説明

カルボキシル基含有共重合体およびその製造方法

【課題】良好な脱墨性能を有する重合体を提供する。
【解決手段】
1質量%以上50質量%以下の下記一般式(1)で表されるエーテル結合含有単量体(A)に由来する構造単位(a)、50質量%以上99質量%以下のカルボキシル基含有単量体(B)に由来する構造単位(b)、を必須構成単位として有するカルボキシル基含有共重合体である。


上記一般式中、式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Rは、炭素数1〜20の有機基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基含有共重合体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パルプ資源の不足や価格の高騰、或いは、環境保護やゴミ対策、資源の有効利用(省資源,省エネルギー)等の各観点から、古紙(印刷古紙)を製紙原料として再利用することの重要性が益々高まってきている。これに伴い、印刷技術や方法、インク組成、古紙の性状等の多様化に対応して、古紙からバージンパルプに品質が近い再生パルプを得ることができる脱墨処理方法の開発が求められている。
【0003】
例えば特許文献1には、アニオン性単量体と疎水性単量体との共重合体を有効成分として含有する古紙再生用脱墨剤が開示されている。上記アニオン性単量体としては、アクリル酸、マレイン酸、およびマレインアミド酸が例示され、上記疎水性単量体としては、炭素数5ないし18のアルケン、スチレンおよび炭素数1ないし12の置換基をもつスチレン誘導体が例示されている。特許文献1には、上記脱墨剤は良好な脱墨効果を示すことが開示されている。
【0004】
例えば特許文献2には、少なくとも下記式
【0005】
【化1】

【0006】

(式中、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜3個のアルキル基を表し、同一でも異なってもよく、Mは水素原子、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン又はアミンカチオンを表す)の単位を含むか又は単独のα−ヒドロキシアクリル酸から誘導された、分子量が1000〜1000000の重合体と、(1)炭素数4〜22の直鎖又は分岐のアルキル基あるいはアルケニル基を有するアルコールにアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤(2)炭素数4〜22の直鎖又は分岐のアルキル基あるいはアルケニル基、又はアリル基を1個又は2個有するフェノールにアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤(3)2価以上の多価アルコール又は2価以上の多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤(4)フェノール性のOHを含有する化合物にスチレンを付加して得られた化合物にアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤(5)フェノール性のOHを含有する化合物をホルマリンで多量化して得られた化合物にアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤(6)炭素数4〜22の直鎖又は分岐のアルキル基あるいはアルケニル基を1個又は2個有するアミンにアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤(7)前記(1)の誘導体のポリアルキレンオキサイドの末端OH基に、エステル化触媒を使用して炭素数7〜22の高級脂肪酸にて高温でエステル化反応、又は、高級脂肪酸クロライドとの脱塩酸反応あるいは低級アルコール高級脂肪酸エステルを用いてエステル交換反応をして得られる誘導体を含有する脱墨剤(8)前記(2)の誘導体のポリアルキレンオキサイドの末端OH基に前記(7)に準じてエステル化反応して得られた誘導体を含有する脱墨剤(9)2価以上の多価アルコール又は2価以上の多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体の末端OH基に前記(7)に準じてエステル化反応して得られた誘導体を含有する脱墨剤(10)前記(4)の誘導体を前記(7)に準じてエステル化反応して得られた誘導体を含有する脱墨剤(11)前記(5)の誘導体を前記(7)に準じてエステル化反応して得られた誘導体を含有する脱墨剤(12)前記(6)の誘導体を前記(7)に準じてエステル化反応して得られた誘導体を含有する脱墨剤(13)2価以上の多価アルコール又は2価以上の多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体と脂肪酸グリセライド又は1価あるいは多価アルコールの高級脂肪酸エステル合成物との混合物にアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤(14)1価のアルコール又は1価のアルコールにアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体と前記(13)に示した脂肪酸グリセライド又は1価あるいは多価アルコールの高級脂肪酸エステル合成物との混合物にアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤(15)アミノアルコール又はアミノアルコールにアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体と前記(13)に示した脂肪酸グリセライド又は1価あるいは多価アルコールの高級脂肪酸エステル合成物との混合物にアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤(16)高級脂肪酸にアルキレンオキサイドを付加して得られる誘導体を含有する脱墨剤の中から選ばれる少なくとも1種の脱墨剤を併用して使用することを特徴とする故紙の再生処理方法、が開示されている。引用文献2には、上記故紙の再生処理方法によれば、過酸化物による漂白において、顕著なる過酸化物の安定効果を促し、且つ、高い白色度および残インクの少ない高付加価値な再生故紙を得ることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−173392号公報
【特許文献2】特開平6−116886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来、種々の重合体が報告されてはいるものの、より良好な脱墨性能を有する脱僕剤の開発が求められている。
本発明の目的は、良好な脱墨性能を有する重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために様々な重合体(共重合体を含む)について鋭意検討を行なった結果、特定のエーテル結合含有単量体に由来する構成単位及びカルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を特定の割合で導入した共重合体は、優れた脱墨性能を有することを知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、1質量%以上50質量%以下の下記一般式(1)で表されるエーテル結合含有単量体(A)に由来する構造単位(a)、50質量%以上99質量%以下のカルボキシル基含有単量体(B)に由来する構造単位(b)、を必須構成単位として有するカルボキシル基含有共重合体である。
