説明

カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を含む眼科用組成物

本明細書に開示された実施態様は、カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を含む眼科用組成物、およびより具体的には、開示組成物を使用する眼疾患および/または症状を処置する方法に関する。本明細書に示した局面に従って、次のものを含む医薬組成物が提供される:カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤;約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤;および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤、ここで第一の界面活性剤のHLB指数および第二の界面活性剤のHLB指数との間の絶対相違が約3を超える数である、ここで該組成物が混合ミセルを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本明細書に開示された実施態様は、安定なカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を含む眼科用組成物、およびより具体的には開示組成物を使用する眼疾患および/または症状を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
眼の前面に対する疾患および損傷は、米国において医療的眼科処置のために来院する主要原因である。これらの疾患および損傷は、最も痛みが伴う眼の症状の一つに位置づけられ、障害および失明となり得る。眼表面の主な臨床的問題には、眼表面の乾燥、涙液層異常および関連合併症;病理学および瘢痕化の原因となる眼表面の創傷;角膜変性ジストロフィーおよび遺伝的疾患;炎症性疾患;および外側の眼の感染が挙げられる。眼の疾患および損傷は、痒み、涙眼から視覚障害にわたる兆候を有し得る。それ故に、なんらかの疾患が次第に悪化するか、または他の重大な問題の誘因となり得るので、眼の問題を迅速に解決することが重要である。殆どの眼疾患に関する薬理学的管理には、液滴として眼の表面へ溶液を局所適用することが挙げられる。前眼部の組織に最終的に到達する局所適用される該薬物用量が比較的少量であるにも関わらず、一般的に投与される薬物濃度が非常に高いため、局所製剤は有効性を維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
網膜および脈絡膜などの後眼部の組織に対する疾患および損傷は、先進工業国におい多くの最も一般的な失明疾患に関与している。加齢性黄斑変性症(AMD)は、単独で1000万人以上のアメリカ人に影響を及ぼしている。AMDに由来する重度の失明および後眼部に影響を及ぼす他の疾患、例えば糖尿病網膜症、緑内障および網膜色素変性症などは、世界中で不可逆的な失明に関する大部分の症例を占めている。現在、後眼部疾患の処置は、後眼内の標的組織に薬物の有効用量を送達する際の困難性により大幅に制限される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(本発明の要旨)
カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を含む眼科用組成物は、本発明に開示される。本開示内容の眼科用組成物は、混合ミセルの水溶液である。本明細書に開示された眼科用組成物は生体適合性であって、眼の症状を処置するために該眼への局所適用に特に有用である。本明細書に示した局面に従って、カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤;約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤;および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤を包含しており、ここで該第一の界面活性剤のHLB指数および該第二の界面活性剤のHLB指数との間の絶対相違が約3を超えており、該組成物が混合ミセルを形成する医薬組成物を提供するものである。
【0005】
本明細書に示した局面に従って、カルシニューリン阻害剤;ビタミンE TPGS;およびオクトキシノール40を包含する医薬組成物を提供するものであり、該組成物が眼の組織への局所適用に好適である。
【0006】
本明細書に示した局面に従って、mTOR阻害剤;ビタミンE TPGS;およびオクトキシノール40を包含する医薬組成物を提供するものであり、該該組成物は眼の組織への局所適用に好適である。
【0007】
本明細書に示した局面に従って、カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を、溶媒中で約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤と共に混合して、溶媒を形成する工程;該溶媒溶液を蒸発させて、固体様物質を形成させる工程;水溶液を用いて該固体様物質を水和する工程;および該固体様混合物を溶解して、混合ミセル組成物を生成する工程を含む該混合ミセル組成物を製造する方法が提供される、ここで該組成物は光学的に透明である。
【0008】
本明細書に示した局面に従って、それが必要な被検対象において、治療上有効量のカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を含む組成物を被検対象の眼へ局所投与することを含む、眼疾患を処置するための方法が提供される、ここで該組成物は、ビタミンE TPGS;およびオクトキシノール-40をさらに有しており、該組成物は混合ミセルの水溶液である。
【0009】
本明細書に示した局面に従って、ミセル内にカプセル化されたカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を有する混合ミセル医薬組成物を提供すること、ここで該ミセルは約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤を用いて形成する;ならびに動物に該医薬組成物の量を、炎症性眼疾患を処置する、減少する、改善する、または緩和するために十分な頻度で投与することを含む、該動物における該炎症性眼疾患を処置するため、低下するため、改善するため、または緩和するための方法が提供される。
【0010】
本明細書に示した局面に従って、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤により形成したミセル内にカプセル化されたカルシニューリン阻害剤を有する混合ミセル医薬組成物を提供すること、ならびに該被検対象に、眼底の症状または障害を処置、減少、改善または緩和するために十分な頻度で該医薬組成物の量を投与することを含む、被検対象における眼底の症状または障害を処置、低下、改善または緩和するための方法が提供される。
【0011】
本明細書に示した局面に従って、ビタミンEトコフェロール-ポリエチレングリコールコハク酸エステル(TPGS)誘導体およびエトキシ化オクチルフェノール界面活性剤から形成された混合ミセルの水溶液を含む人工の涙液組成物が提供される。
【0012】
(図面の簡単な説明)
本明細書に開示した実施態様に従って、添付の図面を参照してさらに説明され、この類似した構造はいくつかの図表を通じて数字等により言及される。提示された図面は、本発明に開示された実施態様の原理を説明するために位置づけられる以外には重点をおく必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本開示内容の0.2%ボクロスポリン(voclosporin)を含有する混合ミセル製剤の実施態様による、処置30日間にわたるイヌ科KCS被検対象の平均シルマー涙液試験(STT)値のグラフ表示を示すものである。
【0014】
【図2】図2は、14C-ボクロスポリンを有する本明細書に開示した実施態様の混合ミセル医薬組成物を雌のニュージーランド白色ウサギに単回(1日)の局所投薬した後のボクロスポリンの組織レベルを示す。ボクロスポリンの治療レベルが24時間評価でさえ認められ、これは一日に一回(QD)の投薬が本発明に開示された実施態様の該水性混合ミセル組成物を用いて可能であることを支持するものである。該実験には、類似の結果(データは示していない)を示す雄のウサギも含められる。
【0015】
【図3】図3A-Dは、14C-ボクロスポリンを有する本明細書に開示した実施態様の混合ミセル医薬組成物を雌のニュージーランド白色ウサギに、両眼で一日に1回、単回(1日)または反復(7日間)の局所適用した後のボクロスポリンの平均の眼の組織濃度を示す。図3Aは、角膜中のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図3Bは、虹彩/毛様体中のボクロスポリンの平均の眼組織濃度を示す。図3Cは、涙腺中のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図3Dは、水晶体中のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。
【0016】
【図4】図4A-Dは、14C-ボクロスポリンを有する本明細書に開示した実施態様の混合ミセル医薬組成物を、雌のニュージーランド白色ウサギに、両眼で一日に1回、単回(1日)または反復(7日間)の局所適用した後のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図4Aは、下部結膜中のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図4Bは、下瞼内のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図4Cは、瞬膜内のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図4Dは、強膜内のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。
【0017】
【図5】図5A-Dは、14C-ボクロスポリンを有する本明細書に開示した実施態様の混合ミセル医薬組成物を雌のニュージーランド白色ウサギに、両眼で一日に1回の単回(1日)または反復(7日間)の局所適用した後のボクロスポリンの眼組織および体液の平均濃度を示す。図5Aは、上部結膜中のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図5Bは、上瞼におけるボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図5Cは、房水中のボクロスポリンの平均眼体液濃度を示す。図5Dは、硝子体液中のボクロスポリンの平均眼体液濃度を示す。
【0018】
【図6】図6A-Dは、14C-ボクロスポリンを有する本明細書に開示した実施態様の混合ミセル医薬組成物を雌のニュージーランド白色ウサギに、両眼で一日に1回の単回(1日)または反復(7日間)局所適用した後のボクロスポリンの眼組織および体液の平均濃度を示す。図6Aは、涙中のボクロスポリンの平均眼体液濃度を示す。図6Bは、顎下リンパ節中のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図6Cは、視神経中のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。図6Dは、脈絡膜/網膜中のボクロスポリンの平均眼組織濃度を示す。
【0019】
【図7】図7は、14C-ボクロスポリンを有する本明細書に開示した実施態様の混合ミセル医薬組成物を雌のニュージーランド白色ウサギに、両眼で一日に1回の反復(7日)局所適用した後のボクロスポリンのCmax値を示すグラフである。
【0020】
上記に規定した図面は本明細書に開示した実施態様を示すものであるが、その他の実施態様も議論されたとおりに理解される。この開示は、代表的な説明の例示として存在しており、制限されるものではない。多くの他の改変および実施態様は、当業者により考えられ、本発明に開示された実施態様の範囲および基本的な精神の範囲内に全て存在し得る。
【発明の詳細な説明】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本明細書にて開示した実施態様は、混合ミセルの局所適用形態においてカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を含む医薬組成物に関する。本開示内容の医薬組成物は、患者または被検対象における眼の症状を、処置する、減少させる、改善する、および緩和することが判った。実施態様において、該組成物を、炎症性の眼の表面疾患などの眼疾患の処置に使用できる。かかる疾患の例示には、ドライアイ症候群(DES)、シェーングレン症候群、ブドウ膜炎、結膜炎(伝染性結膜炎)、角膜炎、角結膜炎、春季角結膜炎(VKC)、アトピー性角結膜炎(AKC)、痕跡性結膜炎などの眼の表面の自己免疫障害、眼瞼炎および強膜炎等が挙げられるが、これに限定するものではない。
【0022】
実施態様において、該組成物を、眼底の症状および/または障害の処置に使用できる。かかる症状/障害の例示には、後部ブドウ膜炎、加齢性黄斑変性症(AMD, ウェットおよびドライ)、糖尿病の眼の症状、例えば糖尿病性網膜症(DR)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)等、緑内障、眼の高血圧、手術後の眼の痛みおよび炎症、眼の新血管形成、例えば後眼部新血管形成(PSNV)等、増殖性硝子体網膜症(PVR)、サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎、脈絡膜新生血管膜(CNVM)、血管の閉塞性疾患、網膜色素変性症、視神経炎、痕跡性眼の表面疾患、眼の感染、炎症性の眼疾患、眼の表面疾患、角膜疾患、網膜疾患、例えば網膜上膜等、全身性疾患の眼の徴候、遺伝性の眼の症状、ならびに眼の腫瘍が挙げられるが、これに限定されない。
【0023】
実施態様において、該組成物を、例えば移植後の角膜の同種移植片の移植拒絶を予防するために使用できる。炎症においてT-リンパ球は外来組織の拒絶を媒介する重要な役割を果たすことがよく知られている。拒絶の防止は、移植した角膜の健康状態を維持する際に最も重要である。拒絶は、角膜、例えば角膜上皮、角膜間質または角膜内皮を含むあらゆる層において起こり得る。角膜の機能は、内皮拒絶後に危険にさらされる可能性がある。該内皮層は、角膜支質から水を汲み出すポンプとして作用して凝縮状態(compact state)にて角膜を維持するように働く。内皮層の機能が損なわれれば、コラーゲン繊維が失方向性(disorientation)となり、角膜の透明度が失われ得る。ヒトの内皮細胞は非再生性であり、また拒絶開始の際のドナー細胞の損失は不可逆性であり、結果として移植機能および生存の低下をもたらし得る。従って、角膜の移植レシピエントにおける拒絶の予防または処置に関するあらゆるゴールは、内皮細胞の損失を最小にすることである。本開示内容の該組成物は、角膜の同種移植片移植後の拒絶の予防に使用することができる。
【0024】
本開示内容の該組成物または方法のいずれかにより処置される患者または被検対象は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味し得る。実施態様において、本開示内容は、処置が必要なヒト患者における眼疾患の処置のための方法を提供する。実施態様において、本開示内容は、処置が必要なヒト被検対象において炎症性眼疾患の処置のための方法を提供するものである。別の実施態様において、本開示内容は、処置が必要な獣畜被検対象、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウサギ、アレチネズミ、ハムスター、齧歯動物、鳥類、水棲哺乳類、ウシ、ブタ、ラクダおよび他の動物が挙げられるがこれらに限定するものではない被検対象における眼疾患の処置のための方法を提供する。
【0025】
本明細書に使用したとおり、用語「眼の疾患」、「眼の症状」、「目の疾患」および「目の症状」とは、視界を脅かす危険性がある、眼の不快感をもたらし得る、および全身的な健康問題の前兆となり得る眼の疾患/症状をいう。
【0026】
本明細書に使用したとおり、用語「前眼部疾患」とは、眼の表面、前房、虹彩および毛様体、ならびに眼の水晶体に影響を及ぼす全ての障害をいう。眼の表面には、角膜、結膜、瞼、涙坪およびマイボーム腺、ならびに相互接続神経が含まれる。
【0027】
本明細書に使用したとおり、用語「後眼部疾患」および「眼底疾患」とは、後眼部に影響を及ぼす全ての障害をいう。後眼部疾患とは、後眼部位、例えば脈絡膜または強膜、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経および血管、ならびに後眼部位を血管新生するかまたは刺激する神経に主に影響を及ぼす疾患である。
【0028】
本明細書において使用したように、用語「生体適合性」および「非刺激性」とは、生存組織において毒性、有害性または免疫学的応答をもたらさずに、生物学的に適合し得る特性を指す。本明細書に開示した組成物は生体適合性である。同様に、本開示内容の該組成物の成分は、眼組織に対して本来的に刺激性でない。
【0029】
本明細書において使用したとおり、用語「エマルジョン」とは、2以上の非混合液体の混合物をいい、一つの液体がもう一方の液体に分散されている場合をいう。エマルジョン、例えば油および水の親和性混合物は、一般的に濁った外観または乳白色の外観のものである。
