説明

カルバペネム類を含む殺菌性抗MRSA活性医薬組成物

構造式I


で示されるカルバペネムおよびエピシリンを含む医薬組成物は、MRSAおよびMRSEに対する強力な殺菌剤である。同様に、常套のカルバペネム系抗生物質およびエピシリンを含む組成物は、当該細菌を高度に相乗的に根絶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細および背景
本発明は、一般式I
【化1】


〔式中、Rは、水素、ヒドロキシメチルまたは1−ヒドロキシエチルを示し、Rは、水素またはメチルを示し、そしてRは、酸素−炭素単結合または窒素−炭素単結合により分子の残りの部分に結合され、そして置換または非置換の、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルコキシ、N−ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルカルボニルオキシ、ヘテロシクリルチオカルボニルオキシ、アシルオキシ、チオアシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、チオカルバモイルオキシ、ヘテロシクリルオキシカルボニルオキシ、ヘテロシクリルオキシチオカルボニルオキシ、N−ヘテロシクリルカルバモイルオキシ、N−ヘテロシクリルチオカルバモイルオキシ、ヘテロシクリルカルボニルアミノ、ヘテロシクリルチオカルボニルアミノ、ヘテロシクリルオキシカルボニルアミノ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシチオカルボニルアミノ、チオアシルアミノ(thioacyclamino)、N−ヘテロシクリルカルバモイルアミノ、N−ヘテロシクリルチオカルバモイルアミノ、カルバモイルアミノ、チオカルバモイルアミノ、イミドイルアミノ、グアニジノ、N−ヘテロシクリル−アルコキシカルボニルアミノ、N−ヘテロシクリル−アルキルチオカルボニルアミノおよびN−スルホニルアミノ(該アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、チオアシルまたはイミドイル分子部分は、1ないし6個の炭素原子を含み、そしてヘテロシクリル部分は、単環式または二環式であり、その1個以上の原子が酸素、硫黄および窒素を含む原子から選択される3ないし10個の環原子を含む)を含む群から選択される薬学的に許容される基であり、
【0002】
ここで、上記の基Rの置換基は、アルキル、アシル、チオアシル、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルコキシ、アミノアルコキシ、アミジノアルコキシ、グアニジノアルコキシ、アシルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アルキルヘテロシクリルオキシ、ヒドロキシアルキルヘテロシクリルオキシ、アミノアルキルヘテロシクリルオキシ、カルバモイル、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、カルバモイルオキシ、アルキルカルバモイルオキシ、ジアルキルカルバモイルオキシ、チオカルバモイル、アルキルチオカルバモイル、ジアルキルチオカルバモイル、チオカルバモイルオキシ、アルキルチオカルバモイルオキシ、ジアルキルチオカルバモイルオキシ、メルカプト、アルキルチオ、ヒドロキシアルキルチオ、アミノアルキルチオ、モノアルキルアミノアルキルチオ、ジアルキルアミノアルキルチオ、アミジノアルキルチオ、アシルチオ、ヘテロシクリルチオ、アルキルヘテロシクリルチオ、ヒドロキシアルキルヘテロシクリルチオ、アミノアルキルヘテロシクリルチオ、カルバモイルチオ、モノアルキルカルバモイルチオ、ジアルキルカルバモイルチオ、チオカルバモイルチオ、アルキルチオカルバモイルチオ、ジアルキルカルバモイルチオ、アミノ、モノアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルアミノ、アミノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、オキソ、オキシイミノ、またはアルキルイミノ、イミドイルアミノ、アルキルイミドイルアミノ、ジアルキルイミドイルアミノ、テトラアルキルアンモニウム、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アルキルヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルカルボニルアミノ、アルキルヘテロシクリルカルボニルアミノ、アシルアミノ、アミジノ、モノアルキルアミジノ、ジアルキルアミジノ、グアニジノ、アルキルグアニジノ、ジアルキルグアニジノ、カルバモイルアミノ、チオカルバモイルアミノ、アルキルカルバモイルアミノ、チオカルバモイルアミノ、アルキルチオカルバモイルアミノ、ニトロ、クロロ、ブロミノ、フルオロ、ヨード、アジド、シアノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、スルファモイルオキシ(sulphamoyloxy)、アルキルスルファモイルオキシ、アルキルスルホニルオキシまたはスルホ、スルホキシ、カルボキサミド、N−モノアルキルカルボキサミド、N,N−ジアルキルカルボキサミドまたはカルボキシ(該置換基は、それぞれ独立して、1個または複数個存在し、それらのアルキル部分は、1ないし6個の炭素原子を含み、そしてヘテロ環式基は、単環式または二環式であり、その1個以上の原子が酸素、硫黄および窒素を含む原子から選択される3ないし10個の環原子を含む)であってよい〕
で示されるカルバペネム−3−カルボン酸の2−S/O−およびS/Nホルムアルデヒドアセタール誘導体に関し、該化合物およびそれらの薬学的に許容される塩、エステルおよびアミド誘導体は、抗生物質およびβ−ラクタマーゼ阻害剤として有用である。
【0003】
酸素−炭素単結合または窒素−炭素単結合により結合される薬学的に許容される基Rは、例えば、β−ラクタム系抗生物質またはβ−ラクタマーゼ阻害剤の分野で常用の基である。かかる基は、例えば、M.S. Sassiver, A. Lewisの“Advances in Applied Microbiology”, Ed. D. Perlman, Academic Press N.Y. (1970)または多くの特許、例えば米国特許第5,096,899号に見出される。
【0004】
本明細書および特許請求の範囲で用いる用語“薬学的に許容される塩”は、非毒性の酸性塩および塩基性塩、ならびに双性イオン種の塩類を含む。塩基との塩類には、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩またはアンモニウム塩のような無機塩類、ならびにトリアルキルアミン類、アルカノールアミン類、アルギニンのような非毒性のアミン類、またはカルボン酸の塩類を形成するために用いられているピペラジン、プロカインおよび他のアミン類のような環状アミン類との塩類が含まれる。酸との塩類には、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などのような無機酸塩、ならびに酢酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩およびシュウ酸塩のような有機酸塩、およびアミンとの塩形成に用いられている酸との他の有機塩類が含まれる。
【0005】
本明細書で用いる薬学的に許容されるエステルおよびアミド誘導体は、体内で加水分解されて抗生物質自体を得るためのプロドラッグとしての役割を果たす。それらは、好ましくは、加水分解が、主として消化酵素の影響下で起こるため経口的に投与される。非経腸投与は、加水分解が血中で起こるいくつかの例において用いられ得る。薬学的に許容されるエステルおよびアミド誘導体の例は、例えばAdvances in Drug Res. 17, 197 (1988)のようなペニシリンおよびセファロスポリン分野で公知かつ使用される、生理的に加水分解可能なエステルおよびアミドを含む。かかるエステルおよびアミド誘導体は、当技術分野で公知の常套技術により製造される。
【0006】
本発明の化合物は、いくつかの不斉中心を有し、そのためいくつかの立体化学形状で存在し得る。本発明は、異性体の混合物および個々の立体異性体を含む。最も好ましい式Iの化合物は、置換カルバペネム核の1R、5Sおよび6S立体配置および6−(1−ヒドロキシエチル)側鎖の1’Rまたは1’S立体配置を有する。加えて、不斉炭素原子が、置換基R中に含まれ得る。本発明は、置換基RにおいてRおよびS立体配置を有する化合物を含む。
【0007】
さらに、本発明はまた、市販されているか、または臨床適用について調査されている、常套のカルバペネム系抗生物質にも関する。かかるカルバペネム系抗生物質についての包括的な報告は、Heterocycles 54, 497, 2001中に記載される。
【0008】
本発明はまた、カルバペネム系抗生物質を含む医薬組成物およびそれらの製造法にも関する。本発明はまた、抗生物質作用が示されるとき、かかる組成物が用いられる処置法にも関する。
【0009】
本クラスの化合物についての技術用語は、自明かつ単純な命名方式を用いる骨格名(root name)“カルバペネム”に基づき得る(概説で用いられる)。あるいは、これらの化合物は、ケミカルアブストラクツシステム(Chemical Abstract system)による命名法(ビシクロ命名法)により記載されてもよく、それは、このファミリーの個々の化合物を記載するのにより適当である。故に、ケミカルアブストラクツ命名法が、実施例部分で用いられる。
【化2】