【0010】
【化2】

【0011】

式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Rは、炭素数1〜20の有機基を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカルボキシル基含有共重合体は、優れた脱墨性能を有する。よって、例えば脱墨剤として有用に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
〔本発明のカルボキシル基含有共重合体〕
<単量体(A)としてのエーテル結合含有単量体>
本発明のカルボキシル基含有共重合体は、下記一般式(1)で表されるエーテル結合含有単量体(A)に由来する構造単位(a)を特定の割合で有することを必須としている。
【0015】
【化3】

【0016】

一般式(1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Rは、炭素数1〜20の有機基を表す。
【0017】
一般式(1)において、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わすが、これらの基であることにより、脱墨性能が向上する傾向にある。また、例えばカルボニル基やアミド基の場合等と比較して耐加水分解性が優れる為、重合時や、重合体を含む各種用途製品の製造時等の加熱条件下においても分解が抑制されるため、用途製品の品質が向上する(ばらつきが少なくなる)。
得られる共重合体の脱墨性能の向上効果がより高いことから、RはCH基、CHCH基であることが好ましい。
【0018】
一般式(1)において、得られる共重合体の脱墨性能の向上効果が高くなる傾向にあることから、Rは水素原子であることが好ましい。
は、上述の通り、炭素数1〜20の有機基であるが、Rは、アミノ基、アミド基、水酸基、アルコキシド基、スルホン酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基を含んでいても良い。Rは、エーテル結合やスルフィド結合、エステル結合、アミド結合を含んでいても良い。但し、得られる共重合体の脱墨性能の向上効果が高くなる傾向にあることから、Rは、ヘテロ原子を含まないことが好ましい。
有機基としては、得られる共重合体の脱墨性能の向上効果が高いことから、置換または無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましく、無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基であることがより好ましい。
上記置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基とは、アルキル基、アリール基、アルケニル基の有する水素原子の一部または全部が、例えば上記の官能基等の官能基で置換されている基を表す。
【0019】
は好ましくは炭素数2〜18の有機基であることが好ましく、炭素数3〜16の有機基であることがより好ましく、炭素数4〜14の有機基であることが特に好ましい。
【0020】
として、具体的にはメチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基のアルキル基;ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等のアルケニル基;フェニル基、フェネチル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)で表されるエーテル結合含有単量体(A)は、市販のものを使用しても良いが、例えば、アリルクロライド、メタリルクロライド、イソプレニルクロライド等のハライドにアルコールを付加する方法;アリルアルコール、メタリルアルコール、イソプレノール等のアルコールと、アルキルハライド等を反応させる方法等により製造しても良い。
【0022】
単量体(A)としては、例えば、アリルメチルエーテル、アリルイソプロピルエーテル、アリルブチルエーテル(アリルノルマルブチルエーテル)、アリルイソブチルエーテル、アリルターシャリーブチルエーテル、アリルオクチルエーテル、メタリルブチルエーテル、メタリルオクチルエーテル等の(メタ)アリルアルキルエーテル;アリルフェニルエーテル、アリルナフチルエーテル、メタリルフェニルエーテル等の(メタ)アリルアリールエーテル;イソプレニルブチルエーテル、イソプレニルオクチルエーテル等のイソプレニルアルキルエーテル;イソプレニルフェニルエーテル等のイソプレニルアリールエーテル;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;等が例示される。得られる重合体の脱墨性能が向上することから、好ましくは(メタ)アリルアルキルエーテル、(メタ)アリルアリールエーテル、イソプレニルアルキルエーテル、イソプレニルアリールエーテルである。
【0023】
上記構成単位(a)は、単量体(A)、すなわち上記式(1)において、重合性の不飽和二重結合(CH=C(R)−)が単結合(−CH−C(R)−)になった構造であり、下記一般式(2)で表される。
【0024】
【化4】

【0025】

一般式(2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Rは、炭素数1〜20の有機基を表す。
【0026】
本発明の共重合体は、構造単位(a)を1種のみで含んでいても良いが、2種類以上含んでいても良い。
【0027】
本発明のカルボキシル基含有共重合体は、上記一般式(1)で表されるエーテル結合含有単量体(A)に由来する構造単位(a)を全単量体(エーテル結合含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)、後述するその他の単量体(E))に由来する構造単位の合計(すなわち、構造単位(a)、構造単位(b)、構造単位(e)の合計)100質量%に対して、1質量%以上50質量%以下の割合で有することを必須としている。構造単位(a)が上記範囲内であれば、共重合体の脱墨性能が向上する傾向にある。全単量体に由来する構造単位の合計100質量%に対する構造単位(a)の割合は、好ましくは2質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上30質量%以下である。
【0028】
<単量体(B)としてのカルボキシル基含有単量体>
本発明のカルボキシル基含有共重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を特定の割合で有することを必須としている。
【0029】
本発明のカルボキシル基含有単量体(B)は、1)炭素炭素不飽和二重結合と2)カルボキシル基および/またはその塩を必須として含有する単量体である(但し単量体(A)に属する単量体は、単量体(B)から除くものとする)。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の、不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩等;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチレングルタル酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩等が挙げられる。