【0030】
本明細書において使用したとおり、用語「ミセル」は、界面活性剤分子の凝集体(またはクラスター)である。ミセルは、界面活性剤の濃度が臨海ミセル濃度(CMC)よりも高い場合にのみ形成する。界面活性剤は、それらが疎水性および親水性基の両方を含む両親媒性である化学物質である。ミセルは、例えば球形状、円筒状、および円盤状の形態を含めた様々な形状で存在できる。少なくとも2つの異なる分子種を含んでいるミセルは、混合ミセルである。本開示内容の眼科用組成物には、水性の透明な混合ミセル溶液が挙げられる。
【0031】
重合性ミセルは、貧水溶性(即ち、水不溶性)または疎水性薬物の送達のための医薬用ナノ担体として利用され、これはミセルの疎水性内部コアに溶解され得る。このように、ミセルは、多様な疎水性薬物の溶解性およびバイオアベイラビリティーを改良するように働くことができる。小さなサイズのミセル(通常、約10〜約100 nm)は、関連した活性成分を、標的化組織中に効率良く蓄積できる。また、小さなサイズのミセルは、カットオフサイズが0.22μmの膜の濾過によりミセルの滅菌に有利とし得る。ミセルは1以上の重合性非イオン性界面活性剤から形成され得る。該ミセルサイズが可視光波長よりも小さいため、光が小さなミセルにより散乱されず、透明、清澄な溶液になると考えられる。
【0032】
本明細書において使用したとおり、用語「光学的透明度」は、90%以上の1.0cmパスにおいて400nm波長の光の透過を言う。溶液の透明度は、可視光照射(約350nm)の最小波長よりも一般的に小さいミセルサイズにより生じる。実施態様において、本開示内容の眼科用組成物は、一般的に0.1以下の吸収により実質的に透明である;好ましくは400nmで測定した0.05以下の吸収を有する。
【0033】
HLB指数(親水性/親油性のバランス)は、非イオン性界面活性剤の親水性または親油性の測定として1950にGriffinにより導入された概念である。Marszallのフェノール滴定方法により実験的に決定され得る;「Parfumerie、Kosmetik」、Vol. 60、1979、pp. 444-448を参照されたい;別の文献がRompp、Chemistry Lexicon、8th Edition 1983、p.1750においても見出される。例えば米国特許番号第4,795,643号(Seth)を参照されたい。
【0034】
ドライアイ症候群(DES、慢性のドライアイ、乾燥角膜炎;眼球乾燥症;乾性角結膜炎)は、眼の表面を維持する天然の涙液層の損失または組成変化もたらす多様な障害をふくむ症状として規定され得る。この涙液層がないと、視界が損なわれ、被検対象は重度の眼の不快感をこうむる。DESは、過剰な涙液の蒸発または涙液生成部位である涙腺における涙液産生の制限によりもたらされ得る。この症状の正確な病因は知られていないが、涙液産生の低下と涙腺炎症との関連を支持する証拠が存在する。現在のDESに用い得る治療法には、より有効かつ良好な認められる製品についての十分な余地が残っている。
【0035】
DESはまた、涙および唾液を生成する腺が損傷している自己免疫障害であるシェーングレン症候群の兆候でもある。これはドライマウス、涙の分泌低下、および他の乾燥粘膜をもたらす。
【0036】
ブドウ膜炎は、ブドウ膜に作用する眼の内部の炎症である。該ブドウ膜は、強膜および網膜の間の眼の層であり、虹彩、毛様体および脈絡膜をふくむ。該ブドウ膜は、大部分の血液供給を網膜に供給する。ブドウ膜炎は、眼の慢性炎症をもたらす自己免疫疾患と見なすことができる。ブドウ膜炎の進行中に、炎症過程に関与する重要な細胞であるT-リンパ球の関与を示す十分な証拠がある。この炎症は、視界損失域を引き起こす脈絡膜および網膜上の瘢痕化域をもたらし得る。ブドウ膜炎の様々な形態があり、前部ブドウ膜炎、扁平部炎、および後部ブドウ膜炎等が挙げられる。ブドウ膜炎が非処理のままであれば重症な合併症が発症し得る;白内障、緑内障、網膜剥離、網膜の浮腫および永続的な視界損失が挙げられる。
【0037】
前部ブドウ膜炎(虹彩炎)は、眼の前部で起こり、最も一般的なブドウ膜炎の形態である。扁平部炎は、扁平部炎、即ち虹彩および脈絡膜の間の狭い領域の炎症である。この症状は、若い男性にてより頻繁に発症するが、通常は別の疾患とは関連はない。後部ブドウ膜炎(軟骨炎)は主に脈絡膜に影響する;該ブドウ膜の後部。網膜も含まれる場合には、繊毛網膜炎と呼ばれる。後部ブドウ膜炎は、自己免疫疾患と関連して発症し得るか、または全身性感染となる。後部ブドウ膜炎では、炎症は、数ヶ月から数年継続する可能性があり、また処置を行っても永続的な視界損傷をもたらす可能性がある。
【0038】
ブドウ膜炎は、視界障害、眼の痛み、および視力低下をもたらし得る。米国において失明に関する新たな症例の約10%はブドウ膜炎によりもたらされていることが推定される。米国のみでおおよそ300,000の人々がブドウ膜炎に罹っており、この大多数は前部ブドウ膜炎に罹っている。ブドウ膜炎の処置としてFDAに認可された唯一の療法群はコルチコステロイド類であるが、複数の副作用、例えば高血圧、高血糖症および高コレステロール血症、ならびに眼内の緑内障および白内障形成が知られている。
【0039】
結膜炎(伝染性結膜炎)とは、結膜ならびに瞼の内側を覆いかつ強膜の暴露領域を覆う保護膜または白目に関する膨れ、そう痒、ヒリヒリ感および充血をもたらす疾患の群を表す。
【0040】
角膜炎は、角膜(眼の前面において透明な部分)の炎症である。角膜炎は、感染(細菌、真菌、ウイルス生物、寄生生物等)または非感染剤(例えば、自己免疫性疾患の特定の型が多様な非感染性角膜炎と関連している)によりもたらされ得る。
【0041】
角結膜炎は、角膜および結膜の炎症をいう。
【0042】
春季角結膜炎(VKC)は、上瞼にて、堅く、隆起した丸石様の瘤を特徴とする再発性の眼の炎症性疾患である。また、結膜の膨れおよび肥厚化が存在し得る。該結膜は、角膜を除いて瞼ならびに眼の暴露部を覆う最外部膜である。
【0043】
アトピー性角結膜炎は、いわゆるアトピーとよばれる症状の結果である。アトピーとは免疫系が特定のアレルゲンに応答する際に通常よりも多く抗体を生成する遺伝子疾患である。
【0044】
全身免疫性媒介疾患、例えば痕跡性結膜炎、および眼の表面の他の自己免疫障害は、急性および慢性の自己反応機構が眼に対して顕著な損傷をもたらし得る症状の臨床的不均質群を示す。重症かつ影響を与える結膜の上皮および固有質の瘢痕形成が確実となった場合に、線維症の結果として顕著な機構に関する変化を導く。これらの症状は、一般的にはめったに起こらないが、広範囲の病理学および視覚障害の原因であり得る。
【0045】
眼瞼炎は、瞼の炎症をもたらす一般的な症状である。
【0046】
強膜炎は、強膜として知られる白い眼の外膜(白眼)に影響を及ぼす重度の炎症性疾患である。
【0047】
カルシニューリンは、細胞内のシグナル伝達に関与するカルシウム/カルモジュリン-調節タンパク質ホスファターゼである。カルシニューリン阻害剤は、遺伝子調節に関与する細胞性酵素であるカルシニューリンホスファターゼ(PP2B、PP3)を標的化することにより適切な基質のカルシニューリン脱リン酸化を遮断する物質である。この一般的な治療プロファイルを示す化合物の別の分類がmTOR阻害剤である。mTOR阻害剤は、「ラパマイシンの哺乳類標的」(mTOR)として知られる分子標的を標的とする。この分類の典型的な化合物はシロリムスである。
【0048】
加齢性黄斑変性(症)(AMD)は、くっきりとした中心視を徐々に損なわれる加齢に関連する疾患である。AMDは網膜の中心に位置する黄斑に影響する。AMDは2つの形態で発症する:ウェットおよびドライ。ウェット型AMDは、網膜裏側の異常な血管が黄斑下で成長し始める場合におこる。これらの新規血管は非常に脆い傾向があり、血液や体液が漏出することがおおい。血液および体液により、眼の眼底にてその正常な位置から黄斑を隆起させる。黄斑に対する損傷が直ぐにおこる。黄斑の光感受性細胞がゆっくりと崩壊する場合に、ドライ型AMDは発症し、患眼の中心視野が徐々にぼやける。
【0049】
糖尿病は、多くの方法にて眼に影響を及ぼす可能性がある。糖尿病性網膜症(DR)は、眼底で(網膜)光感受性組織の血管に損傷をもたらす糖尿病の合併症である。最初に、糖尿病性網膜症は、兆候はもたらさないか、または軽度の視界の問題を引き起こし得る。しかし、最終的には、糖尿病性網膜症は失明をもたらし得る。糖尿病性黄斑浮腫(DME)とは、黄斑内での血管からの体液の漏出を理由とする(真性)糖尿病における網膜の腫れである。
【0050】
眼の新血管形成は、眼における血管の異常または過形成である。眼の新血管形成は、糖尿病性網膜症および加齢性黄斑変性(症)(ARMD)において見られている。
【0051】
増殖性硝子体網膜症(PVR)は、眼内の瘢痕組織である。細胞が増殖するという理由で「増殖性」、また問題が硝子体および網膜に関与するという理由で「硝子体網膜症」である。PVRにおいて、瘢痕組織は、収縮する網膜でシート状となり、この顕著な収縮が、網膜を眼の中心に牽引し、網膜を大きく変形させる。PVRは、前部および周囲両方の網膜のフォールディングにより、後部および前部で起こり得る。
【0052】
サイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルスに関連するもので、ほぼ全員に存在するものである。疾患(HIV)、臓器移植、骨髄移植または化学療法によりヒトの免疫系が抑制される場合に、CMVウイルスは眼および他の身体に損傷および疾患を引き起こし得る。CMVは、網膜への損傷を引き起こす病因の約30%にて眼に影響を及ぼす。これはCMV網膜炎と呼ばれる。
【0053】
視神経が炎症を起こす場合に、視神経炎が起こり、ミエリン鞘が損傷性となるか、または破壊される。眼の後部に位置する視神経の部位でおこる神経損傷は、視神経炎と呼ばれ、時に、視神経炎について使用される別の用語である。
【0054】
黄斑パッカーとしても知られる上膜は、黄斑全体に形成する瘢痕組織様膜である。通常ゆっくりと進行し、ぼやけおよび歪曲もたらすことにより中心視野に影響を及ぼす。進行するに伴い、黄斑上の該膜を牽引することにより、隆起をもたらし得る。
【0055】
本開示内容のカルシニューリン阻害剤は、カルシニューリン抑制活性を有するイムノフィリン-結合化合物が好ましい。イムノフィリン-結合カルシニューリン阻害剤は、イムノフィリン、例えばシクロフィリンおよびマクロフィリンと共にカルシニューリン阻害複合体を形成する化合物である。シクロフィリン-結合カルシニューリン阻害剤の例示は、シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体(以降、シクロスポリン)であり、マクロフィリン-結合カルシニューリン阻害剤の例示はアスコマイシン(FR 520)およびアスコマイシン誘導体(以後、アスコマイシン)である。真菌種のなかの天然であるか、または発酵方法の操作または化学誘導体化により得られる、広範囲のアスコマイシン誘導体が知られる。アスコマイシン型マクロライドには、アスコマイシン、タクロリムス(FK506)、シロリムスおよびピメクロリムスが挙げられる。
【0056】
土壌真菌種であるPotypaciadium inifilatumから最初に抽出されたシクロスポリンは、環状11-アミノ酸構造を有し、例えばシクロスポリンAからI、例えばシクロスポリンA、B、C、D およびGが挙げられる。シクロスポリンは、免疫応答性リンパ球、特にT-リンパ球の細胞質性タンパク質シクロフィリンと結合して、コンプレックスを形成する。該コンプレックスは、通常の環境下では、インターロイキン-2(IL-2)の転写を誘導するカルシニューリンを阻害する。シクロスポリンはまた、リンフォカイン産生を阻害し、インターロイキンを放出し、エフェクターT-細胞の機能を低下させる。
【0057】
ボクロスポリンは、シクロスポリンAの半合成の誘導体であるより強力かつ毒性が低い次世代のカルシニューリン阻害剤である。このクラスの他の分子と同様に、ボクロスポリンは、免疫応答性リンパ球、特にTリンパ球を可逆的に阻害し、またリンフォカイン産生および放出も阻害する。この作用はカルシニューリンの阻害により最初に媒介され、ホスファターゼ酵素は細胞の細胞質に見出された。ボクロスポリンは、カルシニューリンのラッチ/調節領域中により深く伸張することが見出された二重結合により単一の炭素伸張を有する。実施態様において、本開示内容の該組成物は、ボクロスポリンのトランス型、トランス-ISA247 CAS RN 368455-04-3であり、これは例えば米国特許公開番号第2006/0217309号に記載されており、出典明示により本明細書に組み込まれる。さらに、ボクロスポリンの組成物が、例えば米国特許番号第7,060,672号に記載されており、これは出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0058】
タクロリムス(FK506)は、真菌生成物でもあるが、マクロライドラクトン構造を有する別のカルシニューリン阻害剤である。タクロリムスは、肝臓、腎臓、心臓、肺および心臓/肺の移植と共に免疫抑制剤として使用されている。タクロリムスは、IL-2の産生を阻害することが示されてきた。タクロリムスは、イムノフィリン(FK-結合タンパク質12、FKBP12)に結合し、その後カルシニューリンに該コンプレックスが結合して、そのホスファターゼ活性を阻害する。
【0059】
シロリムス(ラパマイシン)は、放線菌類のStreptomyces hygroscopicusから単離された微生物の生成物である。シロリムスは、mTORコンプレックス1(mTORC1)を直接結合することによりラパマイシン(mTOR)経路の哺乳類標的を阻害するコンプレックスを形成するイムノフィリン(FK-結合タンパク質 12、FKBP12)に結合する。シロリムスは、インターロイキン-2 (IL-2)に対する応答を阻害し、これによりT-およびB-細胞の活性化を阻害する。これに対して、タクロリムスおよびシクロスポリンは、IL-2の産生を阻害する。
【0060】
ピメクロリムスは、タクロリムスと同様にMalassezia sppに対して抗真菌性特性を有することが見出された新規カルシニューリン阻害剤である。
【0061】
カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンA、ボクロスポリン、アスコマイシン、タクロリムス、ピメクロリムス、そのアナログ、またはその医薬上許容し得る塩を、本開示内容の混合ミセル組成物に用いることができる。実施態様において、該カルシニューリン阻害剤はボクロスポリンである。
【0062】
mTOR阻害剤、例えばシロリムス(ラパマイシン)、テムシロリムス、エベロリムス、そのアナログ、またはその医薬上許容し得る塩は、本開示内容の混合ミセル組成物に使用され得る。
【0063】
本開示内容は、カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤、および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤、を含む医薬組成物を提供するものであって、ここで該医薬組成物は混合ミセルを形成する。通常、該混合ミセルは、該組成物の局所適用が達成されるように水溶液中で提供される。実施態様において、第一の界面活性剤のHLB指数および第二の界面活性剤のHLB指数との間の絶対相違が約3を超える数である。該組成物を、前眼部および後眼部症状の双方を含めた様々な眼の症状を処置するために眼への局所適用に使用することができる。
【0064】
実施態様において、本開示内容の医薬組成物は、シクロスポリンA、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤、および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤を含む。実施態様において、該組成物は、シクロスポリンA、ビタミンE TPGS、およびオクトキシノール-40を含む。実施態様において、本開示内容の混合ミセル組成物は、ボクロスポリン、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤、および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤を含む。実施態様において、該組成物は、ボクロスポリン、ビタミンE TPGS、およびオクトキシノール-40を含む。実施態様において、本開示内容の混合ミセル組成物は、タクロリムス、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤、および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤を含む。実施態様において、該組成物は、タクロリムス、ビタミンE TPGS、およびオクトキシノール-40を含む。実施態様において、本開示内容の混合ミセル組成物は、mTOR阻害剤、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤、および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤を含む。実施態様において、該mTOR阻害剤は、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、そのアナログまたはその医薬上許容し得る塩から選択される一つを含む。実施態様において、該組成物は、シロリムス、ビタミンE TPGS、およびオクトキシノール-40を含む。別の実施態様において、本開示内容の混合ミセル組成物は、ピメクロリムス、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤、および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤を含む。実施態様において、該組成物は、ピメクロリムス、ビタミンE TPGS、およびオクトキシノール-40が開示される。
