説明

カルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む熱硬化性樹脂材料

【課題】無触媒下での硬化性に優れるだけでなく、有機溶媒に対する溶解性や三次元的硬化性を有する硬化性材料を提供すること。
【解決手段】分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーA、或いは該モノマーAと分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a1)又は反応剤(a2)と、多官能イソシアネート化合物を含む反応剤(b)との組み合わせからなる、熱硬化性樹脂材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤と、多官能イソシアネート化合物を含む別の反応剤との組み合わせからなる熱硬化性樹脂材料に関し、詳細には、無触媒下、低温硬化性に優れたカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む熱硬化性樹脂材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、イソシアネート基含有化合物とヒドロキシ基等の活性水素を有するポリオール等の化合物との熱硬化プロセスにより得られるポリマーであって、これらの組み合わせによって多様な性質を引き出せることから、軟質フォーム、硬質フォーム、エラストマー、接着剤、塗料、バインダーなど多彩な形態にて、幅広い分野において利用されている。
ポリウレタン材料は、硬化後のポリウレタンの物性を一定とするため、二液型硬化性組成物として処方されることが多い。例えば第一液としてポリオール、触媒及び他の通常の添加剤を含み、第二液としてポリイソシアネート架橋剤を含みて処方され、そしてこれら2つの液は通常、使用直前、たとえば塗料として使用する場合にはコーティング等の施工の直前に混合されて用いられる。2つの液を混合すると、ポリオールのヒドロキシ基とイソシアネート化合物のイソシアネート基との間の化学反応が始まり、最終的に架橋し、硬化する(例えば特許文献1)。
【0003】
従来、イソシアネートとポリオールの反応には硬化触媒が必要とされ、有機スズ化合物、カルボン酸スズ塩、カルボン酸鉛塩、カルボン酸ビスマス塩が一般的に使用されている。これら化合物は、使用する量的水準において経済的であり、得られる硬化物の変色、その他の副次効果が最小であり、触媒活性が高い点で特に優れていることから、ウレタン硬化性組成物の硬化触媒として標準触媒と考えられており、幅広い用途で使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来必要とされてきた硬化触媒は、カルボン酸鉛塩は環境への負荷が大きい、有機スズ化合物は内分泌撹乱物質として生体への影響が懸念されているなど、使用に際しては十分な注意が必要となる。また、カルボン酸スズ塩のような2価のスズ化合物は不安定であるために、空気や湿気、他の金属イオンによって影響を受けて分解する欠点があり、また泡化反応性が強く硬化物が発泡して体積の増加、気泡の混入があるため、前記用途においては問題があった。
これらに比べ、カルボン酸ビスマス塩は環境毒性が少なく、硬化物の物性が大きく変わらないという点で優れている。しかし、高活性であるためポットライフ(2液を混合後コーティングなどの作業が困難になるまでの時間)が比較的短く、また、硬化性組成物調製時の計量誤差等により、触媒量が僅にばらつくと、それに伴いポットライフが大きく変動することとなる。このポットライフが短いと硬化性組成物は施工前にゲル化もしくは硬化し始め、長いと施行後の成型性、物性に影響を与える。このようにカルボン酸ビスマス塩は硬化触媒として優れてはいるが、施工時に様々な問題点があるため、使い難いものであった。
【0005】
特に近年、環境汚染防止等の観点から、様々な分野において有害物質を使用しないプロセスが求められているものの、ポリウレタンの製造現場においては、硬化速度や工業的プロセスをコントロールするためにも、上記の触媒を使用せざるを得ないという現状がある。また環境毒性が低い物質であっても、施工時等の操作性に課題を残すものであった。
また、従来使用ポリウレタンの製造に使用されているポリオール化合物は、ヒドロキシ基の存在から水素結合性が強く、このため得られるポリウレタンについて有機溶媒への溶解性や分散性、塗布性、並びに硬化による三次元硬化性等に関して性能範囲のさらなる拡大又は改良が求められることもあった。
また、ポリオールとポリイソシアネートの反応により得られたポリウレタンは、一般に使用するポリオールやポリイソシアネートが長鎖状構造の低分子量体であることから、一般的に軟質性材料として多く用いられ、表面を保護するコーティング材料とし利用するには硬度が不足している。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来のポリウレタン材料に代わる新たな硬化性樹脂材料、すなわち、無触媒であっても硬化性が高く、また有機溶媒に対する高い溶解性を有し、三次元的に硬化可能な硬化性樹脂材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ね、その研究過程の中で最近種々開発されているハイパーブランチポリマーに着目し、そして更なる研究の結果、ポリウレタンのポリオール成分に代わる材料として新規なカルボキシル基含有高分岐ポリマーを採用し、これをイソシアネート化合物と組み合わせることにより、触媒を必要とすることなく硬化性に優れ、また、有機溶媒に対する溶解性や三次元的硬化性を有する新規な硬化性樹脂材料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、第1観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a1)と多官能イソシアネート化合物を含む反応剤(b)との組み合わせからなる、熱硬化性樹脂材料に関する。
第2観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a2)と多官能イソシアネート化合物を含む反応剤(b)との組み合わせからなる、熱硬化性樹脂材料に関する。
第3観点として、前記モノマーAが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、第1観点又は第2観点に記載の熱硬化性樹脂材料に関する。
第4観点として、前記モノマーAが、ジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、第3観点に記載の熱硬化性樹脂材料に関する。
第5観点として、前記モノマーAのモル数に対して前記モノマーCを5〜300モル%の割合で用いる、第2観点に記載の熱硬化性樹脂材料に関する。
第6観点として、前記モノマーCが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、第5観点に記載の熱硬化性樹脂材料に関する。
第7観点として、前記モノマーCが、下記式[1]で表される化合物である、第6観点に記載の熱硬化性樹脂材料に関する。
【化1】

(式[1]中、R1は水素原子又はメチル基を表し、そしてR2は水素原子、カルボキシル基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20のアルキル基、又はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20のアルキル基を表す。)
第8観点として、前記重合開始剤Bが、アゾ系重合開始剤である、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の熱硬化性樹脂材料に関する。
