説明

カルボキシメチルセルロースの製造方法

【課題】水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】原料パルプを粉砕機により粉砕処理した後に、得られた粉砕処理物中のセルロースを、モノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤と40〜100℃で反応させるカルボキシメチルセルロースの製造方法であって、該モノハロ酢酸もしくはその塩、及び/又はアルカリ剤を、該原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に該原料パルプと混合する工程を有する、カルボキシメチルセルロースの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシメチルセルロースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう)は、増粘剤、分散剤、乳化剤、保護コロイド剤、安定化剤等として広範に利用されている。このCMCは、工業的には、セルロースを大量のアルカリ水で処理してアルカリセルロースとして活性化(アルセル化)した後、含水有機溶媒中に分散させてモノハロ酢酸と反応させる溶媒法により製造されている。
特許文献1には、カルボキシメチルセルロース又はその塩類の製造方法であって、セルロースとアルカリとを温度20〜50℃で反応させてアルカリセルロースを生成させる工程と、アルカリセルロースとモノクロロ酢酸との反応によりカルボキシメチルセルロースを生成させる工程とで構成されているカルボキシメチルセルロース又はその塩類の製造方法により、1重量%水溶液の粘度が20〜1000(mPa・s)であるカルボキシメチルセルロースが開示されている。
特許文献2には、結晶化度が50%以下の低結晶性の粉末セルロースを、塩基の存在下、有機ハライド化合物と反応させる、セルロース誘導体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−34301号公報
【特許文献2】国際公開2009/063856号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された方法では、水溶液粘度の高い、増粘剤として有用なカルボキシメチルセルロースを簡便に製造することが難しい。
本発明は、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、原料パルプを粉砕機により粉砕処理した後に、得られた粉砕処理物中のセルロースを、モノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤と40〜100℃で反応させるカルボキシメチルセルロースの製造方法であって、該モノハロ酢酸もしくはその塩、及び/又はアルカリ剤を、該原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に該原料パルプと混合する工程を有する、カルボキシメチルセルロースの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法によれば、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、原料パルプを粉砕機により粉砕処理した後に、得られた粉砕処理物中のセルロースを、モノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤と40〜100℃で反応させるカルボキシメチルセルロースの製造方法であって、該モノハロ酢酸もしくはその塩、及び/又はアルカリ剤を、該原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に原料パルプと混合することにより、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを効率よく、且つ簡便に製造できる。
これは、モノハロ酢酸もしくはその塩、及び/又はアルカリ剤を、該原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に原料パルプと混合させることで、これらのモノハロ酢酸もしくはその塩、及び/又はアルカリ剤が原料パルプの粉砕衝撃の緩衝剤として働いて、原料パルプを構成するセルロースの重合度の低下を抑制しつつ原料パルプを粉砕することができ、その結果、得られるカルボキシメチルセルロースの水溶液粘度を高くすることができると考えられる。更に、原料パルプを構成するセルロースを構成する無水グルコース単位と、モノハロ酢酸もしくはその塩、及び/又はアルカリ剤との接触率を高めることができ、反応効率も向上すると考えられる。
【0008】
本発明は、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを製造する観点から、モノハロ酢酸もしくはその塩、及び/又はアルカリ剤を、原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に該原料パルプと混合する工程を有するが、下記工程1と工程2とを有することが好ましい。
工程1:原料パルプをモノハロ酢酸又はその塩と混合し、粉砕機により粉砕処理する工程(以下、「粉砕処理工程」ともいう)
工程2:工程1で得られた粉砕処理物中のセルロースを、モノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤と40〜100℃で反応させ、カルボキシメチルセルロースを得る工程(以下、「反応工程」ともいう)
以下、本発明の各工程、及び用いる各成分について詳細に説明する。