【0065】
本開示内容の実施態様において、2つの界面活性剤は、ボクロスポリンの混合ミセル製剤を生成させるために使用され、ボクロスポリンの水溶解性およびバイオアベイラビリティーの増加をもたらす。実施態様において、該混合ミセル構造には、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤、および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤が包含される。実施態様において、第一の界面活性剤のHLB指数および第二の界面活性剤のHLB指数の間の絶対相違は約3を超える数である。
【0066】
実施態様において、約10を超えるHLBを有する第一の界面活性剤は、様々な長さのポリエチレングリコールと様々な化学成分のエステルおよびエーテル結合を有するビタミンEの様々な化学誘導体から選択される。特に好ましいものは、約500および6000DaのPEG分子量を有するビタミンEトコフェロールポリエチレングリコールサクシネート(TPGS)誘導体である。好ましい実施態様において、約10を超えるHLB指数を有するビタミンE 重合性誘導体は、ビタミンE トコフェロールポリエチレングリコール1000サクシネート(ビタミンE TPGS、トコフェルロサン)である。実施態様において、ビタミンE TPGSは、該組成物中に約0.01wt%〜約20wt%/容量にて存在する。実施態様において、ビタミンE TPGSは、該組成物中に約0.1 wt%〜約10 wt%/容量にて存在する。明細書全体をとおして、該用語、重量パーセント(wt%)とは、別途記載がなければ、単位容量(unit volume)あたりの量を指すものであると理解されるべきである。
【0067】
ビタミンE トコフェロールポリエチレングリコール1000サクシネート(ビタミンE TPGS)は、天然起源のビタミンEの水溶性誘導体である両親媒性賦形剤である。ビタミンE TPGSまたはペグ化されたビタミンEは、ポリエチレングリコールサブユニットがビタミンE分子の該環のヒドロキシルにてコハク酸ジエステルにより結合したビタミンE 誘導体である。ビタミンE TPGSは、約13のHLB指数を有する親水性非イオン界面活性剤である。様々な化学成分のエステルおよびエーテル結合を含むビタミンE TPGSの様々な化学誘導体は、ビタミンE TPGSの定義に含められる。水溶性ビタミンEの起源として機能するほかに、ビタミンE TPGSは、乳化剤、可溶化剤、吸収エンハンサー、および脂溶性薬物送達製剤のためのビヒクルとしての使用を提案される。
【0068】
実施態様において、13よりも大きいHLBを有する第二の界面活性剤は、親水性ポリエチレングリコール(PEG)-アルキルエーテル界面活性剤またはポリエチレングリコール(PEG)-アルキルアリールエーテル界面活性剤である。実施態様において、この界面活性剤は、約13よりも大きいHLBを有するPEG 5-100 オクチルフェニルエーテルから選択される。PEG オクチルフェニル化合物は、オクトキシノール-9、オクトキシノール-10、オクトキシノール-11、オクトキシノール-12、オクトキシノール-13、オクトキシノール-16、オクトキシノール-20、オクトキシノール-25、オクトキシノール-30、オクトキシノール-33、オクトキシノール-40、およびオクトキシノール-70からなる群から選択される。実施態様において、PEG-アルキルフェニルエーテル界面活性剤は、オクトキシノール-40である。実施態様において、約10より大きいHLBを有する界面活性剤は、PEG-5-100 ノニルフェニル エーテル;チロキサポール(エトキシ化 p-tert-オクチルフェノールホルムアルデヒドポリマー)、PEG-脂肪酸モノエステル界面活性剤、PEG-グリセロール脂肪酸エステル、およびPEG-ソルビタン脂肪酸エステルから選択される。PEG-脂肪酸モノエステル界面活性剤は、PEG-15 オレエート、PEG-20ラウレート、PEG-20オレエート、PEG-20ステアレート、PEG-32ラウレート、PEG-32オレエート、PEG-32 ステアレート、PEG-40ラウレート、PEG-40オレエート、およびPEG-40ステアレートが挙げられるが、これらに限定しない。PEG-グリセロール脂肪酸エステルには、PEG-15 ラウリン酸グリセリル、PEG-20 ラウリン酸グリセリル、PEG-30 ラウリン酸グリセリル、PEG-40 ラウリン酸グリセリル、およびPEG-20 ステアリン酸グリセリルが挙げられるが、これらに限定しない。PEG-脂肪酸ソルビタンエステルには、PEG-4 モノラウリン酸ソルビタン、PEG-4 モノステアリン酸ソルビタン、PEG-5 モノオレイン酸ソルビタン、PEG-20 モノラウリン酸ソルビタン、PEG-20 モノパルミチン酸ソルビタン、PEG-20 モノステアリン酸ソルビタン、およびPEG-20 モノオレイン酸ソルビタンが挙げられるが、これらに限定しない。実施態様において、約13を超えるHLBを有する第二の界面活性剤はオクトキシノール-40である。オクトキシノール-40 (IGEPAL CA-897)は、約18のHLB 指数を有する。実施態様において、オクトキシノール-40は、約0.001wt%〜約10wt%/容量で該組成物中に存在する。実施態様において、オクトキシノール-40は、約0.01wt%〜約5.0wt%/容量にて存在する。
【0069】
本開示内容に従って製剤され得るカルシニューリン阻害剤およびmTOR阻害剤には、シクロスポリンA、ボクロスポリン(LX211)、アスコマイシン、タクロリムス(FK506)、シロリムス、エベロリムス、およびピメクロリムスも挙げられ、またそのアナログ、医薬上許容し得る塩、エステルおよびプロドラッグも挙げられるが、これに限定しない。さらに考えられるものは、カルシニューリンまたはmTOR阻害剤と、1以上の薬剤、ビタミンおよび診断薬との混合物である。保存剤は、製剤を保存するのに使用されていてもいなくてもよい。実施態様において、オクトキシノール-40の規定量の混合物は、ビタミンE TPGSと共に混合ミセルを形成して、混合ミセルの内部コアを満たす水不溶性薬物に対する安定性および溶解性を生み出す。実施態様において、該混合ミセル組成物は、カルシニューリン阻害剤、ビタミンE TPGSおよびオクトキシノール-40を含む。該混合ミセル製剤は、カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤の透明な均質の水溶液である。実施態様において、ビタミンE TPGSは、カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤の可溶化に寄与し、水性条件の下で眼の不快感を低減させることができる。実施態様において、オクトキシノール-40は、眼の不快感の低減および光学的に透明である安定な混合ミセル製剤の形成に寄与する。
【0070】
本明細書に開示された実施態様の該組成物において、該カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤は、約0.01重量パーセント(wt%)〜約10wt%、約0.1〜約3.0 wt%の濃度にて存在する。実施態様において、本開示内容の該組成物は、実施例に示したように約0.2から約0.5 wt%のボクロスポリンを含む。実施態様において、該ビタミンE TPGS濃度は、約0.01 〜約20 wt%、約0.1〜約5 wt%である。オクトキシノール-40またはそのホモログ混合物は、約0.001から約10wt%、約0.01〜約3.0 wt%の濃度にて存在する。実施態様において、本開示内容の該組成物の界面活性剤の全量は全組成物の30パーセント以下であり、残る主要成分は水である。
【0071】
実施態様において、本開示内容の組成物は、約0.2wt%のボクロスポリン、約2.5wt%のビタミンE TPGS、および約2.0wt%のオクトキシノール-40を含む。実施態様において、本開示内容の組成物は、約0.5wt%のボクロスポリン、約3.5wt% のビタミンE TPGS;および約2.0 wt%のオクトキシノール-40を含む。別の実施態様において、本開示内容の組成物は、約2.0 wt%のボクロスポリン含む。
【0072】
脈絡膜、特に網膜を含めた眼底への部位特異的送達は、眼科治療の分野で研究者が直面する課題の一つである。向上してきてはいるが、局所投与後に適切な治療レベルにて網膜に達する薬物担体についての必要性は満たされていない。後記実施例に示したように、本発明に開示された実施態様の組成物の局所投与後にカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤薬物が眼底に到達できる、即ち眼底の眼の症状のための処置を提供できることが判った。
【0073】
本開示内容の該組成物を、様々な眼底の症状のために、様々な疎水性の水不溶性薬剤、例えばカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を眼底へ送達するために、局所適用される薬物送達プラットフォームとして使用することができる。水不溶性薬剤の好適なクラスには、ペプチド、エイコサノイド (例えば、プロスタサイクリンおよびプロスタグランジ)抗炎症剤、自律神経系薬剤 (例えば、βブロッカー、α-ブロッカー、β-アゴニスト、およびα-アゴニスト)、生物製剤、遺伝子治療剤(例えば、ウイルスベクター)、抗感染剤(例えば、抗真菌剤、抗生物質および抗ウイルス剤)、レチノイド、RNAi、光感作剤、ステロイド (例えば、エストロジェンおよびその誘導体)、混合薬剤、免疫調節剤、化学療法剤、G共役タンパク質受容体拮抗剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤、成長ホルモン阻害剤、インテグリン阻害剤、Sdf1/CXCR4経路阻害剤、およびnACh 受容体拮抗剤が挙げられるが、これに限定しない。好ましくは、水不溶性薬物がカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤である。
【0074】
本開示内容の該組成物を、局所適用される薬物送達のプラットフォームとして、例えばDMEを処置するために眼底へコルチコステロイドを送達するために使用することができる。コルチコステロイド類の例示には、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンおよびブテソニドが挙げられるが、これに限定しない。
【0075】
本開示内容の該組成物を、局所適用される薬物送達のプラットフォームとして、例えばDMEを処置するために眼底へ非ステロイド様の抗炎症性薬物(NSAID)を送達するために使用することができる。NSAIDの例示には、Cox-2阻害剤、例えば、セレコキシブ、ルボキシスタウリンおよびニメスリドが挙げられるが、これに限定しない。
【0076】
本開示内容の該組成物を、例えばAMDを処置するために眼底への抗成長因子分子を送達するために局所適用される薬物送達のプラットフォームとして使用できる。抗成長因子分子の例示には、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤、例えば、ペガプタニブ(マクジェン)、ラニビズマブ(ルセンチス)、およびベバシズマブ(アバスチン)が挙げられるが、これに限定しない。
【0077】
実施態様において、混合ミセルの内部コアを満たすカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤いずれかを有する本開示内容の混合ミセル組成物を、眼底の眼の症状を処置する方法において眼への局所適用に使用できる。実施態様において、カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤は、約0.01重量パーセント(wt%)〜約10wt%、好ましくは約0.1 wt%〜約3.0 wt%の濃度にて該組成物中に存在する。実施態様において、カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤はボクロスポリンであり、該ボクロスポリンは、約0.2 wt%〜約0.5 wt%の濃度にて該組成物中に存在する。実施態様において、ビタミンE TPGSは、約0.01 wt%〜約 20 wt%、好ましくは約0.1 wt%〜約5 wt%の濃度にて該組成物中に存在する。実施態様において、オクトキシノール-40またはそのホモログ混合物は、約0.001 wt%〜約10 wt%、好ましくは約0.01 wt%〜約3.0 wt%の濃度にて該組成物中に存在する。好ましくは、本明細書に開示した実施態様の組成物中の界面活性剤の全量は、該全組成物の約30パーセント以下であり、残る主要成分は水である。
【0078】
実施態様において、本明細書に開示した実施態様の混合ミセル組成物は、約0.2 wt% のボクロスポリン、約2.5 wt%のビタミンE TPGS、および約2.0 wt%のオクトキシノール-40を含む。実施態様において、本明細書に開示した実施態様の混合ミセル組成物は、約0.5 wt%のボクロスポリン、約3.5 wt% のビタミンE TPGS、および約2.0 wt%のオクトキシノール-40を含む。別の実施態様において、本明細書に開示した実施態様の混合ミセル組成物は、約 2.0 wt%にてボクロスポリンを含む。
【0079】
現時点で、殆どの眼疾患は、水溶性薬剤についての点眼薬および水不溶性薬剤については軟膏または水性懸濁液として投与される溶液の局所適用により処置される。これらの投薬形態は現在の市販製剤のおおよそ90%を占める。角膜は、局所適用薬剤の眼内移行のための主要経路を示す。薬物吸収は、最初に角膜を通じて、また水溶性の体液中で起こり、後眼部へと拡散する。薬物は、虹彩基部へと拡散し、次に後眼房水および後部組織中に拡散できる。薬物は、血液網膜関門に接触せずに扁平部炎から直接的に入ることが可能である。薬物は、側方拡散に続くブルッフ膜および該網膜色素上皮(RPE)の浸透により、強膜を超えて拡散できる。より少ない程度に、薬物は、結膜血管からまたは鼻涙管を介して体循環中で吸収され、網膜血管への全身的到達を獲得できる。
【0080】
下記実施例に示したとおり、本明細書に開示した実施態様の該水性混合ミセル組成物を用いる一日に一回(QD)の投薬が可能であることを示すボクロスポリンの治療レベルが、本開示内容の医薬組成物の投与24時間後に認められた。実施例に示したように、本開示内容の混合ミセル組成物中で提供されるボクロスポリンは、脈絡膜(choriod)/網膜中で高レベルにて検出され得るが、一方で低レベルのボクロスポリンが硝子体液中で検出される。本明細書に開示された該混合ミセル製剤において局所適用される場合に、カルシニューリン阻害剤のボクロスポリンは眼の後方に到達している。
【0081】
本開示内容の組成物はまた、他の成分、例えば添加剤、アジュバンド、緩衝液、等張剤、生体接着性ポリマーおよび保存剤を含有できるが、これに限定するものではない。眼への局所適用のためのこの開示した組成物のいずれにおいても、該混合物は、約pH5から約pH8にて製剤されるのが好ましい。このpH範囲は実施例に記載したとおり、該組成物への緩衝液の添加により達成され得る。実施態様において、該製剤における組成物中のpH範囲は、約pH 6.6〜約pH 7.0である。本開示内容の組成物を、任意の一般的な緩衝系、例えばリン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩およびホウ酸塩-ポリオール複合体により緩衝することができ、既知の技術に従って好適な生理学的値にpHおよびオスモル濃度が調整されることは理解されよう。開示内容の混合ミセル組成物は、緩衝溶液中で安定である。即ち、該組成物を不安定にさせる緩衝液と任意の他成分との間の有害な相互作用がない。
【0082】
等張剤には、例えばマンニトール、塩化ナトリウム、キシリトール等が挙げられる。これらの等張剤は、該組成物のオスモル濃度を調整するために使用され得る。一態様において、該製剤のオスモル濃度は、約250〜約 350 mOsmol/kgの範囲となるように調整される。好ましい局面において、該製剤のオスモル濃度は約 280〜約 300 mOsmol/kgの間に調整される。
【0083】
例えば、糖、グリセリンおよび他の糖アルコ−ルなどの添加剤は、本開示内容の該組成物に包含される。医薬用添加剤は、該組成物中の他成分の効率または有効性を増加させるように添加され得る。例えば、医薬用添加剤を本開示内容の組成物に添加して、カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤の安定性を改善すること、該組成物のオスモル濃度を調整すること、該組成物の粘度を調整すること、または別の理由、例えば効果的に薬物を送達することができる。本開示内容の医薬用添加剤の非限定的な例示には、糖、例えばトレハロース、マンノース、D-ガラクトース、およびラクトースが挙げられる。実施態様において、該糖を、薄層フィルムを水和する前に組成物に組み込むことができる(即ち、内部に)。別の実施態様において、該糖を水和ステップ(即ち、外部で)中に該組成物に組み込むことができる(実施例17を参照されたい)。実施態様において、本開示内容の水性の透明な混合ミセル溶液には、添加剤、例えば糖が含まれる。
【0084】