第9観点として、前記重合開始剤Bが、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)
である、第8観点に記載の熱硬化性樹脂材料に関する。
第10観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a1)に関する。
第11観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a2)に関する。
第12観点として、第1観点乃至第9観点のうちいずれか一項に記載の反応剤(a1)又は反応剤(a2)と反応剤(b)とを混合して得られる熱硬化性樹脂組成物に関する。
第13観点として、前記反応剤(b)に含まれる多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数に対して、前記反応剤(a1)又は(a2)に含まれる高分岐ポリマーのカルボキシル基のモル当量が0.01〜10である、第12観点に記載の熱硬化性樹脂組成物に関する。
第14観点として、第12観点又は第13観点に記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化膜に関する。
第15観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを、高められた温度で多官能イソシアネート化合物と反応せしめて硬化させることからなる、硬化樹脂の製造方法に関する。
第16観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを、高められた温度で多官能イソシアネート化合物と反応せしめて硬化させることからなる、硬化樹脂の製造方法に関する。
第17観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーA(ただしジビニルベンゼンを除く)と、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーに関する。
第18観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子
内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱硬化性樹脂材料は、従来のポリウレタン材料、すなわちポリオール化合物とイソシアネート化合物の反応(硬化)に必須となる触媒を必要とせず、またポリウレタン材料の硬化温度に比べ、比較的低い温度においても速やかに硬化が促進し、三次元的な架橋構造を形成することができる。
また本発明の反応剤(a1)又は(a2)に含まれる、末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーは、従来の線状高分子が一般的に紐状の形状であるのに対し、積極的に枝分かれ構造を導入しているため、線状高分子と比較して分子間の絡み合いが少なく安定的である。このため、本発明の反応剤(a1)又は(a2)は、有機溶媒に対する溶解性や分散性が高いものとなり、また、熱硬化性樹脂材料に用いられる、多官能イソシアネート化合物を含む反応剤(b)との混合・分散性にも優れたものとなる。
また本発明の熱硬化性樹脂組成物は、反応剤(a1)又は(a2)に含まれる高分岐ポリマーのカルボキシル基と、反応剤(b)に含まれる多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基とがさらなる触媒を特別必要とせずとも化学反応(硬化)を容易に、しかも比較的低い反応温度にて進行できる。しかも該組成物を熱硬化して得られる本発明の硬化膜は非常に透明性に優れたものとすることができる。
【0010】
さらに上記高分岐ポリマーは、高分子化合物という特性を生かして、簡単に塗布・乾燥操作でそのまま薄膜の構造体を形成させることが可能である。しかも、本発明の高分岐ポリマーは、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やテトラヒドロフラン(THF)だけでなく、アセトンやメタノールなどにも可溶であることから、溶媒を限定することなくワニスの形態にすることができ、薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、合成例1で製造した高分岐ポリマー1の13C NMRスペクトルを示す図である。
【図2】図2は、実施例1で製造した高分岐ポリマー2の13C NMRスペクトルを示す図である。
【図3】図3は、実施例2で製造した高分岐ポリマー3の13C NMRスペクトルを示す図である。
【図4】図4は、実施例3で製造した高分岐ポリマー4の13C NMRスペクトルを示す図である。
【図5】図5は、比較合成例1で製造した直鎖状ポリマー1の13C NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<熱硬化性樹脂材料>
本発明の熱硬化性樹脂材料は、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a1)と多官能イソシアネート化合物を含む反応剤(b)との組み合わせからなるものである。
あるいは、本発明の熱硬化性樹脂材料は、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a
2)と多官能イソシアネート化合物を含む反応剤(b)との組み合わせからなるものである。
【0013】
[反応剤(a1)及び反応剤(a2)]
上記熱硬化性樹脂材料に使用される反応剤(a1)又は反応剤(a2)は、モノマーA又はモノマーA及びモノマーCを重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含むものである。また該高分岐ポリマーは、いわゆる開始剤断片組込型高分岐ポリマーであり、その末端に重合に使用した重合開始剤Bの断片を有している。
【0014】
(モノマーA)
本発明において、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有することが好ましく、特にジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0015】
このようなモノマーAとしては、例えば、以下の(A1)乃至(A7)に示した有機化合物が例示される。
(A1)ビニル系炭化水素:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等。
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等。
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等。
(A2)ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルケトン:
(A2−1)ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等。
(A2−2)アリルエステル;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等。
(A2−3)ビニルエーテル;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等。
(A2−4)アリルエーテル;ジアリルエーテル、ジアリルオキシエタン、トリアリルオキシエタン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオキシブタン、テトラメタリルオキシエタン等。
