説明

カルベン化合物誘導体を構成成分とする有機薄膜電子デバイス

【課題】
本発明の課題は、陽極と陰極の間に少なくとも一層の電子輸送層あるいは電極界面層を有する有機薄膜電子デバイスであって、高効率で駆動可能であり長寿命な有機薄膜電子デバイスを提供する。
【解決手段】
陽極と陰極の間に少なくとも一層の電子輸送層または電極界面層を有する有機薄膜電子デバイスであって、電子輸送層または電極界面層の少なくとも一層にカルベン化合物を0.1〜70重量%含有することを特徴とする有機薄膜電子デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルベン化合物を含有する有機電界発光素子や有機薄膜太陽電池などの有機薄膜電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体の開発が急速に進められている。従来の無機半導体に比べて有機半導体は電荷移動度や電荷密度、耐久性等が不十分であり、有機半導体の実用化はいまだ容易ではない。有機半導体のひとつに有機薄膜電子デバイスがあり、例として有機電界発光素子、有機薄膜太陽電池や有機薄膜トランジスタ等が挙げられる。その中でも特に有機電界発光素子は実用化段階に至っており、ディスプレイや照明として利用されている。
【0003】
有機電界発光素子は発光材料を含有する発光層を正孔輸送層と電子輸送層で挟み、さらにその外側に陽極と陰極を取り付け、発光層に注入された正孔及び電子の再結合により生じる励起子が失活する際の光の放出(蛍光または燐光)を利用する素子である。有機電界発光素子には低消費電力、長寿命化を可能とする材料が求められており、電荷輸送層用の材料には電荷注入特性および電荷輸送特性、電荷に対する耐久性が求められる。
【0004】
有機電界発光素子の消費電力を低減させる方法に素子の駆動電圧を下げる手法があり、その方法のひとつとして電荷輸送層に添加剤を加える手法(ドーピングと呼ぶ)が挙げられる。例えば正孔輸送層に強力な電子吸引性化合物(p−ドーパントと呼ぶ)を添加することで正孔密度を向上させ、素子の駆動電圧を低減させることできる。一方、電子輸送層については、強力な電子供与性化合物(n−ドーパントと呼ぶ)を添加して電子輸送層の電子密度を向上させることによって導電性を向上させ、素子の駆動電圧を低減させることができる(例えば、特許文献1参照)。しかし、n−ドーパントは強力な電子供与性材料であり、原理的に酸素との反応性が高い。これまでに開発されてきたn−ドーパントは大気安定性に十分満足がいくものではなく、n−ドーパントを含有する有機電界発光素子の実用化は困難である。
【0005】
特許文献2にはカルベン化合物を有機電界発光素子に含有させた例が開示されているが、当該カルベン化合物は電子に対する安定性が低いためにカルベン化合物含有層を発光層の陽極側に配置させており、本発明でのカルベン化合物の利用方法とは異なる。また、特許文献1でのカルベン化合物は遷移金属とカルベン炭素が錯形成したカルベン錯体の例に限られており、錯形成されていないフリーカルベンを利用した本発明に記載のカルベン化合物とは異なる(ここで述べたフリーカルベンとは、荷電子を6個しか持たない二配位の炭素種のことを指す)。
【0006】
特許文献3には有機薄膜電子デバイスにおける電子輸送層のn−ドーパントのための材料として、カルベン前駆体(カルベノイド)およびカルベン二量体が開示されているが、分子骨格構造が全く異なっており、また、フリーカルベンではないことから、本発明に記載のカルベン化合物とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−526640号公報
【特許文献2】特開2009−076509号公報
【特許文献3】特表2009−510718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、陽極と陰極の間に少なくとも一層の電子輸送層または電極界面層を有する有機薄膜電子デバイスであって、高効率で駆動可能であり長寿命な有機薄膜電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、先の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、陽極と陰極の間に少なくとも一層の電子輸送層あるいは電極界面層を有する有機薄膜電子デバイスに対し、電子輸送層または電極界面層の少なくとも一層にカルベン化合物を0.1〜70重量%含有させることで有機薄膜電子デバイスの消費電力の低減と長寿命化が達成できることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、陽極と陰極の間に少なくとも一層の電子輸送層または電極界面層を有する有機薄膜電子デバイスであって、電子輸送層または電極界面層の少なくとも一層にカルベン化合物を0.1〜70重量%含有することを特徴とする有機薄膜電子デバイスに関するものである。
【0011】
以下本発明を説明する。
【0012】
本発明でいう有機薄膜電子デバイスとは、例えば、有機電界発光素子、有機薄膜太陽電池、有機薄膜トランジスタなどをいう。
【0013】
陽極と陰極の間に2層以上の有機層を有する有機薄膜電子デバイスとしては、例えば陽極/正孔注入層(電極界面層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層(電極界面層)/陰極の構造を有する有機電界発光素子、陽極/バッファ層(電極界面層)/P型半導体/N型半導体/バッファ層(電極界面層)/陰極の構造を有する有機薄膜太陽電池、ゲート電極層/ゲート絶縁層層/P型またはN型有機半導体層/バッファ層(電極界面層)/ソース・ドレイン電極の構造を有する有機薄膜トランジスタなどが挙げられる。
【0014】
本発明で用いるカルベン化合物は、カルベン錯体ではなく荷電子を6個しか持たない二配位の炭素種であるカルベンであれば特に限定はされないが、電子輸送特性の点から一般式(1)で示されるカルベン化合物(以下、適宜「カルベン化合物(1)」と称する)などが好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、CとCは単結合あるいは二重結合によって直接結合している炭素原子を表し、前記炭素原子は水素原子で置換されている。Ar及びArは各々独立に炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
カルベン化合物(1)は、式中のCとCは単結合あるいは二重結合によって直接結合している炭素原子を表し、前記炭素原子は水素原子で置換されている。