【0030】
上記塩とは、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩である。金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、等のアルカリ土類金属の塩;アルミニウム、鉄等の塩等が挙げられる。また、有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;エチレンジアミン塩、トリエチレンジアミン塩等のポリアミン等の有機アミンの塩が挙げられる。共重合体の脱墨性能が向上する傾向にあることから、塩の中でも、好ましくはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩である。
【0031】
カルボキシル基含有単量体(B)の中でも、共重合体の脱墨性能の向上効果が高いことから、アクリル酸、アクリル酸塩、マレイン酸、マレイン酸塩が好ましく、アクリル酸、アクリル酸塩を必須とすることがより好ましい。
【0032】
本発明の共重合体は、構造単位(b)を1種のみで含んでいても良いが、2種類以上含んでいても良い。
【0033】
上記構成単位(b)は、単量体(B)の不飽和二重結合(CH=C(R)−)が単結合(−CH−C(R)−)になった構造である。
【0034】
本発明のカルボキシル基含有共重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を全単量体に由来する構造単位の合計100質量%に対して、50質量%以上99質量%以下の割合で有することを必須としている。構造単位(b)が上記範囲内であれば、脱墨性能が向上する傾向にある。全単量体に由来する構造単位の合計100質量%に対する構造単位(b)の割合は、好ましくは60質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上97質量%以下である。
【0035】
なお、本発明において、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)の全単量体に由来する構造単位の合計に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応する酸換算として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムに由来の構造単位−CH−CH(COONa)−であれば、対応する酸であるアクリル酸由来の構造単位−CH−CH(COOH)−として、質量割合(質量%)の計算をする。同様に、カルボキシル基含有単量体(B)の全単量体に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムであれば、対応する酸であるアクリル酸として質量割合(質量%)の計算をする。
更に、カルボキシル基含有単量体(B)以外の酸基含有単量体由来の構造単位の全単量体に由来する構造単位に対する質量割合(質量%)を計算する場合においても、対応する酸換算として計算するものとし、カルボキシル基含有単量体(B)以外の酸基含有単量体の全単量体に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算として計算するものとする。アミノ基含有単量体由来の構造単位、アミノ基含有単量体も対応する未中和アミン由来の構造単位、未中和アミンとして質量計算するものとする。例えば、ビニルアミン塩酸塩の場合、対応する未中和アミンであるビニルアミンとして質量割合(質量%)を計算する。
【0036】
<その他の単量体>
本発明のカルボキシル基含有共重合体は、その他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していても構わない。
本発明のカルボキシル基含有共重合体が他の単量体(E)を含む際の他の単量体(E)としては、上記単量体(A)および/または(B)と共重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、所望の効果によって適宜選択される。具体的には、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシネオペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基と重合性基を有するビニル芳香族系アミノ基含有単量体およびこれらの4級化物や塩;ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のアリルアミン類およびこれらの4級化物や塩;(i)(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、(ii)ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン等のジアルキルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、イミノジ酢酸、グリシン等のアミノカルボン酸、モルホリン、ピロール等の環状アミン類等のアミンを反応させることにより得られる単量体およびこれらの4級化物や塩等;スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体、イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
また、上記他の単量体(E)は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0037】
本発明のカルボキシル基含有共重合体は、任意であるが、上記構造単位(e)を全単量体に由来する構造単位の合計100質量%に対して、0質量%以上40質量%以下の割合で有していても良い。全単量体に由来する構造単位の合計100質量%に対する構造単位(e)の割合は、好ましくは0質量%以上、20質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以上、10質量%以下である。
本発明のカルボキシル基含有共重合体は、上記構成単位(a)、(b)、ならびに必要であれば構造単位(e)が、上記したような特定の割合で導入されていればよく、各構成単位は、ブロック状あるいはランダム状のいずれで存在していてもよい。また、本発明のカルボキシル基含有共重合体の重量平均分子量は、適宜設定できるものであり、特に限定されない。具体的には、カルボキシル基含有共重合体の重量平均分子量は、2,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜60,000、最も好ましくは4,000〜30,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、脱墨性能が向上する傾向にある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、実施例に記載される方法に従って測定されたものである。
【0038】
〔本発明のカルボキシル基含有共重合体組成物(単に、重合体組成物ともいう)〕
本発明のカルボキシル基含有共重合体組成物は、本発明のカルボキシル基含有共重合体を必須として含有し、カルボキシル基含有共重合体以外の成分は任意であるが、通常はその他に、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分から選ばれる1以上を含有する。好ましいカルボキシル基含有共重合体組成物の形態は、カルボキシル基含有共重合体を20〜80質量%含有し、水を20〜80質量%含有する形態である。
