説明

カルボキシル基含有樹脂、それを含有する組成物及び硬化物、並びにカルボキシル基含有樹脂の製造方法

【課題】量産性に優れ、また硬度、耐熱性、耐薬品性、白化耐性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性等の特性を充分に満足する優れた硬化皮膜が得られる光及び/又は熱硬化性樹脂、それを含有する組成物及び硬化物を提供する。
【解決手段】本発明のカルボキシル基含有樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対してモノカルボン酸(b)を0.3モル以上の割合で仕込んだ内の一部を付加反応させて、反応生成物(c)を得、次いで未反応のモノカルボン酸(b)の存在下で、多塩基酸(d)を仕込み、反応生成物(c)のエポキシ基に、未反応のモノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)の混合物を付加反応させて、アルコール性水酸基を有する反応生成物(e)を得、さらに反応生成物(e)のアルコール性水酸基に、アルコール性水酸基1当量に対して多塩基酸無水物(f)を0.0〜1.0モルの割合で付加反応させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板のソルダーレジスト等の形成に使用されるカルボキシル基含有樹脂、それを含有する組成物及び硬化物、並びにカルボキシル基含有樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プリント配線板のソルダーレジストの形成に使用される硬化性樹脂は、環境問題への配慮から、希アルカリ水溶液で現像ができる不飽和基及びカルボキシル基含有樹脂が主流になっている。このような樹脂としては、エポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸の反応物に多塩基酸無水物を付加した硬化性樹脂が一般的である。
例えば、特許文献1には、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸の反応物に多塩基酸無水物を付加した硬化性樹脂が開示されている。また、特許文献2には、1分子中に2個のグリシジル基を有する芳香族エポキシ樹脂と1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する芳香族アルコール樹脂とを反応させて得られるアルコール性の二級の水酸基にエピハロヒドリンを反応させ、得られた反応物に不飽和基含有モノカルボン酸、次いで多塩基酸無水物を付加した硬化性樹脂が開示されている。
【0003】
近年、エレクトロニクス機器の軽薄短小化に伴いプリント配線板が高密度化されており、プリント配線板の高密度化に対応して、ソルダーレジストを形成する硬化性樹脂の高性能化が要求されている。即ち、高密度化プリント配線板を製造する場合、従来の硬化性樹脂を用いてレジストを形成した高密度化のプリント配線板では、高温及び高湿下での電気絶縁性の低下が問題となっている。
【0004】
電気絶縁性の問題を解決するために、ノボラック型フェノール樹脂とアルキレンオキシドとの反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂(特許文献3参照)、ノボラック型フェノール樹脂とアルキレンオキシド又は環状カーボネートとの反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸及び飽和脂肪族モノカルボン酸及び/又は芳香族モノカルボン酸を反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂(特許文献4参照)等が提案されている。しかしながら、前記樹脂を用いてレジストを形成した高密度化プリント配線板は、硬度が低く、また耐酸性に劣る。
【0005】
一方、電気絶縁性、硬度、耐酸性、耐熱性等に優れる硬化性樹脂として、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させ、次いで生成した水酸基に多塩基酸を反応させることにより得られるカルボキシル基含有感光性樹脂(特許文献5参照)が提案されている。しかしながら、この反応形態では量産性が悪い。即ち、この樹脂を多量生産しようとすると、高分子化したりゲル化したりし、十分な特性が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平5−32746号公報
【特許文献3】国際公開WO 02/024774 A1公報
【特許文献4】特開2005−91783号公報
【特許文献5】特開2002−14467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記のような問題に鑑みなされたものであり、量産性に優れ、また電気絶縁性、硬度、耐酸性、耐熱性等の特性を充分に満足する優れた硬化皮膜が得られる光及び/又は熱硬化性樹脂及びそれを含有する組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明の樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対してモノカルボン酸(b)を0.3モル以上の割合で仕込んだ内の一部を付加反応させて、反応生成物(c)を得、次いで未反応のモノカルボン酸(b)の存在下で、多塩基酸(d)を仕込み、反応生成物(c)のエポキシ基に、未反応のモノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)の混合物を付加反応させて、アルコール性水酸基を有する反応生成物(e)を得、さらに反応生成物(e)のアルコール性水酸基に、アルコール性水酸基1当量に対して多塩基酸無水物(f)を0〜1モルの割合で付加反応させることを特徴とする。
【0009】
本発明の具体的で好適な態様によれば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対して、モノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)の合計が0.5〜1モルとなる割合でモノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)をそれぞれ付加反応させ、モノカルボン酸(b)がアクリル酸又はメタクリル酸であり、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)がノボラック型エポキシ樹脂であり、カルボキシル基含有樹脂の酸価が、30〜240mgKOH/gである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、量産性に優れ、またプリント配線板の高密度化に対応可能な樹脂に要求される電気絶縁性、硬度、耐酸性、耐熱性、金メッキ耐性等に優れた硬化皮膜が得られる硬化性樹脂及びそれを含有する組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1のカルボキシル基含有樹脂の赤外吸収スペクトルである。
【図2】実施例1のカルボキシル基含有樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基に、仕込んだモノカルボン酸(b)の一部(b1)(b=b1+b2)を部分的に付加反応させ、次いで得られた反応生成物(c)の残存するエポキシ基に、未反応のモノカルボン酸(b2)及び多塩基酸(d)の混合物を付加反応させる方法は量産性に優れ、従ってその後の多塩基酸無水物の付加を容易に行うことができ、また得られたカルボキシル基含有樹脂及びそれを含有する組成物は電気絶縁性、硬度、耐酸性、耐熱性、金メッキ耐性等に優れた硬化皮膜が得られることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明のカルボキシル基含有樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基にモノカルボン酸(b1)を部分的に付加反応させる段階1と、次いで得られた反応生成物(c)の残存するエポキシ基に未反応のモノカルボン酸(b2)及び多塩基酸(d)の混合物を付加反応させる段階2と、さらに得られた反応生成物(e)のアルコール性水酸基に多塩基酸無水物(f)を付加反応させる段階3(多塩基酸無水物(f)を付加させない場合には、本発明のカルボキシル基含有樹脂は段階2の製造によって得られる)の製造によって得られるが、段階2によって、量産化の際にゲル化又は高分子化を防ぎ、安定した樹脂構造を得ることができる。従って、この樹脂構造の特徴は、段階2によって決まってくる。
