説明

カルニチン顆粒およびその製造方法

本発明の主題は、カルニチン顆粒の製造方法であって、以下の工程を含む方法にある:(a)少なくとも65重量%のカルニチンを含む水溶液を提供する工程と、(b)シリカを含む粒状のキャリアであって、150μmより大きな平均粒子サイズを有するキャリアを提供する工程と、(c)前記水溶液と前記キャリアとを混合する工程。本発明のもう1つの主題は、カルニチン顆粒にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルニチン顆粒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルニチン(ビタミンBT;3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオ−ブタノエート)は、アミノ酸リジンおよびメチオニンから生合成される四級アンモニウム化合物である。生細胞において、それは、代謝エネルギーの生成のための脂質分解の間に、サイトゾルからミトコンドリアへ脂肪酸を輸送するのに必要とされる。生物学的に活性を有する形態は、L−カルニチンであり、一方、そのエナンチオマーであるD−カルニチンは生物学的に不活性である。純粋なL−カルニチンは、微生物学的な方法または有機合成とそれに続く精製工程により得られる。
【0003】
そのビタミン様の機能により、L−カルニチンは、医薬、食品および化粧品用途に幅広く使用されている。L−カルニチンは、ヒトおよび動物のエネルギー代謝、ならびに循環器、筋肉および神経系において有用な効果を有していることが既知である。L−カルニチンは、他の目的、例えば酵母および細菌の増殖のための栄養素としても有用である。カルニチンは、ヒトおよび動物に経口的に投与され得る。
【0004】
固体のL−カルニチンは、高い吸湿性を有する。それ故、粉末混合物は安定性(特に貯蔵性)が低く、産業、特に食品産業における限られた用途があるのみである。
【0005】
吸湿性の問題を克服するために、当該分野で種々の試みがなされてきた。吸湿性を低減するために、EP 0434088 B1では、錠剤またはカプセルの調製において、L−カルニチンの塩をL−酒石酸と共に使用することを提唱している。
【0006】
US 2009/0082449は、カルニチン粉末または顆粒を得るための方法を開示している。カルニチンは、固体キャリア上にコーティングされ、コーティング顆粒を得ている。第1の方法においては、水性懸濁液の調製および噴霧乾燥により、固体キャリアをカルニチン水溶液で被覆することが示されている。しかしながら、噴霧乾燥工程は、噴霧乾燥水溶液中に大量の水を必要とする。その後水を蒸発させる必要があるため、これは問題であり、大量のエネルギーおよび時間を必要とする。第2の方法においては、固体のカルニチンを固体キャリアと混合することが示されている。第3の方法においては、少量のカルニチンを含む出発物質の溶液(例えば、浸透または発酵生成物)をキャリアと混合し、乾燥工程に供して顆粒を得る。この場合においても、エネルギーおよび時間を消費する工程において、その後除去されるべき相対的に大量の水を必要とする。段落〔0093〕を要約すると、顆粒は凝集した粒子を形成する傾向がある。
【0007】
塩化カルニチンで被覆された顆粒の製造方法は、JP08−012569に開示されている。この方法によると、通常30〜60重量%の塩化カルニチンを含む水溶液が、好ましくはシリカキャリアであるキャリアと混合される。乾燥後、生成物は有機結合剤と混合され、錠剤等に圧縮されてよい。
【0008】
しかしながら、当該分野で既知の方法は、種々の欠点を有している。第1に、顆粒から多量の水を除去することは、時間およびエネルギーを消費する。さらに、当該分野における方法により製造された顆粒は、通常、制限された流動性を有する。経時による流動性の低下は、カルニチンの吸湿性の指標となる。長時間にわたる顆粒の流動性および流動性の維持は、重要な製品特性である。良好な流動性は、顆粒の取り扱いにとって重要であり、例えば、顆粒を梱包および定量する場合である。流動性の低い顆粒は、容器およびデバイスの内側表面のような表面にくっつく傾向がある。これは、顆粒が機械的装置により梱包され、定量される場合に問題となる。さらに、カルニチンまたはカルニチン顆粒が他の成分と混合される場合に、吸湿性が問題となる(例えば、動物の飼料において)。食品、飼料または飼料および食品の添加物において、カルニチンは、他の栄養分または他の飼料もしくは食品添加物と混合されることがしばしばである。カルニチンの吸湿性により、流動性の低下および粘結がそのような混合物において観察される。
【発明の根底にある課題】
【0009】
本発明の根底にある課題は、上記課題を克服するカルニチン顆粒およびカルニチン顆粒の製造方法を提供することである。
【0010】
特に、本発明は、カルニチン顆粒を得るための単純且つ簡便な方法を提供することができる。この方法は、少ない数の処理工程、少ない量のエネルギーを必要とし、相対的に短い時間で行うことができる。噴霧乾燥および高温での長時間の乾燥のようなエネルギーが集中する工程は、避けることができる。