本発明の重合体組成物は、残存単量体の合計が重合体組成物の固形分換算で、0〜15000ppmであることが好ましく、0〜10000ppmであることがより好ましい。
【0039】
〔本発明のカルボキシル基含有共重合体の製造方法〕
本発明のカルボキシル基含有共重合体の製造方法は、特に断りの無い限りは、公知の重合方法を同様にしてあるいは修飾した方法が使用できる。本発明のカルボキシル基含有共重合体を製造する方法としては、エーテル結合含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)を必須として含む単量体(単量体成分)を共重合する工程(重合工程)を必須に含むことにより製造することができる。また、単量体成分を共重合する際には、必要に応じ、上記その他の単量体(E)を更に共重合させてもよい。
【0040】
このような製造方法においては、重合開始剤を用いて単量体成分を共重合すればよい。なお、カルボキシル基含有共重合体を構成する構成単位が上述したようになるように、単量体成分に含まれる単量体の種類や使用量を適宜設定することになる。すなわち、上記カルボキシル基含有共重合体を形成する各単量体の組成比は、全単量体(すなわち、エーテル結合含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)、その他の単量体(E))に対して、エーテル結合含有単量体(A)が1質量%以上、50質量%以下、カルボキシル基含有単量体(B)が50質量%、以上99質量%以下である。上述したように、さらにこれらと共重合可能な上記その他の単量体(E)を、全単量体の合計を100質量%とした場合に、0質量%以上、40質量%以下の量で使用してもよい。より好ましくは、エーテル結合含有単量体(A)が2質量%以上40質量%以下、カルボキシル基含有単量体(B)が60質量%以上98質量%以下、その他の単量体(E)が0質量%以上、20質量%以下であり、さらに好ましくは、エーテル結合含有単量体(A)が3質量%以上30質量%以下、カルボキシル基含有単量体(B)が70質量%以上97質量%以下、その他の単量体(E)が0質量%以上、10質量%以下である。なお、上記単量体(A)、(B)及び(E)の合計量は100質量%としている。
【0041】
本発明において、単量体(A)〜(B)、さらに必要であれば他の単量体(E)の共重合は、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いる方法および/または連鎖移動剤の存在下で行なう方法が好ましく、使用する溶媒の50質量%以上に水を用い、かつ連鎖移動剤の存在下で行なうことがより好ましい。この際、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることによって、重合に使用される有機溶剤の量を抑制できるため、重合終了後の有機溶剤の留去が容易であるという利点がある。また、連鎖移動剤を使用すると、製造されるカルボキシル基含有共重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量のカルボキシル基含有共重合体を効率よく製造することができるという利点がある。特に連鎖移動剤として重亜硫酸(塩)を使用すると、以下に詳述するが、得られるカルボキシル基含有共重合体の末端に定量的にスルホン酸基を導入することができ、また、脱墨性能を向上することができる為好ましい。
【0042】
したがって、本発明の製造方法の好ましい形態は、1質量%以上50質量%以下の式(1)のエーテル結合含有単量体(A)、50質量%以上99質量%以下の式(2)のカルボキシル基含有単量体(B)、必要に応じて0質量%以上40質量%以下のその他の単量体(E)(ただし、単量体(A)、(B)及び(E)の合計比率は100質量%である)を、使用する溶媒の50質量%以上に水を用い、かつ連鎖移動剤を用いて重合反応を行なう工程を含む、カルボキシル基含有共重合体の製造方法である。
【0043】
本発明の製造方法で使用される溶媒としては、特に制限されないが、使用する溶媒全量に対して50質量%の割合で水を含むものが好ましい。重合に使用される単量体の溶媒への溶解性向上という観点から、必要に応じて、有機溶媒を添加してもよい。この際使用できる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で試用されてもよい。本発明では、水の量は、使用する溶媒全量に対して、好ましくは80質量%以上であることが好ましく、最も好ましくは水単独(即ち、100質量%)である。
【0044】
上記溶媒の使用量としては、全単量体の合計100質量%に対して40〜200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、180質量%以下であり、更に好ましくは、150質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%以下であると、得られる共重合体の分子量が高くなるおそれがあり、200質量%を超えると、得られる共重合体の濃度が低くなり、溶媒除去が必要となるおそれがある。
【0045】
本発明の製造方法で使用される開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩が好ましく、残存単量体を低減できることから、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0046】
上記開始剤の使用量は、単量体(A)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(E)の共重合を開始できる量であれば特に制限されないが、単量体(A)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(E)からなる全単量体成分1モルに対して、10g以下、より好ましくは1〜5gであることが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法において、共重合を連鎖移動剤の存在下で行なうことが好ましい要件である。この際使用できる連鎖移動剤としては、分子量の調節ができる化合物であれば特に制限されず、公知の連鎖移動剤が使用できる。具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、重亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、メタ重亜硫酸塩、亜流酸塩、チオ硫酸塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
これらのうち、本発明に係る共重合反応においては、重亜硫酸(塩)(メタ重亜硫酸塩のように加水分解により亜流酸塩を生成する化合物を含む)を用いることが好適である。これにより、得られるカルボキシル基含有共重合体の主鎖末端に定量的にスルホン酸基を導入することができるととなり、耐ゲル性を向上することが可能となる。なお、スルホン酸基を定量的に導入できるということは、重亜硫酸(塩)が連鎖移動剤等として非常に良好に機能していることを示しており、これにより、重合反応系に過剰な連鎖移動剤等を添加する必要がなくなり、共重合体の製造コストの上昇を低減するとともに、製造効率が向上され、しかも不純物を十分に低減することが可能となる。また、重合反応系に重亜硫酸(塩)を加えることによって、得られる共重合体が必要以上に高分子量化することが抑制されることとなる。重亜硫酸(塩)を使用することにより、得られる重合体の脱墨性能が向上する傾向にある。
