説明

カルバマトオルガノシランの製造方法

【課題】先行技術の欠点をもはや有していない、クロロオルガノシランから出発したカルバマトオルガノシランの製造方法の開発
【解決手段】カルバマトオルガノシラン(S)の製造方法において、ハロゲンオルガノシラン(S1)を、金属シアン酸塩と、アルコール(A)と、少なくとも1種の非プロトン性溶剤(L)の存在で反応させ、この場合、副生成物として生じる金属ハロゲン化物並びに場合によりまだ存在する金属シアン酸塩残留物の固体分離の前に、前記溶剤(L)の少なくとも50%を蒸留により除去する、カルバマトオルガノシラン(S)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相応するクロロオルガノシラン、金属シアン酸塩及びアルコールからカルバマトオルガノシランを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、式(1)の3−カルバマトプロピルシランを製造するための多様な方法が公知である。
【化1】

【0003】
通常の製造方法は、大抵は、式(2)の3−アミノプロピルシランから出発する。これを、ジアルキルカルボナート又は尿素とアルコールとの混合物と反応させて相応するカルバマトシランにすることができる。最初に挙げた方法バリエーションは、この場合、例えばWO 2007/037817に記載されていて、及び第二に挙げた方法バリエーションはEP 1010704に記載されている。
【化2】

【0004】
この方法の欠点は、アミノシランから出発しなければならず、このアミノシランは大抵は式(3)の対応する3−クロロプロピルシランよりも明らかに高価であるという事実である。
【化3】

【0005】
更に、アミノ基とシリル基との間にプロピルスペーサを有するアミノオルガノシランだけが市場で入手可能であるにすぎず、それに対して、式(5)の相応するα−アミノメチルシランは入手が困難であり、更にあまり安定ではない。従って、上記の方法は、多くの(一連の)生成物にとって有利な式(4)のα−カルバマトメチルシランの製造のためには適していない。この対応する式(6)のα−クロロメチルシランはそれに対して、例えばEP 1310501に記載されているメチルクロロシランの光塩素化及び引き続くアルコキシル化、つまりケイ素に結合した全てのクロロ原子のアルコキシ基への交換により、問題なく製造可能である。
【化4】

【0006】
従って、相応するクロロオルガノシランから出発して、広範囲の異なるカルバマトオルガノシランを得ることができる方法が好ましい。
【0007】
相応する方法は、同様に、例えばUS 3494951に既に記載されている。この場合、式(3)の3−クロロプロピルシランとシアン酸カリウム及びアルコールとの混合物を溶剤中で還流下で加熱する。この場合、溶剤として有利にジメチルホルムアミドが利用される。式(1)の3−カルバマトプロピルシランと塩化カリウムが連産品として生成される。後者の塩化カリウムは濾別され、溶剤を蒸留により除去する。
【0008】
しかしながら、先行技術によるこの方法は、多くの明らかな欠点を有することが見出された。一方で、比較的長い反応時間及び大量の溶剤を使用する必要性のために、極めて悪い空時収率が達成されるだけである。更に、連産品として生じる塩の濾過は非常に問題があることが明らかとなった、それというのもこの塩は微結晶で生じるため、この反応混合物は極めて濾過しにくいためである。最後に、更に、この濾過された粗製生成物溶液もなおかなりの量の溶解した塩を含有することが明らかとなった。この塩は、冷温で(例えば、この粗製生成物を冬季に暖房していない室内に貯蔵する場合)及び/又は溶剤の除去の際に沈殿し、更なるプロセス工程、例えば薄膜蒸発器を用いた粗製生成物の蒸留による精製に障害となる。
【0009】
相応するクロロオルガノシラン(3)又は(6)から式(1)又は(4)のカルバマトオルガノソランを製造する他の方法は、DE 10240388に記載されている。この場合、溶剤中の金属シアン酸塩の懸濁液を装入し、メタノールとクロロオルガノシランとの混合物を滴加する。この場合、溶剤として有利にジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドが利用される。この場合でも、それぞれのカルバマトプロピルシラン及び塩化カリウムが連産品として生成される。後者の塩化カリウムはまた濾別され、溶剤を蒸留により除去する。