【0017】
Ar及びArで表される炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基をとしては、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいアントリル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいペリレニル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいトリフェニレニル基等を挙げることができる。炭素数1から6のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。以上に挙げた炭素数1から6のアルキル基は芳香族炭化水素基上の任意の位置に任意の数、任意の置換基を選択することができる。
【0018】
以下、具体的な例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基のほか、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、メシチル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2,4−ジプロピルフェニル基、3,5−ジプロピルフェニル基、2,6−ジプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、2,4−ジブチルフェニル基、3,5−ジブチルフェニル基、2,6−ジブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、2,4,6−トリプロピルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリブチルフェニル基、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0020】
有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されていてもよいフェニル基としては、メシチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジブチルフェニル基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、2,4,6−トリプロピルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリブチルフェニル基、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル基が好ましく、化合物の安定性が高く操作性が高い点で2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル基がさらに好ましい。
【0021】
また、置換されていてもよいナフチル基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基のほか、2−メチルナフタレン−1−イル基、2−イソプロピルナフタレン−1−イル基、2−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、3−メチルナフタレン−1−イル基、3−イソプロピルナフタレン−1−イル基、3−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−エチルナフタレン−1−イル基、4−プロピルナフタレン−1−イル基、4−ブチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−エチルナフタレン−1−イル基、5−プロピルナフタレン−1−イル基、5−ブチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、2,7−ジメチルナフタレン−1−イル基、2,7−ジエチルナフタレン−1−イル基、2,7−ジプロピルナフタレン−1−イル基、2,7−ジイソプロピルナフタレン−1−イル基、2,7−ジブチルナフタレン−1−イル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−エチルナフタレン−2−イル基、6−プロピルナフタレン−2−イル基、6−ブチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基、7−エチルナフタレン−2−イル基、7−プロピルナフタレン−2−イル基、7−ブチルナフタレン−2−イル基、7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、1,3−ジメチルナフタレン−2−イル基、1,3−ジイソプロピルナフタレン−2−イル基等が挙げられる。
【0022】
有機電界発光素子用材料としての性能がよい点で、置換されていてもよいナフチル基としては、2−メチルナフタレン−1−イル基、2−イソプロピルナフタレン−1−イル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、2,7−ジメチルナフタレン−1−イル基、2,7−ジエチルナフタレン−1−イル基、2,7−ジプロピルナフタレン−1−イル基、2,7−ジイソプロピルナフタレン−1−イル基、2,7−ジブチルナフタレン−1−イル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基、7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、1,3−ジメチルナフタレン−2−イル基、1,3−ジイソプロピルナフタレン−2−イル基が好ましく、化合物の安定性が高く操作性が高い点で2,7−ジメチルナフタレン−1−イル基、2,7−ジエチルナフタレン−1−イル基、2,7−ジプロピルナフタレン−1−イル基、2,7−ジイソプロピルナフタレン−1−イル基、2,7−ジブチルナフタレン−1−イル基、1,3−ジメチルナフタレン−2−イル基、1,3−ジイソプロピルナフタレン−2−イル基がさらに好ましい。
【0023】
置換されていてもよいアントリル基、置換されていてもよいペリレニル基及び置換されていてもよいトリフェニレニル基としては、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−ペリレニル基、2−ペリレニル基又は1−トリフェニレニル基を挙げることができる。
