説明

カルシウム系無機質基材着色用塗布液

【課題】カルシウム系無機質基材表面の空隙(凹凸)を隠すように、すなわち、基材表面(下地)が透けないように基材表面を着色し得、かつカルシウム系無機質基材と一体化した塗装(着色)が可能であり、着色表面を硬質化して着色部分の剥離を防止し得る着色用組成物を提供する。
【解決手段】異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)、シラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)から構成される、カルシウム系無機質基材着色用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム系無機質基材の着色用組成物、カルシウム系無機質基材の着色キット、カルシウム系無機質基材の着色方法、および着色カルシウム無機質基材に関する。
【背景技術】
【0002】
建材、建築物などに用いられるカルシウム系無機質基材、例えばコンクリート、セメント、石膏、石材などでなる製品を着色することが試みられている。
【0003】
カルシウム系無機質基材を着色する方法としては、例えば、予めセメント自体に顔料を混合する方法がある。この方法では、基材表面の空隙(凹凸)を隠すことができず、基材の見栄えが悪い。
【0004】
他の方法としては、セメントの硬化前に、表面に顔料を散布する方法がある。しかし、この方法は、硬化前に顔料を散布する必要があり、作業が難しく、その上、基材表面の空隙(凹凸)を隠すこともできない。
【0005】
さらに、硬化後のカルシウム系無機質基材に着色する方法も行われている。例えば、特許文献1には、水溶性珪酸アルカリ化合物と顔料とを含む塗工組成物が記載され、そして特許文献2には、染料、水溶性珪酸アルカリ化合物、および水系溶媒を含有する塗工組成物を用いてコンクリート基材を着色する方法が記載されている。しかし、顔料は、一定量以上付与すると遊離するため、少量しか付与できず、また染料は、基材に浸透するため、基材表面の空隙(凹凸)を隠すことはできない。さらに、染料を用いた場合、染料は紫外線、水などに対する耐候性が悪いので、退色しやすい。
【0006】
また、樹脂を主成分とする有機溶剤系または水系の塗料を用いて着色する方法も行われている。この方法を用いると、基材表面の空隙(凹凸)を隠すことは可能である。しかし、セメント基材自体を着色するのではなく、着色された塗膜をセメント基材表面に接着しているだけなので、塗膜が接着面から容易に剥離する。さらに有機溶剤系の塗料は、環境面を配慮するとあまり好ましくない。
【特許文献1】特開2002−211988号公報
【特許文献2】特開2002−179952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、カルシウム系無機質基材表面の空隙(凹凸)を隠すように、すなわち、基材表面(下地)が透けないように基材表面を着色し得、かつカルシウム系無機質基材と一体化した塗装(着色)が可能であり、着色表面を硬質化して着色部分の剥離を防止し得る着色用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)、シラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)から構成される、カルシウム系無機質基材着色用組成物を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)とシラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)とを含有する第1の塗布液、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液から構成される、カルシウム系無機質基材着色用組成物を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)とシラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)とを含有する第1の塗布液;および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液;を含む、カルシウム系無機質基材の着色キットを提供する。
【0011】
本発明はまた、カルシウム系無機質基材の着色方法を提供し、該方法は、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)、シラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する塗布液を付与する工程を包含する。
【0012】
さらに、本発明は、カルシウム系無機質基材の着色方法を提供し、該方法は、該カルシウム系無機質基材に、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)とシラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)とを含有する第1の塗布液を付与し、乾燥させる工程;および該着色用塗布液が付与された基材表面に、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液を付与する工程を包含する。
【0013】
1つの実施態様では、上記第2の塗布液は、さらにシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)を含有する。
【0014】
本発明はまた、上記着色用組成物を用いて着色された、着色カルシウム無機質基材を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カルシウム系無機質基材表面の空隙(凹凸)を隠すように、すなわち、基材表面(下地)が透けないように基材表面を着色し得、かつカルシウム系無機質基材と一体化した塗装(着色)が可能であり、着色表面を硬質化して着色部分の剥離を防止し得る。すなわち、カルシウム系無機質基材の着色において、基材自体を予め着色するのではなく、基材表面への後塗りにより、下地を覆い、かつ基材と一体化した着色を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(カルシウム系無機質基材着色用組成物)
