説明

カルボキシル基含有変性ポリエステル樹脂を含有してなる組成物、及び塗料組成物

【課題】加工性、耐溶剤性、硬度等の種々の性能に優れた塗膜を提供できる、特に塗料組成物に適した新規な変性ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸を60〜100モル%含むジカルボン酸類(a1)、ジオール類(a2)、トリオール類(a3)、およびトリカルボン酸類(a4)が縮合反応してなり、かつ、数平均分子量が5000〜20000である、分子内にカルボキシル基及び水酸基を有するポリマー(A)100重量部(固形分換算)に対し、下記一般式(I)(式中、nは2〜100の整数を示す)で表されるポリメトキシシラン類部分縮合物(B)10〜20重量部反応させて得られるカルボキシル基含有変性ポリエステル樹脂を含有してなる組成物(1)を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基含有変性ポリエステル樹脂を含有してなる組成物、及びこれを用いた塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、アクリル系樹脂やエポキシ樹脂等と比較して加工性が良好であるため、従来、コーティング剤や塗料等の用途において賞用されている。また、ポリエステル樹脂のかかる特長を維持しつつ、その欠点であった硬度や耐溶剤性等を向上させる手段として、ポリエステル樹脂中にポリアルコキシシラン類の部分縮合物を分散させてなるポリエステル樹脂組成物をゾル−ゲル硬化させる手法が知られている。
【0003】
また、例えば、特許文献1には、芳香族ジカルボン酸を40〜100モル%含むジカルボン酸類、ジオール類、および多塩基酸を加熱反応させて得られるポリエステル樹脂に、反応性のシリコーンオイルを0.1〜5重量%加熱反応させて得られる、数平均分子量が5000以上の変性ポリエステル樹脂組成物が記載されており、このものによれば、加工性だけでなく、耐スリ傷性や耐汚染性、耐薬品性等に優れる塗膜が得られるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−58532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、加工性、耐溶剤性、硬度等の種々の性能に優れた塗膜を提供できる、コーティング剤や塗料に適した新規な変性ポリエステル樹脂組成物を提供することを、主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、以下の構成からなる変性ポリエステル樹脂組成物によれば前記課題を解決できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、芳香族ジカルボン酸を60〜100モル%含むジカルボン酸類(a1)、ジオール類(a2)、トリオール類(a3)、およびトリカルボン酸類(a4)が縮合反応してなり、かつ、数平均分子量が5000〜20000である、分子内にカルボキシル基及び水酸基を有するポリマー(A)100重量部(固形分換算)に対し、下記一般式(I)(式中、nは2〜100の整数を示す)で表されるポリメトキシシラン類部分縮合物(B)10〜20重量部反応させて得られるカルボキシル基含有変性ポリエステル樹脂を含有してなる組成物(1);当該変性ポリエステル樹脂組成物(1)と、アジリジリル基を少なくとも3つ有するアジリジン系硬化剤(2)とを含む、塗料組成物、に関する。
【0008】
【化1】

【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物(1)は、ベースとなるカルボキシル基含有ポリマー(A)が架橋構造および/または分岐構造を有している点、ならびに、該カルボキシル基含有ポリマー(A)に所定量のポリメトキシシラン類部分縮合物(B)を反応させてなる変性ポリエステル樹脂が分子末端に反応部位としてのカルボキシル基を有している点に特徴がある。そのため、該組成物(1)には様々な硬化剤を適用することができ、種々の塗膜性能に優れた塗料組成物を得ることができる。
【0010】
また、本発明の塗料組成物は、該組成物(1)と、アジリジリル基を少なくとも3つ有するアジリジン系硬化剤(2)とを含むので、加工性、耐溶剤性、硬度だけでなく、透明性、基材(特にアルミニウム基材)への密着性、耐沸水性、耐ブロッキング性等の種々の性能を塗膜を得ることができる。そのため、該塗料組成物は、金属やプラスチック素材などへのコーティング用途に特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物(1)は、芳香族ジカルボン酸を60〜100モル%含むジカルボン酸類(a1)(以下、(a1)成分という)、ジオール類(a2)(以下、(a2)成分という)、トリオール類(a3)(以下、(a3)成分という)、およびトリカルボン酸類(a4)(以下、(a4)成分という)が縮合反応してなり、かつ、数平均分子量が5000〜20000である、分子内にカルボキシル基及び水酸基を有するポリマー(A)(以下、(A)成分という)100重量部(固形分換算)に対し、下記一般式(I)(式中、nは2〜100の整数を示す)で表されるポリメトキシシラン類部分縮合物(B)(以下、(B)成分という)10〜20重量部反応させて得られるカルボキシル基含有変性ポリエステル樹脂を含有してなるものである。