【0024】
カルベン化合物(1)は、例えば「Tetrahedron 55巻 14523−l4534 1999年」、「Organometallics 27巻 3279−3289 2008年」、「Organometallics,29巻,775−788,2010年」等の方法を用いて製造することができる。
【0025】
また、本発明は電子輸送層または電極界面層の少なくとも一層にカルベン化合物を0.1〜70重量%含有することを特徴としている。カルベン化合物の含有量は、電子輸送層または電極界面層を形成する薄膜の0.1〜70重量%とし、1〜50重量%とすることがより好ましい。
【0026】
本発明の有機薄膜電子デバイスの製造方法は特に限定はないが、真空蒸着法により成膜が可能である。真空蒸着法による成膜は汎用の真空蒸着装置を用いることで行うことができる。真空蒸着法で膜を形成する際の真空槽の真空度は、有機電界発光素子の製造タクトタイムや製造コストを考慮すると、一般的に用いられる拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ等により到達し得る1×10−2〜1×10−5Pa程度が望ましい、蒸着速度は形成する膜の厚さによるが0.005〜1.0nm/秒が好ましい。また、カルベン化合物はクロロホルム、ジクロロメタン、1,2―ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等に対する溶解度が高いため、汎用の装置を用いてスピンコート法、インクジェット法、キャスト法またはディップ法等による成膜も可能である。
【0027】
なお、本発明の有機薄膜電子デバイスにおいてカルベン化合物を含有する電子輸送層または電極界面層は、さらに別の化合物を含有していても良く、特に電子輸送性が高い化合物をさらに含有していることが好ましい。電子輸送性が高い化合物として具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フッ素置換芳香族化合物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有していることが好ましく、これらの化合物は低分子化合物であっても高分子化合物であっても良い。有機薄膜電子デバイスの性能が高い点で、カルベン化合物(1)を含有する有機化合物層には、トリアジン化合物をさらに含有していることがより好ましい。
【0028】
前記トリアジン化合物としては、電子輸送性能に優れた化合物であれば特に制限はないが、一般式(2)で示されるトリアジン化合物(以下、適宜「トリアリジン化合物(2)」と称する)
【0029】
【化2】

【0030】
(式中、Ar11、Ar12およびAr13は、各々独立に炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよい、フェニル基、ピリジル基、ピリジルフェニル基またはビフェニリル基を示す。Ar11、Ar12およびAr13は同一、または相異なっていてもよい。)または一般式(3)で示されるトリアジン化合物(以下、適宜「トリアリジン化合物(3)」と称する)
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、Ar21およびAr22は、各々独立にフェニル基、ナフチル基またはビフェニリル基を示し、これらの基は炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で1つ以上置換されていても良い。R、RおよびRは、各々独立に水素原子またはメチル基を示す。XおよびXは、各々独立にフェニレン基、ナフチレン基またはピリジレン基を示し、これらの基は炭素数1から4のアルキル基またはフッ素原子で1つ以上置換されていても良い。pおよびqは、各々独立に0から2の整数を示す。pが2のとき、連結するXは同一または相異なっていても良い。qが2のとき、連結するXは同一または相異なっていても良い。Ar23およびAr24は、各々独立に炭素数1から4のアルキル基もしくはフッ素原子で1つ以上置換されていても良いピリジル基または炭素数1から4のアルキル基もしくはフッ素原子で1つ以上置換されていても良いフェニル基を示す。)が特に好ましい。
【0033】
トリアリジン化合物(2)について、式中のAr11、Ar12およびAr13は、各々独立に炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよい、フェニル基、ピリジル基、ピリジルフェニル基またはビフェニリル基を示す。炭素数1から6のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。有機薄膜電子デバイスとしての特性が優れる点で、アルキル基に置換されていないフェニル基またはピリジルフェニル基が好ましく、Ar11、Ar12およびAr13は全て同一でないことがより好ましい。
【0034】
なお、ピリジル基とは、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基のいずれであっても良く、ピリジルフェニル基の場合であっても同様である。
【0035】
また、ピリジルフェニル基またはビフェニリル基の場合、末端のピリジル基またはフェニル基はフェニレン基の2−、3−、4−位のいずれに結合していてもよい。
【0036】
トリアリジン化合物(2)は、例えば特開2007−314503号公報の(0041)〜(0101)に記載の方法で製造することが可能である。
【0037】
トリアリジン化合物(3)について、式中のAr21およびAr22は、各々独立にフェニル基、ナフチル基またはビフェニリル基を示し、これらの基は炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で1つ以上置換されていても良い。
【0038】