【0048】
上記重亜硫酸(塩)における塩とは、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩である。重亜硫酸(塩)のなかでも、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムが好ましい。重亜硫酸(塩)は、1種類のみを使用しても良く、2種以上を使用しても良い。
【0049】
本発明の方法において、連鎖移動剤の使用量は制限されないが、好ましくは単量体(A)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(E)からなる全単量体の使用量1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。1g以下であると、分子量の制御ができないおそれがあり、逆に、20gを超えると、不純物が多量に生成し、重合体純分が低下するおそれがあり、特に重亜硫酸(塩)を使用する場合には、余剰の重亜硫酸(塩)が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生するおそれがある。しかも、経済的にも不利となるおそれがある。
【0050】
本発明の製造方法において、反応促進剤として重金属イオンを使用しても良い。本発明において重金属とは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
【0051】
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いる方法を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH4)2(SO4)2・6H2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明のカルボキシル基含有共重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
【0052】
上記重金属イオンを使用する場合の重金属イオン量、本発明における重合工程において、触媒量含まれていることが好ましい。本明細書でいう触媒量とは、触媒として、最終目的物に取り込まれるものでなく作用するものであり、具体的には、100ppm以下であり、好ましくは、10ppm以下であり、より好ましくは5ppm以下である。
【0053】
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm以下であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。
【0054】
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体がアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0055】
上記開始剤と連鎖移動剤との組み合わせとしては、上記の通り、過硫酸塩と重亜硫酸(塩)とをそれぞれ1種以上用いることが最も好ましい。この場合、過硫酸塩と重亜硫酸(塩)との混合比は、特に制限されないが、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸(塩)0.5〜5質量部を用いることが好ましい。より好ましくは、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸(塩)の下限は、1質量部であり、最も好ましくは2質量部である。また、重亜硫酸(塩)の上限は、過硫酸塩1質量部に対して、より好ましくは4質量部であり、最も好ましくは3質量部である。ここで、重亜硫酸(塩)が0.5質量部以下であると、低分子量化する際に開始剤総量が増加するおそれがあり、逆に5質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加するおそれがある。
【0056】
上記連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせは、特に制限されず、上記各例示の中から適宜選択できる。例えば、連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせとしては、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、過酸化水素/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/Fe(鉄イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe(鉄イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/酸素/Fe(鉄イオン)、次亜リン酸ナトリウム/過硫酸ナトリウム等の形態が好ましい。より好ましくは、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe(鉄イオン)であり、最も好ましくは亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe(鉄イオン)である。
【0057】
上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の総使用量は、単量体(A)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(E)からなる全単量体成分1モルに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明のカルボキシル基含有共重合体を効率よく生産することができ、また、カルボキシル基含有共重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
【0058】
上記共重合方法において、単量体や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体(A)〜(B)のうちの一(例えば、単量体(B))の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体(単量体(B)の残り及び単量体(A)ならびに必要であれば単量体(E)のすべて)を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、脱墨剤として用いる場合の脱墨性能を向上することができうることから、重合開始剤と単量体を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
なお、溶媒は、重合初期に一部又は全量を反応容器内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部を重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよいし、単量体成分や開始剤等を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよい。
【0059】