【0010】
この方法バリエーションでも、多様な欠点を確認することができた。一方で、比較的大量のポリマーの及びオリゴマーの副生成物が生成される。この副生成物の形成は、確かに、約95%の生成物純度での定量的収率を記載するDE 10240388の記載とは矛盾している。もちろん、このより高い分子量の不純物は、この反応混合物のDE 10240388に記載されたガスクロマトグラフィーによる試験により検出することはできない、そのため、この生成物溶液がオリゴマー又はポリマー10〜20%を含んでいる場合でも、ガスクロマトグラフィースペクトルは相応する高い純度を示す。
【0011】
他方で、DE 10240388に記載された方法の場合でも、反応混合物の濾過しやすさの欠如の問題並びに濾液中に溶解する残留する塩含有の問題は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO 2007/037817
【特許文献2】EP 1010704
【特許文献3】EP 1310501
【特許文献4】US 3494951
【特許文献5】DE 10240388
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、先行技術の欠点をもはや有していない、クロロオルガノシランから出発したカルバマトオルガノシランの製造方法を開発することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の主題は、一般式(7)のカルバマトオルガノシラン(S)の製造方法である。
【化5】

【0015】
この場合、一般式(8)のハロゲンオルガノシラン(S1)
【化6】

を、金属シアン酸塩(MOCN)と、一般式(9)のアルコール(A)
【化7】

と、少なくとも1種の非プロトン性溶剤(L)の存在で反応させ、その際、
1、R3及びR4は、それぞれ非置換の又はハロゲン置換された、1〜10個のC原子を有する炭化水素基を表し、
2は、二価の、非置換の又はハロゲン置換された、1〜10個のC原子を有する炭化水素基(この基は隣接しない酸素原子によって中断されていてもよい)を表し、
Xは、ハロゲン原子を表し、及び
xは、0、1、2又は3の値を意味し、
この場合、副生成物として生じる金属ハロゲン化物並びに場合によりまだ存在する金属シアン酸塩残留物の固体分離の前に、溶剤(L)の少なくとも50%を蒸留により除去する。
【0016】
この固体は、反応の完了後に容易に除去することができる。
【0017】
有利に、副生成物として生じる金属ハロゲン化物並びに場合によりまだ存在する金属シアン酸塩の分離の前に、特に濾過の前に、溶剤(L)の少なくとも70%、特に有利に少なくとも85%を蒸留により除去する。
【0018】
本発明による方法の特に有利な実施態様の場合に、この反応混合物に、固体分離(この固体分離は特に金属塩の濾別により行う)の前に、上記の溶剤(L)よりも低い双極子モーメントを有する少なくとも1種の溶剤(L1)を添加する。この溶剤(L1)は、溶剤(L)よりも高い沸点を有する限り、前記溶剤(L1)の添加を、本発明による蒸留による溶剤(L)の除去の前又は後に行うことができる。有利に、少なくとも1種の溶剤(L1)は、しかしながら、溶剤(L)及び(L1)のそれぞれの沸点とは無関係に、溶剤(L)の蒸留による除去後に初めて添加される。
【0019】
有利に、反応混合物に、溶剤(L)の本発明による蒸留による除去の後に、溶剤(L)の予め除去された1質量部当たり、1種以上の溶剤(L1)少なくとも0.3質量部、特に少なくとも0.5質量部及び多くても3質量部、特に多くても1.5質量部を添加する。
【0020】
濾過後に、このフィルターケークを有利に、反応混合物に溶剤(L)の除去後に添加したのと同じ溶剤(L1)で洗浄する。有利に、この濾液を引き続き合わせ、溶剤(L1)を蒸留により除去する。
【0021】
本発明による反応を実施する際に、多様な出発物質、反応体、溶剤並びに場合により反応を促進するための更に他の物質を、既に反応の開始時に装入するか又は反応の間に初めて供給することができる。
【0022】
この反応温度は、有利に少なくとも110℃であり、その際、少なくとも120℃、特に少なくとも125℃の温度が特に有利である。有利に、この反応温度は、高くても200℃、特に高くても160℃である。
