カルボキシル基含有変性エステル樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物
【課題】接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、絶縁信頼性、耐湿熱性、耐フラックス性等に優れており、プリント配線板等の電子材料周辺に用いられる印刷インク、接着剤およびコーティング剤として好適な熱硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物または芳香族多塩基酸無水物である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に、酸無水物基含有化合物(b)を反応させてなるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を含む熱硬化性樹脂組成物。
【解決手段】ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物または芳香族多塩基酸無水物である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に、酸無水物基含有化合物(b)を反応させてなるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を含む熱硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤およびコーティング剤として有用なカルボキシル基含有変性エステル樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物に関する。さらに詳細には、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として特に有用な、接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性、耐フラックス性等に優れた硬化物を与える、カルボキシル基含有変性エステル樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚しく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、これらの性能に対する要求がますます高度なものとなっている。このような要求に対応するため、プリント配線板をはじめとする電子材料の薄型化、多層化、高精細化の検討が盛んに行われており、これらに使用される接着剤、コーティング剤には、従来のガラスエポキシ等に代表される肉厚のリジッド基板では求められなかった、高度な可撓性、屈曲性、接着性、狭スペース化に伴う高い電気絶縁性、密着性、熱安定性、さらには半田クリームやポストフラックス等を使用した半田接続工程で必要不可欠なフラックス耐性等が求められている。このような電子材料周辺に用いられる接着剤・コーティング剤としては、例えば、具体的には次の(1)〜(6)が挙げられる。
【0003】
(1)層間接着剤:回路基板同士を張り合わせるために用いられるもので、直接銅あるいは銀回路に接する。多層基板の層間に使用され、液状やシート状のものがある。
(2)カバーレイフィルム用接着剤:カバーレイフィルム(回路の最表面を保護する目的で用いられるポリイミドフィルムなど)と、下地の回路基板と、を張り合わせるために用いられ、あらかじめポリイミドフィルムと、接着層とが一体化されているものが多い。
(3)銅張フィルム(CCL)用接着剤:ポリイミドフィルムと銅箔とを張り合わせるために用いられる。銅回路形成時にエッチング等の加工が施される。
(4)カバーレイ:回路の最表面を保護する目的で用いられ、回路上に印刷インクを印刷したり、接着シートを張り合わせたりした後、硬化させることで形成される。感光性や熱硬化性のものがある。
(5)補強板用接着剤:配線板の機械的強度を補完する目的で、配線板の一部を、金属、ガラスエポキシ、ポリイミド等の補強板に固定するために用いられる。
(6)電磁波シールド用接着剤:電子回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する目的で、フレキシブルプリント配線板に貼着される。
【0004】
これらの形態としては、液状(印刷用にインク化されたもの)やシート状(あらかじめフィルム化されたもの)等があり、用途に応じて適宜形態が選択される。
【0005】
こういった電子材料周辺部材への高い要求に応えるため、様々な検討が行われているが、全ての特性を充分に満足させるものは得られていない。例えば、酸価含有ポリエステル・ポリウレタン、およびエポキシ樹脂を主成分とする接着剤組成物が開示されている(特許文献1)。これは、ウレタン結合由来の良好な接着性を示すものの、架橋点間距離が離れていることから充分な架橋を形成しにくいために耐熱性に乏しく、これを補完するためにエポキシ樹脂量を増やした場合には、基材への濡れ性が低下し、接着強度が低下するという問題があった。さらに、ポリエステル骨格を主鎖として用いているため、高温加湿時の絶縁信頼性が著しく劣るという問題があった。
【0006】
また、ウレタン変性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、および硬化剤を含む接着剤組成物が開示されている(特許文献2)。これは、ウレタン結合由来の良好な接着性を示すものの、耐熱性に乏しく、また、ウレタン樹脂の分子量が低いことにより、プレス等で熱硬化する際にはみ出しが多く発生するという加工性の悪さが問題であった。さらに、特許文献1同様、ポリエステル骨格を主鎖として用いているため、高温加湿時の絶縁信頼性が著しく劣るという問題があった。
【0007】
また、ポリイミドシロキサン、両末端エポキシシロキサン、および硬化剤を含む樹脂組成物が開示されている(特許文献3)。この系ではシロキサン樹脂特有の屈曲性と優れた耐熱性とを有するものの、シロキサン骨格自体が、基材への密着性に乏しいため、架橋密度の低いエポキシシロキサンによる硬化では、充分な接着強度が得られないという問題や、エポキシ基の架橋点間距離が大きいために、プレス等で熱硬化する際にはみ出しが多く発生するという加工性の悪さが問題であった。また、他の成分との相溶性が著しく悪いために、組成物設計の自由度に乏しく、組成物としても塗膜の耐性が不充分である等の問題があった。
【0008】
また、エポキシ樹脂、イオン性不純物が可及的に少ないNBRゴム、窒素含有フェノールノボラック樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂組成物が開示されている(特許文献4)。この接着剤組成物は、プレス等で熱硬化する際にNBRゴム由来のはみ出しが多く、加工性が悪いという欠点があり、また、これを補うためにエポキシ樹脂やフェノール類を多く添加すると接着強度が低下するという問題があった。さらに、イオン性不純物が可及的に少ないNBRゴムは、高価であり、工業的に使用することが困難である場合があった。
【0009】
また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂用硬化促進剤、およびエラストマーを含む樹脂組成物が開示されている(特許文献5)。この場合も同様に、エラストマー由来の加工性悪化とエポキシ・フェノール硬化系由来の接着強度の低下を同時に改善することは難しいという問題があった。
【0010】
また、柔軟な骨格であるポリブタジエンを含む樹脂組成物が開示されている。例えば、ポリブタジエン骨格を有するポリイミド樹脂が開示されており、該ポリイミド樹脂とポリブタジエンポリオールおよびブロックイソシアネートを配合した樹脂組成物をフレキシブル回路のオーバーコート剤として使用した例が開示されている(特許文献6)。また、ポリブタジエン骨格およびポリシロキサン骨格を有するポリアミドイミド樹脂とエポキシ樹脂を配合した樹脂組成物(特許文献7)や、ポリブタジエン骨格を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂を配合した樹脂組成物(特許文献8)が開示されている。しかし、これらのブタジエン系樹脂は、高温での反応が必要となったり、ブタジエン骨格特有の酸化により、分子内架橋を引き起こし、樹脂が反応中にゲル化したり、組成物としての保存安定性が著しく低下するという問題があった。
【0011】
また、水添ポリブタジエン骨格に着目した提案がなされている(特許文献9)。この系ではカルボキシル基含有水添ポリブタジエン樹脂とエポキシ基を有するアクリル樹脂からなる複合樹脂を使用しているため、水添ポリブタジエン骨格由来の優れたフレキシブル性、銅への密着性を有する。しかしながら、複合樹脂を合成する際にエステル骨格が導入されるため、高温加湿時の絶縁信頼性や耐薬品性など、一般的な電気回路基板の絶縁材料としての基本特性には問題があった。
【0012】
また、エステル結合による鎖状構造を有するカルボキシル基含有変性エポキシ樹脂が開示されている(特許文献10)。この系は、二塩基酸とジグリシジルエーテル型エポキシ化合物との重合反応により主鎖にエステル結合を導入しているため、銅や各種基材への優れた接着強度と耐熱性とを有するものの、加水分解性に劣るエステル骨格を主鎖としているため、高温加湿時の絶縁信頼性や耐薬品性に著しく劣るという問題があった。また、二塩基酸が主要原料となっているため、ウレタン樹脂やNBRゴムを使用した系に比べるとフレキシブル性を発現しにくく、耐熱性との両立が困難である問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−116930号公報
【特許文献2】特開2007−51212号公報
【特許文献3】特開2004−91648号公報
【特許文献4】特開2003−165898号公報
【特許文献5】特開2007−161811号公報
【特許文献6】特開平11−199669号公報
【特許文献7】特開平11−246760号公報
【特許文献8】特開2003−292575号公報
【特許文献9】特開平11−114733号公報
【特許文献10】特開2005−60662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性等、とりわけ接着性と電気絶縁性の両立、屈曲性と耐熱性の両立という点で非常に優れており、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として、好適に使用される熱硬化性樹脂組成物、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは前記の課題を解決するため、鋭意検討の結果、特定のカルボキシル基含有変性エステル樹脂が前記問題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、第1の発明は、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)、
エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B)、
および熱硬化助剤(C)を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)が、
ポリオール化合物(a)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、
前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、
さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させてなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0016】
また、第2の発明は、ポリオール化合物(a)が、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリシロキサンポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である第1の発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0017】
また、第3の発明は、酸無水物基含有化合物(b)が、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸、スチルエンドスチレンテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸、および無水ピロメリット酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である第1または第2の発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0018】
また、第4の発明は、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の酸価が、1〜100mgKOH/gである第1〜第3いずれかの発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0019】
また、第5の発明は、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量が5000〜500000である第1〜第4いずれかの発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0020】
また、第6の発明は、熱硬化助剤(C)が、アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、フェノール樹脂、イミダゾール類、およびジシアンジアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である第1〜第5いずれかの発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0021】
さらに、第7の発明は、第1〜第6いずれかの発明の熱硬化性樹脂組成物を加熱により硬化させて得られる硬化物に関する。
さらにまた、第8の発明は、第7の発明の硬化物からなる層を有することを特徴とするプリント配線板に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性、耐フラックス性等、とりわけ接着性と電気絶縁性の両立、屈曲性と耐熱性の両立という点で非常に優れており、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として、好適に使用される熱硬化性樹脂組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、ポリオール化合物(a)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)〔以下、単に「酸無水物基含有化合物(b)とも表記する。〕とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させることにより得ることができ、この樹脂を用いることにより、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として非常に重要となる物性、例えば、硬化前の保存安定性、硬化後のフレキシブル性、絶縁信頼性、半田耐熱性、加湿後の半田耐熱性等を、著しく改善できる。
これは出発原料に、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを用いているためであり、従来の二塩基酸を原料としたポリエステル骨格を主鎖として用いた樹脂に比べ、ポリオール化合物(a)由来のフレキシブル性や加工性等を付与できるからである。また、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成する際に、絶縁信頼性に劣るとされているエステル結合基が嵩高い置換基で保護されるため、従来のポリエステル骨格を主鎖として用いた樹脂に比べ、絶縁信頼性、半田耐熱性等を著しく向上できるのである。
【0024】
例えば、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)の代わりに、酸無水物基含有化合物(b)には属しない酸無水物基含有化合物を使用した場合、一般的にはエステル結合由来の極性による基材密着性と耐熱性により、ある程度の接着強度と半田耐熱性は得られるものの、高温加湿のような厳しい条件下では絶縁信頼性が悪く、さらには半田耐熱性においても、高温の半田試験や加湿状態での半田試験といった、より高度な半田耐熱性が満足できない。これらの課題を解決するために、一般的には高Tg(Tg:ガラス転移温度)骨格の樹脂や高Tg骨格の硬化剤を添加するが、これらの場合、接着層全体が高Tg化し、基材への密着性が低下することで接着強度は著しく低下する。
【0025】
一方、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成する際に、エステル結合基が嵩高い置換基で保護される効果から、良好な絶縁信頼性と半田耐熱性とを同時に満足し、さらにはTgを上昇させることなく、高い接着強度を保持したまま高度な耐熱性を示すことができる。
【0026】
また、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、特にポリオール化合物(a)としてポリカーボネートポリオールや、脂環式ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール(水素添加されたものも含む)、ポリエーテルポリオール、ポリシロキサンポリオールを用いることで、より高い電気絶縁性と耐熱性を発揮することができる。さらには、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)を適切に選択することにより、一般的に基材への接着が難しいとされるポリカーボネート骨格やポリシロキサン骨格を用いているにもかかわらず、高い接着強度を示すことが可能となる。
【0027】
例えば、通常、電気絶縁性を確保するためにポリカーボネートやポリシロキサン等の耐熱性に優れる骨格を用いた場合、基材への密着性が低下するために、接着強度を確保することができない。一方、本発明は、上記の理由により、高い電気絶縁性と接着強度との二律背反を解決できるのである。
【0028】
また、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、高Tgの原料を多く使う必要がないため、優れた屈曲性を示す。一般的に屈曲性の高い樹脂は耐熱性に乏しい傾向にあるが、本発明の樹脂は、分子中のエステル結合基が嵩高い置換基で保護されているため、一般的なポリエステル樹脂に比べて高い耐熱性を示し、さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させることにより主鎖中に熱架橋点を導入していることから、架橋によってその耐熱性をさらに向上することができる。
【0029】
例えば、通常、屈曲性を確保するためには、低Tg骨格やウレタン結合を導入するが、耐熱性に乏しいため、高い耐熱性は確保できない。また、耐熱性を確保するためには、高Tg骨格や高耐熱性の結合を導入するが、これらは一般的に屈曲性に乏しいため、耐熱性と屈曲性を両立させることはできない。
【0030】
一方、本発明は、上記の理由により、高い屈曲性と高い耐熱性との二律背反を解決することができる。本発明において、ポリオール化合物(a)として低Tgのポリカーボネートポリオールや、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリシロキサンポリオールを好適に用いることで、屈曲性をさらに向上することができる。
【0031】
また、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、ポリオール化合物(a)として3官能のポリオールを好適に導入することによってこれらの効果をさらに向上することができる。具体的には、分岐構造の導入により、樹脂層の凝集力が増大し、その結果、保存安定性、加工安定性、屈曲性、電気絶縁性に全く悪影響を与えずに、接着強度や耐熱性を向上できる。
【0032】
以下、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を含む熱硬化性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0033】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させることにより得ることができる。
【0034】
本発明で用いるポリオール化合物(a)は、2個以上の水酸基を有し、さらにその構造中に重合度2以上の繰り返し単位を有するものである。また、ポリオール化合物(a)としては水酸基を2個含有する化合物が好ましく用いられ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、好ましくは500〜50000の化合物である。ポリオール化合物(a)としては、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、およびポリシロキサンポリオール類などが挙げられる。なお、本願において、特に断らない限り、重量平均分子量は、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0035】
本発明に用いるポリエステルポリオール類としては、例えば、多官能アルコール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールがある。多官能アルコール成分のうちジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられ、3個以上の水酸基を有する多官能アルコール成分としては、トリメチロールエタン、ポリトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等が挙げられる。
【0036】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸ないしはそれらの無水物が挙げられる。
【0037】
また、β−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタノラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールも使用できる。
【0038】
リン原子を有するポリエステルポリオールも使用することができ、具体的には、2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸あるいはその酸無水物と、エチレングリコールとの重縮合物、または2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−エステル、あるいはその重縮合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0039】
ポリエステルポリオールにおいて具体的には、クラレ株式会社のクラレポリオールPシリーズを用いることができる。そのなかでもP−1041、P−2041、P−2010、P−2020、P−1030、P−2030は絶縁信頼性と耐熱性があるため好ましい。
【0040】
本発明に用いられるポリカーボネートポリオール類とは、下記一般式(1)で示される構造を、その分子中に有するものである。
【0041】
一般式(1)
−[−R8−O−CO−]m−
(式中、R8は、2価の有機残基、mは、1以上の整数を表す。)
【0042】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、(1)グリコールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応、(2)グリコールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られる。
【0043】
(1)の製法で用いられる炭酸エステルとして具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0044】
(1)および(2)の製法で用いられるグリコールまたはビスフェノールとして具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類、前記ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等も用いることができる。これらの化合物は1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0045】
ポリカーボネートポリオールにおいて具体的には、クラレ株式会社のクラレポリオールCシリーズを用いることができる。そのなかでもPMHC−1050、PMHC−2050、C−1090、C−2090、C−1065N、C−2065N、C−1015N、C−2015Nは柔軟性があるため好ましい。また、宇部興産株式会社のエタナコールUC−100、UM−90(1/3)、UM−90(1/1)、UM−90(3/1)は耐熱性に優れるため好ましい。
【0046】
本発明に用いるポリエーテルポリオール類としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの重合体、共重合体、およびグラフト共重合体;
ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール若しくはこれらの混合物の縮合により得られるポリエーテルポリオール類;
ビスフェノールAやビスフェノールF等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させてなるビスフェノール類等の芳香族ジオール類;
トリメチロールエタン、ポリトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等の多価アルコールを原料の一部として用いて合成されたポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック共重合体またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのブロック共重合体またはランダム共重合体等のポリエーテルポリオール類;