【0012】
(a1)成分に含まれる芳香族ジカルボン酸としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸、ならびに対応するものについての酸無水物が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
また、(a1)成分には、該芳香族ジカルボン酸以外の各種公知のジカルボン酸を含ませることができる。具体的には、例えば、脂肪族ジカルボン酸〔シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸等〕、脂環族ジカルボン酸〔ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等〕などが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
(a1)成分における該芳香族ジカルボン酸の含有量は、特に塗膜の硬度等の観点より、60〜100モル%程度、好ましくは80〜100モル%である。
【0015】
(a2)成分としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、分岐状脂肪族ジオール〔ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール等〕、直鎖状脂肪族ジオール〔エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等〕、脂環族ジオール〔1,4−シクロヘキサンジメタノール、ダイマー酸を水素化して得られるジオール、水添ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等〕、芳香族ジオール〔カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等〕などが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
(a3)成分は、(A)成分に架橋構造および/または分岐構造を導入するのに必須の成分であり、かつ、これを用いることによって、(A)成分の水酸基価および数平均分子量を所定の範囲とすることができる。また、かかる架橋構造および/または分岐構造は、塗膜の硬度や耐溶剤性等の性能に寄与する。(a3)成分としては、具体例には、例えば、脂肪族トリオール類〔グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール等〕、脂環族トリオール類〔シクロヘキサントリオール等〕、芳香族トリオール類〔ピロガロール、フロログルシノール等〕が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
なお、(a3)成分とともに、各種公知の4官能以上のポリオールを併用することもできる。具体的には、例えば、エリスリトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等のテトラオールや、ジペンタエリスリトールが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
(a4)成分は、(A)成分に架橋構造および/または分岐構造を導入し、かつ、その分子末端にカルボキシル基を持たせるために必須使用するものである。かかる架橋構造および/または分岐構造は、塗膜の硬度や耐溶剤性等の性能に寄与する。なお、(a4)成分を用いない場合には、(A)成分および(B)成分の加熱反応の際に、反応系がゲル化する傾向にある。(a4)成分としては、具体例には、例えば、トリメリット酸無水物、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
なお、(a4)成分とともに、各種公知のテトラカルボン酸類を併用することもできる。具体的には、例えば、ジフェニルエーテル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、これらの酸無水物等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
(a1)成分〜(a4)成分の使用量は特に制限されないが、通常は(a1)成分の使用量:(a2)成分と(a3)成分の合計の使用量は、40〜45モル%:55〜60モル%程度となる範囲である。また、(a3)成分の使用量は、(a2)成分および(a3)成分の合計量を100モル%とした場合において、通常1〜10モル%程度、好ましくは3〜7モル%である。また、(a4)成分の使用量は、(a1)成分および(a4)成分の合計量を100モル%とした場合において、通常2.0〜8.0モル%程度、好ましくは2.5〜6.5モル%である。
【0021】