【0011】
本発明の根底にあるさらなる課題は、低い吸湿性および高い流動性を有するカルニチンを提供することである。前記カルニチンは、物質の本質的な変質を生じることなく、長期間保存することができる。特に、長期間にわたる場合であっても、カルニチンの粘結を低減または抑制することができる。さらに、カルニチンと他の成分との混合物も、例えば飼料において、高い流動性および粘結に対する低い傾向を有する。粘結を制限または避けるためにコストのかかる特別な包装を使用することなく、カルニチンまたはカルニチン製剤をより長期間保存できれば、それは利点となり得る。
【0012】
本発明の根底にある他の課題は、相対的に大きな粒子サイズを有するカルニチン顆粒を提供することである。一般的に、より大きな粒子サイズは流動性を増強するため、これは有利である。
【0013】
本発明の根底にある他の課題は、出発製品または中間製品の紛体化(dusting)が回避されるカルニチン顆粒の製造方法を提供することである。
【発明の開示】
【0014】
驚くべきことに、本発明の根底にある問題は、特許請求の範囲に記載の方法、カルニチン顆粒および使用により解決される。さらなる発明の実施形態は、明細書全体を通して開示される。
【0015】
本発明の主題は、カルニチン顆粒の製造方法であって、
(a)少なくとも65重量%のカルニチンを含む水溶液を提供する工程と、
(b)シリカを含む粒状のキャリアであって、150μmより大きな平均粒子サイズを有するキャリアを提供する工程と、
(c)前記水溶液と前記キャリアとを混合する工程と
を含む方法である。
【0016】
カルニチンは、双性イオンであり、カルボキシル基および四級アンモニウム基を含む。工程(a)におけるカルニチン含有溶液は、一般的に、カルニチンまたはその塩を水に溶解することにより得られる。工程(a)における溶液を調製するために使用されるカルニチンは、好ましくは、双性イオン性カルニチンである。しかしながら、溶液を調製するために、塩化物のようなカルニチン塩を使用することも可能である。水溶液を提供するために工程(a)で使用されるカルニチンは、光学活性なアニオンを有するカルニチンの塩でないことが好ましい。本発明によると、錯塩(例えば有機塩、特に、酒石酸塩またはクエン酸塩のように3つより多い炭素原子を含む有機塩)の形態のカルニチンを提供することなく、低い吸湿性を得ることができる。
【0017】
工程(a)における水溶液は、少なくとも65重量%、好ましくは70重量%超、75重量%超または76.5重量%超のL−カルニチンを含む。好ましい実施形態において、溶液は、飽和状態または飽和溶液または過飽和溶液に近い。好ましくは、溶液は透明な溶液である。
【0018】
一般的に、そのような多量のL−カルニチンを含む水溶液は、高温において得られる。本発明の好ましい実施形態において、水溶液の温度は、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも70℃または少なくとも75℃である。好ましくは、温度は、60〜90℃、より好ましくは75〜85℃である。工程(c)において安定な顆粒の形成が支持されるため、そのような高温の調節も有益であることが見出された。これは、加熱溶液の低い粘度によると思われる。それ故、高温で工程(a)の溶液を調製した後、その間に溶液を冷却することなく同じまたは本質的に同じ温度で、工程(c)においてキャリアと溶液とを混合することが好ましい。
【0019】
例えば、工程(a)における溶液は、容器中に15〜35重量%の水を提供し、65〜85重量%のカルニチンまたはその塩を加え、カルニチンが溶解して溶液の粘度が低下するまで高温で撹拌することにより得られる。
【0020】
好ましい実施形態において、工程(a)における水溶液は、本質的に、水およびカルニチンからなる。例えば製造工程に由来する副産物のような不純物が存在してもよい。水溶液中の固体の全量に基づいて、カルニチンでない固体の量は、5重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満である。本発明の他の実施形態において、カルニチンは、少なくとも1つの他の可溶性成分と組み合わせて使用される。例えば、最終産物の用途に依存して、さらなる活性剤が含まれてよい。食品においては、例えばビタミン、アミノ酸、食事性ミネラル(例えばピコリン酸クロム)のようなさらなる栄養分が含まれてよい。さらに、またはあるいは、例えば顆粒の安定性または取扱い易さを向上させるような補助剤が含まれてよい。
【0021】
工程(a)における水溶液は、一般的な装置を用いて放出され、または噴霧され得るような粘度を有するべきである。本発明の好ましい実施形態において、工程(a)におけるカルニチン溶液の粘度は、70℃または溶液が調製された温度で測定した場合に、0.5〜150mPasであり、より好ましくは0.8〜50mPasである。
【0022】