Ar21およびAr22で表される炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で1つ以上置換されていても良いフェニル基としては、具体的には、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、メシチル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2,4−ジプロピルフェニル基、3,5−ジプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、2,4−ジブチルフェニル基、3,5−ジブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、2−ペンチルフェニル基、3−ペンチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、2,4−ジペンチルフェニル基、3,5−ジペンチルフェニル基、2−ネオペンチルフェニル基、3−ネオペンチルフェニル基、4−ネオペンチルフェニル基、2,4−ジネオペンチルフェニル基、3,5−ジネオペンチルフェニル基、2−ヘキシルフェニル基、3−ヘキシルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、2,4−ジヘキシルフェニル基、3,5−ジヘキシルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,4−ジシクロヘキシルフェニル基または3,5−ジシクロヘキシルフェニル基等が挙げられる。
【0039】
有機電界発光素子用材料としての性能が良い点で、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基または4−シクロヘキシルフェニル基が望ましく、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−ブチルフェニル基または4−tert−ブチルフェニル基がさらに好ましい。
【0040】
Ar21およびAr22で表される炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で置換されていても良いビフェニリル基としては、4−ビフェニリル基、4’−メチルビフェニル−4−イル基、4’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、2,5−ジメチルビフェニル−4−イル基、2’,5’−ジメチルビフェニル−4−イル基、4’−エチルビフェニル−4−イル基、4’−プロピルビフェニル−4−イル基、4’−ブチルビフェニル−4−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、4’−ヘキシルビフェニル−4−イル基、3−ビフェニリル基、3’−メチルビフェニル−3−イル基、3’−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、3’−エチルビフェニル−3−イル基、3’−プロピルビフェニル−3−イル基、3’−ブチルビフェニル−3−イル基、3’−tert−ブチルビフェニル−3−イル基または3’−ヘキシルビフェニル−3−イル基等が挙げられる。有機電界発光素子用材料としての性能が良い点で、4−ビフェニリル基、4’−メチルビフェニル−4−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、3−ビフェニリル基、3’−メチルビフェニル−3−イル基または3’−tert−ブチルビフェニル−3−イル基が望ましく、4−ビフェニリル基または3−ビフェニリル基がさらに好ましい。
【0041】
Ar21およびAr22で表される炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で置換されていても良いナフチル基としては、1−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、4−エチルナフタレン−1−イル基、4−プロピルナフタレン−1−イル基、4−ブチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、4−ヘキシルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、5−エチルナフタレン−1−イル基、5−プロピルナフタレン−1−イル基、5−ブチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−ヘキシルナフタレン−1−イル基、2−ナフチル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、6−エチルナフタレン−2−イル基、6−プロピルナフタレン−2−イル基、6−ブチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、6−ヘキシルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基、7−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、7−エチルナフタレン−2−イル基、7−プロピルナフタレン−2−イル基、7−ブチルナフタレン−2−イル基、7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基または7−ヘキシルナフタレン−2−イル基等が挙げられる。
【0042】
有機電界発光素子用材料としての性能が良い点で、1−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、2−ナフチル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基または7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基が望ましく、1−ナフチル基または2−ナフチル基がさらに好ましい。
【0043】
、RおよびRは、各々独立に水素原子またはメチル基を示す。中でも有機電界発光素子用材料としての性能が良い点で水素原子が好ましい。
【0044】
およびXは、各々独立にフェニレン基、ナフチレン基またはピリジレン基を示し、これらの基は炭素数1から4のアルキル基またはフッ素原子で1つ以上置換されていても良い。
【0045】
およびXで示されるこれらの基の具体例としては、例えば、1,3−フェニレン基、2−メチル−1,3−フェニレン基、4−メチル−1,3−フェニレン基、5−メチル−1,3−フェニレン基、2−tert−ブチル−1,3−フェニレン基、4−tert−ブチル−1,3−フェニレン基、5−tert−ブチル−1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、2−tert−ブチル−1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基などが挙げられる。
【0046】
