説明

カルシミメティクスを有効成分として含むKlothoまたはFGF23に関連する疾患の予防または治療剤

【課題】 KlothoおよびFGF23に関連する疾患の予防または治療剤を提供すること。
【解決手段】 カルシミメティクスを有効成分として含む、Klothoの過剰発現・機能亢進に伴う疾患の予防または治療剤、FGF23の過剰発現・機能亢進に伴う疾患の予防または治療剤、血清リン増加剤、および低リン血症を伴う疾患の予防または治療剤が開示される。カルシミメティクスとしては、例えば以下の化合物:
【化4】


が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシミメティクスを有効成分とするKlothoの過剰発現・機能亢進を伴う疾患の予防または治療剤、FGF23の過剰発現・機能亢進を伴う疾患の予防または治療剤、血清リン増加剤および低リン血症を伴う疾患の予防または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウム受容体(CaR)は副甲状腺に多く発現し、細胞外カルシウム(Ca)濃度の上昇に伴い活性化され、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑制する。副甲状腺からのPTH分泌が抑制されると、腎臓の尿細管におけるCa再吸収の減少、骨からのCa動員の減少、更に、活性型ビタミンD産生低下に伴う腸管Ca吸収の減少により、血清Ca濃度が低下する。CaRによるPTH制御により、細胞外Ca濃度は、非常に狭い範囲内に厳密にコントロールされている。また、CaRは腎臓の尿細管にも発現しており、尿細管局所におけるCa濃度変化を感知し、Ca再吸収の調節をしていると考えられている。しかしながら、そのメカニズムは不明な点が多い。PTHは、腎臓の尿細管におけるリン輸送タンパクの発現を低下させ、リンの再吸収量を減少させる作用も有する。したがって、CaR刺激に伴うPTHの分泌低下により、腎臓におけるリン再吸収が低下する結果、血清リン濃度が上昇する(Pfister et al. :J Biol Chem. 1997 Aug 8;272(32):20125-30.)。
【0003】
CaRの細胞膜貫通ドメインに結合し、アロステリックに活性化するアゴニスト群をカルシミメティクスと称する(Nemeth et al. :Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Mar 31;95(7):4040-5.)。副甲状腺においては、カルシミメティクスは、CaRを活性化することでPTH分泌を抑制する(Miedlich et al. J Biol Chem. 2004 Feb 20;279(8):7254-63.)。カルシミメティクスのひとつであるシナカルセト塩酸塩は、そのPTH抑制作用により、血清PTH濃度上昇を主徴とする二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬として、2004年に米国、2007年には日本で承認を受け、臨床で使用されている。
【0004】
カルシミメティクスは、血清リン濃度にも影響を与えることが知られている。健常人を対象にした臨床試験及び部分腎摘ラットを用いた検討では、カルシミメティクスの投与により、血清リン濃度が上昇する(試験番号:KRN1493/00-A02、Henley et al. :Nephrol Dial Transplant. 2005 Jul;20(7):1370-7.)。一方、腎機能の廃絶した透析患者を対象にした臨床試験では、カルシミメティクスの投与により、血清リン濃度が低下することが確認されている(Urena et al. :Nephrol Dial Transplant. 2004 Aug;19 Suppl 5:V27-33.)。本作用の違いは、腎臓と骨のリン出納バランスの違いに起因すると考えられる。健常人及び腎機能が残存している部分腎摘ラットでは、PTHの低下に伴い、尿細管におけるリン再吸収が亢進することにより、血清リン濃度が上昇した可能性が考えられる。一方、透析患者においては、腎機能が廃絶しているため、PTHの低下に伴い骨からのリンの動因が減少し、血清リンの低下に寄与したと考えられる。
【0005】
また、XLH患者へのリンとカルシミメティクスの併用投与は、リン単独投与に比べて血清リンを上昇させることが報告されている(Alon et al. : Clin J Am Soc Nephrol. 2008 May;3(3):658-64.)。
【0006】
以上のように、カルシミメティクスが血清リンに与える影響は、対象患者、疾患により変化し、定性的な見解は得られていない。
【0007】
Klothoは、klothoマウスにおいて、外来性の挿入遺伝子近傍で発現が極端に減少している遺伝子として見出されてきた分子である。
【0008】