本発明によると、粒子キャリアの平均粒子径は、150μmより大きく、好ましくは180μmより大きく、200μmより大きく、または220μmより大きい。驚くべきことに、本発明の特定の工程において大きな粒子径を有するキャリアを使用した場合、高い流動性および低い吸湿性を有する安定な顆粒が得られることを見出した。本発明の好ましい実施形態において、キャリアの平均粒子径(d50)は、150〜1000μmであり、より好ましくは180〜800μmであり、220〜500μmである。特に好ましい実施形態において、特に食品または食品添加物に対して至適なキャリアサイズが、約200〜約300μmであることが見出された。平均粒子径(d50μm)は、ISO 13320:2009に従って測定することができる。本発明の方法によると、1000μmより大きな平均粒子径を有するキャリアも使用することができるが、そのような生成物は、一般的に、医薬、食品または飼料の用途に対する適用性に劣る。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明の方法において出発化合物として使用される乾燥カルニチンとキャリアとの重量比は、好ましくは0.5:1〜5:1または1:1〜2.5:1、より好ましくは1.3:1〜2:1である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、キャリアのBET表面は、ISO 5794−1により測定した場合に、100〜1000m/gであり、より好ましくは150〜600m/gまたは200〜500m/gである。BET表面は、粒子の特定の表面に関連する。一般的に、高いBET表面(m/g)を有する粒子は、より多くの量の水を吸収する。
【0025】
本発明により使用されるキャリアは、シリカを含む。好ましい実施形態において、キャリアは、微粒化されたシリカキャリアである。微粒化シリカは、当該分野で既知であり、商業的に入手可能である。製造工程に依存して、通常、粒子はある程度の球状である。本発明によると、キャリアは、少なくとも一定量の水を吸収できるべきである。そのようなキャリアは、例えば商標TixosilのもとでRhodiaから、または商標SIPERNATのもとでEvonik Industriesから、商業的に入手可能である。例えば、本発明により有用なシリカキャリアは、Tixosil 68、Tixosil 38XおよびSIPERNAT 2200であり、それぞれが150μmより大きな平均粒子サイズを有する。好ましくは、シリカキャリアは、本質的にSiOからなる。それは、スルフェートおよびナトリウムのようなアニオンおよびカチオンによる、または酸化鉄のような他の金属酸化物による、微量の不純物を含んでもよい。通常、粒子のSiO含量は、95重量%より高いか、または98重量%より高い。本発明の他の実施形態において、キャリアは、シリカと少なくとも1つの他の金属酸化物との組み合わせ(例えば、アルミナ)を含む。これらキャリア材料において、シリカ含量は、10重量%より高く、50重量%より高く、または80重量%より高くてよい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態においては、工程(c)において、ミキサーが撹拌されながら、水溶液がキャリアを含むミキサーに供給される。ミキサーは、鉛直ミキサー、鉛直スクリューミキサー、パドルミキサー、水平ミキサーまたは球状ミキサーのような一般的なデバイスであってよい。水溶液は、例えばスプレーノズルまたは単純な開口チューブにより混合物に供給されてよい。溶液がキャリアにより十分に吸収されることを保証するために、水溶液のミキサーへの供給は、一定の時間間隔にわたって延長されることが好ましい。例えば、水溶液の供給は、20分〜3時間、好ましくは30分〜2時間の時間にわたって行われてよい。一般的に、供給速度は、キャリアにより溶液が十分に吸収され、均一なコーティングが得られるように調節されるべきである。工程(c)の間、水溶液は、高温に維持されることが好ましい。好ましくは、温度または温度範囲は、工程(a)のように選択される。さらに、ミキサーが加熱されてもよい。全工程は、バッチ工程または連続工程として行われてよい。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、抗粘結剤が添加される。抗粘結剤は、組成物が一緒に粘結し、かたまりまたは連続的な固体を形成するのを防ぐ添加剤である。好ましくは、抗粘結剤は、食品または医薬において必要とされる経口的な摂取に対して許容可能なものから選択される。特に好ましくは、二酸化珪素に基づく抗粘結剤である。抗粘結剤と水溶液および生成物との相互作用を避けるために、抗粘結剤は、疎水性且つ撥水性であることが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、抗粘結剤は、疎水化されたシリカ粒子である。好ましくは、抗粘結剤は、例えば、50μm未満、30μm未満または20μm未満の平均粒子サイズ(ISO13320−1により測定した場合のd50)を有する疎水化されたシリカ顆粒である。そのような製品は、当該分野で既知であり、例えば、商標名SIPERNAT D17またはSIPERNAT 22のもと、Evonik Industriesから商業的に入手可能である。好ましい実施形態において、添加される抗粘結剤の量は、キャリアの全量に基づいて、0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%である。好ましくは、本発明の製造方法において、抗粘結剤は、工程(c)の後(すなわち、水溶液とキャリアが混合された後か、または少なくとも水溶液の主要な部分が添加された後)に添加される。抗粘結剤は、顆粒の流動性をさらに増大させることが見出された。