(A2−5)ビニルケトン;ジビニルケトン、ジアリルケトン等。
(A3)(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−
1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレノキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート等。(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジ(メタ)アクリレート等。
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等。
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、ジエトキジビニルシラン等。
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4−ジビニルパーフルオロブタン、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン、1,8−ジビニルパーフルオロオクタン等。
【0016】
これらのうち好ましいものは、上記(A1−3)群の芳香族ビニル系炭化水素化合物、(A2)群のビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル及びビニルケトン、(A3)群の(メタ)アクリル酸エステル、(A4)群のポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物、並びに(A5)群の含窒素ビニル系化合物である。
特に好ましいのは、(A1−3)群に属するジビニルベンゼン、(A2)群に属するフタル酸ジアリル、(A3)群に属するエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパンである。これらの中でもジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパンが好ましい。
【0017】
(モノマーC)
本発明において、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基と、少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCは、好ましくはビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有することが好ましい。
【0018】
このようなモノマーCとしては、例えば、以下の(C1)乃至(C3)に示した有機化合物が例示される。
(C1)(メタ)アクリル酸類:
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、2−トリフルオロメチルアクリル酸、2−エチルアクリル酸、2−プロピルアクリル酸、2−ブロモメチルアクリル酸、2−アセトアミドアクリル酸、2−エチルアクリロイルクロリド、3,3−ジメチル(メタ)アクリロイルクロリド等。
(C2)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類:
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル=2−(メタ)アクリロイルオキシエチル=フタレート、カプロラクトン2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒ
ドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル=3−ヒドロキシ−2−メチレンブチレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等。
(C3)ヒドロキシ基含有ビニル系化合物:
ヒドロキシスチレン、アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等。
(C4)ビニル安息香酸類:
3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸等。
【0019】
前記モノマーCは、特に前記式[1]で表される化合物が好ましい。
したがって、上記に例示したこれら化合物のうち、好ましいものとしては、上記(C1)群及び(C2)群に記載の化合物であり、特に好ましいものとしては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等である。
【0020】
なお、本発明において、分子内にカルボキシル基又はヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCに替えて、該カルボキシル基又はヒドロキシ基を保護基にて保護した基、すなわち、分子内に保護基で保護されたカルボキシル基又はヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマー(モノマーDと称する)を用いることができる。
その場合、モノマーAと重合させた後に、保護基にて保護したカルボキシル基又はヒドロキシ基における保護基を除去してカルボキシル基又はヒドロキシ基とする。
なお、上記カルボキシル基の保護基としては特に限定されないが、例えば、ベンジルエステル基、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級アルキルエステル基等のエステル基であり、好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
また、上記ヒドロキシ基の保護基としては特に限定されないが、例えば、ベンジルエーテル基、第3級アルキルエーテル基、アルコキシアルキルエーテル基等のエーテル基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等のアセタール基、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基などであり、好ましくは、アシルオキシ基である。
このようなモノマーDとしては、例えば、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−tert−ブトキシカルボニルエチル(メタ)アクリレート、2−tert−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ピバロイルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
本発明において、前記モノマーAと前記モノマーCを共重合させる割合は、重合性や硬化性の観点から好ましくは前記モノマーAのモル数に対して前記モノマーCを5〜300モル%の割合で、好ましくは10〜150モル%の割合で用いる。
【0022】
(重合開始剤B)
本発明における分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bとしては、好ましくはカルボキシル基を有するアゾ系重合開始剤が用いられ、特に4,4'−アゾビス(4−シア
ノバレリン酸)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロ
ピオンアミジン]テトラヒドレートが好ましい。
【0023】
なお本発明において、分子内にカルボキシル基を有するアゾ系重合開始剤Bに加えて、
例えば以下の(1)〜(6)に挙げる(カルボキシル基を持たない)その他のアゾ系重合開始剤を用いてもよい。
(1)アゾニトリル化合物:
2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチ
ルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等。
(2)アゾアミド化合物:
2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒド
ロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1
−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(
2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[N−(2−プロペニ
ル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプ
ロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンア
ミド)等。
(3)環状アゾアミジン化合物:
2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド
、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェート
ジヒドレート、2,2'−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−
メチルプロパン)ジヒドロクロリド等。
(4)アゾアミジン化合物:
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド等。
(5)その他:
2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)等。
(6)フルオロアルキル基含有アゾ系重合開始剤:
4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロメチル)エチル)、4,
4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロブチル)エチル)、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル)等。
【0024】
前記重合開始剤Bは、前記モノマーAのモル数に対して、5〜200モル%の量で使用され、好ましくは15〜200モル%、より好ましくは15〜170モル%、さらに好ましくは50〜100モル%の量で使用される。
なお、分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bに加え、(カルボキシル基を持たない)その他の重合開始剤を用いる場合、使用する重合開始剤の全モル数に対して分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bは50%以上のモル数で使用することが好ましい。
【0025】
(分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーの製造方法)
本発明の分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーは、前述のモノマーA或いはモノマーA及びモノマーCに対して所定量の重合開始剤Bの存在下で重合させて得られ、該重合方法としては公知の方法、例えば溶液重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合等が挙げられ、中でも溶液重合又は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。
このとき用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒;塩化メチル、臭化メチル
、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン等の複素環式化合物系溶媒、並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒等であり、特に好ましいものはトルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等である。
【0026】
上記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場合、重合反応物全体における有機溶媒の含量は、前記モノマーAの1質量部に対し、好ましくは1〜500質量部、さらに好ましくは5〜300質量部である。
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、N2等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
重合反応の温度は好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは70〜150℃である。
より好ましくは、重合反応の温度は前述の重合開始剤Bの10時間半減期温度より20℃以上高い温度で実施され、より具体的には、前記モノマーA、前記モノマーC、前記重合開始剤B及び有機溶媒を含む溶液を、該重合開始剤Bの10時間半減期温度より20℃以上高い温度に保たれた該有機溶媒中へ滴下することにより、重合反応を行うことが好ましい。
また、さらにより好ましくは反応圧力下での前記有機溶媒の還流温度で重合反応を実施することが好ましい。
重合反応の終了後、得られた分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行なう。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
【0027】
得られた分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーの重量平均分子量(以下Mwと略記)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で好ましくは1,000〜200,000、さらに好ましくは2,000〜100,000、最も好ましくは3,000〜60,000である。
【0028】
こうして得られた高分岐ポリマーを含む反応剤(a1)及び(a2)も本発明の対象である。すなわち、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a1)、並びに、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結
合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a2)もまた、本発明の対象である。
【0029】
さらに、本発明は、上述の方法で得られる各高分岐ポリマーもまた、対象とする。すなわち、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマー(ただし、モノマーAとしてジビニルベンゼンを除く)、並びに、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーもまた、本発明の対象である。
【0030】
なお、本発明において、上記反応剤(a1)及び(a2)は、前述の高分岐ポリマーに加えて、該ポリマーを溶解又は分散できる有機溶媒を含有することができる。
