説明

カルバミン酸エステル誘導体の製造方法

【課題】一般式(1)
【化1】


のカルバミン酸エステル誘導体を製造するための改善された方法を提供すること。
【解決手段】上記一般式(1)のカルバミン酸エステル誘導体を、一般式(2)
【化2】


の化合物をパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水との反応により製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(1)
【0002】
【化1】

【0003】
のカルバミン酸エステル誘導体を製造するための新規な方法、そして新規な化合物(2−ブロモ−4−メチルフェニル)カルバミン酸ヘキサデシル(2”)
【0004】
【化2】

【0005】
に関する。
【背景技術】
【0006】
一般式(1)のカルバミン酸エステル誘導体、特に一般式(1’)
【0007】
【化3】

【0008】
の(2−カルボキシ−4−メチルフェニル)カルバミン酸エステルは、活性のある製薬学的成分のための適当な中間体である。
【0009】
従って、例えば、R=C1633を有する式(1’)の化合物としての(2−カルボキシ−4−メチルフェニル)カルバミン酸ヘキサデシルは、特許文献1の最初に公開されたバージョンには、式(3)
【0010】
【化4】

【0011】
の2−ヘキサデシルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンの製造における中間体として開示されている。式(3)の2−ヘキサデシルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンは、肥満症およびII型糖尿病の処置のための潜在的有効成分としてそこに記述されている。特許文献1のこの最初に公開されたバージョンにおいて、2つの合成経路1および2が2−ヘキサデシルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン(3)を製造するために記述されており、これらの各々は、5−メチル置換されたアントラニル酸(4)から出発する。
【0012】
2段階の合成経路1においては、5−メチル置換されたアントラニル酸(4)をクロロギ酸ヘキサデシル(5)とそして次にクロロギ酸メチルと反応させて2−ヘキサデシルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン(3)を得ているが、得られる全収率は31%にすぎない。
【0013】
過剰のピリジンを用いる1段階の合成経路2では、15%の一層低い収率で2−ヘキサデシルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン(3)が得られる。
【0014】
【化5】

【0015】
しかしながら、合成経路1および2の両方に必要とされる出発化合物、5−メチル置換されたアントラニル酸(4)は容易に入手することができない。
【0016】
それは、非特許文献1に記載されている方法により製造される。これはp−トルイジンから出発し、それを抱水クロラールおよび塩酸ヒドロキシルアミンと反応せしめられる。
得られるオキシムを酸触媒作用で環化し、そして次に塩基性条件下で酸化により環を再び開裂する。
【0017】
【化6】

【0018】
この合成の欠点は、低い収率および非常に低い濃度のみを使用できるということである。このため、この合成経路は工業反応にとって魅力的ではない。
【0019】
アントラニル酸を得るために原則として既知であるさらなる代替経路は、下記のとおりである:
・非特許文献2および非特許文献3には、3−シアノトルエンを最初にニトロ化し、次にニトロ基を還元しそしてその後にニトリルをカルボン酸に加水分解することを開示されている。
【0020】
【化7】

【0021】
この合成の欠点は、3−シアノトルエンのニトロ化が選択的に進まず、そしてそれ故にさらなる精製段階が必要であることである。これは付加的努力を必要とし、そして収率を下げる。
・非特許文献4に記載されており、そして3−トルイル酸から出発し、その後にニトロ化しそしてニトロ基を還元する合成もまた、同じ欠点を有する。
・非特許文献5に開示されており、そして2,4−ジメチル−1−ニトロベンゼンから出発する合成は、ニトロ基の隣のメチル基の酸化が選択的に進まずそしてそれ故に異性体の複雑な分離が必要であるので、同様に不適当である。
【0022】
【化8】

【0023】
・特許文献2には、アントラニル酸誘導体を生成せしめるために一酸化炭素での遷移金属触媒によるカルボニル化反応を含む、場合により置換されていてもよいアントラニル酸の製造方法を開示されている。このカルボニル化反応は、トリアルキルアミンおよびパラジウムと第三級ホスフィンから形成される触媒を含有する水性反応媒質において行われる。アントラニル酸誘導体は、保護基を除くことにより得ることができる。カルボニル化に用
いる前駆体は、以下の反応スキームに原則として示すように場合により置換されていてもよいアニリンから出発して得られる。
【0024】
【化9】