klothoマウスは短寿命、成長遅延、老年性皮膚萎縮、肺気腫、難聴、心臓機能障害、メンケベルク型動脈硬化症、低回転性の骨密度の減少、異所性石灰化、不妊症、血糖制御異常、胸腺萎縮、B細胞分化障害などのヒトの老化症状に似た表現型を持つ変異マウスである(WO98/29544, Kuro-o et al. : Nature. 1997 Nov 6;390(6655):45-51.)。klotho遺伝子産物は一回膜貫通型の分子量約13万の蛋白質で、腎臓、副甲状腺、脳脈絡膜での発現が観察され、特に、腎臓では遠位尿細管において強い発現が観察されている。また、Klothoはシェディングされ、血中に可溶型として存在することも知られている。Klothoの機能については未だ不明な点が多いが、klothoマウスの血清中のカルシウム濃度、リン酸濃度および1α,25-ジヒドロキシビタミンD濃度の上昇が誘導されていること(Yoshida et al. :Endocrinology. 2002 Feb;143(2):683-9.)から、Klothoはカルシウム・リンを中心としたミネラル代謝を制御する因子であると考えられている。副甲状腺では、低Ca環境下において、KlothoがNa+-K+-ATPaseの機能を亢進させ、PTHの分泌を高める働きがあることが報告されている(Imura et al. : Science. 2007 Jun 15;316(5831):1615-8.)。さらに、ミネラルホメオスタシスが異常をきたすような状態である腎不全時ではKlothoタンパク質の発現が正常時の腎臓と比較して減少していることや(Koh et al. :Biochem Biophys Res Commun. 2001 Feb 2;280(4):1015-20.)、低リン食飼育されたマウスのKlothoタンパク質の発現は正常食で飼育されたマウスよりも増加していること(Morishita et al. :J Nutr. 2001 Dec;131(12):3182-8.)も報告されており、生体内のミネラル濃度などを感知してKlotho自体が発現変動を行っていることも示唆されている。こうした背景の下、近年、Klothoがリン調節因子としてクローニングされたFGF23の受容体として機能していることが明らかとなった(Urakawa et al. :Nature. 2006 Dec 7;444(7120):770-4.)。
【0009】
FGF23は血清リン濃度の低下因子としてクローニングされたホルモンである。(WO 02/14504、およびShimada et al. : Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 May 22;98(11):6500-5.)。FGF23は骨に発現し、腎尿細管のリン酸輸送タンパクの発現や局在を制御して、尿中へのリン酸の排泄を促進し、結果的に、血清中のリン酸濃度を低下させる。さらに、腎臓での1α,25-ジヒドロキシビタミンDの合成酵素である1α水酸化酵素の発現を抑制し、逆に1α,25-ジヒドロキシビタミンDの分解酵素である24水酸化酵素の発現を増大させることにより、血清中の1α,25-ジヒドロキシビタミンD濃度を低下させる。FGF23作用が過剰になると低リン血症が誘導され、くる病や骨軟化症が惹起される。また反対にFGF23作用が減弱すると、高リン血症を伴う腫瘍性石灰沈着症(tumoral calcinosis)が惹起される(Fukumoto :Intern Med. 2008;47(5):337-43.)。
【0010】
2006年、UrakawaらはFGF23の標的組織特異性の研究を行った結果、腎臓に存在するFGF23の特異的結合分子としてKlothoを見出した(Urakawa et al. :Nature. 2006 Dec 7;444(7120):770-4.)。また、klothoマウスとFGF23のノックアウトマウスの表現型が酷似していることおよび、klothoマウスの血中には大量のFGF23が存在することから、FGF23の下流分子としてKlotho分子が存在することが強く示唆された。さらに、UrakawaらはKlothoとFGFR1の複合体がFGF23特異的受容体を構成することを示した。また、最近になって、ヒトKlothoのホモ接合性ミスセンス変異によってFGF23の機能喪失変異と同様に腫瘍性石灰沈着症が惹起されることが報告され(Ichikawa et al. :J Clin Invest. 2007 Sep;117(9):2684-91)、FGF23シグナリングにおけるKlothoの重要性がさらに明らかとなった。
【特許文献1】WO98/29544
【特許文献2】WO 02/14504
【非特許文献1】Kuro-o et al. : Nature. 1997 Nov 6;390(6655):45-51
【非特許文献2】Yoshida et al. :Endocrinology. 2002 Feb;143(2):683-9
【非特許文献3】Imura et al. : Science. 2007 Jun 15;316(5831):1615-8
【非特許文献4】Koh et al. :Biochem Biophys Res Commun. 2001 Feb 2;280(4):1015-20