このとき使用可能な有機溶媒としては、前述の(分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーの製造方法)で用いた有機溶媒から適宜選択可能であるが、後述の反応剤(b)と組み合わせることを考慮すると、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系又はエステルエーテル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒から選択されることが望ましい。好ましい溶媒の例として、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ−ト、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
これら溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合してもよい。
また上記反応剤(a1)及び(a2)において、前記高分岐ポリマーを溶解又は分散させる有機溶媒の量は、後述の反応剤(b)の使用量や、該反応剤(b)に含まれる多官能イソシアネート化合物の濃度に依存して任意であり、通常、該高分岐ポリマーと溶媒の総質量(合計質量)に対して、該高分岐ポリマーの濃度は0.001〜90質量%であり、好ましくは0.002〜80質量%であり、より好ましくは0.005〜70質量%である。
【0031】
[反応剤(b)]
上記熱硬化性樹脂材料に使用される反応剤(b)は、多官能イソシアネート化合物を含みて構成される。
ここで多官能イソシアネート化合物とは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する芳香族系、脂肪族系、脂環族系等の化合物であれば特に限定されず、例えばポリウレタン樹脂の製造において主剤として使用可能な種々のイソシアネート化合物を挙げることができる。
このような多官能イソシアネート化合物の一例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート)、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル=2,6−ジイソシア
ナトヘキサノエート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)=4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート、m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これら多官能イソシアネート化合物のウレタン変性体、アロハネート変性体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体等の変性イソシアネート化合物等を用いることもできる。
上記ポリイソシアネート化合物およびその変性体は、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
また上記反応剤(b)は前記多官能イソシアネート化合物に加えて、該化合物を溶解又は分散できる有機溶媒を含有することができる。
このとき使用可能な有機溶媒としては、前述の反応剤(a1)及び(a2)において述べたものと同様のものを挙げることができ、好ましい溶媒の例としても、前述の反応剤(a1)及び(a2)において述べたものと同様のものを挙げることができる。これら溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合してもよい。
また上記反応剤(b)において、前記多官能イソシアネート化合物を溶解又は分散させる有機溶媒の量は、前述の反応剤(a1)又は(a2)の使用量や、該反応剤(a1)又は(a2)に含まれる高分岐ポリマーの濃度に依存して任意であり、通常、該高分岐ポリマーと溶媒の総質量(合計質量)に対して、該高分岐ポリマーの濃度は0.001〜90質量%であり、好ましくは0.002〜80質量%であり、より好ましくは0.005〜70質量%である。
【0033】
<熱硬化性樹脂組成物および硬化膜>
本発明は前記反応剤(a1)又は反応剤(a2)と反応剤(b)とを混合して得られる熱硬化性樹脂組成物にも関する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、前記反応剤(b)に含まれる多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数に対して、前記反応剤(a1)又は(a2)に含まれる高分岐ポリマーのカルボキシル基のモル当量が0.01〜10であることが好ましく、0.05〜5であることがより好ましく、さらに0.1〜2であることが好ましい。
【0034】
また本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、顔料及び染料などの1種以上を含有してもよく、あるいは必要に応じて、他の有機溶媒、各種添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、表面調整剤、硬化反応触媒、帯電防止剤、香料、レオロジー調整剤などの1種以上を添加して使用することができる。なお、これらの添加成分は、前記反応剤(a1)又は(a2)に含有させておくことが好ましい。
【0035】
而して、調製された熱硬化性樹脂組成物は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用
いて濾過した後、その後の硬化膜の形成に使用することが好ましい。
【0036】
本発明は、前記熱硬化性樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化膜にも関する。
本発明の硬化膜を形成する具体的な方法としては、まず前記熱硬化性樹脂組成物を調製後、該組成物を基板上にキャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等によって塗布して塗膜を得る。これらの塗布
方法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。
また前記基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
【0037】
塗膜形成後、続いてこの塗膜を加熱処理し、硬化膜を得る。この加熱処理の条件としては、例えば、温度70〜160℃、時間0.3〜60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。加熱温度及び加熱時間は、好ましくは80〜150℃、0.5〜30分間又は1〜10分間である
また、形成された硬化膜の厚さは特に限定されないが、例えば0.1〜30μmであり、また例えば0.2〜10μmであり、更に例えば0.2〜5μmである。
【0038】
<硬化樹脂の製造方法>
本発明は、さらに、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを、高められた温度で多官能イソシアネート化合物と反応せしめて硬化させることからなる、硬化樹脂の製造方法にも関する。
また本発明は、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを、高められた温度で多官能イソシアネート化合物と反応せしめて硬化させることからなる、硬化樹脂の製造方法にも関する。
ここで上記分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーは、すなわち、前述の[反応剤(a1)及び反応剤(a2)]に記載の高分岐ポリマーに該当するものである。
【0039】
本発明の硬化樹脂の製造方法においては、高分岐ポリマーを多官能イソシアネート化合物と反応させて硬化させるにあたり、一般的なポリオール化合物とポリイソシアネートとを用いて反応させる際に必要となる触媒は必要とせず、すなわち、前記末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーと多官能イソシアネート化合物のみを用いて、硬化樹脂を製造する。
