説明

カルボニル化合物用捕集材

【課題】 多孔性架橋重合体粒子よりなる多孔質担体にアルキル基またはアリル基などのスペーサーとなる官能基を介して導入したイオン交換基にイオン結合で担持したことを特徴とするカルボニル化合物捕集材で,特にアルデヒド類またはケトン類を選択的に効率良く捕集し,かつ高湿度環境下においても安定して吸着濃縮,溶出することのできるサンプラ用カルボニル化合物用捕集材を提供すること。
【解決手段】 カルボニル化合物を捕集する捕集材を多孔質担体に担持したイオン交換基を持つ多孔質担体が多孔性架橋重合体粒子よりなるカルボニル化合物用捕集材。この捕集材はR1-ONH2または,R2-NH−NH2で表され、R1およびR2がフェニル基の誘導体を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボニル化合物,特にアルデヒド類またはケトン類を選択的に効率良く捕集し,かつ高湿度環境下においても安定して吸着濃縮,溶出することのできるサンプラ用カルボニル化合物用捕集材に関する。
【背景技術】
【0002】
有害化学物質(ホルムアルデヒド類,VOCs等)による大気汚染が引き起こされた場合,例えppbオーダの極微量であっても長期暴露によって慢性障害や発ガン等の重大な問題を引起こされる恐れがある。また,近年社会問題としてクローズアップされているシック・ハウス症候群との関連が指摘されており住宅品質確保法,学校保険法,建築基準法等においても測定対象物質に挙げられる。シック・ハウス症候群とは,有害化学物質(ホルムアルデヒド類,VOCs等)が,建築材料,家庭用品,燃焼機器などから放散され,住宅の高気密化とあいまって,室内空気を汚染し,居住者が目,鼻,喉等の痛み,吐き気,めまい,さらには,喘息等の健康障害を生じる現象である。
【0003】
大気中の揮発性カルボニル化合物,特にホルムアルデヒドや,アセトアルデヒドの分析方法として,アルデヒド類測定用カートリッジが市販あるいは報告されている。アルデヒド類測定用カートリッジに用いられているカルボニル化合物捕集材として,2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)をシリカゲルに含浸コートしたものや,O-(4-トリフルオロメトキシベンジル)ヒドロキシルアミン(TFBA)をイオン交換基を導入したシリカゲルに保持してなるもの(特許文献1)が知られている。しかしながら,上述のように,イオン交換基を導入したシリカゲルに担持した場合,高湿度(85〜90%以上)の場合,担持体であるシリカゲル表面に水の皮膜ができてしまい。十分な捕集効果が得られない場合があった。特に,TFBAはシリカゲルにイオン結合で結合しているが,カルボニル基と反応するアミノ基が内側に,フェニル基の誘導体の部分が外側にあり,立体障害となるため,空気中のカルボニル化合物と反応しにくいという欠点があった。またDNPHはリン酸塩という形でシリカゲル上に担持されているが,抽出時に未反応のDNPHが流出してしまうという欠点があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−195990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況のもと,本発明者らは,カルボニル化合物を捕集する捕集材を,多孔性架橋重合体粒子よりなる多孔質担体にアルキル基またはアリル基などのスペーサーとなる官能基を介して導入したイオン交換基にイオン結合で担持することで,高湿度の環境下においても担持体での表面に水の皮膜ができず,効率よく,安定した捕集を可能とするカルボニル化合物捕集材を確立した。
【0006】
本発明は前記従来のカルボニル化合物捕集材における課題を解決し,カルボニル化合物,特にアルデヒド類またはケトン類を選択的に効率良く捕集し,かつ高湿度環境下においても安定して吸着濃縮し,溶出することができ,溶出時に余分な未反応試薬が流出しないサンプラ用カルボニル化合物用捕集材を提供することにある.
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは,カルボニル化合物を捕集する捕集材を,多孔性架橋重合体粒子よりなる多孔質担体にアルキル基またはアリル基などのスペーサーとなる官能基を介して導入したイオン交換基にイオン結合で担持することで,高湿度等変化するいかなる環境下においても,安定した捕集が可能となることを見出し,本発明を完成したものである.