本発明のカルシウム系無機質基材着色用組成物(以下、単に「着色用組成物」と記載する場合がある)は、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)(以下、単に(A)と記載する場合がある)、シラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)(以下、シラノール基含有樹脂(B)または単に(B)と記載する場合がある)、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)(以下、単に(C)と記載する場合がある)から構成される。なお、本明細書において「カルシウム系無機質基材」とは、コンクリート、セメント、石膏、石材などでなる基材のことをいう。
【0017】
ここで、「構成される」とは、必ずしも(A)〜(C)の全てが1つに混合されている状態だけを意味するわけではなく、例えば、(A)〜(C)が混合されずに、各々が独立して存在する状態;(A)と(B)とを混合して得られる混合物および(C)の2種類として存在する状態;(A)と(B)とを混合して得られる混合物および(B)と(C)とを混合して得られる混合物の2種類として存在する状態などのことをいう。
【0018】
本発明では、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)とシラノール基含有樹脂(B)とを含有する第1の塗布液、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液の2種類の塗布液の状態で構成されることが好ましく、第2の塗布液がさらにシラノール基含有樹脂(B)を含有する状態がより好ましい。この場合、第1の塗布液に含まれるシラノール基含有樹脂(B)と第2の塗布液に含まれるシラノール基含有樹脂(B)とは、同一のシラノール基含有樹脂でもよく、異なるシラノール基含有樹脂でもよい。
【0019】
本発明に用いられる顔料は、特に限定されず、塗布液の安定性を劣化させるなど塗布液に悪影響を与えない限り、任意の顔料が用いられ得る。顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれでもよく、化学合成物由来および天然物由来のいずれでもよい。しかし、CO排出削減など低炭素型社会に向けた環境への配慮から、無機顔料が好ましい。
【0020】
顔料としては、例えば、赤色顔料(鉛丹、酸化鉄赤など)、黄色顔料(黄鉛(クロム黄)、亜鉛黄(亜鉛黄1種および亜鉛黄2種)など)、青色顔料(ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)、コバルトブルーなど)、緑色顔料(コバルトグリーン、酸化クロム、フタロシアニングリーンなど)、黒色顔料(カーボンブラック、チタンブラックなど)、白色顔料(亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉など)などが挙げられる。
【0021】
本発明の着色用組成物では、これらの顔料の中でも、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料が用いられる。すなわち、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料であれば、同色の顔料同士でもよく、異色の顔料同士でもよい。同色の顔料同士の場合、粒径が異なる同じ顔料を用いてもよい。例えば、赤色顔料の場合、粒径の異なる2種以上の鉛丹を混合して用いてもよく、黒色顔料の場合、粒径の異なる2種以上のカーボンブラックを混合してもよい。粒径が異なれば、鉛丹と酸化鉄赤との混合物、カーボンブラックとチタンブラックとの混合物などのように、同色で異なる顔料を用いてもよい。なお、本明細書において「粒径」とは、平均粒径のことをいう。
【0022】
本発明の着色用組成物では、目的の色調にするために、種々の顔料を組み合わせて用いてもよい。例えば、橙色に着色したい場合、赤色顔料と黄色顔料とを混合して用いることが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる顔料の粒径は、特に限定されない。好ましくは、大きな粒径を有する顔料と小さな粒径を有する顔料とを組み合わせる。大きな顔料の粒径は、好ましくは1μm〜5μm、より好ましくは1μm〜2μmであり、小さな顔料の粒径は、好ましくは0.1μm〜1μm、より好ましくは0.1μm〜0.5μmである。さらに、3種以上の顔料を組み合わせる場合、大きな粒径と小さな粒径との間の粒径を有する顔料を含んでいてもよい。異色の顔料同士を混合して用いる場合、各色の顔料間で粒径が異なるだけではなく、各色の顔料内で粒径が異なっていてもよい。より確実に基材表面の空隙(凹凸)を隠し、かつより確実に着色する点で、組み合わせる顔料の中で、最も大きい粒径と最も小さい粒径との差は、好ましくは0.5μm〜4μmであり、より好ましくは0.7μm〜2.5μmであり、さらに好ましくは0.8μm〜2μmである。
【0024】
粒径が異なる2種以上の顔料の混合割合は、塗布されるカルシウム系無機質基材の表面の状態、所望の色調、所望の膜厚などによって、適宜設定され得る。例えば、基材表面に多数の空隙が存在する場合、小さな粒径の顔料を過剰に用いることが好ましい。この場合、小さな粒径の顔料および大きな粒径の顔料は、好ましくは80:20〜60:40の質量比で配合され得る。塗膜をより厚くしたい場合、大きな粒径の顔料を過剰に用いることが好ましい。この場合、小さな粒径の顔料および大きな粒径の顔料は、好ましくは20:80〜40:60の質量比で配合され得る。
【0025】