【0028】
驚くべきことに、最終生成物の流動性は、水溶液の供給を中断して混合物を一定時間連続的に撹拌する場合であっても増大され得る。本発明の好ましい実施形態において、工程(c)においては、水溶液は、少なくとも2回の時間間隔の間にミキサーに供給され、その時間間隔と時間間隔との間は混合物が連続的に撹拌されながら供給が中断される。好ましくは、水溶液は、2回の時間間隔の間に混合物に供給される。それぞれの間隔は、5〜40分間、好ましくは10〜30分間の長さを有してもよい。好ましくは、第1の間隔の間に、40〜90%、より好ましくは50〜80%の水溶液が加えられる。第2の間隔において、残りの水溶液が加えられる。中間の中断の長さは、5〜40分間、または10〜30分間であってよい。中断の長さは、ミキサー中のカルニチン溶液がキャリアにより吸収される、または本質的に吸収されるのに十分であるべきである。全ての水溶液を加えた後、混合物は、一定時間(例えば、少なくとも2分間、好ましくは3〜20分間)さらに撹拌されることが好ましい。
【0029】
時間間隔の長さは、各間隔の間に添加される水溶液の量、キャリアの量および混合物の粘度に関連し、水溶液がキャリアにより十分に吸収されるように調節される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、工程(c)は、以下の工程を含む:
(c1)水溶液の第1の部分をミキサーに供給することと、
(c2)水溶液をミキサーに供給せずに、混合物を少なくとも3分間撹拌することと、
(c3)水溶液の第2の部分をミキサーに供給することと、
(c4)水溶液をミキサーに供給せずに、混合物を少なくとも3分間撹拌すること。
【0031】
ここで、任意に、工程(c3)の後または工程(c4)の後または工程(c4)の間に、抗粘結剤が添加される。ミキサーは、工程(c1)〜(c4)の間、撹拌される。
【0032】
カルニチン顆粒は、所望であれば、ふるい分けのような引き続く処理工程に供されてよい。
【0033】
本発明の主題は、本発明の方法により得られるカルニチン顆粒でもある。カルニチン顆粒は、安定であり、低い吸湿性を有する。
【0034】
本発明の他の主題は、顆粒が、カルニチンで被覆されたシリカキャリアから本質的になるカルニチン顆粒である。好ましくは、顆粒は、160μmより大きい、または200μmより大きい平均粒子サイズを有する。例えば、平均粒子サイズは、200〜700μm、または220〜400μmであってよい。本発明の顆粒は、少なくとも5重量%または少なくとも10重量%のカルニチンを含んでよい。本発明の好ましい実施形態において、カルニチン顆粒は、固体の全量に基づいて、30〜95重量%のシリカキャリアおよび70〜5重量%のカルニチンを含むか、または本質的になる。カルニチン顆粒は、例えば不純物の存在により、10重量%未満、5重量%未満または2重量%未満の他の成分を含んでよい。
【0035】
好ましい実施形態において、顆粒は主に、カルニチンコーティングを有する単一のキャリア粒子を含む。顆粒は、本質的に、被覆されたキャリア粒子の凝集物ではない。このことは、本発明の顆粒の均一性および高い流動性を保証する。この実施形態において、顆粒は、それ故、顆粒が被覆されたキャリア粒子の凝集物であるUS2009/0082449の段落〔0093〕に記載されている顆粒とは異なる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、顆粒の吸湿性は低い。吸湿性は、ISO12571:2000の方法により測定され得る。
【0037】
本発明の顆粒は、良好な流動性を有する。好ましくは、顆粒は、45°未満、より好ましくは40°未満または35°未満の安息角を有する。安息角は、DIN ISO4324の方法により測定され得る。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、カルニチンは、純粋または本質的に純粋なL−カルニチンである。少量のD−カルニチンは、不純物により存在してよい。より好ましさが低い実施形態において、カルニチンは、ラセミ化合物またはD−カルニチンであってよい。
【0039】
本発明の他の主題は、食品、医薬または化粧用組成物における本発明のカルニチン顆粒の使用である。ここで使用される場合、「食品」という用語は、ヒトおよび動物に対するいずれかの食品または飼料を意味する。