【0025】
特許文献2には、アセチル化(a)、ハロゲン化(b)、カルボニル化(c)およびその後のアセチル基の除去(d)のこの反応順序が、場合により置換されていてもよいアントラニル酸を優れた収率(>80%)で生成せしめると記載されている。しかしながら、アセチル基の導入は欠点である。遊離のアニリンは、顕著な錯化のために遷移金属触媒によるカルボニル化反応において乏しい収率しか与えないので[非特許文献6]、これは必要である。
・特許文献3には、類似の方法が開示されている。
【0026】
その後の合成経路1および2の、不十分でしかなくそしてそれ故に全過程を限定する、場合により置換されていてもよいアントラニル酸を製造するための既知の方法および収率と関連する上記の様々な問題のために、本発明の目的は、一般式(1)のカルバミン酸エステル誘導体を製造するための改善された方法を提供することであった。
【特許文献1】WO−A 00/40569明細書
【特許文献2】EP−A 0 034 292明細書
【特許文献3】WO−A 97/28118明細書
【非特許文献1】J.Org.Chem.1952,17,141
【非特許文献2】J.Org.Chem.1978,43,220
【非特許文献3】Chem.Ber.1909,42,430
【非特許文献4】J.Chem.Soc.Perkin I,1973,2940
【非特許文献5】Monatsh.Chem.1920,41,155
【非特許文献6】J.Org.Chem.1981,46,4614−4617
【発明の開示】
【0027】
本発明は、一般式(1)
【0028】
【化10】

【0029】
[式中、
、R、R、Rは同一であるかもしくは異なり、そして水素、アルキル、アルコキシ、カルボキシル、塩素、フッ素基または場合によりアルキルもしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基であり、そして
Rはアルキル、アリールもしくはヘテロアリール基である]
のカルバミン酸エステル誘導体を、一般式(2)
【0030】
【化11】

【0031】
[式中、
Xは臭素もしくはヨウ素であり、そして
、R、R、RおよびRは、一般式(1)について記載する意味を有する]
の化合物をパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水と反応させることにより製造する方法に関する。
【0032】
一般式(I)のカルバミン酸エステル誘導体の製造が、本発明のカルボニル化により可能であるということは驚くべきことであり、そして先行技術に基づいて予測することができなかった。
【0033】
特にハロゲン基に対してオルト位のそして遊離のNH基を有する、カルバメート側鎖を有する芳香族ハロゲン化合物のカルボニル化は、文献に開示されておらず、そして2−ハロアニリンのパラジウム触媒によるカルボニル化反応と関連する問題は周知であり、そして化合物(2)に存在するようなカルバメート基はアセチル基より強い錯化作用を有するので、このカルボニル化が優れた結果で可能であることは驚くべきことである。
【0034】
本発明の方法に用いる一般式(2)の化合物について、そして一般式(1)の対応する得られる化合物について記載する置換基は、以下の意味を有する:
本発明の目的のための「アルキル」は、メチル、エチル、およびプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシルもしくはドコシル基の直鎖状もしくは全ての分枝鎖状基のような1〜22個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基である。
【0035】
基R、R、RおよびRについて、アルキルは、好ましくは1〜7個の炭素原子
を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルもしくはtert−ブチルである。
【0036】
基Rのアルキルは、好ましくは、16〜22個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基である。
【0037】
本発明の目的のための「アルコキシ」は、好ましくは、1〜7個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルコキシ基である。1〜4個の炭素原子を有する、特に好ましくは1〜3個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルコキシ基が好適である。挙げることができる好ましい例は:メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシおよびn−ヘプトキシである。
【0038】
本発明の目的のためのヘテロアリールは、好ましくは、5〜10個の環原子ならびに系列S、Oおよび/もしくはNからの5個までのヘテロ原子を有する芳香族の単環式もしくは二環式基である。4個までのヘテロ原子を有する5〜6員のヘテロアリールが好ましい。ヘテロアリール基は、炭素原子もしくはヘテロ原子を介して結合されることができる。挙げることができる好ましい例は:チエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、インドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリニルおよびイソキノリニルである。
【0039】
本発明の方法の特に好ましい態様においては、一般式(2’)
【0040】
【化12】