【0009】
[原料]
(原料パルプ)
本発明に用いることができる原料パルプとしては、コットンリンター、稲わらパルプ、木材パルプが挙げられ、具体的には、リンターパルプ、針葉樹材を主としたN材パルプ、広葉樹材を主としたL材パルプ等を用いることができる。
原料パルプの形状に特に限定はないが、本発明の製造方法においては、原料パルプの重合度が高いほど、高重合度のカルボキシメチルセルロースを得ることができる。一方、原料パルプの重合度は、粉砕等の処理によって低下する。よって、高重合度のカルボキシメチルセルロースを得る観点から、原料パルプの形状はチップ状が好ましい。原料パルプの形状をチップ状にするには、シュレッダー(例えば、株式会社明光商会製、商品名:「MSX2000−IVP440F」)やシートペレタイザー(例えば、株式会社ホーライ製、商品名:「SGG−220−3X3」)を用いることができる。チップの径としては、長径(1片のチップの内、最長の長さ)の100個の数平均で、0.6〜100mmが好ましく、0.8〜30mmが更に好ましく、1〜10mmがより更に好ましい。
原料パルプを構成するセルロースの平均重合度は、高い水溶液粘度を発現する観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは1200以上、更に好ましくは1500以上である。平均重合度の上限は特に制限されないが、入手の容易さの観点から5000以下が好ましい。
なお、本発明においてセルロースの平均重合度とは、粘度平均重合度のことをいい、具体的には、実施例に記載の方法で測定される。
【0010】
セルロースには幾つかの結晶構造が知られており、アモルファス部と結晶部の全量に対する結晶部の割合から、一般に結晶化度が算出される。
本発明において、「セルロースの結晶化度」とは、天然セルロースのI型結晶構造に由来する結晶化度を意味し、粉末X線結晶回折スペクトル法による回折強度値からSegal法により算出したもので、下記式(1)により定義される。
セルロースの結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
通常、パルプの結晶化度を低下させる処理を行うと重合度も低下するため、平均重合度が高く結晶化度の低いパルプを入手することは困難である。よって、原料パルプを構成するセルロースの結晶化度は、高い重合度を維持する観点から、好ましくは50%を超え95%以下、より好ましくは60〜95%、更に好ましくは70〜95%、より更に好ましくは75〜95%である。
【0011】
(アルカリ剤)
本発明に用いられるアルカリ剤は、効率的に原料パルプを構成するセルロース分子の水酸基をアルコラート化する観点から、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましい。アルカリ金属水酸化物の具体例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属水酸化物、更に好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
アルカリ剤の形態に限定はない。アルカリ剤としてアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を用いる場合は、操作上の観点から、水溶液を用いることが好ましい。
アルカリ剤を水溶液の形態で添加する場合の濃度に特に限定はないが、後述する反応工程は水分量の影響を受けるため、アルカリ剤添加後の水分量が反応工程の好適な水分量を超えた場合は、脱水等の操作を行うことが望まれる。よって、アルカリ剤水溶液の濃度は10質量%以上であることが好ましい。一方、入手の容易さの観点から、アルカリ剤水溶液の濃度は75質量%以下が好ましい。以上の観点から、アルカリ剤水溶液の濃度は10〜75質量%が好ましく、20〜65質量%がより好ましく、30〜55質量%が更に好ましい。
【0012】
モノハロ酢酸塩を用いる場合、原料パルプを構成するセルロースの無水グルコース単位に対するアルカリ剤のモル当量比(アルカリ剤/無水グルコース単位)は、高い水溶液粘度を発現させる観点から、好ましくは0.3〜3、より好ましくは0.5〜2、更に好ましくは0.5〜1.8、より更に好ましくは0.5〜1.5、より更に好ましくは0.5〜1.2である。無水グルコース単位のモル数は、セルロースの乾燥重量を無水グルコース単位の分子量162で除した値として求めることができる。
また、モノハロ酢酸を用いる場合、アルカリ剤はモノハロ酢酸の中和に消費されるため、原料パルプを構成するセルロースの無水グルコース単位に対するアルカリ剤のモル当量比(アルカリ剤/無水グルコース単位)は、高い水溶液粘度を発現する観点から、好ましくは0.6〜6、より好ましくは1.0〜4、更に好ましくは1〜3である。
【0013】
(モノハロ酢酸又はその塩)
本発明に用いられるモノハロ酢酸におけるハロゲン原子としては、反応性や汎用性及び取り扱い易さの理由から、好ましくはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子、より好ましくは臭素原子又は塩素原子、更に好ましくは塩素原子である。
モノハロ酢酸の塩を形成しうる金属としては、得られるカルボキシメチルセルロースの水溶性、高い水溶液粘度を発現する観点から、好ましくはリチウム、カリウム又はナトリウム、より好ましくはカリウム又はナトリウム、更に好ましくはナトリウムである。
本発明に用いられるモノハロ酢酸又はその塩の具体例としては、モノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム等が挙げられ、モノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムが好ましい。