実施態様において、本開示内容の組成物は、さらに1以上の生体接着性ポリマーを含む。生体接着とは、特定の合成および生物学的マクロ分子および親水コロイドが生物組織に接着する能力をいう。生体接着とは、ポリマー、生物組織および周囲環境の特性に部分的に依存している複雑な現象である。いくつかのファクターは、ポリマーの生体接着能に関与することが判った;水素架橋(-OH、COOH)を形成することができる官能基の存在、陰イオン電荷の存在および強度、重合鎖に対する粘膜層に浸透する十分な弾力性、ならびに高分子量。生体接着システムは、歯科、整形外科、眼科、および外科的適用に用いられている。しかしながら、近年、他の領域、例えば軟組織を基にした人工置換物および生体活性剤の局所放出のための徐放システムにおける生体接着材の使用に大きな関心がもたれている。かかる適用には、口腔または鼻腔中へ薬剤の放出および経腸または直腸投与のためのシステムが挙げられる。
【0085】
実施態様において、本開示内容の組成物には、少なくとも1つの生体接着性ポリマーが包含される。生体接着性ポリマーは、該組成物の粘度を増強させて、これにより眼内の滞留時間を増加させることができる。本開示内容の生体接着性ポリマーには、例えば、カルボン酸重合体様のCarbopol(登録商標)(カルボマー)、Noveon(登録商標)(ポリカルボフィル)、セルロース誘導体、例えばアルキルおよびヒドロキシアルキルセルロース様のメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム様のローカストビーン(locust beam)、キサンタン、アガロース、カラヤ、グアーが挙げられ、そして他のポリマーには、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、Pluronic(登録商標)(ポロキサマー)、トラガカント、およびヒアルロン酸;眼への封入された医薬の徐放性送達および放出制御送達を提供するための相遷移ポリマー(例えば、アルギン酸、カラギーナン(例えば、Eucheuma)、キサンタンとローカストビーンガムとの混合物、ペクチン、酢酸フタル酸セルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロースおよびその誘導体、ヒドロキシアルキル化ポリアクリル酸およびその誘導体、ポロキサマーおよびその誘導体等が挙げられる。これらのポリマーにおける物理的特性は、単独または他のファクターと併用して、環境因子、例えばイオン強度、pHまたは温度における変化により媒介され得る。実施態様において、所望の1以上の生体接着性ポリマーは、該組成物中に約0.01 wt%〜約10 wt%/容量、好ましくは約0.1〜約5 wt%/容量にて存在する。実施態様において、本開示内容の該組成物は、例えば、PVP-K-30、PVP-K-90、HPMC、HEC、およびポリカルボフィルから選択される少なくとも1つの親水性ポリマー賦形剤をさらに含む。実施態様において、該ポリマー賦形剤は、PVP-K-90、PVP-K-30またはHPMCから選択される。実施態様において、該ポリマー賦形剤は、PVP-K-90またはPVP-K-30から選択される。
【0086】
実施態様において、保存剤が必要な場合には、所望により任意の十分知られた系、例えばEDTAを含む/含まないベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、Cosmocil(登録商標)CQまたはDowicil(登録商標)200を用いて該組成物を保存してもよい。
【0087】
該眼科用組成物は、生体適合性の、水性の、透明な混合ミセル溶液として眼に局所投与され得る。該組成物は、水性媒体に分散されるミセル内に組み込まれたおよび/またはカプセル化された薬剤を有する。
【0088】
実施態様において、本開示内容は、次の工程を含む混合ミセル組成物を製造する方法を提供する;溶媒中でカルシニューリンまたはmTOR阻害剤を10以上のHLB指数を有する第一の界面活性剤と混合して、溶媒溶液を形成させる工程;該溶媒溶液を蒸発させて、固体様物質を形成させる工程;13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤を含む水溶液を用いて固体様物質を水和して、混合物を形成させる工程;および該混合物を溶解して、該混合ミセル組成物を作る工程、ここで得られる該組成物は光学的に透明である。
【0089】
本開示内容の混合ミセル組成物を製造する際に使用することが出来る好適な溶媒には、短鎖アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールに加えてクロロホルム、アセトン、塩化メチレン、ジエチルスルホキシド、ジエチルホルムアミドおよびプロピレングリコールが挙げられる。2または3つの短鎖アルコールの組合せを使用してもよい。クロロホルムおよびアセトンの様な揮発性有機溶媒類を、短鎖アルコールと併用して使用してもよい。実施態様において、本開示内容は、次の工程を含む混合ミセル組成物の製造方法を提供する;カルシニューリン阻害剤を短鎖アルコール中でビタミンE TPGSと共に混合して、短鎖アルコール溶液を形成させる工程、該短鎖アルコール溶液を蒸発させて、固体様物質を形成させる工程、該固体様物質をオクトキシノール-40を含む水溶液を用いて水和して、混合物を形成させる工程および該混合物を溶解させて、該混合ミセル組成物をつくる工程、ここで得られる組成物は光学的に透明である。
【0090】
実施態様において、該短鎖アルコールはエタノールである。実施態様において、本開示内容は、エタノール溶液を形成するためにカルシニューリン阻害剤をビタミンE TPGSおよびオクトキシノール-40をエタノール中で混合することを含む混合ミセル組成物を製造する方法を提供する。実施態様において、該エタノールは95%エタノールである。別の実施態様において、該方法は、エタノール溶液を蒸発させて、固体様物質を形成させることを提供する。該固体様物質はエタノール溶液のロータリー真空蒸発から得られてもよく、ここで該固体様物質は薄いフィルムであり得る。固体様物質は、例えば凍結乾燥、フリーズドライ、噴霧乾燥によるか、または大規模および小規模のエバポレーター、例えばフィルムエバポレーター、遠心分離エバポレーター、およびボルテックスエバポレーターの使用によるエタノール溶液の蒸発から得られることができる。該固体様物質はエタノールを主に含まない(約<2%EtOH)が、約5%までの水を含有してもよい。実施態様において、該方法は、水溶液を用いて該固体様物質を水和する工程;および該混合物を溶解して該混合ミセル組成物を生成する工程を提供するもので、ここで得られる組成物は光学的に透明である。該溶解工程を、高音波処理、混合、ボルテックス処理、攪拌、ロータリーエバポレーターにおける回転運動による混合および/または水溶液中で固体様物質の振盪によるか、または当業者には周知の方法により行ってもよい。実施態様において、該方法は、水和工程の前に水溶液に生体接着性ポリマーをさらに混合することを含む。実施態様において、該生体接着性ポリマーは、PVP-K-30、PVP-K-90、HPMC、HEC、およびポリカルボフィルから選択される。実施態様において、該生体接着性ポリマーは、PVP-K-30またはPVP-K-90から選択される。実施態様において、混合ミセル組成物中のカルシニューリン阻害剤はボクロスポリンである。実施態様において、該ボクロスポリンは、該混合ミセル組成物中で約0.001%〜約10%にて存在する。
【0091】
該組成物のための医薬上許容し得るパッキング材には、ポリプロピレン、ポリスチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリカーボネート、塩化ポリビニリジン、および当業者には周知の他の材が挙げられるが、これに限定しない。該組成物は、成形同時充填(blow-fill-seal)技術を用いて無菌的に包装され得る。成形同時充填(BFS)とは、一体型の連続的な機械サイクルにて、空洞の容器が吹き込み成型され、滅菌生成物により充填されて封止される無菌充填過程をいうものであります。該技術は、高い生産効率および処理効率による経費節約を多くの場合提供する、従来の無菌充填および蓋付け操作に代わる技術である。実施態様において、本開示内容の該組成物は、単回使用用のビン、パケット、バイアル、アンプル、LDPE BFS容器、またはHDPE BFS容器に充填される。
【0092】
実施態様において、反復投与は、複数の単回使用パッケージとして供給される。別の実施態様において、該組成物は、定量適用が可能なビン、容器または装置に、例えば局所的な眼科適用のための点滴器を備えた容器などに詰められるのが好適である。
【0093】
この正確な投薬計画は臨床医師の判断に委ねられるが、本開示内容の該組成物を各眼に1日に1〜4回1〜2滴以上の液滴を置くことにより局所適用することが勧められる。例えば、該組成物は、1日に1、2、3、4、5、6、7または8回、またはそれ以上適用されてもよい。実施態様において、該組成物は、1〜2つの液滴を各眼に1日1回または2回置くことにより局所的に適用される。
【0094】
人工涙液は、特に乾性角結膜炎(ドライアイ)において不十分な涙液産生と関連があるとりわけ乾燥および刺激を処置するために使用される潤滑点眼薬である。人工涙液はまた、コンタクトレンズを湿らす、眼の検査中に眼を湿らすために使用され得る。通常、人工涙液は、水、塩およびポリマーを含有するが、天然の涙にみられるタンパク質は含まない。様々な人工涙液には、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(別名、HPMCまたはヒプロメロース)、およびヒドロキシプロピルセルロースなどの成分が含まれている購入できる市販薬である。副作用の効果は、既知の市販の人工涙において判っており、通常カルボキシメチルセルロース成分および他の類似の滑剤の結果である。これらの副作用には、例えば、眼の痛み、刺激、持続的な充血、または視界変が挙げられる。
【0095】
ある態様において、独特な生体適合性の人工涙液組成物は本明細書に開示されている。本開示内容の人工の涙液組成物は、該組成物が約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤から形成したミセルを包含する滅菌混合ミセル水溶液として製剤される。実施態様において、該水溶液には、親水性ポリマー、賦形剤、等張剤、緩衝液、保存剤、共溶媒または抗酸化剤のうちのものから選択される様々な成分が包含される。生体適合性の人工の涙液組成物は、刺激、充血、膨れ、アレルギー性喘息反応、コンタクトレンズの使用を理由とする刺激、ならびに眼の角膜の傷および擦り傷を処置するために使用され得る。
【0096】
多様な親水性ポリマー賦形剤を用いてもよく、例えばPVP-K-30、PVP-K-90、HPMC、HEC、およびポリカルボフィル等が挙げられるが、これらに限定するものではない。実施態様において、親水性ポリマー賦形剤はPVP-K-90である。
【0097】
様々な等張剤は、人工の涙液組成物の張度を、好ましくは天然の涙の張度調整するために用い得る。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよび/またはマンニトールを組成物に添加して、生理学的張度にちかづける。実施態様において、等張剤は塩化ナトリウムである。かかる等張剤の量は、添加される特定の薬剤によって変化する。しかしながら、一般的に該組成物は、約0.1-1.5% w/vの等張剤濃度を有する。
【0098】
適切な緩衝系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸ナトリウムの水溶液)は、貯蔵条件下でpHの推移を防ぐために添加され得る。特定の濃度は、用いる薬剤によって変化する。一般的に、かかる濃度は、約0.02〜2.0% w/vの範囲にある。実施態様において、該緩衝系はリン酸ナトリウムを包含する。さらに、リン酸ナトリウムには、リン酸一ナトリウム(即ち、一塩基)およびリン酸二ナトリウム(即ち、二塩基)が包含されてよい。実施態様において、緩衝系のpHは、本明細書に開示した実施態様の人工の涙液組成物が約6.5〜約7.5の範囲にあるように調整される。
【0099】
保存剤を、本開示内容の人工の涙液組成物に添加して、該組成物の保存期間を長期化し、多回用量ビンの使用を促進することができる。保存剤の例示には、塩化ベンザルコニウム(BAC)、クロロブタノール、ジーンアクア(GenAqua)(過ホウ酸ナトリウム塩)およびポリクワッド(Polyquad)(ポリクアテルニウム-1)が挙げられるが、これらに限定しない。
【0100】
本明細書に開示した実施態様に関する人工の涙液組成物のための代表的な製剤は、実施例16に示される。特定の濃度値を挙げたが、当業者には、様々な成分の濃度を変更できるということは理解されよう。同様に、各人工涙液組成物中に実施例16に挙げた成分の全てを含める必要はない。
【0101】
混合ミセル組成物を製造する方法は次の工程を含む;溶媒中でカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤と共に混合して、溶媒溶液を形成させる工程、該溶媒溶液を蒸発させて、固体様物質を形成させる工程;および水溶液を用いて該固体様物質を水和する工程;および該固体様混合物を溶解して、該混合ミセル組成物を生成させる工程、ここで該組成物は光学的に透明である。
【0102】
それが必要な被検対象には眼疾患を処置する方法は、治療上有効量のカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を含む組成物を該被検対象の眼に局所的に投与することを包含するものであり、該組成物はさらにビタミンE TPGSおよびオクトキシノール-40を有しており、ここで該組成物は混合ミセルの水溶液である。
【0103】
動物における炎症性眼疾患を処置、低下、改善または緩和するための方法は、ミセル内にカプセル化されたカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を有する混合ミセル医薬組成物を提供すること、該ミセルは約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤を用いて形成される;および該炎症性眼疾患を処置、減少、改善、または緩和するに十分な頻度で医薬組成物の量を動物に投与すること、を含む。
【0104】
被検対象における眼底の症状または障害を、処置、低下、改善または緩和するための方法は、約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤により形成したミセル内に封入されたカルシニューリン阻害剤を有する混合ミセル医薬組成物を提供すること;および眼底の症状または障害を処置、減少、改善または緩和するために十分な頻度で該医薬組成物の量を被検対象に投与すること、を含む。
【実施例】
【0105】
実施例
一般的に、全ての使用した試薬は購入でき、別途記載がなければさらに精製を必要とせずに使用される。ボクロスポリン(ボクロスポリン、LX211、ISA247)を、Isotechnika, Inc.(Edmonton, Alberta, Canada)から得た。Isotechnikaから入手したストックを、Lux Biosciences(the New Jersey Center for Biomaterials)により保存した;シクロスポリンAをXenos Bioresources,Inc.(Santa Barbara, CA)から得た;シロリムスおよびタクロリムスをHaorui Pharma-Cheminc.から得た。ビタミンE TPGS(NF Grade)をEastman Chemical Companyから得て、IGEPAL CA-897 (オクトキシノール-40)をRhodia, Inc.から得た。滅菌脱イオン水を、EASY Pure UV Compact Ultra Pure Water System(Barnstead、IA)を用いて研究所内で調製した。Kollidon(登録商標)30 (PVP)およびKollidon(登録商標)90 F (Povidone K 90)をBASFから得た。ヒドロキシエチルセルロース,100 cpsおよび5000 cps を、Spectrum, Methocel(登録商標)から得て、HPMCを、Colorcon, Noveon(登録商標)を得て、ポリカルボフィルをLubrizol Advanced Materialsから得た。
【実施例1】
【0106】
実施例1.基本製剤の一般調製
【0107】
0.02、0.2、0.4、0.5、および1.0 wt%の薬剤濃度にて製剤するために、次のプロトコールを用いた。薬物の基本製剤を表1に示した比率で行った。第一のプロトコールでは、例えば50 mLに必要なカルシニューリン阻害剤およびビタミンE TPGSを計算し、秤量し、次いで透明な溶液を得るまで95%のエタノール(5 mL)中で混合した。エタノール溶液を、真空下に蒸発させて、薄いフィルムの固体様物質を得た。脱イオン水(25 mL)を、オクトキシノール-40と混合し、該薄いフィルムの固体様物質に該溶液を添加して、おおよそ20分間超音波処理に供して、混合ミセルを完全に形成させた。この調製した2X製剤を、室温で貯蔵した。別法として、第二のプロトコールでは、50 mLに必要な薬物、ビタミンE TPGSおよびオクトキシノール-40の量を計算して、秤量し、95% エタノール(5 mL)中で混合して、薄いフィルム状の固体様物質を形成させるために真空下で蒸発させた。次いで、該薄いフィルムの固体様物質を、脱イオン水(25 mL)に溶解させ、おおよそ20分間超音波処理を行うかまたはロータリーエバポレーター内の回転運動により混合して、混合ミセルの完全な形成させた。調製した2X 製剤を室温で貯蔵した。
【0108】
表1. 基本的な2X製剤(wt%/容量)
【表1】