【0041】
[式中、
Xは塩素もしくは臭素、特に臭素であり、そして
Rは16〜22個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、好ましくは16個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である]
の化合物をパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水と反応させて一般式(1’)
【0042】
【化13】

【0043】
[式中、
Rは一般式(2’)について記載した意味を有する]
のカルバミン酸エステル誘導体を得る。
【0044】
一般式(1)のカルバミン酸エステル誘導体を製造するための本発明の方法に用いることができるパラジウム触媒は、例えば、タイプXPd(PPhのものであり、ここで、Phは場合により置換されていてもよいフェニル基であり、そしてXはハロゲン、
好ましくは塩素もしくは臭素である。これらのパラジウム触媒は、反応混合物にそのまま加えることができ、あるいはまたPdXおよびPPhからin situで都合よく製造することもできる。PPh成分はまた、この場合、過剰に用いることもできる。一般式(2)の化合物に基づいて、例えば0.1〜1モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%のパラジウム触媒が使用される。
【0045】
本発明の方法は、通常、塩基の存在下で実施される。塩基として、例えば、第一級、第二級および第三級アミン、酢酸塩、炭酸塩ならびに重炭酸塩を用いることが可能である。炭酸塩および重炭酸塩が好ましい。一般式(2)の化合物の1モルに基づいて、例えば0.9〜5モル、好ましくは1.0〜2.0モルの塩基を用いることが可能である。
【0046】
反応温度は臨界的ではない。本発明の方法は、通常、60〜120℃の範囲内の、好ましくは80〜115℃の範囲内の反応温度で実施される。反応圧力は、通常、2〜30バール、好ましくは2〜15バールである。
【0047】
本発明の方法は、通常、一般式(2)の化合物を圧力容器にパラジウム触媒自体もしくはその前駆体PdXおよびPPhと一緒に導入し、次に水そして必要に応じて塩基を加えるような方法で実施される。次に、混合物を60〜120℃に加熱し、そして2〜30バールの一酸化炭素を計量して供給し、そしてさらなる一酸化炭素が吸収されなくなるまでこの圧力を維持する。
【0048】
適宜、水と1種もしくはそれ以上の溶媒との混合物を用いることにより溶解性を改善することが可能である。好ましい追加の溶媒は、アセトニトリルのようなニトリル、ジメチルホルムアミドのようなアミド、ジオキサンおよびテトラヒドロフランのようなエーテルならびに求核試薬として水と競合しない分岐高級アルコールである。
【0049】
一般式(2)
【0050】
【化14】

【0051】
の化合物の製造は、2つの異なる合成経路により可能であり、これらの両方とも場合により置換されていてもよいアニリンから出発する。
【0052】
合成経路Aにおいて、一般式(2)の化合物は、一般式(6)
【0053】
【化15】

【0054】
の場合により置換されていてもよいアニリンを
Ia)ホスゲンまたはin situでホスゲンを生成するかもしくはホスゲンを含んでなる物質と反応させ、そして
Ib)このようにして得られる一般式(7)
【0055】
【化16】

【0056】
の化合物を式ROHのアルコールと反応させるか、あるいは
II)式Cl−C(=O)ORの化合物と反応させ、
そして段階(Ia)と(Ib)、および別の段階(II)の両方により得られる一般式(8)
【0057】
【化17】

【0058】
の化合物をハロゲン化に供して一般式(2)の化合物を生成せしめることにより製造され、ここで、上記式の全てにおける基R、R、R、RおよびRは一般式(1)について記載した意味を有する。
【0059】
合成経路Aはまた、以下のように図式的に表すこともできる:
【0060】
【化18】