【0014】
一般的には、反応生成物(c)のエポキシ基に多塩基酸(d)を反応させようとすると、多塩基酸(d)がエポキシ樹脂(c)の架橋剤となり、ゲル化又は高分子化するが、段階2の未反応のモノカルボン酸(b2)が、このゲル化又は高分子化を防いでくれる。それ故、段階2の樹脂構造としては、(K1)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基にモノカルボン酸(b)が部分的に付加し、次いで得られた反応生成物(c)の残存するエポキシ基に多塩基酸(d)が付加して得られる構造、(K2)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基にモノカルボン酸(b1)が部分的に付加し、次いで得られた反応生成物(c)の残存するエポキシ基に多塩基酸(d)が部分的に付加し、さらに得られた反応生成物(e)の残存するエポキシ基にモノカルボン酸(b2)が付加して得られる構造、(K3)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基にモノカルボン酸(b1)が部分的に付加し、次いで得られた反応生成物(c)の残存するエポキシ基に多塩基酸(d1)(d=d1+d2)が部分的に付加し、さらに得られた反応生成物(e)の残存するエポキシ基にモノカルボン酸(b2)が部分的に付加し、さらに得られた反応生成物(g)の残存するエポキシ基に多塩基酸(d2)が付加して得られる構造、などの混合物であると考えられる。反応段階1及び2で第2級のアルコール性水酸基が現れるが、この水酸基に多塩基酸無水物(f)を付加することができる。これらの樹脂構造によって高い硬度が得られるのみならず、耐酸性及び現像性にも優れ、また架橋密度の高い硬化物が得られるため、電気絶縁性、耐熱性などにも優れる。
【0015】
以下、本発明の硬化性樹脂について詳細に説明する。
本発明のカルボキシル基含有樹脂は、前記したように、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対してモノカルボン酸(b)を0.3モル以上の割合で仕込んだ内の一部を付加反応させて、反応生成物(c)を得、次いで未反応のモノカルボン酸(b)の存在下で、多塩基酸(d)を仕込み、反応生成物(c)のエポキシ基に、未反応のモノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)の混合物を付加反応させて、アルコール性水酸基を有する反応生成物(e)を得、さらに反応生成物(e)のアルコール性水酸基に、アルコール性水酸基1当量に対して多塩基酸無水物(f)を0〜1モルの割合で付加反応させて得られるが、各反応は、後述するような触媒を用い、溶媒中又は無溶媒下で容易に行なわれる。
【0016】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成(株)製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル(株)製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128(何れも商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成(株)製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル(株)製のD.E.R.542、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700(何れも商品名)等のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル(株)製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成(株)製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬(株)製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020,EOCN−104S、RE−306、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220(何れも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン製エピコート807、東都化成(株)製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004(何れも商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成(株)製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(何れも商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート604、東都化成(株)製のエポトートYH−434、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシELM−120(何れも商品名)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021(商品名)等の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−933、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502(何れも商品名)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬(株)製のEBPS−200、旭電化工業(株)製のEPX−30、大日本インキ化学工業(株)製のEXA−1514(何れも商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL−931(商品名)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学(株)製のTEPIC(商品名)等の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂(株)製のブレンマーDGT(商品名)等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成(株)製のZX−1063(商品名)等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学(株)製のESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業(株)製のHP−4032、EXA−4750、EXA−4700(何れも商品名)等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のHP−7200、HP−7200H(何れも商品名)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂(株)製のCP−50S、CP−50M(何れも商品名)等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;1,5−ジヒドロキシナフタレンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られるアルコール性の二級の水酸基に、エピハロルヒドリンを反応させて得られる多官能エポキシ樹脂(国際公開WO 01/024774号公報);エポキシ基の一部にケトンを付加反応させて得られる1,3−ジオキソラン環を有するエポキシ樹脂(特開2007−176987号公報)等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0017】
