキサン-4-酢酸(実施例2、方法B);(±)-(2α,4α,6α)、若しくは(±)-(2α,4β,6β)-6-(2-アミノエチル)-2-フェニル-1,3-ジオキサン-4-酢酸(実施例2、方法C);(±)-cis-9-(2アミノエチル)-6,10-ジオキサスピロ[4.5]デカン-7-酢酸(実施例2、方法D);(±)-cis-(4-(2-アミノエチル)-1,5-ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン-2-酢酸(実施例2、方法E);又は(±)-(2α,4α,6α)、若しくは(±)-(2α,4β,6β)-6-(2-アミノエチル)-2-メチル-1,3-ジオキサン-4-酢酸(実施例2、方法F及びG)を、(±)-4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]-γ-オキソ-N,β-ジフェニルベンゼンブタンアミドと一緒に混ぜることによっても製造されうる。加熱後に、前記溶液が、水中、ジエチルエーテルと飽和塩化アンモニウムの混合物中に注ぎ入れられる。分離後に、有機層は、水と水酸化ナトリウムで洗浄される。前記水層は、希釈した塩酸を用いて酸性化され、塩酸が加えられた酢酸エチルにより抽出され、そしてこの溶液が濃縮される。前記残渣がトルエン中に溶かされる。
【0011】
'080特許による、ラクトンを作製する他の方法は、ヘプタン:トルエン(9:1)中、(±)-シス-1,1-ジメチルエチル-6-(2-アミノエチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4-酢酸(実施例2、方法H);(±)-(2α,4α,6α)、若しくは(±)-(2α,4β,6β)-1,1-ジメチル-6-(2-アミノエチル)-2-フェニル-1,3-ジオキサン-4-酢酸(実施例2、方法I);又は(±)-cis-1,1-ジメチルエチル(4-(2-アミノエチル)-1,5-ジオキサスピロ-[5.5]ウンデカン-2-酢酸(実施例2、方法J)を、(±)-4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]-γ-オキソ-N,β-ジフェニルベンゼン・ブタンアミドと一緒に混ぜることを含む。加熱後に、この溶液が、水中、テトラヒドロフランと塩化アンモニウムの混合物中に注ぎ入れられる。分離後に、有機層は、食塩水を用いて洗浄され、その後塩酸が添加される。撹拌後に、水酸化ナトリウムが有機層に加えられる。前記反応は、水とヘキサンの混合物を加えることによって止められる。分離後に、水層は、希釈した塩酸を用いて酸性化され、酢酸エチルを用いて抽出され、そして濃縮される。前記残渣がトルエン中に溶かされる。
【0012】
医薬として許容されるカルシウム塩、[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)三水和物を製造するために、ラクトン又は遊離酸を使用する。動物モデルにおいて、アトルバスタチン・カルシウム塩は、HMG-CoAレダクターゼを抑え、そして肝臓のコレステロール合成を低下させることによって低い血漿コレステロール及びリポタンパク質レベルを示した。アトルバスタチンは、10、20、40及び80 mgの錠剤で、LIPITORという商品名で、ヘミカルシウム塩三水和物(hemicalcium salt trihydrate)としてファイザーによって販売されている。アトルバスタチン・ヘミカルシウム塩は、以下の構造体をもつ:
【0013】
【化2】