【0010】
ペニシリンまたはセファロスポリンのような古典的β−ラクタム系抗生物質は、一部は、細菌耐性のために、感染症の治療に効果が無くなっている。ある細菌の自然耐性の他に、多くの病原性微生物株が、大量の抗生物質の継続使用により耐性を獲得している。故に、多くの黄色ブドウ球菌種が、ペニシリンに対して耐性となり、エンテロバクター・クロアカ種、シュードモナス・エルジノーサ種のような多くのグラム陰性細菌種または大腸菌でさえ、セファロスポリンに対して耐性を獲得している。
【0011】
本発明のカルバペネムは、β−ラクタマーゼを産生するペニシリン感受性黄色ブドウ球菌種およびペニシリン耐性黄色ブドウ球菌種に対して単一物質として非常に活性であるが、それらは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌種(MRSA)またはメチシリン耐性表皮ブドウ球菌種(MRSE)に対して活性ではない。例えば、4種の代表的なカルバペネムが、米国特許第6,482,818号またはEP1100800に記載のプレート試験で0−12mmの小さな阻害ゾーンを有するスタフィロコッカス・インスブルク(Staph. Innsbruck)(メチシリン耐性)に対して低い活性のみを示した。カルバペネムクラス内でのMRSAに対する活性の喪失もまた、例えばEP384410に記載される。MRSAの耐性レベルは、過去10年間で大幅に増大し、2000年には既に、全ての市販のカルバペネムは完全に抗MRSA活性を欠いていた(Journal of Antimicrobial Chemotherapy 2000, 45, 379)。
【0012】
結果として、抗生物質分野における本発明は、近い将来ヒト生命への大きな脅威になるかもしれない、MRSAおよびMRSE耐性の増大を克服する方法に焦点を当てる。
【発明の概要】
【0013】
黄色ブドウ球菌は、最も多く存在する感染症の病原菌の一種である。2004年、黄色ブドウ球菌により引き起こされた疾患のうち22.6%が、メチシリンまたはオキサシリンに対する耐性を報告された(PEG− Resistenzstudie, Paul Ehrlich Gesellschaft fuer Chemotherapie e.V, www.p−e−g.org)。MRSAおよびMRSEの根絶は、これらの細菌の多くの種が、β−ラクタムではない抗生物質、例えばキノロン系抗生物質に対しても耐性であるため、特に困難である。
【0014】
MRSA耐性は、β−ラクタマーゼの形成によるのではなく、全く異なる機序のため、すなわち該抗生物質と全てのMRSA株に存在するペニシリン結合タンパク質PBP2aの結合を欠く、または不十分にすることによる。この観点から、β−ラクタマーゼ阻害剤を含むペニシリンまたはセファロスポリンの医薬製剤は、MRSAの耐性を克服するための一解決法ではなく、アモキシシリンおよびクラブラネートの組み合わせもまた、MRSAによる感染症に不適当である(Journ. Antimicrob. Ther. 1989, 49.)。
【0015】
メチシリン耐性を克服するための別に計画した方法は、3種のカルバペネムおよびペニシリンまたはセファロスポリンの相乗効果の記載と共にEP384410に公開された。イミペネムと組み合わせてのピペラシリンおよびセフォチアムの使用は、EP384410にてとりわけ好ましいと見なされた。しかしながら、先行技術に記載される上記の組み合わせは十分な効果がほとんどなく、ピペラシリン/イミペネムについて27.9μg/mlまたはセフォチアム/イミペネムについて14.4μg/mlの平均MICが報告されている。メロペネムおよびセフピラミドの相乗効果はまた、13.2μg/mlの平均MICと報告された(Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis. 10, 77-84, 1991)。このような高いレベルは、全治療中にインビボで維持されることが不可能であるか、または非常に困難である。先行技術のこれらの組合せ剤は、個々の成分単独よりも活性であったが、実質的な改善が望まれた。
【0016】
1995年にドイツ、米国および他の国で確認されていなかったEP384410の内容は、先行技術に記載される組合せ剤が実行可能性を欠くことを示す。
【0017】
全ての現在市販されているカルバペネムは、それらが十分な経口活性を有さないため、非経腸的に投与される(Infection 14, (1986), suppl. 2, S 115)。(経口的に活性な)ペニシリンまたはセファロスポリンおよびカルバペネムを含む経口的に活性な組成物は、先行技術によって製造され得なかった。経口的に活性な組成物は、病院での非経腸製剤で始まり、患者の早期退院後に経口治療を継続する、いわゆる“スイッチ療法”にとって望ましい。経口カルバペネムについてのより近年の概説は、Curr. Med. Chem. - Antiinfective Agents, 2000, 1, 1に提供された。
【0018】
MRSA感染症に対して選択される現在の抗生物質は、リネゾリドという静菌剤である(Chemotherapie Journal. 2002, 11, 113−6)。
【0019】
MRSAの耐性を克服するため、本発明者らは、29種の常套の古典的β−ラクタム系抗生物質と15種のカルバペネムを含む組成物を可能性のある相乗作用について調査した。これらの調査に関して、2種の高い耐性の院内MRSA株、すなわちスタフィロコッカス・インスブルクおよびMRSA7268/02を用いた。スタフィロコッカス・インスブルクは、オキサシリン、メチシリン、アンピシリンおよびシプロフロキサシンに耐性であり、MRSA7268/02は、オキサシリン、メチシリン、エンロフロキサシリン、クリンダマイシン、シプロフロキサシンおよびモキシフロキサシンに多剤耐性である。かかる抗耐性細菌は、最近出現し、10年前にはあまり存在していなかった。
【0020】
驚くことに、本発明者らは、調査した常套のβ−ラクタム系抗生物質(12種のペニシリンおよび17種のセファロスポリン)のうち、エピシリンが、カルバペネムと併用したとき高耐性MRSAに対して優れた効果を示したことを見出した。エピシリン/イミペネムの相乗効果は、ピペラシリン/イミペネムまたはセフォチアム/イミペネムを用いる先行技術発明の効果よりも効果が高かった。コロニー形成単位(cfu)の時間依存的計数は、2+2μg/mlでのエピシリン/イミペネムがまた、アンピシリン/イミペネム製剤を含む、他の調査した先行技術に記載のペニシリン/イミペネムまたはセファロスポリン/イミペネム製剤よりも、MRSA7268/02をより早期に根絶したことを明らかにした。エピシリン/イミペネムの組合せ剤でcfu数は、37℃にて6時間のインキュベート後に99.6%減少し、該製剤が、MRSA7268/02に対して強力に殺菌性であることが明らかにされた。対照的に、とりわけ先行技術に記載される好ましい組合せ剤、すなわちピペラシリン/イミペネムまたはセフォチアム/イミペネムは、それぞれ17%または71%のcfuの減少であって殺菌性はわずかであった(表1)。
【0021】
【表1】