これらのエポキシ樹脂の中でも好ましいのは、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する樹脂であり、より好ましくは、ノボラック型エポキシ樹脂である。
【0018】
上記エポキシ樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対してモノカルボン酸(b)を0.3モル以上の割合で仕込んだ内の一部を付加反応させるが、その際、重合禁止剤及び触媒を用いて溶媒中で反応を行うことが好ましく、反応温度は好ましくは50℃〜150℃、より好ましくは70℃〜120℃である。上記エポキシ樹脂(a)に対するモノカルボン酸(b)の仕込み割合は、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対して、モノカルボン酸(b)を0.3モル以上であるが、好ましくは、0.5モル以上である。上記エポキシ樹脂(a)に対するモノカルボン酸(b)の反応割合は、好ましくは、仕込み割合の50〜98%であるが、より好ましくは、70〜97%である。モノカルボン酸(b)の仕込み割合が0.3モル未満では、この後の反応で、ゲル化又は高分子化する恐れがある。
【0019】
前記モノカルボン酸(b)の代表的なものとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α−シアノ桂皮酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸などの不飽和基含有モノカルボン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、バレリアン酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸、安息香酸、アルキル安息香酸、アルキルアミノ安息香酸、ハロゲン化安息香酸、フェニル酢酸、アニス酸、ベンゾイル安息香酸、ナフトエ酸などの芳香族モノカルボン酸などが挙げられる。これらモノカルボン酸は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。ここで特に好ましいのはアクリル酸、メタクリル酸、及び酢酸である。
【0020】
反応溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0021】
反応触媒としては、例えば、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、ナフテン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸やオクトエン酸のリチウム、クロム、ジルコニウム、カリウム、ナトリウム等の有機酸の金属塩などが挙げられるが、これらに限られるものではなく、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0022】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどが挙げられるが、これらに限られない。重合禁止剤は単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0023】
さらに、前記反応生成物(c)のエポキシ基に、前記未反応のモノカルボン酸(b2)及び多塩基酸(d)の混合物を付加反応させるが、その際、反応温度は、好ましくは50〜120℃、より好ましくは70〜120℃である。1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対して、モノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)の合計が0.5〜1.0モルとなるような割合で、多塩基酸(d)を仕込むことが好ましい。エポキシ樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対してモノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)の合計が0.5モル未満となるような割合で、多塩基酸(d)を仕込むと、多量のエポキシ基の存在下で、樹脂がゲル化又は高分子化する恐れがある。
【0024】
多塩基酸(d)の代表的なものとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メタントリカルボン酸、トリカルバリル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸等が挙げられるが、これら多塩基酸は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。これらの中でも、好ましくはテトラヒドロフタル酸及びフタル酸、特に好ましいのは、テトラヒドロフタル酸である。
【0025】
エポキシ樹脂(a)のエポキシ基に、モノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)がそれぞれ反応することによりアルコール性水酸基が得られるが、このアルコール性水酸基を有する反応生成物(e)に、さらにアルコール性水酸基1当量に対して多塩基酸無水物(f)を0.0〜1.0モルの割合で付加反応させることができる。その際、反応温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃である。反応は、ハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤の存在下で、必要に応じて、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物等を触媒として添加してもよい。
【0026】
上記多塩基酸無水物(f)としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族又は芳香族二塩基酸無水物、あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は芳香族四塩基酸二無水物が挙げられが、これらに限られるものではない。これらの多塩基酸無水物は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。これらの中でも、脂環式二塩基酸無水物が特に好ましい。
【0027】
本発明のカルボキシル基含有樹脂の酸価は、好ましくは5〜240mgKOH/gであるが、より好ましくは50〜110mgKOH/gである。これらの範囲により、得られるカルボキシル基含有樹脂は、優れた特性をもつことになる。
【0028】
本発明の製造方法により、1分子中に2個以上の環状エーテルを有する他の樹脂についても、上記と同じ方法によって、カルボキシル基含有樹脂を得ることができる。
【0029】
1分子中に2個以上の環状エーテルを有する他の樹脂としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどのオキセタン樹脂が挙げられる。
【0030】
また、本発明のカルボキシル基含有樹脂を用いて組成物を得ることができる。例えば、
(A)本発明のカルボキシル基含有樹脂、(B)カルボキシル基含有樹脂(A)以外のカルボキシル基含有樹脂、(C)感光性(メタ)アクリレート化合物、(D)光重合開始剤、(E)熱硬化成分などを含有することを特徴とする組成物。
【0031】