などの水酸基が2個以上のものを用いることができる。
【0047】
本発明に用いるポリブタジエンポリオール類としては、例えば、その分子内の不飽和結合を水添したものも含み、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0048】
ポリブタジエンポリオールの市販品としては、日本曹達株式会社のNISSSO PB(Gシリーズ)、出光石油化学株式会社のPoly−Pd等の両末端に水酸基を有する液状ポリブタジエン;日本曹達株式会社のNISSSO PB(GIシリーズ)、三菱化学株式会社のポリテールH、ポリテールHA等の両末端に水酸基を有する水素添加ポリブタジエン;出光石油化学株式会社製のPoly−iP等の両末端に水酸基を有する液状C5系重合体;出光石油化学株式会社製のエポール、クラレ株式会社製のTH−1、TH−2、TH−3等の両末端に水酸基を有する水素添加ポリイソプレンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明に用いられるポリシロキサンポリオール類としては、一般式(2)および(3)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
一般式(2)
【0051】
【化1】
【0052】
(Xは、水酸基を表し、R1、R2はそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を表し、nは、5以上の整数を表す。)
【0053】
一般式(3)
【0054】
【化2】
【0055】
(Yは、水酸基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキル基、R4、R5、R6は、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基、R7は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは、5以上の整数を表す。)
【0056】
これらポリオール化合物(a)の中でも、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなるポリエステルジオール、1,6−ヘキサンジオールのみをグリコールとして使用してなるポリカーボネートポリオールや、1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールとをグリコールとして使用してなるポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールとをグリコールとして使用してなるポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、もしくはテトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとの共重合ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリシロキサンポリオール等は、骨格の柔軟性、耐熱性、耐加水分解性に優れることから、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂としての電気絶縁性、屈曲性、耐熱性、耐湿性等に優れ、特に好ましい。
【0057】
本発明において、これらポリオール化合物(a)は、単独で使用しても良いし、複数を併用しても良い。
【0058】
本発明は、前記ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させて得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)中のエステル結合基が、嵩高い置換基で保護されていることを最大の特徴とする。
【0059】
本発明で用いる脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸、スチルエンドスチレンテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;水添トリメリット酸無水物、水添ピロメリット酸無水物等の三塩基酸以上の脂環式多塩基酸無水物;無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の芳香族二塩基酸無水物;無水ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の三塩基酸以上の芳香族多塩基酸無水物を挙げることができる。
【0060】
これら酸無水物基含有化合物(b)の中でも、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸等は、ポリオール化合物(a)との反応によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成する際に、絶縁信頼性に劣るとされているエステル結合基を嵩高い置換基で保護し、この嵩高い置換基で保護されたエステル結合基によって主鎖が構成されるため、従来のポリエステル骨格を主鎖として用いた樹脂に比べ、高い接着性を保持したまま、絶縁信頼性、半田耐熱性等を著しく向上できることから特に好ましい。また、無水トリメリット酸や無水ピロメリット酸等は、ポリオール化合物(a)との反応によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端カルボキシル基の数を増加させることができ、続く1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)との反応において、高分子量化できるという点で本発明では好ましい。高分子量化により樹脂の凝集力が増大するため、フレキシブル性を保持したまま、塗膜形成後もより耐性に優れる強靭な塗膜を形成することができるという点で好ましい。
【0061】
本発明で任意に用いるヒドロキシル基含有化合物(a−1)は、ヒドロキシル基を1個以上有する化合物であるが、前記「ポリオール化合物(a)」に属する化合物を除く化合物であり、その代表例としては、例えば、分子中に1個のヒドロキシル基を有するモノアルコール化合物(a−1−1)、分子中に2個のヒドロキシル基を有するジオール化合物(a−1−2)、分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a−1−3)を挙げることができる。これらは、分子中に、ヒドロキシル基と、ヒドロキシル基以外の官能基を併有していてもよい。また、単独で使用してもよいし、複数を併用して用いてもよい。
【0062】
分子中に1個のヒドロキシル基を有するモノアルコール化合物(a−1−1)としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族モノアルコール;
シクロヘキサノール等の脂環族モノアルコール;
ベンジルアルコール、フルオレノール、等の芳香族モノアルコール;
フェノール、メトキノン等のフェノール類;
ヒドロキシル基以外の官能基を併有するモノアルコール化合物として、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシル基含有カルボン酸化合物、グリシドールなどのヒドロキシル基含有エポキシ化合物、オキセタンアルコールなどのヒドロキシル基含有オキセタン化合物が挙げられる。その他、片末端メトキシ化ポリエチレングリコール、片末端メトキシ化ポリプロピレングリコール、モノアルコールを開始剤としたカプロラクトン付加重合物、などのオリゴマー型モノアルコールが挙げられる。
【0063】
本発明において、これら分子中に1個のヒドロキシル基を有するモノアルコール化合物(a−1−1)を用いる場合、得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端を封止することができるため、意図的に低分子量のカルボキシル基含有変性エステル樹脂を合成する際など、分子量の調整が必要な時に、好適に用いることができる。また、ヒドロキシル基以外の官能基を併有するヒドロキシル基含有化合物を使用した場合、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端にカルボキシル基以外の官能基を導入することができるため、カルボキシル基含有変性エステル樹脂の末端変性が必要な時に、好適に用いることができる。本発明において、ヒドロキシル基の反応性や重合制御を考慮すると、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノール、12−ヒドロキシステアリン酸、グリシドール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
【0064】
また、分子中に2個のヒドロキシル基を有するジオール化合物(a−1−2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、3−ブチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール、水素添加ビスフェノールA、スピログリコール等の脂肪族あるいは脂環族ジオール類;
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、1,2−インダンジオール、1,3−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,7−ナフタレンジオール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等の芳香族ジオール類等を挙げることができる。その他、リン原子含有ジオール、硫黄原子含有ジオール、臭素原子含有ジオールなどが挙げられる。
【0065】
また、ヒドロキシル基以外の官能基を有する化合物も挙げられる。ヒドロキシル基以外に、例えば、3級アミノ基を含有する化合物としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミンなどの3級アミノ基含有ジオール化合物が挙げられ、また、カルボキシル基を含有する化合物としては、例えば、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、3−ヒドロキシサリチル酸、4−ヒドロキシサリチル酸、5−ヒドロキシサリチル酸、2−カルボキシ−1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0066】
中でも、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸は、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)と反応させて得られる、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端カルボキシル基の数を増加させることができ、続く1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)との反応において、高分子量化できるという点で本発明では好ましい。また、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン等の3級アミノ基含有ジオール化合物を使用する場合、最終的に得られる塗膜の凝集力が増大し、可撓性を保持したまま、より耐性に優れる強靭な塗膜を形成することができるという点で好ましい。
【0067】
また、分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a−1−3)としては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等の多価アルコール化合物が挙げられる。
【0068】
本発明において、これら分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a−1−3)を用いる場合、得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端カルボキシル基の数を増加させることができるため、最終生成物の高分子量化が可能となり、硬化塗膜の耐性を向上することができる。従って本発明において硬化塗膜の耐性をさらに向上する目的で、必要に応じて使用すればよい。これら分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a−1−3)の中でも、反応制御の面でトリメチロールプロパンやペンタエリスリトールを使用することが好ましい。
【0069】
ここで、ポリオール化合物(a)と、ヒドロキシル基含有化合物(a−1)は本発明で目的に応じて任意の割合で用いることができ、ポリオール化合物(a)中のヒドロキシル基1.0モルに対し、ヒドロキシル基含有化合物(a−1)中のヒドロキシル基を0.01モル〜1.00モル、好ましくは0.05モル〜0.50モルの割合で用いる。ポリオール化合物(a)中のヒドロキシル基1.0モルに対し、ヒドロキシル基含有化合物(a−1)中のヒドロキシル基を0.01モル未満の割合で使用する場合(すなわちポリオール化合物(a)単独で使用する場合)、ポリオール化合物(a)だけでも十分な絶縁信頼性、耐熱性、接着強度を発現することができるが、より高い耐熱性を付与しにくくなる。また、1.00モルより多い場合、最終的に得られる塗膜の凝集力が増大しすぎてしまい、接着強度が低下する傾向にある。
【0070】
また、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)を合成する際に、その出発材料を反応させる割合は、ポリオール化合物(a)、および場合により添加するヒドロキシル基含有化合物(a−1)について、これらに含まれるヒドロキシル基の合計を1モルとした場合に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)に含まれる酸無水物基の合計が、0.70モル〜1.30モルの割合で反応させることが好ましく、0.90モル〜1.10モルの割合で反応させることがより好ましい。酸無水物基の合計が0.70モル未満の場合、得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)のカルボキシル基の量が少なくなり、次の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)との反応工程で、充分な反応が起こりにくくなり、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量が十分に大きくならない場合がある。また、酸無水物基の合計が1.30モルより多い場合、次の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)と反応させる際に副反応が多く起こり、反応途中でゲル化を引き起こす場合がある。
【0071】
また、0.90モル〜1.10モルの範囲内において、1.00モルに近い割合で反応させる場合、次の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)との反応工程の途中で上記のような問題が発生しにくくなるため、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量を十分に大きくすることができ、硬化塗膜の耐熱性や屈曲性、密着性を向上することができる。
【0072】
本発明において、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコにポリオール化合物(a)および溶剤[ならびに場合によりヒドロキシル基含有化合物(a−1)]を仕込み、窒素気流下、20〜120℃で加熱・攪拌することで均一に溶解した後、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を投入し、攪拌しながら50〜150℃で加熱することでカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を得ることができる。
【0073】
反応に際しては、必要に応じて3級アミノ基含有化合物等を使用してもよい。また、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を投入する前に、予めフラスコに仕込んだポリオール化合物(a)および溶剤を100℃以上で加熱・攪拌し、溶剤の一部を脱溶剤してもよい。この操作は、通常、系内の水分を除去(脱水処理)するために行い、この操作によって、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させる際に、水による酸無水物基の開環反応を抑制することができる。
【0074】
次に、本発明の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)について説明する。本発明で用いる1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)は、好ましくはエポキシ基を分子内に2個含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロロヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジフェニルスルホンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報に開示されている柔軟性に優れたエポキシ化合物や、下記式(1)−(3)で表される構造のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0075】
式(1)
【0076】
【化3】
【0077】
式(2)
【0078】
【化4】
【0079】
式(3)
【0080】
【化5】
【0081】
中でも、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルは、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)に柔軟性を付与させる場合に好ましく、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂は、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)に耐熱性を付与させる場合に好ましい。このように本発明において、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)は目的に応じて選択することが可能であり、これらは単独で使用しても良いし、複数を併用することも好ましい。
【0082】
ここで、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)を反応させる割合は、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)のカルボキシル基を1.0モルとした場合に、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)中のエポキシ基を0.50モル〜1.50モルの割合で反応させることが好ましく、0.70モル〜1.30モルの割合で反応させることがより好ましい。カルボキシル基含有エステル樹脂(c)のカルボキシル基1.0モルに対し、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)中のエポキシ基の割合が0.50モル未満の場合、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の分子量が低くなり、所望の塗膜耐性や成膜性が得られにくくなる。また、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)のカルボキシル基1.0モルに対し、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)中のエポキシ基の割合が1.50モルより多い場合、末端エポキシ基の量が多くなり、最終の合成段階で脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させる際に副反応が多く起こり、反応途中でゲル化を引き起こす場合がある。
【0083】
本発明において、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコにカルボキシル基含有エステル樹脂(c)及び1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)、溶剤を仕込み、攪拌しながら100〜150℃で加熱することで側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を得ることができる。この際、必要に応じてトリフェニルホスフィンや、3級アミノ基含有化合物等の触媒を使用してもよい。
【0084】
次に、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)について説明する。本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)は、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させることで得ることができる。
【0085】
ここで、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を合成する際に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させる割合は、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)中のヒドロキシル基を1.0モルとした場合に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)中の酸無水物基を0.05モル〜1.0モルの割合で反応させることが好ましく、0.10モル〜0.90モルの割合で反応させることがより好ましい。側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)中のヒドロキシル基1.0モルに対し、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)中の酸無水物基の割合が0.05モル未満の場合、変性の割合が少なくなりすぎて主鎖への架橋性官能基導入の効果が得られにくい。また、1.0モルより多い場合、余剰の酸無水物基含有化合物が残存し最終塗膜のフレキシブル性や半田耐熱性、絶縁信頼性が低下する傾向にある。
【0086】
本発明において、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコに側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)及び、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)、溶剤を仕込み、攪拌しながら50〜100℃で加熱することでカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を得ることができる。この反応は無触媒下でも進行するが、必要に応じてや、3級アミノ基含有化合物等の触媒を使用してもよい。
【0087】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の酸価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは5〜90mgKOH/gである。酸価が1mgKOH/g未満では硬化性基として機能するカルボキシル基が少なく、硬化後の塗膜に充分な耐性を付与することができない場合がある。また、酸価が100mgKOH/gを超えると塗膜の硬度が高くなり、充分な接着強度が得られない場合がある。また、酸価が1〜100mgKOH/gの範囲内において、1mgKOH/gに近い範囲で設計する場合、得られる塗膜の屈曲性や密着性が向上し、一方、100mgKOH/gに近い範囲で設計する場合、架橋点が多くなることから、最終的に得られる塗膜の耐熱性が向上する。このように、本発明においてカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の酸価は、1〜100mgKOH/gの範囲内で目的に応じて調整することが可能である。
【0088】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量は、5000〜500000であることが好ましく、より好ましくは、10000〜300000である。重量平均分子量が5000未満では、充分な半田耐熱性及び可撓性が得られない場合がある。また、重量平均分子量が500000を超えると、塗工時の粘度やハンドリングが課題となる場合がある。また、重量平均分子量が5000〜500000の範囲内において、5000に近い値で設計する場合、得られる樹脂の末端(すなわちカルボキシル基)が多いことから、架橋性に富む樹脂が得られ、最終的に得られる塗膜の耐熱性を向上することができ、一方、500000に近い値で設計する場合、最終的に得られる塗膜は、密着性や屈曲性に優れる。このように、本発明においてカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量は、5000〜500000の範囲内で目的に応じて調整することが可能である。
【0089】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)とエポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B)と熱硬化助剤(C)とを含んでなる。ここで、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B)〔以下、単に「化合物(B)」とも表記する。〕について説明する。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上述したカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の硬化剤として化合物(B)を使用することを特徴とする。
【0090】