【実施例2】
【0109】
実施例2.製剤の一般的調製
表1に示した基本的な2X 製剤を、実施例1に記載した第二のプロトコールに記載したとおりに調製した。該カルシニューリンまたはmTOR阻害剤が、ボクロスポリン、シクロスポリンA、シロリムスおよびタクロリムスである基本製剤を調製した。50 mLの製剤として一つの調製物では;緩衝液混合物を表2に示した成分量を脱イオン水(25 mL)に溶解して調製し、2X緩衝液を調製した。2X緩衝液混合物を、別の保存剤を含んだものと含まないものとの双方を調製した。
【0110】
表2. 緩衝液混合物
【表2】

N.A. = 添加せず
【0111】
表3Aに示したポリマー賦形剤の必要な量を、2X緩衝液混合物(2.5 mL)中に分散させて、穏やかにボルテックスで混合させて透明な溶液とした。基本的な2X 製剤を、等量加えて混合し、溶液を均一とした。溶液のpHを、NaOHまたはHClを用いて約6.8の目標値まで調整した。溶液のオスモル濃度をNaClにより調整して、約280-300 mOsmol/kgの範囲とする。製剤を、ナイロンメンブランフィルター(0.22 μm)により滅菌し、次いで室温で使用するまで保存した。
【0112】
表3A. 製剤
【表3】

【0113】
製剤(100 mL)の調製のためにの別法において、表1に示した基本的な2X 製剤を、ボクロスポリンを用いて調製した。0.2、0.4 および0.5 wt%/容量のボクロスポリン濃度の製剤とするために、100 mLに必要な適切な量の薬物;ビタミンE TPGS;およびオクトキシノール-40を、計算して、秤量し、次いで95% エタノール(10 mL)中に混合し、おおよそ12時間真空下で蒸発させて、薄いフィルムの固体様物質を形成させた。薄いフィルム状の固体様物質を、脱イオン水(50 mL)に溶解させて、おおよそ20分間超音波処理を行うか、またはロータリーエバポレーター中の回転運動により混合して、混合ミセルの完全な形成を確実にした;次いで室温で貯蔵した。表3Bおよび3Cに示したポリマー賦形剤の必要な量を、脱イオン水(40 mL)に分散させて、透明なポリマー溶液となるまで攪拌した。表3Bおよび3Cに示した他の成分を、基本的な2X製剤(50 mL)に添加し、透明な緩衝液溶液となるまで十分攪拌した。該透明な緩衝溶液を、透明ポリマー溶液にゆっくりと移して、よく混合した。溶液のpHを、NaOHまたはHClを用いて約6.8の目標pHに調整した。溶液のオスモル濃度を280-300 mOsmol/kgの範囲に維持した。該容量を水により100 mLとした。該製剤を、ナイロンメンブランフィルター(0.22 μm)により滅菌し、次いで使用するまで室温で貯蔵した。
【0114】
表3B. 製剤
【表4】


表3Dに示した0.2% wt %/容量でのボクロスポリン濃度を有するある最適化製剤
【0115】
表3C.製剤
【表5】


【0116】
表3D. 0.2 wt%/容量のボクロスポリン製剤
【表6】

別途記載がなければ、以下のデータは、おおよそ0.2%のボクロスポリン時の製剤に対するものである。円錐と板状の粘度計を用いて製剤粘度を測定した。製剤の透明度を記載したとおり400 nmにて測定した。0.2% ボクロスポリンを含む様々な製剤についてのオスモル濃度、pH、粘度および400nmの吸光度を表4Aに示した。
【0117】
表4A. 製剤特徴
【表7】

シクロスポリンA (CsA) 製剤を、実施例1の第二のプロトコールに記載したものと同じやり方で表4Bに示した濃度にて調製した。
【0118】
表4B. CsA製剤
【表8】

CsA製剤をpH 6.88に調整し、オスモル濃度は320 mOsm/kgであった。
【実施例3】
【0119】
実施例3. 薬剤含量の決定
【0120】
各製剤を、薬剤含量についてHPLCにより分析した。HPLC移動相は、1 mL/分の流速で逆相フェニルカラム(5ミクロン、15 x 4.6 mm)からの目的とする化合物の溶出を共に含むアセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸(75:25:0.1 v/v/v)から構成された。UV検出器を用いて、薬物の吸光度を210 nmで測定し、様々な既知の濃度にて標的薬物の標準曲線を比較した。ボクロスポリンについての実際のピークはおよそ5.5分間にて溶出した。
【実施例4】
【0121】
実施例4. 濾過効率試験
様々な膜の型を、0.2 wt% ボクロスポリンを含有する製剤のフィルター滅菌に使用するために試験した。0.22μm 孔サイズの膜は、様々な材、例えばナイロン、テフロン、およびポリカーボネート等であった。膜からの回収物を、上記した薬剤含量のHPLC決定により評価して、遠心分離したサンプルと比較した。濾過効率比較試験についての結果を表5Aおよび5Bに示した。一般的に、0.22 μmのナイロン、テフロン、およびポリカーボネート膜は各々、濾過滅菌のために容認出来ることが判った。
【0122】
表5A. 濾過効率試験1
【表9】


【0123】
表5B. 濾過効率試験2
【表10】

様々な生体接着性ポリマー賦形剤を含む0.2 wt%のボクロスポリン製剤を、表3Cに上記したとおりに調製した。製剤特徴を測定し、薬剤含量は、0.22μmのナイロン膜を通過させた濾過後にHPLCにより決定した。結果を表6に示した。
【0124】
表6. 0.2 wt% ボクロスポリン製剤中の薬剤含量
【表11】

【実施例5】
【0125】
実施例5.製剤の透明度
該製剤の透明度を視覚的かつUV-可視光分光光度計を用いて400nmでのサンプルの吸光度を記録することにより測定した。製剤の1mlおよび対応する薬物を含まない賦形剤をプラスチックキュベットに入れ、吸光度を400 nmで記録した。水をブランクとして使用した。好ましい局面において、該混合ミセル製剤は、400 nmで約0.1未満の吸光度を有する透明な製剤である。400nmでの吸光度を、表4Aおよび表9-14の希釈実験において様々な製剤について示した。
【0126】
視覚的な透明度もまた製剤試験における指標として使用した。例えば、表7および8は、実施例1における第二のプロトコールに記載したとおりに調製した様々な1X 基本製剤における様々なwt%のボクロスポリン、ビタミンE TPGS、およびオクトキシノール-40の視覚的な透明度を示す。
【0127】
表7. 製剤試験
【表12】

表7において、食品等級のビタミンE TPGSを提示した濃度で使用した;全てのサンプルは乳白色であった。表8において、サンプル1および2は視覚的に透明であったが、サンプル3および4は不溶性薬物を含有した。
【0128】
表8. 製剤試験
【表13】

【実施例6】
【0129】
実施例6. 人工涙中のボクロスポリン製剤の希釈試験
ボクロスポリン製剤を希釈試験にて評価した。この目的は、眼と類似した条件下で製剤を希釈に供することであった。試験した各製剤中のボクロスポリン濃度は0.2 wt%であった。表3Aに記載した製剤を、薬局の店頭で購入できる人工涙液(OTC)の様々なブランドを用いて各々1:1、1:5および1:10で混合した。Systane(登録商標)(潤滑点眼薬、Alcon, Inc.; Visine(登録商標)(潤滑点眼薬、Pfizer,Inc.; Refresh Tears(登録商標)(潤滑点眼薬), Allergan, Inc.;およびHypo Tears(登録商標)(潤滑点眼薬), Novartisを用いた。測定を周囲条件下で行った。該データ(400 nmでの吸光度)を表9から14Aに示した。結果は濁度増加がないことを示した、故に溶液からのボクロスポリンの沈殿はなかった。
【0130】
表9. 400nmでのサンプル吸光度、希釈前
【表14】

【0131】
表10. 400 nmでのサンプル吸光度、希釈後
【表15】

【0132】
表11. 400 nmでのサンプル吸光度、希釈後
【表16】

【0133】
表12. 400 nmでのサンプル吸光度、希釈後
【表17】

【0134】
表13. 400 nmでのサンプル吸光度、希釈後
【表18】

【0135】
表14A. 400 nmでのサンプル吸光度、希釈後
【表19】

さらなる希釈試験を、希釈剤として生理緩衝液を用いて表3Bの欄1に示した製剤に対して行った。希釈製剤の特徴付けを行い、該データを表14Bに示した。ミセル安定性を、生理緩衝液にて少なくとも20倍希釈まで確認した。
【0136】
表14B. 希釈に対するミセル安定性
【表20】