【0023】
基R1、R3及びR4は、同じ又は異なることができる。有利に、基R1及びR4は同じである、それというのも同じでなければケイ素原子の基R4の交換が生じるためである。従って、個々のシラン分子は異なる基R1及びR4を有する一般式(7)の多様なシラン(S)の混合物が得られてしまい、これは可能であるが、たいていの場合には望ましくない。
【0024】
基R1、R2、R3及びR4のハロゲン置換は、有利にフッ素又は塩素から選択される。
【0025】
一般式(7)又は(8)のシラン(S)又は(S1)の場合に、R3は、有利にメチル基、エチル基、イソプロピル基又はn−プロピル基を表し、その際、メチル基が特に有利である。R4は、有利にメチル基、エチル基、イソプロピル基又はn−プロピル基を表し、その際、メチル基又はエチル基が特に有利である。R2は、有利にプロピレン基又は特に有利にメチレン基を表す。
【0026】
一般式(7)のシラン(S)又は一般式(9)のアルコール(A)の場合に、R1は、有利にメチル基、エチル基、イソプロピル基又はn−プロピル基を表し、その際、メチル基又はエチル基が特に有利である。
【0027】
一般式(8)のシラン(S1)の場合に、Xは有利に塩素原子を表す。
【0028】
このシラン(S1)は、原則として、反応の開始時までに、反応混合物中に既に完全に存在することができる。本発明による方法の有利な実施態様の場合には、このクロロオルガノシラン(S1)は、完全に又は少なくとも部分的に、特に少なくとも80質量%が反応の間に供給される。
【0029】
このクロロオルガノシラン(S1)の供給の利点は、反応の安全性の改善にある、それというのも、この明らかに発熱性の反応は、シラン(S1)の供給の調節により制御され、万一の場合には停止することもできるためである。この場合、液状のシラン(S1)の供給は、原則的には場合により考えられる固体の金属シアン酸塩(MOCN)の供給よりも大抵は本質的により便利である。アルコール(A)の供給によってのみの発熱量の調節はそれに対して不可能である、それというのも、シアン酸塩(MOCN)及びクロロオルガノシラン(S1)は、アルコール(A)の不在でも、相応するイソシアヌラートを形成しながら、明白な発熱反応を生じることができるためである(US 3494951参照)。
【0030】
金属シアン酸塩として、原則として全ての一価又は二価の金属イオンのシアン酸塩を使用することができ、その際、アルカリ土類金属シアン酸塩及び特にアルカリ金属シアン酸塩が有利である。特に有利に、シアン酸ナトリウム及び殊にシアン酸カリウムが使用される。
【0031】
有利に、一般式(8)のシラン(S1)1Mol当たり、シアナートイオン少なくとも0.8Mol、殊に有利に少なくとも0.9Mol、特に少なくとも1Mol及び、シアナートイオン有利に多くても2Mol、殊に有利に多くても1.5Mol、特に多くても1.2Molが使用される。
【0032】
この固体の金属シアン酸塩(MOCN)は、有利に供給されずに、既に反応開始の前に装入される。
【0033】
アルコール(A)として、有利にメタノール、エタノール、イソプロパノール又はn−プロパノールが使用され、この場合、メタノール及びエタノールが特に有利である。
【0034】
有利に、一般式(8)のシラン(S1)1Mol当たり、アルコール(A)少なくとも0.8Mol、殊に有利に少なくとも0.9Mol、特に少なくとも1Mol及び、アルコール(A)有利に多くても2Mol、殊に有利に多くても1.5Mol、特に多くても1.2Molが使用される。
【0035】
この溶剤(L)は、有利に、それぞれ0.1MPaで、少なくとも135℃、特に有利に少なくとも145℃、及び有利に高くても240℃、特に有利に高くても220℃の沸点を有する。
【0036】
溶剤(L)として、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−メチルイミダゾール、スルホラン、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ジエチルアセタミド、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、ヘキサメチルリン酸トリアミドニトリル例えばアセトニトリル又はブチロニトリル、並びに1分子当たり少なくとも2個のエーテル基又はエステル基を有するエーテル及び/又はエステルを使用することができる。有利な溶剤(L)は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、スルホラン及びジエチルホルムアミドであり、その際、ジメチルホルムアミドが特に有利である。