【0022】
単独で使用したとき、エピシリンもリネゾリドも、cfuの顕著な減少は示さなかった。4μg/mlでのメロペネムもまた、2+2μg/mlでのエピシリン/メロペネム組成物ほど殺菌性ではなかった(表2)。
【0023】
【表2】

【0024】
同じ細菌および濃度を用いて、エピシリン/メロペネムの組合せ剤は、ピペラシリン/メロペネムについての42.5%と比較して、cfuの99.7%の減少を供した。同様に、4+4μg/mlのスタフィロコッカス・インスブルクでは、エピシリン/メロペネムによる37℃での6時間のインキュベーション後のcfuの減少は、ピペラシリン/メロペネムによって達成されたわずか10%の減少と比較して、100%であった(表3)。エピシリン/メロペネムの殺菌効果もまた、アンピシリン/メロペネムおよびアモキシシリン/メロペネムより優れていた。同様に、他のエピシリン/カルバペネム組合せ剤もまた、非常に早い殺菌作用を有した。
【0025】
まとめると、エピシリンとカルバペネムの組合せ剤が、MRSAの根絶において、先行技術の対応する製剤よりも、より有効であり、より殺菌性であり、かつより即効性である。
【0026】
【表3】

【0027】
本組合せ剤の高い殺菌性は、MRSAに対して用いられる現在の抗生物質、すなわちリネゾリドおよびバンコマイシン(両方とも、静菌活性のみを有する)とはかなり異なる(Chemotherapie Journal. 2002, 11, 113−6; Antimicrob. Ag. Chemother. (2005), 49, 2735)。
【0028】
エピシリン/メロペネム組合せ剤の高相乗効果はまた、プレート試験での以下の阻害ゾーン直径でも観察される:
【0029】
【表4】

【0030】
単一物質のエピシリンまたはメロペネムによる阻害ゾーンと異なり、そして全ての調査した単一のβ−ラクタムと異なり、エピシリンおよびメロペネムの組合せ剤により得られる阻害ゾーンは、37℃でのさらなるインキュベーション(40時間)後に明らかに残り、上記の強力な殺菌効果が確認された。この効果はまた、他のエピシリン/カルバペネム組合せ剤でも観察可能である。故に、エピシリンおよびカルバペネム組成物の使用が強く望まれる。
【0031】
本組合せ剤の高い殺菌性はまた、例えばオキサシリン/メロペネムの殺菌性ともかなり異なる。後者の組成物の相乗効果はプレート試験で全く観察されなかった。
【0032】
【表5】