【非特許文献5】Morishita et al. :J Nutr. 2001 Dec;131(12):3182-8
【非特許文献6】Urakawa et al. :Nature. 2006 Dec 7;444(7120):770-4
【非特許文献7】Shimada et al. : Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 May 22;98(11):6500-5
【非特許文献8】Fukumoto :Intern Med. 2008;47(5):337-43
【非特許文献9】Ichikawa et al. :J Clin Invest. 2007 Sep;117(9):2684-91
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、CaRとKlothoとの関連を検討すべく、健常ラットへカルシミメティクスのひとつR568((R)−N−[3−(2−クロロフェニル)プロピル]−1(3−メトキシフェニル)エチルアミン)の投与を行ったところ、腎におけるKlotho発現が低下することを見出した。また、R568の投与は、血清FGF23を上昇させたにもかかわらず、血清リン並びに1α,25-ジヒドロキシビタミンDの上昇が認められたことから、FGF23シグナリングがKlothoの発現低下を介して抑制されていることが推察された。
【0012】
すなわち、本発明は、カルシミメティクスを有効成分として含む、Klothoの過剰発現・機能亢進に伴う疾患の予防または治療剤、FGF23の過剰発現・機能亢進に伴う疾患の予防または治療剤、血清リン増加剤、および低リン血症を伴う疾患の予防または治療剤を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、カルシミメティクスを有効成分として含む、Klothoの過剰発現・機能亢進に伴う疾患の予防または治療剤、FGF23の過剰発現・機能亢進に伴う疾患の予防または治療剤、血清リン増加剤、および低リン血症を伴う疾患の予防または治療剤に関する。
【0014】
Klothoの過剰発現・機能亢進を伴う疾患としては、例えば、ヒト染色体13番のklotho近傍の転座によって生ずる、副甲状腺機能亢進症を伴う低リン血症性くる病が挙げられる(Brownstein et al : Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Mar 4;105(9):3455-60.)。この患者においては、血中の可溶型Klotho濃度が上昇していることから、klotho遺伝子の5’側49kb上流の転座によりKlothoの発現自体が上昇することにより病態が惹起されていると考えられる。
【0015】
FGF23の過剰発現・機能亢進を伴う疾患としては、例えば、腫瘍性骨軟化症、常染色体優性低リン血症性くる病・骨軟化症(Autosomal dominant hypophosphatemic rickets/osteomalacia以下ADHRという)、X染色体連鎖低リン血症性クル病(X-linked hypophosphatemic rickets、以下XLHという)、線維性異形成(fibrous dysplasia)、マックキューン−オールブライト症候群(McCune-Albright syndrome)及び常染色体劣性低リン血症などのミネラル代謝異常を伴う疾患や腎移植後の低リン血症が挙げられる(Fukumoto and Yamashita : Bone. 2007 May;40(5):1190-5. およびBhan et al. :Kidney Int. 2006 Oct;70(8):1486-94.)。
【0016】
血清リンの増加が治療上有益である疾患としては、低リン血症、並びに正常な血清リンレベルを更に上昇させることが求められるような疾患が挙げられる。
【0017】
低リン血症を伴う疾患としては、腫瘍性骨軟化症、ADHR、XLH、線維性異形成、マックキューン−オールブライト症候群及び常染色体劣性低リン血症などのミネラル代謝異常を伴う疾患や腎移植後の低リン血症が挙げられる。さらに、これらの疾患に付随して認められる骨石灰化不全、骨痛、筋力低下、骨格の変形、成長障害、低1,25D血症などについて、本発明にしたがって改善効果が期待される。
【0018】
本明細書におけるカルシミメティクスとは、CaRにCa2+と異なる結合部位に結合し、Ca2+に対する感受性を高めることができる、アロステリックなアゴニストとして定義される。
【0019】
本発明におけるカルシミメティクスとしては、例えば、国際出願公開番号WO93/4373、WO94/18959、WO95/11221、WO96/12697、WO97/41090、WO98/1417、WO2000/21910、WO2001/34562、WO2003/99814、WO2003/099776、WO2001/90069、WO2002/12181、WO2005/115975、WO2006/123725、WO2002/59102、WO2004/30669、WO2006/117211、およびWO2007/60026に開示された化合物が使用され得る。