DST-解離温度、RS-再安定化、PD-多分散性
【実施例7】
【0137】
実施例7.薬物不含製剤およびボクロスポリン含有製剤についての解離温度
表3Aに示した製剤を、0.2 wt%のボクロスポリン/容量を含む製剤および含まない製剤による解離温度を決定するために試験した。〜60℃の一定温度の水浴を準備し、薬物を含むサンプルを試験するために使用した。製剤を含有するガラスバイアルを、該製剤中に温度計を差して水浴に入れた。ある程度の濁度が視覚的に観察されると直ぐに、温度の読み取りを行った。濁った溶液を室温まで冷やし、該薬物は混合ミセルに戻り、その結果全ての溶液が再度透明となった。再安定化のための時間(視覚的な透明度の回復)を記録した。ボクロスポリンを含むサンプルについてのデータを表15に示した。ヒートブロックを用いて加熱し、類似様式で薬物を含まないサンプルを試験した。ボクロスポリンを含まないサンプルについてのデータを表16に示した。
【0138】
データから、ボクロスポリンが存在しない場合、ミセル製剤の解離温度は、一般的にボクロスポリンが存在するミセル製剤の解離温度よりも約20-40℃高い(HPMC含有製剤を除いて)ことが示された。薬物含有ミセル製剤の解離温度の低下は、該薬物が該ミセルに組み込まれて、これにより可溶化したことを示す。
【0139】
表15. 0.2wt% ボクロスポリンを含む製剤の解離温度
【表21】

ND=測定せず
【0140】
表16.ボクロスポリンを含まない製剤の解離温度
【表22】

追加の熱解離試験を行った、ここで0.2% ボクロスポリン製剤(基本、HPMC、およびPVP-K-90)(1 mL)を含有するバイアルを、〜50℃に維持した水浴中で約5分間加熱した。該混合ミセルが脱安定化され、該溶液は濁るか、または乳白色となった。該溶液を、室温に冷却して、該薬物は混合ミセルに戻り、その結果全ての溶液が再度透明となった。再安定化の時間を記録した。PVP-K-90サンプルを二回くりかえしたが、同じ結果であった。
【0141】
一般的に、オクトキシノール-40のwt%増加と共に製剤は、表17および18に示したように解離温度の増加を示し、また再生時間(再安定化に必要な時間)が低減した。
【0142】
表17. 0.2 wt% ボクロスポリンおよび様々なwt%のオクトキシノール-40を含む基本製剤中の解離温度
【表23】

【0143】
表18. 0.5 wt% ボクロスポリンおよび様々なwt% オクトキシノール-40を有する基本製剤における解離温度
【表24】

0.2 wt% ボクロスポリンを含むPVP-K-90製剤中でオクトキシノール-40の濃度を0.5%から2.5%に増加した別の解離温度実験では、解離温度が45℃から55℃に増加した。該製剤は、冷却後3分以内で透明な溶液に再構成された。
【0144】
賦形剤の添加を評価して、解離温度に対する効果を決定した。0.2 wt% ボクロスポリンを含む表3Bにおいて調製した製剤に5%のPEG 400を添加することにより、類似した解離温度をもたらし、表19に示したとおり再安定化に必要な時間が若干増加した。
表19. 解離温度: 5%(v/v) PEG 400の添加に関する効果
【表25】

0.2wt% ボクロスポリンおよびPVP-K-90を含む表3Bにて調製したとおりの製剤への1% HPMCの添加により、同様の解離温度をもたらしたが、表20に示したように再安定化に必要な時間が低減した。
【0145】
表20. 解離温度:PVP-K-90製剤への1% HPMCの添加に関する効果
【表26】

【実施例8】
【0146】
実施例8. 粒子サイズ測定
混合ミセルの平均粒子サイズおよび多分散指数を、動的光散乱技術を用いて測定し(Brookhaven 90Plus particle size analyzer、Holtsville、NY)、3つの測定値の平均をとった。様々な溶液を、使い捨てのプラスチックセル中にいれた。サンプル容量(200μL)を、粒子サイズを決定するために用いた。0.2 wt% ボクロスポリンを含む実施例2に調製したとおりの製剤について粒子サイズおよび多分散性を表21に示した。0.2 wt% ボクロスポリンおよびPVP-K-90を含む製剤は、非常に狭いサイズ分布を有する13.3nmの平均ミセル直径および0.005の多分散度を示した。これに対して、0.2 wt% ボクロスポリンおよびHECを含む製剤は、23.8の平均ミセル直径を示したが、広い二峰性の粒子サイズ分布により0.482の大きな多分散性となった。
【0147】
表21. 粒子サイズ分析
【表27】

2% オクトキシノール-40を含む製剤中に0.2wt% および0.5wt% ボクロスポリンを含む製剤に対する粒子サイズ、多分散性、解離温度および再安定化時間を、表22および23に示した。
【0148】
表22. 2% オクトキシノール-40と共に0.2wt% ボクロスポリンを含む製剤の特徴
【表28】

【0149】
表23. 2%オクトキシノール-40と共に0.5wt% ボクロスポリンを含む製剤の特性
【表29】

【実施例9】
【0150】
実施例9. 液滴重量および容量の決定
液滴あたりに送達されるカルシニューリン阻害剤の量を決定するために、各製剤に対する該液滴重量および容量を決定した。液滴サイズは製剤の表面張力に依存するので、表3Aに記載したとおり0.2wt% ボクロスポリン/容量を含有する2つの製剤を、送達される液滴サイズおよび容量について試験した。PVP-K-90を含有する該製剤およびHPMC(各々0.5 mL)を含有する該製剤を、製造供給元により提供される0.8 mLの最大容量BFS(blow-fill-seal) 容器中に個々に充填した。ボトル材はLDPEであり、該試験を大気条件の下で行った。各製剤の10滴の液滴を風袋ディッシュ(tared dish)に入れて、秤量した。同様に、10滴の製剤の液滴を測定シリンダーに入れて、容量を記録した。データを、表24および25に示した。
【0151】
表24. 10滴の重量
【表30】

表25. 10滴の容量
【表31】

【実施例10】
【0152】
実施例10.安定性試験
安定性および製剤適合性試験を、医薬的送達のために好適な3つの異なる型の容器で行った。実施例1の6つの製剤の既知容量を、3つの異なる型の容器、即ち、LDPE、ポリプロピレンおよび塩化ポリビニルに移して、室温で貯蔵した。予め決定した時間間隔にて(0、6、24 および48時間)、該サンプルをその容器から取り出し、HPLC法により薬剤含量について分析した。様々な型の容器に貯蔵された製剤は、試験期間中に薬剤含量の低下を示さなかった。
【実施例11】
【0153】
実施例11.ウサギにおけるカルシニューリン阻害剤を含む製剤の局所忍容性
生理食塩水に対するボクロスポリンを含有する混合ミセル製剤(1X 基本製剤、表3Aア欄1、0.2wt%または0.5 wt% ボクロスポリン、各々一匹のウサギにて)の忍容性を試験するためにウサギで研究を行った。健全な若い成体のニュージーランドの白色ウサギ(3-4 Kg)(New Zealand albino rabbit)を試験に使用した。生理食塩水の一滴(おおよそ30μL)を眼に入れ、ボクロスポリンを含む製剤の一滴をもう一方のウサギの眼に入れた。下記の観察されたパラメーター:眼の瞬き、流涙、瞳孔のサイズ、充血、眼の動き、における相違は認められなかった。
【実施例12】
【0154】
実施例12.ウサギにおけるカルシニューリン阻害剤を含む製剤の局所忍容性
さらなる試験を、様々な混合ミセル製剤の忍容性を試験するためにウサギにおいて行った。表26および27に示した製剤F1-F16をこれらの試験に使用した。
【0155】
表26. 製剤F1からF8
【表32】

【0156】
表27. 製剤F9からF16
【表33】


健康な若い成体のニュージーランド白色ウサギ(3-4 Kg)をこの試験に使用した。ボクロスポリンを含む製剤(LX211)の一滴(おおよそ30μL)をウサギの眼に点眼した。各製剤を3回試験した。
【0157】
各動物の両眼を、携帯用細隙灯および倒像検眼鏡を用いて獣医眼科の専門医により検査した。コントロール眼および試験眼の双方を、Hackett/McDonald 採点システムを用いて(例えば、Hackett、R.B.;および McDonald, T.O. Ophthalmic Toxicology ;および Assessing. Dermatoxicology、5th Edition. Ed. F.N. Marzulli;および H.I. Maibach. Washington、D.C.: Hemisphere Publishing Corporation. 1996; 299-305 ;および 557-566.)、結膜充血、膨れおよび分泌、房水フレア、虹彩光の反射および関与、角膜の混濁重症度および領域、パンヌス、蛍光色素試験および水晶体不透明度に従って評点した。蛍光色素試験では、0.9% 塩化ナトリウム,USPのおおよそ一滴を、蛍光色素含浸ストリップの端に適用し、その後左目および右目の強膜上側に適用した(一つの蛍光色素含浸ストリップを各動物に用いた)。およそ15秒の暴露後に、蛍光色素染料を、0.9% 塩化ナトリウム,USPを用いて各眼から穏やかにすすぎ流した。その後、コバルトブルーフィルター光源を用いる細隙灯により該眼を試験した。水晶体の試験のために、瞳孔を拡張させるためにおおよそ一滴の短時間作用性の散瞳薬溶液を各眼に注入した。満足のいく拡張希釈が起こった後、各眼の水晶体を、細隙灯生体顕微鏡を用いて試験した。
【0158】
水晶体を、細隙灯生体顕微鏡を用いて容易に観察し、水晶体不透明度の位置を直接かつおよび反帰照明により容易に識別できる。水晶体不透明度の位置は、前嚢を発端として次ぎの水晶体領域、前嚢下、前部皮質核後部皮質(Anterior cortical Nuclear Posterior cortical)、後部皮質下、後部皮質に任意に分けられた。該水晶体を眼の評価期間中に定期的に評価し、0 (正常)または1 (異常)のいずれかとして評点した。水晶体の混濁度の存在を記述すべきであり、またその位置を確認した。多様な製剤について結果を表28から31に示した。
【0159】
表28. 0.2 wt%のボクロスポリンの様々な製剤についてウサギの眼中における忍容性試験の結果
【表34】

【0160】
表29. 0.2 wt%のボクロスポリンにて様々な製剤についてウサギの眼における忍容性試験
【表35】

【0161】
表30. 0.2 wt%のボクロスポリンにて様々な製剤についてウサギの眼における忍容性試験
【表36】

【0162】
表31. 0.2 wt%のボクロスポリンにて様々な製剤についてウサギの眼中の忍容性試験
【表37】

【実施例13】
【0163】
実施例13. KCSに罹っているイヌにおける局所ボクロスポリン臨床試験
局所ボクロスポリンを評価するオープンラベルの一群のパイロット効率試験を計画し、行った。該試験は、イヌ科乾性角結膜炎(KCS)の処置のために本明細書にて開示した実施態様に関する組成物中の0.2 wt% ボクロスポリンの有効性を実証することを目的とする。該試験は、涙液産生の評価[シルマー涙液試験により測定した場合(STT)]、角膜の臨床的知見の応答、および参加する眼科医の全体評価に及ぶ。
【0164】
慢性の(>3ヶ月の期間)免疫介在性KCSと診断されたイヌを、ノースカロライナ州の獣医教育訓練病院の臨床試験群から選択した。免疫介在性KCSの診断を、KCS以外の病因を排除することにより為した。この試験に参加するよう選択したイヌは、残存する涙坪機能の実証を提示し、市販購入できる局所シクロスポリンへの応答を示した。
【0165】
この試験では、休薬期間(washout period)をおかずに、動物を局所シクロスポリンA[鉱油中の0.2% シクロスポリン、USP;コーン油、NF;およびAmerchol(登録商標)CAB ベース(Optimmune(登録商標)Schering Plough Animal Health)]から、本発明に開示した実施態様の混合ミセル組成物の0.2wt% ボクロスポリンに直接切り替えて、局所的に12時間毎に投与した。身体試験および眼科系試験を0、7、14、および28日間行った。ボクロスポリンに対する好ましい応答が試験前の値と比較して、STT値の保持または増加が見られるように試験を計画した。
【0166】
6匹のイヌを参加させ、試験を完了した。これらの6匹のイヌについて、平均STTは、0日目では21.9±SD 3.2 mm/分であり;治療7日目ではSTTは22.4±4.0 mm/分であり;14日目ではSTTは20.3±2.5 mm/分であり、および30日目ではSTTは21.0±1.9 mm/分であった。これは、ボクロスポリンが30日間これらのイヌにおいてSTTを維持していることを明らかに示す。図1における平均STT値を参照されたい。全てのイヌは、投薬に関連した副作用または刺激のいずれの兆候もなく安定していた。30日間の処置期間中、いずれの動物においても確認される副作用はなかった。
【実施例14】
【0167】
実施例14. 製剤の構造安定性および安定性
【0168】
0.2 wt% ボクロスポリンを含有する本開示内容の製剤の構造安定性を、該サンプルを複数の加熱/冷却サイクル、冷蔵サイクル、激しい振盪または太陽光への長時間の暴露に供することにより試験した。
【0169】
熱サイクル:一組の製剤を含有するガラスバイアルを、〜70℃に設定した温度の水浴に入れた。該サンプルを、混濁が表れるまで加熱して、次いで透明になるまで溶液を室温で冷却する、これが一回の熱サイクルに相当する。熱サイクルを、5または10回反復した。5または10回の熱サイクルの完了後に、該サンプルを、上記したとおり、解離温度、その後の再生時間およびミセルサイズ決定について分析した。
【0170】
冷蔵サイクル:一組のサンプルを冷蔵状態に供した。該サンプルを12時間冷蔵庫にいれ(4℃)、その後室温とし、室温で12時間維持した。該熱サイクルを、5または10回反復した。5または10サイクルの完了後に、サンプルを、上記したとおりの解離温度、その後の再生時間およびミセルサイズについて分析した。
【0171】
激しい攪拌:サンプルを振盪台におき、この振盪器を室温で〜75rpmにて操作した。サンプルを4時間または24時間後に取り出して、上記したとおり解離温度、その後の再生時間およびミセルサイズについて分析した。
【0172】
太陽光暴露:溶液を、4時間直接的な太陽光の下においた。暴露後、該サンプルを、上記したとおり解離温度、その後の再生時間およびミセルサイズについて分析した。
【0173】
0.2wt% ボクロスポリンを含有する本開示内容の該混合ミセル製剤に、様々なストレス条件を与えた(加熱/冷却サイクル、冷蔵/大気サイクル、激しい振盪および太陽光への暴露)。本明細書に開示した実施態様の0.2 wt% ボクロスポリンを含有する該混合ミセル組成物は、表32に示したとおり解離温度、再生時間およびミセルサイズについての変化を示さなかった。
【0174】
表32:解離温度、再生時間およびミセルサイズに対するストレスの効果、3回のサンプルの平均
【表38】