【0033】
2種のβ−ラクタム化合物、例えばエピシリンおよびメロペネムの組合せ剤のMRSAに対する高く、かつ速効性の殺菌作用は、驚くべきものである。全てのβ−ラクタムは、メチシリン(または、オキサシリン)に“耐性”であると報告されるべきであると先行技術文献に記載されている(W. Cullmann in “Antibiotics and Chemotherapy” Vol. 47 (Oral Cephalosporins), p. 79 (1995)。この引用文献は、本発明に対して従来技術の先入観を構成する。
【0034】
MRSAまたはMRSEの根絶にカルバペネムおよびエピシリンを用いることは、従来技術により公知ではない。Sci−Finder Scholar (Am.Chem.Society)から“エピシリンおよびmrsa”という両方のキーワードを用いて利用可能な文献はなく、一方、9082個の文献が、“mrsa”という(単独の)キーワードで利用可能であった。
【0035】
本発明の目的は、カルバペネム系抗生物質およびエピシリンを含む新規医薬組成物を提供することであり、それは、MRSAおよびMRSEを含む非常に広範な抗細菌範囲を有することが証明される。上記のエピシリンとの相乗作用はまた、経口的に活性なカルバペネムにも内在する。
【0036】
エピシリンは、1970年代および1980年代に経口的および非経腸的に活性な抗生物質として広く使用された。臨床実験の報告は、例えばN. Z. med. J. 75, 77 (1972)に記載される。カルバペネムは、市販製品であるか、またはEP1100800もしくは他の文献、例えばHeterocycles, 54, 497 (2001); Drugs 61, 553 (2001); Current Opinion in Anti−infection Investigational Drugs 2, 133 (2000)に記載の方法により製造される。
【0037】
既報の通り、相乗的混合物の製造におけるカルバペネムの選択は、それ程重要ではない。実際に、現在までに調査した全ての18種のカルバペネムが、エピシリンと併用したとき、MRSAに対して顕著な相乗作用を示した。一方、パートナーの抗生物質の選択はより重要である。先行技術の教示とは対照的に、エピシリンのみが、カルバペネムとの相乗作用に高い耐性レベルを有するMRSAを根絶するのに十分な殺菌作用を提供し得る。
【0038】
経口使用に関して、エピシリンのプロドラッグエステルまたはプロドラッグアミド誘導体はまた、相乗的製剤を製造するためにも用いられ得る。かかるプロドラッグは、当技術分野で公知であり、例えば、Advances in Drug Res. 17, 197 (1988)またはCurr. Med. Chem. −Anti−Infective Agents 2002, 1, 1に記載される。同様の抗生物質のかかるプロドラッグエステル誘導体の例は、ピバンピシリン、バカンピシリンおよびピブセファレキシン(pivcefalexin)である。プロドラッグアミド誘導体の例は、ヘタシリンである。
【0039】
相乗的混合物の製造における有用な常套のカルバペネムの例は、EP1100800に記載のカルバペネム類、イミペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、パニペネム、パニペネム/ベタミプロン、エルタペネム、ビアペネム、ドリペネム、サフトリネム(saftrinem)、レナペネム、テビペネム、トモペネムS−4661、SM216601、GV129606、ZD−4433、ER−35786、R−83201、R95867、DU−6681、BO−2502A、BO−3482、DK−35C、DA−1131、S−4661、L−646591、L−786,392、L−695,256、L−786,392、L−084、L−036、GV104326、GV−118819、GV143253、MK−0826、J−110,441、J−111225、FR−21818、DX−8739、CS−023、ME−1036、CP5068、OCA−983、CL−188624、CL−190294、T−5575、PZ−601である。
【0040】
同様に、経口使用に関して、カルバペネム類の分野でも公知の加水分解性プロドラッグエステル(Antimicrob. Agents, Chemother. 1998, 42, 1527; Heterocycles 54, 497 (2001), Curr. Med. Chem. −Anti−Infective Agents 2002, 1, 1)は、相乗的混合物の製造に用いられ得る。プロドラッグ・カルバペネム類の例は、CS−834、L−084、GV118819、DZ−2640、CL191121である。
【0041】
エピシリンに対するカルバペネムの比は、広い範囲内で変化し得る。有用な比は、1:10ないし10:1である。好ましい比は、1:4ないし4:1である。非常に好ましい比は、1:1ないし1:3である。
【0042】
上記のエピシリンおよびカルバペネムの組合せ剤は、他の種々の生物学的に活性な成分を補充され得る。例としては、ベタミプロンまたはシラスタチンのようなデヒドロペプチダーゼ阻害剤であり、それらは現在、イミペネムのようなカルバペネムを保護するために用いられる。
【0043】
コロニー形成単位の迅速かつ漸進的減少は、確認されたか、または疑われたMRSAおよびMRSE感染の初期治療として、本発明の組合せ剤を選択方法にする。
【0044】