カルボキシル基含有樹脂(A)以外のカルボキシル基含有樹脂(B)は、1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のカルボキシル基を有する樹脂である。具体的には、それ自体がエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂及びエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂のいずれも使用可能であり、特定のものに限定されるものではないが、特に以下に列挙するような樹脂を好適に使用できる。
【0032】
(1)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合を有する樹脂を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合を有する樹脂の共重合体にエチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)エポキシ基と不飽和二重結合を有する樹脂と不飽和二重結合を有する樹脂の共重合体に、不飽和カルボン酸を反応させ、生成した二級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)不飽和二重結合を有する酸無水物と不飽和二重結合を有する樹脂の共重合体に、水酸基と不飽和二重結合を有する樹脂を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基をエステル化反応させ、生成した水酸基にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)不飽和二重結合を有する樹脂とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した二級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(7)水酸基含有ポリマーに飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(8)水酸基含有ポリマーに飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する樹脂をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(9)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、不飽和モノカルボン酸と、1分子中に少なくとも2個の水酸基と、エポキシ基と反応する水酸基以外の1個の他の反応性基を有する樹脂との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(10)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、不飽和モノカルボン酸と、1分子中に少なくとも2個の水酸基と、エポキシ基と反応する水酸基以外の1個の他の反応性基を有する樹脂との反応生成物と、飽和又は不飽和多塩基酸無水物と、不飽和基含有モノイソシアネートとの反応生成物からなる不飽和基含有ポリカルボン酸ウレタン樹脂、
(11)1分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の一級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(12)ビスエポキシ樹脂とジカルボン酸との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(13)ビスエポキシ樹脂とビスフェノール類との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、及び
(14)ノボラック型フェノール樹脂とアルキレンオキシド及び/又は環状カーボネートとの反応生成物に不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた反応生成物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0033】
上記カルボキシル基含有樹脂(A)とカルボキシル基含有樹脂(B)の配合割合は、質量比でA:B=100:0〜10:90が好ましいが、より好ましくは、A:B=100:0〜30:70である。また、上記カルボキシル基含有樹脂(A)とカルボキシル基含有樹脂(B)の混合物の酸価は、好ましくは30〜240mgKOH/gであるが、より好ましくは40〜150mgKOH/gである。これらの範囲により、本発明の硬化性組成物は、現像性のみならず、他の諸特性においても優れた特性をもつことになる。
【0034】
前記感光性(メタ)アクリレート化合物(C)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類;カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ε―カプロラクロン変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレートなどのカプロラクトン変性のアクリレート類、及び上記アクリレート類に対応するメタクリレート類などが挙げられる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。これらの感光性(メタ)アクリレート化合物は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。これら感光性(メタ)アクリレート化合物の使用目的は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の光反応性を上げることにある。室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物は、光反応性を上げる目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整したり、アルカリ水溶液への溶解性を助ける役割も果たす。しかし、室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物を多量に使用すると、塗膜の指触乾燥性が得られず、また塗膜の特性も悪化する傾向があるので、多量に使用することは好ましくない。感光性(メタ)アクリレート化合物(C)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計100質量部に対して100質量部以下が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0035】
前記光重合開始剤(D)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N- ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これら公知慣用の光重合開始剤は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができ、さらにはN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を加えることができる。また可視光領域に吸収のあるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために添加することもできる。特に好ましい光重合開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等であるが、特にこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。そして、その使用量は前記カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計100質量部に対して0. 5〜25質量部の割合が好ましい。