【0014】
ヘミカルシウム塩は米国特許番号第5,273,995号に開示されている。前記文献は、前記カルシウム塩を、塩化カルシウムによるナトリウム塩の移行から得られる食塩水溶液からの結晶形成、そして酢酸エチルとヘキサンの5:3混合物からの再結晶によってさらなる精製により得られることを教示する。
【0015】
米国特許番号第5,298,627号は、ヘミカルシウム塩の製造方法をも開示する。この特許の実施例1において、(4R-cis)-1-[2-[6-[2-(ジフェニルアミノ)-2-オキソエチル]-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4-イル]エチル]-5-(4-フルオロフェニル)-2-(1-メチルエチル)-N,4-ジフェニル-1H-ピロール-3-カルボキシアミドを、メタノール中に溶解し、そして塩酸と反応させて、メタノール及び水酸化ナトリウムと混合される[R-(R*,R*)]-5-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-2-(1-メチルエチル)-N,N,4-トリフェニル-3-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-ヘプタンアミドを形成する。ろ液は、tert-ブチルメチルエステルを用いて洗浄され、そして水性塩化水素を用いてこの水層が酸性化され、tert-ブチルメチルエステルを用いて抽出され、[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1Hピロール-1-ヘプタン酸のナトリウム塩を形成する。このナトリウム塩は、水中、酢酸カルシウムの付加によってヘミカルシウム塩に変換される。
【0016】
類似した方法において、(4R-cis)-6-(2-アミノエチル)-2,2-ジメチル-N,N-ビス(フェニルメチル)-1,3-ジオキサン-4-アセトアミドを、さらにヘミカルシウム塩に変換される[R-(R*,R*)]-5-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-2-(1-メチルエチル)-4-フェニル-3-[(フェニルアミノ)カルボニル]-N,N-ビス(フェニルメチル)-1H-ピロール-1-ヘプタンアミドに変換され(実施例2);(4R-cis)-6-(2-アミノエチル)-N,N-ジエチル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4-アセトアミドを、さらにヘミカルシウム塩に変換される[R-(R*,R*)]-N,N-ジエチル-5-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-2-(1-メチルエチル)-4-フェニル-3-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1Hピロール-1-ヘプタンアミドに変換され(実施例3);(4R-cis)-6-(2-アミノエチル)-N-ブチル-N,2,2-トリメチル-1,3-ジオキサン-4-アセトアミドを、さらにヘミカルシウム塩に変換される[R-(R*,R*)]-N-ブチル-5-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-N-メチル-2-(1-メチルエチル)-4-フェニル-3-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-ヘプタンアミドに変換され(実施例4);(4R-cis)-6-(2-アミノエチル)-N-(1,1-ジメチルエチル)-2,2-ジメチル-N-(フェニルメチル)-1,3-ジオキサン-4-アセトアミドを、さらにヘミカルシウム塩に変換される[R-(R*,R*)]-N-(1,1-ジメチルエチル)-5-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-2-(1-メチルエチル)-4-フェニル-3-[(フェニルアミノ)カルボニル]-N-(フェニルメチル)-1Hピロール-1-ヘプタンアミドに変換され(実施例5);そして(4R-cis)-1-[[6-(2-アミノエチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4-イル]-アセチル]ピペリジンを、さらにヘミカルシウム塩に変換される[R-(R*,R*)]-1-[3,5-ジヒドロキシ-7-オキソ-7-(1-ピペリジニル)ヘプチル]5-(4-フルオロフェニル-2-(1-メチルエチル)-N-4-ジフェニル-1H-ピロール-3-カルボキサミドに変換される(実施例6)。
【0017】
ロスバスタチンは、[S-[R*,S*-(E)]]-7-[4-(4-フルオロフェニル)]-6-(1-メチルエチル)-2-[メチル(メチルスルホニル)]アミノ]-5-ピリミジニル]-3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸に関する一般的な化学名である。ロスバスタチンは、ロスバスタチン・カルシウムを含む、CRESTORという名で販売するための承認を受けている最中である。ロスバスタチン、そのカルシウム塩(2:1)、及びそのラクトン型が、米国特許番号第5,260,440号に開示され、そしてクレームされている。'440特許の方法は、還流下、アセトニトリル中での4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)-5-ピリミジンカルボアルデヒドと、メチル(3R)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5-オキソ-6-トリフェニルホスホルアニリデンヘキサネートとの、反応によってロスバスタチンを作製する。前記シリル基は、次にフッ化水素で分割され、その後NaBH4により還元されて、ロスバスタチンのメチルエステルが得られる。
【0018】
次に、前記エステルが、室温にてエタノール中で水酸化ナトリウムにより水酸化され、その後エタノールが除去され、そしてエーテルが添加されて、ロスバスタチンのナトリウム塩が得られる。次に、このナトリウム塩が、マルチステップ法によりカルシウム塩に変換される。このナトリウム塩は、水中に溶かされて、窒素雰囲気下で保持される。次に、塩化カルシウムは、その溶液に加えられて、ロスバスタチン・カルシウム(2:1)の沈殿が生じる。これにより、'440特許の方法は、ナトリウム塩中間体を通してロスバスタチン・カルシウムを作製する。
【0019】
米国特許番号第6,316,460号は、ロスバスタチンの医薬組成物を開示する。前記医薬組成物は、ロスバスタチン又はその塩及び多価三塩基性リン酸塩を含む。'460特許は、ロスバスタチンのカルシウム塩のいずれの製造方法も開示していない。
【0020】
ピタバスタチンは、(E)-3,5-ジヒドロキシ-7-[4'-(4"-フルオロフェニル)-2'-シクロプロピル-キノリン-3'-イル]-ヘプタ-6-エン酸に関する一般的な化学名である。ピタバスタチン、そのカルシウム塩(2:1)、及びそのラクトンは、3つの関連した米国特許番号第5,011,930号、同第5,856,336号及び同第5,872,130号に開示されている。
【0021】
'930特許は、その実施例1に従ってピタバスタチン・エチルエステルを作製する。最初の4-(4'-フルオロフェニル-2'-(1'-シクロプロピル)-キノリン-3'-イル-カルボキレートは、2-アミノ-4'-フルオロベンゾフェノンと、エチル・イソブチリル酢酸との反応により製造され、次に、上記化合物は、4-(4'-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシメチル-2-(1'-シクロプロピル)-キノリンに変換され、次に、4-4'-フルオロフェニル-2-(1'-シクロプロピル)-キノイイン-3'-イル-カルボキシアルデヒドに変換され、次に3-(3'-エトキシ-1'-ヒドロキシ-2'-プロペニル)-4-(4'-フルオロフェニル)-2-(1'-シクロプロピル)-キノリンに変換され、次に(E)-3-[4'-(4"-フルオロフェニル)-2'-(1-シクロプロピル)-キノリン-3'-イル]プロペンアルデヒドに変換され、次にエチル(E)-7-[4-(4"-フルオロフェニル-2'-(1"-シクロプロピル)-キノリン-3'-イル]-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプタ-6-エノアートに変換され、次にエチル(E)-3,5-ジヒドロキシ-7-[4'-(4"-フルオロフェニル)-2'-(1"-シクロプロピル)-キノリン-3'-イル]-ヘプタ-6-エノアートに変換される。
【0022】
得られたエステル、エチル(E)-3,5-ジヒドロキシ-7-[4'-(4"-フルオロフェニル)-2'-(1"-シクロプロピル)-キノリン-3'-イル]-ヘプタ-6-エノアートは、水酸化ナトリウムの水性溶液を使用することによって実施例2に従ってナトリウム塩に変換される。前記化合物は、水酸化ナトリウムの水性溶液が加えられたエタノール中に溶かされる。得られた混合物は撹拌され、そして減圧下でエタノールが取り除かれる。次に、水が加えられ、この混合物は、エーテルを用いてさらに抽出される。次に、水層は凍結乾燥されて最終産物が得られるか、又は水層が塩酸希釈溶液を用いて弱酸性化される。次に、酸性化された水層は、エーテルを用いて抽出される。抽出後に、エーテル層を、硫酸マグネシウム上で乾燥させる。そしてエーテルは減圧下で取り除かれ、ナトリウム塩が得られる。'930特許及び関連特許は、いずれの化合物のカルシウム塩の製造も開示していない。
【0023】
これらの特許は、乾燥したトルエン中に製造されたナトリウム塩を溶かして、この溶液を還流して、そして減圧下でトルエンを取り除くことによってラクトンが製造される。次に、前記未精製固体は、ジイソプロピルエーテルから再結晶されてラクトン、[4'-(4"-フルオロフェニル)-2'-(1"-メチルエチル)キノリン-3'-イルエチニル]-4-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オンが得られる。前記ラクトンは、窒素雰囲気下、パラジウム/炭素を使ってさらに還元される。
【0024】
米国特許番号第6,335,449号は、アルデヒドキノリンと、ジエチル・シアノメチルホスホナートとを、反応させて、ピタバスタチンの合成のためのニトリル中間体を得ることによってピタバスタチンを製造するための先行技術の方法を改善する。米国特許番号第6,335,449号は、ピタバスタチンのカルシウム塩又は他のいずれかの塩をいかにして製造するかを開示していない。
【0025】
シンバスタチンは、化合物ブタン酸、2,2-ジメチル-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-(テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル)-エチル]-1-ナフタレニルエステル、[1S*-[1a,3a,7b,8b(2S*,4S),-8ab]]に関する一般的な医薬品名である(CAS登録番号79902-63-9)。シンバスタチンは、ZOCORとして販売され、そして米国特許番号第4,444,784号及び同第6,002,021号、並びにWO 00/53566に開示されている。これらの参考文献は、シンバスタチンのラクトン及び開型の製造を開示している。
【0026】
これらの参考文献のうち、WO 00/53566だけが、シンバスタチンの開型のカルシウム塩の製造を開示している。典型的な例において、WO 00/53566の方法は、シンバスタチンのラクトンを水酸化ナトリウムを用いて加水分解し、その後酢酸カルシウム水和物のようなカルシウム源を添加する。
【0027】
前述の先行技術の、カルシウム・スタチン塩、例えばアトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン及びシンバスタチンの製造方法は、どのようにカルシウム塩が製造されるか、又はナトリウム塩中間体を通して加工されるかのいずれも開示していない。さらに、方法のいくつかは、非常に微妙であり、そして常に再現可能なわけではなく、かつ、大規模な生産に不適当なろ過及び乾燥特性をもつ。先の方法よりも、容易に再現可能で、かつ、大規模な生産に耐えられる過程を使用する少ないステップで、安定した産物を得ることが望ましい。
【発明の開示】
【0028】
本発明の概要
本発明は、以下の式:
【0029】
【化3】