本発明に用いられるシラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)は、シラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂であれば特に限定されない。シラノール基含有樹脂(B)としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂などが、好ましく用いられる。
【0026】
上記シラノール基に変換可能な基としては、例えば、シラノール基の水酸基の部分がアルコキシ基、ハロゲン基など(これらは加水分解などにより水酸基に変換し得る)であるような基が挙げられる。上記アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂などの樹脂は、好ましくはカルボキシル基を含有する。
【0027】
このようなシラノール基含有樹脂(B)は、例えば、エマルジョンの状態、あるいは溶媒に溶解または分散した状態で、好ましくは水性エマルジョンの状態で調製され得る。
【0028】
シラノール基含有樹脂(B)は1種類のみを用いてもよく、2種以上のシラノール基含有樹脂(B)を併用してもよい。
【0029】
本発明に用いられる水溶性珪酸アルカリ化合物(C)は、水溶性の珪酸アルカリ化合物であれば特に限定されない。このような化合物は、一般にMO・nSiO(Mはアルカリ金属、nは通常2〜4の整数)で示される。水溶性珪酸アルカリ化合物(C)としては、例えば、珪酸ナトリウム(オルト珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムなど)、珪酸リチウム、珪酸カリウムなどが挙げられる。これらのうちでもNaO・3SiOで示される珪酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0030】
水溶性珪酸アルカリ化合物(C)は、多価金属イオンとの反応により、あるいは該化合物のアルカリ成分(M)を該化合物のシリカネットワーク中から除去することにより、不溶性の珪酸化合物を形成する。水溶性珪酸アルカリ化合物(C)の濃厚水溶液は一般に水ガラスと呼ばれている。
【0031】
水溶性珪酸アルカリ化合物(C)は1種類のみを用いてもよく、2種以上の水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を併用してもよい。
【0032】
本発明の着色用組成物は、顔料(A)、シラノール基含有樹脂(B)、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)の合計質量に対して、好ましくは、顔料(A)が10質量%〜50質量%、シラノール基含有樹脂(B)が10質量%〜50質量%、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)が20質量%〜80質量%の割合で構成され、(A)〜(C)が合計で100質量%となるように調製される。より好ましくは、顔料(A)は20質量%〜40質量%、シラノール基含有樹脂(B)が20質量%〜40質量%、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)が30質量%〜70質量%の割合で構成され、(A)〜(C)が合計で100質量%となるように調製される。なお、シラノール基含有樹脂(B)をエマルジョンなどの形態で用いた場合、シラノール基含有樹脂(B)の含有量は、固形分(すなわち樹脂分)に換算した量である。
【0033】
本発明の着色用組成物が、上記第1の塗布液および上記第2の塗布液で構成される場合、第1の塗布液に含まれる顔料(A)およびシラノール基含有樹脂(B)は、好ましくは1:1〜15:1、より好ましくは1:1〜10:1の質量比で含有される。
【0034】
さらに、本発明の着色用組成物が、上記第1の塗布液および上記第2の塗布液で構成される場合、第2の塗布液に、シラノール基含有樹脂(B)を含有することが好ましい。この場合、シラノール基含有樹脂(B)と水溶性珪酸アルカリ化合物(C)とは、好ましくは1:2〜1:15、より好ましくは1:2〜1:10の質量比で含有される。
【0035】
さらに、本発明の着色用組成物が、上記第1の塗布液および上記第2の塗布液で構成される場合、塗布液とするために使用され得る溶媒は、水系溶媒および有機溶媒が挙げられる。水系溶媒とは、水または水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類など)と水との混合溶媒のことをいう。上記のように、環境への配慮の観点から、水系溶媒が好ましく、特に水が好ましい。
【0036】
(カルシウム系無機質基材の着色キット)
本発明のカルシウム系無機質基材の着色キット(以下、単に「着色キット」と記載する場合がある)は、上記異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)と上記シラノール基含有樹脂(B)とを含有する第1の塗布液;および上記水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液を含む。なお、第1の塗布液および第2の塗布液は、上述の通りである。
【0037】
本発明の着色キットには、必要に応じて、着色方法を記載した仕様書が含まれる。
【0038】
(カルシウム系無機質基材の着色方法)
本発明のカルシウム系無機質基材の着色方法は、カルシウム系無機質基材に、上記異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)、上記シラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)、および上記水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する塗布液を付与する工程を包含する(以下、「第1の着色方法」と記載する場合がある)。
【0039】