【0036】
また、本発明の硬化性組成物は、熱硬化成分(E)を配合させることができる。例えば、前記したエポキシ樹脂及びオキセタン樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化成分は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。その配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計100質量部に対して5〜100質量部の割合が好ましい。
【0037】
また、本発明の硬化性組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)を溶解させ、また組成物を塗布方法に適した粘度に調整するために、有機溶剤を配合することができる。
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。有機溶剤の配合量は、用途等に応じた任意の量とすることができる。
【0038】
さらに、本発明の硬化性組成物は、熱硬化触媒を配合することができる。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などを用いることができる。市販されているものとしては、例えば四国化成(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ(株)製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、熱硬化特性を向上させるためであれば、これらに限られるものではなく、環状エーテルを有する樹脂の硬化触媒、もしくは環状エーテルを有する樹脂とカルボン酸の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれらの化合物を前記硬化触媒と併用する。上記硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば前記カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15.0質量部の割合である。
【0039】
本発明の硬化性組成物には、さらに必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等の公知慣用の無機フィラーを単独で又は2種類以上を配合することができる。これらは塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させる目的で用いられる。無機フィラーの配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは30〜200質量部の割合が適当である。
【0040】
また、本発明の硬化性組成物は、さらに必要に応じてフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0041】
さらに本発明の硬化性組成物は、難燃性を得る目的で、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。難燃剤の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは5〜50質量部である。難燃剤の配合量が上記範囲にあると、組成物の難燃性、はんだ耐熱性及び電気絶縁性とが、高度にバランスされて好適である。
【0042】
また、本発明の硬化性組成物は、引火性の低下のために、水を添加することもできる。水を添加する場合には、前記カルボキシル基含有樹脂(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)のカルボキシル基を、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート樹脂で造塩することにより、本発明の硬化性組成物を水になじむようにすることが好ましい。
【0043】
本発明の硬化性組成物は、支持体と、該支持体上に形成された上記硬化性組成物からなる層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。好ましくは、上記フィルムの硬化性組成物層上に、さらに剥離可能なカバーフィルムを積層する。
【0044】
支持体としては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。ここで、支持体の厚さは、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0045】
支持体上の上記硬化性組成物層は、上記硬化性組成物をコンマコータ、ブレードコータ、リップコータ、ロッドコータ、スクイズコータ、リバースコータ、トランスファロールコータ等で支持体上に均一な厚さに塗布し、加熱・乾燥して溶剤を揮発させて得られる。上記硬化性組成物層の厚さは特に制限がなく、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0046】
前記カバーフィルムには、一般にポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、テフロン(登録商標)フィルム、表面処理した紙等が用いられる。カバーフィルムは、上記硬化性組成物層との接着力が、上記硬化性組成物層と支持体との接着力よりも小さいものであればよく、特定のものに限定されない。
【0047】
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて希釈して塗布方法に適した粘度に調製される。粘度が調製された硬化性組成物を、例えば、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により回路形成されたプリント配線板に塗布し、例えば約60〜100℃で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。
支持体と該支持体上に形成された上記硬化性組成物からなる層とを備えたドライフィルムの形態の場合、回路形成されたプリント配線板にホットロールラミネーター等を用いて前記ドライフィルムを貼り合わせる。このとき、硬化性組成物層が回路形成されたプリント配線板に接触するように該プリント配線板にドライフィルムを貼り合わせる。これにより、前記プリント配線板上に上記硬化性組成物の塗膜を形成することができる。前記硬化性組成物層の上に、さらに剥離可能なカバーフィルムを備えたドライフィルムの場合、前記カバーフィルムを剥がした後、上記硬化性組成物層と回路形成されたプリント配線板が接触するようにホットロールラミネーター等を用いてドライフィルムとプリント配線板を貼り合わせる。これにより、回路形成されたプリント配線板上に上記硬化性組成物の塗膜を形成することができる。
【0048】
回路形成されたプリント配線板上に塗膜を形成した後、レーザー光等の活性エネルギー線をパターン通りに直接照射するか、又はパターンを形成したフォトマスクを通して活性エネルギー線を照射して選択的に露光することにより、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成できる。なお、上記ドライフィルムを用いた場合は、支持体を剥がさずに選択的に露光した後、支持体を剥がして、現像する。
レジストパターンを形成した後、さらに、加熱硬化させることにより、または、活性エネルギー線の照射後加熱硬化させることにより、あるいは、加熱硬化させた後、活性エネルギー線を照射して最終硬化(本硬化)させることにより、電気絶縁性、PCT耐性,密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性などに優れた硬化膜(硬化物)を形成することができる。
【0049】
前記アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
光硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが適当である。また、レーザー光線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0050】
以下、実施例等を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【実施例1】
【0051】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のYDCN−700−5(東都化成(株)製、エポキシ当量:203)203部を温度計、撹拌機、還流冷却器及び空気吹き込み管を備えた反応容器に入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート106部を加え、加熱溶解した。次に、アクリル酸43.2部(0.6モル)、メチルハイドロキノン0.2部及びトリフェニルホスフィン1部を加え、空気を吹き込みながら85〜95℃で5時間反応させ、エポキシ当量577g/eq.のアクリル酸部分付加エポキシ樹脂を得た。これは、アクリル酸0.6モルのうち、約0.57モル付加したことになり、付加率は約95%である。その後、テトラヒドロフタル酸68部(0.4モル)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート29部、トリフェニルホスフィン0.5部及びメチルハイドロキノン0.3部を加え85〜95℃で20時間反応させ、さらに石油ナフサ(スワゾール1500)34部を加え85〜95℃で3時間反応させ、不揮発分65%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂は、酸価73mgKOH/g、エポキシ当量9871g/eq.であった。以下、この溶液をA−1と称す。得られたカルボキシル基含有樹脂のIRスペクトルを図1、ゲルクロマトグラムを図2にそれぞれ示す。
【実施例2】
【0052】
実施例1で得られたカルボキシル基含有樹脂にテトラヒドロフタル酸無水物15.2部を加え85〜95℃で5時間反応させ、不揮発分66%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂の溶液は、酸価87mgKOH/gであった。以下、この溶液をA−2と称す。
【実施例3】
【0053】
実施例1のテトラヒドロフタル酸68部に代えてフタル酸66.4部(0.4モル)を用い、同じように反応させて不揮発分65%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂は、酸価74mgKOH/g、エポキシ当量8425g/eq.であった。以下、この溶液をA−3と称す。
【実施例4】
【0054】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のYDCN−700−5(東都化成(株)製、エポキシ当量:203)203部を温度計、撹拌機、還流冷却器及び空気吹き込み管を備えた反応容器に入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103部を加え、加熱溶解した。次に、アクリル酸36部(0.5モル)、メチルハイドロキノン0.2部及びトリフェニルホスフィン1部を加え、空気を吹き込みながら85〜95℃で5時間反応させ、エポキシ当量447g/eq.のアクリル酸部分付加エポキシ樹脂を得た。これは、アクリル酸0.5モルのうち、約0.47モル付加したことになり、付加率は約94%である。その後、テトラヒドロフタル酸85部(0.5モル)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート36部、トリフェニルホスフィン0.5部及びメチルハイドロキノン0.3部を加え85〜95℃で20時間反応させ、さらに石油ナフサ(スワゾール1500)36部を加え85〜95℃で3時間反応させ、不揮発分65%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂は、酸価91mgKOH/g、エポキシ当量21327g/eq.であった。以下、この溶液をA−4と称す。
【実施例5】
【0055】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のYDCN−700−5(東都化成(株)製、エポキシ当量:203)203部を温度計、撹拌機、還流冷却器及び空気吹き込み管を備えた反応容器に入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート109部を加え、加熱溶解した。次に、アクリル酸50.4部(0.7モル)、メチルハイドロキノン0.2部及びトリフェニルホスフィン1部を加え、空気を吹き込みながら85〜95℃で5時間反応させ、エポキシ当量737g/eq.のアクリル酸部分付加エポキシ樹脂を得た。これは、アクリル酸0.7モルのうち、約0.66モル付加したことになり、付加率は約94%である。その後、テトラヒドロフタル酸51部(0.3モル)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート22部、トリフェニルホスフィン0.5部及びメチルハイドロキノン0.3部を加え85〜95℃で20時間反応させ、さらに石油ナフサ(スワゾール1500)33部を加え85〜95℃で3時間反応させ、不揮発分65%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂は、酸価59mgKOH/g、エポキシ当量9039g/eq.であった。以下、この溶液をA−5と称す。
【0056】
〔比較例1〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のYDCN−700−5(東都化成(株)製、エポキシ当量:203)203部を温度計、撹拌機、還流冷却器及び空気吹き込み管を備えた反応容器に入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート106部を加え、加熱溶解した。次に、アクリル酸43.2部(0.6モル)、メチルハイドロキノン0.2部及びトリフェニルホスフィン1部を加え、空気を吹き込みながら95〜105℃で9時間反応させ、エポキシ当量610g/eq.のアクリル酸部分付加エポキシ樹脂を得た。これは、アクリル酸0.6モルのうち、約0.6モル付加したことになり、付加率は約100%である。その後、テトラヒドロフタル酸68部(0.4モル)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート63部及びメチルハイドロキノン0.3部を加え85〜95℃で19時間反応させ、不揮発分65%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂は、酸価77mgKOH/g、エポキシ当量6558g/eq.であった。以下、この溶液をB−1と称す。
【0057】
〔比較例2〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量:479)479部を温度計、撹拌機、還流冷却器及び空気吹き込み管を備えた反応容器に入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート236部を加え、加熱溶解した。次に、アクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.2部及びトリフェニルホスフィン2部を加え、空気を吹き込みながら95〜105℃で17時間反応させた。その後、無水コハク酸120部、石油ナフサ(スワゾール1500)52部及びメチルハイドロキノン0.3部を加え95〜105℃で4時間反応させ、不揮発分70%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂の溶液は、酸価107mgKOH/gであった。以下、この溶液をB−2と称す。
【0058】