【0037】
有利に、この溶剤は、全体の出発材料量1質量部当たり、溶剤(L)少なくとも0.1及び最大で1.5質量部が使用されるような量で使用される。この全体の出発材料量は、この場合に、シラン(S1)、金属シアン酸塩(MOCN)及びアルコール(A)の量から構成される。有利に、この溶剤は、全体の出発材料量1質量部当たり、溶剤(L)最大で1質量部、特に有利に0.7質量部が使用されるような量で使用される。
【0038】
この溶剤は、有利に供給されずに、既に反応開始の前に装入される。
【0039】
場合により、この反応の間に、反応を促進するための他の物質を使用することができる。有利な例は、金属ヨウ化物、有利にアルカリ金属ヨウ化物及び特に有利にヨウ化カリウムの添加である。同様に、例えばDE10240388に記載されているような相間移動触媒も添加することができる。
【0040】
金属シアン酸塩100質量部に対して、有利に金属ヨウ化物少なくとも0.01質量部、特に有利に少なくとも0.1質量部、殊に少なくとも0.5質量部及び有利に金属ヨウ化物高くても5質量部、特に有利に高くても3質量部、殊に高くても2質量部が使用される。
【0041】
この反応を促進するための他の物質は、有利に供給されずに、反応開始前に既に装入される。
【0042】
溶剤(L1)は、有利に芳香族及び/又は脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の多様な立体異性体、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン等、ベンゼン、トルエン、多様なキシレン類(Xyloltyen)等)、置換芳香族化合物(例えば、クロロベンゼン)、複素環式芳香族化合物(例えばピリジン、フラン等)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、アニソール等)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、アルキルベンゾアート、ジアルキルマレイナート、ジアルキルフタラート等)、ケトン(例えば、アセトン、ブタノン等)又はアルコール(例えば、t−ブタノール)である。特に、芳香族及び/又は脂肪族炭化水素、例えば多様な環式又は非環式ペンタン異性体、ヘキサン異性体、ヘプタン異性体又はオクタン異性体、例えばトルエン又はキシレンが有利である。
【0043】
本発明は、懸濁液の濾過しやすさは、溶剤(L)の本発明による除去により、特に、有利に完全に又は少なくとも部分的に溶剤(L)を、より低い双極モーメントを有する溶剤(L1)に交換することにより明らかに改善できるという意外な知見に基づいている。
【0044】
更に、溶剤(L)の本発明による除去により及び特に、有利に完全に又は少なくとも部分的に溶剤(L)を、より低い双極モーメントを有する溶剤(L1)に交換することにより、意外にも、濾液中に溶解された形で残留する塩の量が明らかに低減する。
【0045】
特に、反応の開始の前に既に全体のアルコール量の少なくとも3%を反応混合物中に装入し、有利に全体のアルコール量の少なくとも30%を反応の間に初めて反応混合物に供給するように、アルコール(A)の使用されるべき全体量を分ける本発明による方法の一つのバリエーションが有利である。
【0046】
有利に、このアルコール(A)の使用されるべき全体量は、反応の開始前に既に、全体のアルコール量の少なくとも5%、特に有利に少なくとも8%を反応混合物中に装入し、反応の間に初めて、全体のアルコール量の少なくとも50%、特に有利に少なくとも70%を供給するように分けられる。
【0047】
意外にも、アルコール(A)の一部が装入されかつ残りは反応の間に供給される本発明による方法は、全体のアルコール量を完全に装入するか又は完全にシラン(S1)との混合物の形で供給する従来技術による製造バリエーションよりも明らかに改善された結果を提供することが見出された。
【0048】