上記共重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合等の通常用いられる方法で行うことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合が好ましい。この際使用できる溶媒は、上述したように、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒または水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。
【0060】
上記共重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。
上記共重合方法において、共重合温度等の共重合条件としては、用いられる共重合方法、溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、共重合温度としては、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。特に、重亜硫酸(塩)を用いる場合には、共重合温度は、通常、60℃〜95℃、好ましくは70℃〜95℃、さらに好ましくは、80℃〜95℃である。この際、60℃以下では、重亜硫酸(塩)由来の不純物が多量に生成するおそれがある。逆に、95℃を越えると、有毒な亜硫酸ガスが放出されるおそれがある。
【0061】
上記共重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0062】
上記共重合時間としては、30〜300分であることが好ましい。より好ましくは、60〜240分であり、更に好ましくは、120〜180分である。
なお、本発明において「重合時間」とは、回文式(バッチ式)重合方法において、単量体の一部または全部を反応器(反応釜)に添加しながら重合する場合には、最初に重合開始剤の一部または全部と、単量体の一部または全部が反応器に添加された時点(重合開始時点という)から、単量体の全量が反応器に添加された時点(重合終了時点という)までをいう。また、回文式(バッチ式)重合方法において、単量体の全量を予め反応器に添加して(初期仕込みという)、重合開始剤の一部または全部を反応器(反応釜)に添加しながら重合する場合には、最初に重合開始剤の一部または全部と、単量体の全部が反応器に添加された時点から、重合開始剤の全量が反応器に添加された時点までである。また、回文式(バッチ式)重合方法において、単量体の全量と、重合開始剤の全量とを予め反応器に添加して、加熱等の手段により重合を行なう場合には、発熱(重合熱の発生)が見られる時間をいう。また、連続式で重合する場合には、反応器に滞留している時間をいう。
【0063】
上記共重合方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであってもよいが、得られる共重合体の分子量の点で、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0064】
上記共重合における重合中のpHは、酸性が好ましい。特に、上記開始剤として、過硫酸塩と重亜硫酸(塩)とを併用する場合は、酸性条件下で行うことが好ましい。酸性条件下で行うことによって、重合反応系の水溶液の粘度の上昇を抑制し、共重合体を良好に製造することができる。また、高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるので、製造効率を大幅に上昇することができ、最終固形分濃度が40%以上の高濃度重合とすることができ、含まれる残存モノマーの総濃度が15000ppm以下のものを得ることができる。更に、エーテル結合含有単量体の重合性を向上することができる。
【0065】
上記酸性条件としては、重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であることが好ましい。より好ましくは、5以下であり、更に好ましくは、3以下である。上記共重合方法により得られる共重合体は、重合終了時のpHに応じた中和状態で使用しても良いが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和してから(中和工程とも言う)用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アンモニウム(有機アミン)等を用いることが好ましい。
【0066】
共重合を行う際の中和率は、開始剤によって適宜変更できる。例えば、過硫酸塩と重亜硫酸(塩)とを併用する場合は、上記単量体が塩を形成し得るものである場合、カルボキシル基含有単量体の中和率を0〜60モル%として単量体成分の共重合を行うことが好ましい。単量体の中和率は、単量体の全モル数を100モル%としたときに、塩を形成している単量体のモル%で表されることになる。単量体の中和率が60モル%を超えると、共重合工程における重合率が上がらず、得られる共重合体の分子量が低下したり、製造効率が低下したりするおそれがある。より好ましくは、50モル%以下であり、更に好ましくは、40モル%以下、特に好ましくは、30モル%以下であり、より特に好ましくは、20モル%以下であり、最も好ましくは、10モル%以下である。
【0067】
上記単量体の中和率を0〜60モル%として共重合を行う方法としては、例えば、全ての酸基含有単量体(カルボキシル基含有単量体等)を酸型で中和せずに共重合に付することにより行う方法や、酸基含有単量体をアルカリ性物質を用いてナトリウム塩やアンモニウム塩等の塩の形態に中和するときに中和率を0〜60モル%としたものを共重合に付することにより行う方法等が好適である。
【0068】
本発明の製造方法は、通常重合工程を必須として含むことになる。その他、中和工程、精製工程等を含んでいても良い。
【0069】
上記カルボキシル基含有共重合体(または重合体組成物)は、脱墨剤として好適に使用される他、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)、スケール防止剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤、スキンケア剤、ヘアケア剤等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用等に添加されて使用されうる。
【0070】
<脱墨剤>
本発明のカルボキシル基含有共重合体(または重合体組成物)は、そのまま脱墨剤として使用できる。本発明にかかる脱墨剤は、必要に応じて、一般的に用いられている各種薬剤、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤;過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の漂白剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のキレート剤;過酸化水素安定剤、発泡剤、ピッチコントロール剤、解離促進剤、或いは、公知の脱墨剤と併用することができるが、特に限定されるものではない。尚、本発明にかかる脱墨剤と併用することができる公知の脱墨剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸系や陰イオン性界面活性剤系、各種非イオン性界面活性剤系の脱墨剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、非イオン性界面活性剤とカチオン性化合物等とを併用する公知の脱墨処理工程においても、該脱墨処理工程を行うのに特に支障が無ければ、本発明にかかる脱墨剤を併用することができる。
【0071】