(A)成分の製造法は特に限定されず、各種公知の方法を採用できる。具体的には、例えば、(a1)成分〜(a4)成分を一括で反応させる方法や、逐次的な反応方法が挙げられる。後者の態様としては、例えば、(a1)成分〜(a3)成分を(脱水)縮合反応させたのち、さらに(a4)成分を(脱水)縮合反応させる方法が挙げられる。
【0022】
(A)成分の製造の際の反応条件は特に限定されないが、通常、反応温度が150〜250℃程度、反応時間が5〜10時間程度である。また、反応は、常圧下または減圧下で行なうことができる。また、反応は、後述の有機溶剤(C)の存在下で行ってもよい。
【0023】
また、(A)成分の製造の際には、各種公知の触媒を用いることもできる。具体的には、例えば、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラn−ブトキシド、三酸化アンチモン、酸化ジブチルスズ、酢酸亜鉛(2水和物)、モノブチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド、チタニウムテトラブトキサイド等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
こうして得られた(A)成分は、数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算値をいう。以下、同様。)が5000〜20000、好ましくは8000〜15000である。数平均分子量が5000未満であると塗膜の加工性が不十分となり得、20000を超えると塗膜が白化し得る。
【0025】
(A)成分の他の物性は特に限定されないが、例えば、水酸基価(JIS−K−0070)が通常5〜20mgKOH/g程度、好ましくは8〜15mgKOH/gである。水酸基価を5以上とすることで、(A)成分と(B)成分との反応(脱メタノール反応)が十分に進行し、本発明の組成物(1)を用いた塗膜において十分な透明性が得られる。一方、水酸基価を20以下とすることで反応系のゲル化を抑制することが出来る。
【0026】
(A)成分の他の物性は特に限定されないが、例えば、本発明の組成物(1)と後述の硬化剤との反応性を考慮すると、酸価(mgKOH/g)が通常15〜50程度、好ましくは20〜40である。また、塗膜硬度の観点より、(A)成分のガラス転移温度(JIS−K7121)は通常10〜50℃程度、好ましくは15〜40℃である。
【0027】
(B)成分としては、下記一般式(I)(式中、nは2〜100、好ましくは4〜20の整数を示す)で表されるポリメトキシシラン類部分縮合物を用いる。
【0028】
【化1】

【0029】
(A)成分に対する(B)成分の使用量は、通常、(A)成分100重量部に対して(B)成分が10〜20重量部程度(固形分換算)、好ましくは12〜18重量部(固形分換算)となる範囲である。10重量部を下回ると、塗膜の硬度や、基材との密着性が不足する。また、20重量部を上回ると塗膜の透明性が不足する。
【0030】
(A)成分に(B)成分を反応(加熱反応)させる方法は特に限定されないが、通常は、適当な反応容器に(A)成分及び(B)成分を仕込み、通常90〜110℃程度の温度において、水酸基とアルコキシ基との反応により生ずるメタノールを適当な手段で系外留去させながら、通常5〜10時間程度、加熱する方法が挙げられる。なお、(A)成分と(B)成分を単に混合しただけでは、被膜の特に透明性や硬度が損なわれ、他の性能も不十分になる。
【0031】
こうして得られる組成物(1)は、分子末端にカルボキシル基を有する変性ポリエステル樹脂((A)成分と(B)成分の反応物)を主成分として含有する。該変性ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基の量は特に限定されないが、通常、組成物(1)の酸価(JIS−K−0070)が通常15〜50mgKOH/g程度、好ましくは20〜40となる範囲である。また、組成物(1)の数平均分子量は通常6000〜30000程度である。
【0032】
組成物(1)には、さらに各種公知の有機溶剤(C)(以下、(C)成分という)を含有させることができる。具体的には、例えば、芳香族炭化水素系有機溶剤〔ソルベッソ#100、ソルベッソ#150(いずれもエクソン化学(株)製)、トルエン、キシレン等〕、エステル系有機溶剤〔酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ぎ酸エチル、プロピオン酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート等〕、ケトン系有機溶剤〔アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等〕、エーテル系有機溶剤〔ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等〕、非プロトン性極性有機溶剤〔N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等〕、アルコール系溶剤〔メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等〕などが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、前記エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エーテル系有機溶剤およびアルコール系溶剤のうち、特に沸点が60〜130℃程度のものを使用すれば、本発明の塗料組成物をプラスチック基材に塗工した際に塗膜が短時間で得られる。