【0175】
安定性試験:3つの溶液を、ガラスバイアルに移して、様々な温度(45℃、30℃、RTおよび4℃)で貯蔵した。予め決定した時間間隔(0、7、14および30日間)にて、サンプルを、取り出し、色、相分離、pH、薬剤含量、解離温度、再生時間およびミセルサイズについて評価した。
【0176】
30℃、RTおよび4℃で30日間貯蔵したサンプルは、色、相、pH、薬剤含量、解離温度、再生時間およびミセルサイズにおける変化を示さなかった。45℃で貯蔵した溶液は沈殿物を形成し、高温で製剤の熱不安定性を示した。
【実施例15】
【0177】
実施例15.様々なカルシニューリンmTOR阻害剤を含有する製剤の調製およびミセル特徴
表33.様々なカルシニューリンおよびmTOR阻害剤を含有する製剤
【表39】

10mLに必要とされる計算された、薬物、ビタミンE TPGSおよびオクトキシノール-40の量を、秤量し、次いで95%エタノール(4 mL)にて混合し、真空下に蒸発させて、薄いフィルムの固体様物質を形成させる。次いで、薄いフィルムの固体様物質を、脱イオン水(5 mL)に溶解させて、混合ミセルを完全に形成させるようにおよそ40分間超音波処理を行った。調製した基本製剤を室温で貯蔵した。
【0178】
リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウムおよび塩化ナトリウムを含有する緩衝液混合物を、脱イオン水に溶解して調製した。ストック溶液PVP-K-90を水中で調製した。ポリマー溶液および緩衝溶液の必要な容量を基本製剤に加えて、透明な溶液を得るために穏やかにボルテックス処理した。溶液のpHは、約6.8にNaOHまたはHClを用いて調整した。製剤を、ナイロンメンブランフィルター(0.22μm)により滅菌し、次いで使用するまで室温で貯蔵した。該製剤のミセルサイズを、動的光散乱技術を用いて測定して(Brookhaven 90Plus particles size analyzer, Holtsville, NY)、3つの測定値の平均をとった。この試験結果を下記に示した。該製剤は、澄んでおり、室温で透明であることが判った。該製剤のミセルサイズおよび多分散指数(PDI)を表34に示した。
【0179】
表34:製剤の観察されたミセルサイズおよびPDI
【表40】

【実施例16】
【0180】
実施例16.人工涙液組成物
表35: 生体適合性の人工涙液組成物
【表41】


本開示内容の人工涙液組成物の成分が、眼の組織に対して本来刺激性でないことを示すために、人工涙液に関する眼の忍容性および毒性を決定するために試験を行った。
【0181】
ニュージーランド白色(NZW)ウサギ(5匹雌/5匹雄)を、おおよそ35μlの一滴の本開示内容の人工涙液組成物を1時間の間隔で1日あたり最大8回、各眼に局所投与した。動物を人工涙液投与の14日後に屠殺した。下記パラメーター:罹患率/死亡率、物理試験、臨床的知見、体重、原料消費、肉眼的および顕微鏡的な眼の所見、網膜電図写真(ERG)、内部眼圧測定(IOP)および検視を試験期間中に評価し、病理組織学を下記の組織:目、胸腺、下顎、吻側および後部のリンパ節に対して行った。全ての動物は健康であり、正常範囲を外れる所見は見られなかった。眼に関連のある試験報告は、下記のさらなる詳細を提供する:
・顕微鏡の眼の評価:
顕微鏡の眼の評価方式を、青色のフィルターの挿入を含めた細隙灯生体顕微鏡の使用後の眼の所見に用いて蛍光色素染料の保持について評価した。創傷は、人工涙液組成物適用(1日あたりに8回)の投薬前および14日間後に行った間接検眼鏡検査において見られなかった。
【0182】
・眼圧測定法(IOP)データ所見:
人工涙液組成物の適用の試験前および14日後に行ったウサギの内部眼圧(IOP)の平均眼圧測定法(Tono-pen)による測定値は11-17 mm/Hg圧の間であり、正常な生理学的範囲(10-20/mm Hg)内であった。要するに、IOP効果は、投与した局所処置(1日あたりに8回)との関連においては観察されなかった。
【0183】
・ERGデータ所見:
両眼フラッシュERGを、ISCEVプロトコールおよびHMsERGユニットを用いてウサギにおいて行った。双方暗順応条件下で10cd.s/m2および30Hzフリッカー刺激による、また10cd.s/m2を用いる高強度の刺激に対する最大のa波およびb波の振幅の予備的評価は、人工の涙液組成物の適用(1日あたりに8回)の14日間後にいずれかの所見も示さなかった。
【0184】
組織学的所見
人工の涙液組成物の適用(1日あたりに8回)の14日後に組織学的所見はなかった。
【実施例17】
【0185】
実施例17.糖付加剤を含有する混合ミセル製剤
糖付加剤、例えばトレハロース、マンノース、D-ガラクトースおよびラクトースを、本開示の多様な製剤に添加し、安定性試験を様々な温度で行った。糖を再水和(rehydration)工程中に該製剤に添加するか(外部に)、または薄いフィルムの作成前に添加した(内部に)。該製剤は、アジュバントの糖の存在下では安定となることが判った。
【0186】
糖と共に低濃度のオクトキシノール-40を含有する製剤も調製し、基本製剤の調製中に糖を添加した(内部に)。安定性試験のために0.05%および0.1%オクトキシノール-40および0.5%および1.0%の糖を用いて試験を行った。試験中に得られた結果から、該製剤は30℃で35日間まで安定に維持されたこが示された。
【0187】
表36:製剤の組成(糖内部添加)
【表42】

方法:
製剤(100 mL)に必要とされる薬物(約0.2%、即ち200mg)、ビタミンE TPGS (約2.5%、即ち2.5g)およびオクトキシノール-40(約0.05/0.1%、即ち50/100 mg)の算出量を秤量した。薬物(200mg)、TPGS(約2.5g)およびオクトキシノール-40(約50/100 mg)を、約2ml、約1mlおよび約50/100μLの95%エタノールの各々に溶解した。糖について、約1gのトレハロースを、約4.5 mlの水/エタノール混合物(約2.5 ml 水+約2.0 ml エタノール)に別々に溶解し、他の含有物と混合した。同じ水:エタノールの比率を、異なる糖含量を含む製剤を調製するために使用した。該混合物を、薄いフィルムを形成するように終夜真空下にて蒸発させた。該薄いフィルムを脱イオン水(約45 mL)に溶解させて、混合ミセルの完全な形成を確実にするためにおおよそ45分間超音波処理を行った。
【0188】
リン酸二ナトリウム(約0.8092 %)、リン酸一ナトリウム(約0.9287 %)、塩化ナトリウム(約0.18%)およびポリマーPVP-K 90(約1.2%)を含有する再水和溶液を、脱イオン水(約45 mL)に溶解することにより調製した。このポリマー溶液を、次いでメスシリンダー内で前もって調製したミセルに添加し、該容量を脱イオン水により(q.s.)約100 mLとした。最後に、製剤のpHはNaOHまたはHClを用いて約6.8に調整した。該製剤を、ナイロンメンブランフィルター(0.22μm)により滅菌した。
【0189】
サンプルを、安定性試験中に予め決定された時間間隔にて採取し、遠心分離して該上清溶液を薬剤含量の分析のために回収した。
【0190】
結果:
該製剤は、安定性試験の開始前の室温では澄んでおり、透明であることが判った。観察されたミセルサイズは12−14nmの範囲であった。オクトキシノール-40およびトレハロースを含む製剤の例示は次のとおりである:
【0191】
表37A:糖付加剤を含む製剤
【表43】

【0192】
表37B:様々な製剤の30℃での薬物残存%
【表44】

【実施例18】
【0193】
実施例18.本開示内容の混合ミセル製剤中の0.2wt%/容量ボクロスポリンの眼の分布および薬物動態
この試験の目的は、眼の適用後の本開示内容の0.2%14C-放射性色素ボクロスポリン組成物(眼科用溶液)の反復投与による経時的分布および蓄積可能性、性別の相違、およびメラニン色素結合の可能性を、ニュージーランド白色ウサギ(NZW)およびダッチ・ベルト(Dutch Belted)ウサギ(DB)の眼の組織、涙および血液中の放射性活性を決定することにより評価することであった。
【0194】
方法:
NZWウサギ (30匹雌/8匹雄)を、単回用量(SD)にておよび7日間の反復用量(RD)試験(表38を参照されたい)に使用した。DBウサギ(16匹雌)を、単回用量試験(表39を参照されたい)に使用した。動物は、処理されない(コントロール)か、または7日間の間に1回または毎日の局所眼用量(混合ミセル製剤中に0.2% 14C-ボクロスポリン(35μL)、片方または両眼に)が投与された。血液および眼の組織の放射活性レベルを、燃焼の後の液体シンチレーション計測により計画された時点で評価した。死亡、罹患または臨床的刺激の兆候は、いずれのウサギにおいてもおこらなかった。
【0195】
表38.混合ミセル組成物における14C-ボクロスポリンの眼の組織分布
【表45】

a 局所用量製剤は0.2% ボクロスポリンを含有した。目的とする用量は〜3μCi/35μLおよび70ngのボクロスポリンであった。
b 処置群2(SD群)に対する投与前濃度として使用した。
c 薬物動態評価(SD群)に使用した。
d 処置群5(RD群)に対する投与前濃度として使用した。
e 薬物動態評価(MD群)に使用した。
【0196】
表39.混合ミセル組成物中の14C-ボクロスポリンの眼組織分布
【表46】

a. 局所用量製剤は0.2% ボクロスポリンを含有した。目的とする用量は、〜3μCi/35μLおよび70ngのボクロスポリンであった。
b. 処置群2(SD群)に対する投与前濃度として使用した。
c. 薬物動態評価(MD群)に使用した。
【0197】
各サンプル採取時点で、t検定を用いて、2群のウサギ内または間で該組織濃度を比較した。SigmaStat(登録商標)3.5 (Systat, Inc., San Jose, CA)を、統計分析のために使用した(p <0.05)。非コンパートメント分析を、平均組織14C-ボクロスポリン濃度−時間データに対して行った。薬物動態分析を、WinNonlin 5.2 (Pharsight, Corporation, Mountain View, CA)を用いて行った。CmaxおよびTmax、計算可能なAUCを報告した。
【0198】
薬物動態パラメーター:
14Cボクロスポリン-誘導放射活性について選択した薬物動態パラメーター(Cmax、AUC、Tmaxおよびt1/2)を、NZWおよびDBウサギ各々について表40および41にまとめた。単回用量投与後に、眼の組織内へ薬物の迅速な浸透(放射活性として測定した)が、最も高い濃度(>1mg eq/g組織)にて、瞼、結膜、角膜、瞬膜および涙内で起こり、最も低い濃度(1-11 ng eq/g組織)にて、房水および硝子体液、および水晶体で起きた。他の眼の組織は、ボクロスポリンおよび/または関連残留物の様々なレベル(20-223ng eq/g組織)に達した。図2は、雌のニュージーランド白色ウサギへの0.2%14C-ボクロスポリン混合ミセル製剤の1回(1日)の局所適用の後の14C-ボクロスポリンの組織レベルを示す。ボクロスポリンの治療レベルを24時間の基準で注目すると、一日に一回(QD)の投薬が本発明に開示した実施態様の水性混合ミセル組成物を用いて可能であることを支持するものであった。
【0199】
7日間までの反復投薬後に、この試験で得た限定的な利用可能な情報に基づくと(低部眼球結膜、瞬膜および上部眼球結膜)、14Cボクロスポリンt1/2の明らかな変化はなかった(表40を参照する)。一つの血液サンプル以外の全ては、放射活性アッセイにおいて定量下限(LLOQ)よりも低かった(3.06 ng eq/mL)。特に、単回用量投与により、わずかな全身暴露と共に、全ての眼の組織(房水/硝子体液および水晶体を除いて)において治療レベルをもたらした(10ng当量薬物/gram組織以上)。
【0200】
表40. 雌のNZWウサギへの混合ミセル製剤中の14C ボクロスポリンの単回または反復(7日間のQD)両眼投与の後の14Cボクロスポリンから得られる放射活性の薬物動態パラメーター
【表47】

【0201】
表41.本開示内容の混合ミセル製剤中の14C ボクロスポリンを雌のDBウサギに両眼に単回投与後の14C ボクロスポリンから得られた放射活性の薬物動態パラメーター
【表48】

【0202】
表42. 14C-ボクロスポリンの単回の局所眼投与後のNZWおよびDBウサギにおける14C-ボクロスポリから得られた放射活性の比較Cmax
【表49】