感染症の主な欠点は、血流感染からの重症疾患である、人命を脅かす敗血症の発症である。細菌性敗血症により米国にて1年に200000名以上の人が死亡すると概算される(www.nursing−home−abuse−resource.com)。敗血症はまた、MRSAに関して一般的である。かかる脅威を避けるため、本発明の初期の殺菌治療により細菌単位を減少させ得る。次いで、抗生物質、例えばβ−ラクタム以外の抗生物質を用いる二次療法を、大幅に減少した数の細菌を根絶するために行い得る。故に、本発明の組合せ剤は、さらに抗生物質を補充され得る。かかる補助剤の例は、スルホンアミド、例えばサルファチアゾール/トリメトプリム、テトラサイクリン、例えばオーレオマイシンまたはドキシサイクリン、アミノグリコシド、例えばクリンダマイシン、グリコペプチド、例えばテイコプラニン、バンコマイシン、キノロン、例えばシプロフロキサシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシンまたはリファマイシン、例えばリファンピン、マクロライド、例えばエリスロマイシン、または他の静菌剤、例えばリネゾリドである。
【0045】
また、本発明の医薬製剤の選択が、ブドウ球菌とは異なる細菌に対して高い抗細菌活性を示した:ディスク感受性試験において、30μgのエピシリンおよび10μgのカルバペネムの同時適用が、以下の阻害直径を与えた:大腸菌類(27−40mm)、クロアカ類(23−27mm)、肺炎球菌類(31−44mm)、連鎖球菌類(21−40mm)および緑膿菌類(13−26mm)。これらのデータは、Journ. Antimicrob. Chemotherapy 24, (1989), Suppl. A, 253に記載の通り、単一物質として用いるカルバペネムが臨床的に有用な注射可能物質であることに対応する。
【0046】
新規医薬製剤は、ヒトおよび動物用医薬に用いられる有用な殺菌剤である。それらの広範な抗細菌範囲により、それらは、上記のグラム陽性菌およびグラム陰性菌以外、すなわちMRSA、MRSE、モラクセラ属カタル球菌、ヘモフィルス属インフルエンザ菌、肺炎球菌、納豆菌、枯草菌、エンテロバクター・クロアカ種、シトロバクター属、シュードモナス・エルジノーサ種、プロテウス菌および嫌気性細菌により引き起こされる、疑われたか、または確認された感染症の処置のための医薬としても用いられ得る。
【0047】
単一物質としてカルバペネムを用いる抗菌療法の主な分野は、副鼻腔炎、呼吸管の炎症である。大部分が、肺炎連鎖球菌、モラクセラ属カタル球菌、ヘモフィルス属インフルエンザ菌、数種の嫌気性細菌、ならびにペニシリン感受性およびペニシリン耐性(β−ラクタマーゼ産生)黄色ブドウ球菌、ならびにMRSAにより引き起こされる細菌性副鼻腔炎は、しばしば、混合感染も引き起こす(Journal of laryngology and otology (2005), 119(4), 251)。カルバペネム単独が、MRSAを除くこれらの細菌全てを効率的に根絶し得る。カルバペネム/エピシリン組成物の組合せ剤は、MRSAの耐性から生じるギャップを埋める。故に、本発明の組合せ剤は、とりわけ細菌性副鼻腔炎の治療に有用である。さらに、MRSAまたはMRSEにより引き起こされることが確認されるか、または仮定される他の感染症、例えば尿路感染症または創傷は、本発明の医薬組成物の適用により治療され得る。
【0048】
本発明の新規の殺菌性MRSA活性医薬組成物は、有用な治療薬であり、ほとんどのペニシリン−およびセファロスポリン耐性細菌および嫌気性細菌を含む、ほとんどのグラム陽性およびグラム陰性病原菌に対して活性である。それらの非常に広範な抗細菌範囲により、それらは、例えば集中治療室での使用に有用な医薬である。一方、エピシリンは経口的に活性な薬剤であるから、経口的に活性なカルバペネムとのその組合せ剤は、地域感染型の感染症の迅速な経口処置に有用な治療剤でもある。
【0049】
本発明の医薬組成物は、遊離酸、および特に、それらの成分のアルカリ金属塩類およびアルカリ土類金属塩類または双性イオン種を含み得る。それらは、殺菌剤として有用であり、歯科用機器および医療機器から微生物を除去するため、およびヒトおよび動物における治療適用のために、病原菌を除去するために用いられ得る。後者の目的に関して、それらの活性成分の薬学的に許容される塩は、それ自体公知の通りに用いられてよく、ペニシリンおよびセファロスポリンの投与において用いられる。これらの塩類は、それ自体公知の方法で製造され得る、丸剤、錠剤、カプセル剤、坐薬、シロップ剤、エリキシル剤などのような適当な単位用量形態を形成するために、薬学的に許容される液体および固形賦形剤と共に用いられ得る。
【0050】
新規の医薬製剤はさらに、動物の餌用の、食糧または餌の保存のための添加剤として、および殺菌剤として用いられ得る。例えば、それらは、医療機器上の有害な細菌の増殖を破壊および阻止するために、および産業利用における、例えば有害な細菌の増殖を阻止するための水ベースのペイントおよび製紙工場用の軟水における殺菌剤として、0.1ないし100パーツの抗生物質/100万パーツの溶液範囲の濃度の水性製剤に用いられ得る。
【0051】
本発明の新規医薬組成物は、単独で、または多数の医薬製剤の何れかで他の活性成分と共に、用いられ得る。これらの製剤は、カプセル形態で、または錠剤、粉末もしくは液体溶液、または懸濁液もしくはエリキシルとして用いられ得る。それらは、経口、腹腔内、静脈内または筋肉内に投与され得る。
【0052】