また本発明において、硬化樹脂の製造にあたり、温度70℃乃至160℃、時間0.3乃至60分間の範囲で加熱することにより、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーと多官能イソシアネート化合物とを反応させて、硬化樹脂を製造する。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0041】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:Shodex KF−804L、KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(2)13C NMRスペクトル
装置:日本電子データム(株)製 JNM−ECA700
溶媒:DMSO-d6(合成例1、実施例1〜3)、CDCl3(比較合成例1)
内部標準:DMSO-d6(39.7ppm)、CDCl3(77.0ppm)
(3)スピンコーター
装置:ミカサ(株)製 MS−A100
(4)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 MH−180CS、MH−3CS
(5)膜厚測定
装置:(株)小坂研究所製 微細形状測定機 ET4000A
(6)接触角測定
装置:AST Products社製 VCA Optima
測定温度:20℃
【0042】
また、略記号は以下の意味を表す。
DVB:ジビニルベンゼン[新日鐵化学(株)製 DVB−960]
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート[新中村化学工業(株)製 1G]
PGHM:2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロイルオキシプロパン[新中村化学工業(株)製 701]
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート[純正化学(株)製]
VN:ビニルナフタレン[新日鐵化学(株)製]
MA:メタクリル酸[関東化学(株)製]
ACVA:4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)[和光純薬工業(株)製 V−501]
MAIB:ジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート[大塚化学(株)製 MAIB]F510:分岐状3官能ポリオール[(株)クラレ製 クラレポリオールF−510]
P1010:鎖状2官能ポリオール[(株)クラレ製 クラレポリオールP−1010]H40:樹枝状64官能ポリオール[Perstorp社製 Boltorn(登録商標)H40]
EGME:エチレングリコールモノメチルエーテル
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
MEK:エチルメチルケトン
THF:テトラヒドロフラン
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
【0043】
[合成例1]DVB及びACVAを用いた高分岐ポリマー1の合成
1Lの反応フラスコに、EGME391gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ120℃)加熱した。
別の500mLの反応フラスコに、モノマーAとしてDVB3.9g(30mmol)、開始剤BとしてACVA6.7g(24mmol)、及びEGME391gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行った。
前述の1L反応フラスコ中の還流してあるEGME中に、DVB及びACVAが仕込まれた前記500mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を60分間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させた。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてEGME742gを留去後、水/アセトン混合液(体積比9:1)430gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー
1)9.6gを得た。
得られた目的物の13C NMRスペクトルを図1に示す。13C NMRスペクトルから算出した下記構造式に示す高分岐ポリマー1の単位構造組成(モル比)は、DVBユニット:ACVAユニット=50:50であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,100、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は2.0であった。
【0044】
【化2】

式中、黒点は結合端を表す。
【0045】
[実施例1]EGDMA及びACVAを用いた高分岐ポリマー2の合成
300mLの反応フラスコに、EGME89gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ120℃)加熱した。
別の200mLの反応フラスコに、モノマーAとしてEGDMA6.0g(30mmol)、開始剤BとしてACVA4.2g(15mmol)、及びEGME89gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行った。
前述の300mL反応フラスコ中の還流してあるEGME中に、EGDMA及びACVAが仕込まれた前記200mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を60分間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させた。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてEGME140gを留去後、水/アセトン混合液(体積比9:1)300gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー2)5.5gを得た。
得られた目的物の13C NMRスペクトルを図2に示す。13C NMRスペクトルから算出した下記構造式に示す高分岐ポリマー2の単位構造組成(モル比)は、EGDMAユニット:ACVAユニット=61:29であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,300、分散度:Mw/Mnは2.4であった。
【0046】
【化3】

式中、黒点は結合端を表す。
【0047】
[実施例2]PGHM及びACVAを用いた高分岐ポリマー3の合成
300mLの反応フラスコに、EGME68gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ120℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてPGHM6.9g(30mmol
)、開始剤BとしてACVA3.4g(12mmol)、及びEGME68gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行った。