本発明におけるエポキシ基含有化合物としては、分子内にエポキシ基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。例えば、分子内にエポキシ基を1個有する化合物としては、N−グリシジルフタルイミド、グリシドール、グリシジル(メタ)アクリレート等の化合物が挙げられる。これらは、次に例示する分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、必要に応じて併用することで、硬化物の架橋密度を制御する目的で好適に用いることができる。また、エポキシ基を分子内に2個以上含有する化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体もしくはプロピレンオキシド付加体のエピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロロヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ナフタレンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジフェニルスルホンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報に開示されている柔軟性に優れたエポキシ化合物や、下記式(4)〜(6)で表される構造のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0091】
式(4)
【0092】
【化6】
【0093】
式(5)
【0094】
【化7】
【0095】
式(6)
【0096】
【化8】
【0097】
さらに、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、三菱化学株式会社製「エピコート1031S」、「エピコート1032H60」、「エピコート604」、「エピコート630」の他、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、特開2001-240654号公報に開示されているジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エチレングリコール・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、等が挙げられる。また、エポキシ基以外の他の熱硬化性基を併有する化合物も使用できる。例えば、特開2001−59011号公報や、2003−48953号公報に開示されているシラン変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0098】
特に、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌレート環含有エポキシ化合物は、本発明に使用した場合、ポリイミドや銅に対して接着強度が向上する傾向があり、好ましい。また、三菱化学株式会社製「エピコート1031S」、「エピコート1032H60」、「エピコート604」、「エピコート630」は、多官能であり、かつ、耐熱性に優れるため、本発明において非常に好ましく、また、脂肪族系のエポキシ化合物や、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報記載のエポキシ化合物は、硬化塗膜の柔軟性に優れるため、好ましい。また、特開2001−240654号公報記載のジシクロペンタジエン型エポキシ化合物や、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、などは、本発明において、熱硬化性および吸湿性や耐熱性をはじめとする硬化塗膜の耐久性の面で優れており好ましい。
【0099】
イソシアネート基含有化合物としては、イソシアネート基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、ジイソシアネート化合物としては、例えば、炭素数4〜50の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0100】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0101】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0102】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えばω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0103】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0104】
分子中にイソシアネート基を1個または3個以上有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、1分子中に1個のイソシアネート基を有する単官能イソシアネートとして、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]エチルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、1,6−ジイソシアナトヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸4,4’−ジフェニルメタン、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアン酸トリレン、ジイソシアン酸トルエン、2,4−ジイソシアン酸トルエン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、ジイソシアン酸4−メチル−m−フェニレン、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のジイソシアン酸エステル化合物と水酸基、カルボキシル基、アミド基含有ビニルモノマーとを等モルで反応せしめた化合物もイソシアン酸エステル化合物として使用することができる。
【0105】
また、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、リジントリイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられ、前述したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0106】
ブロック化イソシアネート基含有化合物としては、イソシアネート基がε−カプロラクタムやMEKオキシム等で保護されたイソシアネート基含有化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、上記イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を、ε−カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたものなどが挙げられる。
【0107】
本発明において、化合物(B)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用しても良い。化合物(B)の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物の用途等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)100重量部に対して、0.5重量部〜100重量部の割合で加えることが好ましく、1重量部〜80重量部の割合で加えることがより好ましい。化合物(B)を使用することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の架橋密度を適度な値に調節することができるので、硬化後の塗膜の各種物性をより一層向上させることができる。化合物(B)の使用量が0.5重量部よりも少ないと、加熱硬化後の塗膜の架橋密度が低くなり過ぎ、所望の接着強度や耐熱性が不充分となる場合がある。また、該使用量が100重量部よりも多いと、加熱硬化後の架橋密度が高くなり過ぎ、その結果、塗膜の屈曲性、可撓性が低下し、接着強度をも著しく悪化させる場合がある。
【0108】
次に、本発明の、熱硬化助剤(C)について説明する。本発明の熱硬化助剤(C)とは、上記化合物(B)とカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)とを硬化反応させる際に、硬化反応に直接寄与する化合物、あるいは触媒的に寄与する化合物である。
【0109】
熱硬化助剤(C)として硬化反応に直接寄与する化合物とは、熱により単独で、または水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基などと反応しうる官能基を有する化合物を表し、上記化合物(B)に属するものは除いたものであり、本発明の熱硬化性樹脂組成物において好ましく用いられる。具体的には、例えば、シアネートエステル化合物、アジリジン化合物、酸無水物基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキセタン基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、シトラコンイミド化合物、ナジイミド化合物、アリルナジイミド化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルベンジルエーテル樹脂、チオール化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0110】
シアネートエステル化合物としては、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物等が挙げられ、そのプレポリマーなどが単独もしくは混合して用いられる。その中でも、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)等が硬化物の誘電特性が特に良好であるため好ましい。シアネートエステル化合物を使用する場合には、必要に応じて金属系反応触媒類が用いられ、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の金属触媒類が用いられる。具体的には、2−エチルヘキサン酸塩やナフテン酸塩等の有機金属塩化合物およびアセチルアセトン錯体などの有機金属錯体として用いられる。金属系反応触媒の配合量は、シアネートエステル化合物に対して1〜3000ppmとすることが好ましく、1〜1000ppmとすることがより好ましく、2〜300ppmとすることがさらに好ましい。金属系反応触媒の配合量が1ppm未満では添加の効果が得られ難く、3000ppmを超えると反応の制御が難しくなり、硬化が速くなりすぎる傾向があるが制限するものではない。
【0111】
アジリジン化合物としては、例えば、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−(2−メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)−2−メチルプロピオネート]、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−4,4−ビス−N,N’−エチレンウレア、1,6−ヘキサメチレンビス−N,N’−エチレンウレア、2,4,6−(トリエチレンイミノ)−Syn−トリアジン、ビス[1−(2−エチル)アジリジニル]ベンゼン−1,3−カルボン酸アミド等が挙げられる。
【0112】
酸無水物基含有化合物としては、酸無水物基含有化合物(b)をはじめとして分子内に酸無水物基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。酸無水物基含有化合物(b)以外の酸無水物基含有化合物としては、具体的には、ジカルボン酸無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などの多価カルボン酸無水物類等が挙げられる。酸無水物基含有化合物をさらに詳しく例示すると、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの他、無水マレイン酸共重合樹脂としては、サートマー社製SMAレジンシリーズ、株式会社岐阜セラック製造所製GSMシリーズなどのスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、p−フェニルスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、ポリエチレン−無水マレイン酸などのα−オレフィン−無水マレイン酸共重合樹脂、ダイセル化学工業株式会社製「VEMA」(メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸の共重合体)、無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィン(「アウローレンシリーズ」:日本製紙ケミカル株式会社製)、無水マレイン酸共重合アクリル樹脂などが挙げられる。
【0113】
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ジメチルテレフタル酸、1,3−ジメチルイソフタル酸、5−スルホ−1,3−ジメチルイソフタル酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;
ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸類;
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0114】
カルボジイミド基含有化合物としては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0115】
オキセタン基含有化合物としては、例えば、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン[東亜合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−121等]、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン[東亜合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−221等]、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、(2−エチル−2−オキセタニル)エタノールとテレフタル酸とのエステル化物、(2−エチル−2−オキセタニル)エタノールとフェノールノボラック樹脂とのエーテル化物、(2−エチル−2−オキセタニル)エタノールと多価カルボン酸化合物とのエステル化物等が挙げられる。
ベンゾオキサジン化合物としては、Macromolecules,36,6010(2003)記載の「P−a」、「P−alp」、「P−ala」、「B−ala」、Macromolecules,34,7257(2001)記載の「P−appe」、「B−appe」、四国化成株式会社製「B−a型ベンゾオキサジン」、「F−a型ベンゾオキサジン」、「B−m型ベンゾオキサジン」などが挙げられる。
【0116】
ビニルベンジルエーテル樹脂としては、V−1000X(昭和高分子株式会社製)、米国特許第4116936号公報、米国特許第4170711号公報、米国特許第4278708号公報、特開平9−31006号公報、特開2001−181383号公報、特開2001−253992号公報、特開2003−277440号公報、特開2003−283076号公報、国際公開第02/083610号パンフレット記載のビニルベンジルエーテル樹脂等が挙げられる。
【0117】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも1個有しているもので、例えば、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−マレイミドフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0118】
シトラコンイミド化合物としては、分子中にシトラコンイミド基を少なくとも1個有している化合物またはその重合体であり、例えば、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルフォンビスシトラコンイミド、2,2−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0119】
ナジイミド化合物としては、分子中にナジイミド基を少なくとも1個有している化合物あるいはこれの重合体であって、例えば、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスナジイミド、N,N’−p−フェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス[4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0120】
アリルナジイミド化合物としては、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、1,6−ヘキサン−ビス−アリルナジイミド、メタキシリレン−ビス−アリルナジイミドなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0121】
ビニルエーテル化合物としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンメタノールビニルエーテル、エチルシクロヘキサノールビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、トリシクロデカンエポキシビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、グリセリンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシルシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性レゾルシンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールSジビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジペンタエリスリトールポリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテルなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0122】
チオール化合物としては、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアゾール、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、テトラエチレングリコールビス−3−メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、トリス−(エチル−3−メルカプトプロピオネート)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネートなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0123】
アミノ樹脂としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、およびアセトグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加化合物、またはその部分縮合物が挙げられる。また、フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール類、およびビスフェノール類等の化合物とホルムアルデヒドとの付加化合物、またはその部分縮合物が挙げられる。具体的には、フェノール樹脂、クレゾール樹脂、t−ブチルフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂、テトラキスフェノール樹脂、ビスフェノールA樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂のレゾール型樹脂やノボラック型樹脂が挙げられる。その他、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。中でも、フェノール樹脂のレゾール型樹脂は、耐熱性および硬化性の面で非常に優れており、本発明において好適に用いることができる。
【0124】
熱硬化助剤(C)として硬化反応に触媒的に寄与する化合物としては、3級アミンおよびその塩類、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド、イミダゾール類、ジアザビシクロ化合物類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類を挙げることができ、これらを使用すると、より効率的に熱硬化反応が進行し、塗膜の耐性が優れるため好ましい。
【0125】
具体的には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−メチルピペラジン等の3級アミン類、およびその塩類;
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−1]−エチル−S−トリアジン、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、等のイミダゾール類、およびその塩類;
1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデカン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、1,4−ジアビシクロ[2,2,2,]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等のジアザビシクロ化合物類;
トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィン等のホスフィン類;
テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウム塩類;
その他、触媒的かつ自らも直接硬化反応に寄与する化合物として、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド等が挙げられる。カルボン酸ヒドラジドとしては、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0126】
これら熱硬化助剤(C)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。熱硬化助剤(C)の使用量は、硬化性樹脂組成物の硬化物性を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)100重量部に対して、0.05重量部〜20重量部の範囲内が好ましく、0.1重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。これにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の架橋速度や架橋密度、凝集力を調節することが可能であり、各種物性をより一層向上させることができる。熱硬化助剤(C)の使用量が0.05重量部よりも少ないと、その添加効果は得られ難く、また、該使用量が20重量部よりも多いと、余剰の熱硬化助剤(C)が電気絶縁性や接着強度、半田耐熱性を低下させる原因となりやすい。
【0127】
この他、本発明の熱硬化性樹脂組成物には目的を損なわない範囲で任意成分とて更に溶剤、染料、顔料、難燃剤、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤、フィラー等を添加することができる。特に電子材料用途で回路に直接接するような絶縁部材(例えば回路保護膜、カバーレイ層、層間絶縁材料など)や、回路周辺の高熱となりうる部材(プリント配線板接着剤、支持基板など)に使用する場合は、難燃剤を併用するのが好ましい。
【0128】
難燃剤としては、例えば、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメートなどのリン酸塩系化合物やポリリン酸塩系化合物、赤リン、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホン酸化合物、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、エチルブチルホスフィン酸アルミニウム、メチルブチルホスフィン酸アルミニウム、ポリエチレンホスフィン酸アルミニウムなどのホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、ホスホルアミド化合物などのリン系難燃剤、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレートなどのトリアジン系化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素などの窒素系難燃剤、シリコーン化合物やシラン化合物などのケイ素系難燃剤、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化エポキシ化合物、ハロゲン化フェノキシ化合物などの低分子ハロゲン含有化合物、ハロゲン化されたオリゴマーやポリマーなどのハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水和ガラスなどの無機系難燃剤などが挙げられる。本発明において、近年取り沙汰されている、環境への影響を配慮すると、リン系難燃剤や窒素系難燃剤等のノンハロゲン系難燃剤を使用することが望ましく、中でも本発明の熱硬化性樹脂組成物との併用によって、難燃性により効果のあるホスファゼン化合物、ホスフィン化合物、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート等を用いることが好ましい。本発明において、これら難燃剤は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0129】