【0033】
また、組成物(1)には、前記(B)成分由来のアルコキシ基についてのゾル−ゲル硬化反応(脱メタノール反応)を促進する目的で、各種公知のゾル−ゲル硬化触媒(D)(以下、(D)成分という)を含有させることができる。(D)成分としては、具体的には、例えば、三級アミン類〔1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等〕、イミダゾール類〔2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等〕、有機ホスフィン類〔トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等〕、テトラフェニルボロン塩〔テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等〕、水等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
該組成物(1)における(C)成分および(D)成分の含有量は、通常、それぞれ40〜60重量%程度および0.05〜0.2重量%程度である。
【0035】
本発明の塗料組成物は、組成物(1)と、アジリジリル基を少なくとも3つ有するアジリジン系硬化剤(2)(以下、単に硬化剤(2)という)を含むものである。
【0036】
硬化剤(2)としては、具体的には、例えば、3官能アジリジン化合物〔テトラメチロールメタン−トリ−(β−アジリジニルプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−アジリジニルプロピオネート)、グリセリルトリス(β−アジリジニルプロピオネート)、等〕、4官能アジリジン化合物〔テトラアジリジニルメタキシレンジアミン、テトラアジリジニルメチルパラキシレンジアミン、テトラメチルプロパンテトラアジリジニルプロピオネ−ト等〕などが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
また、本発明の塗料組成物には、その貯蔵安定性等の目的より、種々の揮発性アミン類やアンモニアを含めることができる。揮発性アミン類としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、アリールアミン、アルカノールアミンなどが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、塗料組成物の貯蔵安定性と塗膜の耐水性の観点より、特に、トリエチルアミンが好ましい。
【0038】
本発明の塗料組成物における、組成物(1)と硬化剤(2)の使用量は特に限定されないが、通常は、組成物(1)を100重量部(固形分換算)とした場合において、硬化剤(2)が通常6〜20重量部程度である。
【0039】
本発明の塗料組成物には、他にも、前記(C)成分、充填剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤等を適用することもできる。
【0040】
本発明の塗料組成物を適用する基材は特に限定されないが、例えば、プラスチック〔ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等〕、当該プラスチックからなるフィルム(コロナ放電処理、アルミ蒸着等の表面処理がなされていてもよい)、金属〔鉄、チンフリースチール、銅、アルミニウム等〕、ガラス素材〔ガラス板、ガラスクロス等〕などが挙げられる。これらの中でも、密着性等の点より、アルミ系基材(アルミニウム金属、アルミニウム蒸着処理プラスチックフィルム)が好ましい。
【0041】
本発明の塗料組成物を基材に塗工する方法は特に限定されず、各種公知の手段による。具体的には、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター等が挙げられる。また、基材への塗工量も特に限定されないが、通常は乾燥固形分として0.01〜10g/m程度である。
【実施例】
【0042】
以下、製造例、実施例および比較例をあげて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。
【0043】
なお、「数平均分子量」は市販の測定機器(製品名「HLC−8220GPC」、東ソー(株)製、展開溶媒:テトラヒドロフラン)を用いて得たポリスチレン換算値である。また、ガラス転移温度は市販の測定機器(製品名「DSC6200」、セイコーインスツルメンツ(株)製)により得た値である。
