説明

カルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体の製造方法

【課題】 粒子径が均一なカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】 カルボキシアルキルセルロース(誘導体)(A)を、pHを7.5〜14とした水と水溶性有機溶媒(B)との混合溶媒に溶解させた溶液に、特定の構造を有するアンモニウム化合物(C)の存在下にプロトン酸(D)を加えてpHを1〜7とすることにより、前記(A)を粒子化させた後、前記(B)を除去することを特徴とするカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体を製造する方法に関し、詳しくは、均一な粒子径のカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロース誘導体粒子を水に分散させるには、溶媒に溶解させたセルロース誘導体を、界面活性剤や可塑剤等の添加剤を含む水中に投入してホモジナイザー等で強制乳化した後、溶媒を蒸留により留去する方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、均一なせん断を加えることが難しいために粒子径分布が広くなることに加え、溶媒を留去する際に粒子同士の合着が進行しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第1672452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、粒子径が均一なカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、カルボキシアルキルセルロース(誘導体)(A)を、pHを7.5〜14とした水と水溶性有機溶媒(B)との混合溶媒に溶解させた溶液に、一般式(1)で表される化合物(C)の存在下にプロトン酸(D)を加えてpHを1〜7とすることにより、前記(A)を粒子化させた後、前記(B)を除去することを特徴とするカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体の製造方法である。
【化1】

[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、炭素数が1〜22の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基、R4は炭素数が8〜22の直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数が7〜22のアリールアルキル若しくは.アリールアルケニル基、X-はプロトン酸から1個のプロトンを除いた1価のアニオンを表す。]
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カルボキシアルキルセルロース(誘導体)が溶解している水溶液のpHを変化させて中和晶析させることで粒子化できるため、均一な粒子径のカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体が得られる。また、一般式(1)で表される化合物(C)を共存させることで粒子径を調整できる上、溶媒を除去する際の粒子同士の合着を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、カルボキシアルキルセルロース(誘導体)とは、カルボキシアルキルセルロース又はカルボキシアルキルセルロース誘導体を意味する。
カルボキシアルキルセルロースとしては例えば、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシエチルセルロース等のアルキルの炭素数が1〜5のカルボキシアルキルセルロースが挙げられる。
カルボキシアルキルセルロース誘導体としては例えば、前記カルボキシアルキルセルロースの水酸基の水素が炭素数1〜8のアルキル基で置換されたもの(カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、カルボキシプロピルメチルセルロース、カルボキシエチルエチルセルロース、カルボキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルアミルセルロース及びカルボキシエチルブチルセルロース等)が挙げられる。
これらの内、pHの変動と共に水への溶解性が変動し易いという観点から、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース及びカルボキシエチルブチルセルロースが好ましい。
【0008】
本発明の製造方法で用いることができる水溶性有機溶媒(B)としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びグライム系溶媒が挙げられる。
尚、本発明において水溶性とは、25℃で中性の水に対し1重量%以上溶解することをいう。
【0009】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール及びt−ブタノール等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。
グライム系溶媒としては、エチレングリコールジメチルエーテル(グライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。
【0010】
これらの有機溶媒の内、カルボキシアルキルセルロース(誘導体)との相溶性の観点から好ましいのは、ケトン系溶媒及びグライム系溶媒であり、更に好ましいのは、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルである。