消泡剤、レベリング剤としては、シリコーン系、炭化水素系、アクリル樹脂系の化合物などが挙げられる。
【0130】
イオン捕集剤としては、無機あるいは有機のイオン交換体が好適に用いられる。詳しくは東亜合成株式会社の無機イオン交換体イグゼや三菱化学株式会社のイオン交換樹脂ダイアイオンが用いられるが、イオン捕集能を有するものであればこれらに限定されない。
【0131】
本発明により、接着強度、電気絶縁性、耐熱性、屈曲性、加工性、耐フラックス性に優れ、特に、保存安定性と加工安定性とを同時に満足し、更に高い接着強度を保持したまま高度な耐熱性を示し、更には、接着強度と電気絶縁性、耐熱性と屈曲性とを両立し得る、カルボキシル基含有変性エステル樹脂および熱硬化性樹脂組成物が得られた。これらは、フレキシブルプリント配線板周辺をはじめとする電子材料用接着剤や接着シート、コーティング剤、回路被覆用ソルダーレジスト、カバーレイフィルム、電磁波シールド用接着剤、メッキレジスト、プリント配線板用層間電気絶縁材料、光導波路等に好適に用いることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に、接着剤組成物に好適に用いられる。
【実施例】
【0132】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表し、Mwは重量平均分子量を意味する。
【0133】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF−604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0134】
[製造例1]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオール(クラレポリオール C−2090:株式会社クラレ製:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール:水酸基価=56mgKOH/g、Mw=2000)292.1部、テトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化株式会社製)44.9部、溶剤としてトルエン350部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−8125:東都化成株式会社製:エポキシ当量=175g/eq)62.9部、触媒としてトリフェニルホスフィン4部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、テトラヒドロ無水フタル酸11.8部を添加し、110℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分が35%になるよう調整し、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を得た。本製造例によって得たカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量は12600、実測による樹脂固形分の酸価は15.3mgKOH/gであった。
【0135】
[製造例2〜36、比較製造例1〜9]
表1〜3に示す材料に代えた以外は製造例1と同様にして、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を得た。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
C−2090:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール
T−5652:旭化成ケミカルズ株式会社製、C5C6共重合ポリカーボネートジオール
UHC50−200:宇部興産株式会社製、1,6−ヘキサンジオール/カプロラクトン=5/5共重合ポリカーボネートジオール
UC−100:宇部興産株式会社製、1,4−シクロヘキサンジメタノールベースのポリカーボネートジオール
UM90(1/3):宇部興産株式会社製、1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール=1/3共重合ポリカーボネートジオール
UM90(1/1):宇部興産株式会社製、1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール=1/1共重合ポリカーボネートジオール
UM90(3/1):宇部興産株式会社製、1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール=3/1共重合ポリカーボネートジオール
PTG−2000SN:保土ヶ谷化学株式会社製、ポリテトラメチレングリコール
PTG−L2000:保土ヶ谷化学株式会社製、ポリテトラメチレングリコール(重量平均分子量約2000)
GI−2000:日本曹達株式会社製、水素添加型ポリブタジエングリコール(重量平均分子量約2100)
G−2000:日本曹達株式会社製、α,ω−ポリブタジエングリコール(重量平均分子量約1800)
Poly−ip:出光興産株式会社製、水酸基末端液状イソプレン(重量平均分子量約2500)
KF−6002:信越化学工業株式会社製、両末端カルビノール変性型シリコーンオイル(重量平均分子量約3000)
P−1041:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸共重合ポリエステルポリオール(重量平均分子量約1000)
P−2041:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸共重合ポリエステルポリオール(重量平均分子量約2000)
P−2010:株式会社クラレ製、脂肪族ポリエステルポリオール(重量平均分子量約2000)
C−590:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール(重量平均分子量約600)
C−1090:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール(重量平均分子量約1000)
TH:新日本理化株式会社製、テトラヒドロ無水フタル酸
HNA−100:新日本理化株式会社製、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物
無水TMA:無水トリメリット酸
SA:新日本理化株式会社製、無水コハク酸
YD−8125:東都化成株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
EX−216L:ナガセケムテックス株式会社製、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル
EX−214L:ナガセケムテックス株式会社製、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル
EX−212L:ナガセケムテックス株式会社製、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
YX−8800:三菱化学株式会社製、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂
YDF−8170C:東都化成株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
ZX−1059:東都化成株式会社製、ビスフェノール型エポキシ樹脂
BHPA:N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン
DMBA:ジメチロールブタン酸
TMP:トリメチロールプロパン
1、6−HD:1,6−ヘキサンジオール
【0140】
(実施例1)
製造例1で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液の固形分100部に対して、化合物(B)として、多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1031S」)20部、および、熱硬化助剤(C)としてケミタイトPZ(株式会社日本触媒製、多官能アジリジン化合物)1部を混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。この熱硬化性樹脂組成物を剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように均一に塗工して乾燥させ、接着剤層を設けた。次に、剥離処理された別のポリエステルフィルムを接着剤層側にラミネートし、両面保護フィルム付きの接着シートを得た。
【0141】
(実施例2〜27)
実施例1で使用した製造例1のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を、製造例2〜27で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液にそれぞれ代えた以外は、実施例1と同様にして、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0142】
(実施例28)
製造例28で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液の固形分100部に対して、化合物(B)として、多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1031S」)18部、および、熱硬化助剤(C)としてジシアンジアミド1部を混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。この熱硬化性樹脂組成物を剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように均一に塗工して乾燥させ、接着剤層を設けた。次に、剥離処理された別のポリエステルフィルムを接着剤層側にラミネートし、両面保護フィルム付きの接着シートを得た。
【0143】
(実施例29〜36)
実施例28で使用した製造例28のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を、製造例29〜36で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液にそれぞれ代えた以外は、実施例1と同様にして、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0144】
(実施例37〜64)
表4に示した組成で熱硬化性樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様にして、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0145】
【表4】
【0146】
828:三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ化合物
EOCN−102S:日本化薬株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
EPPN−201L:日本化薬株式会社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂
YH434L:東都化成株式会社製、四官能ポリグリシジルアミン
オンコート1040:ナガセケムテックス株式会社製、フルオレン型多官能エポキシ樹脂
BL3175:住化バイエルウレタン株式会社製、イソシアヌレート型ブロックイソシアネート
B80T:旭化成ケミカルズ株式会社製、ブロックイソシアネート
DICY:ジシアンジアミド
ケミタイトPZ:株式会社日本触媒製、多官能アジリジン化合物
リカシッドTMTA−C:新日本理化株式会社製、多官能酸無水物
アロンオキセタンOXT−121:東亞合成株式会社製、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン
B−a:四国化成株式会社製、ベンゾオキサジン化合物
カルボジライトV−07:日清紡株式会社製、ポリカルボジイミド化合物
ZISNET DB:三協化成株式会社製、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン
TD−2131:DIC株式会社製、フェノールノボラック樹脂
BMI−2300:大和化成工業株式会社製、ポリフェニルメタンマレイミド化合物
【0147】
(比較例1〜9)
実施例1のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を、比較製造例1〜9で得られた樹脂溶液にそれぞれ代えた以外は、実施例1と同様にして、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0148】
実施例および比較例で得られた接着シートについて、保存安定性、加工安定性、接着強度、半田浴耐性、半田後接着強度、加湿半田浴耐性、絶縁信頼性、耐フラックス性を以下の方法で評価した。
【0149】
(1)加工安定性
保護フィルムを除去した、65mm×65mmの大きさの接着シートを、厚さが75μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン(株)製「カプトン300H」]と厚さが45μmの銅張積層板との間に挟み、80℃でラミネートし、続いて160℃、1.0MPaの条件で1時間圧着処理を行った。さらに、この試験片を160℃で2時間熱硬化させ、評価用試験片を作成した。この試験片について、圧着処理前と熱硬化後との接着剤層の面積の差を測定し、これをはみ出し面積として加工安定性を評価した。この加工安定性は、圧着処理時に接着層が熱によって軟化し、回路基板の位置ズレや配線間の接触を引き起こす度合いを評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
◎・・・「はみ出し面積 ≦ 100mm2」
○・・・「100mm2 < はみ出し面積 ≦ 250mm2」
△・・・「250mm2 < はみ出し面積 ≦ 500mm2」
×・・・「500mm2 < はみ出し面積」
【0150】
(2)接着強度
加工安定性の評価で作成した試験片を幅10mm、長さ65mmに切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で、引っ張り速度300mm/minでTピール剥離試験を行い、接着強度(N/cm)を測定した。この試験は、常温使用時における接着層の接着強度を評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
◎・・・「18(N/cm) < 接着強度」
○・・・「12(N/cm) < 接着強度 ≦ 18(N/cm)」
△・・・「8(N/cm) < 接着強度 ≦ 12(N/cm)」
×・・・「接着強度 ≦ 8(N/cm)」
【0151】
(3)保存安定性
実施例および比較例で作成した両面保護フィルム付き接着シートを、40℃で3ヶ月間加熱保存した後、上記(1)の条件でラミネート、圧着処理および熱硬化を施し、接着強度を上記(2)と同じ方法で評価し、加熱保存していない接着シートで得られる接着強度と比較した。この試験は、未硬化状態の接着層の経時安定性を、加熱保存の有無による接着強度の差異をもって評価するものであり、経時安定性の良好なものほど未硬化の状態が安定で、加熱促進を施した場合でも接着強度の低下は少なく、経時安定性の悪いものほど、未硬化の状態が不安定で、加熱促進によって硬化反応が進行してしまい、加熱促進を施さない場合に比べて接着強度が大きく低下する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
◎・・・「加熱促進により接着強度が全く変化しない」
○・・・「加熱促進により接着強度がほとんど変化しない」
△・・・「加熱促進により接着強度がやや低下した」
×・・・「加熱促進により接着強度が著しく低下した」
【0152】
(4)半田浴耐性
上記(2)と同様に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を、260℃の溶融半田に、ポリイミドフィルム面を接触させて1分間浮かべた。その後、試験片の外観を目視で観察し、接着剤層の発泡、浮き、剥がれ等の接着異常の有無を評価した。この試験は、半田接触時における接着層の熱安定性を、外観で評価するものであり、耐熱性の良好なものは、半田処理の前後で外観が変化しないのに対して、耐熱性の悪いものは、半田処理後に発泡や剥がれが発生する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
◎・・・「外観変化無し」
○・・・「小さな発泡がわずかに観察される」
△・・・「発泡が観察される」
×・・・「激しい発泡や剥がれが観察される」
【0153】
(5)半田後接着強度
上記(4)の半田浴耐性評価後の試験片について、上記(2)と同様の方法で接着強度を測定し、半田処理前の接着強度と半田処理後の接着強度とを比較した。この試験は、半田接触時における接着層の熱安定性を、半田処理前後における接着強度の変化で評価するものであり、耐熱性の良好なものは、半田処理の前後で接着強度が変化しないのに対して、耐熱性の悪いものは、半田処理後に接着強度が著しく低下する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
◎・・・「接着強度が全く変化しない」
○・・・「接着強度がほとんど変化しない」
△・・・「接着強度がやや低下した」
×・・・「接着強度が著しく低下した」
【0154】
(6)加湿半田浴耐性
上記(2)と同様に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を、40℃、相対湿度90%の雰囲気で96時間放置して加湿させた後、260℃の溶融半田に、ポリイミドフィルム面を接触させて1分間浮かべた。その後、試験片の外観を目視で観察し、接着剤層の発泡、浮き、剥がれ等の接着異常の有無を評価した。この試験は、加湿させた状態での半田接触時における接着層の熱安定性を、外観で評価するものであり、耐湿熱性の良好なものは、外観が変化しないのに対して、耐湿熱性の悪いものは、半田処理後に発泡や剥がれが発生する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
◎・・・「外観変化全く無し」
○・・・「外観変化ほとんど無し」
△・・・「発泡が観察される」
×・・・「激しい発泡や剥がれが観察される」
【0155】
(7)絶縁信頼性
保護フィルムを除去した、65mm×65mmの大きさの接着シートを、厚さが25μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン(株)製「カプトン100H」]とポリイミド上に銅回路が形成された櫛型パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)印刷回路基板との間に挟み、80℃でラミネートし、続いて160℃、1.0MPaの条件で1時間圧着処理を行った。さらに、この試験片を160℃で2時間熱硬化させ、評価用試験片を作成した。この試験片の導体回路に、温度130℃、相対湿度85%の雰囲気下で直流電圧50Vを連続的に100時間加え、100時間後の導体間の絶縁抵抗値を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎・・・絶縁抵抗値108Ω以上
○・・・絶縁抵抗値107以上108Ω未満
△・・・絶縁抵抗値106以上107Ω未満
×・・・絶縁抵抗値106Ω未満
【0156】
(8)耐フラックス性
熱硬化性樹脂組成物を、厚さが75μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン(株)製「カプトン300H」]上に、乾燥後の膜厚が30μmになるように均一に塗工して乾燥させ、さらに、この試験片を160℃で1時間熱硬化させ、評価用試験片を作成した。この試験片上に弱活性ロジン系フラックス(日本アルファメタルズ株式会社製、商品名:RM−615)を数滴垂らした後、260℃のオーブンで3分間熱処理した。試験片をオーブンから取り出し、フラックスをイソプロピルアルコールで拭き取った後、ポリイミド上の硬化膜の厚さによって下記のように判断した。実用上問題ないものは○である。
〇・・・膜厚変化が5μm未満
△・・・膜厚変化が5〜10μm
×・・・膜厚変化が10μmよりも大きい
評価の結果を下記表5に示す。
【0157】
【表5】
【0158】
表5について、実施例と比較例をみてわかるとおり、比較例1〜4,7,9に用いた樹脂は、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成する際に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を使用していないため、絶縁信頼性、半田後接着強度、加湿半田浴耐性が著しく悪化した。また、比較例5〜7に用いた樹脂はカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を生成する際に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を使用していないため、絶縁信頼性、半田後接着強度、加湿半田浴耐性が著しく悪化した。一方、実施例では脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を使用したために、これらの3つの物性が改善されている上、全ての物性においてバランスよく良好な結果が得られた。これらは、本発明の特徴である、前記ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させて得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)中のエステル結合基が嵩高い置換基で保護されたこと、および側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてなるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)中のエステル結合基が嵩高い置換基で保護されたことが大きく影響していると考えられる。さらに、製造例で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)は半田浴耐性を保持しつつ、高い接着強度を示している。これは、出発原料に、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを用いているためであり、従来の二塩基酸を原料としたポリエステル骨格を主鎖として用いた樹脂に比べ、ポリオール化合物(a)由来のフレキシブル性や加工性等を付与できるからである。また、エステル結合基を嵩高い置換基で保護しても、エステル骨格由来の極性が働いているためと考えられる。
実施例と比較例をみてわかるとおり、実施例では、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を使用して樹脂を合成しており、全ての物性において良好な結果を示した。さらには、熱硬化助剤(C)を加えることにより、接着強度、絶縁信頼性等を低下させないで加工性や加湿半田耐性、半田後の接着強度を向上することができた。これらは、エステル結合基が嵩高い置換基で保護されたことによる耐加水分解性と熱硬化助剤(C)との相乗効果であることが考えられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤およびコーティング剤として有用なカルボキシル基含有変性エステル樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物に関する。さらに詳細には、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として特に有用な、接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性、耐フラックス性等に優れた硬化物を与える、カルボキシル基含有変性エステル樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚しく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、これらの性能に対する要求がますます高度なものとなっている。このような要求に対応するため、プリント配線板をはじめとする電子材料の薄型化、多層化、高精細化の検討が盛んに行われており、これらに使用される接着剤、コーティング剤には、従来のガラスエポキシ等に代表される肉厚のリジッド基板では求められなかった、高度な可撓性、屈曲性、接着性、狭スペース化に伴う高い電気絶縁性、密着性、熱安定性、さらには半田クリームやポストフラックス等を使用した半田接続工程で必要不可欠なフラックス耐性等が求められている。このような電子材料周辺に用いられる接着剤・コーティング剤としては、例えば、具体的には次の(1)〜(6)が挙げられる。
【0003】
(1)層間接着剤:回路基板同士を張り合わせるために用いられるもので、直接銅あるいは銀回路に接する。多層基板の層間に使用され、液状やシート状のものがある。
(2)カバーレイフィルム用接着剤:カバーレイフィルム(回路の最表面を保護する目的で用いられるポリイミドフィルムなど)と、下地の回路基板と、を張り合わせるために用いられ、あらかじめポリイミドフィルムと、接着層とが一体化されているものが多い。
(3)銅張フィルム(CCL)用接着剤:ポリイミドフィルムと銅箔とを張り合わせるために用いられる。銅回路形成時にエッチング等の加工が施される。
(4)カバーレイ:回路の最表面を保護する目的で用いられ、回路上に印刷インクを印刷したり、接着シートを張り合わせたりした後、硬化させることで形成される。感光性や熱硬化性のものがある。
(5)補強板用接着剤:配線板の機械的強度を補完する目的で、配線板の一部を、金属、ガラスエポキシ、ポリイミド等の補強板に固定するために用いられる。