本発明にかかる脱墨剤における本発明のカルボキシル基含有共重合体の含有量は、特に限定されるものではないが、1重量%〜100重量%の範囲内がより好ましく、2重量%〜100重量%の範囲内がさらに好ましく、10重量%〜100重量%の範囲内が特に好ましく、20重量%〜100重量%の範囲内が最も好ましい。また、本発明にかかる脱墨剤と併用することができる上記各種薬剤や公知の脱墨剤等の添加量は、本発明にかかる脱墨剤が備える効果を阻害しない範囲内であればよく、特に限定されるものではない。
【0072】
本発明にかかる脱墨剤を用いた脱墨処理方法は、特に限定されるものではなく、公知の一般的な方法、例えば、洗浄法やフローテーション法、或いは洗浄法とフローテーション法との折衷法等を採用することができる。より具体的には、例えば、脱墨処理工程は、一般的に、水中で古紙(印刷古紙)を解砕してパルプスラリーを得る解砕工程、解砕工程後にパルプスラリーを所定時間放置して熟成させる熟成工程、パルプ(繊維)からインクを脱離させて除去する除去工程、および、インクを除去した該パルプスラリーを濾過・洗浄する洗浄工程から少なくとも成り立っている。これら各工程は、印刷の技法、インク(油性インク)の組成や量、古紙の性状等に応じて、必要であれば2回以上繰り返して行われる。また、上記工程に加えて、脱墨処理において通常実施されている脱水工程やスクリーン工程、分散工程等を行うこともできる。
【0073】
尚、古紙を形成しているパルプとしては、具体的には、例えば、機械パルプ(MP)や化学的機械パルプ(CGP)等の高収率パルプ;脱墨パルプ(DIP);ソーダパルプ(AP)やクラフトパルプ(KP)等の化学パルプ;等の木材パルプ等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0074】
解砕工程において用いられる解砕機(離解機)としては、例えば、パルパーやリファイナー、ニーダー等が挙げられる。パルプスラリーにおけるパルプ濃度は、特に限定されるものではないが、3重量%〜25重量%の範囲内が好適である。パルプスラリーの温度は、20℃〜70℃の範囲内が好適である。パルプスラリーのpHは、7.5〜11.5の範囲内が好適であり、8.0〜11.5の範囲内が最適である。
【0075】
熟成工程におけるパルプ濃度は、特に限定されるものではないが、10重量%〜30重量%の範囲内が好適である。パルプスラリーの温度は、30℃〜80℃の範囲内が好適である。パルプスラリーの熟成時間は、特に限定されるものではないが、1時間以上が好適である。
【0076】
除去工程におけるパルプ濃度は、特に限定されるものではないが、0.5重量%〜1.5重量%の範囲内が好適である。パルプスラリーの温度は、20℃〜50℃の範囲内が好適である。上記除去工程としては、フローテーション工程が好適である。尚、フローテーション工程において泡を形成する方法は、特に限定されるものではない。
【0077】
脱墨処理において使用する水のカルシウムイオン濃度は、特に限定されるものではなく、一般的に工業用水や水道水が示す濃度である10ppm〜400ppmの範囲内、より好ましくは100ppm〜250ppmの範囲内であれば充分である。水のカルシウムイオン濃度が上記範囲内であれば、微細なパルプがより大きなパルプに吸着されるので、再生パルプを歩留り良く得ることができる。また、インクのパルプへの再付着を抑制することができる。該水のアルミニウムイオン濃度は、特に限定されるものではなく、40ppm以下、より好ましくは25ppm以下であれば充分である。本発明にかかる脱墨剤は、カルボキシル基が多数導入されたポリアニオン構造を備えているので、パルプスラリーにおけるカルシウムイオン濃度並びにアルミニウムイオン濃度を適度な値に保つことができ、その結果、脱墨処理工程を、より一層容易に行うことができるようになっている。
【0078】
脱墨処理において使用する水のpHは、特に限定されるものではない。該水のpHは、一般的な酸・塩基を用いて調整することができる。本発明にかかる脱墨剤は、パルプスラリーへの分散性が良好であるので、操作性に優れている。
【0079】
脱墨剤の使用量は、印刷の技法、インクの組成や量、古紙の性状等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、脱墨すべき古紙の乾燥重量(絶乾重量)に対して、0.05重量%〜10重量%の範囲内がより好ましく、0.1重量%〜5重量%の範囲内がさらに好ましい。使用量が0.05重量%よりも少ない場合には、インクを充分に除去することができない場合がある。一方、使用量を10重量%より多くしても、更なる効果は期待できず、過剰の脱墨剤が無駄になる。
【0080】
<水処理剤>
本発明のカルボキシル基含有共重合体(または重合体組成物)は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0081】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0082】
<繊維処理剤>
本発明のカルボキシル基含有共重合体(または重合体組成物)は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明のカルボキシル基含有共重合体を含む。
【0083】
上記繊維処理剤における本発明のカルボキシル基含有共重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0084】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0085】
本発明のカルボキシル基含有共重合体と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明のカルボキシル基含有共重合体1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0086】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0087】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明のカルボキシル基含有共重合体と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明のカルボキシル基含有共重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明のカルボキシル基含有共重合体(または重合体組成物)は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0088】
上記無機顔料分散剤中における、本発明のカルボキシル基含有共重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0089】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0090】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、本発明のカルボキシル基含有共重合体の重量平均分子量、脱墨性能等は、下記方法に従って測定した。
【0092】
<重量平均分子量の測定条件>
装置:日立社製 L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ, GF−710−HQ, GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min.