また、1,4−ナフチレン基、2−メチル−1,4−ナフチレン基、5−メチル−1,4−ナフチレン基、6−メチル−1,4−ナフチレン基、2−tert−ブチル−1,4−ナフチレン基、5−tert−ブチル−1,4−ナフチレン基、6−tert−ブチル−1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2−メチル−1,5−ナフチレン基、3−メチル−1,5−ナフチレン基、4−メチル−1,5−ナフチレン基、2−tert−ブチル−1,5−ナフチレン基、3−tert−ブチル−1,5−ナフチレン基、4−tert−ブチル−1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、1−メチル−2,6−ナフチレン基、3−メチル−2,6−ナフチレン基、4−メチル−2,6−ナフチレン基、1−tert−ブチル−2,6−ナフチレン基、3−tert−ブチル−2,6−ナフチレン基、4−tert−ブチル−2,6−ナフチレン基などが挙げられる。
【0047】
また、2,4−ピリジレン基、3−メチル−2,4−ピリジレン基、5−メチル−2,4−ピリジレン基、6−メチル−2,4−ピリジレン基、3−tert−ブチル−2,4−ピリジレン基、5−tert−ブチル−2,4−ピリジレン基、6−tert−ブチル−2,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基、3−メチル−2,5−ピリジレン基、4−メチル−2,5−ピリジレン基、6−メチル−2,5−ピリジレン基、3−tert−ブチル−2,5−ピリジレン基、4−tert−ブチル−2,5−ピリジレン基、6−tert−ブチル−2,5−ピリジレン基、2,6−ピリジレン基、3−メチル−2,6−ピリジレン基、4−メチル−2,6−ピリジレン基、3−tert−ブチル−2,6−ピリジレン基、4−tert−ブチル−2,6−ピリジレン基などが挙げられる。
【0048】
また、3,5−ピリジレン基、2−メチル−3,5−ピリジレン基、4−メチル−3,5−ピリジレン基、6−メチル−3,5−ピリジレン基、2−tert−ブチル−3,5−ピリジレン基、4−tert−ブチル−3,5−ピリジレン基、6−tert−ブチル−3,5−ピリジレン基、3,6−ピリジレン基、2−メチル−3,6−ピリジレン基、4−メチル−3,6−ピリジレン基、5−メチル−3,6−ピリジレン基、2−tert−ブチル−3,6−ピリジレン基、4−tert−ブチル−3,6−ピリジレン基、5−tert−ブチル−3,6−ピリジレン基、4,6−ピリジレン基、2−メチル−4,6−ピリジレン基、3−メチル−4,6−ピリジレン基、5−メチル−4,6−ピリジレン基、2−tert−ブチル−4,6−ピリジレン基、3−tert−ブチル−4,6−ピリジレン基または5−tert−ブチル−4,6−ピリジレン基等を例示することができる。
【0049】
有機電界発光素子としての性能が良い点で、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,4−ピリジレン基、2,6−ピリジレン基、3,5−ピリジレン基、3,6−ピリジレン基または4,6−ピリジレン基が好ましい。
【0050】
Ar23およびAr24は、各々独立に炭素数1から4のアルキル基もしくはフッ素原子で1つ以上置換されていても良いピリジル基または炭素数1から4のアルキル基もしくはフッ素原子で1つ以上置換されていても良いフェニル基を示す。
【0051】
Ar23およびAr24で示される炭素数1から4のアルキル基またはフッ素原子で1つ以上置換されていても良いピリジル基としては、具体的には、2−ピリジル基、3−メチルピリジン−2−イル基、4−メチルピリジン−2−イル基、5−メチルピリジン−2−イル基、6−メチルピリジン−2−イル基、3−エチルピリジン−2−イル基、4−エチルピリジン−2−イル基、5−エチルピリジン−2−イル基、6−エチルピリジン−2−イル基、3−プロピルピリジン−2−イル基、4−プロピルピリジン−2−イル基、5−プロピルピリジン−2−イル基、6−プロピルピリジン−2−イル基、3−ブチルピリジン−2−イル基、4−ブチルピリジン−2−イル基、5−ブチルピリジン−2−イル基、6−ブチルピリジン−2−イル基、3−tert−ブチルピリジン−2−イル基、4−tert−ブチルピリジン−2−イル基、5−tert−ブチルピリジン−2−イル基などが挙げられる。
【0052】
また、6−tert−ブチルピリジン−2−イル基、3−フルオロピリジン−2−イル基、4−フルオロピリジン−2−イル基、5−フルオロピリジン−2−イル基、6−フルオロピリジン−2−イル基、3−ピリジル基、2−メチルピリジン−3−イル基、4−メチルピリジン−3−イル基、5−メチルピリジン−3−イル基、6−メチルピリジン−3−イル基、2−エチルピリジン−3−イル基、4−エチルピリジン−3−イル基、5−エチルピリジン−3−イル基、6−エチルピリジン−3−イル基、2−プロピルピリジン−3−イル基、4−プロピルピリジン−3−イル基、5−プロピルピリジン−3−イル基、6−プロピルピリジン−3−イル基、2−ブチルピリジン−3−イル基、4−ブチルピリジン−3−イル基、5−ブチルピリジン−3−イル基、6−ブチルピリジン−3−イル基、2−tert−ブチルピリジン−3−イル基、4−tert−ブチルピリジン−3−イル基などが挙げられる。
【0053】
また、5−tert−ブチルピリジン−3−イル基、6−tert−ブチルピリジン−3−イル基、2−フルオロピリジン−3−イル基、2−フルオロピリジン−4−イル基、2−フルオロピリジン−5−イル基、2−フルオロピリジン−6−イル基、4−ピリジル基、2−メチルピリジン−4−イル基、3−メチルピリジン−4−イル基、2−エチルピリジン−4−イル基、3−エチルピリジン−4−イル基、2−プロピルピリジン−4−イル基、3−プロピルピリジン−4−イル基、2−ブチルピリジン−4−イル基、3−ブチルピリジン−4−イル基、2−tert−ブチルピリジン−4−イル基、3−tert−ブチルピリジン−4−イル基、1−フルオロピリジン−4−イル基、2−フルオロピリジン−4−イル基等を例示することができる。
【0054】
Ar23およびAr24で示される炭素数1から4のアルキル基またはフッ素原子で1つ以上置換されていても良いフェニル基としては、具体的には、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基等を例示することができる。
【0055】