【0061】
段階(Ia)および(Ib)は、Chem.Ber.1888,21,411およびBull.Soc.Chim.Fr.1904,31,50に存在する開示の方法と同様にして実施される。
【0062】
in situでのホスゲンの生成に用いることができる物質の例は、クロロギ酸トリクロロメチル(ジホスゲン)である。用いることができるホスゲン含有物質の例は塩化オキサリルであり、それは技術的品質で微量のホスゲンを高い頻度で含有する。
【0063】
段階(II)は、Chem.Ber.1870,3,655に開示されている方法と同様にして実施される。
【0064】
その後のハロゲン化は、当業者に既知である方法により実施される。一般式(9)の化合物の好ましい臭素化は、同様に当業者に既知である方法によりBr/HOAcもしくはBr/HOAcを用いて実施することができる。
【0065】
合成経路Bにおいて、一般式(2)の化合物は、一般式(6)
【0066】
【化19】

【0067】
の場合により置換されていてもよいアニリンを
1)ハロゲン化に供し、そして
2)このようにして得られる一般式(9)
【0068】
【化20】

【0069】
の化合物を
IIIa)ホスゲンとまたはin situでホスゲンを生成するかもしくはホスゲンを含んでなる物質と反応させ、そして
IIIb)このようにして得られる式(10)
【0070】
【化21】

【0071】
の化合物を式ROHのアルコールと反応させるか、あるいは
IV)Cl−C(=O)ORと一段階で反応させる
ことにより製造され、ここで、上記式の全てにおける基R、R、R、RおよびRは一般式(1)について記載した意味を有する。
【0072】
合成経路Bの段階1におけるハロゲン化は、Organic Syntheses,Coll.Vol.1,p.111と同様にして実施される。
【0073】
合成経路B、段階IIIaにおける反応は、Bioorg.Med.Chem.1999,7,1597と同様にして実施される。in situでのホスゲンの生成に用いることができる物質の例は、クロロギ酸トリクロロメチル(ジホスゲン)である。用いることができるホスゲン含有物質の例は塩化オキサリルであり、それは技術的品質で微量のホスゲンを高い頻度で含有する。
【0074】
合成経路B、段階IIIbにおける反応は、Bull.Soc.Chim.Fr.1904,31,50に含まれる開示と同様にして実施される。
【0075】
合成経路B、段階IVにおける反応は、Chem.Ber.1870,3,655に含まれる開示と同様にして実施される。
【0076】
本発明は、さらに、式(2”)
【0077】
【化22】

【0078】
の化合物に関する。この化合物は、中間体(2−カルボキシ−4−メチルフェニル)カルバミン酸ヘキサデシルを通る従来の経路によるよりも極めて簡単な形態で、記述される合成経路により、式(3)の2−ヘキサデシルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンへの特定のアプローチがそれを用いて可能であるので重要である。これらの経路は不適当な異性体の形成なしに進行し、すなわち、複雑な精製もしくは結晶化段階はそれ故に必要ない。
【0079】
本発明は、さらに、一般式(2)
【0080】
【化23】

【0081】
の化合物をパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水と反応させて一般式(1)
【0082】
【化24】

【0083】
のカルバミン酸エステル誘導体を生成せしめ、そしてそれをクロロギ酸メチルもしくはエチルと反応させることにより一般式(11)
【0084】
【化25】

【0085】
の2−アルキルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンを製造することを可能にし、ここで、上記式の全てにおけるR、R、R、RおよびRは
、一般式(1)について記載した意味を有する。
【0086】
クロロギ酸メチルもしくはエチルとの上記の反応は、当業者によく知られている方法により行われる。
【0087】
この全過程の利点は、カルボニル化の保護基としてのアセチル基の追加導入および除去を回避することができることである。その代わりに、一般式(2)の2−ハロ化合物をカルボニル化反応において直接用いる。アセチル基の除去の省略は、より短時間のそしてそれ故に一層経済的に魅力的な合成を可能にする。
【0088】
特に(2−ブロモ−4−メチルフェニル)カルバミン酸ヘキサデシル(2”)の製造における、この合成経路のさらなる利点は、純粋な異性体として市販されているp−トルイジンから出発する上記のような先行する合成経路を考慮して、3−シアノトルエンもしくは3−トルイル酸から出発する経路の場合のような異性体の問題が存在しないことである。
[実施例]
【実施例1】
【0089】
4−メチルフェニルカルバミン酸ヘキサデシルの合成
【0090】
【化26】