【0030】
{式中、
Rが、有機基を表す。}をもつ、スタチンのカルシウム塩の新規製造方法であって、以下の:
【0031】
【化4】

【0032】
{式中、
R1が、C1-C8アルキル基であり、そして
R2、R3及びR4が、互いに独立に、水素、又は同じか若しくは異なる加水分解性保護基を表すか、あるいはR2及びR3が、各々結合する酸素原子と一緒に、加水分解性環状保護基を形成する。}から成る群から選ばれるスタチンのエステル誘導体と、十分な量の水酸化カルシウムとを、接触させることを含む上記製造方法を提供する。
【0033】
前記反応は、相間移動触媒のあり又はなしで実行される。好ましい相間移動触媒は、臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)及び塩化トリエチルベンジルアンモニウム(TEBA)のような4級アンモニウム塩である。好ましくは反応物は、変換を促進するために加熱される。
【0034】
好ましいスタチンは、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン及びシンバスタチンである。好ましい態様において、R2、R3及びR4は水素である。R2、R3及びR4が、互いに同じであるか、又は異なる保護基であることもでき、上記保護基は、エステル基、すなわち-COOR1の加水分解と一緒に1ステップで、水酸化カルシウムの使用によって加水分解されるか、あるいは酸触媒を使用することによって加水分解され、その後エステル基-COOR1の加水分解を行う。好ましい保護基は、水酸化カルシウムにより加水分解されうるトリアルキルシリルのようなシリル基、及び酸触媒により加水分解されうるアセトニドである。アセトニドは、環状加水分解性保護基、すなわちジオキサンを形成する。
【0035】
他の側面において、本発明は、以下の:
【0036】
【化5】

【0037】
{式中、
Rが、有機基を表す。}をもつ、スタチンのカルシウム塩の製造方法であって、以下のステップ
水及びC1-C4アルコールの混合物に水酸化カルシウム及び先に記載のスタチンのエステル誘導体を加え、上記混合物を加熱し、スタチンのカルシウム塩を沈澱させて、そしてカルシウム塩を分離する、
を含む上記製造方法を提供する。
【0038】
本発明の詳細な説明
エステルを形成することは、カルボン酸基を保護して、その酸性陽子をマスキングする周知の方法である。Green、T.W.; Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis 3rd. ed., chapter5(John Wiley & Sons: New York 1999)。エステルとして保護されたカルボン酸が強塩基を用いてエステルを加水分解することによって脱保護されることも一般に知られている。377-78のId.。
【0039】
水酸化ナトリウムは、6.37(pKb=-0.80)の解離定数をもつ強塩基であり(Handbook of Chemistry and Physics 81st ed. 8-45(CRC Press: Boca Ratoi 2000-01))、そしてエステルによって保護されたカルボン酸を脱保護するための試薬としてのその使用が本技術分野で教示される。Green & Wuts, p. 377。3.74×10-3(pKb=2.43)の第1解離定数、及び4.0×10-3(pKb=1.40)の第2解離定数をもつ水酸化カルシウム(Ca(OH)2)は、水酸化ナトリウムよりずっと弱い塩基である。Handbook of Chemistry及びPhysics 63rd ed. D-170 (CRC Press: Boca Raton 1983)。
【0040】
水酸化カルシウムは、有機合成の官能基形質変換の周知の概論で加水分解エステルに使用される試薬の中に挙げられない。Larock R.C. Comprehensive Organic Transformations 2nd ed., Sectio NITRILES, CARBOXYLIC ACIDS AND DERIVATIVES, Sub-sect. 9.17, pp. 1959-68(Wiley-VCH: New York 1999)。エステルによって保護されたカルボン酸を脱保護するための一般の試薬としてのその使用は、有機官能基を保護及び脱保護する方法に関する周知の参考図書によって教示されない。Green & Wuts, pp. 377-79。実際、米国特許番号第5,273,995号は、塩化カルシウムがナトリウム塩の溶液にあとで加えられるとき、水酸化カルシウムの形成を防ぐために、ナトリウム塩の製造に対して過剰な水酸化ナトリウムを使用することを避けるよう警告している。アトルバスタチンのようなスタチンのエステルによって保護された型が、最初にそれを加水分解するためにエステルを水酸化ナトリウムのような強塩基により処理し、次にナトリウム塩と、カルシウム塩、例えば塩化カルシウム又は酢酸カルシウムとを、接触させることにより、ナトリウム・イオンを置き換えることなしに、直接的にそれぞれのヘミカルシウム塩、例えばアトルバスタチン・ヘミカルシウムに変換されうることは理解されていないように思われる。
【0041】
本明細書中に使用されるとき、「エステル誘導体」は、炭素を通したヒドロキシ酸素原子への置換基の結合を伴う、スタチンの開環又はジヒドロキシ酸型のカルボン酸基のヒドロキシ陽子の置換から生じる化合物である。そのようなエステル誘導体は、例えばカルボン酸のヒドロキシ酸素に結合した置換基がC1-C8アルキル基である化合物を含む。変換のために使用されるエステル誘導体は、様々なエステルを含む誘導体の混合物である。例えば、メチル・エステル誘導体は、エタノールに加えられ、いくつかのメチル・エステルのエチル・エステルへの変換をもたらす。スタチンのエステル誘導体は、本技術分野で知られる方法によって産生されうるか、あるいは商業的に購入することができる。エステル誘導体は、スタチンのラクトン又は閉環型をも含む。前記ラクトン型は、スタチンのエステル基が環の中に組み入まれている環状エステルである。エステル誘導体の混合物は、開又は閉環型スタチンの混合物を含んでもいる。
【0042】
本発明は、以下の一般式:
【0043】
【化6】