【0044】
<ポリマー(A)等の調製>
製造例1
撹拌機、温度計および窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、テレフタル酸478.5部、イソフタル酸402.1部、アゼライン酸87.6部、エチレングリコール255.7部、1,6−ヘキサンジオール353.9部、およびグリセリン23部を仕込み、撹拌下に反応系を加熱してこれらを溶融した。次いで、三酸化アンチモンを0.16部加え、反応容器に真空減圧装置をつなぎ、235℃、2.8kPaで1時間、減圧重縮合反応を行った。次いで、減圧状態を解除して反応系を150℃まで冷却し、反応系に無水トリメリット酸52.5部を仕込み、1時間保温した。次いで、メチルイソブチルケトン(MIBK)470.4部を系内に加え、不揮発分が67%、数平均分子量が10000、水酸基価が8.6、酸価が33.2、およびガラス転移温度が19℃のポリマー(A−1)の溶液を得た。
【0045】
製造例2
製造例1と同様のフラスコに、テレフタル酸478.5部、イソフタル酸402.1部、アゼライン酸87.6部、エチレングリコール255.7部、1,6−ヘキサンジオール353.9部、およびグリセリン23部を仕込み、撹拌下に反応系を加熱してこれらを溶融した。次いで、三酸化アンチモンを0.16部加え、反応容器に真空減圧装置をつなぎ、235℃、2.8kPaで40分間、減圧重縮合反応を行った。次いで、減圧状態を解除して反応系を150℃まで冷却し、反応系に無水トリメリット酸52.5部を仕込み、1時間保温した。次いで、メチルイソブチルケトン(MIBK)470.4部を系内に加え、不揮発分が67%、数平均分子量が6500、水酸基価が8.6、酸価が33.9、およびガラス転移温度が17℃のポリマー(A−3)の溶液を得た。
【0046】
製造例3
製造例1と同様のフラスコに、テレフタル酸478.5部、イソフタル酸402.1部、アゼライン酸87.6部、エチレングリコール255.7部、1,6−ヘキサンジオール353.9部、およびグリセリン23部を仕込み、撹拌下に反応系を加熱してこれらを溶融した。次いで、三酸化アンチモンを0.16部加え、反応容器に真空減圧装置をつなぎ、235℃、0.7kPaで1時間、減圧重縮合反応を行った。次いで、減圧状態を解除して反応系を150℃まで冷却し、反応系に無水トリメリット酸52.5部を仕込み、1時間保温した。次いで、メチルイソブチルケトン(MIBK)470.4部を系内に加え、不揮発分が67%、数平均分子量が17000、水酸基価が8.6、酸価が35.7、およびガラス転移温度が20℃のポリマー(A−4)の溶液を得た。
【0047】
比較製造例1
製造例1と同様のフラスコに、テレフタル酸478.5部、イソフタル酸402.1部、アゼライン酸87.6部、エチレングリコール255.7部、1,6−ヘキサンジオール353.9部、およびグリセリン23部を仕込み、撹拌下に反応系を加熱してこれらを溶融した。次いで、三酸化アンチモンを0.16部加え、反応容器に真空減圧装置をつなぎ、235℃、5.6kPaで1時間、減圧重縮合反応を行った。次いで、減圧状態を解除して反応系を150℃まで冷却し、反応系に無水トリメリット酸52.5部を仕込み、1時間保温した。次いで、MIBK470.4部を系内に加え、不揮発分が67%、数平均分子量が2000、水酸基価が23.4、酸価が33.9、およびガラス転移温度が17℃のポリマー(イ)の溶液を得た。
【0048】
比較製造例2
製造例1と同様のフラスコに、テレフタル酸478.5部、イソフタル酸402.1部、アゼライン酸87.6部、エチレングリコール255.7部、1,6−ヘキサンジオール353.9部、およびグリセリン23部を仕込み、撹拌下に反応系を加熱してこれらを溶融した。次いで、三酸化アンチモンを0.16部加え、反応容器に真空減圧装置をつなぎ、235℃、2.8kPaで30分間、減圧重縮合反応を行った。次いで、減圧状態を解除して反応系を150℃まで冷却し、反応系に無水トリメリット酸52.5部を仕込み、1時間保温した。次いで、メチルイソブチルケトン(MIBK)470.4部を系内に加え、不揮発分が67%、数平均分子量が4000、水酸基価が16.6、酸価が33.2、およびガラス転移温度が17℃のポリマー(ロ)の溶液を得た。
【0049】
比較製造例3
製造例1と同様のフラスコに、イソフタル酸366.3部、セバチン酸668.7部、エチレングリコール244.6部、およびネオペンチルグリコール298.4部を仕込み、撹拌下に反応系を加熱してこれらを溶融した。次いで、三酸化アンチモンを0.16部加え、反応容器に真空減圧装置をつなぎ、235℃、2.8kPaで1時間、減圧重縮合反応を行った。次いで、減圧状態を解除して反応系を150℃まで冷却し、反応系に無水トリメリット酸52.5部を仕込み、1時間保温した。次いで、MIBK470.4部を系内に加え、不揮発分が67%、数平均分子量が10000、水酸基価が8.6、酸価が33.2、およびガラス転移温度が−20℃のポリマー(ハ)の溶液を得た。
【0050】
比較製造例4