この場合、既にDE 10240388には、アルコール(A)の供給を反応の間に初めて、その供給により反応混合物の沸点を高めることによって、迅速な反応を生じさせ、ひいては空時収率の改善を生じさせることが記載されている。しかしながら、アルコール(A)の一部を装入し残りを反応の間に供給する本発明による有利な方法バリエーションが、DE 10240388に記載されたアルコール(A)の完全な供給と比較して、明らかに改善された収率及びオリゴマー及び/又はポリマーの不純物の明らかに低減された形成を生じさせることは意外であった。
【0049】
本発明による方法の有利なバリエーションの場合に、アルコール(A)の供給速度は、反応混合物の沸点によって調節される。有利に、このアルコールは、この反応混合物が全体の反応期間の間に、>110℃、有利に>120℃、特に有利に>125℃の沸点を有するような早さで供給される。この沸点の上限は、有利に150℃、特に有利に145℃である。
【0050】
ハロゲノオルガノシラン(S1)とアルコール(A)の供給されるべき割合を予め混合し、この混合物を反応の間に供給する方法が有利である。
【0051】
シラン(S1)とアルコール(A)からなる混合物を供給する場合には、この混合物の供給速度は有利に反応混合物の沸点によって調節される。この場合、有利に、上記の有利な上限は、最大及び最小の沸騰温度とみなされる。
【0052】
シラン(S1)とアルコール(A)とからなる適切な混合物を供給する特別な利点は、この混合物の早すぎる供給が、反応混合物中の低沸点アルコール(A)の上昇する割合に基づいて、沸点の低下を引き起こすという事実にある。それに対して一定の沸点は、反応混合物中の十分に一定のアルコール含有量を示す。従って、早すぎる供給を伴って、反応混合物中での反応しないシラン(S1)の蓄積と同時に、反応しないアルコール(A)の蓄積を示し、これによりこの反応混合物の低下する沸点を示すようなアルコール含有量を有するシラン(S1)及びアルコール(A)からなる混合物を供給する方法が有利である。このことは、場合により早すぎる出発物質供給に基づき、反応混合物中での出発材料の場合による危険な蓄積を生じさせることなしに、最適な温度範囲(Temperaturfenster)で、できるだけ限り早い反応管理を可能にする。この方法により、最適な空時収率が達成される。
【0053】
上記の式の上記の全ての記号は、それぞれ相互に無関係に上記式の意味を有する。全ての式中で、ケイ素原子は四価である。
【0054】
次の実施例において、それぞれ他に記載しない限り、全ての量及びパーセントの表示は、質量に関し、全ての圧力は0.10MPa(絶対)及び全ての温度は20℃である。
【実施例】
【0055】
実施例1
N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−O−メチルカルバマートの本発明による製造方法
還流冷却器、KPG撹拌機、温度計を備えた500mlの四ツ口フラスコ中で、シアン酸カリウム74.46g、ヨウ化カリウム0.73gのジメチルホルムアミド117.08g及びメタノール3.5g中の懸濁液を140℃に加熱する。次いで、2.5時間内に、3−クロロプロピルトリメトキシシラン173.7gとメタノール25.6gとからなる溶液を還流下で供給する。この反応混合物の沸騰温度は、この場合に安定して130〜140℃の温度範囲に留まる。添加終了後にさらに2時間後撹拌し、その際、この沸騰温度は、最初にわずかに上昇する傾向を示すが同じ温度範囲内に留まる。その後、出発物質の3−クロロプロピルトリメトキシシランはガスクロマトグラフィーにより、生成された生成物量に対して、<0.1%の微量で検出可能であるだけである。
【0056】
その後、約50℃に冷却し、約11mbarの圧力で、全体で106.1gのジメチルホルムアミドが留去される。この塔底温度は、この場合、初めに51℃〜100℃に上昇し、それに対して塔頂温度は53〜56℃の範囲内で十分に一定に留まった。この留去されたジメチルホルムアミドは、>95%の純度を有し、後続のバッチにおいて問題なく再使用できる。
【0057】
引き続き、約30℃に冷却する。次いで、トルエン100mlを添加し、室温で30分間撹拌する。その後で、全体の固体を、ザイツ濾過器(K900)を備えた加圧式吸引漏斗を用いて0.2barの過圧で濾別する。この濾過は、この場合、問題なく可能であり、約10分間内で完了する。このフィルターケークをトルエン70mlで後洗浄し、これも同様に5〜10分間内で完全に完了する。濾液は集められる。
