説明

カルノシン酸富有植物抽出物の製造法

少なくとも200バールの圧力および最大100℃の温度で超臨界CO2を用いて、乾燥されかつ微粉砕されたカルノシン酸含有植物材料を抽出することによって、カルノシン酸富有植物抽出物は、第1の工程で超臨界CO2を、植物材料1kg当たりCO210〜50kgの量で第1のCO2抽出物を生じながら植物材料に導通し、第2の工程でさらなる超臨界CO2を第2のCO2抽出物を生じながら植物材料に導通し、および第2のCO2抽出物から圧力の低下によってカルノシン酸富有植物抽出液を分離することにより製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルノシン酸含有植物材料を超臨界CO2で抽出することによってカルノシン酸富有植物抽出物を製造する方法に向けられている。
【0002】
カルノシン酸は、食品または化粧品において天然の酸化防止剤としてこれまでにしばしば使用されてきた酸化防止剤ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびブチルヒドロキシトルエン(BHT)の代わりに使用することができる植物成分である。このような使用のためには、僅かな固有色および香りや味を付与する微少量の物質を有しかつできるだけ全く溶剤を含有しないカルノシン酸富有植物抽出物が必要とされる。
【0003】
欧州特許第454097号明細書には、ローズマリーまたはサルビアからの精油を僅かに含有するカルノシン酸富有抽出物を製造するための方法が開示されている。そのために、二段階の抽出が超臨界CO2を用いて、最初に300〜350バールおよび35〜40℃で、および引続き500バールおよび40℃で実施されるか、または500バールおよび40℃で超臨界CO2を用いて抽出され、得られたCO2抽出物から2つの圧力段階で、最初に115〜120バールおよび75〜85℃で、および引続き33〜35バールおよび10〜17℃で分別してそれぞれ抽出物が沈殿される。この方法は、25質量%を上廻るカルノシン酸を含有する抽出物を提供するが、しかし、この抽出物は、なお緑がかった褐色を呈している。この方法は、異なる圧力段階で作業されなければならず、2つの圧力段階での分離において第1の圧力段階で得られた粘稠な抽出物を、なお超臨界CO2富有相と分離することが困難であるという欠点を有する。ドイツ連邦共和国特許第4306303号明細書には、超臨界CO2の抽出によって植物油を取得する方法が開示されており、この場合CO2抽出物は、超臨界条件下で漂白土の層上に導かれ、着色剤は取り除かれる。
【0004】
本発明の対象は、少なくとも200バールの圧力および最大100℃の温度で超臨界CO2を用いての、乾燥されかつ微粉砕されたカルノシン酸含有植物材料の抽出を含む、カルノシン酸富有植物抽出物を製造するための方法である。この抽出の場合、第1の工程で超臨界CO2は、植物材料1kg当たりCO210〜50kgの量で第1のCO2抽出物を生じながら植物材料に導通され、第2の工程でさらなる超臨界CO2が第2のCO2抽出物を生じながら植物材料に導通され、および第2のCO2抽出物から圧力の低下によってカルノシン酸富有植物抽出物が沈殿される。
【0005】
本発明による方法は、カルノシン酸の高い含量を有する植物抽出物を提供し、欧州特許第454097号明細書の記載から公知の方法の欠点を有しない。
【0006】
本発明による方法において、乾燥されかつ微粉砕されたカルノシン酸含有植物材料は、抽出される。特に、10質量%未満の含水量に乾燥された植物材料が使用される。植物材料の乾燥のために、公知技術水準から公知の全ての乾燥方法が使用されてよい。
【0007】
特に、乾燥は、100℃未満の温度、特に有利に85℃未満で行なわれる。植物材料は、特に微粉砕されず、および/または空中酸素の遮断下に乾燥され、この植物材料中に含有されているカルノシン酸と空中酸素との反応は、乾燥中、回避される。植物材料は、抽出のために微粉砕して使用される。特に、植物材料は、1.5mm未満の重量平均粒径に微粉砕される。植物材料の微粉砕のために、公知技術水準から公知の全ての微粉砕方法が使用されてよい。
【0008】
特に、微粉砕は、40℃未満の温度で行なわれる。植物材料は、特に空中酸素の遮断下に微粉砕され、この植物材料中に含有されているカルノシン酸と空中酸素との反応は、微粉砕中、回避される。
【0009】
カルノシン酸含有植物材料として、シソ科植物の植物部分、特にローズマリー属およびサルビア属の植物の植物部分が適している。特に有利には、植物材料は、ローズマリー(Rosmarinum officinalis)またはサルビア(Salvia officinalis)の葉を含む。
【0010】
