説明

カルバペネム系抗生物質を含有する注射剤

【課題】
医薬品として有用な1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウム分子内塩(式(I))の安定な注射剤を提供する。
【解決手段】
式(I)の分子内塩、その溶媒和物、またはその塩と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は、糖から選択される少なくとも1種以上の添加剤とを含有してなる注射剤を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバペネム系抗生物質の注射剤に関するものである。さらに詳細には医薬品として有用な1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウム分子内塩、その溶媒和物、またはその塩と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は糖から選択される少なくとも1種以上の添加剤を配合することにより溶解性、安定性を改良させた注射剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウム分子内塩(以下、式(I)の化合物と称する。)は、下記の化学構造を示すカルバペネム化合物であり、WO02/42312号公報(特許文献1)、WO04/55027号公報(特許文献2)にその製造方法とともに開示されている。
【化1】

【0003】
式(I)の化合物はカルバペネム系抗生物質であり、グラム陰性菌のみならずグラム陽性菌にも優れた抗菌活性を示し、抗菌剤としての有用性が期待できる。
【0004】
一般的にカルバペネム系抗生物質は注射や点滴によって静脈内に投与される。これらの投与形態に適した製剤形態として、バイアルやキット内に充填された溶液製剤、無菌の薬物を直接充填した粉末充填製剤、又は凍結乾燥製剤が臨床に提供されている。一方、粉末製剤や凍結乾燥製剤を静脈内に投与する際には、薬物を所用の溶媒に溶解する必要がある。しかし、薬物の物理化学的性質はそれぞれの薬物で異なるため、溶媒の種類によっては完全に溶解できない場合が多い。そこで、個々の薬物について所要の溶媒に速やかに溶解できるように、溶解補助剤を用いて溶解させることが種々試みられている。しかし、薬物を溶解できたとしても、溶解補助剤を添加することによって、安定性の悪化、注射剤の着色、あるいは分解といった、いわゆる配合禁忌を起こすことも知られている。よって、各々の薬物に対して十分な安定性を保持した溶解補助剤を見出すことは容易なことではない。
又、カルバペネム系抗生物質の凍結乾燥製剤を安定的に保存し溶解する方法については、添加剤として2種類以上の糖類(例えばイノシトール及びマンニトール)を含有する方法(特許文献3)が知られている。
【0005】
【特許文献1】WO02/42312号公報
【特許文献2】WO04/55027号公報
【特許文献3】特開平8−231398
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
式(I)の化合物はグラム陰性菌のみならずグラム陽性菌にも優れた抗菌活性を示し、抗菌剤としての有用性が期待できる。しかし、溶解性は必ずしも満足のいくものではなく、医薬品の製剤として十分な濃度に調製され、かつ安定な溶液となる製剤、とりわけ注射剤を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、溶解性、安定性を改良した注射剤を見出した。すなわち医薬品として有用な1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウム分子内塩、その溶媒和物、またはその塩と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は、糖から選択される少なくとも1種以上の添加剤とを含有してなる注射剤を提供するものである。
本発明は、以下に示すものである。
(1)本発明は、次式(I):
【化2】