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
<脱墨性能評価方法(フローテーション法)>
オフセット印刷の新聞紙と雑誌類とを重量比(新聞紙/雑誌類)で7/3の割合で含む古紙を、3cm×3cmの大きさに裁断してパルプ離解機に投入した後、パルプ濃度が15%となるように、50℃の温水を所定量注ぎ入れた。次いで、アルカリ剤である水酸化ナトリウムおよびケイ酸ナトリウムを添加して水のpHを10.7に調整した。そして、古紙の乾燥重量(絶乾重量)に対して0.2%の脱墨剤としての重合体を該パルプ離解機に添加した後、10分間解砕処理して、パルプスラリーを得た。
次に、得られたパルプスラリーを80メッシュ濾布を用いて遠心脱水することにより、該パルプスラリーのパルプ濃度を24%に調節した後、水酸化ナトリウムおよびケイ酸ナトリウムを添加してパルプスラリーのpHを11.2に調整した。
続いて、該パルプスラリーに、古紙の乾燥重量に対して0.15%の上記脱墨剤と1.5%の過酸化水素(漂白剤)とを添加した後、パルプスラリーを50℃の恒温槽内で2時間熟成処理を行った。熟成終了後、パルプスラリーをニーダーに2回通過させる処理を行った。
【0093】
次いで、所定量の水を注ぎ入れ、パルプスラリーのパルプ濃度を1%に調節した後、デンバー型フローテーターを用いて35℃で12分間フローテーション処理を行った。処理後、パルプスラリーを80メッシュ濾布を用いて遠心脱水することにより、該パルプスラリーのパルプ濃度を10%に調節(濃縮)した後、所定量の水を注ぎ入れて該パルプ濃度を1%に調節(希釈)した。
このパルプスラリーから、TAPPIシートマシンを用いてパルプシートを作成した。得られたパルプシートの白色度を、測色色差計を用いてJIS P 8123に記載の方法(ハンター白色度試験方法)に準じた方法で測定した。また、画像処理装置を用いてパルプシート1cm2 当たりに形成されている4μm以下のインク染みの個数を求めた。上記測定値が大きいほど、また、インク染みの個数が少ないほど、脱墨剤が脱墨効果(インクの凝集性能等)に優れていると判断することができる。
【0094】
<重合体組成物の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで重合体組成物(重合体組成物1.0g+水3.0g)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0095】
<実施例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水128.6g、およびモール塩0.0158gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する。)270.0g、アリルnブチルエーテル(以下、「ABE」とも称する。)24.0g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する。)64.2g、および35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」とも称する。)36.7gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、ABEについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する。)225.0gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%、重量平均分子量17,000の本発明のカルボキシル基含有共重合体としての重合体(1)の水溶液(本発明の重合体組成物1)を得た。
【0096】
<実施例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水129.7g、およびモール塩0.0158gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AA270.0g、アリルnオクチルエーテル(以下、「AOE」とも称する。)24.0g、15%NaPS62.8g、および35%SBS35.9gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、AOEについては120分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH225.0gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%、重量平均分子量14,000の本発明のカルボキシル基含有共重合体としての重合体(2)の水溶液(本発明の重合体組成物2)を得た。
【0097】
<実施例3>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水101.8g、およびモール塩0.0160gを仕込み、攪拌しながら、70℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、70℃に保持された重合反応系中に、80%AA270.0g、nブチルビニルエーテル(以下、「BVE」とも称する。)24.0g、15%NaPS108.0g、および35%SBS27.8gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、BVEについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を70℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH225.0gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%、重量平均分子量10,000の本発明のカルボキシル基含有共重合体としての重合体(3)の水溶液(本発明の重合体組成物3)を得た。
【0098】
<比較例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水128.3g、およびモール塩0.0158gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AA270.0g、スチレン(以下、「St」とも称する。)24.0g、15%NaPS64.6g、および35%SBS36.9gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、Stについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH225.0gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%、重量平均分子量16,000の比較重合体(1)の水溶液(本発明の比較重合体組成物1)を得た。
【0099】
<比較例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水129.0g、およびモール塩0.0158gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AA270.0g、nブチルアクリレート(以下、「BA」とも称する。)24.0g、15%NaPS63.8g、および35%SBS36.4gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、Stについては160分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH225.0gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45%、13,000の比較重合体(2)の水溶液(本発明の比較重合体組成物2)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1質量%以上50質量%以下の下記一般式(1)で表されるエーテル結合含有単量体(A)に由来する構造単位(a)、50質量%以上99質量%以下のカルボキシル基含有単量体(B)に由来する構造単位(b)、を必須構成単位として有するカルボキシル基含有共重合体。
【化1】


上記一般式(1)中、式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Rは、炭素数1〜20の有機基を表す。
【請求項2】
1質量%以上50質量%以下の下記一般式(1)で表されるエーテル結合含有単量体(A)、50質量%以上99質量%以下のカルボキシル基含有単量体(B)、を必須として重合する工程を含む、カルボキシル基含有共重合体の製造方法。
【化2】


上記一般式(1)中、式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Rは、炭素数1〜20の有機基を表す。

【公開番号】特開2013−60560(P2013−60560A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201361(P2011−201361)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】