【0044】
{式中、
有機基Rが、ジオール-ペンタン酸基に結合する。}をもつスタチンに向けられる。これらのスタチンは、例えばプラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、ロバスタチン及びシンバスタチンを含む。これらの中で、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン及びシンバスタチンが好ましい。
【0045】
Rは、ジオール・ペンタン酸基に結合する有機基を表す。スタチンに依存して、前記R基は、以下の:
プラバスタチン:1,2,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-6-ヒドロキシ-2-メチル-8-(2-メチル-1-オキソブトキシ)-1-ナフタレン・エチル基、
フルバスタチン:3-(4-フルオロフェニル)-1-(1-メチルエチル)-1H-インドール-2-イル]-エチレン基、
セリバスタチン:4-(4-フルオロフェニル)-5-メトキシメチル)-2,6-ビス(1-メチルエチル)-3-ピリジニル・エチレン基、
アトルバスタチン:2-(4-フルオロフェニル)-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-エチル基、
ロスバスタチン:[4-(4-フルオロフェニル)-6-(1-メチルエチル)-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]-5-ピリミジニル]-エチレン基、
ピタバスタチン:[4'-(4"-フルオロフェニル)-2'-シクロプロピル-キノリン-3'-イル]-エチレン基である。R基は、開環型、すなわちシンバスタチン又はロバスタチンのジヒドロキシ酸でもあるかもしれない。これらの開環型はジオールペンタン酸基でもある。本明細書中に使用されるとき、用語シンバスタチン及びロバスタチンは、ラクトン型と開環型の両方を含む。スタチンがシンバスタチン又はロバスタチンの場合、R基は、以下の:
シンバスタチン:1,2,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-2,6-ジメチル-8-(2,2-ジメチル-1-オキソブトキシ)-1-ナフタレン・エチル基、
ロバスタチン:1,2,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-2,6-ジメチル-1-8-(2-メチル-1-オキソブトキシ)-1-ナフタレン・エチル基である。
【0046】
これら及び他のスタチンのカルシウム塩は、ジオールペンタン酸基又は対応するラクトンに結合した有機基が、スタチンであるところの化合物、すなわち3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-補酵素A(「HMG-CoA」)レダクターゼ酵素を阻害する化合物を定義するような、本発明の方法によって作製されうる。例えばWO 00/53566を参照のこと。よって、Rは、本明細書中にはっきりと開示されたか又は例証された、スタチンのジオール・ペンタン酸基又は対応するラクトンに結合した有機基に制限されるように解釈されるべきではない。これらのスタチンのカルシウム塩及び他の多形性形態のあらゆる水和物、溶媒和物及び無水物、結晶質、又は非晶質が、本発明の範囲内にある。
【0047】
本発明は、例としてアトルバスタチン・ヘミカルシウムの製造を用いることによってこれらのスタチンのカルシウム塩の製造を説明する。アトルバスタチン・ヘミカルシウムの製造のにおける側面が他のスタチンについてのそれと異なる範囲に対し、当業者は、アトルバスタチンが説明の目的だけのために使用されていること;及びアトルバスタチン・ヘミカルシウムの製造における様々な側面が他のスタチンを製造するために容易に修飾されるが、本発明の本質及び範囲内に存在し続けていることを理解するであろう。
【0048】
本発明は、エステル誘導体と、十分な量の水酸化カルシウムとを、接触させることによって、以下の式:
【0049】
【化7】

【0050】
{式中、
Rが、有機基を表し、そして
R1が、C1-C8アルキル基である。}によって表されるスタチン・エステル誘導体を、以下の式:
【0051】
【化8】