で示される1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウム分子内塩、その溶媒和物、またはその塩と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は、糖から選択される少なくとも1種以上の添加剤とを含有してなる注射剤。
(2)無機塩が、塩化ナトリウム、又は、塩化マグネシウムである(1)に記載の注射剤。
(3)水溶性酸アミド化合物が、アセチルトリプトファン、リドカイン、又は、ニコチン酸アミドである(1)に記載の注射剤。
(4)フェノール骨格を有する芳香族化合物が、パラオキシ安息香酸メチル、サリチル酸ナトリウム、ゲンチジン酸エタノールアミド、クレゾール、フェノール、フェノールレッド、没食子酸プロピルである(1)に記載の注射剤。
(5)アミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、又は、トリプトファンである(1)に記載の注射剤。
(6)糖が、精製白糖、乳糖、トレハロース、又は、マルトースである(1)に記載の注射剤。
(7)式(I)の分子内塩、その溶媒和物、またはその塩と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は、糖から選択される少なくとも1種以上の添加剤を、注射用液に混合、溶解し、pH1〜2に調整した後、pH3.5〜9.5に調整することを特徴とする(1)記載注射剤の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、医薬品として有用な1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウム分子内塩、その溶媒和物、またはその塩の溶解性、及び安定性を向上させた注射剤を提供することができる。又、溶解性を向上させることにより、注射剤調製時の時間短縮が可能となり医療従事者の作業効率が向上、製剤の凍結乾燥時間の短縮、及び、バイアルのサイズ縮小等、生産効率の向上とコスト低減が可能となる。これらのことから、優れた抗菌活性を示す抗菌剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式(I)の化合物は結晶体、非結晶体のいずれでもよい。さらに同じ化合物の結晶であっても、結晶化の条件によって複数の異なる内部構造および物理化学的性質を有する結晶(結晶多形)が生成することがあるが、本発明の結晶物質はこれらの結晶多形のいずれであってもよく、2以上の結晶多形または非結晶体との混合物であってもよい。
また、式(I)の化合物は「溶媒和物」であってもよく、「溶媒和物」とは、水分を吸収、吸着した等の水和物、またある種の溶媒を吸収、吸着することにより得られる溶媒和物が挙げられる。溶媒和物の溶媒としては、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。
また、式(I)の「塩」とは製薬学的に許容される塩である。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの様な無機塩、または、アンモニウム塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンの様な有機塩基との塩が挙げられる。また、酢酸、炭酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、のような有機酸との塩も挙げられる。好ましくは、分子内塩、ナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩である。
【0010】
本発明において「無機塩」とは塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなどを表し、好ましくは塩化ナトリウム、塩化マグネシウムが挙げられる。
【0011】
本発明において「水溶性酸アミド化合物」とは、アセチルトリプトファン、リドカイン、ニコチン酸アミド、イソニコチン酸アミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−ヒドロキシエチルラクトアミドなどを表し、好ましくは、アセチルトリプトファン、リドカイン、ニコチン酸アミドが挙げられる。
【0012】
本発明において「フェノール骨格を有する芳香族化合物」とは、ベンゼン環に少なくとも1つ水酸基を有する芳香族化合物である。例えば、パラオキシ安息香酸メチル、サリチル酸ナトリウム、ゲンチジン酸エタノールアミド、クレゾール、フェノール、フェノールレッド、没食子酸プロピルなどが挙げられる。
【0013】
本発明において「アミノ酸もしくはその塩」とは、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンなどを表し、好ましくは、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−トリプトファン、L−アルギニン塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩などが挙げられる。
【0014】
本発明において「糖」とは、精製白糖、乳糖、トレハロース、マルトースなどを表し、好ましくは精製白糖、マルトースが挙げられる。
【0015】
式(I)の化合物と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は、糖から選択され少なくとも1種以上の添加剤との配合割合はこれらの添加剤の種類により変動する。一般的には薬物に対する添加剤の量は0.05−50倍量の範囲で選択される。製造時に化合物と添加剤を水に溶解するが、混合されるこれらの添加剤の濃度は高いほど式(I)の化合物の安定性および溶解効果は高くなる。
【0016】
本発明の注射剤として使用できる溶液製剤及び凍結乾燥製剤の製造方法は常法によって行うことができる。一般的な製造方法としては、例えば、式(I)の化合物と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は、糖から選択した添加剤を注射用蒸留水に溶解し、必要に応じてpHを調整して溶解液を得る。注射剤として調整すべきpH値は、3.5〜9.5、好ましくは、4.0−9.0、さらに好ましくは4.0−8.0の注射剤に汎用されるpHの範囲から選択される。
また、製造方法のもう一つの態様として、上記と同様に式(I)の化合物と上記と同義の添加剤とを注射用蒸留水に溶解した後、pH調整剤にて一度pHを2以下、好ましくは1〜2に調整した後、pH3.5〜9.5、好ましくは、4.0−9.0、さらに好ましくは4.0−8.0に調整し製造することもできる。
また、pH調整剤としては塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸や水酸化ナトリウム、さらには本発明の添加剤を使用して調整することができる。また、これらのpH調整剤2種類以上を混合したものを使用して調整してもよい。
この溶解液をメンブランフィルターで無菌ろ過し、溶解液の一定量をバイアル瓶に分注し溶液製剤とする。また、この溶解液を定法により凍結乾燥することにより凍結乾燥製剤を製造することができる。凍結乾燥した製剤は、通常、一定量バイアル瓶に分注し密封して臨床に供することができる。また、溶解液の一定量をバイアル瓶に分注して、該バイアル瓶を凍結乾燥することによっても凍結乾燥製剤を製造することができる。これらの凍結乾燥製剤は使用時に注射用蒸留水などの注射用液を加えて攪拌することにより、無菌的に容易に溶解することができる製剤として供することができる。
【0017】
本発明の注射剤として使用できる粉末製剤の製造方法は常法によって行うことができる。一般的な製造方法としては、例えば、式(I)の化合物と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は、糖から選択した添加剤を混合して無菌的に一定量をバイアル瓶に分注し密封して臨床に供することができる。
【0018】
溶解液または無菌的に調製した混合粉末を分注する容器はバイアル瓶に限らず、アンプルやプレフィルドシリンジなどのキットを使用することもできる。
【0019】
本発明の注射剤には、本発明の目的を損なわない範囲内において、通常注射剤に使用される薬学的に許容されうる添加剤を更に使用することができる。これらの添加剤としては、安定化剤、抗酸化剤、溶解補助剤、緩衝剤、賦形剤、及び/又は等張化剤などが挙げられる。
【0020】
本発明の凍結乾燥製剤及び粉末充填製剤からなる注射剤は、注射用蒸留水、食塩水またはブドウ糖液などの注射用液により用時に溶解して使用することができる。溶解液は注射剤の濃度に応じて適宜調整して使用すればよい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によりさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