(6)電磁波シールド用接着剤:電子回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する目的で、フレキシブルプリント配線板に貼着される。
【0004】
これらの形態としては、液状(印刷用にインク化されたもの)やシート状(あらかじめフィルム化されたもの)等があり、用途に応じて適宜形態が選択される。
【0005】
こういった電子材料周辺部材への高い要求に応えるため、様々な検討が行われているが、全ての特性を充分に満足させるものは得られていない。例えば、酸価含有ポリエステル・ポリウレタン、およびエポキシ樹脂を主成分とする接着剤組成物が開示されている(特許文献1)。これは、ウレタン結合由来の良好な接着性を示すものの、架橋点間距離が離れていることから充分な架橋を形成しにくいために耐熱性に乏しく、これを補完するためにエポキシ樹脂量を増やした場合には、基材への濡れ性が低下し、接着強度が低下するという問題があった。さらに、ポリエステル骨格を主鎖として用いているため、高温加湿時の絶縁信頼性が著しく劣るという問題があった。
【0006】
また、ウレタン変性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、および硬化剤を含む接着剤組成物が開示されている(特許文献2)。これは、ウレタン結合由来の良好な接着性を示すものの、耐熱性に乏しく、また、ウレタン樹脂の分子量が低いことにより、プレス等で熱硬化する際にはみ出しが多く発生するという加工性の悪さが問題であった。さらに、特許文献1同様、ポリエステル骨格を主鎖として用いているため、高温加湿時の絶縁信頼性が著しく劣るという問題があった。
【0007】
また、ポリイミドシロキサン、両末端エポキシシロキサン、および硬化剤を含む樹脂組成物が開示されている(特許文献3)。この系ではシロキサン樹脂特有の屈曲性と優れた耐熱性とを有するものの、シロキサン骨格自体が、基材への密着性に乏しいため、架橋密度の低いエポキシシロキサンによる硬化では、充分な接着強度が得られないという問題や、エポキシ基の架橋点間距離が大きいために、プレス等で熱硬化する際にはみ出しが多く発生するという加工性の悪さが問題であった。また、他の成分との相溶性が著しく悪いために、組成物設計の自由度に乏しく、組成物としても塗膜の耐性が不充分である等の問題があった。
【0008】
また、エポキシ樹脂、イオン性不純物が可及的に少ないNBRゴム、窒素含有フェノールノボラック樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂組成物が開示されている(特許文献4)。この接着剤組成物は、プレス等で熱硬化する際にNBRゴム由来のはみ出しが多く、加工性が悪いという欠点があり、また、これを補うためにエポキシ樹脂やフェノール類を多く添加すると接着強度が低下するという問題があった。さらに、イオン性不純物が可及的に少ないNBRゴムは、高価であり、工業的に使用することが困難である場合があった。
【0009】
また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂用硬化促進剤、およびエラストマーを含む樹脂組成物が開示されている(特許文献5)。この場合も同様に、エラストマー由来の加工性悪化とエポキシ・フェノール硬化系由来の接着強度の低下を同時に改善することは難しいという問題があった。
【0010】
また、柔軟な骨格であるポリブタジエンを含む樹脂組成物が開示されている。例えば、ポリブタジエン骨格を有するポリイミド樹脂が開示されており、該ポリイミド樹脂とポリブタジエンポリオールおよびブロックイソシアネートを配合した樹脂組成物をフレキシブル回路のオーバーコート剤として使用した例が開示されている(特許文献6)。また、ポリブタジエン骨格およびポリシロキサン骨格を有するポリアミドイミド樹脂とエポキシ樹脂を配合した樹脂組成物(特許文献7)や、ポリブタジエン骨格を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂を配合した樹脂組成物(特許文献8)が開示されている。しかし、これらのブタジエン系樹脂は、高温での反応が必要となったり、ブタジエン骨格特有の酸化により、分子内架橋を引き起こし、樹脂が反応中にゲル化したり、組成物としての保存安定性が著しく低下するという問題があった。
【0011】
また、水添ポリブタジエン骨格に着目した提案がなされている(特許文献9)。この系ではカルボキシル基含有水添ポリブタジエン樹脂とエポキシ基を有するアクリル樹脂からなる複合樹脂を使用しているため、水添ポリブタジエン骨格由来の優れたフレキシブル性、銅への密着性を有する。しかしながら、複合樹脂を合成する際にエステル骨格が導入されるため、高温加湿時の絶縁信頼性や耐薬品性など、一般的な電気回路基板の絶縁材料としての基本特性には問題があった。
【0012】
また、エステル結合による鎖状構造を有するカルボキシル基含有変性エポキシ樹脂が開示されている(特許文献10)。この系は、二塩基酸とジグリシジルエーテル型エポキシ化合物との重合反応により主鎖にエステル結合を導入しているため、銅や各種基材への優れた接着強度と耐熱性とを有するものの、加水分解性に劣るエステル骨格を主鎖としているため、高温加湿時の絶縁信頼性や耐薬品性に著しく劣るという問題があった。また、二塩基酸が主要原料となっているため、ウレタン樹脂やNBRゴムを使用した系に比べるとフレキシブル性を発現しにくく、耐熱性との両立が困難である問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−116930号公報
【特許文献2】特開2007−51212号公報
【特許文献3】特開2004−91648号公報
【特許文献4】特開2003−165898号公報
【特許文献5】特開2007−161811号公報
【特許文献6】特開平11−199669号公報
【特許文献7】特開平11−246760号公報
【特許文献8】特開2003−292575号公報
【特許文献9】特開平11−114733号公報
【特許文献10】特開2005−60662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性等、とりわけ接着性と電気絶縁性の両立、屈曲性と耐熱性の両立という点で非常に優れており、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として、好適に使用される熱硬化性樹脂組成物、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは前記の課題を解決するため、鋭意検討の結果、特定のカルボキシル基含有変性エステル樹脂が前記問題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、第1の発明は、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)、
エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B)、
および熱硬化助剤(C)を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)が、
ポリオール化合物(a)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、
前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、
さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させてなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0016】
また、第2の発明は、ポリオール化合物(a)が、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリシロキサンポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である第1の発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0017】
また、第3の発明は、酸無水物基含有化合物(b)が、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸、スチルエンドスチレンテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸、および無水ピロメリット酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である第1または第2の発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0018】
また、第4の発明は、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の酸価が、1〜100mgKOH/gである第1〜第3いずれかの発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0019】
また、第5の発明は、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量が5000〜500000である第1〜第4いずれかの発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0020】
また、第6の発明は、熱硬化助剤(C)が、アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、フェノール樹脂、イミダゾール類、およびジシアンジアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である第1〜第5いずれかの発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0021】
さらに、第7の発明は、第1〜第6いずれかの発明の熱硬化性樹脂組成物を加熱により硬化させて得られる硬化物に関する。
さらにまた、第8の発明は、第7の発明の硬化物からなる層を有することを特徴とするプリント配線板に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性、耐フラックス性等、とりわけ接着性と電気絶縁性の両立、屈曲性と耐熱性の両立という点で非常に優れており、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として、好適に使用される熱硬化性樹脂組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、ポリオール化合物(a)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)〔以下、単に「酸無水物基含有化合物(b)とも表記する。〕とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させることにより得ることができ、この樹脂を用いることにより、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として非常に重要となる物性、例えば、硬化前の保存安定性、硬化後のフレキシブル性、絶縁信頼性、半田耐熱性、加湿後の半田耐熱性等を、著しく改善できる。
これは出発原料に、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを用いているためであり、従来の二塩基酸を原料としたポリエステル骨格を主鎖として用いた樹脂に比べ、ポリオール化合物(a)由来のフレキシブル性や加工性等を付与できるからである。また、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成する際に、絶縁信頼性に劣るとされているエステル結合基が嵩高い置換基で保護されるため、従来のポリエステル骨格を主鎖として用いた樹脂に比べ、絶縁信頼性、半田耐熱性等を著しく向上できるのである。
【0024】
例えば、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)の代わりに、酸無水物基含有化合物(b)には属しない酸無水物基含有化合物を使用した場合、一般的にはエステル結合由来の極性による基材密着性と耐熱性により、ある程度の接着強度と半田耐熱性は得られるものの、高温加湿のような厳しい条件下では絶縁信頼性が悪く、さらには半田耐熱性においても、高温の半田試験や加湿状態での半田試験といった、より高度な半田耐熱性が満足できない。これらの課題を解決するために、一般的には高Tg(Tg:ガラス転移温度)骨格の樹脂や高Tg骨格の硬化剤を添加するが、これらの場合、接着層全体が高Tg化し、基材への密着性が低下することで接着強度は著しく低下する。
【0025】
一方、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成する際に、エステル結合基が嵩高い置換基で保護される効果から、良好な絶縁信頼性と半田耐熱性とを同時に満足し、さらにはTgを上昇させることなく、高い接着強度を保持したまま高度な耐熱性を示すことができる。
【0026】
また、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、特にポリオール化合物(a)としてポリカーボネートポリオールや、脂環式ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール(水素添加されたものも含む)、ポリエーテルポリオール、ポリシロキサンポリオールを用いることで、より高い電気絶縁性と耐熱性を発揮することができる。さらには、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)を適切に選択することにより、一般的に基材への接着が難しいとされるポリカーボネート骨格やポリシロキサン骨格を用いているにもかかわらず、高い接着強度を示すことが可能となる。
【0027】
例えば、通常、電気絶縁性を確保するためにポリカーボネートやポリシロキサン等の耐熱性に優れる骨格を用いた場合、基材への密着性が低下するために、接着強度を確保することができない。一方、本発明は、上記の理由により、高い電気絶縁性と接着強度との二律背反を解決できるのである。
【0028】
また、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、高Tgの原料を多く使う必要がないため、優れた屈曲性を示す。一般的に屈曲性の高い樹脂は耐熱性に乏しい傾向にあるが、本発明の樹脂は、分子中のエステル結合基が嵩高い置換基で保護されているため、一般的なポリエステル樹脂に比べて高い耐熱性を示し、さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させることにより主鎖中に熱架橋点を導入していることから、架橋によってその耐熱性をさらに向上することができる。
【0029】
例えば、通常、屈曲性を確保するためには、低Tg骨格やウレタン結合を導入するが、耐熱性に乏しいため、高い耐熱性は確保できない。また、耐熱性を確保するためには、高Tg骨格や高耐熱性の結合を導入するが、これらは一般的に屈曲性に乏しいため、耐熱性と屈曲性を両立させることはできない。
【0030】
一方、本発明は、上記の理由により、高い屈曲性と高い耐熱性との二律背反を解決することができる。本発明において、ポリオール化合物(a)として低Tgのポリカーボネートポリオールや、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリシロキサンポリオールを好適に用いることで、屈曲性をさらに向上することができる。
【0031】
また、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、ポリオール化合物(a)として3官能のポリオールを好適に導入することによってこれらの効果をさらに向上することができる。具体的には、分岐構造の導入により、樹脂層の凝集力が増大し、その結果、保存安定性、加工安定性、屈曲性、電気絶縁性に全く悪影響を与えずに、接着強度や耐熱性を向上できる。
【0032】
以下、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を含む熱硬化性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0033】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂は、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させることにより得ることができる。
【0034】
本発明で用いるポリオール化合物(a)は、2個以上の水酸基を有し、さらにその構造中に重合度2以上の繰り返し単位を有するものである。また、ポリオール化合物(a)としては水酸基を2個含有する化合物が好ましく用いられ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、好ましくは500〜50000の化合物である。ポリオール化合物(a)としては、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、およびポリシロキサンポリオール類などが挙げられる。なお、本願において、特に断らない限り、重量平均分子量は、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0035】
本発明に用いるポリエステルポリオール類としては、例えば、多官能アルコール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールがある。多官能アルコール成分のうちジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられ、3個以上の水酸基を有する多官能アルコール成分としては、トリメチロールエタン、ポリトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等が挙げられる。
【0036】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸ないしはそれらの無水物が挙げられる。
【0037】
また、β−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタノラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールも使用できる。
【0038】
リン原子を有するポリエステルポリオールも使用することができ、具体的には、2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸あるいはその酸無水物と、エチレングリコールとの重縮合物、または2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−エステル、あるいはその重縮合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0039】
ポリエステルポリオールにおいて具体的には、クラレ株式会社のクラレポリオールPシリーズを用いることができる。そのなかでもP−1041、P−2041、P−2010、P−2020、P−1030、P−2030は絶縁信頼性と耐熱性があるため好ましい。
【0040】
本発明に用いられるポリカーボネートポリオール類とは、下記一般式(1)で示される構造を、その分子中に有するものである。
【0041】
一般式(1)
−[−R8−O−CO−]m−
(式中、R8は、2価の有機残基、mは、1以上の整数を表す。)
【0042】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、(1)グリコールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応、(2)グリコールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られる。
【0043】
(1)の製法で用いられる炭酸エステルとして具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0044】
(1)および(2)の製法で用いられるグリコールまたはビスフェノールとして具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類、前記ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等も用いることができる。これらの化合物は1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0045】
ポリカーボネートポリオールにおいて具体的には、クラレ株式会社のクラレポリオールCシリーズを用いることができる。そのなかでもPMHC−1050、PMHC−2050、C−1090、C−2090、C−1065N、C−2065N、C−1015N、C−2015Nは柔軟性があるため好ましい。また、宇部興産株式会社のエタナコールUC−100、UM−90(1/3)、UM−90(1/1)、UM−90(3/1)は耐熱性に優れるため好ましい。
【0046】
本発明に用いるポリエーテルポリオール類としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの重合体、共重合体、およびグラフト共重合体;
ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール若しくはこれらの混合物の縮合により得られるポリエーテルポリオール類;
ビスフェノールAやビスフェノールF等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させてなるビスフェノール類等の芳香族ジオール類;
トリメチロールエタン、ポリトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等の多価アルコールを原料の一部として用いて合成されたポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック共重合体またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのブロック共重合体またはランダム共重合体等のポリエーテルポリオール類;
などの水酸基が2個以上のものを用いることができる。
【0047】
本発明に用いるポリブタジエンポリオール類としては、例えば、その分子内の不飽和結合を水添したものも含み、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0048】
ポリブタジエンポリオールの市販品としては、日本曹達株式会社のNISSSO PB(Gシリーズ)、出光石油化学株式会社のPoly−Pd等の両末端に水酸基を有する液状ポリブタジエン;日本曹達株式会社のNISSSO PB(GIシリーズ)、三菱化学株式会社のポリテールH、ポリテールHA等の両末端に水酸基を有する水素添加ポリブタジエン;出光石油化学株式会社製のPoly−iP等の両末端に水酸基を有する液状C5系重合体;出光石油化学株式会社製のエポール、クラレ株式会社製のTH−1、TH−2、TH−3等の両末端に水酸基を有する水素添加ポリイソプレンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明に用いられるポリシロキサンポリオール類としては、一般式(2)および(3)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
一般式(2)
【0051】
【化1】
【0052】
(Xは、水酸基を表し、R1、R2はそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を表し、nは、5以上の整数を表す。)
【0053】
一般式(3)
【0054】
【化2】
【0055】
(Yは、水酸基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキル基、R4、R5、R6は、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基、R7は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは、5以上の整数を表す。)
【0056】
これらポリオール化合物(a)の中でも、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなるポリエステルジオール、1,6−ヘキサンジオールのみをグリコールとして使用してなるポリカーボネートポリオールや、1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールとをグリコールとして使用してなるポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールとをグリコールとして使用してなるポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、もしくはテトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとの共重合ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリシロキサンポリオール等は、骨格の柔軟性、耐熱性、耐加水分解性に優れることから、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂としての電気絶縁性、屈曲性、耐熱性、耐湿性等に優れ、特に好ましい。
【0057】
本発明において、これらポリオール化合物(a)は、単独で使用しても良いし、複数を併用しても良い。
【0058】
本発明は、前記ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させて得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)中のエステル結合基が、嵩高い置換基で保護されていることを最大の特徴とする。
【0059】