【0052】
をもつ対応するヘミカルシウム塩に変換することによるスタチン・ヘミカルシウム塩の製造方法を提供する。本明細書中に使用されるとき、「十分な量」は、エステル誘導体を対応するヘミカルシウム塩に実質的に変換する水酸化カルシウムの量を表す。本明細書中に使用されるとき、「実質的に変換する」は、約50%(moleベース)超、好ましくは約70%超、より好ましくは約90%超のスタチン・エステル誘導体が対応するヘミカルシウム塩に変換されるような量である。最も好ましくは、約95%超のスタチン・エステル誘導体が対応するヘミカルシウム塩に変換される。
【0053】
この方法の意外な利点は、水酸化カルシウムが2つの役割を満たすことである。それは、エステルの加水分解のための塩基性触媒として機能し、かつ、ヘミカルシウム塩を形成するためのカルシウムイオンを供給する。前記方法の他の重要な実際的な利点は、本発明とは対照的に、NaOHによりエステル誘導体を加水分解し、その後にナトリウム・イオンをカルシウム・イオンで置き換える一連の過程を含む他の方法で使用される水酸化ナトリウム及び塩化/酢酸カルシウムの量ほど、水酸化カルシウムの量を慎重に制御する必要がないことである。
【0054】
スタチン・エステル誘導体は、純粋な形態又は他のスタチン・エステル誘導体との混合物で提供されうる。場合により、他のスタチンエステル誘導体との混合物の状態でのスタチン・エステル誘導体は、好ましくはC1-C4アルコールと水の混合溶媒中に溶かされるか又は懸濁される。好ましいアルコールは、エタノール及びイソプロピルアルコール(「IPA」)であり、そして好ましい溶媒混合物は、エタノール中、約5%〜約15%の水、より好ましくは10%の水及び90%のエタノール(v/v)若しくはIPAを含む。スタチン・エステル誘導体が前記混合溶媒に溶けるかどうかはC1-C4アルコールの選択、水の割合、温度、及びスタチン・エステル誘導体の純度のような要因に依存する。次に、水酸化カルシウムを溶媒中に懸濁させ、スタチン・エステル誘導体が消費されるまで塩基性加水分解反応混合物を維持する。スタチン・エステル誘導体の消費を、TLC、HPLC及びNMRのようないずれかの常法によって観察する。スタチン・エステル誘導体が消費された後に、スタチン・ヘミカルシウムを塩基性加水分解反応混合物から常法によって回収する。Ca2+イオンをアトルバスタチン・ヘミカルシウム塩に提供するための他のカルシウム源を加える必要はない。
【0055】
塩基性加水分解法を実施するための好ましい手順に従って、スタチン・エステル誘導体を、約10 mmoles L-1〜約1 mole L-1の混合溶媒を提供するために十分な量で加える。
【0056】
好ましくは、エステル誘導体1に対して約1等量〜約6等量の水酸化カルシウムが使用される。より好ましくは、約1〜約2等量が使用される。
【0057】
水酸化カルシウムは、C1-C4アルコール:水混合溶媒中にわずかに溶けて、そのごく一部だけがいずれか1回の加水分解を触媒することができる溶液中に存在する。塩基性加水分解を促進するために、相間移動触媒を、水酸化カルシウムの溶解度を高めるために加えられる。相間移動触媒は、本技術分野で周知であり、そして、例えば臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム(「TBAB」)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(「TEBA」)、塩化テトラ-n-ブチルアンモニウム、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、ヨウ化テトラ-n-ブチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム及びポリエチレングリコールを含む。最も好ましい相間移動触媒はTBABである。使用される場合、相間移動触媒は、スタチン・エステル誘導体に対して塩基性化学量論的な量で、好ましくは約0.05〜約0.25等量で、より好ましくは約0.1等量で使用されるべきである。
【0058】
混合物を、反応を促進するために混合溶媒の還流温度まで加熱する。好ましい温度範囲は、約40℃〜約70℃の高い温度である。
【0059】
スタチン・エステル誘導体の消費の後に、スタチン・ヘミカルシウム又はその溶媒和物を、塩基性加水分解反応混合物から回収する。スタチン・ヘミカルシウムの回収の一部として、好ましくは反応混合物を、ろ過し、過剰の懸濁された水酸化カルシウムを取り除く。水酸化カルシウムのフィルターケーキ(filtercake)上へのスタチン・ヘミカルシウムの沈殿を防ぐために、好ましくは、熱いうちに反応混合物をろ過する。
【0060】
懸濁された水酸化カルシウムを取り除くためのろ過の後に、スタチン・ヘミカルシウムを、沈殿によってろ液から回収する。好ましい回収技術により、スタチン・ヘミカルシウムが、水のゆっくりとした添加によりろ液から沈澱する。ろ液の量と大体同じ水の量が、約1時間にわたり加えられる。好ましくは、ゆっくりとした水の添加も、例えば約40℃〜約65℃の高い温度で行われる。ゆっくりとした水の添加によるスタチン・ヘミカルシウムの沈澱は、結晶型のスタチン・ヘミカルシウムを生じ、ゼラチン状の沈殿の形成を防ぐ。あるいは、スタチン・ヘミカルシウムは、あらゆる常法によっても回収される。いずれかの必要な精製ステップの後でも、回収されたスタチン・ヘミカルシウムは、有効成分として医薬品を処方するために使用される。
【0061】
スタチン・ヘミカルシウムのろ過特性及び純度は、全ての沈殿物を溶解させ、透明な溶液をもたらすのに十分な温度まで加熱することで、水性アルコール反応混合物中に結晶性産物を再溶解させることによってさらに改善される。好ましくは、前記溶液は数時間かけてゆっくり冷まされ、形成される結晶がそれ以上観察されなくなるまで大気温で保持する。ろ過及び乾燥、そしていずれかのさらなる任意の精製ステップの後に、スタチン・ヘミカルシウム又はその溶媒和物は、医薬品の有効成分として使用される。
【0062】
スタチンは、しばしば中間体を通して製造される。前記中間体内の、ペンタン酸ジオール基(開環型)のヒドロキシルの一方若しくは両方、又はラクトン(閉環型)のヒドロキシルが、加水分解性保護基によって保護され、そしてカルボキシル基が本明細書中に先に記載されたエステル誘導体によって保護される。例えば、本明細書中に援用される米国特許番号第5,260,440号は、ロスバスタチンの合成中にシリル保護基を使用する。本明細書中に援用される米国特許番号第6,002,021号及び同第4,444,784号は、シンバスタチンの合成中にシリル保護基を使用する。本明細書中に援用されるBrower, P.L. et al. Tet. Lett. 1992, 33, 2279-82及びBaumann, K.L. et al. Tet. Lett. 1992, 33, 2283-2284は、各々結合する酸素原子と一緒に、環状加水分解性保護基を形成するアセトニド保護基、すなわちR2及びR3をもつジオキサン中間体を通してアトルバスタチンを製造する。
【0063】
これらの化合物、つまり本明細書中に使用される「保護されたスタチン・エステル誘導体」は、本発明に従って対応するヘミカルシウム塩に変換される。よって、他の態様において、本発明は、以下の式:
【0064】
【化9】