【0040】
カルニチン顆粒は、ヒトまたは動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、家禽類、魚またはネコおよびイヌのようなペット)に投与されてよい。
【0041】
カルニチン顆粒は、付加的な化合物と混合されてよい。これらの付加的な化合物は、食品成分または食品添加物として適切な物質であってよい。本発明に関して、「食品成分」という用語は、単一の物質または物質の混合物を意味し、任意に1つ以上の添加剤を含んでよく、ヒトの栄養のために役立ち、加工されていない、加工されたおよび/または配合された状態で、ヒトまたは動物により消費され得る。「食品添加物」は、食品のある特徴(例えば、外見、組成、粘稠性、味、匂い、保存性、加工性等)を変化させるため、または生理学的もしくは栄養学的な理由のために食品に添加される。食品添加物の例には、限定するものではないが、甘味料、増量剤、矯味剤、酸化剤、保存剤、ミネラル物質、ビタミン、アミノ酸、酸化防止剤、酵素、色素、乳化剤、圧縮を改善する物質が含まれる。
【0042】
付加的な化合物は、それ自体が活性成分または薬剤とはならない、医薬組成物の調製のために通常使用される物質または物質混合物であってもよい。「医薬組成物」は、動物またはヒトの体に、または体内に適用して、何らかの状態、疾患、苦痛または傷害を治療もしくは治癒および/または軽減および/または予防することができる、あるいは、体の組織または臓器の何らかの機能を正常に回復することができる物質または製剤である。医薬組成物の調製のために通常使用され、それ自体が活性薬剤ではない物質には、限定するものではないが、賦形剤、滑沢剤、矯味剤、崩壊剤、結合剤等が含まれる。
【0043】
本発明のカルニチン顆粒および本発明の方法は、上述した問題を解決する。本発明の方法は、相対的に単純な態様でカルニチン顆粒を調製することを可能にする。本発明の方法は、少量のエネルギーおよび短い時間の消費で、単純な標準的な設備を適用して行うことができる。
【0044】
本発明の方法において、工程、溶液およびキャリアは、使用される水が顆粒により本質的に吸収されるように調節され得る。それ故、エネルギーを消費する乾燥工程(例えば、噴霧乾燥工程)は不要である。好ましくは、本発明の方法は、噴霧乾燥工程を含まない。さらに、高温でおよび/または長時間、被覆されたキャリアを乾燥する必要がない。それに対して、高濃度のカルニチンを含む水溶液を本発明によるキャリアと高温で混合する場合、その後の加熱および乾燥工程なしでカルニチン顆粒を得ることができる。好ましくは、30℃より高いまたは50℃より高い乾燥温度、および/または10分より長いまたは30分より長い乾燥時間は適用されない。ここで使用する場合、「乾燥」は、顆粒の表面が本質的に濡れていないかまたは湿っていないことを意味する。しかしながら、コーティング工程において使用される水の一部が粒子のコアに吸収されるため、それらは通常、内部に水を含む。
【0045】
本発明の方法により、高度に有利な特性を有するカルニチン顆粒が得られる。驚くべきことに、カルニチン顆粒は、長い保存期間にわたって低い吸湿性を有し、流動性を保持する。顆粒を約3ヶ月間保存する場合であっても、流動性は負に影響されない。高い平均粒子サイズを有するカルニチン顆粒が得られ、それは流動性を改善する。
【0046】
本発明によると、安定性を向上させるための添加剤(例えば、有機結合剤)を顆粒コーティング中に導入する必要がない。好ましい実施形態において、本発明のカルニチン顆粒は、本質的に、カルニチン、キャリアおよび抗粘結剤からなり、好ましくはシリカベースである。
【0047】
実施例
カルニチン水溶液の調製
10.5kgの水を、撹拌した容器に供給する。
34.2kgの乾燥カルニチン(レボカルニチン)を、容器に加える。容器を80℃に加熱し、固体が完全に溶解するまで撹拌する。
【0048】
微粒化シリカの調製
23kgの微粒化シリカ(Tixosil 68, Rhodia)をミキサー(例えば、Nautaタイプまたは水平パドルミキサー)に供給する。ミキサーの電源を入れる。
【0049】
カルニチン水溶液の供給および混合
カルニチン溶液は、75〜80℃で、スプレーノズルまたは開口チューブ/パイプを介して、運転中のミキサーに供給される。第1の供給工程において、約2/3の水溶液が、20分またはそれより長い時間内にミキサーに供給される。第1の供給工程の完了後、シリカ/カルニチン/水は、カルニチン/水の溶液を供給することなく15分間混合される。第2の供給工程において、残りの水溶液が、10分またはそれより長い時間内にミキサーに供給される。684gの抗粘結剤(シリカ)を一度に加える。混合時間のさらに7分後、生成物が放出される。67kgの顆粒化されたカルニチンが得られる。
【0050】
良好な流動性および低い吸湿性を有する顆粒が得られた。平均粒子径d50は、約262μmであった。平均粒子径(d50μm)は、ISO 13320:2009に従って測定した。