モノハロ酢酸又はその塩は、固体(粉体)のまま使用してもよく、水又は後述する親水性有機溶媒に溶解させて使用してもよい。
原料パルプを構成するセルロースの無水グルコース単位に対するモノハロ酢酸又はその塩のモル当量比(モノハロ酢酸又はその塩/無水グルコース単位)は、高い水溶液粘度を発現する観点から、好ましくは0.3〜3、より好ましくは0.5〜2.0、更に好ましくは0.5〜1.6であり、より更に好ましくは、0.6〜1.0である。
【0014】
上記のモノハロ酢酸又はその塩とアルカリ剤とは、各々単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において使用されるモノハロ酢酸に対するアルカリ剤のモル当量比(アルカリ剤/モノハロ酢酸)は、副反応を抑制しながら効率的に反応させる理由から、好ましくは2〜3、より好ましくは2〜2.5、更に好ましくは2〜2.2、より更に好ましくは2〜2.1である。
また、モノハロ酢酸の塩を用いる場合は、本発明において使用されるモノハロ酢酸塩に対するアルカリ剤のモル当量比(アルカリ剤/モノハロ酢酸塩)は、副反応を抑制しながら効率的に反応させる理由から、好ましくは1〜2、より好ましくは1〜1.5、更により好ましくは1〜1.1、より更に好ましくは1〜1.05である。
【0015】
[工程1:粉砕処理工程]
本発明の粉砕処理工程では、原料パルプとモノハロ酢酸又はその塩とを混合し粉砕処理する。本発明においては、好ましくは、原料パルプを、モノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤の存在下、粉砕機により粉砕処理する。より具体的には、モノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤を原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に混合し、粉砕処理する。
混合粉砕する方法としては、次の(1)〜(4)が挙げられる。
(1)モノハロ酢酸又はその塩、及びアルカリ剤の両方を原料パルプの粉砕処理前に原料パルプと混合し、粉砕処理する方法
(2)モノハロ酢酸又はその塩、及びアルカリ剤の両方を、原料パルプの粉砕処理中に、原料パルプの粉砕途中のものと混合する方法
(3)モノハロ酢酸又はその塩を、原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に混合し、粉砕処理終了後にアルカリ剤を得られた粉砕処理物と混合する方法
(4)モノハロ酢酸もしくはその塩、又はアルカリ剤の一方を、原料パルプの粉砕処理前に原料パルプと混合し、粉砕処理中に他方を原料パルプの粉砕途中のものと混合する方法
【0016】
前記混合粉砕方法は上記(1)〜(4)のいずれの方法であってもよいが、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを得る観点から、前記(1)、(2)及び(4)の方法、即ち原料パルプを、モノハロ酢酸又はその塩、及びアルカリ剤の存在下、粉砕機により粉砕処理する工程を有する方法であることが好ましく、前記(4)の方法がより好ましい。
この場合、原料の添加順序及び粉砕処理の順序は特に限定されない。原料パルプにモノハロ酢酸又はその塩を添加し粉砕処理した後、アルカリ剤を添加し、更に粉砕処理してもよく、また、原料パルプにアルカリ剤を添加し粉砕処理した後、モノハロ酢酸又はその塩を添加し、更に粉砕処理してもよい。原料パルプとモノハロ酢酸又はその塩とアルカリ剤とを同時に混合し、粉砕処理してもよい。これらの中では、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを得る観点から、原料パルプとモノハロ酢酸又はその塩とを混合し粉砕処理した後、アルカリ剤を添加し更に粉砕処理する方法が好ましい。
【0017】
本発明に用いられる粉砕機としては、化学工学会編「化学工学便覧 改訂六版」843ページの表16・4に示されるものが挙げられる。より具体例には、高圧圧縮ロールミル、ロール回転ミル等のロールミル;リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の堅型ローラーミル;転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル;塔式粉砕機、撹拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体撹拌式ミル;高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル;乳鉢、石臼等が挙げられる。
これらの中では、生産性の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体撹拌ミルが好ましく、特に容器駆動式媒体ミルがより好ましく、中でも振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミルが更に好ましい。
処理方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
【0018】
粉砕機及び/又は媒体の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ガラス等が挙げられる。これらの中では、混合及び粉砕の効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素が好ましく、更に工業的な利用の観点から、鉄又はステンレスがより好ましい。