本発明で用いる脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸、スチルエンドスチレンテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;水添トリメリット酸無水物、水添ピロメリット酸無水物等の三塩基酸以上の脂環式多塩基酸無水物;無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の芳香族二塩基酸無水物;無水ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の三塩基酸以上の芳香族多塩基酸無水物を挙げることができる。
【0060】
これら酸無水物基含有化合物(b)の中でも、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸等は、ポリオール化合物(a)との反応によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成する際に、絶縁信頼性に劣るとされているエステル結合基を嵩高い置換基で保護し、この嵩高い置換基で保護されたエステル結合基によって主鎖が構成されるため、従来のポリエステル骨格を主鎖として用いた樹脂に比べ、高い接着性を保持したまま、絶縁信頼性、半田耐熱性等を著しく向上できることから特に好ましい。また、無水トリメリット酸や無水ピロメリット酸等は、ポリオール化合物(a)との反応によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端カルボキシル基の数を増加させることができ、続く1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)との反応において、高分子量化できるという点で本発明では好ましい。高分子量化により樹脂の凝集力が増大するため、フレキシブル性を保持したまま、塗膜形成後もより耐性に優れる強靭な塗膜を形成することができるという点で好ましい。
【0061】
本発明で任意に用いるヒドロキシル基含有化合物(a−1)は、ヒドロキシル基を1個以上有する化合物であるが、前記「ポリオール化合物(a)」に属する化合物を除く化合物であり、その代表例としては、例えば、分子中に1個のヒドロキシル基を有するモノアルコール化合物(a−1−1)、分子中に2個のヒドロキシル基を有するジオール化合物(a−1−2)、分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a−1−3)を挙げることができる。これらは、分子中に、ヒドロキシル基と、ヒドロキシル基以外の官能基を併有していてもよい。また、単独で使用してもよいし、複数を併用して用いてもよい。
【0062】
分子中に1個のヒドロキシル基を有するモノアルコール化合物(a−1−1)としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族モノアルコール;
シクロヘキサノール等の脂環族モノアルコール;
ベンジルアルコール、フルオレノール、等の芳香族モノアルコール;
フェノール、メトキノン等のフェノール類;
ヒドロキシル基以外の官能基を併有するモノアルコール化合物として、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシル基含有カルボン酸化合物、グリシドールなどのヒドロキシル基含有エポキシ化合物、オキセタンアルコールなどのヒドロキシル基含有オキセタン化合物が挙げられる。その他、片末端メトキシ化ポリエチレングリコール、片末端メトキシ化ポリプロピレングリコール、モノアルコールを開始剤としたカプロラクトン付加重合物、などのオリゴマー型モノアルコールが挙げられる。
【0063】
本発明において、これら分子中に1個のヒドロキシル基を有するモノアルコール化合物(a−1−1)を用いる場合、得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端を封止することができるため、意図的に低分子量のカルボキシル基含有変性エステル樹脂を合成する際など、分子量の調整が必要な時に、好適に用いることができる。また、ヒドロキシル基以外の官能基を併有するヒドロキシル基含有化合物を使用した場合、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端にカルボキシル基以外の官能基を導入することができるため、カルボキシル基含有変性エステル樹脂の末端変性が必要な時に、好適に用いることができる。本発明において、ヒドロキシル基の反応性や重合制御を考慮すると、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノール、12−ヒドロキシステアリン酸、グリシドール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
【0064】
また、分子中に2個のヒドロキシル基を有するジオール化合物(a−1−2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、3−ブチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール、水素添加ビスフェノールA、スピログリコール等の脂肪族あるいは脂環族ジオール類;
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、1,2−インダンジオール、1,3−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,7−ナフタレンジオール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等の芳香族ジオール類等を挙げることができる。その他、リン原子含有ジオール、硫黄原子含有ジオール、臭素原子含有ジオールなどが挙げられる。
【0065】
また、ヒドロキシル基以外の官能基を有する化合物も挙げられる。ヒドロキシル基以外に、例えば、3級アミノ基を含有する化合物としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミンなどの3級アミノ基含有ジオール化合物が挙げられ、また、カルボキシル基を含有する化合物としては、例えば、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、3−ヒドロキシサリチル酸、4−ヒドロキシサリチル酸、5−ヒドロキシサリチル酸、2−カルボキシ−1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0066】
中でも、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸は、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)と反応させて得られる、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端カルボキシル基の数を増加させることができ、続く1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)との反応において、高分子量化できるという点で本発明では好ましい。また、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン等の3級アミノ基含有ジオール化合物を使用する場合、最終的に得られる塗膜の凝集力が増大し、可撓性を保持したまま、より耐性に優れる強靭な塗膜を形成することができるという点で好ましい。
【0067】
また、分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a−1−3)としては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等の多価アルコール化合物が挙げられる。
【0068】
本発明において、これら分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a−1−3)を用いる場合、得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)の末端カルボキシル基の数を増加させることができるため、最終生成物の高分子量化が可能となり、硬化塗膜の耐性を向上することができる。従って本発明において硬化塗膜の耐性をさらに向上する目的で、必要に応じて使用すればよい。これら分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a−1−3)の中でも、反応制御の面でトリメチロールプロパンやペンタエリスリトールを使用することが好ましい。
【0069】
ここで、ポリオール化合物(a)と、ヒドロキシル基含有化合物(a−1)は本発明で目的に応じて任意の割合で用いることができ、ポリオール化合物(a)中のヒドロキシル基1.0モルに対し、ヒドロキシル基含有化合物(a−1)中のヒドロキシル基を0.01モル〜1.00モル、好ましくは0.05モル〜0.50モルの割合で用いる。ポリオール化合物(a)中のヒドロキシル基1.0モルに対し、ヒドロキシル基含有化合物(a−1)中のヒドロキシル基を0.01モル未満の割合で使用する場合(すなわちポリオール化合物(a)単独で使用する場合)、ポリオール化合物(a)だけでも十分な絶縁信頼性、耐熱性、接着強度を発現することができるが、より高い耐熱性を付与しにくくなる。また、1.00モルより多い場合、最終的に得られる塗膜の凝集力が増大しすぎてしまい、接着強度が低下する傾向にある。
【0070】
また、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)を合成する際に、その出発材料を反応させる割合は、ポリオール化合物(a)、および場合により添加するヒドロキシル基含有化合物(a−1)について、これらに含まれるヒドロキシル基の合計を1モルとした場合に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)に含まれる酸無水物基の合計が、0.70モル〜1.30モルの割合で反応させることが好ましく、0.90モル〜1.10モルの割合で反応させることがより好ましい。酸無水物基の合計が0.70モル未満の場合、得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)のカルボキシル基の量が少なくなり、次の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)との反応工程で、充分な反応が起こりにくくなり、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量が十分に大きくならない場合がある。また、酸無水物基の合計が1.30モルより多い場合、次の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)と反応させる際に副反応が多く起こり、反応途中でゲル化を引き起こす場合がある。
【0071】
また、0.90モル〜1.10モルの範囲内において、1.00モルに近い割合で反応させる場合、次の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)との反応工程の途中で上記のような問題が発生しにくくなるため、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量を十分に大きくすることができ、硬化塗膜の耐熱性や屈曲性、密着性を向上することができる。
【0072】
本発明において、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコにポリオール化合物(a)および溶剤[ならびに場合によりヒドロキシル基含有化合物(a−1)]を仕込み、窒素気流下、20〜120℃で加熱・攪拌することで均一に溶解した後、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を投入し、攪拌しながら50〜150℃で加熱することでカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を得ることができる。
【0073】
反応に際しては、必要に応じて3級アミノ基含有化合物等を使用してもよい。また、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を投入する前に、予めフラスコに仕込んだポリオール化合物(a)および溶剤を100℃以上で加熱・攪拌し、溶剤の一部を脱溶剤してもよい。この操作は、通常、系内の水分を除去(脱水処理)するために行い、この操作によって、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させる際に、水による酸無水物基の開環反応を抑制することができる。
【0074】
次に、本発明の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)について説明する。本発明で用いる1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)は、好ましくはエポキシ基を分子内に2個含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロロヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジフェニルスルホンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報に開示されている柔軟性に優れたエポキシ化合物や、下記式(1)−(3)で表される構造のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0075】
式(1)
【0076】
【化3】
【0077】
式(2)
【0078】
【化4】
【0079】
式(3)
【0080】
【化5】
【0081】
中でも、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルは、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)に柔軟性を付与させる場合に好ましく、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂は、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)に耐熱性を付与させる場合に好ましい。このように本発明において、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)は目的に応じて選択することが可能であり、これらは単独で使用しても良いし、複数を併用することも好ましい。
【0082】
ここで、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)を反応させる割合は、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)のカルボキシル基を1.0モルとした場合に、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)中のエポキシ基を0.50モル〜1.50モルの割合で反応させることが好ましく、0.70モル〜1.30モルの割合で反応させることがより好ましい。カルボキシル基含有エステル樹脂(c)のカルボキシル基1.0モルに対し、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)中のエポキシ基の割合が0.50モル未満の場合、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の分子量が低くなり、所望の塗膜耐性や成膜性が得られにくくなる。また、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)のカルボキシル基1.0モルに対し、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)中のエポキシ基の割合が1.50モルより多い場合、末端エポキシ基の量が多くなり、最終の合成段階で脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させる際に副反応が多く起こり、反応途中でゲル化を引き起こす場合がある。
【0083】
本発明において、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコにカルボキシル基含有エステル樹脂(c)及び1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)、溶剤を仕込み、攪拌しながら100〜150℃で加熱することで側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を得ることができる。この際、必要に応じてトリフェニルホスフィンや、3級アミノ基含有化合物等の触媒を使用してもよい。
【0084】
次に、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)について説明する。本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)は、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させることで得ることができる。
【0085】
ここで、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を合成する際に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させる割合は、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)中のヒドロキシル基を1.0モルとした場合に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)中の酸無水物基を0.05モル〜1.0モルの割合で反応させることが好ましく、0.10モル〜0.90モルの割合で反応させることがより好ましい。側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)中のヒドロキシル基1.0モルに対し、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)中の酸無水物基の割合が0.05モル未満の場合、変性の割合が少なくなりすぎて主鎖への架橋性官能基導入の効果が得られにくい。また、1.0モルより多い場合、余剰の酸無水物基含有化合物が残存し最終塗膜のフレキシブル性や半田耐熱性、絶縁信頼性が低下する傾向にある。
【0086】
本発明において、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコに側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)及び、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)、溶剤を仕込み、攪拌しながら50〜100℃で加熱することでカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を得ることができる。この反応は無触媒下でも進行するが、必要に応じてや、3級アミノ基含有化合物等の触媒を使用してもよい。
【0087】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の酸価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは5〜90mgKOH/gである。酸価が1mgKOH/g未満では硬化性基として機能するカルボキシル基が少なく、硬化後の塗膜に充分な耐性を付与することができない場合がある。また、酸価が100mgKOH/gを超えると塗膜の硬度が高くなり、充分な接着強度が得られない場合がある。また、酸価が1〜100mgKOH/gの範囲内において、1mgKOH/gに近い範囲で設計する場合、得られる塗膜の屈曲性や密着性が向上し、一方、100mgKOH/gに近い範囲で設計する場合、架橋点が多くなることから、最終的に得られる塗膜の耐熱性が向上する。このように、本発明においてカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の酸価は、1〜100mgKOH/gの範囲内で目的に応じて調整することが可能である。
【0088】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量は、5000〜500000であることが好ましく、より好ましくは、10000〜300000である。重量平均分子量が5000未満では、充分な半田耐熱性及び可撓性が得られない場合がある。また、重量平均分子量が500000を超えると、塗工時の粘度やハンドリングが課題となる場合がある。また、重量平均分子量が5000〜500000の範囲内において、5000に近い値で設計する場合、得られる樹脂の末端(すなわちカルボキシル基)が多いことから、架橋性に富む樹脂が得られ、最終的に得られる塗膜の耐熱性を向上することができ、一方、500000に近い値で設計する場合、最終的に得られる塗膜は、密着性や屈曲性に優れる。このように、本発明においてカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量は、5000〜500000の範囲内で目的に応じて調整することが可能である。
【0089】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)とエポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B)と熱硬化助剤(C)とを含んでなる。ここで、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B)〔以下、単に「化合物(B)」とも表記する。〕について説明する。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上述したカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の硬化剤として化合物(B)を使用することを特徴とする。
【0090】
本発明におけるエポキシ基含有化合物としては、分子内にエポキシ基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。例えば、分子内にエポキシ基を1個有する化合物としては、N−グリシジルフタルイミド、グリシドール、グリシジル(メタ)アクリレート等の化合物が挙げられる。これらは、次に例示する分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、必要に応じて併用することで、硬化物の架橋密度を制御する目的で好適に用いることができる。また、エポキシ基を分子内に2個以上含有する化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体もしくはプロピレンオキシド付加体のエピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロロヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ナフタレンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジフェニルスルホンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報に開示されている柔軟性に優れたエポキシ化合物や、下記式(4)〜(6)で表される構造のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0091】
式(4)
【0092】
【化6】
【0093】
式(5)
【0094】
【化7】
【0095】
式(6)
【0096】
【化8】
【0097】
さらに、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、三菱化学株式会社製「エピコート1031S」、「エピコート1032H60」、「エピコート604」、「エピコート630」の他、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、特開2001-240654号公報に開示されているジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エチレングリコール・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、等が挙げられる。また、エポキシ基以外の他の熱硬化性基を併有する化合物も使用できる。例えば、特開2001−59011号公報や、2003−48953号公報に開示されているシラン変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0098】
特に、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌレート環含有エポキシ化合物は、本発明に使用した場合、ポリイミドや銅に対して接着強度が向上する傾向があり、好ましい。また、三菱化学株式会社製「エピコート1031S」、「エピコート1032H60」、「エピコート604」、「エピコート630」は、多官能であり、かつ、耐熱性に優れるため、本発明において非常に好ましく、また、脂肪族系のエポキシ化合物や、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報記載のエポキシ化合物は、硬化塗膜の柔軟性に優れるため、好ましい。また、特開2001−240654号公報記載のジシクロペンタジエン型エポキシ化合物や、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、などは、本発明において、熱硬化性および吸湿性や耐熱性をはじめとする硬化塗膜の耐久性の面で優れており好ましい。
【0099】