実施例1
クエン酸ナトリウム1.7gに1mol/Lの塩酸10mLと1mol/Lの水酸化ナトリウム4.8mLを加え、更に注射用蒸留水を加え100mLに調整したクエン酸溶液3mLに表1に示す各種の添加剤を加え溶解した。pHが5.0±1.0になるように1mol/Lの塩酸を加えて調整した。有効成分である式(I)の化合物である、1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウムの水和物を30mg加え、超音波を照射しながら15分間攪拌後、超音波照射を止め、室温下で15〜45分間攪拌し、この懸濁液をメンブランフィルターでろ過した。得られたろ液の薬物濃度を、高速液体クロマトグラフイー法を用いて測定した。対照としてクエン酸溶液に添加剤を添加しないで有効成分である式(I)の化合物のみを添加して同様の処理溶解を行い得られたろ液を用いた。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例2
注射用蒸留水2mLに有効成分である式(I)の化合物である、1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウムの水和物を200mgと表2に示す各種の添加剤を加えて混合した。pHが2以下になるように1mol/Lの塩酸を加えて調整し、式(I)の化合物を溶解した。pHが5.0±1.0になるように1mol/Lの水酸化ナトリウムもしくは添加剤を加えて調整した。この溶解液をメンブランフィルターでろ過した。得られたろ液の薬物濃度を、高速液体クロマトグラフイー法を用いて測定した。その結果を表2に示す。
【0024】
【表2】


【0025】
実施例3
ゲンチジン酸エタノールアミドを表3に示す割合で注射用蒸留水に溶解し、有効成分である式(I)の化合物である、1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウムの水和物を80mg/mL相当の量を加えよく混合した。2mol/Lの塩酸を加えpH2に調整した。有効成分である式(I)の化合物が十分に溶解したことを確認した後に0.2mol/Lの水酸化ナトリウムを加えてpH5に調整し、この溶解液をメンブランフィルターでろ過した。調製した溶解液を室温下に放置し、不溶物の浮遊もしくは沈降が認められるまでの時間を測定した。添加剤であるゲンチジン酸エタノールアミドの濃度は高いほど式(I)の化合物の不溶物に対する安定性は高くなった。
【0026】
【表3】

【0027】
実施例4
注射用蒸留水に有効成分である式(I)の化合物である、1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウムの水和物を100mg/mL相当の量を加えよく混合した。4mol/Lの塩酸を加えpH2に調整する。有効成分である式(I)の化合物が十分に溶解したことを確認した後にL−アルギニンを表4に示す割合で加え、0.2mol/Lの水酸化ナトリウムを加えてpH5に調整し、この溶解液をメンブランフィルターでろ過した。調製した溶解液を室温下に放置し、不溶物の浮遊もしくは沈降が認められるまでの時間を測定した。添加剤であるL−アルギニンの有効成分に対するモル比が1以上で式(I)の化合物の不溶物に対する安定性は高くなった。
【0028】
【表4】