Ar23およびAr24は、有機電界発光素子としての性能が良い点で、各々独立に2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、フェニル基または4−tert−ブチルフェニル基が好ましい。
【0056】
トリアリジン化合物(3)は、例えば特開2008−280330号公報の(0060)〜(0144)に記載の方法で製造することが可能である。
【0057】
本発明の有機薄膜電子デバイスは、有機電界発光素子、有機薄膜太陽電池、有機薄膜トランジスタなどの多様な用途に用いることができるが、有機電界発光素子として特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明に記載の有機薄膜電子デバイスは、高効率で駆動可能であり長寿命といった特性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1で作製する単層素子の断面図である。
【図2】実施例2〜4で作製する単層素子の断面図である。
【図3】実施例5、6で作製する有機電界発光素子の断面図である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例、試験例及び参考例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
なお、蒸着膜の膜厚については、触針式膜厚測定計(DEKTAK)で測定した。DEKTAKであらかじめ膜厚を測定することで補正した水晶発振子を用いて膜厚と蒸着速度を制御した。
【0062】
本実施例において、本願発明の電荷輸送層添加剤を蒸着装置内に設置するに当たり、アンプル内に密閉するなどの処置は行っておらず、ごく短時間であるが、本願発明の電荷輸送層添加剤は大気に暴露されている。
【0063】
実施例−1
基板には、2mm幅の酸化インジウム−スズ(ITO)膜がストライプ上にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用いた。この基板をアセトン、洗剤、超純水、イソプロピルアルコールで超音波洗浄後、イソプロピルアルコールで蒸気洗浄を行った。その後、UVオゾン洗浄にて表面処理を行った。洗浄後の基板に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、断面図を図1に示すような面積4mmの単層素子を作製した。
【0064】
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板11を導入し、5.0×10−4Paまで減圧した。その後、前記ガラス基板11上のITOストライプに重なるようにマスクを配し、電極層12としてアルミニウムを0.3nm/秒の成膜速度で50nm成膜した。さらに有機層として、電子輸送層13を成膜し、その後、電子中層14と陰極層15を順次成膜した。電子輸送層13としては、2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−[4’−(2−ピリジル)ビフェニリル−4−イル]−1,3,5−トリアジンと1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデンを90:10(質量%)の割合で100nmの膜厚で真空蒸着した。なお、各有機材料は温度制御したアルミナルツボにより成膜し、加熱した2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−[4’−(2−ピリジル)ビフェニリル−4−イル]−1,3,5−トリアジンの成膜速度が0.1nm/秒になるように真空蒸着した。最後に、ITOストライプと直行するようにメタルマスクを配置し、電子注入層14と陰極層15を成膜した。電子注入層14はフッ化リチウムを0.5nmの膜厚で、陰極層15はアルミニウムを100nmの膜厚で真空蒸着した。 作製した単層素子は、コンピューター制御されたソースメーター(商品名「2400シリーズソースメーター」、keithley社製)を用いて、ITO電極側を陽極として電流密度−電圧特性を測定した。作製した単層素子の6Vにおける電流密度は975mA/cmであった。
【0065】
比較例―1
実施例―1の電子輸送層13に代えて、2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−[4’−(2−ピリジル)ビフェニリル−4−イル]−1,3,5−トリアジンだけを100nmの膜厚で真空蒸着した単層素子を実施例―1と同様に作製した。作製した素子の6Vにおける電流密度は854mA/cmであった。
【0066】
実施例―2
基板には、2mm幅の酸化インジウム−スズ(ITO)膜がストライプ上にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用いた。この基板をアセトン、洗剤、超純水、イソプロピルアルコールで超音波洗浄後、イソプロピルアルコールで蒸気洗浄を行った。その後、UVオゾン洗浄にて表面処理を行った。洗浄後の基板に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、断面図を図2に示すような面積4mmの単層素子を作製した。
【0067】
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板21を導入し、5.0×10−5Paまで減圧した。その後、前記ガラス基板21上に電子輸送層22を0.1nm/秒の成膜速度で30nm成膜した。さらに電子輸送層23を成膜し、その後、電子注入層24と陰極層25を順次成膜した。電子輸送層22としては、2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンを30nmの膜厚で真空蒸着した。電子輸送層23としては、2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンと1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデンを98:2(質量%)の割合で70nmの膜厚で真空蒸着した。なお、各有機材料は温度制御したアルミナルツボにより成膜し、加熱した2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンの成膜速度が0.1nm/秒になるように真空蒸着した。最後に、ITOストライプと直交するようにメタルマスクを配置し、電子注入層24と陰極層25を成膜した。電子注入層24はフッ化リチウムを1.0nmの膜厚で、陰極層25はアルミニウムを100nmの膜厚で真空蒸着した。
【0068】