該製剤は、好ましくは胃腸管を介する吸収に適当な形態で投与される。経口投与のための錠剤およびカプセルは、単位用量形態であってよく、結合剤、例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトールまたはポリビニルピロリドン、充填剤、例えばラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールもしくはグリシン、滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールもしくはシリカ、崩壊剤、例えばジャガイモデンプン、またはラウリル硫酸ナトリウムのような許容される湿潤剤のような慣用の医薬賦形剤を含み得る。該錠剤は、それ自体公知の方法でコーティングされ得る。経口液体製剤は、水性もしくは油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ、エリキシルなどの形態であり得るか、または例えば水または他の適当な賦形剤を用いる前に再構成するための乾燥製品として存在し得る。このタイプの液体製剤は、懸濁化剤、例えばソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、または水素化食用油、例えばアーモンド油、ヤシ油、油状エステル、プロピレングリコールもしくはエチルアルコール、防腐剤、例えばメチルもしくはプロピルp−ヒドロキシベンゾエートもしくはソルビン酸のような、それ自体公知の添加剤を含み得る。坐薬は、それ自体公知の坐薬基剤、例えばカカオバターまたは他のグリセリドを含む。
【0053】
注射用製剤は、数用量を添加した防腐剤と共に含む、アンプルまたは容器中の単位用量形態であり得る。該製剤は、油性または水性賦形剤中の懸濁液、溶液またはエマルジョンの形態であってよく、それらは、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような剤形化剤を含み得る。あるいは、活性成分は、適当な賦形剤、例えば滅菌した発熱物質不含有水を用いる前に再構築するための粉末形態であってよい。
【0054】
該製剤はまた、鼻および喉または気管支組織の粘膜を介して吸収するのに適当な形態であってよく、粉末または液体スプレーもしくは吸入剤、喉用ペイントとしての吸着性甘味剤(sucking sweets)などの形態であり得る。
【0055】
眼および耳用医薬に関して、該製剤は、液体または半固体形態の個々のカプセル形態で用いられ得るか、またはそれらは点滴などで用いられ得る。局所適用剤は、軟膏、クリーム、ローション、ペイント、粉末などとして疎水性ビークル中に存在するか、それに製剤され得る。
【0056】
2個の活性成分、すなわちカルバペネムおよびエピシリンはまた、別個に投与され得る。例えば、カルバペネムは、静脈内経路で投与され、エピシリンは経口経路で投与され得る。しかしながら、通常、該2個の活性剤は、同じ経路で、例えば静脈内経路または経口経路で投与され得る。
【0057】
本発明の組成物は、賦形剤、他の成分、例えば安定化剤、結合剤、抗酸化剤、防腐剤、滑剤、懸濁化剤、粘度調節剤または香味剤などをさらに含み得る。
【0058】
本発明の組成物はまた、賦形剤、酵素阻害剤、例えばベタミプロンまたはシラスタチン(Merck Index, 11th ed. 2275)を治療効果を増大するためにさらに含み得る。
【0059】
動物用医薬に関して、該組成物は、例えば、長時間作用型または迅速放出型ビークルの何れかの乳房内注入製剤として製剤され得る。
【0060】
投与されるべき用量は、処置されるべき対象の状態、および宿主体重、ならびに投与方法および頻度によって大きく変わる。一般的に、1日経口用量は、1日当たり、1回以上の投与の場合、約10ないし200mgの活性成分/対象の体重1kgを含む。成人に好ましい1日用量は、20ないし120mgの活性成分/体重1kgの範囲である。
【0061】
本発明の製剤は、種々の単位用量形態、例えば経口投与され得る固体または液体用量形態で投与され得る。該製剤は、固体または液体形態中、単位用量当たり0.1ないし99%の活性成分を含み得る。好ましい範囲は、約10ないし60%である。概して、該製剤は、15ないし約1500mgの活性成分を含むが、一般的に、250ないし1000mgの範囲の用量が用いられるのが好ましい。非経腸投与の場合、該単位用量は、通常、滅菌水溶液または可溶性粉末形態中に溶解され得る純粋化合物である。
【0062】
以下の実施例は、先行技術に記載の医薬組成物と比較して、抗細菌活性を説明する。さらに、製造方法および本発明の処置方法を例示する。
【実施例】
【0063】
実施例1
寒天拡散法により決定される抗細菌活性
阻害ゾーン直径を、滅菌ディッシュ(8.5cm)中、約10−10コロニー形成単位を用いて、Difco Nutrient寒天(10ml)上で決定した。0.2mlの細菌懸濁液(Difco Nutrient Broth中で一晩培養)を、52℃で滅菌液体寒天と混合した。それは室温で固体化した。滅菌濾過ディスク(6mm)を、該寒天表面上に置いた。適当な容量の0.2%抗生物質水溶液を精密シリンジで該ディスクに移した。あるいは、市販の含浸ディスク(Oxoid)を用いた。
【0064】
阻害ゾーン直径を、37℃で20時間後に測定した。殺菌活性の決定のため、37℃でのインキュベーションをさらに40時間継続した。さらなるインキュベーション後の透明な阻害ゾーンが、殺菌性を示した(B)。
【0065】
【表6】