【0091】
50mlのトルエン中50g(375mmol)のイソシアン酸p−トリルの溶液に91g(375mmol)の1−ヘキサデカノールを加え、そして得られる溶液を還流下で8h加熱する。室温に冷却し、そしてこの温度で12h攪拌した後に、沈殿した固体を濾過して分離する。無色の固体を毎回10mlのトルエンで2回洗浄し、そして次に真空中で乾燥させる。80g(213mmol、57%)の所望のカルバメートが、75℃の融点を有する無色の固体の形態で得られる。融点は、文献データ(75〜76℃、Microchem J.1962,6,179)と一致する。
【0092】
H−NMR(CDCl,400MHz):δ=0.88ppm(t,J=7.3Hz,3H),1.25−1.40(m,26H),1.66(sext,J=6.9Hz,2H),2.30(s,3H),4.14(t,J=6.9Hz,2H),6.53(br,1H),7.10(d,J=7.8Hz,2H),7.25(d,J=8.3Hz,2H)。
【0093】
元素分析は:
計算値:C76.8%,H11.0%,N3.7%
実測値:C76.9%,H11.2%,N3.7%
を示す。
【実施例2】
【0094】
(2−ブロモ−4−メチルフェニル)カルバミン酸ヘキサデシルの合成
【0095】
【化27】

【0096】
225ml(235g)の氷酢酸中45g(119mmol)のカルバメートの溶液に19g(119mmol)の臭素を室温で1hにわたって滴下して加え、そして次に得られる溶液を室温で1h攪拌する。さらに25ml(26g、437mmol)の氷酢酸の添加後に、反応混合物を40℃で5h攪拌し、そして次に室温に冷却する。沈殿した固体を濾過して分離し、そして20mlの氷酢酸で洗浄する。真空中で乾燥させることにより、57℃の融点を有する無色の固体の形態の40g(88mmol、74%)の所望のブロモ化合物がもたらされる。
【0097】
H−NMR(CDCl,400MHz):δ=0.93ppm(t,J=6.6Hz,3H),1.25−1.43(m,26H),1.73(sext,J=6.8Hz,2H),2.33(s,3H),4.21(t,J=6.7Hz,2H),7.04(br,1H),7.14(d,J=8.4Hz,1H),7.37(s,1H),8.02(d,J=8.3Hz,1H)。
【0098】
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ=14.2ppm,20.4,22.7,25.9,29.0,29.3,29.4,29.6(2C),29.7(2C),29.8(4C),32.0,65.7,112.5,120.3,129.0,132.5,133.5,134.1,153.5。
【0099】
元素分析は:
計算値:C63.4%,H8.9%,N3.1%
実測値:C63.6%,H8.9%,N3.1%
を示す。
【実施例3】
【0100】
2−ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ−5−メチル安息香酸の合成
【0101】
【化28】

【0102】
217.5g(478.5mmol)の(2−ブロモ−4−メチルフェニル)カルバミン酸ヘキサデシル、0.5g(0.7mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドおよび2.5g(9,3mmol)のトリフェニルホスフィンをオートクレーブに導入する。オートクレーブを閉じ、窒素でフラッシし、そして400mlの水中78.1g(565.3mmol)の炭酸カリウムの無酸素溶液を加えた。オートクレーブを真空にし、そして次に2バールの一酸化炭素を注入し、そして115℃に加熱した。次に、圧力を8バールに調整した。COの取り込みが終わった後に、混合物をRTに冷却し、そして200mlのトルエンを加えた。2MのHCl水溶液でpHを2に調整し、そして有機相を分離した。水相を100mlのトルエンで新たに抽出し、有機相を分離し
、そして2つのトルエン抽出物を合わせた。真空中での溶媒の除去により、淡黄色に着色した固体の形態の154.9g(369.2mmol、77%)の2−ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ−5−メチル安息香酸がもたらされた。
【0103】
H−NMR(CDCl,400MHz):δ=0.88ppm(t,J=6.7Hz,3H),1.24−1.40(m,26H),1.73(sext,J=6.8Hz,2H),2.33(s,3H),4.17(t,J=6.8Hz,2H),7.38(d,J=8.7Hz,1H),7.90(s,1H),8.35(d,J=8.6Hz,1H)。NHプロトンのシグナルは識別不能。
【0104】
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ=14.1ppm,20.5,22.7,25.9,29.0,29.3,29.4,29.6(2C),29.7(6C),32.0,65.5,113.6,119.0,131.1,131.8,136.3,140.1,153.9,172.5。
【実施例4】
【0105】
2−ヘキサデシルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4オンの合成
【0106】
【化29】