【0065】
{式中、
Rは、有機基を表す。}をもつスタチンのカルシウム塩の製造方法であって、以下の:
【0066】
【化10】

【0067】
{式中、
R1が、C1-C8アルキル基であり、かつ、R2、R3及びR4が、互いに独立に、水素、又は同じか若しくは異なる加水分解性保護基を表すか、又はR2とR3が、各々結合する酸素原子と一緒に、加水分解性環状保護基を形成する。}から成る群から選ばれるスタチンのエステル誘導体と、十分な量の水酸化カルシウムとの、接触を含む上記製造方法に向けられる。使用された保護基は、好ましくは酸性又は塩基性条件下、加水分解性である。本発明のこの態様に従った好ましい保護基R2、R3及びR4は、例えばより好ましいトリアルキルシリル及びアルキルジアリールシリルをもつ、そして最も好ましいt-ブチル-ジメチル-シリルをもつシリル基;並びにR2及びR3型、例えばジオキサンのような環状保護基を含む。
【0068】
本明細書中に援用される米国特許番号第6,294,680号は、スタチン、特にシンバスタチンの合成に使用される追加の保護基を開示する。開示された環状保護基は、ジオキサン、環状硫酸塩、環状リン酸塩又はボリリデンを含む。それらは、場合によりアルキル及びアリール基で置換される。他の保護基は、本明細書中に援用されるWO 95/13283に開示されているボロン酸、及び本明細書中に援用される米国特許番号第5,159,104号に開示されている無水酢酸によるエステル化を含む。本明細書中に援用される米国特許番号第6,100,407号は、追加の保護基を開示する。これらの参考文献中に開示された保護基は、本発明に従って使用される。
【0069】
水酸化カルシウムとの接触によってシリル基が加水分解され、そして取り除かれることが意外にも分かった。ゆえに、シリル基の使用は、同じ溶媒中、1ステップで保護基を除去し、そしてエステルをカルシウム塩に変換することを可能にする。水酸化カルシウムの使用は、米国特許番号第5,260,440号及び同第4,444,784号の方法によって必要とされるように、保護基を取り除くために例えばハロゲン化水素、例えばフッ化水素を用いてシリル保護基の酸性加水分解の別個のステップの必要性を取り除く。シリル又は他の保護基R2、R3及びR4をもつあらゆるスタチンに適合する本発明の方法は、水酸化カルシウムにより加水分解されることを可能にする。米国特許番号第5,260,440号に開示されている保護されたロスバスタチンは、例えばR2としての水素を得るためにケトンを還元する修飾を伴い、使用されることができる。米国特許番号第4,444,784号及び同第6,002,021号に開示されているシリル保護されたシンバスタチンが使用されることもできる。
【0070】
保護基のいくつかは、酸性条件下で最もよく加水分解される。よって、保護されたスタチン・エステル誘導体と、水酸化カルシウムとを、接触させる前に、酸触媒が保護基の加水分解に加えられる。そのような酸触媒の例は、酢酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、臭化亜鉛及び塩酸又は他のハロゲン化水素を含み、そして酢酸及び塩酸が好ましい。次に、得られたジオール・エステルは、水酸化カルシウムと接触することによってカルシウム塩に変換される。前記方法は、1つのポットで実行することもできる。ジオール-エステルは、先に記載のとおり形成されて、次に、溶媒を変更することなく、同じポットで水酸化カルシウムと反応して、アトルバスタチン・ヘミカルシウムが形成される。好ましい溶媒は、水とC1-C4アルコールの混合物であって、上記アルコールは、エタノールが好ましい。反応のために好ましいpHは、約3未満、より好ましくは約1未満である。
【0071】
酸触媒で取り除かれる好ましい保護基は、アセトニド、すなわちジオールが環状加水分解性保護基、すなわちジオキサンを形成する化合物である。好ましくは、アセトニドと酸触媒との反応中に形成されたすべてのアセトンが、例えば減圧下でに留去によって取り除かれる。
【0072】
酸触媒の使用を伴うワン・ポット法は、以下のとおり説明される:
【0073】
【化11】