作製した単層素子は、コンピューター制御されたソースメーター(商品名「2400シリーズソースメーター」、keithley社製)を用いて、ITO電極側を陽極として電流密度−電圧特性を測定した。
【0069】
作製した素子の5Vにおける電流密度は16.5mA/cmであった。
【0070】
比較例―2
実施例―2の電子輸送層23において、2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンと1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデンを98:2(質量%)の割合で70nmの膜厚で真空蒸着する代わりに、2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンのみを70nmの膜厚で真空蒸着した、単層素子を、実施例―2と同様の方法で作製し、評価した。
【0071】
作製した素子の5Vにおける電流密度は12.1mA/cmであった。
【0072】
実施例―3
実施例―2の電子輸送層22において、2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンを30nmの膜厚で真空蒸着する代わりに4’,4’’’’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’’−テルピリジン)を30nmの膜厚で真空蒸着し、さらに電子輸送層23において、2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンと1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデンを98:2(質量%)の割合で70nmの膜厚で真空蒸着する代わりに、4’,4’’’’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’’−テルピリジン)と1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデンを98:2(質量%)の割合で70nmの膜厚で真空蒸着した単層素子を実施例―2と同様の方法で作製し、評価した。
【0073】
作製した素子の5Vにおける電流密度は0.50mA/cmであった。
【0074】
比較例―3
実施例―3の電子輸送層23において、4’,4’’’’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’’−テルピリジン)と1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデンを98:2(質量%)の割合で70nmの膜厚で真空蒸着する代わりに、4’,4’’’’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’’−テルピリジン)のみを70nmの膜厚で真空蒸着した単層素子を実施例―3と同様の方法で作製し、評価した。
【0075】
作製した素子の5Vにおける電流密度は0.021mA/cmであった。
【0076】
実施例―4
基板には、2mm幅の酸化インジウム−スズ(ITO)膜がストライプ上にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用いた。この基板をアセトン、洗剤、超純水、イソプロピルアルコールで超音波洗浄後、イソプロピルアルコールで蒸気洗浄を行った。その後、UVオゾン洗浄にて表面処理を行った。洗浄後の基板に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、断面図を図3に示すような面積4mmの有機電界発光素子を作製した。
【0077】
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板31を導入し、5.0×10−4Paまで減圧した。その後、前記ガラス基板31上の有機層として、正孔注入層32、正孔輸送層33、発光層34、電子輸送層35を順次成膜し、その後、陰極36を成膜した。正孔注入層32としては三酸化モリブデン(MoO)を0.75nmの膜厚で真空蒸着した。正孔輸送層33としては、N,N’―ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α―NPD)を90nmの膜厚で真空蒸着した。発光層34としては、トリス(8−キノイノラト)アルミニウム(III)(Alq)を30nmの膜厚で真空蒸着した。電子輸送層35としては2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−[4’−(2−ピリジル)ビフェニリル−4−イル]−1,3,5−トリアジンと1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデンを90:10(質量%)の割合で40nmの膜厚で真空蒸着した。なお、各層の材料は温度制御したアルミナルツボにより成膜し、加熱したMoOを0.05nm/秒、α―NPDを0.1nm/秒、Alqを0.1nm/秒、2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−[4’−(2−ピリジル)ビフェニリル−4−イル]−1,3,5−トリアジンの成膜速度が0.1nm/秒になるように真空蒸着した。最後に、ITOストライプと直交するようにメタルマスクを配置し、陰極層36を成膜した。陰極層36は、フッ化リチウムとアルミニウムをそれぞれ0.5nmと100nmの膜厚で真空蒸着し、2層構造とした。
【0078】
作製した有機電界発光素子は、コンピューター制御されたソースメーター(商品名「2400シリーズソースメーター」、keithley社製)を用いて、電流密度−電圧特性を測定した。
【0079】
発光特性として、電流密度50mA/cmを流した時の電圧(V)、輝度(cd/m)、電流効率(cd/A)、電力効率(lm/W)を測定して、連続点灯時の輝度が30%減少する時間を測定した。
【0080】
作製した素子の測定値は6.4V、1835cd/m、3.8cd/A、1.8lm/Wであった。またこの素子の輝度が30%減少する時間は559時間であった。
【0081】
比較例―4