【0011】
カルボキシアルキルセルロース(誘導体)(A)と水溶性有機溶媒(B)の重量比[(A)/(B)]は、水性分散体中の(A)の粒子径及び水性分散体の粘度の観点から、好ましくは0.1/1〜1/1、更に好ましくは0.2/1〜0.8/1である。
【0012】
水溶性有機溶媒(B)と水の重量比[(B)/水]は、カルボキシアルキルセルロース(誘導体)(A)との相溶性の観点から、好ましくは1/50〜1/2、更に好ましくは1/20〜1/4である。
【0013】
一般式(1)で表される化合物(C)におけるR1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数が1〜22の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基を表し、直鎖の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基及びヤシ油由来のアルコールから水酸基を除いたアルキル基(以下、ヤシ油アルキル基と略記)等が挙げられ、分岐の脂肪族炭化水素基としては、イソプロピル基、2−エチルヘキシル基が挙げられる。
これらの内、粒子の分散安定性の観点から、炭素数が1〜18の直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、更に好ましいのは炭素数が1〜14の直鎖の脂肪族炭化水素基である。
【0014】
4は、炭素数が8〜22の直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数が7〜22のアリールアルキル若しくはアリールアルケニル基を表す。
炭素数が8〜22の直鎖の脂肪族炭化水素基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヤシ油アルキル基及びオレイル基等が挙げられ、分岐の脂肪族炭化水素基としては、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。これらの内、粒子の分散安定性の観点から、炭素数が8〜18の直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0015】
炭素数が7〜22のアリールアルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基等、アリールアルケニル基としてはスチリル基及びシンナミル基等が挙げられる。これらの内、粒子の分散安定性の観点から、炭素数が7〜18のアリールアルキル基が好ましい。
【0016】
一般式(1)においてR4が脂肪族炭化水素基の場合のカチオンの具体例としては、1つの長鎖アルキル基(炭素数8〜22)を有するもの(トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム、トリメチルヤシ油アルキルアンモニウム、トリメチル−2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルエチルドデシルアンモニウム、ジメチルエチルテトラデシルアンモニウム、ジメチルエチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルエチルオクタデシルアンモニウム、ジメチルエチルヤシ油アルキルアンモニウム、ジメチルエチル−2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム、メチルジエチルドデシルアンモニウム、メチルジエチルテトラデシルアンモニウム、メチルジエチルヘキサデシルアンモニウム、メチルジエチルオクタデシルアンモニウム、メチルジエチルヤシ油アルキルアンモニウム、メチルジエチル−2−エチルヘキシルアンモニウム等)、2つの長鎖アルキル基(炭素数8〜22)を有するもの(ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム及びジメチルジドデシルアンモニウム等)、1つの長鎖アルケニル基(炭素数8〜22)を有するもの(トリメチルオレイルアンモニウム、ジメチルエチルオレイルアンモニウム及びメチルジエチルオレイルアンモニウム等)が挙げられる。
これらの内、粒子の分散安定性の観点から好ましいのは、ジメチルジデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、メチルジエチルドデシルアンモニウム、及びメチルジエチルヤシ油アルキルアンモニウムである。
【0017】
また、一般式(1)においてR4がアリールアルキル基の場合のカチオンの具体例としては、例えば、ジメチルデシルベンジルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、ジメチルテトラデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヘキサデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム、ジメチルオレイルベンジルアンモニウム及びジメチル−2−エチルヘキシルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
これらの内、粒子の分散安定性の観点から好ましいのは、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム、ジメチルオレイルベンジルアンモニウム及びジメチル−2−エチルヘキシルベンジルアンモニウムが挙げられる。
【0018】