混合及び粉砕の効率の観点から、用いる粉砕機が振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、ロッドの外径としては、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mmの範囲である。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な充填率が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。ロッドの充填率がこの範囲内であれば、セルロースや反応剤とロッドとの接触頻度が向上すると共に、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで、ロッドの充填率とは、振動ミルの撹拌部の容積に対するロッドの見かけの体積をいう。
【0019】
粉砕時間は、粉砕機の大きさ(容積)等、粉砕条件によるが、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを得る観点から、3分〜3時間程度が好ましく、5〜60分がより好ましく、5〜30分が更に好ましい。
粉砕時の温度は、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを得る観点から、好ましくは5℃以上40℃未満、より好ましくは5〜38℃であり、更に好ましくは5〜35℃である。なお、本発明の目的を損なわない限り、粉砕時に局所的に温度が高くなる部分があってもよい。
【0020】
また、重合度の低下を抑制して、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを得る観点から、原料パルプの粉砕処理前に、原料パルプにモノハロ酢酸又はその塩を含浸させる工程を更に有することが好ましい。
含浸方法としては、原料パルプとモノハロ酢酸又はその塩の溶液(溶媒は、水又は親水性有機溶媒液)とを、ヘンシェルミキサー、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置で混合した後、溶媒を除去する方法を用いることができる。溶媒の除去方法としては、減圧乾燥等による一般的な方法により行うことができる。減圧乾燥時間は、好ましくは6〜48時間、より好ましくは8〜24時間である。親水性有機溶媒としては、後述するものを用いることができる。
【0021】
(粉砕処理工程における水分量)
本発明において、重合度の低下を抑制して、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースを得る観点から、粉砕処理工程における水分量は、乾燥原料パルプ100重量部に対して10重量部以上であることが好ましい。一方、粉砕効率の観点、及び後述する反応工程における水分量を好適な範囲にする観点から、該水分量は、乾燥原料パルプ100重量部に対して100重量部以下であることが好ましい。以上の観点から、水分量は乾燥原料パルプ100重量部に対して10〜100重量部が好ましく、10〜90重量部がより好ましく、15〜80重量部が更に好ましく、20〜60重量部がより更に好ましい。粉砕処理工程における水分量を上記の範囲にすることにより、セルロースの凝集が抑えられ、続く反応工程を良好な粉体状態を維持したまま行うことができ、更に原料の重合度の低下の抑制が可能となる。
【0022】
原料パルプの粉砕処理の終点は、次の工程で粉砕処理物をモノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤と反応させる観点から、得られる粉砕物中のセルロース及び/又はカルボキシメチルセルロースのメジアン径が、好ましくは1〜800μm、より好ましくは10〜500μm、更に好ましくは10〜300μm、より更に好ましくは30〜250μmに粉砕されることを目安にすることができる。前記メジアン径の測定方法は、後述する実施例に記載の通りである。
得られた粉砕物は、セルロースを主体とするものであるが、部分的に反応して一部がカルボキシメチルセルロースになっていてもよい。
【0023】
[工程2:反応工程]
次に、得られた粉砕処理物中のセルロースを、モノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤と40〜100℃で反応させて、カルボキシメチルセルロースを得る。反応方法としては、次の(i)〜(ii)が挙げられる。
(i)原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に、モノハロ酢酸又はその塩を混合した場合には、得られた混合粉砕物にアルカリ剤の添加混合を行い、更に必要に応じて追加のモノハロ酢酸又はその塩を添加混合して反応を行う方法。
(ii)原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に、モノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤を混合した場合には、そのまま反応を行ってもよいが、必要に応じて追加のモノハロ酢酸又はその塩、及び/又はアルカリ剤を添加混合して反応を行うことができる。
【0024】