【0029】
実施例5
マルトース、ゲンチジン酸エタノールアミド、L−アルギニン、塩化ナトリウムを表5で示す割合になるように調製し、150mLの注射用蒸留水に溶解した。この溶解液に有効成分である式(I)の化合物、1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウムの水和物を30g(力価)加えよく混合した。2mol/Lの塩酸を加えpH2に調整した。有効成分である式(I)の化合物が十分に溶解したことを確認した後に0.2mol/Lの水酸化ナトリウムを加えてpH5に調整した。液量を300mLに調整し、メンブランフィルターでろ過した。ガラス製のバイアルに5mLずつ分注し、常法により凍結乾燥して凍結乾燥製剤を調製した。この凍結乾燥製剤を40℃で保存し、1ヶ月保存した場合と、60℃で保存し、1ヶ月保存した場合の有効成分の残存率を高圧液体クロマト法を用いて保存前の有効成分の量との比率で示した。添加剤の添加によって有効成分である式(I)の化合物の安定性が向上したことが確認できた。
【0030】
【表5】

【0031】
実施例6
表6に示す割合になるように150mLの注射用蒸留水にマルトースを溶解し、有効成分である式(I)の化合物、1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウムの水和物を30g(力価)加えよく混合した。2mol/Lの塩酸を加えpH2に調整した。有効成分である式(I)の化合物が十分に溶解したことを確認した後に0.2mol/Lの水酸化ナトリウムを加えてpH5に調整した。更に溶解液に表6の割合になるようにクエン酸ナトリウム、塩化ナトリウムを加え、0.2mol/Lの水酸化ナトリウムを加えてpH5に調整した。液量を1500mLに調整しメンブランフィルターでろ過した。ガラス製のバイアルに25mLずつ分注し、常法により凍結乾燥して凍結乾燥製剤を調製した。この凍結乾燥製剤を60℃で保存し、2週間および1ヶ月保存した場合の有効成分の残存率を高圧液体クロマト法を用いて保存前の有効成分の量との比率で示した。添加剤の添加によって有効成分である式(I)の化合物の安定性が向上したことが確認できた。
【0032】
実施例7
表6に示す割合になるように150mLの注射用蒸留水にマルトースを溶解し、有効成分である式(I)の化合物、1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウムの水和物を30g(力価)加えよく混合した。4mol/Lの塩酸を加えpH2に調整した。有効成分である式(I)の化合物が十分に溶解したことを確認した後に3.5mol/LのL−アルギニン溶液および0.2mol/Lの水酸化ナトリウムを加えてpH5に調整した。更に溶解液に表6の割合になるように塩化ナトリウムを加え、0.2mol/Lの水酸化ナトリウムを加えてpH5に調整した。液量を300mLに調整しメンブランフィルターでろ過した。ガラス製のバイアルに5mLずつ分注し、常法により凍結乾燥して凍結乾燥製剤を調製した。この凍結乾燥製剤を60℃で保存し、2週間および1ヶ月保存した場合の有効成分の残存率を高圧液体クロマト法を用いて保存前の有効成分の量との比率で示した。添加剤の添加によって有効成分である式(I)の化合物の安定性が向上したことが確認できた。
【0033】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、医薬品として有用な1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウム分子内塩、その溶媒和物、またはその塩の溶解性、及び、安定性を向上させた注射剤を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】


で示される1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-[[2-[(4S,5R,6S)-2-カルボキシ-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキソ-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-3-イル]イミダゾ[5,1-b]チアゾール-7-イル]カルボニル]ピリジニウム分子内塩、その溶媒和物、またはその塩と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は、糖から選択される少なくとも1種以上の添加剤とを含有してなる注射剤。
【請求項2】
無機塩が、塩化ナトリウム、又は、塩化マグネシウムである請求項1に記載の注射剤。
【請求項3】
水溶性酸アミド化合物が、アセチルトリプトファン、リドカイン、又は、ニコチン酸アミドである請求項1に記載の注射剤。
【請求項4】
フェノール骨格を有する芳香族化合物が、パラオキシ安息香酸メチル、サリチル酸ナトリウム、ゲンチジン酸エタノールアミド、クレゾール、フェノール、フェノールレッド、没食子酸プロピルである請求項1に記載の注射剤。
【請求項5】
アミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、又は、トリプトファンである請求項1に記載の注射剤。
【請求項6】
糖が、精製白糖、乳糖、トレハロース、又は、マルトースである請求項1に記載の注射剤。
【請求項7】
式(I)の分子内塩、その溶媒和物、またはその塩と、無機塩、水溶性酸アミド化合物、フェノール骨格を有する芳香族化合物、アミノ酸もしくはその塩、又は、糖から選択される少なくとも1種以上の添加剤とを、注射用液に混合、溶解し、pH1〜2に調整した後、pH3.5〜9.5に調整することを特徴とする請求項1記載注射剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−286738(P2009−286738A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141849(P2008−141849)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】