製造例1と同様のフラスコに、テレフタル酸478.5部、イソフタル酸402.1部、アゼライン酸87.6部、エチレングリコール255.7部、1,6−ヘキサンジオール353.9部、およびグリセリン23部を仕込み、撹拌下に反応系を加熱してこれらを溶融した。次いで、三酸化アンチモンを0.16部加え、反応容器に真空減圧装置をつなぎ、235℃、0.7kPaで2時間、減圧重縮合反応を行った。次いで、減圧状態を解除して反応系を150℃まで冷却し、反応系に無水トリメリット酸52.5部を仕込み、1時間保温した。次いで、メチルイソブチルケトン(MIBK)470.4部を系内に加え、不揮発分が67%、数平均分子量が22000、水酸基価が3.6、酸価が33.2、およびガラス転移温度が20℃のポリマー(ニ)の溶液を得た。
【0051】
【表1】

【0052】
<組成物(1)の調製等>
実施例1
製造例1と同様のフラスコに、ポリマー(A−1)の溶液を600部、テトラメトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)製、商品名「メチルシリケート51」、Siの平均個数4)49部、MIBK64.4部、およびジブチル錫ラウレート1部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら90〜100℃において脱メタノール反応を行なった。また、反応中は、分水器を使って反応系内からメタノールを留去し、その量が約4部に達した時点で、冷却した。なお、昇温後冷却開始までに要した時間は6時間であった。次いで、反応系を50℃に冷却した後、減圧ラインを繋いで13kPaで約15分間、系内に残存するメタノールを除去した。この間、約2部のメタノールが除去された。次いで、メチルエチルケトン(MEK)402部を加え、フラスコを室温まで冷却し、不揮発分が40%、シリカ(SiO)分が5.8重量%となる組成物(1−1)を得た。なお、この5.8重量%の値は計算値である。
【0053】
実施例2〜5、比較例1〜7
表2、3で示す組成により、実施例1に準じて、組成物(1−2)〜(1−5)、比較用の組成物(ホ)〜(ヌ)を得た。なお、比較例3及び6は、表3で示す組成の各成分を反応させることなく単に混合して得られた混合溶液である。
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
実施例5
(塗料組成物の調製)
組成物(1−1)67.3部に、トリエチルアミン(TEA)1.5部を添加して中和して樹脂溶液を得た。次いで、当該溶液に、トリメチロールプロパン−トリス−(β−アジリジニルプロピオネート)(商品名「TAZM」:相互薬工(株)製)を7.7部添加し、更にメチルエチルケトン23.5部で希釈して、塗料組成物を得た。
【0057】
実施例7〜10、比較例8〜14
表2で示す組み合わせにより、実施例5に準じて塗料組成物を調製した。
【0058】
<透明性>
実施例6の塗料組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ(株)製、75μm厚、両面未処理)に、バーコーター#2を用いて塗工し、得られたPETフィルムを、順風乾燥機の中で乾燥(120℃、1分)させることにより、硬化塗膜を備えたPETフィルムを得た。次いで、得られたPETフィルムについて、ヘイズ値をカラーへイズメーター(製品名「ヘイズメーターHM150」、村上色彩技術研究所(株)製)を用いて測定し、下記基準で評価した。(なお、評価に際し、ベースとなるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムそれ自体のヘーズ値による補正を行なった)。また、他の実施例および比較例に係る塗料組成物についても同様にして塗膜を形成し、評価した。結果を表4、5に示す。
○:1.5%未満
△:1.5%以上3.0%未満
×:3.0%以上
【0059】
<加工性>
実施例6の塗料組成物を、アルミ板(製品名「A1050P」、日本テストパネル(株)製、厚さ0.8mm)に、バーコーター#6を用いて塗工し、得られたアルミ板を、順風乾燥機の中で乾燥(120℃、1分)させることにより、硬化塗膜を備えたアルミ板を得た。次いで、得られたアルミ板について、エリクセン試験機にて7mm張り出し加工試験を実施。加工部の割れ、剥がれの度合いを50倍のルーペにて観察した。また、他の実施例および比較例に係る塗料組成物についても同様にして塗膜を形成し、評価した。結果を表4、5に示す。
○…塗膜に割れ・剥がれなし
△…塗膜に若干の割れあり
×…塗膜に大きな割れ、剥がれあり
【0060】
<塗膜硬度>
実施例6の塗料組成物を、ガラス板にバーコーター#2を用いて塗工し、得られたガラス板を、順風乾燥機の中で乾燥(120℃、1分)させることにより、硬化塗膜を備えたガラス板を得た。なお、いずれの硬化塗膜も指触によるべたつきを感じない状態(タックフリー)であった。次いで、得られたガラス板について、JIS−K−5600−5−4に準じ、三菱鉛筆「ユニ」を用いて、硬度(傷付き性)試験を実施した。また、他の実施例および比較例に係る塗料組成物についても同様にして塗膜を形成し、評価した。結果を表4、5に示す。
【0061】