反応工程では、均一に混合できる混合機を用いることが好ましい。例えば、特開2002−114801号公報の段落〔0016〕で開示しているような、粉体や樹脂等の高粘度物質の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機を反応装置として使用するのが好ましい。ここで、ニーダー等の混合機としては、撹拌が十分できるものであれば特に限定されないが、例えば化学工学協会編「化学工学便覧」改訂五版(丸善株式会社発行)、917〜919頁に記載されている混合機が挙げられる。具体的には、単軸型ニーダーとしては、リボンミキサー、コニーダー、ボテーター、スクリュー型ニーダー等が挙げられ、二軸型ニーダーとしては、双腕型ニーダー等が挙げられる。これらの混合機は、塩基水溶液の滴下や脱水ができるような部位を備えていることがより好ましい。
反応温度は、副反応を抑制すると共に、セルロースの重合度の低下を抑制しつつ、反応を効率的に進行させる観点から、40〜100℃であり、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃である。
反応工程における反応雰囲気は、セルロースの重合度の低下を抑制し、高い水溶液粘度を発現する観点から、不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。不活性ガスとしては、好ましくは窒素、ヘリウム又はアルゴン、より好ましくは窒素又はアルゴン、更に好ましくは窒素である。
本発明の方法では、粉砕物の分散性を良好にする観点から、好ましくは1〜500rpm、より好ましくは2〜200rpm、更に好ましくは5〜100rpmで撹拌を行う。
反応時間は、反応スケールにもよるが、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜8時間程度である。
反応の終点は、モノハロ酢酸又はその塩の全添加量の95重量%以上が消費された時点を目安とすることができ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等で反応の進行状況を確認することができる。
反応終了後、得られた反応物にメタノール等の親水性溶媒の水溶液を添加し、撹拌後にろ過することでNaCl等の塩類を除去することができる。カルボキシメチルセルロースはろ過ケーキ分として得られ、アセトン等で洗浄し、効率よく脱水することができる。
【0025】
(親水性有機溶媒)
モノハロ酢酸又はその塩と原料パルプとの混合性を良好にする観点から、粉砕処理工程及び/又は反応工程において親水性有機溶媒を使用してもよい。
親水性有機溶媒としては、原料パルプとモノハロ酢酸又はその塩との反応性の観点から、25℃で水100gに100g以上溶解するものが好ましい。本発明の方法に用いることができる親水性有機溶媒としては、好ましくはイソプロパノール、tert−ブタノール等の2級又は3級の低級アルコール;1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジグライム、トリグライム等のエーテル系溶剤;ジメチルスルホキシド等の親水性極性溶剤が挙げられ、より好ましくはイソプロパノール、tert−ブタノール等の2級又は3級の低級アルコール、更に好ましくはイソプロパノール、tert−ブタノールである。
上記の親水性有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明において反応時に用いられる親水性有機溶媒量は、乾燥原料パルプ100重量部に対して、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下、更に好ましくは100重量部以下、より更に好ましくは50重量部以下、より更に好ましくは30重量部以下である。親水性有機溶媒量を上記の範囲にすることにより、凝集が抑えられ、良好な粉体状態を維持したまま効率よく反応を進行させることができ、高い水溶液粘度のカルボキシメチルセルロースが得られる。
【0027】
(反応工程における水分量)
本発明において、アルカリ剤により、効率的にセルロース分子の水酸基をアルコラート化する観点と粉砕物の凝集抑制の観点から、反応工程における水分量は、乾燥原料パルプ100重量部に対して、好ましくは100重量部以下、より好ましくは10〜90重量部、更に好ましくは15〜80重量部、より更に好ましくは20〜60重量部である。反応工程における水分量を上記の範囲にすることにより、セルロースの凝集が抑えられ、良好な粉体状態を維持したまま効率よく反応を進行させることができ、生成物の取扱い性にも優れる。
【0028】
[カルボキシメチルセルロース]
本発明の方法により、水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースが得られる。得られるカルボキシメチルセルロースは塩であってもよく、塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩又はマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が好ましい。
本発明の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液粘度(ナトリウム塩で100モル%中和品)(25℃)は、高い増粘性を発現させる観点から、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは700mPa・s以上、更に好ましくは800mPa・s以上、より更に好ましくは1000mPa・s以上、より更に好ましくは1100mPa・s以上、より更に好ましくは1750mPa・s以上、より更に好ましくは1800mPa・s以上である。上限は特にないが、取り扱い性の観点から、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましい。水溶液粘度の測定方法は、後述する実施例に記載の通りである。なお、高い粘度のカルボキシメチルセルロースを得るには、重合度の高いセルロースを含む原料パルプを用いることが好ましい。