【0074】
医薬組成物は、経口的に、非経口的に、経直腸的に、経皮的に、口腔内に又は経鼻的に投与される薬剤として製造される。経口投与のための好適な形態は、錠剤、圧縮されたか又はコートされた丸剤、糖衣錠、小袋(sachets)、硬ゼラチン・カプセル又はゼラチン・カプセル、舌下錠、シロップ剤及び懸濁剤を含む。非経口適用に好適な形態は、水性若しくは非水性溶液、又は乳濁液を含むが、一方で直腸投与に好適な投与形態は、親水性又は疎水性の媒質を用いた坐剤を含む。局所投与のために、本発明は本技術分野で知られている好適な経皮的なデリバリーシステムを提供し、そして経鼻デリバリーのために、本技術分野で知られている好適なエアロゾルデリバリーシステムが提供される。
【0075】
本発明の医薬組成物は、スタチン・ヘミカルシウム、特にアトルバスタチン・ヘミカルシウム、ロスバスタチン・ヘミカルシウム、ピタバスタチン・ヘミカルシウム、シンバスタチン・ヘミカルシウム及びロバスタチン・ヘミカルシウムを含む。有効成分に加えて、本発明の医薬組成物は1以上の賦形剤を含むことができる。賦形剤及び使用量の選択は、経験、並びに標準的手順及び当該分野の参考資料の検討に基づいて処方学者(the formulation scientist)によって容易に決定されうる。本明細書中に援用される米国特許番号第6,316,460号、及びHandbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Associationの最新版が、手引きとして使用されうる。LIPITOR(登録商標)(アトルバスタチン・ヘミカルシウム)及び他の薬剤の投与量及び処方も、手引きとして使用されうる。
【実施例】
【0076】
概略
別段の指示がない限り、一般に受け入れられているように、試薬を使用した。[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジオキサン-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-tert-ブチルヘプタン酸エステル(ジオキサン2、R1=t-ブチル)を、ピロール環を形成する対応するジケトンと、対応するキラル・アミンの間の縮合反応によって製造した。それは、知られている方法によっても製造される。Brower, P.L. et al. Tet. Lett. 1992, 33, 2279-82; Baumann, K.L. et al. Tet. Lett. 1992, 33, 2283-84。以下のHPLC条件を、実施例に報告された酸性加水分解において得られた混合物の組成の決定に使用した:Waters Spherisorb S3 ODS1(7.6×100 mm)、70:30 アセトニトリル:水、0.6 ml 分-1、20 μlのサンプル、UV検出 γ=254。
【0077】
実施例1
ジオキサン・エステル誘導体からのアトルバスタチン・カルシウムの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、[R-(R*,R*)-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジオキサン-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-tert-ブチルヘプタン酸エステル(2.0 g)を、酢酸の80%水溶液(50 ml)中に懸濁させた。この混合物を、透明な溶液が得られるまで約20時間大気温で撹拌した。前記透明な溶液を、留去して、乾燥させ、そして微量の酢酸を、トルエン(3×50 ml)との共沸蒸留によって取り除き、粉末を得た。
【0078】
先に得られた粉末(200 mg、0.32×10-3 mole)を、臭化テトラブチル・アンモニウム(10 mg)を含む水酸化カルシウム(8 ml)の飽和溶液を加えたエタノール(8 ml)中に溶かした。この混合物を撹拌し、かつ、約45℃の温度にて約24時間加熱した。追加の水酸化カルシウム飽和溶液(4 ml)を加えた。大気温での約20分間の撹拌の後に、反応を完了させた。得られた産物の純度を、HPLCによって分析した。白色の沈殿物を真空下でろ過し、約65℃の温度で約18時間乾燥させた。乾燥後に、77%の収率のアトルバスタチン・カルシウム塩を得た(142 mg)。
【0079】
実施例2
ジオキサン・エステル誘導体からのアトルバスタチン・カルシウムの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジオキサン-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-tert-ブチルヘプタン酸エステル(10.0 g、15.29×10-3 mmole)を、酢酸の80%の水溶液(150 ml)に懸濁させた。透明な溶液が得られるまで、前記混合物を一晩大気温で撹拌した。この透明な溶液を、留去し、微量な酢酸をトルエン(3×100 ml)との共沸蒸留によって取り除き、トルエンを含む油性産物を得た。
【0080】
前記油性産物を、エタノール(100 ml)と水(20 ml)の混合物中に移した。水酸化カルシウム(5.5等量、6.22 g、84.0×10-3 mmole)と5%(w/wジオキサン・エステル誘導体) 臭化テトラブチル・アンモニウム(0.46 g)の混合物を加えた。この混合物を、反応が完了するまで約3時間、約45℃の温度まで加熱した。前記混合物が熱い間に、真空下でろ過を行い、過剰の水酸化カルシウムを取り除いた。次に、混合物を大気温まで冷まし、その後撹拌しながら水(200 ml)を加えた。約20分間の大気温での撹拌の後に、反応を完了させた。得られた産物の純度を、HPLCによって分析した。白色の沈殿物を、真空下でろ過し、約65℃の温度にて約18時間乾燥させた。乾燥後に、84%の収率のアトルバスタチン・カルシウム塩を得た(7.44 g)。
【0081】
実施例3
ジオキサン・エステル誘導体からのアトルバスタチン・ラクトンの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジオキサン-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-tert-ブチルヘプタン酸エステル(0.5 g、0.76×10-3 mmole)を、触媒となる量の水が存在するトリフルオロ酢酸-テトラヒドロフランの1:1混合物(4 ml)中に溶かした。前記反応混合物を、約24時間大気温で撹拌した。得られた溶液を、留去し、そして微量のトリフルオロ酢酸を、エーテル(3×10 ml)との共沸蒸留によって取り除いた。白色の固体を得た(0.3 g)。HPLC分析に基づいて、白色の固体は、それぞれ40:60の比のアトルバスタチンとアトルバスタチン・ラクトンの混合物だった。
【0082】
実施例4
ジオキサン・エステル誘導体からのアトルバスタチン・ラクトンの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジオキサン-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-tert-ブチルヘプタン酸エステル(0.2 g、0.30×10-3 mmole)及び臭化亜鉛(3.5等量、1.07×10-3 mole)を、ジクロロメタン(5 ml)中に溶かした。前記反応混合物を、大気温にて約24時間撹拌した。水(30 ml)を加え、この混合物を約3時間撹拌した。水層を、ジクロロメタン(3×10 ml)で抽出する一方で、有機層を硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、ろ過した。次に、有機層を減圧下で留去して、その結果として生じる産物(150 mg)を得た。HPLC分析に基づいて、この得られた産物は、それぞれ57:43の比のアトルバスタチンとアトルバスタチン・ラクトンの混合物であった。
【0083】
実施例5
ジオキサン・エステル誘導体からのアトルバスタチン・ラクトンの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジオキサン-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-tert-ブチルヘプタン酸エステル(0.2 g)を、酢酸の90%水性溶液(4 ml)中に懸濁させた。前記混合物を、約50℃の温度にて約5日間撹拌した。得られた溶液を、蒸発乾固し、微量な酢酸をトルエン(3×15 ml)との共沸蒸留によって取り除いて、粉末を得た。HPLC分析に基づいて、この産物は、それぞれ54:46の比のアトルバスタチンとアトルバスタチン・ラクトンの混合物であった。
【0084】
実施例6
ジオキサン・エステル誘導体からのアトルバスタチン・ラクトンの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、塩酸の3%の水溶液(1 ml)と[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジオキサン-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-1H-ピロール-1-tert-ブチルヘプタン酸エステル(0.2 g)を、メタノール(2 ml)中に溶かした。前記混合物を、約110℃の温度にて約4時間撹拌し、次に大気温にて一晩撹拌した。得られた溶液を蒸発乾固し、粉末を得た。HPLC分析に基づいて、この粉末は、それぞれ54:46の比のアトルバスタチンとアトルバスタチン・ラクトンの混合物であった。
【0085】
実施例7
エステル誘導体からのロスバスタチン・カルシウムの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、メチル-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソ-プロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)-ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-ジヒドロキシ-(E)-6-ヘプテノアートを、5%(w/wエステル誘導体)の臭化テトラブチル・アンモニウムを含む水酸化カルシウムの飽和溶液を加えたエタノール中に溶かした。前記混合物を撹拌し、そして約45℃の温度にて約24時間加熱した。追加の水酸化カルシウム飽和溶液を加えた。約20分間大気温にて撹拌した後に、反応を完了させて、結果的にロスバスタチン・カルシウムを得る。
【0086】
実施例8
エステル誘導体からのロスバスタチン・カルシウムの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、メチル-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソ-プロピル-2(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)-ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-ジヒドロキシ-(E)-6-ヘプテノアートを、エタノールと水の混合物中に移す。水酸化カルシウムと5%(w/wエステル誘導体)臭化テトラブチル・アンモニウムの混合物を加える。反応が完了するまで前記混合物を約45℃の温度にて約3時間加熱する。前記混合物が熱い間に、真空下でろ過を行い、過剰な水酸化カルシウムを取り除く。次に、この混合物を大気温まで冷やし、その後、撹拌しながら、水を加える。大気温にて約20分間撹拌した後に、この反応を完了させ、結果的にロスバスタチン・カルシウムを得る。
【0087】
実施例9
エステル誘導体からのピタバスタチン・カルシウムの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、エチル-(E)-3,5-ジヒドロキシ-7-[4'-(4"-フルオロフェニル)-2'-シクロプロピル-キノリン-3'-イル]-ヘプタ-6-エノアートを、5%(w/wエステル誘導体)臭化テトラブチル・アンモニウムを含む水酸化カルシウム飽和溶液を加えたエタノール中に溶かす。前記混合物を撹拌し、45℃の温度にて約24時間加熱する。追加の水酸化カルシウム飽和溶液を加える。大気温にて約20分間撹拌した後に、反応を完了させて、結果的にピタバスタチン・カルシウムを得る。
【0088】
実施例10
エステル誘導体からのピタバスタチン・カルシウムの製造
マグネティック・スターラを備えたフラスコで、エチル-(E)-3,5-ジヒドロキシ-7-[4'-(4"-フルオロフェニル)-2'-シクロプロピル-キノリン-3'-イル]-ヘプタ-6-エノアートを、エタノールと水の混合物中に移す。水酸化カルシウムと5%(w/wエステル誘導体)臭化テトラブチル・アンモニウムの混合物を加える。反応が完了するまで、この混合物を約45℃の温度にて約3時間加熱する。前記混合物が熱い間に、真空下でろ過し、過剰な水酸化カルシウムを取り除く。次に、この混合物を大気温まで冷やし、その後、撹拌しながら、水を加える。大気温にて約20分間撹拌した後に、反応を完了させて、結果的にピタバスタチン・カルシウムを得る。
【0089】
このように、本発明は、特定の好ましい態様に関して記載され、そして実施例を用いてそれが説明されたので、当業者は、当該明細書中に開示されるとおり本発明の本質及び範囲から逸脱することなく、記載及び説明された本発明に対する修飾を理解することができる。実施例は、本発明を理解する上の助けとなるように示されるが、しかし決して本発明の範囲を制限することを意図せず、かつ、そのように解釈されるべきではない。実施例は、従来法の詳細な説明を含んでいない。そのような方法は、当業者に周知であり、そして非常に多数の刊行物に記載されている。本明細書中で言及された全ての文献を、本明細書中に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】