【0020】
本発明のカルシミメティクスとしては、上記カルシミメティクスの多形体、水和物、および薬学的に許容な塩も含まれる。好ましくは本発明のカルシミメティクスは式I:
【化2】

[式中、Alkは、フェニルで置換されていてもよい、炭素数1−6の直鎖または分枝鎖のアルキレンであり;R1は、1−7個のハロゲン原子により置換されている炭素数1−3の低級アルキルまたは炭素数1−3の低級アルキルであり;R2およびR3は、1−7個のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素数1−3の低級アルキル、1−7個のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素数1−3の低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、炭素数1−3の低級アルキルアミド、シアノ、ヒドロキシ、炭素数2−4のアシル、炭素数1−3の低級チオアルキル、および炭素数1−3の低級ヒドロキシアルキルからなる群より独立して選択される1−5個の置換基で任意に置換されていてもよい、5員環もしくは6員環を有する単環もしくは二環の炭素環式アリールもしくはシクロアルキル基から独立して選択される]
の化合物であり、更に好ましくはシナカルセト(N−[(1R)−1−(ナフタレン−1−イル)エチル]−3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン−1−アミン):
【化3】

その塩酸塩、その非晶質粉末、結晶性粉末、その混合物が挙げられる。
【0021】
本発明のカルシミメティクスを有効成分として含む、Klothoの過剰発現・機能亢進に伴う疾患の予防または治療剤、FGF23の過剰発現・機能亢進に伴う疾患の予防または治療剤、血清リン増加剤、および低リン血症を伴う疾患の予防または治療剤は、単独で、あるいは薬学的に許容される担体等を含む医薬組成物として、適切な投与ルートで患者に投与することができる。
【0022】
このような医薬組成物は、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、溶液、懸濁液、乳液、注射剤、点滴剤のような製剤の形態をとることができる。薬学的に許容される担体としては、固体組成物の場合は、例えば、ラクトース、シュクロース、でんぷん、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸Mg、酸化Mg、リン酸や硫酸のNa、Ca塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン及び/またはポリビニルアルコール等を用いることができる。また、生理食塩水、注射用蒸留水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントゴム、及び/または種々のバッファーを用いて液体組成物とすることができる。
【0023】
投与方法は特に限定されないが、経口もしくは非経口的な方法(例えば、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、経鼻、経腸等)をとることができる。本発明化合物の投与量、投与回数は患者の年齢、体重、状態に応じて決めることができ、特に限定するものではないが、一般的には1日あたり0.0001mg〜100mg/kg、好ましくは、0.001mg〜10mg/Kgを1回乃至複数回にわけて投与する。
【0024】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
実験方法:
Wistar Kyotoラット(雄、6−8週齢)にR568((R)−N−[3−(2−クロロフェニル)プロピル]−1(3−メトキシフェニル)エチルアミン)(1 mg/kg)を単回経口投与し、投与後2時間のリンクリアランスを測定した。クリアランスの測定は既報の方法に準じて実施した(Kidney Int. 2008 Feb; 73(4): 415-22.)。ラットの尿管にカニューレを通し、投与後2時間の採尿及び投与前、投与2時間後の採血を実施した。尿中イヌリン、リン濃度、血中イヌリン、リン濃度を測定し、それぞれのクリアランスを算出した。また、血中カルシウム、PTH、FGF23、1α,25-ジヒドロキシビタミンD濃度を測定した。
【0026】
投与2時間後にラットを放血死させ、腎臓を摘出した。得られた腎臓の皮質部分を細切りし、プロテアーゼ阻害剤カクテル(SIGMA)を含有するバッファー(50mM Tris-HCl pH7.5, 150 mM NaCl, 0.1% Triton X-100)中でホモジェネートした後、遠心分離し、上清を取得した。得られた上清は各個体ごとにBSAを基準に蛋白量を均一化した後、還元状態のSDS-PAGEサンプルバッファーで溶解し、95℃で5分処理し、SDS-PAGE用のサンプルを得た。得られたサンプルはSDS-PAGEの後、PVDF膜に転写し、ブロッキング後、ラット抗klotho抗体(KM2076 抗体;Biochem Biophys Res Commun. 2000 Jan 19;267(2):597-602.)で一次反応を行った。その後、HRP標識した抗ラットIgG抗体で二次反応を行った後、ECLシステム(GEヘルスケア)を用いて、分子量13万付近のKlotho蛋白質を検出した(図1参照)。