本発明の方法により得られるカルボキシメチルセルロースは、化粧料等の増粘剤として有用である。
【実施例】
【0029】
製造例で得られたチップ状パルプ及びセルロースの結晶化度、平均重合度及び水分含量、チップ状パルプの粉砕物の粒径、並びに実施例で得られたカルボキシメチルセルロースの置換度及び水溶液粘度の測定は、下記の方法で行った。なお、「%」は「重量%」である。
【0030】
(1)結晶化度の算出
原料パルプ又は粉砕物中のセルロースの結晶化度は、原料パルプ又は粉砕物をサンプルとして用い、サンプルのX線回折強度を、株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」(商品名)を用いて以下の条件で測定し、前記式(1)に基づいて算出した。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°で測定した。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。X線のスキャンスピードは10°/minで測定した。
【0031】
(2)平均重合度の測定(銅−アンモニア法)
((i)測定用溶液の調製)
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、及び25%アンモニア水を加えて、メスフラスコの標線の一寸手前までの量とした。これを30〜40分撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤したパルプ(105℃、20kPaで12時間減圧乾燥したもの)を加え、メスフラスコの標線まで上記アンモニア水を満たした。空気が入らないように密封し、マグネチックスターラーで12時間撹拌して溶解した。同じように添加するパルプ量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
((ii)粘度平均重合度の測定)
上記(i)で得られた測定用溶液(銅アンモニア水溶液)をウべローデ粘度計に入れ、恒温槽(20士0.1℃)中で1時間静置したのち、液の流下速度を測定した。種々のパルプ濃度(g/dL)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))とパルプ無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式により、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を以下の式より求めた。
ηsp/c=(t/t0−1)/c
(式中、cはパルプ濃度(g/dL)である。)
更に、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、以下の式より粘度平均重合度(DPv)を求めた。
DPv=2000×[η]
(式中、2000はセルロースに固有の係数である。)
【0032】
(3)水分含量の測定
パルプ中の水分含量は、ハロゲン水分計(メトラー・トレド株式会社製、商品名:「HG53」)を使用し、150℃にて測定を行った。2gのサンプルを用い、50秒間の重量変化率が1mg以下となる点を測定の終点とした。
(4)粉砕物の粒径の測定
粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:「LA−950V2」)を用いて測定した。測定条件は、粒径測定前に超音波で1分間処理し、測定時の分散媒体として水を用い、体積基準のメジアン径を、温度25℃にて測定した。なお、用いた屈折率は、1.6である。
【0033】
(5)カルボキシメチルセルロースの置換度の測定
カルボキシメチルセルロース試料を、マイクロウェーブ湿式灰化装置(PROLABO社製、商品名:「A−300」)を用いて硫酸−過酸化水素で湿式分解した後、原子吸光装置(株式会社日立製作所製、商品名:「Z−6100型」)を用いて原子吸光法によりNa含量(%)を測定し、下記式(2)により置換度を算出した。
置換度(DS)=(162×Na含量(%))/(2300−80×Na含量(%)) (2)
なお、置換度とは、カルボキシメチルセルロースのセルロース骨格を構成する無水グルコース単位あたりのカルボキシメチル基の平均数をいう。
【0034】
(6)水溶液粘度の測定
カルボキシメチルセルロースの1%水溶液(ナトリウム塩で100モル%中和)を調製し、B型粘度計(東機産業株式会社製、商品名:「TVB−10M」)を使用し、25℃、ローター:No.3(200〜2000mPa・sの測定用)、30rpm、3minの条件で測定を行った。なお、No.3で測定した際に、200mPa・s未満の粘度となる場合は、ローター:No.1を用い、2000mPa・sを超える場合は、ローター:No.4を用いる。
【0035】
製造例1
(チップ状パルプの製造)
市販のコットンリンターパルプシート(山東高蜜化繊公司製、商品名:「PCS2400」、結晶化度94%、含水量7.5重量%)をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製、商品名:「SGG−220−3X3」)にかけて3mm角のチップ状(長径(1片のチップの内、最長の長さ)の100個の数平均)にし、チップ状パルプ(結晶化度94%、平均重合度2358、含水量7.3重量%)を得た。
製造例2
(チップ状パルプの製造)
市販の木材パルプシート(テンベック社製、商品名;「Biofloc HV+」、結晶化度74%、含水量6.7重量%)をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製、商品名:「SGG−220−3X3」)にかけて3mm角のチップ状(長径(1片のチップの内、最長の長さ)の100個の数平均)にし、チップ状パルプ(結晶化度74%、平均重合度1506、含水量6.7重量%)を得た。