【0051】
顆粒の安息角は、商業的に入手可能な飼料配合物の53.3°と比較して、34.5°であると測定された。安息角は、DIN ISO 4324の方法により測定した。
【0052】
HAUSNER比は、商業的に入手可能な飼料配合物の1.41(流動しないことを示す)と比較して、1.18(自由に流動することを示す)であると測定された。HAUSNER比は、DIN 53194に従って測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルニチン顆粒の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)少なくとも65重量%のカルニチンを含む水溶液を提供する工程と、
(b)シリカを含む粒状のキャリアであって、150μmより大きな平均粒子サイズを有するキャリアを提供する工程と、
(c)前記水溶液と前記キャリアとを混合する工程;
ここで、乾燥工程は除かれる。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記水溶液の温度は60℃以上である方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記工程(a)におけるカルニチン溶液の粘度は0.5〜150mPasである方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記キャリアの平均粒子径は150〜500μmである方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記キャリアのBET表面は100〜1000m/gである方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、前記工程(c)において、ミキサーが撹拌されている間に、前記水溶液がキャリアを含む前記ミキサーに供給される方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、抗粘結剤が添加される方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、前記抗粘結剤は疎水化されたシリカ粒子である方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法であって、前記工程(c)において、前記水溶液は、少なくとも2回の時間間隔の間にミキサーに供給され、その時間間隔と時間間隔との間は、混合物を撹拌しながら前記供給が中断される方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法であって、工程(c)は、以下の工程を含む方法:
(c1)前記水溶液の第1の部分を前記ミキサーに供給する工程と、
(c2)水溶液を前記ミキサーに供給せずに、前記混合物を少なくとも3分間撹拌する工程と、
(c3)前記水溶液の第2の部分を前記ミキサーに供給する工程と、
(c4)水溶液を前記ミキサーに供給せずに、前記混合物を少なくとも3分間撹拌する工程;
ここで、工程(c3)または(c4)の間または後に、抗粘結剤が添加され;
前記ミキサーは、工程(c1)〜(c4)の間、撹拌される。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得られる、カルニチン顆粒。
【請求項12】
150μmより大きな平均粒子サイズを有するカルニチン顆粒であって、
前記顆粒は、本質的に、カルニチンで被覆されたシリカキャリアからなり、
前記顆粒は、任意に、抗粘結剤を含む
カルニチン顆粒。
【請求項13】
請求項12に記載のカルニチン顆粒であって、前記カルニチン顆粒は、固体の全量に基づいて、30〜95重量%のシリカキャリアと70〜5重量%のカルニチンとを含むカルニチン顆粒。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法またはカルニチン顆粒であって、前記カルニチンはL−カルニチンである方法またはカルニチン顆粒。
【請求項15】
飼料もしくは食品組成物、医薬組成物または化粧用組成物における、請求項11〜14のいずれか1項に記載のカルニチン顆粒の使用。

【公表番号】特表2013−513557(P2013−513557A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542397(P2012−542397)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007479
【国際公開番号】WO2011/069654
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(391003864)ロンザ リミテッド (36)
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
【Fターム(参考)】