【0058】
最後の段階で、最終的にトルエンを約30mbarの圧力及び30〜70℃の塔底温度で蒸留により除去する。この場合、使用されたトルエン量の約95%が>95%の純度で回収される。この回収されたトルエンは、後続のバッチで問題なく再使用できる。
【0059】
蒸留の完了時に、圧力は1mbarに低下し、塔底温度は10分間で130℃に上昇する。この場合に得られる約17mlの留出物量は、主に、ここまで反応混合物中に残留するジメチルホルムアミド量及びトルエン量を含有し、廃棄される。蒸留塔底物として残留する粗製生成物を1H−NMRにより分析する。この生成物純度は、この場合、例えば、CH3O−CO−NH−CH2−CH2CH2−Si(OCH33−信号の積分及びこの積分値を添加された不活性標準、例えばベンゼントリカルボン酸トリメチルエステルの信号積分と比較することにより決定することができる。この方法により分析された粗製生成物は、約85%の純度を有している。この粗製生成物は透明であった。0℃で数日間貯蔵した場合でも、固体はもはや沈殿しない。
【0060】
実施例2
N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−O−メチルカルバマートの本発明による製造方法
実施例1と同様に行うが、ジメチルホルムアミドの蒸留による除去の後に、この反応混合物に、トルエン100mlの代わりに、同じ量のキシレンを添加する。同様に、このフィルターケークをトルエンではなく、キシレン70mlで後洗浄する。この濾過及びフィルターケークの後洗浄は、実施例1に記載された場合と同様に問題なく行われる。
【0061】
最後の段階で、このキシレンを合わせた濾液から15〜20mbarの圧力及び40〜80℃の塔底温度で蒸留により除去する。この場合、使用されたキシレン量の約93%が>95%の純度で回収される。この回収されたキシレンは、後続のバッチで問題なく再使用できる。
【0062】
蒸留の完了時に、圧力は1mbarに低下し、塔底温度は10分間で130℃に上昇する。この場合に得られた留出物は、主に、ここまで反応混合物中に残留するジメチルホルムアミド量及びキシレン量を含有し、廃棄される。
【0063】
この得られた粗製生成物は、実施例1に記載された1H−NMR分析によって約84%の純度を有している。0℃で数日間貯蔵した場合でも、固体はもはや沈殿しない。
【0064】
実施例3
N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−O−メチルカルバマートの本発明による製造方法
実施例1と同様に行うが、ジメチルホルムアミドの蒸留による除去の後に、この反応混合物に、トルエン100mlの代わりに、同じ量のn−ヘプタンを添加する。同様に、このフィルターケークをトルエンではなく、n−ヘプタン70mlで後洗浄する。濾過及びフィルターケークの後洗浄は、実施例1に記載されたトルエンの使用の場合よりも、それぞれ約15分でわずかに多くの時間を必要とする。しかしながら、このプロセス工程は全体として更に問題なく実施可能である。
【0065】
最後の段階で、このヘプタンを合わせた濾液から30mbarの圧力及び40〜60℃の塔底温度で蒸留により除去する。この場合、使用されたヘプタン量の約95%が>95%の純度で回収される。この回収されたヘプタンは、後続のバッチで問題なく再使用できる。
【0066】
蒸留の完了時に、圧力は1mbarに低下し、塔底温度は10分間で130℃に上昇する。この場合に得られた留出物は、主に、ここまで反応混合物中に残留するジメチルホルムアミド量及びヘプタン量を含有し、廃棄される。
【0067】
この得られた粗製生成物は、実施例1に記載された1H−NMR分析によって約84%の純度を有している。0℃で数日間貯蔵した場合でも、固体はもはや沈殿しない。
【0068】
比較例1
N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−O−メチルカルバマートの本発明によらない製造方法
この反応を、実施例1と同様に実施する。それに対して、反応の完了時に、ジメチルホルムアミドを除去せず、反応混合物を冷却後に直接濾過する。
【0069】