【0036】
実施例1
乳鉢に、製造例1で得られたチップ状パルプを乾燥重量として100.0g(0.617mol、無水グルコース単位換算)仕込み、そこへ、30%モノクロロ酢酸ナトリウム(ClCH2CO2Na、以下「SMCA」ともいう)水溶液167.8g(0.432mol)を添加して撹拌混合した。混合物を60℃、窒素気流下、減圧条件(約70kPa)で12時間乾燥させた後、イオン交換水20.0gを添加して混合し、水分調整を行った。それを、振動ロッドミル(中央化工機株式会社製、商品名:「MB−1」)のポットに断面が直径30mmの円形のロッド13本と共に入れ、振動数1200cpm、振幅8mm、粉砕時間9分間の条件で混合粉砕した。更に49.2%水酸化ナトリウム水溶液38.6g(0.475mol)を添加して9分間混合粉砕した。得られた粉砕物の粒径は125μmであり、粉砕物の温度は35℃程度であった。
上記で得られた混合粉砕物を1Lニーダー(株式会社入江商会製、商品名:「PNV−1型」)に仕込み、ニーダー内を減圧(約50kPa)し、次いで窒素で常圧まで戻す操作を3回行って窒素置換した。その後、60℃に昇温し3時間撹拌した。セルロース及びその他の原料由来の水分量の総和は、乾燥原料パルプ100重量部に対して40重量部であった。
添加したSMCAの98重量%以上が消費されていることを確認して、室温まで冷却し、生成物をニーダーから取り出した。次に、生成物を70%メタノール水溶液1000mLに分散した後、酢酸2.6gを加えて余剰の水酸化ナトリウムを中和した。次に、70%メタノール水溶液3000mLを添加し、撹拌することで、副生塩及び未反応物等を溶出させた。得られたスラリーをろ過(東洋濾紙株式会社製、商品名:「定性濾紙No.2」)し、ろ過ケーキを、アセトン1000mLで洗浄し、乾燥して、カルボキシメチルセルロース117gを得た。得られたカルボキシメチルセルロースの無水グルコース単位当たりの置換度は0.47であり、1%水溶液粘度(25℃)は1961mPa・sであった。結果を表1に示す。
【0037】
実施例2
振動ロッドミル(中央化工機株式会社製、商品名:「MB−1」)のポットに断面が直径30mmの円形のロッド13本を入れ、そこへ製造例1で得られたチップ状パルプを乾燥重量として100.0g(0.617mol、無水グルコース単位換算)、イオン交換水12.2g、及びSMCA粉末50.3g(0.432mol)を添加し、振動数1200cpm、振幅8mm、粉砕時間6分間の条件で混合粉砕した。更に49.3%水酸化ナトリウム水溶液38.6g(0.475mol)を添加して6分間混合粉砕した。得られた粉砕物の粒径は189μmであり、粉砕物の温度は35℃程度であった。得られた粉砕物におけるセルロース及びその他の原料由来の水分量の総和は、乾燥原料パルプ100重量部に対して40重量部であった。
その後の操作は実施例1と同様に行ってカルボキシメチルセルロースを得た。得られたカルボキシメチルセルロースの無水グルコース単位当たりの置換度は0.46であり、1%水溶液粘度(25℃)は1120mPa・sであった。結果を表1に示す。
【0038】
実施例3
SMCA粉末添加後の粉砕時間を12分間とした点、水酸化ナトリウム水溶液添加後に粉砕を行わなかった点を除き、実施例2と同様の操作を行ってカルボキシメチルセルロースを得た。得られたカルボキシメチルセルロースの無水グルコース単位当たりの置換度は0.46であり、1%水溶液粘度(25℃)は539mPa・sであった。結果を表1に示す。
実施例4
チップ状パルプとして製造例2で得られたチップ状パルプを用いた点、混合粉砕後における粉砕物におけるセルロース及びその他の原料由来の水分量の総和を、乾燥原料パルプ100重量部に対して40重量部とするために、混合粉砕前に添加するイオン交換水量を13.2gに変更した点を除き、実施例2と同様に行ってカルボキシメチルセルロースを得た。得られたカルボキシメチルセルロースの無水グルコース単位当たりの置換度は0.50であり、1%水溶液粘度(25℃)は801mPa・sであった。結果を表1に示す。
実施例5
イオン交換水を12.1g、SMCA粉末を107.8g(0.926mol)、アルカリ剤として49.3%水酸化ナトリウム水溶液量を39.4g(0.486mol)及びビーズ状水酸化ナトリウム(東ソー株式会社製、商品名「トーソーパール」)21.4g(0.535mol)を用いた点を除き、実施例2と同様の操作を行ってカルボキシメチルセルロースを得た。得られたカルボキシメチルセルロースの無水グルコース単位当たりの置換度は0.79であり、1%水溶液粘度(25℃)は750mPa・sであった。結果を表1に示す。
【0039】
実施例6
振動ロッドミル(中央化工機株式会社製、商品名:「MB−1」)のポットに断面が直径30mmの円形のロッド13本を入れ、そこへ製造例1で得られたチップ状パルプを乾燥重量として100.0g(0.617mol、無水グルコース単位換算)、49.3%水酸化ナトリウム水溶液38.6g(0.475mol)を添加し、振動数1200cpm、振幅8mm、粉砕時間6分間の条件で混合粉砕した。更にイオン交換水12.2g、及びSMCA粉末50.3g(0.432mol)を添加して6分間混合粉砕した。得られた粉砕物におけるセルロース及びその他の原料由来の水分量の総和は、乾燥原料パルプ100重量部に対して40重量部であった。
その後の操作は実施例1と同様に行ってカルボキシメチルセルロースを得た。得られたカルボキシメチルセルロースの無水グルコース単位当たりの置換度は0.55であり、1%水溶液粘度(25℃)は891mPa・sであった。結果を表1に示す。