{式中、
Rが、有機基を表す。}をもつスタチンのカルシウム塩の製造方法であって、以下の:
【化2】

{式中、
R1が、C1-C8アルキル基であり、そして
R2、R3及びR4が、互いに独立に水素、又は同じか若しくは異なる加水分解性保護基を表すか、あるいはR2及びR3が、各々結合する酸素原子と一緒に、加水分解性環状保護基を形成する。}から成る群から選ばれるスタチンのエステル誘導体と、十分な量の水酸化カルシウムとを、接触させることを含む上記製造方法。
【請求項2】
前記Rが、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン及びロバスタチンから成る群から選ばれるスタチン由来の有機基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スタチンが、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン及びシンバスタチンから成る群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スタチンがロスバスタチンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スタチンがピタバスタチンである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記スタチンがシンバスタチンである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記スタチンがアトルバスタチンである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、水とC1-C4アルコールの混合物中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記接触が、高温で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記接触が、相間移動触媒の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記スタチンのカルシウム塩を回収するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記R2及びR3が共に水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記R4が水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記R2又はR3の少なくとも一方が、トリアルキルシリル保護基である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記R4がトリアルキルシリル保護基である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの保護基をもつエステル誘導体を、当該保護基を加水分解させるための酸触媒と接触させる予備的なステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記エステル誘導体が、以下の式:
【化3】

をもつ、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記Rが、アトルバスタチン由来の有機基である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法により製造されたスタチン塩、及び医薬として許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項20】
7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソ-プロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-ジヒドロキシ-(E)-6-ヘプテノアートのC1-C8エステルと、十分な量の水酸化カルシウムとを、接触させることを含むロスバスタチン・カルシウム塩の製造方法。
【請求項21】
ラクトン型ロスバスタチンと、十分な量の水酸化カルシウムとを、接触させることを含むロスバスタチン・カルシウム塩の製造方法。
【請求項22】
(E)-3,5-ジヒドロキシ-7-[4'-(4"-フルオロフェニル)-2'-(1"-シクロプロピル)-キノリン-3'-イル]-ヘプタ-6-エノアートのC1-C8エステルと、十分な量の水酸化カルシウムとを、接触させることを含むピタバスタチン・カルシウム塩の製造方法。
【請求項23】
ラクトン型ピタバスタチンと、十分な量の水酸化カルシウムとを、接触させることを含むピタバスタチン・カルシウム塩の製造方法。
【請求項24】
以下の式:
【化4】

{式中、
Rが、有機基を表す。}をもつスタチンのカルシウム塩の製造方法であって、以下のステップ:
a)水酸化カルシウム及び以下の:
【化5】

{式中、
R1が、C1-C8アルキル基であり、そして
R2、R3及びR4が、互いに独立に水素、又は同じか若しくは異なる加水分解性保護基を表すか、あるいはR2及びR3が、各々結合する酸素原子と一緒に、加水分解性環状保護基を形成する。}から成る群から選ばれる上記スタチンのエステル誘導体を、水とC1-C8アルコールの混合物に添加し;
b)上記混合物を加熱し;
c)上記スタチンのカルシウム塩を沈澱させ;そして
d)上記カルシウム塩を分離する、
を含む上記製造方法。
【請求項25】
前記Rが、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン及びロバスタチンから成る群から選ばれるスタチン由来の有機基である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記スタチンが、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン及びシンバスタチンから成る群から選ばれる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記スタチンがロスバスタチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記スタチンがピタバスタチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記スタチンがシンバスタチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記スタチンがアトルバスタチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記R2及びR3が共に水素である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記R4が水素である、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記R2又はR3の少なくとも一方が、トリアルキルシリル保護基である、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記R4がトリアルキルシリル保護基である、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの保護基をもつエステル誘導体を、当該保護基を加水分解させるための酸触媒と接触させる予備的なステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記エステル誘導体が、以下の式:
【化6】

をもつ、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記Rが、アトルバスタチン由来の有機基である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記の水とアルコールの混合物が、水対アルコールの約5%〜約20%混合物(v/v)である、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
相間移動触媒を、前記ステップ(a)の混合物に加えることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記混合物が、約40℃〜約70℃に加熱される、請求項24に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(b)と(c)の間に、ろ過ステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
前記沈澱が水の添加によって生じる、請求項24に記載の方法。

【公開番号】特開2009−24008(P2009−24008A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184147(P2008−184147)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【分割の表示】特願2003−521239(P2003−521239)の分割
【原出願日】平成14年8月16日(2002.8.16)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】