実施例―4の電子輸送層35において、2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−[4’−(2−ピリジル)ビフェニリル−4−イル]−1,3,5−トリアジンと1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデンを90:10(質量%)の割合で40nmの膜厚で真空蒸着する代わりに、2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−[4’−(2−ピリジル)ビフェニリル−4−イル]−1,3,5−トリアジンのみを40nmの膜厚で真空蒸着した有機電界発光素子を実施例―4と同様の方法で作製し、評価した。
【0082】
作製した素子の測定値は6.7V、1815cd/m、3.7cd/A、1.7lm/Wであった。またこの素子の輝度が30%減少する時間は483時間であった。
【0083】
実施例―5
実施例―4の電子輸送層35において、2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−[4’−(2−ピリジル)ビフェニリル−4−イル]−1,3,5−トリアジンと1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデンを90:10(質量%)の割合で40nmの膜厚で真空蒸着する代わりに、2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンと1,3−ビス(2,7−ジイソプロピルナフタレン−1−イル)イミダゾール−2−イリデンを95:5(質量%)の割合で40nmの膜厚で真空蒸着し、陰極層36としてアルミニウムのみを100nmの膜厚で真空蒸着した有機電界発光素子を実施例―4と同様の方法で作製し、評価した。
【0084】
作製した素子の測定値は12.2V、1827cd/m、3.8cd/A、1.0lm/Wであった。またこの素子の輝度が30%減少する時間は173時間であった。
【0085】
比較例―5
実施例―5の電子輸送層35において、2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンと1,3−ビス(2,7−ジイソプロピルナフタレン−1−イル)イミダゾール−2−イリデンを95:5(質量%)の割合で40nmの膜厚で真空蒸着する代わりに2,4−ジフェニル−6−[4,4’’−ビス(2−ピリジル)−[1,1’:3’,1’’]−テルフェニル−5’−イル]−1,3,5−トリアジンのみを40nmの膜厚で真空蒸着した有機電界発光素子を実施例―5と同様の方法で作製し、評価した。
【0086】
作製した素子の測定値は13.8V、1932cd/m、3.7cd/A、0.9m/Wであった。またこの素子の輝度が30%減少する時間は63時間であった。
【0087】
上記の実施例、比較例から分かるように本発明記載のカルベン化合物を含有させることで有機電界発光素子の駆動電圧が低下するとともに長寿命化しており、優れた有機電界発光特性を示すことが明らかである。
【符号の説明】
【0088】
11.ITO透明電極付きガラス基板
12.電極層
13.電子輸送層
14.電子注入層
15.陰極層
21.ITO透明電極付きガラス基板
22.電子輸送層
23.電子輸送層
24.電子注入層
25.陰極層
31.ITO透明電極付きガラス基板
32.正孔注入層
33.正孔輸送層
34.発光層
35.電子輸送層
36.陰極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間に少なくとも一層の電子輸送層または電極界面層を有する有機薄膜電子デバイスであって、電子輸送層または電極界面層の少なくとも一層にカルベン化合物を0.1〜70重量%含有することを特徴とする有機薄膜電子デバイス。
【請求項2】
前記カルベン化合物が一般式(1)で示されるカルベン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜電子デバイス。
【化1】

(式中、CとCは単結合あるいは二重結合によって直接結合している炭素原子を表し、前記炭素原子は水素原子で置換されていることを表す。Ar及びArは各々独立に炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【請求項3】
前記電子輸送層または電極界面層がさらにトリアジン化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜電子デバイス。
【請求項4】
前記トリアジン化合物が一般式(2)で示されるトリアジン化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜電子デバイス。
【化2】

(式中、Ar11、Ar12およびAr13は、各々独立に炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよい、フェニル基、ピリジル基、ピリジルフェニル基またはビフェニリル基を示す。Ar11、Ar12およびAr13は同一、または相異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記トリアジン化合物が一般式(3)で示されるトリアジン化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜電子デバイス。
【化3】

(式中、Ar21およびAr22は、各々独立にフェニル基、ナフチル基またはビフェニリル基を示し、これらの基は炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で1つ以上置換されていても良い。R、RおよびRは、各々独立に水素原子またはメチル基を示す。XおよびXは、各々独立にフェニレン基、ナフチレン基またはピリジレン基を示し、これらの基は炭素数1から4のアルキル基またはフッ素原子で1つ以上置換されていても良い。pおよびqは、各々独立に0から2の整数を示す。pが2のとき、連結するXは同一または相異なっていても良い。qが2のとき、連結するXは同一または相異なっていても良い。Ar23およびAr24は、各々独立に炭素数1から4のアルキル基もしくはフッ素原子で1つ以上置換されていても良いピリジル基または炭素数1から4のアルキル基もしくはフッ素原子で1つ以上置換されていても良いフェニル基を示す。)
【請求項6】
有機電界発光素子として用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機薄膜電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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