前述の300mL反応フラスコ中の還流してあるEGME中に、PGHM及びACVAが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を60分間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させた。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてEGME120gを留去後、水/アセトン混合液(体積比9:1)340gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー3)6.5gを得た。
得られた目的物の13C NMRスペクトルを図3に示す。13C NMRスペクトルから算出した下記構造式に示す高分岐ポリマー3の単位構造組成(モル比)は、PGHMユニット:ACVAユニット=61:29であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,600、分散度:Mw/Mnは2.0であった。
【0048】
【化4】

式中、黒点は結合端を表す。
【0049】
[実施例3]PGHM、HEMA及びACVAを用いた高分岐ポリマー4の合成
実施例2において、モノマーCとしてHEMA2.0g(15mmol)を追加した以外は実施例2と同様に操作し、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー4)5.0gを得た。
得られた目的物の13C NMRスペクトルを図4に示す。13C NMRスペクトルから算出した下記構造式に示す高分岐ポリマー4の単位構造組成(モル比)は、PGHMユニット:HEMAユニット:ACVAユニット=50:30:20であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,100、分散度:Mw/Mnは2.0であった。
【0050】
【化5】

式中、黒点は結合端を表す。
【0051】
[比較合成例1]カルボキシル基を有する直鎖状ポリマー1の合成
300mLの反応フラスコに、VN61.7g(400mmol)、MA8.6g(1
00mmol)、及びDMAc164g仕込み、撹拌して均一溶液とした。この溶液にMAIB1.8g(8mmol)を加え、フラスコ内を窒素置換した。その後、70℃で11時間撹拌し、室温(およそ25℃)まで放冷した。
次に、この反応液をメタノール1,500gに添加して、ポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過した。この濾物をTHF225gに溶解し、再度メタノール1,500gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、黄色粉末の目的物(直鎖状ポリマー1)32.0gを得た。
得られた目的物の13C NMRスペクトルを図5に示す。13C NMRスペクトルから算出した下記構造式に示す直鎖状ポリマー1の単位構造組成(モル比)は、VNユニット:MAユニット=80:20であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは14,700、分散度:Mw/Mnは2.0であった。
【0052】
【化6】

式中、黒点は結合端を表す。
【0053】
[実施例4]高分岐ポリマー1〜4の溶媒溶解性
合成例1及び実施例1〜3で得られた高分岐ポリマー1〜4について、表1に示す各溶媒に対する溶解性を評価した。試験は、濃度が10質量%となるように各高分岐ポリマーをそれぞれの溶媒と混合し、25℃で1分間撹拌後に、以下の基準に従って目視で評価した。結果を表1に併せて示す。
[評価基準]
○:透明な溶液となり良好に溶解
×:溶け残りがある
【0054】
[比較例1]直鎖状ポリマー1の溶媒溶解性
比較合成例1で得られた直鎖状ポリマー1について、実施例4と同様に評価した。結果を表1に併せて示す。
【0055】
【表1】

【0056】
[実施例5]高分岐ポリマー1〜4を用いた単独薄膜の作製
合成例1及び実施例1〜3で得られた高分岐ポリマー1〜4について、それぞれ5質量%PGME溶液(ワニス)を調製した。このワニスをフィルタろ過し、シリコンウェハー上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで1,500rpm×30秒間、さらにslope5秒間)し塗膜を得た。この塗膜を100℃で30分間加熱処理することで溶媒を除去し、成膜した。何れの高分岐ポリマーについても、表面荒れのない均一な膜が得られた。得られた各薄膜の膜厚を表2に併せて示す。
【0057】
【表2】

【0058】
[実施例6〜8]高分岐ポリマー1のポリイソシアネートとの硬化
以下のA液及びB液をそれぞれ調製した。
A液:合成例1に従って合成した高分岐ポリマー1の10質量%MEK溶液
B液:ポリイソシアネート[日本ポリウレタン工業(株)製 コロネート2770(イソシアネート基含量:19.4質量%)]の10質量%MEK溶液
次に、A液中のカルボキシル基とB液中のイソシアネート基とのモル比が1:1となるように、A液2.5gとB液2.2gを混合し、均一な硬化性組成物を調製した。
この硬化性組成物を、2cm×2cmのガラス基材上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで2,000rpm×30秒間、さらにslope5秒間)し塗膜を得た。この塗膜を、それぞれ100℃(実施例6)、125℃(実施例7)、150℃(実施例8)で5分間加熱することで硬化膜を作製した。
得られた硬化膜をアセトンに30秒間浸漬し、浸漬前後の膜厚から硬化度(=浸漬後膜厚÷浸漬前膜厚×100)を評価した。さらに、浸漬後の膜の光透過率及びHAZE値を測定した。また、150℃での硬化膜(実施例8)については、アセトン浸漬後の水の接触角を測定した。結果を表3に併せて示す。
【0059】
[実施例9〜11]高分岐ポリマー2のポリイソシアネートとの硬化
実施例6〜8において、A液を高分岐ポリマー2の10質量%MEK溶液に、B液と混合するA液の量を6.2gに、それぞれ変更した以外は実施例6〜8と同様に操作、評価した。結果を表3に併せて示す。
【0060】
[実施例12〜14]高分岐ポリマー3のポリイソシアネートとの硬化
実施例6〜8において、A液を高分岐ポリマー3の10質量%MEK溶液に、B液と混合するA液の量を7.0gに、それぞれ変更した以外は実施例6〜8と同様に操作、評価した。結果を表3に併せて示す。
【0061】
[実施例15〜17]高分岐ポリマー4のポリイソシアネートとの硬化
実施例6〜8において、A液を高分岐ポリマー4の10質量%MEK溶液に、B液と混合するA液の量を8.9gに、それぞれ変更した以外は実施例6〜8と同様に操作、評価した。結果を表3に併せて示す。
【0062】
[比較例2〜4]直鎖状ポリマー1のポリイソシアネートとの硬化
実施例6〜8において、A液を直鎖状ポリマー1の10質量%MEK溶液に、B液と混合するA液の量を7.0gに、硬化膜の浸漬溶媒をTHFに、それぞれ変更した以外は実施例6〜8と同様に操作、評価した。結果を表3に併せて示す。
【0063】
[比較例5〜7]分岐状3官能ポリオールのポリイソシアネートとの硬化
以下のA液及びB液をそれぞれ調製した。
A液:F510の10質量%MEK溶液
B液:ポリイソシアネート[日本ポリウレタン工業(株)製 コロネート2770(イソシアネート基含量:19.4質量%)]の10質量%MEK溶液
次に、A液中のヒドロキシ基とB液中のイソシアネート基とのモル比が1:1となるように、A液1.7gとB液2.2gを混合し、均一な硬化性組成物を調製した。
この硬化性組成物を、2cm×2cmのガラス基材上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで2,000rpm×30秒間、さらにslope5秒間)し塗膜を得た。この塗膜を、それぞれ100℃(比較例5)、125℃(比較例6)、150℃(比較例7)で5分間加熱することで硬化膜を作製した。