上記で例示した一般式(1)のカチオンの内、分散安定性の観点から更に好ましいのは、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム、ジメチルオレイルベンジルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム及びジメチルジステアリルアンモニウムである。
【0019】
一般式(1)におけるX-は、プロトン酸から1個のプロトンを除いた1価のアニオンを表す。X-を生成するプロトン酸としては、無機酸及び炭素数1〜22の有機酸が挙げられ、pH調整のし易さ及び分散安定性の観点から、1価の無機酸又は有機酸が好ましい。
【0020】
1価の無機のプロトン酸からプロトンを除いた無機アニオンとしては、Cl-、BO33-、F-、PF6-、BF4-、AsF6-、SbF6-、ClO4-、AlF4-、AlCl4-、TaF6-、NbF6-、SiF62-及びCN-等が挙げられる。
1価の有機のプロトン酸からプロトンを除いた有機アニオンとしてはCH3SO4-、RfCOO-、RfSO3-(Rfは炭素数1〜12のフルオロアルキル基)及び1価のカルボン酸からプロトンを除いたアニオン等が挙げられる。
これらの内、分散安定性と粒子径制御の観点から好ましいのは1価の無機のプロトン酸からプロトンを除いた無機アニオンであり、特に好ましいのはCl-である。
【0021】
一般式(1)で表される化合物(C)の添加量は、カルボキシアルキルセルロース(誘導体)(A)に対して、通常0.1〜20重量%であり、分散安定性と粒子径制御の観点から好ましくは1〜15重量%である。
【0022】
水溶性有機溶媒(B)と水との混合溶媒のpHを7.5〜14にするためには、アルカリを使用する。
アルカリとしては、固状の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びこれらのの水溶液が挙げられ、混合時の発熱量の観点から、水酸化ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液が好ましい。
pHの調整方法としては、例えば水溶性有機溶媒(B)と水との混合溶媒を攪拌下にアルカリを加え、pH計で確認しながら所定のpHに調整する方法が挙げられる。プロトン酸(D)を加えてpHを1〜7とする際、必要とする(D)の量を少なくできるという観点から、アルカリで調整するpHは好ましくは7.5〜12、更に好ましくは7.5〜10である。
【0023】
本発明におけるプロトン酸(D)としては、無機酸でも有機酸でもよい。
無機酸としては、硝酸、硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、燐酸、亜燐酸、次燐酸、メタ燐酸、次亜燐酸、アミド燐酸、炭酸、重炭酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、アルミン酸、アミド硫酸、ヒドラジノ硫酸、スルファミン酸が挙げられる。
また、有機酸としては、イソ吉草酸、イソ酪酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、乳酸、酢酸、酪酸、クロトン酸、アゼライン酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アニス酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、ナフトエ酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、アスパラギン、アスパラギン酸、4−アミノ酪酸、アラニン、アルギニン、イソロイシン、グリシン、グルタミン酸、システイン、セリン、バリン、ヒスチジン、メチオニン、ロイシン、安息香酸、安息香酸−2−燐酸、アデノシン−2’−燐酸、フェノール−3−燐酸、ガラクトース−1−燐酸、ベンゼンホスホン酸、2−アミノエチルホスホン酸、2−ブロム−p−トリルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、t−ブチルホスフィン酸、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、4−アミノ−m−クレゾール、2,4−ジニトロフェノール、o−ブロモフェノール、p−フェノールスルホン酸、p−アセチルフェノール、アスコルビン酸、レダクチン、3−ヒドロキシフェニルホウ酸、3−アミノフェニルホウ酸、β−フェニルエチルボロン酸、ヒドラジン−N,N−ジ酢酸、ヒドラジン−N,N’−ジ酢酸が挙げられる。
これらの内、中和時の発熱量及びpH調整のし易さの観点から、硫酸、燐酸及び酢酸が好ましい。
【0024】
カルボキシアルキルセルロース(誘導体)(A)を、pHを7.5〜14とした水と水溶性有機溶媒(B)との混合溶媒に溶解させた溶液に、一般式(1)で表される化合物(C)の存在下にプロトン酸(D)を加えてpHを1〜7とすることにより、前記(A)を粒子化させた後、前記(B)を除去することにより、均一な粒子径を有するカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体を得ることができる。
【0025】
カルボキシアルキルセルロース(誘導体)(A)を、pHが7.5〜14の水と水溶性有機溶媒(B)との混合溶媒に溶解させる方法としては、例えばpHが7.5〜14の水と水溶性有機溶媒(B)との混合溶媒をよく攪拌しながら、必要に応じて30〜80℃に加熱して(A)を加える方法等が挙げられる。(B)の沸点以上にまで加熱して溶解させる際は、(B)を環流させながら溶解させるか、耐圧容器内で溶解させる。
【0026】