さらに、本発明のカルシウム系無機質基材の着色方法は、カルシウム系無機質基材に、上記異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)と上記シラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)とを含有する第1の塗布液を付与し、乾燥させる工程;および該着色用塗布液が付与された基材表面に、上記水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液を付与する工程を包含する(以下、「第2の着色方法」と記載する場合がある)。
【0040】
本発明の第1の着色方法では、上記顔料(A)、上記シラノール基含有樹脂(B)、および上記水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を混合して得られる混合物(すなわち、(A)〜(C)を全て含有する塗布液)を、カルシウム系無機質基材表面に塗布する。
【0041】
本発明の第1の着色方法では、(A)〜(C)を全て含有する塗布液が、好ましくは、顔料(A)、シラノール基含有樹脂(B)、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)の合計量で、カルシウム系無機質基材表面1mあたりに100g〜300g付与される。塗布液が付与されたカルシウム系無機質基材を乾燥し、基材表面に、好ましくは10μm〜100μmの厚みを有する塗膜が形成され得る。
【0042】
一方、本発明の第2の着色方法では、基材表面に、顔料(A)とシラノール基含有樹脂(B)とを含有する第1の塗布液を付与して乾燥させた後、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液を付与する。なお、第1の塗布液および第2の塗布液は、上述の通りである。
【0043】
本発明の第2の着色方法では、カルシウム系無機質基材表面1mあたり、第1の塗布液が、顔料(A)およびシラノール基含有樹脂(B)の合計量で、好ましくは100g〜300gとなるように付与される。
【0044】
第1の塗布液の付与後、カルシウム系無機質基材を乾燥させる。乾燥条件は特に限定されず、塗布量、塗布場所などにより異なるが、例えば、1時間〜1日間自然乾燥すればよい。
【0045】
乾燥後、第1の塗布液が付与された基材は、第2の塗布液を付与する工程に供される。この工程では、着色部分の剥離防止、表面の硬質化などを目的として、着色用塗布液が付与された基材表面に、上記水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液が付与される。
【0046】
第2の塗布液は、第1の塗布液が付与された基材表面1mあたり、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)が、好ましくは100g〜300gとなるように付与される。
【0047】
本発明の第2の着色方法では、顔料(A)とシラノール基含有樹脂(B)とから形成される塗膜を被覆するように、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)の塗膜が形成されて2層の塗膜となるので、基材表面に、好ましくは10μm〜500μmの厚みを有する塗膜が形成され得る。
【0048】
さらに、第2の塗布液は、シラノール基含有樹脂(B)を含有してもよい。シラノール基含有樹脂(B)と水溶性珪酸アルカリ化合物(C)との割合は、上述の通りである。
【0049】
本発明の第1の着色方法および第2の着色方法によれば、顔料(A)がシラノール基含有樹脂(B)に取り込まれ、シラノール基含有樹脂(B)の反応基とコンクリート基材とが結合し、さらに、シラノール基含有樹脂(B)は、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)とも結合して、基材表面上に顔料が封印されたシリカネットワークが形成される。したがって、後塗りでの着色にもかかわらず、着色部分が基材と一体化し、剥離が防止される。
【0050】
特に、第2の着色方法によれば、顔料(A)とシラノール基含有樹脂(B)とを含む第1の塗布液の付与後に、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を付与するので、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)は、顔料(A)とシラノール基含有樹脂(B)とから形成される塗膜を被覆するように結合して塗膜を形成し、着色部分を強固に硬質化することが可能である。さらに、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含む第2の塗布液がシラノール基含有樹脂(B)を含む場合、非常に強固なネットワークが形成される。したがって、顔料が遊離せず、さらに耐水性なども付与される。
【0051】
(着色カルシウム無機質基材)
本発明の着色カルシウム無機質基材(コンクリート、セメント、石膏、石材など)は、上記着色用組成物を用いて着色されている。本発明の着色カルシウム無機質基材は、好ましくは、屋内のコンクリート床として用いられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
1辺が6cmの正方形板状のコンクリート基材を準備した(図1)。このコンクリート基材は、セメントと砂との質量比が1:2であり、水セメント比は50%であった。
【0054】
次いで、顔料(A)として、黄色顔料(粒径1.5μm)と青色顔料(粒径0.5μm)との混合物(黄色顔料と青色顔料との質量比は1:1)、およびシラノール基含有樹脂(B)としてシラノール基含有スチレン−アクリル系樹脂エマルジョンを2:1の質量比で混合した(エマルジョンは樹脂分に換算)。この(A)および(B)の混合物に水を加えて撹拌し、塗布液を調製した(この塗布液を、塗布液1とする)。なお、得られた塗布液1には、(A)および(B)が合計で40質量%の割合で含まれていた。
【0055】