得られた硬化膜をアセトンに30秒間浸漬し、浸漬前後の膜厚から硬化度を評価した。さらに、浸漬後の膜の光透過率及びHAZE値を測定した。結果を表3に併せて示す。
【0064】
[比較例8〜10]鎖状2官能ポリオールのポリイソシアネートとの硬化
比較例5〜7において、A液をP1010の10質量%MEK溶液に、B液と混合するA液の量を5.2gに、それぞれ変更した以外は比較例5〜7と同様に操作、評価した。結果を表3に併せて示す。
【0065】
[比較例11〜13]樹枝状64官能ポリオールのポリイソシアネートとの硬化
以下のA液及びB液をそれぞれ調製した。
A液:H40の10質量%DMF/MEK(質量比7:3)溶液
B液:ポリイソシアネート[日本ポリウレタン工業(株)製 コロネート2770(イソシアネート基含量:19.4質量%)]の10質量%DMF/MEK(質量比7:3)溶液
次に、A液中のヒドロキシ基とB液中のイソシアネート基とのモル比が1:1となるように、A液1.1gとB液2.2gを混合し、均一な硬化性組成物を調製した。
この硬化性組成物を、2cm×2cmのガラス基材上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで2,000rpm×30秒間、さらにslope5秒間)し塗膜を得た。この塗膜を、それぞれ100℃(比較例11)、125℃(比較例12)、150℃(比較例13)で5分間加熱することで硬化膜を作製した。
得られた硬化膜をDMFに30秒間浸漬し、浸漬前後の膜厚から硬化度を評価した。さらに、浸漬後の膜の光透過率及びHAZE値を測定した。また、150℃での硬化膜(比較例13)については、DMF浸漬後の水の接触角を測定した。結果を表3に併せて示す。
【0066】
【表3】

【0067】
表3に示すように、実施例6〜実施例17は無触媒であっても迅速に硬化し、温度が100℃という低い硬化温度(実施例6、9、12及び15)の場合においても75%以上という高い硬化度を示した。またいずれの実施例も、透明性(透過率・HAZE値)にも優れる硬化膜を得ることができた。
一方、カルボキシル基を末端に有する直鎖状のポリマーを用いた比較例2〜比較例4は、無触媒で硬化したものの、その硬化度は150℃においても73%にとどまった。
また、市販のポリオールを用いた比較例5〜比較例7(分岐状3官能ポリオール)及び比較例8〜比較例10(鎖状2官能ポリオール)に関しては硬化温度を150℃としても殆ど硬化せず、また、比較例11〜比較例13(樹枝状64官能ポリオール)は150℃という高温では硬化したものの、100℃及び125℃では硬化が進行しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特表2010−521564号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a1)と
多官能イソシアネート化合物を含む反応剤(b)との組み合わせからなる、熱硬化性樹脂材料。
【請求項2】
分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a2)と
多官能イソシアネート化合物を含む反応剤(b)との組み合わせからなる、熱硬化性樹脂材料。
【請求項3】
前記モノマーAが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性樹脂材料。
【請求項4】
前記モノマーAが、ジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、請求項3に記載の熱硬化性樹脂材料。
【請求項5】
前記モノマーAのモル数に対して前記モノマーCを5〜300モル%の割合で用いる、請求項2に記載の熱硬化性樹脂材料。
【請求項6】
前記モノマーCが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、請求項5に記載の熱硬化性樹脂材料。
【請求項7】
前記モノマーCが、下記式[1]で表される化合物である、請求項6に記載の熱硬化性樹脂材料。
【化1】

(式[1]中、
1は水素原子又はメチル基を表し、そして
2は水素原子、カルボキシル基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20のアルキ
ル基、又はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20のアルキル基を表す。)
【請求項8】
前記重合開始剤Bが、アゾ系重合開始剤である、請求項1乃至請求項7のうち何れか一項に記載の熱硬化性樹脂材料。
【請求項9】
前記重合開始剤Bが、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)である、請求項8に
記載の熱硬化性樹脂材料。
【請求項10】
分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a1)。
【請求項11】
分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを含む反応剤(a2)。
【請求項12】
請求項1乃至請求項9のうちいずれか一項に記載の反応剤(a1)又は反応剤(a2)と反応剤(b)とを混合して得られる熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記反応剤(b)に含まれる多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数に対して、前記反応剤(a1)又は(a2)に含まれる高分岐ポリマーのカルボキシル基のモル当量が0.01〜10である、請求項12に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化膜。
【請求項15】
分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを、高められた温度で多官能イソシアネート化合物と反応せしめて硬化させることからなる、硬化樹脂の製造方法。
【請求項16】
分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマーを、高められた温度で多官能イソシアネート化合物と反応せしめて硬化させることからなる、硬化樹脂の製造方法。
【請求項17】
分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーA(ただしジビニルベンゼンを除く)と、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマー。
【請求項18】
分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にカルボキシル基若しくはヒドロキシ基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%の分子内にカルボキシル基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる、分子末端にカルボキシル基を有する高分岐ポリマー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−162592(P2012−162592A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21707(P2011−21707)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】