(C)の存在下に(D)を加えてpHを1〜7として粒子化させる方法としては、例えば(A)が溶解した水と(B)との混合溶媒を、必要に応じて30〜80℃に加熱して(C)を加えて溶解させた後、よく攪拌しながら必要に応じて−5〜80℃に加熱または冷却してプロトン酸(D)を加え、pH計で確認しながら所定のpHに調整する方法等が挙げられる。好ましいpHは用途によって異なるが、分散安定性の観点から、好ましくは2〜6、更に好ましくは3〜5である。
【0027】
上記工程で得られた分散体から有機溶媒(B)を除去する方法としては、加熱若しくは減圧又はこれらの併用により(B)を留去する方法、ろ過又は膜分離ししながら、透過液量に相当する水を連続的に分散体に供給する方法等が挙げられる。特にろ過又は膜分離する方法は、分散体中の化合物(C)の量を低減させ、分散体の純度を更に向上させることができるので好ましい。
【0028】
本発明の製造方法により得られる水性分散体中のカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の平均粒子径は、0.1〜500μmであり、水性分散体の粘度と分散性の観点から、好ましくは0.3〜50μmである。本発明における平均粒子径とはメジアン径をいう。メジアン径は粒度分布において体積の50%になる粒子径を表す。プロトン酸(D)を加える際、pHを1〜7の範囲内で高めに調整すると、カルボキシアルキルセルロース(誘導体)のカルボキシル基の内、プロトンが電離してできるカルボキシラートアニオン濃度が高くなることから、自己乳化性が高くなって平均粒子径が小さくなり、pHを低めに調整すると平均粒子径が大きくなる。
【0029】
また、本発明における粒度分布とは粒子径の変動係数をいう。粒子径の変動係数が小さいほど粒度分布は狭い。本発明の製造方法により得られる水性分散体中のカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の粒子径の変動係数は3〜60%であり、分散性の観点から、好ましくは3〜40%である。プロトン酸(D)を加える際、酸を急激に加えると粒子化が不均一に進行し、粒子内部が十分に中和されていない粗大粒子が多く生成して変動係数が大きくなりやすくなるため、酸を急激に加えず、十分な攪拌下に加えることで変動係数を小さくできる。
【0030】
粒子径及び粒度分布の測定法としては、電子顕微鏡測定、沈降法、エレクトロゾーン法、ふるい法、動的光散乱法、及びレーザー回折・散乱法があるが、測定粒度範囲の適合性より、レーザー回折・散乱法での測定が好ましい。
【0031】
本発明の水性分散体は、必要により添加剤として、消泡剤、キレート剤、紫外線吸収剤、殺虫剤、香料、色素、殺菌剤、カビ駆除剤、腐蝕防止剤、レベリング調整剤及びレオロジー調整剤からなる群から選ばれる1種または2種以上を、水性分散体に対して0.1〜15重量%の範囲で加えることができる。
【0032】
本発明の製造方法で得られるカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体を、固液分離後、乾燥することで、粒子径が均一な粉体とすることができる。固液分離は遠心分離、自然沈降分離、自然浮上分離、濾過及び膜分離等の方法で行うことができる。
【0033】
本発明の製造方法により得られるカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体の用途は特に限定されないが、例えば本品のpH変化による水への溶解性が変化する性質やフィルム形成能が好適に用いられる用途(医薬品等の薬剤の添加剤、特に腸溶性のコーティング剤、苦みマスキング剤及び頭髪用セット剤等)に使用できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に規定しない限り、「部」は「重量部」、%は重量%を意味する。
尚、実施例における平均粒子径、粒子径の変動係数(粒度分布)及び有機溶媒の残存量の測定法は以下の通りである。
【0035】
<平均粒子径及び粒子径の変動係数>
平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により、以下の条件で測定した。
装置 :堀場製作所製 LA−750
測定方式 :バッチ式セル方式
【0036】
<有機溶媒の残存量>
水性分散体中の有機溶媒の残存量は、遠心分離機により水性分散体中の粒子を取り除いた水性液について、ガスクロマトグラフを用い、内部標準法により以下の条件で測定し、別途作成した検量線を用いて定量した。
装置 : 島津製作所製 GC17−A
使用カラム: DB WAX 0.25mm×30m
【0037】
<実施例1>
水1230部とメチルエチルケトン154部の混合溶媒にジメチルジステアリルアンモニウムクロライド4部及び48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21部を溶かした溶液(pH12)をディスパーサーで攪拌しながら、カルボキシメチルエチルセルロース46部を加え、均一に溶解させた。この溶液を20℃に保ち、攪拌しながら30重量%燐酸水溶液179部を徐々に滴下してカルボキシメチルエチルセルロース粒子を析出、分散させた。分散液のpHは4であった。得られた分散体を、膜孔径50nmの限外ろ過膜を用いて十字流ろ過方式で液温を30℃に保ちながら6時間連続循環させ、ろ過により透過液として減少したメチルエチルケトンと水の混合溶媒の液量と等量の水を連続的に加えることで、カルボキシメチルエチルセルロース水性分散体を得た。得られた水性分散体中のカルボキシメチルエチルセルロースの平均粒子径、粒子径の変動係数及び有機溶媒の残存量を表1に示す。
【0038】
<実施例2>