乾燥されかつ微粉砕されたカルノシン酸含有植物材料は、本発明による方法において、超臨界CO2で少なくとも200バールの圧力および最大100℃の温度で抽出される。
【0011】
温度は、CO2が超臨界状態で存在するようにするために、抽出において31℃を上廻らなければならない。特に、280〜1000バールの圧力で、特に好ましくは280〜420バールの圧力で抽出される。
【0012】
超臨界CO2での抽出に適したオートクレーブは、公知技術水準から当業者に公知である。特に、抽出のために、超臨界CO2は、カルノシン酸含有植物材料の層に導通される。この場合、超臨界CO2は、上流への流れで、ならびに下流への流れで、植物材料の層に導通されることができる。この場合、CO2は、純粋な形で、ならびに公知技術水準から公知の共留剤10質量%までと混合して使用されてよい。共留剤として、特に4個までの炭素原子を有する脂肪族アルコール、6個までの炭素原子を有するアルカンおよび5個までの炭素原子を有する脂肪族ケトンが使用される。しかし、有利には、共留剤なしで抽出される。
【0013】
本発明による方法の場合、第1の工程において、超臨界CO2は、植物材料1kg当たりCO210〜50kgの量で第1のCO2抽出物を生じながら植物材料に導通される。次に、第2の工程において、さらなる超臨界CO2は、第2のCO2抽出物を生じながら植物材料に導通される。この場合には、特にさらに植物材料1kg当たりCO280〜250kgが植物材料に導通される。特に、第2の工程において、超臨界CO2は、第1の工程と同じ圧力で植物材料に導通される。次に、第2のCO2抽出物から圧力の低下によってカルノシン酸富有植物抽出物が沈殿される。第1のCO2抽出物から圧力の低下によって油富有植物抽出物が沈殿されてよい。特に、圧力が低下した際に、最終圧力および最終温度は、CO2が超臨界状態からガス状の状態へ移行するように選択される。圧力の低下による植物抽出物の沈殿に適した分離器は、超臨界CO2での抽出に対する公知技術水準から当業者に公知である。
【0014】
本発明による方法は、欧州特許第454097号明細書の記載から公知の、圧力の二段階での低下によるカルノシン酸富有植物抽出物の取得と比較して、僅かな割合の精油を有するカルノシン酸富有植物抽出物が得られ、この植物抽出物が減少された香りを有するという利点を有する。
【0015】
本発明による方法の1つの好ましい実施態様において、第2のCO2抽出物は、植物抽出物の沈殿前に超臨界条件下で固体の吸収剤に導通される。この場合、吸収剤として全ての吸収剤を使用することができ、その際に植物材料から一緒に抽出された着色剤が吸収されうる。特に、吸収剤として、活性炭、漂白土(フラー土)、珪藻土、シリカゲルまたはセルロースが使用される。特に有利には、吸収剤として、カルシウム含有ベントナイトまたはカルシウム含有モンモリロン石からなる漂白土が使用される。適した漂白土は、Suedchemie社によってTonsil(登録商標)の商品名で入手可能である。吸収剤は、粉末の形で、または特に顆粒として使用されてよい。この実施態様で、脱色された、カルノシン酸富有植物抽出物を製造することができる。
【0016】
CO2抽出物は、特に前記抽出の場合と同じ、圧力および温度の条件下で固体の吸収剤に導通される。抽出および吸収剤への通過は、互いに別々の装置中で、または同じ装置中で行なうことができる。
【0017】
特に、第1のCO2抽出物は、固体の吸収剤に導通され、その後に、油富有植物抽出物も脱色して得るために、圧力の低下によって油富有植物抽出物が分離除去される。この場合、第1のCO2抽出物および第2のCO2抽出物は、互いに別々に、同じ吸収剤に導通されてよいし、異なる吸収剤に導入されてよい。
【0018】
しかし、特に第1のCO2抽出物および第2のCO2抽出物は、順次に同じ固体の吸収剤に導通される。
【0019】
特に好ましい実施態様において、オートクレーブ中でカルノシン酸含有植物材料および吸収剤は、重なり合って存在する層の形で配置され、超臨界CO2は、最初に植物材料の層に導通され、その後に吸収材料の層に導通される。この場合、超臨界CO2が上流への流れで植物材料の層に導通される場合には、そのために吸収材料の層は、植物材料の層の上方に配置される。この場合、超臨界CO2が上流への流れで植物材料の層に導通される場合には、吸収材料の層は、植物材料の層の下方に配置される。
【0020】
この実施態様は、公知技術水準から公知の抽出装置において、超臨界CO2での抽出のためにさらなる清浄化装置または清浄化工程なしに脱色されたカルノシン酸富有植物抽出物を得ることができるという利点を有する。
【0021】
次の実施例は、本発明を詳説するものであるが、しかし、本発明の対象を限定するものではない。