【0203】
表43. NZWウサギにおける14C-ボクロスポリンの眼の組織/体液分布(Cmax)
【表50】

【0204】
図.3A-Dは、雌のニュージーランド白色ウサギに、0.2% 14C-ボクロスポリン混合ミセル製剤を、単回(1日)または反復(7日間)で両眼に一日に1回局所適用した後の14C-ボクロスポリンの平均の眼組織濃度を示す(図3A、角膜;図3B、虹彩/毛様体;図3C、涙腺;および図3D、水晶体)。
【0205】
図.4A-Dは、雌のニュージーランド白色ウサギに、0.2%14C-ボクロスポリン混合ミセル製剤を、単回(1日)または反復(7日間)で両眼に一日に1回局所適用した後の14C-ボクロスポリンの平均の眼の組織濃度を示す(図4A、下部結膜;図4B、下瞼;図4C、瞬膜;および図4D、強膜)。
【0206】
図.5A-Dは、雌のニュージーランド白色ウサギに、0.2% 14C-ボクロスポリン混合ミセル製剤を、単回(1日)または反復(7日間)で両眼に一日に1回局所適用した後の14C-ボクロスポリンの平均の眼の組織および体液濃度を示す(図5A、上部結膜;図5B、上瞼;図5C、眼球の房水;および図5D、硝子体液)。
【0207】
図.6A-Dは、雌のニュージーランド白色ウサギに、0.2%14C-ボクロスポリン混合ミセル製剤を、単回(1日)または反復(7日間)で、両眼に一日に1回局所適用した後の14C-ボクロスポリンの平均の眼の組織および体液濃度を示す(図6A、涙;図6B、リンパ節;図6C、視神経;および図6D、脈絡膜/網膜)。
【0208】
図7は、雌のニュージーランド白色ウサギに、0.2%14C-ボクロスポリン混合ミセル製剤を、反復(7日)で、両眼に一日に1回局所適用した後の14C-ボクロスポリンのCmax値を示すグラフである。
【0209】
14C-ボクロスポリンから得られる放射活性の蓄積可能性:
14C-ボクロスポリンの眼の暴露に対する眼の暴露は、14Cボクロスポリン(35μL、70ng)の一日に1回の両眼投与7日間後に角膜、涙腺、虹彩/毛様体および水晶体中で2.8から6.7倍増加した(表40を参照されたい)。複数回の投薬後に(表40-43および図3-7を参照されたい)、Cmax-反復用量:Cmax-単回用量の比率が選択された組織内で上昇したとしても、ボクロスポリンの全体レベルは、最小の組織蓄積を示す表面組織レベルを十分に下回る。また、単回または反復投薬後の同程度のt1/2は、最小の組織蓄積を強く示唆した。
【0210】
メラニン結合についての可能性:
14C-ボクロスポリンのDBウサギへの単回投薬後の、眼の組織濃度(例えば、Cmax)は、NZWウサギとは有意に相違せず、メラニン結合がないことを示唆している(表42を参照されたい)。
【0211】
薬物の高レベルは、本開示内容の該組成物の一回の局所適用(単回用量)により達成できる。より具体的には、高い薬物レベルは、投与後24時間まで、また投与後24時間を超えて眼の組織中で維持されており、これはQD(一日に1回)投薬が本開示内容の該組成物を用いて達成し得ることを示唆している。薬物の濃度は、眼の前部(角膜、結膜、強膜)においておよび眼の後部(網膜、視神経)での組織中で高いが、眼の中部(房水および硝子体液)では最小であり、眼からの受動輸送以外のメカニズムによる薬物の移送が示唆される。眼の後部で達成された高い薬物レベルから、本開示内容の該組成物の局所投与が眼底疾患(例えば、網膜、視神経、例えば緑内障が関与している疾患)の処置に利用可能となる。本開示内容の該組成物と共に使用できる様々な水不溶性薬剤は、カルシニューリンおよびmTOR阻害剤を含むが、これに限定しない。特に標的組織内、例えば涙腺内での非常に高いレベルが、本開示内容の該組成物を用いて明らかにされた。
【0212】
治療レベル(10ng eq/g組織)を超える14C-ボクロスポリンから得た放射活性の濃度(ng eq/g 組織)を、単回および反復の眼の適用後の水晶体および眼の体液(眼球の房水、硝子体液)を除いた全ての眼の組織において測定した。血液レベルは、最小の組織暴露を示唆する定量(LLOQ)下限であって、動物の身づくろい挙動を理由とするような対側性の非処理眼に対して14C-ボクロスポリンの最小分布があった。
【0213】
CmaxおよびAUCにより示されたとおり、本開示内容の該混合ミセル製剤における14C-ボクロスポリンへの眼の暴露は、眼の組織中で広く変化した。14C-ボクロスポリン暴露は、眼の付属器および外部組織(角膜、強膜、下部の眼球結膜、下瞼、瞬膜、上部眼球結膜および上瞼)および涙において最も高く、内部の眼の組織および体液(硝子体液、水晶体、眼球の房水)では最も低く;および虹彩/毛様体、涙腺、下顎リンパ節、脈絡膜/網膜および視神経では中程度の範囲であった。即ち、大部分の眼の組織レベルは、生物学的効果に必要な10 ng eq/gレベルを超えた。
【0214】
7日間混合ミセル製剤中の14C-ボクロスポリンを、一日に一回毎日眼に適用した後、標的組織(例えば、結膜、角膜および涙腺)内の14Cボクロスポリンの濃度は、24時間の評価であっても治療レベルで残存しており、一日に一回(QD)の投薬が、本発明に開示した実施態様の水性混合ミセル組成物を用いて可能であることを示唆している。
【0215】
本明細書で引用された全ての特許、特許出願、および公開文献は、出典明示により全てを本明細書の一部とする。様々な上記開示物および他の態様および機能またはその改変が、多くの様々な系または適用に組み合わされるのが好ましいことが認められよう。当業者により続いて為され得る様々な予想外のまたは予期せぬ変更、改変、差違、または改善もまた、特許請求の範囲に含まれると意図されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のものを含んでいる医薬組成物:
カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤;
約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤;および
約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤、
ここで、第一の界面活性剤のHLB指数および第二の界面活性剤のHLB指数との間の絶対相違が約3を超えており、該組成物は混合ミセルを形成する。
【請求項2】
カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤が、ボクロスポリン、シクロスポリンA、ピメクロリムス、タクロリムス、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、そのアナログ、その医薬上許容し得る塩またはその組合せの一つを包含する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
下記のものを含んでいる医薬組成物:
カルシニューリン阻害剤;
ビタミンE TPGS;および
オクトキシノール-40、
ここで該組成物は眼組織への局所適用に好適である。
【請求項4】
混合ミセルを形成する、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
光学的に透明な混合ミセルを形成する、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項6】
該カルシニューリン阻害剤が、ボクロスポリン、シクロスポリンA、ピメクロリムス、タクロリムス、そのアナログ、その医薬上許容し得る塩、またはその組合せの一つを包含する、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項7】
該カルシニューリン阻害剤が、ボクロスポリンである、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項8】
該カルシニューリン阻害剤が、該組成物の全容量中に約0.01重量パーセントから約10重量パーセントで存在している、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項9】
該ビタミンE TPGSが、該組成物の全容量中に約0.01wt%から約20wt%で存在している、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項10】
該オクトキシノール-40が、該組成物の全容量中に約0.001wt%から約10wt%で存在している、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項11】
PVP-K-30、PVP-K-90、HPMC、HEC、およびポリカルボフィルからなる群から選択される1以上の生体接着性ポリマーをさらに含んでいる、請求項3の医薬組成物。
【請求項12】
トレハロース、マンノース、D-ガラクトース、およびラクトースからなる群から選択される1以上の添加剤をさらに含んでいる、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項13】
下記のものを含んでいる医薬組成物:
mTOR阻害剤;
ビタミンE TPGS;および
オクトキシノール-40、
、ここで該組成物が眼組織への局所適用に好適である。
【請求項14】
混合ミセルを形成する、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
光学的に透明な混合ミセルを形成する、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項16】
該mTOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、そのアナログ、その医薬上許容し得る塩、またはその組合せの一つを含む、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項17】
下記工程を含む、混合ミセル組成物を調製する方法:
カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を、溶媒中で約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤と混合して、溶媒を形成する工程、
該溶媒溶液を蒸発させて、固体様物質を形成させる工程、
該固体様物質を、水溶液を用いて水和する工程、および
該固体様混合物を溶解して、混合ミセル組成物を生成する工程、
ここで該混合ミセル組成物は光学的に透明である。
【請求項18】
該第一の界面活性剤がビタミンE TPGSであり、該第二の界面活性剤がオクトキシノール-40である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
該水溶液中で生体接着性ポリマーを混合する工程をさらに含んでおり、該生体接着性ポリマーがPVP-K-30、PVP-K-90、HPMC、HEC、およびポリカルボフィルからなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
該カルシニューリン阻害剤がボクロスポリンである、請求項17記載の方法。
【請求項21】
該ボクロスポリンが、混合ミセル組成物中に約0.01%〜約10%で存在する、請求項20の方法。
【請求項22】
治療上有効量のカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を含む組成物を眼疾患患者の眼に局所的に投与することを含む、処置が必要な患者において眼疾患を処置するための方法であって、ここで該組成物がさらにビタミンE TPGSおよびオクトキシノール-40を含んでおり、該組成物は混合ミセルの水溶液である、方法。
【請求項23】
該眼疾患が、ドライアイ症候群(DES)、シェーングレン症候群、ブドウ膜炎、結膜炎(伝染性結膜炎)、角膜炎、角結膜炎、春季角結膜炎(VKC)、アトピー性角結膜炎(AKC)、痕跡性結膜炎などの眼の表面の自己免疫障害、眼瞼炎および強膜炎からなる群から選択される炎症性の眼の表面疾患である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
該眼疾患が、角膜の同種移植片の免疫性拒絶反応である、請求項22記載の方法。
【請求項25】
該炎症性の眼の表面疾患がドライアイ症候群である、請求項23の方法。
【請求項26】
該カルシニューリン阻害剤がボクロスポリンである、請求項22の方法。
【請求項27】
ミセル内にカプセル化されたカルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤を有する混合ミセル医薬組成物を提供すること、ここで該ミセルは約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤により形成されている、および
炎症性眼疾患を、処置する、減少する、改善する、または緩和するのに十分な頻度で該医薬組成物の量を動物に投与すること、を含む、
動物における炎症性眼疾患を処置、低下、改善、または緩和するための方法。
【請求項28】
該カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤が、ボクロスポリン、シクロスポリンA、ピメクロリムス、タクロリムス、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、そのアナログ、その医薬上許容し得る塩、またはその組合せの一つを包含する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該カルシニューリン阻害剤がボクロスポリンである、請求項28の方法。
【請求項30】
第一の界面活性剤がビタミンE TPGSであり、第二の界面活性剤がオクトキシノール-40である、請求項27記載の方法。
【請求項31】
カルシニューリン阻害剤またはmTOR阻害剤の重量パーセントが、医薬組成物の全容量の約0.01重量パーセントから約10重量パーセントの範囲である、請求項27記載の方法。
【請求項32】
該動物がイヌ、ウマ、ネコ、ウサギ、アレチネズミ、ハムスター、齧歯動物、鳥類、水棲哺乳類、ウシ、ブタ、ラクダ、および他の動物学上の動物からなる群から選択される、請求項27記載の方法。
【請求項33】
該医薬組成物が局所投与される、請求項27記載の方法。
【請求項34】
該炎症性眼疾患が、ドライアイ症候群(DES)、シェーングレン症候群、ブドウ膜炎、結膜炎 (伝染性結膜炎)、角膜炎、角結膜炎、春季角結膜炎(VKC)、アトピー性角結膜炎(AKC)、痕跡性結膜炎等の眼の表面の自己免疫障害、眼瞼炎、および強膜炎からなる群から選択される、請求項27記載の方法。
【請求項35】
約10を超えるHLB指数を有する第一の界面活性剤および約13を超えるHLB指数を有する第二の界面活性剤により形成したミセル内にカプセル化されたカルシニューリン阻害剤を有する混合ミセル医薬組成物を提供すること、および
眼底の症状または障害を処置、減少、改善または緩和するために十分な頻度で医薬組成物の量を被検対象に投与すること、を含む、
被検対象における眼底の症状または障害を処置、低下、改善または緩和するための方法。
【請求項36】
該第一の界面活性剤がビタミンE TPGSであり、該第二の界面活性剤がオクトキシノール-40である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
該カルシニューリン阻害剤がボクロスポリンである、請求項35記載の方法。
【請求項38】
該カルシニューリン阻害剤が、ボクロスポリン、シクロスポリンA、ピメクロリムス、タクロリムス、そのアナログ、その医薬上許容し得る塩、またはその組合せの一つを包含する、請求項35記載の方法。
【請求項39】
該医薬組成物中のカルシニューリン阻害剤の重量パーセントが、該組成物の全容量の約0.01重量パーセントから約10.0重量パーセントの範囲にある、請求項35記載の方法。
【請求項40】
該被検対象がヒトである、請求項35記載の方法。
【請求項41】
該被検対象が動物である、請求項35記載の方法。
【請求項42】
該動物が、イヌ、ウマ、ネコ、ウサギ、アレチネズミ、ハムスター、齧歯動物、鳥類、水棲哺乳類、ウシ、ブタ、ラクダ、および他の動物学上の動物からなる群から選択される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
該医薬組成物が局所投与される、請求項35記載の方法。
【請求項44】
該投与頻度が一日に1回である、請求項35記載の方法。
【請求項45】
該投与頻度が一日に約1〜約8回である、請求項35記載の方法。
【請求項46】
該眼底の症状または障害が、糖尿病性網膜症(「DR」)、加齢性黄斑変性症(「AMD」)、糖尿病性黄斑浮腫(「DME」)、後部ブドウ膜炎、およびその組合せからなる群から選択される、請求項35記載の方法。
【請求項47】
ビタミンEトコフェロール-ポリエチレングリコールコハク酸スクシネート(TPGS)誘導体およびエトキシ化オクチルフェノール界面活性剤から形成した混合ミセルの水溶液を含む、人工涙液組成物。
【請求項48】
該エトキシ化オクチルフェノール界面活性剤がオクトキシノール-40である、請求項47記載の組成物。
【請求項49】
該水溶液が、親水性ポリマー賦形剤、等張剤、緩衝液、糖、例えばトレハロース、マンノース、D-ガラクトースおよびラクトース、保存剤、共溶媒または抗酸化剤の一つから選択される様々な成分を包含する、請求項47記載の組成物。
【請求項50】
該水溶液が、PVP-K-90、塩化ナトリウム、少なくとも1つのリン酸ナトリウムおよび水を包含する、請求項47記載の組成物。
【請求項51】
該水溶液が約6.6から約7.0の範囲にあるpHを有する、請求項47記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−540682(P2010−540682A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528993(P2010−528993)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/079170
【国際公開番号】WO2009/048929
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510098124)ラックス・バイオサイエンシーズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】LUX BIOSCIENCES, INC.
【Fターム(参考)】