【0066】
【表7】

【0067】
【表8】

【0068】
【表9】

【0069】
【表10】

【0070】
【表11】

【0071】
実施例2
最小阻害濃度
最小阻害濃度を、Difco Nutrient寒天を用いて決定した。適当な容量の0.1%抗生物質水溶液を2倍希釈して滅菌ディッシュ(8.5cm)に添加し、10mlの滅菌液体寒天と50℃で混合した。固体寒天を、約10コロニー形成単位に対応する、3μlのDifco Nutrient Broth中0.5McFarland細菌溶液とインキュベートした。細菌増殖を37℃で20時間のインキュベーション後に記録した。
【0072】
【表12】

【0073】
実施例3
インビボ活性
インビボ活性を、30g重量の免疫応答性動物(1グループ当たり6匹の動物)を用いてマウス敗血症試験により決定した。感染を、静脈内経路で約2×10cfu/マウスの濃度(致死量)でMRSA Muenchen 12797を用いて行った。治療を、皮下経路により5+5ないし75+75mg/kgの1日用量で行った(感染後1時間および4時間に等量)。該動物を、処理後10日間観察した。
【0074】
【表13】

【0075】
実施例4
医薬製剤の製造
【表14】

【0076】
活性成分を、第二リン酸カルシウム、ラクトースおよび約半量のコーンデンプンと混合し、粗く篩い分けする。それを高真空下で乾燥させ、再び1.00mmメッシュ幅(No.16スクリーン)の篩を通して篩い分けする。残りのコーンデンプンおよびステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物を圧縮して、各1200mg重量および約1.27cm(0.5インチ)の直径の錠剤を得る。
【0077】
非経腸溶液
【表15】

【0078】
【表16】

【0079】
【表17】

【0080】
【表18】

【0081】
上記製剤中の活性成分を、単独で、または他の生物学的に活性な成分、例えばバンコマイシンまたはリネゾリドのような他の抗細菌剤またはプロベネシドのような他の治療剤と共に、混合し得る。
【0082】
本明細書および実施例は、本発明を説明するものであるが、限定するものではなく、本発明の精神および範囲内の他の態様は、当業者にそれ自体提案され得ることが、理解され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバペネム系抗生物質およびエピシリン、それらの塩、プロドラッグエステルまたはプロドラッグアミド誘導体を含む抗MRSA活性剤および殺菌性医薬組成物。
【請求項2】
該カルバペネム系抗生物質が、構造式I
【化1】