〔比較例3〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量:479)479部を温度計、撹拌機、還流冷却器及び空気吹き込み管を備えた反応容器に入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート236部を加え、加熱溶解した。次に、アクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.2部及びトリフェニルホスフィン2部を加え、空気を吹き込みながら95〜105℃で17時間反応させた。その後、テトラヒドロフタル酸無水物207部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート89部及びメチルハイドロキノン0.3部を加え95〜105℃で11時間反応させ、不揮発分70%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂の溶液は、酸価106mgKOH/gであった。以下、この溶液をB−3と称す。
【0059】
〔比較例4〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1004(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量:930)930部を温度計、撹拌機、還流冷却器及び空気吹き込み管を備えた反応容器に入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート668部を加え、加熱溶解した。次に、アクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.2部及びトリフェニルホスフィン2部を加え、空気を吹き込みながら95〜105℃で17時間反応させた。その後、無水コハク酸220部、石油ナフサ(スワゾール1500)147部及びメチルハイドロキノン0.3部を加え95〜105℃で13時間反応させ、不揮発分60%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂の溶液は、酸価104mgKOH/gであった。以下、この溶液をB−4と称す。
【0060】
〔比較例5〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のYDCN−700−5(東都化成(株)製、エポキシ当量:203)203部を温度計、撹拌機、還流冷却器及び空気吹き込み管を備えた反応容器に入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118部を加え、加熱溶解した。次に、アクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.2部及びトリフェニルホスフィン1部を加え、空気を吹き込みながら95〜105℃で15時間反応させた。その後、テトラヒドロフタル酸無水物102部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート85部及びメチルハイドロキノン0.3部を加え85〜95℃で11時間反応させ、不揮発分65%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂は、酸価103mgKOH/gであった。以下、この溶液をB−5と称す。
【0061】
〔比較例6〕
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、昭和高分子(株)製ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショーノールCRG951」、フェノール性水酸基当量:119.4g/eq.)119.4部、水酸化カリウム1.19部、トルエン119.4部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8部を徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合し、水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、アルコール性水酸基当量が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均約1.08モル付加しているものであった。得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部、トルエン252.9部を、撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応容器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水はトルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート149部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部、トリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、不揮発分65%の溶液を得た。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂の溶液は、酸価84mgKOH/gであった。以下、この溶液をB−6と称す。
【0062】
樹脂の評価
(1)現像性
前記実施例1〜5及び比較例1〜6の各溶液をバーコーターを用いて、25〜35μmの厚さになるように、パターン形成されている銅スルーホールプリント配線基板に全面塗布し、塗膜を80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥した。そして、1%の炭酸ナトリウム水溶液で30秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、現像後の状態を目視判定した。
○:塗膜が除去された。
×:現像されない部分があった。
結果を表1に記す。
【表1】

【0063】
光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の調整及び各組成物の特性値
前記実施例1〜5及び比較例1〜6で得られた各溶液を用いて、表2に示す配合組成(数値は質量部である)に従って各成分を配合し、3本ロールミルでそれぞれ別々に混練して各硬化性樹脂組成物を調製した。
【表2】

【0064】
各組成物の特性値を表3に示す。
【表3】

【0065】
各特性値は以下の方法で評価した。
(2)鉛筆硬度
前記実施組成例1〜8及び比較組成例1〜6の各硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルスクリーンを用いて30〜40μmの厚さになるように、パターン形成されている銅スルーホールプリント配線基板に全面塗布し、塗膜を80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させた。そして、レジストパターンを有するネガフィルムを塗膜に密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW−680GW)を用いて、紫外線を照射した(露光量400mJ/cm)。次いで1%の炭酸ナトリウム水溶液で90秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、未露光部分を溶解除去した。その後、150℃の熱風循環式乾燥炉で60分加熱硬化を行ない、得られた硬化膜を有する評価基板について、JIS K 5400に準拠して、鉛筆硬度の試験を行なった。
【0066】
(3)耐熱性
上記評価基板を、JIS C 6481の試験方法に従って、260℃のはんだ浴へ10秒浸漬を3回行ない、外観の変化を以下の基準で評価した。ポストフラックス(ロジン系)としては、JIS C 6481に従ったフラックスを使用した。