しかしながら、この混合物は実際にほとんど濾過できない。例1に記載された場合の処理方法に応じた濾過の実施の際に、しかしながら、完全な濾過のために約2.5時間を必要とする。ジメチルホルムアミド70gを用いたこのフィルターケークの洗浄工程は、更に1.5〜2時間続く。
【0070】
引き続きこのジメチルホルムアミドを約11mbarの圧力で留去する。この塔底温度は、この場合、初めに51℃〜100℃に上昇し、それに対して塔頂温度は53〜56℃の範囲内で十分に一定に留まる。蒸留の完了時に、圧力は1mbarに低下し、塔底温度は10分間で130℃に上昇する。
【0071】
蒸留の間に、蒸留塔底物中に、しかしながら、新たに固体が沈殿する。従って、室温に冷却した後に、新たに濾過しなければならない。
【0072】
この得られた粗製生成物は、実施例1に記載された1H−NMR分析によって約83%の純度を有している。これは、室温で透明のままである。しかしながら、0℃で1日間貯蔵した場合、新たに固体が沈殿する。
【0073】
実施例4
N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−O−メチルカルバマートの本発明による製造方法
この実施例は、溶剤(L)を除去するが、低い双極子モーメントを有する溶剤(L1)により置き換えない有利ではない方法を記載する。この方法の実施可能性は、実施例1〜3の有利な処理方法よりもあまり有利ではないが、本発明によらない比較例の処理方法よりはまだ明らかに有利である。
【0074】
この反応を、実施例1と同様に実施する。実施例1と同様にDMFを蒸留により除去する。しかしながら濾過の前にトルエンを添加しない。
【0075】
この濾過を実施例1に記載された処理方法に応じて実施し、その際、このフィルターケークをトルエン70mlで2回後洗浄する。この濾過工程及び洗浄工程は、この場合に約1.5時間の全体の時間で、実際には、実施例1〜3に記載された有利な処理方法のように問題がないとはいえない。
【0076】
最後の段階で、最終的にトルエンを約30mbarの圧力及び30〜70℃の塔底温度で蒸留により除去する。この場合、使用されたトルエン量の約95%が>95%の純度で回収される。この回収されたトルエンは、後続のバッチで問題なく再使用できる。
【0077】
蒸留の完了時に、圧力は1mbarに低下し、塔底温度は10分間で130℃に上昇する。この場合に得られた留出物は、主に、ここまで反応混合物中に残留するジメチルホルムアミド量及びトルエン量を含有し、廃棄される。
【0078】
蒸留の間に、蒸留塔底物中に、しかしながら、新たに固体が沈殿する。従って、室温に冷却した後に、新たに濾過しなければならない。
【0079】
この得られた粗製生成物は、実施例1に記載された1H−NMR分析によって約84%の純度を有している。0℃で数日間貯蔵した場合でも、固体はもはや沈殿しない。
【0080】
実施例5
N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−O−メチルカルバマートの本発明による製造方法
この実施例は、アルコール(A)の全体量を反応の間に初めて添加する有利でない方法を記載する。この方法の実施可能性は、実施例1〜3の有利な処理方法と同様に有利である。ただし、いくらか低い生成物純度を有する粗製生成物が得られる。
【0081】
実施例1と同様に行うが、使用する29.1gの全体のメタノール量を、3−クロロプロピルトリメトキシシラン173.7gとの混合物の形で、反応の間に初めて供給する。
【0082】
この得られた粗製生成物は、実施例1に記載された1H−NMR分析によって約73%の純度を有している。0℃で数日間貯蔵した場合でも、固体はもはや沈殿しない。
【0083】
実施例6
N−(メチルジメトキシシリルメチル)−O−メチルカルバマートの本発明による製造方法
実施例1と同様に行うが、3−クロロプロピルトリメトキシシラン135.2gとメタノール25.6gとからなる溶液ではなく、その代わりに、クロロメチルメチルジメトキシシラン173.7gとメタノール25.6gとからなる溶液を反応バッチに供給する。
【0084】
得られた粗製生成物は、実施例1に記載された処理方法と同様に、1H−NMR分析を用いて調査するが、その際、生成物純度の決定のためにCH3O−CO−NH−CH2−Si(CH3)(OCH32信号の積分を利用する。約79%の純度が生じる。
【0085】