【0107】
4.0g(10.0mmol)の2−ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ−5−メチル安息香酸を窒素雰囲気下で0℃で20mlのピリジンに導入し、そして得られる溶液に4.93g(45.4mmol)のクロロギ酸エチルを0℃で20分にわたって滴下して加えた。反応混合物を0℃で1hそして室温で2h攪拌した後に、それを30mlの氷水に加えた。固体を濾過して分離し、そして真空中で乾燥させた。3.3g(8.2mmol、82%)の2−ヘキサデシルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4オンが、67℃(文献:72〜73℃、WO 00/40569)の融点を有する淡黄色に着色した固体の形態で得られた。
【0108】
H−NMR(CDCl,400MHz):δ=0.86ppm(t,J=6.6Hz,3H),1.24−1.42(m,26H),1.75−1.82(m,2H),2.40(s,3H),4.41(t,J=6.8Hz,2H),7.30(d,J=8.3Hz,1H),7.51(dd,J=8.2,1.9Hz,1H),7.90(d,J=0.9Hz,1H)。
【0109】
H−NMRデータは、WO−A 00/40569からの文献データと一致した。

なお本発明の特徴および態様を示せば以下のとおりである。
【0110】
1.一般式(1)
【0111】
【化30】

【0112】
[式中、
、R、R、Rは同一であるかもしくは異なり、そして水素、アルキル、アルコキシ、カルボキシル、塩素、フッ素基または場合によりアルキルもしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基であり、そして
Rはアルキル、アリールもしくはヘテロアリール基である]
のカルバミン酸エステル誘導体を、一般式(2)
【0113】
【化31】

【0114】
[式中、
Xは臭素もしくはヨウ素であり、そして
、R、R、RおよびRは、一般式(1)について記載した意味を有する]
の化合物をパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水と反応させることにより製造する方法。
【0115】
2.一般式(2’)
【0116】
【化32】

【0117】
[式中、
Xは塩素もしくは臭素、特に臭素であり、そして
Rは16〜22個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、好ましくは16個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である]
の化合物をパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水と反応させて一般式(1’)
【0118】
【化33】

【0119】
[式中、Rは一般式(2’)について記載した意味を有する]
のカルバミン酸エステル誘導体を生成せしめることを特徴とする上記1に記載の方法。
【0120】
3.用いるパラジウム触媒がタイプXPd(PPh[ここで、Phは場合により置換されていてもよいフェニル基であり、そしてXはハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素である]のものであることを特徴とする上記1もしくは2に記載の方法。
【0121】
4.塩基の存在下で、好ましくは第一級、第二級もしくは第三級アミン、酢酸塩、炭酸塩または重炭酸塩の存在下で実施することを特徴とする上記1〜3の1つもしくはそれ以上に記載の方法。
【0122】
5.一般式(2)
【0123】
【化34】

【0124】
の化合物の製造を、一般式(6)
【0125】
【化35】

【0126】
の場合により置換されていてもよいアニリンを
Ia)ホスゲンまたはin situでホスゲンを生成するかもしくはホスゲンを含んでなる物質と反応させ、そして
Ib)このようにして得られる一般式(7)
【0127】
【化36】

【0128】
の化合物を式ROHのアルコールと反応させるか、あるいは
II)式Cl−C(=O)ORの化合物と反応させ、
そして段階(Ia)と(Ib)、および別の段階(II)の両方により得られる一般式(8)
【0129】
【化37】

【0130】
の化合物をハロゲン化に供して一般式(2)の化合物を生成せしめることにより行う[ここで、上記式の全てにおける基R、R、R、RおよびRは一般式(1)について記載した意味を有する]ことを特徴とする上記1〜4の1つもしくはそれ以上に記載の方法。
【0131】
6.一般式(2)の化合物の製造を、一般式(6)
【0132】
【化38】