〔式中、Rは、水素、ヒドロキシメチルまたは1−ヒドロキシエチルを示し、Rは、水素またはメチルを示し、そしてRは、酸素−炭素単結合または窒素−炭素単結合により分子の残りの部分に結合され、そして置換または非置換の、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルコキシ、N−ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルカルボニルオキシ、ヘテロシクリルチオカルボニルオキシ、アシルオキシ、チオアシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、チオカルバモイルオキシ、ヘテロシクリルオキシカルボニルオキシ、ヘテロシクリルオキシチオカルボニルオキシ、N−ヘテロシクリルカルバモイルオキシ、N−ヘテロシクリルチオカルバモイルオキシ、ヘテロシクリルカルボニルアミノ、ヘテロシクリルチオカルボニルアミノ、ヘテロシクリルオキシカルボニルアミノ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシチオカルボニルアミノ、チオアシルアミノ(thioacyclamino)、N−ヘテロシクリルカルバモイルアミノ、N−ヘテロシクリルチオカルバモイルアミノ、カルバモイルアミノ、チオカルバモイルアミノ、イミドイルアミノ、グアニジノ、N−ヘテロシクリル−アルコキシカルボニルアミノ、N−ヘテロシクリル−アルキルチオカルボニルアミノおよびN−スルホニルアミノ(該アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、チオアシルまたはイミドイル分子部分は、1ないし6個の炭素原子を含み、そしてヘテロシクリル部分は、単環式または二環式であり、その1個以上の原子が酸素、硫黄および窒素を含む原子から選択される3ないし10個の環原子を含む)を含む群から選択される薬学的に許容される基であり、
ここで、上記の基Rの置換基は、アルキル、アシル、チオアシル、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルコキシ、アミノアルコキシ、アミジノアルコキシ、グアニジノアルコキシ、アシルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アルキルヘテロシクリルオキシ、ヒドロキシアルキルヘテロシクリルオキシ、アミノアルキルヘテロシクリルオキシ、カルバモイル、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、カルバモイルオキシ、アルキルカルバモイルオキシ、ジアルキルカルバモイルオキシ、チオカルバモイル、アルキルチオカルバモイル、ジアルキルチオカルバモイル、チオカルバモイルオキシ、アルキルチオカルバモイルオキシ、ジアルキルチオカルバモイルオキシ、メルカプト、アルキルチオ、ヒドロキシアルキルチオ、アミノアルキルチオ、モノアルキルアミノアルキルチオ、ジアルキルアミノアルキルチオ、アミジノアルキルチオ、アシルチオ、ヘテロシクリルチオ、アルキルヘテロシクリルチオ、ヒドロキシアルキルヘテロシクリルチオ、アミノアルキルヘテロシクリルチオ、カルバモイルチオ、モノアルキルカルバモイルチオ、ジアルキルカルバモイルチオ、チオカルバモイルチオ、アルキルチオカルバモイルチオ、ジアルキルカルバモイルチオ、アミノ、モノアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルアミノ、アミノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、オキソ、オキシイミノ、またはアルキルイミノ、イミドイルアミノ、アルキルイミドイルアミノ、ジアルキルイミドイルアミノ、テトラアルキルアンモニウム、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アルキルヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルカルボニルアミノ、アルキルヘテロシクリルカルボニルアミノ、アシルアミノ、アミジノ、モノアルキルアミジノ、ジアルキルアミジノ、グアニジノ、アルキルグアニジノ、ジアルキルグアニジノ、カルバモイルアミノ、チオカルバモイルアミノ、アルキルカルバモイルアミノ、チオカルバモイルアミノ、アルキルチオカルバモイルアミノ、ニトロ、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、アジド、シアノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、スルファモイルオキシ、アルキルスルファモイルオキシ、アルキルスルホニルオキシまたはスルホ、スルホキシ、カルボキサミド、N−モノアルキルカルボキサミド、N,N−ジアルキルカルボキサミドまたはカルボキシ(該置換基は、それぞれ独立して、1個または複数個存在し、それらのアルキル部分は、1ないし6個の炭素原子を含み、そしてヘテロ環式基は、単環式または二環式であり、その1個以上の原子が酸素、硫黄および窒素を含む原子から選択される3ないし10個の環原子を含む)であってよい〕
を有するもの、またはその薬学的に許容される塩、エステルまたはアミド誘導体であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該カルバペネム系抗生物質が、イミペネム、メロペネム、パニペネム、エルタペネム、ビアペネム、ドリペネム、サフトリネム(saftrinem)、レナペネム、テビペネム、トモペネム、S−4661、SM216601、GV129606、ZD−4433、ER−35786、R−83201、R95867、DU−6681、BO−2502A、BO−3482、DK−35C、DA−1131、S−4661、L−646591、L−786,392、L−695,256、L−786,392、L−084、L−036、DZ−2640、CS−834、GV104326、GV−118819、GV143253、MK−0826、J−110,441、J−111225、FR−21818、DX−8739、CS−023、ME−1036、CP5068、CL188624、CL−190294、CL191121、OCA−983、T−5575およびPZ−601を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
該カルバペネム系抗生物質が、イミペネム、メロペネム、パニペネム、エルタペネム、ビアペネム、ドリペネム、サフトリネム(saftrinem)、レナペネム、テビペネムおよびトモペネムを含む群から選択されることを特徴とする、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
該カルバペネム系抗生物質が、イミペネム、メロペネムおよびエルタペネムの群から選択されることを特徴とする、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
有効量のカルバペネム系抗生物質およびエピシリンおよび薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、請求項1ないし5のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項7】
確認されたか、または疑いのあるMRSAまたはMRSE感染を処置するための医薬の製造を目的とした、請求項1ないし5のいずれか一項記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
確認されたか、または疑いのあるMRSAまたはMRSE感染の処置のための、カルバペネム系抗生物質およびエピシリンの両抗細菌活性成分の個別適用のための医薬の製造を目的とした、請求項1ないし5のいずれか一項記載のカルバペネム系抗生物質およびエピシリンの有効量の使用。
【請求項9】
抗細菌的に有効量のカルバペネム系抗生物質およびエピシリンを薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることを含む、請求項1ないし5のいずれか一項記載の組成物の製造方法。
【請求項10】
抗細菌的に有効量の請求項1ないし4のいずれか一項記載のカルバペネム系抗生物質およびエピシリンが、薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わされることを特徴とする、確認されたか、または疑いのあるMRSAまたはMRSE感染の処置のための、両抗細菌活性成分の個別適用のための、請求項1ないし5のいずれか一項記載の組成物の製造方法。
【請求項11】
有効量の請求項1ないし5のいずれか一項記載のカルバペネム系抗生物質およびエピシリン、および薬学的に許容される担体または希釈剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、該患者における、確認されたか、または疑いのあるMRSAまたはMRSEの阻止方法。
【請求項12】
有効量の請求項1ないし5のいずれか一項記載のカルバペネム系抗生物質およびエピシリン、および薬学的に許容される担体または希釈剤を個別投与することを含む、それを必要とする患者における、確認されたか、または疑いのあるMRSAまたはMRSEの阻止方法。

【公表番号】特表2011−502103(P2011−502103A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508724(P2010−508724)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003896
【国際公開番号】WO2008/141764
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509319199)
【氏名又は名称原語表記】Hans Rudolf PFAENDLER
【Fターム(参考)】