【0027】
結果:
投与2時間後において、媒体群と比較してR568群で血中PTHおよびCaの低下は有意ではなかった。R568群ではリン排泄率の低下とともに血中リン濃度が上昇した(8.9→10.0 mg/dL)。また、FGF23の軽度上昇(105→125 pg/ml)ならびに1α,25-ジヒドロキシビタミンDの上昇(77→145 pg/ml)が認められた。媒体群においては腎に存在するKlotho蛋白質が検出された(図1、レーン1-3)。一方、R568群では、媒体群に比べ、腎に存在するKlotho蛋白質の量が減少した(図1、レーン4-8)。
【0028】
これらの結果から、R568の投与により、腎におけるKlotho発現が低下することが示された。また、R568の投与は、血清FGF23を上昇させたにもかかわらず、血清リン並びに1α,25-ジヒドロキシビタミンDの上昇が認められたことから、FGF23シグナリングがKlothoの発現低下を介して抑制されていることが推察された。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1はカルシミメティクスを投与したラットおよび対照におけるKlothoの発現を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシミメティクスを有効成分として含む、Klothoの過剰発現・機能亢進を伴う疾患の予防または治療剤。
【請求項2】
Klothoの過剰発現・機能亢進を伴う疾患が、低リン血症性くる病である請求項1に記載の予防または治療剤。
【請求項3】
カルシミメティクスを有効成分として含む、FGF23の過剰発現・機能亢進を伴う疾患の予防または治療剤。
【請求項4】
FGF23の過剰発現・機能亢進を伴う疾患が、腫瘍性骨軟化症、常染色体優性低リン血症性くる病・骨軟化症、X染色体連鎖低リン血症性クル病、線維性異形成、マックキューン−オールブライト症候群、常染色体劣性低リン血症、または腎移植後の低リン血症である請求項3に記載の予防または治療剤。
【請求項5】
カルシミメティクスを有効成分として含む、血清リン増加剤。
【請求項6】
カルシミメティクスを有効成分として含む、低リン血症を伴う疾患の予防または治療剤。
【請求項7】
低リン血症を伴う疾患が、腫瘍性骨軟化症、ADHR、XLH、線維性異形成、マックキューン−オールブライト症候群、常染色体劣性低リン血症、または腎移植後の低リン血症である請求項6に記載の予防または治療剤。
【請求項8】
カルシミメティクスが式I:
【化1】

[式中、Alkは、フェニルで置換されていてもよい、炭素数1−6の直鎖または分枝鎖のアルキレンであり;R1は、1−7個のハロゲン原子により置換されている炭素数1−3の低級アルキルまたは炭素数1−3の低級アルキルであり;R2およびR3は、1−7個のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素数1−3の低級アルキル、1−7個のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素数1−3の低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、炭素数1−3の低級アルキルアミド、シアノ、ヒドロキシ、炭素数2−4のアシル、炭素数1−3の低級チオアルキル、および炭素数1−3の低級ヒドロキシアルキルからなる群より独立して選択される1−5個の置換基で任意に置換されていてもよい、5員環もしくは6員環を有する単環もしくは二環の炭素環式アリールもしくはシクロアルキル基から独立して選択される]
で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1〜7のいずれかに記載の予防または治療剤。
【請求項9】
カルシミメティクスがシナカルセト塩酸塩である、請求項1〜7のいずれかに記載の予防または治療剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−64957(P2010−64957A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229880(P2008−229880)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(504013775)学校法人 埼玉医科大学 (39)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】