【実施例】
【0022】

抽出型オートクレーブの抽出容器中に、8質量%の含水量に乾燥されかつ1.5mm未満の平均粒径に微粉砕されたローズマリー針葉1kgを予め装入する。微粉砕されたローズマリー針葉の層上に漂白土Tonsil(登録商標)Optimum 210 FFの層を施す。次に、超臨界CO2を280バールの圧力および65℃の温度で上流への流れで前記層に導通させる。得られたCO2抽出物を最初に第1の分離器に供給し、その際に45バールの圧力および35℃の温度で第1の植物抽出物が沈殿される。超臨界CO2が前記層に導通された後、得られたCO2抽出物は、第2の分離器に供給され、この分離器中で45バールの圧力および35℃の温度で第2の植物抽出物が沈殿された。
【0023】
全部で超臨界CO2100kgを前記層に導通した。第1の分離器中で、水相77gおよびオレンジ色の液状植物抽出物113gが得られ、この液状植物抽出物は、カルノシン酸13質量%および精油32質量%を含有していた。第2の分離器中で、黄色の粘稠な植物抽出物48gが得られ、この植物抽出物は、カルノシン酸41質量%および精油1質量%未満を含有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも200バールの圧力および最大100℃の温度で超臨界CO2を用いての、乾燥されかつ微粉砕されたカルノシン酸含有植物材料の抽出を含む、カルノシン酸富有植物抽出物を製造するための方法であって、この場合、第1の工程で超臨界CO2は、植物材料1kg当たりCO210〜50kgの量で第1のCO2抽出物を生じながら植物材料に導通され、第2の工程でさらなる超臨界CO2が第2のCO2抽出物を生じながら植物材料に導通され、および第2のCO2抽出物から圧力の低下によってカルノシン酸富有植物抽出物が沈殿される、カルノシン酸富有植物抽出物を製造するための上記方法。
【請求項2】
植物材料は、ローズマリー(Rosmarinum officinalis)またはサルビア(Salvia officinalis)の葉を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
280〜1000バール、特に280〜420バールの圧力で抽出する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
第2の工程において、植物材料1kg当たりCO280〜250kgが植物材料に導通される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1のCO2抽出物から圧力の低下によって油富有植物抽出物が沈殿される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第2のCO2抽出物が植物抽出物の沈殿前に超臨界条件下で固体の吸収剤に導通される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第1のCO2抽出液および第2のCO2抽出液が順次に同じ固体の吸収剤に導通される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
吸収剤は、活性炭、漂白土、珪藻土、シリカゲルおよびセルロースから選択される、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
カルシウム含有ベントナイトおよびカルシウム含有モンモリロン石から選択された漂白土が使用される、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
吸収剤は、顆粒の形で使用される、請求項6から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
植物材料および吸収剤は、オートクレーブ中で重なり合って存在する層の形で配置され、超臨界CO2は、最初に植物材料の層に導通され、その後に吸収材料の層に導通される、請求項6から10までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−508521(P2013−508521A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535726(P2012−535726)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065268
【国際公開番号】WO2011/054631
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】