次いで、塗布液1を、コンクリート基材表面1mあたり、(A)および(B)が合計で約200gとなるように付与した。
【0056】
塗布液1を付与後、コンクリート基材を、1日間自然乾燥し、着色コンクリート基材を得た。
【0057】
図1に示すように、塗布液1を付与する前のコンクリート基材表面には、多数の空隙(凹凸)が見られた。しかし、塗布液1を用いて着色したコンクリート基材(着色コンクリート基材)表面には、空隙(凹凸)が見られなかった。
【0058】
(実施例2)
実施例1で得られた着色コンクリート基材に、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)として珪酸ナトリウム水溶液およびシラノール基含有樹脂(B)としてシラノール基含有スチレン−アクリル系樹脂エマルジョンを含有する塗布液(この塗布液を、塗布液2とする)を付与した。なお、この塗布液2は、珪酸ナトリウムとシラノール基含有スチレン−アクリル系樹脂とを2:1の質量比で含み、塗布液2には、珪酸ナトリウムとシラノール基含有スチレン−アクリル系樹脂とが、合計で45質量%の割合で含まれていた。
【0059】
塗布液2を付与した後、着色コンクリート基材を自然乾燥させ、着色表面が硬質化した着色コンクリート基材を得た(図2)。図2に示すように、この着色コンクリート基材は、コンクリート基材表面の空隙(凹凸)が隠されて外観が極めて良好である。さらに、着色部分が珪酸アルカリ化合物で硬質化され、基材表面と一体化しているので剥離しない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、カルシウム系無機質基材表面の空隙(凹凸)を隠すように、すなわち、基材表面(下地)が透けないように基材表面を着色し得、かつカルシウム系無機質基材と一体化した塗装(着色)が可能であり、着色表面を硬質化して着色部分の剥離を防止し得る着色用組成物を提供し得る。したがって、建築材料をはじめとする多くの分野、好ましくは、駐車場、倉庫、工場などの床面に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の着色用組成物を付与する前のコンクリート基材表面の状態を示す写真である。
【図2】本発明の着色用組成物を付与した後のコンクリート基材表面の状態を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)、シラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)から構成される、カルシウム系無機質基材着色用組成物。
【請求項2】
異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)とシラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)とを含有する第1の塗布液、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液から構成される、カルシウム系無機質基材着色用組成物。
【請求項3】
前記第2の塗布液が、さらにシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)を含有する、請求項2に記載の着色用組成物。
【請求項4】
カルシウム系無機質基材の着色キットであって、
異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)とシラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)とを含有する第1の塗布液;および
水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液;
を含む、キット。
【請求項5】
前記第2の塗布液が、さらにシラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)を含有する、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
カルシウム系無機質基材の着色方法であって、
異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)、シラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)、および水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する塗布液を付与する工程;
を包含する、方法。
【請求項7】
カルシウム系無機質基材の着色方法であって、
該カルシウム系無機質基材に、異なる粒径を有する少なくとも2種の顔料(A)とシラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)とを含有する第1の塗布液を付与し、乾燥させる工程;および
該第1の塗布液が付与された基材表面に、水溶性珪酸アルカリ化合物(C)を含有する第2の塗布液を付与する工程;
を包含する、方法。
【請求項8】
前記第2の塗布液が、さらにシラノール基またはシラノール基に変換可能な基を有する樹脂(B)を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から3のいずれかの項に記載の着色用組成物を用いて着色された、着色カルシウム系無機質基材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−37168(P2010−37168A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203776(P2008−203776)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(598160889)アシュフォードジャパン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】