【0040】
比較例1
振動ロッドミル(中央化工機株式会社製、商品名:「MB−1」)のポットに断面が直径30mmの円形のロッド13本を入れ、そこへ製造例1で得られたチップ状パルプを乾燥重量として100.0g(0.617mol、無水グルコース単位換算)を添加し、振動数1200cpm、振幅8mm、粉砕時間12分間の条件で粉砕し、粉末セルロース(結晶化度78%、平均重合度1216、含水量7.3重量%、粒径100μm)を得た。
1Lニーダー(株式会社入江商会製、商品名:「PNV−1型」)に、上記で得られた粉末セルロース、イオン交換水12.2g、及びSMCA粉末50.3g(0.432mol)を添加し、1.5時間撹拌した。そこへ49.3%水酸化ナトリウム水溶液38.6g(0.475mol)を1時間かけて滴下し、更に30分間撹拌した。ニーダー内を減圧(約50kPa)し、次いで窒素で常圧まで戻す操作を3回行って窒素置換した。その後、60℃に昇温し3時間撹拌した。セルロース及びその他の原料由来の水分量の総和は、乾燥粉末セルロース100重量部に対して40重量部であった。
その後の操作は実施例1と同様に中和、洗浄等を行い、カルボキシメチルセルロースを得た。得られたカルボキシメチルセルロースの無水グルコース単位当たりの置換度は0.44であり、1%水溶液粘度(25℃)は343mPa・sであった。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
原料パルプを粉砕した粉末セルロースにモノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤を添加して反応させて得られた比較例1のカルボキシメチルセルロースは水溶液粘度が低かった。これに対し、原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中にモノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤を添加して得られた粉砕処理物を反応させて得られた実施例1〜6のカルボキシメチルセルロースは水溶液粘度が高く、増粘剤として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の方法により得られる水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースは、化粧料等の増粘剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料パルプを粉砕機により粉砕処理した後に、得られた粉砕処理物中のセルロースを、モノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤と40〜100℃で反応させるカルボキシメチルセルロースの製造方法であって、該モノハロ酢酸もしくはその塩、及び/又はアルカリ剤を、該原料パルプの粉砕処理前又は粉砕処理中に該原料パルプと混合する工程を有する、カルボキシメチルセルロースの製造方法。
【請求項2】
粉砕処理前の原料パルプを構成するセルロースの平均重合度が1000〜5000である、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。
【請求項3】
原料パルプとモノハロ酢酸又はその塩とを混合し粉砕処理する工程を有する、請求項1又は2に記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。
【請求項4】
原料パルプとモノハロ酢酸又はその塩とを混合し粉砕処理した後、アルカリ剤を添加し更に粉砕処理する、請求項1〜3のいずれかに記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。
【請求項5】
粉砕処理前の原料パルプにモノハロ酢酸又はその塩を含浸させる工程を更に有する、請求項1〜4のいずれかに記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。
【請求項6】
原料パルプを構成するセルロースの無水グルコース単位に対するモノハロ酢酸又はその塩のモル当量比(モノハロ酢酸又はその塩/無水グルコース単位)が0.3〜3である、請求項1〜5のいずれかに記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。
【請求項7】
粉砕機が容器駆動式媒体ミルである、請求項1〜6のいずれかに記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。
【請求項8】
粉砕処理物をモノハロ酢酸又はその塩及びアルカリ剤と反応させる際、水分量が乾燥原料パルプ100重量部に対して100重量部以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。
【請求項9】
得られたカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液の粘度(25℃)が、500〜5000mPa・sである、請求項1〜9のいずれかに記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。

【公開番号】特開2012−36375(P2012−36375A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145561(P2011−145561)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】