○:外観変化なし
△:硬化膜の変色が認められるもの
×:硬化膜の浮き、剥れ、はんだ潜りあり
【0067】
(4)耐酸性
上記評価基板を10容量%硫酸水溶液に30℃で40分間浸漬後取り出し、硬化膜の状態と密着性とを総合的に判定評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:変化が認められないもの
△:ほんの僅か変化しているもの
×:塗膜にフクレあるいは膨潤脱落があるもの
【0068】
(5)耐アルカリ性
上記評価基板を、10容量%硫酸水溶液を10容量%水酸化ナトリウム水溶液に変えた以外は耐酸性試験と同様に試験評価した。
【0069】
(6)白化耐性
上記評価基板を60℃の湯に10分間浸漬後取り出し、室温まで自然冷却した後の白化の状態を判定評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:白化が認められないもの
△:部分的に白化しているもの
×:塗膜全面に白化しているもの
【0070】
(7)無電解金めっき耐性:
上記評価基板を、無電解ニッケルめっき、次いで無電解金めっきし、外観の変化及びセロハン粘着テープを用いたピーリング試験を行ない、硬化膜の剥離状態を判定した。判定基準は以下の通りである。
○:外観変化もなく、硬化膜の剥離も全くない。
△:外観の変化はないが、硬化膜にわずかに剥れがある。
×:硬化膜の浮きが見られ、めっき潜りが認められ、ピーリング試験で硬化膜の剥れが大
きい。
【0071】
(8)電気絶縁性
パターン形成されている銅スルーホールプリント配線基板の代わりに、IPCで定められたプリント回路基板(厚さ1.6mm)のBパターンを用い、前記の方法にて硬化性樹脂組成物の塗布、硬化を行ない、得られた硬化膜の電気絶縁性を以下の基準にて評価した。
加湿条件:温度121℃、湿度97%RH、印加電圧5V、120時間。
測定条件:測定時間60秒、印加電圧500V。
○:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以上、銅のマイグレーションなし。
△:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以上、銅のマイグレーションあり。
×:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以下、銅のマイグレーションあり。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の硬化性樹脂は、量産性に優れ、且つ、前記したような諸特性に優れた硬化物が得られるため、エッチングレジスト、メッキレジスト、多層配線板の層間絶縁層、テープキャリアパッケージの製造に用いられる永久マスク、フレキシブル配線基板用レジスト、カラーフィルター用レジスト、インクジェット用レジストなどの用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対してモノカルボン酸(b)を0.3モル以上の割合で仕込んだ内の一部を付加反応させて、反応生成物(c)を得、次いで未反応のモノカルボン酸(b)の存在下で、多塩基酸(d)を仕込み、反応生成物(c)のエポキシ基に、未反応のモノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)の混合物を付加反応させて、アルコール性水酸基を有する反応生成物(e)を得、さらに反応生成物(e)のアルコール性水酸基に、アルコール性水酸基1当量に対して多塩基酸無水物(f)を0.0〜1.0モルの割合で付加反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【請求項2】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対して、モノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)の合計が0.5〜1.0モルとなる割合でモノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)を付加反応させて得られる請求項1に記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項3】
モノカルボン酸(b)がアクリル酸又はメタクリル酸である請求項1又は2に記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項4】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)がノボラック型エポキシ樹脂である請求項1乃至3のいずれかに記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項5】
カルボキシル基含有樹脂の酸価が、5〜240mgKOH/gである請求項1乃至4のいずれかに記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のカルボキシル基含有樹脂を含有する組成物。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載のカルボキシル基含有樹脂の硬化物。
【請求項8】
請求項6に記載の組成物の硬化物。
【請求項9】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)とモノカルボン酸(b)及び多塩基酸(d)を反応させてカルボキシル基含有樹脂を製造する方法において、前記樹脂(a)を含む溶媒中に前記モノカルボン酸(b)を仕込んだ後、前記樹脂(a)のエポキシ基に前記モノカルボン酸(b)が部分的に付加し、且つ未反応の前記モノカルボン酸(b)が存在するときに前記多塩基酸(d)を仕込むことを特徴とするカルボキシル基含有樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記モノカルボン酸(b)は、前記樹脂(a)のエポキシ基1当量に対して0.3モル以上の割合で仕込むことを特徴とする請求項9に記載のカルボキシル基含有樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂(a)を含む溶媒中に前記モノカルボン酸(b)及び前記多塩基酸(d)を順に仕込むことにより、アルコール性水酸基を有する反応生成物(e)を得た後、該反応生成物(e)のアルコール性水酸基に多塩基酸無水物(f)を反応させることを特徴とする請求項9又は10に記載のカルボキシル基含有樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記反応生成物(e)のアルコール性水酸基に、アルコール性水酸基1当量に対して0.0〜1.0モルの割合で多塩基酸無水物(f)を反応させることを特徴とする請求項11に記載のカルボキシル基含有樹脂の製造方法。
【請求項13】
モノカルボン酸(b)がアクリル酸又はメタクリル酸である請求項9〜12のいずれかに記載のカルボキシル基含有樹脂の製造方法。
【請求項14】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)がノボラック型エポキシ樹脂である請求項9〜13のいずれかに記載のカルボキシル基含有樹脂の製造方法。
【請求項15】
カルボキシル基含有樹脂の酸価が、5〜240mgKOH/gである請求項9〜14のいずれかに記載のカルボキシル基含有樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−74213(P2011−74213A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226927(P2009−226927)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000166683)互応化学工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】