<密着性>
実施例6の塗料組成物を、ルミラーT60に、バーコーター#2を用いて塗工し、得られたPETフィルムを、順風乾燥機の中で乾燥(120℃、1分)させることにより、硬化塗膜を備えたPETフィルムを得た。次いで、得られたPETフィルムについて、JIS K5600−5−6に準じ、各塗膜に1mmマスを碁盤目状に100マス作成し、粘着テープを貼り付け、これを垂直方向に急速に剥がした時の塗膜の残存量により、以下の基準に基づき塗膜の密着性を評価した。また、他の実施例および比較例に係る塗料組成物についても同様にして塗膜を形成し、評価した。結果を表4、5に示す。
○:塗膜の80%以上が残った
△:塗膜の20%以上80%未満が残った
×:塗膜の20%未満しか残らなかった
【0062】
<耐溶剤性>
実施例6の塗料組成物を、ルミラーT60に、バーコーター#2を用いて塗工し、得られたPETフィルムを、順風乾燥機の中で乾燥(120℃、1分)させることにより、硬化塗膜を備えたPETフィルムを得た。次いで、得られたPETフィルムについて、メチルエチルケトンを含ませたガーゼで塗膜を擦り、フィルム素地が露出するまでの回数(往復を1回とする)に基づき、以下の基準で耐溶剤性を評価した。また、他の実施例および比較例に係る塗料組成物についても同様にして塗膜を形成し、評価した。結果を表4、5に示す。
○:40回以上
△:10回以上40回未満
×:10回未満
【0063】
<耐沸水性>
実施例6の塗料組成物を、ルミラーT60に、バーコーター#2を用いて塗工し、得られたPETフィルムを、順風乾燥機の中で乾燥(120℃、1分)させることにより、硬化塗膜を備えたPETフィルムを得た。次いで、得られたPETフィルムを沸騰水中で60分煮沸処理し、塗膜の状態を以下の基準で目視評価した。また、他の実施例および比較例に係る塗料組成物についても同様にして塗膜を形成し、評価した。結果を表4、5に示す。
○:塗膜の白化がなく、かつ、ブリスターも発生していない
△:塗膜がやや白化しており、かつ、ブリスターが僅かに発生している
×:塗膜が強く白化しており、かつ、ブリスターが著しく発生している
【0064】
<耐ブロッキング性>
実施例6の塗料組成物を、ルミラーT60」に、バーコーター#2を用いて塗工し、得られたPETフィルムを、順風乾燥機の中で乾燥(120℃、1分)させることにより、硬化塗膜を備えたPETフィルムを得た。次いで、各PETフィルムに、未塗工のPETフィルムを被せて、2kg/cmの荷重をかけて、60℃、65%RHの雰囲気中に24時間放置した。その後、フィルム同士を引き剥がした際のブロッキング(貼り付き)を、以下の基準で評価した。また、他の実施例および比較例に係る塗料組成物についても同様にして塗膜を形成し、評価した。結果を表4、5に示す。
○:ブロッキング無し
△:塗膜面の一部にブロッキング有り
×:塗膜面の全体にわたり著しいブロッキング有り
【0065】
<蒸着性(アルミ密着性)>
実施例6の塗料組成物を、ルミラーT60に、バーコーター#2を用いて塗工し、得られたPETフィルムを、順風乾燥機の中で乾燥(120℃、1分)させることにより、硬化塗膜を備えたPETフィルムを得た。次いで、得られたPETフィルムに、アルミを真空蒸着した後、JIS K5600−5−6に準じ、各塗膜に1mmマスを碁盤目状に100マス作成し、粘着テープを貼り付け、これを垂直方向に急速に剥がした時のアルミ蒸着膜の残存量により、以下の基準に基づきその密着性を評価した。結果を表4、5に示す。
○:アルミ蒸着膜の80%以上が残った
△:アルミ蒸着膜の20%以上80%未満が残った
×:アルミ蒸着膜の20%未満しか残らなかった
【0066】
【表4】

【0067】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸を60〜100モル%含むジカルボン酸類(a1)、ジオール類(a2)、トリオール類(a3)、およびトリカルボン酸類(a4)が縮合反応してなり、かつ、数平均分子量が5000〜20000である、分子内にカルボキシル基及び水酸基を有するポリマー(A)100重量部(固形分換算)に対し、下記一般式(I)(式中、nは2〜100の整数を示す)で表されるポリメトキシシラン類部分縮合物(B)10〜20重量部反応させて得られるカルボキシル基含有変性ポリエステル樹脂を含有してなる組成物(1)。
【化1】

【請求項2】
(A)成分の水酸基価が5〜20mgKOH/gである、請求項1の組成物(1)。
【請求項3】
更に有機溶剤(C)を含有する請求項1または2の組成物(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの組成物(1)と、アジリジリル基を少なくとも3つ有するアジリジン系硬化剤(2)とを含有する塗料組成物。


【公開番号】特開2011−94133(P2011−94133A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220596(P2010−220596)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】