粗製生成物を0℃で数日間貯蔵した場合でも、固体はもはや沈殿しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(7)のカルバマトオルガノシラン(S)の製造方法において、
【化1】

一般式(8)のハロゲンオルガノシラン(S1)
【化2】

を、金属シアン酸塩(MOCN)及び一般式(9)のアルコール(A)
【化3】

と、少なくとも1種の非プロトン性溶剤(L)の存在で反応させ、前記式中、
1、R3及びR4は、それぞれ非置換の又はハロゲン置換された、1〜10個のC原子を有する炭化水素基を表し、
2は、二価の、非置換の又はハロゲン置換された、1〜10個のC原子を有する炭化水素基(この基は隣接しない酸素原子によって中断されていてもよい)を表し、
Xは、ハロゲン原子を表し、及び
xは、0、1、2又は3の値を意味し、
この場合、副生成物として生じる金属ハロゲン化物並びに場合によりまだ存在する金属シアン酸塩残留物の固体分離の前に、前記溶剤(L)の少なくとも50%を蒸留により除去する、カルバマトオルガノシラン(S)の製造方法。
【請求項2】
前記反応混合物に、前記固体分離の前に、前記溶剤(L)よりも低い双極子モーメントを有する少なくとも1種の溶剤(L1)を添加する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反応温度が110℃〜200℃である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
3は、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びn−プロピル基から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
4は、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びn−プロピル基から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
2は、プロピレン基又はメチレン基である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
1は、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びn−プロピル基から選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
Xは塩素原子を表す、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記溶剤(L)は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−メチルイミダゾール、スルホラン、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ジエチルアセタミド、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、ヘキサメチルリン酸トリアミド、アセトニトリル、ブチロニトリル並びに1分子当たり少なくとも2個のエーテル基又はエステル基を有するエーテル及びエステルから選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記溶剤(L1)は、芳香族及び脂肪族炭化水素、置換された芳香族化合物、複素環式芳香族化合物、エーテル、エステル及びケトンから選択される、請求項2から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
一般式(9)のアルコール(A)の使用すべき全体量を、反応の開始前に既に前記の全体のアルコール量の少なくとも3%を前記反応混合物中に装入し、前記の全体のアルコール量の少なくとも30%を反応の間に初めて前記反応混合物に供給するように分ける、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2012−111754(P2012−111754A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253767(P2011−253767)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】