水1230部とメチルエチルケトン154部の混合溶媒にジメチルジステアリルアンモニウムクロライド4部、及び48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21部を溶かした溶液(pH12)をディスパーサーで攪拌しながら、カルボキシメチルエチルセルロース46部を加え、均一に溶解させた。この溶液を20℃に保ち、攪拌しながら30重量%燐酸水溶液179部を徐々に滴下してカルボキシメチルエチルセルロース粒子を析出、分散させた。分散液のpHは4であった。得られた分散体を、撹拌棒及び温度計をセットした容器に加え、圧力約60kPaの減圧下、80℃で12時間加熱してメチルエチルケトンを留去後、留去したメチルエチルケトンと等量の水を加えることにより、カルボキシメチルエチルセルロース水性分散体を得た。得られた水性分散体中のカルボキシメチルエチルセルロースの平均粒子径、粒子径の変動係数及び有機溶媒の残存量を表1に示す。
【0039】
<実施例3>
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライドの仕込量を1部とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロース水性分散体を得た。得られた水性分散体中のカルボキシメチルエチルセルロースの平均粒子径、粒子径の変動係数及び有機溶媒の残存量を表1に示す。
【0040】
<実施例4>
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライドの仕込量を6部とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロース水性分散体を得た。得られた水性分散体中のカルボキシメチルエチルセルロースの平均粒子径、粒子径の変動係数及び有機溶媒の残存量を表1に示す。
【0041】
<比較例1>
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド4部の代わりにラウリル硫酸ナトリウム4部とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロース水性分散体を得た。得られた水性分散体中のカルボキシメチルエチルセルロースの平均粒子径、粒子径の変動係数及び有機溶媒の残存量を表1に示す。
【0042】
<比較例2>
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライドを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロース水性分散体を得た。得られた水性分散体中のカルボキシメチルエチルセルロースの平均粒子径、粒子径の変動係数及び有機溶媒の残存量を表1に示す。
【0043】
<比較例3>
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド4部の代わりにラウリル硫酸ナトリウム4部とした以外は実施例2と同様にして、カルボキシメチルエチルセルロース水性分散体を得た。得られた水性分散体中のカルボキシメチルエチルセルロースの平均粒子径、粒子径の変動係数及び有機溶媒の残存量を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
以上の結果から明らかな通り、本発明の製造方法により、均一な粒子径のカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によって得られる均一な粒子径のカルボキシアルキルセルロース(誘導体)は、pHの変動と共に水への溶解性が変動する性質やフィルム形成能を有しており、医薬品等の薬剤の添加剤、特に腸溶性のコーティング剤、苦みマスキング剤及び頭髪用セット剤として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシアルキルセルロース(誘導体)(A)を、pHを7.5〜14とした水と水溶性有機溶媒(B)との混合溶媒に溶解させた溶液に、一般式(1)で表される化合物(C)の存在下にプロトン酸(D)を加えてpHを1〜7とすることにより、前記(A)を粒子化させた後、前記(B)を除去することを特徴とするカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の水性分散体の製造方法。
【化1】

[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、炭素数が1〜22の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基、R4は炭素数が8〜22の直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数が7〜22のアリールアルキル若しくは.アリールアルケニル基、X-はプロトン酸から1個のプロトンを除いた1価のアニオンを表す。]
【請求項2】
前記(A)の重量に基づいく前記(C)の量が、0.1〜20重量%である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるX-が、1価の無機のプロトン酸からプロトンを除いた無機アニオンである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
水性分散体中のカルボキシアルキルセルロース(誘導体)の平均粒子径が0.1〜500μmである請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−195866(P2010−195866A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39670(P2009−39670)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】