イソシアネート基含有化合物としては、イソシアネート基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、ジイソシアネート化合物としては、例えば、炭素数4〜50の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0100】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0101】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0102】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えばω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0103】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0104】
分子中にイソシアネート基を1個または3個以上有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、1分子中に1個のイソシアネート基を有する単官能イソシアネートとして、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]エチルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、1,6−ジイソシアナトヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸4,4’−ジフェニルメタン、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアン酸トリレン、ジイソシアン酸トルエン、2,4−ジイソシアン酸トルエン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、ジイソシアン酸4−メチル−m−フェニレン、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のジイソシアン酸エステル化合物と水酸基、カルボキシル基、アミド基含有ビニルモノマーとを等モルで反応せしめた化合物もイソシアン酸エステル化合物として使用することができる。
【0105】
また、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、リジントリイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられ、前述したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0106】
ブロック化イソシアネート基含有化合物としては、イソシアネート基がε−カプロラクタムやMEKオキシム等で保護されたイソシアネート基含有化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、上記イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を、ε−カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたものなどが挙げられる。
【0107】
本発明において、化合物(B)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用しても良い。化合物(B)の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物の用途等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)100重量部に対して、0.5重量部〜100重量部の割合で加えることが好ましく、1重量部〜80重量部の割合で加えることがより好ましい。化合物(B)を使用することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の架橋密度を適度な値に調節することができるので、硬化後の塗膜の各種物性をより一層向上させることができる。化合物(B)の使用量が0.5重量部よりも少ないと、加熱硬化後の塗膜の架橋密度が低くなり過ぎ、所望の接着強度や耐熱性が不充分となる場合がある。また、該使用量が100重量部よりも多いと、加熱硬化後の架橋密度が高くなり過ぎ、その結果、塗膜の屈曲性、可撓性が低下し、接着強度をも著しく悪化させる場合がある。
【0108】
次に、本発明の、熱硬化助剤(C)について説明する。本発明の熱硬化助剤(C)とは、上記化合物(B)とカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)とを硬化反応させる際に、硬化反応に直接寄与する化合物、あるいは触媒的に寄与する化合物である。
【0109】
熱硬化助剤(C)として硬化反応に直接寄与する化合物とは、熱により単独で、または水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基などと反応しうる官能基を有する化合物を表し、上記化合物(B)に属するものは除いたものであり、本発明の熱硬化性樹脂組成物において好ましく用いられる。具体的には、例えば、シアネートエステル化合物、アジリジン化合物、酸無水物基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキセタン基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、シトラコンイミド化合物、ナジイミド化合物、アリルナジイミド化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルベンジルエーテル樹脂、チオール化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0110】
シアネートエステル化合物としては、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物等が挙げられ、そのプレポリマーなどが単独もしくは混合して用いられる。その中でも、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)等が硬化物の誘電特性が特に良好であるため好ましい。シアネートエステル化合物を使用する場合には、必要に応じて金属系反応触媒類が用いられ、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の金属触媒類が用いられる。具体的には、2−エチルヘキサン酸塩やナフテン酸塩等の有機金属塩化合物およびアセチルアセトン錯体などの有機金属錯体として用いられる。金属系反応触媒の配合量は、シアネートエステル化合物に対して1〜3000ppmとすることが好ましく、1〜1000ppmとすることがより好ましく、2〜300ppmとすることがさらに好ましい。金属系反応触媒の配合量が1ppm未満では添加の効果が得られ難く、3000ppmを超えると反応の制御が難しくなり、硬化が速くなりすぎる傾向があるが制限するものではない。
【0111】
アジリジン化合物としては、例えば、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−(2−メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)−2−メチルプロピオネート]、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−4,4−ビス−N,N’−エチレンウレア、1,6−ヘキサメチレンビス−N,N’−エチレンウレア、2,4,6−(トリエチレンイミノ)−Syn−トリアジン、ビス[1−(2−エチル)アジリジニル]ベンゼン−1,3−カルボン酸アミド等が挙げられる。
【0112】
酸無水物基含有化合物としては、酸無水物基含有化合物(b)をはじめとして分子内に酸無水物基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。酸無水物基含有化合物(b)以外の酸無水物基含有化合物としては、具体的には、ジカルボン酸無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などの多価カルボン酸無水物類等が挙げられる。酸無水物基含有化合物をさらに詳しく例示すると、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの他、無水マレイン酸共重合樹脂としては、サートマー社製SMAレジンシリーズ、株式会社岐阜セラック製造所製GSMシリーズなどのスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、p−フェニルスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、ポリエチレン−無水マレイン酸などのα−オレフィン−無水マレイン酸共重合樹脂、ダイセル化学工業株式会社製「VEMA」(メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸の共重合体)、無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィン(「アウローレンシリーズ」:日本製紙ケミカル株式会社製)、無水マレイン酸共重合アクリル樹脂などが挙げられる。
【0113】
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ジメチルテレフタル酸、1,3−ジメチルイソフタル酸、5−スルホ−1,3−ジメチルイソフタル酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;
ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸類;
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0114】
カルボジイミド基含有化合物としては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0115】
オキセタン基含有化合物としては、例えば、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン[東亜合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−121等]、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン[東亜合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−221等]、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、(2−エチル−2−オキセタニル)エタノールとテレフタル酸とのエステル化物、(2−エチル−2−オキセタニル)エタノールとフェノールノボラック樹脂とのエーテル化物、(2−エチル−2−オキセタニル)エタノールと多価カルボン酸化合物とのエステル化物等が挙げられる。
ベンゾオキサジン化合物としては、Macromolecules,36,6010(2003)記載の「P−a」、「P−alp」、「P−ala」、「B−ala」、Macromolecules,34,7257(2001)記載の「P−appe」、「B−appe」、四国化成株式会社製「B−a型ベンゾオキサジン」、「F−a型ベンゾオキサジン」、「B−m型ベンゾオキサジン」などが挙げられる。
【0116】
ビニルベンジルエーテル樹脂としては、V−1000X(昭和高分子株式会社製)、米国特許第4116936号公報、米国特許第4170711号公報、米国特許第4278708号公報、特開平9−31006号公報、特開2001−181383号公報、特開2001−253992号公報、特開2003−277440号公報、特開2003−283076号公報、国際公開第02/083610号パンフレット記載のビニルベンジルエーテル樹脂等が挙げられる。
【0117】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも1個有しているもので、例えば、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−マレイミドフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0118】
シトラコンイミド化合物としては、分子中にシトラコンイミド基を少なくとも1個有している化合物またはその重合体であり、例えば、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルフォンビスシトラコンイミド、2,2−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0119】
ナジイミド化合物としては、分子中にナジイミド基を少なくとも1個有している化合物あるいはこれの重合体であって、例えば、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスナジイミド、N,N’−p−フェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス[4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0120】
アリルナジイミド化合物としては、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、1,6−ヘキサン−ビス−アリルナジイミド、メタキシリレン−ビス−アリルナジイミドなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0121】
ビニルエーテル化合物としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンメタノールビニルエーテル、エチルシクロヘキサノールビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、トリシクロデカンエポキシビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、グリセリンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシルシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性レゾルシンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールSジビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジペンタエリスリトールポリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテルなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0122】
チオール化合物としては、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアゾール、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、テトラエチレングリコールビス−3−メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、トリス−(エチル−3−メルカプトプロピオネート)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネートなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0123】
アミノ樹脂としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、およびアセトグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加化合物、またはその部分縮合物が挙げられる。また、フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール類、およびビスフェノール類等の化合物とホルムアルデヒドとの付加化合物、またはその部分縮合物が挙げられる。具体的には、フェノール樹脂、クレゾール樹脂、t−ブチルフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂、テトラキスフェノール樹脂、ビスフェノールA樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂のレゾール型樹脂やノボラック型樹脂が挙げられる。その他、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。中でも、フェノール樹脂のレゾール型樹脂は、耐熱性および硬化性の面で非常に優れており、本発明において好適に用いることができる。
【0124】
熱硬化助剤(C)として硬化反応に触媒的に寄与する化合物としては、3級アミンおよびその塩類、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド、イミダゾール類、ジアザビシクロ化合物類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類を挙げることができ、これらを使用すると、より効率的に熱硬化反応が進行し、塗膜の耐性が優れるため好ましい。
【0125】
具体的には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−メチルピペラジン等の3級アミン類、およびその塩類;
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−1]−エチル−S−トリアジン、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、等のイミダゾール類、およびその塩類;
1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデカン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、1,4−ジアビシクロ[2,2,2,]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等のジアザビシクロ化合物類;
トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィン等のホスフィン類;
テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウム塩類;
その他、触媒的かつ自らも直接硬化反応に寄与する化合物として、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド等が挙げられる。カルボン酸ヒドラジドとしては、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0126】
これら熱硬化助剤(C)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。熱硬化助剤(C)の使用量は、硬化性樹脂組成物の硬化物性を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)100重量部に対して、0.05重量部〜20重量部の範囲内が好ましく、0.1重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。これにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の架橋速度や架橋密度、凝集力を調節することが可能であり、各種物性をより一層向上させることができる。熱硬化助剤(C)の使用量が0.05重量部よりも少ないと、その添加効果は得られ難く、また、該使用量が20重量部よりも多いと、余剰の熱硬化助剤(C)が電気絶縁性や接着強度、半田耐熱性を低下させる原因となりやすい。
【0127】
この他、本発明の熱硬化性樹脂組成物には目的を損なわない範囲で任意成分とて更に溶剤、染料、顔料、難燃剤、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤、フィラー等を添加することができる。特に電子材料用途で回路に直接接するような絶縁部材(例えば回路保護膜、カバーレイ層、層間絶縁材料など)や、回路周辺の高熱となりうる部材(プリント配線板接着剤、支持基板など)に使用する場合は、難燃剤を併用するのが好ましい。
【0128】
難燃剤としては、例えば、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメートなどのリン酸塩系化合物やポリリン酸塩系化合物、赤リン、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホン酸化合物、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、エチルブチルホスフィン酸アルミニウム、メチルブチルホスフィン酸アルミニウム、ポリエチレンホスフィン酸アルミニウムなどのホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、ホスホルアミド化合物などのリン系難燃剤、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレートなどのトリアジン系化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素などの窒素系難燃剤、シリコーン化合物やシラン化合物などのケイ素系難燃剤、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化エポキシ化合物、ハロゲン化フェノキシ化合物などの低分子ハロゲン含有化合物、ハロゲン化されたオリゴマーやポリマーなどのハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水和ガラスなどの無機系難燃剤などが挙げられる。本発明において、近年取り沙汰されている、環境への影響を配慮すると、リン系難燃剤や窒素系難燃剤等のノンハロゲン系難燃剤を使用することが望ましく、中でも本発明の熱硬化性樹脂組成物との併用によって、難燃性により効果のあるホスファゼン化合物、ホスフィン化合物、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート等を用いることが好ましい。本発明において、これら難燃剤は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0129】
消泡剤、レベリング剤としては、シリコーン系、炭化水素系、アクリル樹脂系の化合物などが挙げられる。
【0130】
イオン捕集剤としては、無機あるいは有機のイオン交換体が好適に用いられる。詳しくは東亜合成株式会社の無機イオン交換体イグゼや三菱化学株式会社のイオン交換樹脂ダイアイオンが用いられるが、イオン捕集能を有するものであればこれらに限定されない。
【0131】
本発明により、接着強度、電気絶縁性、耐熱性、屈曲性、加工性、耐フラックス性に優れ、特に、保存安定性と加工安定性とを同時に満足し、更に高い接着強度を保持したまま高度な耐熱性を示し、更には、接着強度と電気絶縁性、耐熱性と屈曲性とを両立し得る、カルボキシル基含有変性エステル樹脂および熱硬化性樹脂組成物が得られた。これらは、フレキシブルプリント配線板周辺をはじめとする電子材料用接着剤や接着シート、コーティング剤、回路被覆用ソルダーレジスト、カバーレイフィルム、電磁波シールド用接着剤、メッキレジスト、プリント配線板用層間電気絶縁材料、光導波路等に好適に用いることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に、接着剤組成物に好適に用いられる。
【実施例】
【0132】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表し、Mwは重量平均分子量を意味する。
【0133】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF−604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0134】
[製造例1]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオール(クラレポリオール C−2090:株式会社クラレ製:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール:水酸基価=56mgKOH/g、Mw=2000)292.1部、テトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化株式会社製)44.9部、溶剤としてトルエン350部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−8125:東都化成株式会社製:エポキシ当量=175g/eq)62.9部、触媒としてトリフェニルホスフィン4部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、テトラヒドロ無水フタル酸11.8部を添加し、110℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分が35%になるよう調整し、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を得た。本製造例によって得たカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量は12600、実測による樹脂固形分の酸価は15.3mgKOH/gであった。
【0135】
[製造例2〜36、比較製造例1〜9]
表1〜3に示す材料に代えた以外は製造例1と同様にして、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を得た。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
C−2090:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール
T−5652:旭化成ケミカルズ株式会社製、C5C6共重合ポリカーボネートジオール
UHC50−200:宇部興産株式会社製、1,6−ヘキサンジオール/カプロラクトン=5/5共重合ポリカーボネートジオール
UC−100:宇部興産株式会社製、1,4−シクロヘキサンジメタノールベースのポリカーボネートジオール
UM90(1/3):宇部興産株式会社製、1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール=1/3共重合ポリカーボネートジオール
UM90(1/1):宇部興産株式会社製、1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール=1/1共重合ポリカーボネートジオール
UM90(3/1):宇部興産株式会社製、1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール=3/1共重合ポリカーボネートジオール
PTG−2000SN:保土ヶ谷化学株式会社製、ポリテトラメチレングリコール
PTG−L2000:保土ヶ谷化学株式会社製、ポリテトラメチレングリコール(重量平均分子量約2000)
GI−2000:日本曹達株式会社製、水素添加型ポリブタジエングリコール(重量平均分子量約2100)
G−2000:日本曹達株式会社製、α,ω−ポリブタジエングリコール(重量平均分子量約1800)
Poly−ip:出光興産株式会社製、水酸基末端液状イソプレン(重量平均分子量約2500)
KF−6002:信越化学工業株式会社製、両末端カルビノール変性型シリコーンオイル(重量平均分子量約3000)
P−1041:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸共重合ポリエステルポリオール(重量平均分子量約1000)
P−2041:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸共重合ポリエステルポリオール(重量平均分子量約2000)
P−2010:株式会社クラレ製、脂肪族ポリエステルポリオール(重量平均分子量約2000)
C−590:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール(重量平均分子量約600)
C−1090:株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール(重量平均分子量約1000)
TH:新日本理化株式会社製、テトラヒドロ無水フタル酸
HNA−100:新日本理化株式会社製、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物
無水TMA:無水トリメリット酸
SA:新日本理化株式会社製、無水コハク酸
YD−8125:東都化成株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
EX−216L:ナガセケムテックス株式会社製、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル
EX−214L:ナガセケムテックス株式会社製、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル
EX−212L:ナガセケムテックス株式会社製、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
YX−8800:三菱化学株式会社製、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂
YDF−8170C:東都化成株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
ZX−1059:東都化成株式会社製、ビスフェノール型エポキシ樹脂
BHPA:N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン
DMBA:ジメチロールブタン酸
TMP:トリメチロールプロパン
1、6−HD:1,6−ヘキサンジオール
【0140】
(実施例1)
製造例1で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液の固形分100部に対して、化合物(B)として、多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1031S」)20部、および、熱硬化助剤(C)としてケミタイトPZ(株式会社日本触媒製、多官能アジリジン化合物)1部を混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。この熱硬化性樹脂組成物を剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように均一に塗工して乾燥させ、接着剤層を設けた。次に、剥離処理された別のポリエステルフィルムを接着剤層側にラミネートし、両面保護フィルム付きの接着シートを得た。
【0141】
(実施例2〜27)
実施例1で使用した製造例1のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を、製造例2〜27で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液にそれぞれ代えた以外は、実施例1と同様にして、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0142】
(実施例28)
製造例28で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液の固形分100部に対して、化合物(B)として、多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1031S」)18部、および、熱硬化助剤(C)としてジシアンジアミド1部を混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。この熱硬化性樹脂組成物を剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように均一に塗工して乾燥させ、接着剤層を設けた。次に、剥離処理された別のポリエステルフィルムを接着剤層側にラミネートし、両面保護フィルム付きの接着シートを得た。
【0143】
(実施例29〜36)
実施例28で使用した製造例28のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を、製造例29〜36で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液にそれぞれ代えた以外は、実施例1と同様にして、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0144】
(実施例37〜64)
表4に示した組成で熱硬化性樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様にして、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0145】
【表4】
【0146】
828:三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ化合物
EOCN−102S:日本化薬株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
EPPN−201L:日本化薬株式会社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂
YH434L:東都化成株式会社製、四官能ポリグリシジルアミン
オンコート1040:ナガセケムテックス株式会社製、フルオレン型多官能エポキシ樹脂
BL3175:住化バイエルウレタン株式会社製、イソシアヌレート型ブロックイソシアネート
B80T:旭化成ケミカルズ株式会社製、ブロックイソシアネート
DICY:ジシアンジアミド
ケミタイトPZ:株式会社日本触媒製、多官能アジリジン化合物
リカシッドTMTA−C:新日本理化株式会社製、多官能酸無水物
アロンオキセタンOXT−121:東亞合成株式会社製、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン
B−a:四国化成株式会社製、ベンゾオキサジン化合物
カルボジライトV−07:日清紡株式会社製、ポリカルボジイミド化合物
ZISNET DB:三協化成株式会社製、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン
TD−2131:DIC株式会社製、フェノールノボラック樹脂
BMI−2300:大和化成工業株式会社製、ポリフェニルメタンマレイミド化合物
【0147】
(比較例1〜9)
実施例1のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を、比較製造例1〜9で得られた樹脂溶液にそれぞれ代えた以外は、実施例1と同様にして、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0148】
実施例および比較例で得られた接着シートについて、保存安定性、加工安定性、接着強度、半田浴耐性、半田後接着強度、加湿半田浴耐性、絶縁信頼性、耐フラックス性を以下の方法で評価した。
【0149】
(1)加工安定性
保護フィルムを除去した、65mm×65mmの大きさの接着シートを、厚さが75μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン(株)製「カプトン300H」]と厚さが45μmの銅張積層板との間に挟み、80℃でラミネートし、続いて160℃、1.0MPaの条件で1時間圧着処理を行った。さらに、この試験片を160℃で2時間熱硬化させ、評価用試験片を作成した。この試験片について、圧着処理前と熱硬化後との接着剤層の面積の差を測定し、これをはみ出し面積として加工安定性を評価した。この加工安定性は、圧着処理時に接着層が熱によって軟化し、回路基板の位置ズレや配線間の接触を引き起こす度合いを評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
◎・・・「はみ出し面積 ≦ 100mm2」
○・・・「100mm2 < はみ出し面積 ≦ 250mm2」
△・・・「250mm2 < はみ出し面積 ≦ 500mm2」
×・・・「500mm2 < はみ出し面積」
【0150】
(2)接着強度
加工安定性の評価で作成した試験片を幅10mm、長さ65mmに切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で、引っ張り速度300mm/minでTピール剥離試験を行い、接着強度(N/cm)を測定した。この試験は、常温使用時における接着層の接着強度を評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
◎・・・「18(N/cm) < 接着強度」
○・・・「12(N/cm) < 接着強度 ≦ 18(N/cm)」
△・・・「8(N/cm) < 接着強度 ≦ 12(N/cm)」
×・・・「接着強度 ≦ 8(N/cm)」
【0151】
(3)保存安定性
実施例および比較例で作成した両面保護フィルム付き接着シートを、40℃で3ヶ月間加熱保存した後、上記(1)の条件でラミネート、圧着処理および熱硬化を施し、接着強度を上記(2)と同じ方法で評価し、加熱保存していない接着シートで得られる接着強度と比較した。この試験は、未硬化状態の接着層の経時安定性を、加熱保存の有無による接着強度の差異をもって評価するものであり、経時安定性の良好なものほど未硬化の状態が安定で、加熱促進を施した場合でも接着強度の低下は少なく、経時安定性の悪いものほど、未硬化の状態が不安定で、加熱促進によって硬化反応が進行してしまい、加熱促進を施さない場合に比べて接着強度が大きく低下する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
◎・・・「加熱促進により接着強度が全く変化しない」
○・・・「加熱促進により接着強度がほとんど変化しない」
△・・・「加熱促進により接着強度がやや低下した」
×・・・「加熱促進により接着強度が著しく低下した」
【0152】
(4)半田浴耐性
上記(2)と同様に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を、260℃の溶融半田に、ポリイミドフィルム面を接触させて1分間浮かべた。その後、試験片の外観を目視で観察し、接着剤層の発泡、浮き、剥がれ等の接着異常の有無を評価した。この試験は、半田接触時における接着層の熱安定性を、外観で評価するものであり、耐熱性の良好なものは、半田処理の前後で外観が変化しないのに対して、耐熱性の悪いものは、半田処理後に発泡や剥がれが発生する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
◎・・・「外観変化無し」
○・・・「小さな発泡がわずかに観察される」
△・・・「発泡が観察される」
×・・・「激しい発泡や剥がれが観察される」
【0153】
(5)半田後接着強度
上記(4)の半田浴耐性評価後の試験片について、上記(2)と同様の方法で接着強度を測定し、半田処理前の接着強度と半田処理後の接着強度とを比較した。この試験は、半田接触時における接着層の熱安定性を、半田処理前後における接着強度の変化で評価するものであり、耐熱性の良好なものは、半田処理の前後で接着強度が変化しないのに対して、耐熱性の悪いものは、半田処理後に接着強度が著しく低下する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
◎・・・「接着強度が全く変化しない」
○・・・「接着強度がほとんど変化しない」
△・・・「接着強度がやや低下した」
×・・・「接着強度が著しく低下した」
【0154】
(6)加湿半田浴耐性
上記(2)と同様に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を、40℃、相対湿度90%の雰囲気で96時間放置して加湿させた後、260℃の溶融半田に、ポリイミドフィルム面を接触させて1分間浮かべた。その後、試験片の外観を目視で観察し、接着剤層の発泡、浮き、剥がれ等の接着異常の有無を評価した。この試験は、加湿させた状態での半田接触時における接着層の熱安定性を、外観で評価するものであり、耐湿熱性の良好なものは、外観が変化しないのに対して、耐湿熱性の悪いものは、半田処理後に発泡や剥がれが発生する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
◎・・・「外観変化全く無し」
○・・・「外観変化ほとんど無し」
△・・・「発泡が観察される」
×・・・「激しい発泡や剥がれが観察される」
【0155】
(7)絶縁信頼性
保護フィルムを除去した、65mm×65mmの大きさの接着シートを、厚さが25μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン(株)製「カプトン100H」]とポリイミド上に銅回路が形成された櫛型パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)印刷回路基板との間に挟み、80℃でラミネートし、続いて160℃、1.0MPaの条件で1時間圧着処理を行った。さらに、この試験片を160℃で2時間熱硬化させ、評価用試験片を作成した。この試験片の導体回路に、温度130℃、相対湿度85%の雰囲気下で直流電圧50Vを連続的に100時間加え、100時間後の導体間の絶縁抵抗値を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎・・・絶縁抵抗値108Ω以上
○・・・絶縁抵抗値107以上108Ω未満
△・・・絶縁抵抗値106以上107Ω未満
×・・・絶縁抵抗値106Ω未満
【0156】
(8)耐フラックス性
熱硬化性樹脂組成物を、厚さが75μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン(株)製「カプトン300H」]上に、乾燥後の膜厚が30μmになるように均一に塗工して乾燥させ、さらに、この試験片を160℃で1時間熱硬化させ、評価用試験片を作成した。この試験片上に弱活性ロジン系フラックス(日本アルファメタルズ株式会社製、商品名:RM−615)を数滴垂らした後、260℃のオーブンで3分間熱処理した。試験片をオーブンから取り出し、フラックスをイソプロピルアルコールで拭き取った後、ポリイミド上の硬化膜の厚さによって下記のように判断した。実用上問題ないものは○である。
〇・・・膜厚変化が5μm未満
△・・・膜厚変化が5〜10μm
×・・・膜厚変化が10μmよりも大きい
評価の結果を下記表5に示す。
【0157】
【表5】
【0158】
表5について、実施例と比較例をみてわかるとおり、比較例1〜4,7,9に用いた樹脂は、カルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成する際に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を使用していないため、絶縁信頼性、半田後接着強度、加湿半田浴耐性が著しく悪化した。また、比較例5〜7に用いた樹脂はカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)を生成する際に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を使用していないため、絶縁信頼性、半田後接着強度、加湿半田浴耐性が著しく悪化した。一方、実施例では脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を使用したために、これらの3つの物性が改善されている上、全ての物性においてバランスよく良好な結果が得られた。これらは、本発明の特徴である、前記ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させて得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c)中のエステル結合基が嵩高い置換基で保護されたこと、および側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてなるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)中のエステル結合基が嵩高い置換基で保護されたことが大きく影響していると考えられる。さらに、製造例で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)は半田浴耐性を保持しつつ、高い接着強度を示している。これは、出発原料に、ポリオール化合物(a)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを用いているためであり、従来の二塩基酸を原料としたポリエステル骨格を主鎖として用いた樹脂に比べ、ポリオール化合物(a)由来のフレキシブル性や加工性等を付与できるからである。また、エステル結合基を嵩高い置換基で保護しても、エステル骨格由来の極性が働いているためと考えられる。
実施例と比較例をみてわかるとおり、実施例では、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を使用して樹脂を合成しており、全ての物性において良好な結果を示した。さらには、熱硬化助剤(C)を加えることにより、接着強度、絶縁信頼性等を低下させないで加工性や加湿半田耐性、半田後の接着強度を向上することができた。これらは、エステル結合基が嵩高い置換基で保護されたことによる耐加水分解性と熱硬化助剤(C)との相乗効果であることが考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)、
エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B)、
および熱硬化助剤(C)を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)が、
ポリオール化合物(a)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、
前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、
さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させてなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオール化合物(a)が、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリシロキサンポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
酸無水物基含有化合物(b)が、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸、スチルエンドスチレンテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸、および無水ピロメリット酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1または2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の酸価が、1〜100mgKOH/gである請求項1〜3いずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量が5000〜500000である請求項1〜4いずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
熱硬化助剤(C)が、アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、フェノール樹脂、イミダゾール類、およびジシアンジアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5いずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の熱硬化性樹脂組成物を加熱により硬化させて得られる硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物からなる層を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項1】
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)、
エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B)、
および熱硬化助剤(C)を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)が、
ポリオール化合物(a)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c)を生成し、
前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)を生成し、
さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させてなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオール化合物(a)が、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリシロキサンポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
酸無水物基含有化合物(b)が、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸、スチルエンドスチレンテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸、および無水ピロメリット酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1または2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の酸価が、1〜100mgKOH/gである請求項1〜3いずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量が5000〜500000である請求項1〜4いずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
熱硬化助剤(C)が、アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、フェノール樹脂、イミダゾール類、およびジシアンジアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5いずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の熱硬化性樹脂組成物を加熱により硬化させて得られる硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物からなる層を有することを特徴とするプリント配線板。
【公開番号】特開2012−131967(P2012−131967A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54067(P2011−54067)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【特許番号】特許第4911252号(P4911252)
【特許公報発行日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【特許番号】特許第4911252号(P4911252)
【特許公報発行日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】
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