【0133】
の場合により置換されていてもよいアニリンを
1)ハロゲン化に供し、そして
2)このようにして得られる一般式(9)
【0134】
【化39】

【0135】
の化合物を
IIIa)ホスゲンまたはin situでホスゲンを生成するかもしくはホスゲンを含んでなる物質と反応させ、そして
IIIb)このようにして得られる式(10)
【0136】
【化40】

【0137】
の化合物を式ROHのアルコールと反応させるか、あるいは
IV)Cl−C(=O)ORと一段階で反応させる
ことにより行う[ここで、上記式の全てにおける基R、R、R、RおよびRは一般式(1)について記載する意味を有する]ことを特徴とする上記1〜4の1つもしくはそれ以上に記載の方法。
【0138】
7.式(2”)
【0139】
【化41】

【0140】
の化合物。
【0141】
8.一般式(2)
【0142】
【化42】

【0143】
の化合物をパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水と反応させて一般式(1)
【0144】
【化43】

【0145】
のカルバミン酸エステル誘導体を生成せしめ、そしてそれをクロロギ酸メチルもしくはエチルと反応させることにより一般式(11)
【0146】
【化44】

【0147】
の2−アルキルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンを製造する方法[ここで、上記式の全てにおけるR、R、R、RおよびRは一般式(1)について記載した意味を有する]。
【0148】
9.一般式(2)
【0149】
【化45】

【0150】
の化合物の製造を、一般式(6)
【0151】
【化46】

【0152】
の場合により置換されていてもよいアニリンを
Ia)ホスゲンと反応させ、そして
Ib)このようにして得られる一般式(7)
【0153】
【化47】

【0154】
の化合物を式ROHのアルコールと反応させるか、あるいは
II)式Cl−C(=O)ORの化合物と反応させ、
そして段階(Ia)と(Ib)、および別の段階(II)の両方により得られる一般式(8)
【0155】
【化48】

【0156】
の化合物をハロゲン化に供して一般式(2)の化合物を生成せしめることにより行う[ここで、上記式の全てにおける基R、R、R、RおよびRは一般式(1)について記載した意味を有する]ことを特徴とする上記8に記載の方法。
【0157】
10.一般式(2)の化合物の製造を、一般式(6)
【0158】
【化49】

【0159】
の場合により置換されていてもよいアニリンを
1)ハロゲン化に供し、そして
2)このようにして得られる一般式(9)
【0160】
【化50】

【0161】
の化合物を
IIIa)クロロギ酸トリクロロメチル(ジホスゲン)と反応させ、そして
IIIb)このようにして得られる式(10)
【0162】
【化51】

【0163】
の化合物を式ROHのアルコールと反応させるか、あるいは
IV)Cl−C(=O)ORと一段階で反応させる
ことにより行う[ここで、上記式の全てにおける基R、R、R、RおよびRは、一般式(1)について記載した意味を有する]ことを特徴とする上記8に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(2)
【化1】

[式中、
Xは臭素もしくはヨウ素であり、
、R、R、Rは同一であるかもしくは異なり、そして水素、アルキル、アルコキシ、カルボキシル、塩素、フッ素基または場合によりアルキルもしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基であり、そして
Rはアルキル、アリールもしくはヘテロアリール基である]
の化合物をパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水と反応させることを特徴とする一般式(1)
【化2】

[式中、
、R、R、RおよびRは一般式(2)について記載した意味を有する]
のカルバミン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項2】
式(2”)
【化3】

の化合物。
【請求項3】
一般式(2)
【化4】

の化合物をパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水と反応させて一般式(1)
【化5】

のカルバミン酸エステル誘導体を生成せしめ、そしてそれをクロロギ酸メチルもしくはエチルと反応させることを特徴とする一般式(11)
【化6】

[上記各式中、R、R、R、RおよびRは請求項1に記載した意味を有する]
の2−アルキルオキシ−6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンの製造方法。

【公開番号】特開2006−169244(P2006−169244A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356549(P2005−356549)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(504469581)ランクセス・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (7)
【Fターム(参考)】