【0008】
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
<1> カルボニル化合物を捕集する捕集材を多孔質担体に担持したカルボニル化合物用捕集材。
<2> 多孔質担体が,多孔性架橋重合体粒子よりなる<1>記載のカルボニル化合物用捕集材。
<3> 多孔質担体が,イオン交換基を持つ<1>記載のカルボニル化合物用捕集材。
<4> カルボニル化合物を捕集する捕集材が,R1-ONH2または,R2-NH−NH2で表されることを特徴とする<1>記載のカルボニル化合物用捕集材。
<5> R1およびR2がフェニル基の誘導体よりなる<1>記載のカルボニル化合物用捕集材。
<6> 多孔質担体のイオン交換基が,アルキル基またはアリル基などのスペーサーとなる官能基を介して多孔性架橋重合体粒子に結合していることを特徴とする<1>記載のカルボニル化合物用捕集材。
<7> 多孔質担体のイオン交換基が,酸基であることを特徴とする<1>記載のカルボニル化合物用捕集材。
<8> 酸基が,スルホン基または,リン酸基であることを特徴とする<1>記載のカルボニル化合物用捕集材。
【発明の効果】
【0009】
本発明は,カルボニル化合物を捕集する捕集材を,多孔性架橋重合体粒子よりなる多孔質担体にアルキル基またはアリル基などのスペーサーとなる官能基を介して導入したイオン交換基にイオン結合で担持したことを特徴とするカルボニル化合物捕集材で,特にアルデヒド類またはケトン類を選択的に効率良く捕集し,かつ高湿度環境下においても安定して吸着濃縮,溶出することのできるサンプラ用カルボニル化合物用捕集材を提供することにある.
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は,カルボニル化合物を捕集する捕集材を,多孔性架橋重合体粒子よりなる多孔質担体にアルキル基またはアリル基などのスペーサーとなる官能基を介して導入したイオン交換基にイオン結合で担持したことを特徴とするカルボニル化合物捕集材であり,本発明に従えば,高湿度等変化するいかなる環境下においても,効率よく,安定した捕集を可能とするカルボニル化合物捕集材が提供される。
以下,本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
本特許記載のカルボニル化合物を捕集する捕集材は,構造式R1-ONH2または,R2-NH−NH2で表されることができ,空気中のカルボニル化合物とイミンを形成するもので,例えばO-(4-トリフルオロメトキシベンジル)ヒドロキシルアミン(TFBA)や,2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)やトリエタノールアミンなどを用いることができる。
【0012】
この捕集材を担持させるベースゲルとしては,陽イオン交換樹脂が挙げられ,その製造法において,非架橋性単量体及び架橋性ポリビニル単量体を用いる。陽イオン交換樹脂粒子は,パッシブサンプリングに用いる吸着剤の平均粒径として,80〜1000μmが好ましく,100〜500μmがより好ましい。1000μmを超えると,比表面積が小さくなるため,吸着量が低下する傾向がある。また,80μm未満だと測定化学物質との接触が困難になり易く,吸着量が低下する傾向がある。
【0013】
上記非架橋性単量体としては,例えば,ビニル基を1つだけ有する(メタ)アクリレート等が挙げられ,例えば,(メタ)アクリル酸,グリシジル(メタ)アクリレート,グリシジルクロネート,グリシジルイタコネート,グリシジルフマレート,グリシジルマレート,これらのハロゲン化物,2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート,テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート,ビニルシクロヘキセンモノオキサイド(1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン),エポキシ化ポリブタジエン,3、4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートなどが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。上記非架橋性単量体の使用量は,60〜90重量%使用することが好ましく,65〜80重量%使用することがより好ましい。この使用量が60重量%未満では交換基導入量が不十分になる傾向があり,90重量%を超えると耐候性が低下する傾向がある。
【0014】
本発明に用いられる架橋性ポリビニル単量体粒子は,特に純度は制限されないが,純度50%以上のものを使用することが好ましい。
【0015】
本発明に用いられる架橋性ポリビニル単量体としては,例えば,エチレングリコールジアクリレート,エチレングリコールジメタクリレート,プロピレングリコールジアクリレート,プロピレングリコールジメタクリレート等のようなアルキレングリコールジビニルエステル,ポリエチレングリコールジアクリレート,ポリエチレングリコールジメタクリレート,ポリプロピレングリコールジアクリレート,ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のポリアルキレングリコールのジビニルエステル,グリセリンのジ又はトリアクリレート,グリセリンのジ又はトリメタクリレート,トリメチロールプロパンのジ又はトリアクリレート,トリメチロールプロパンのジ又はトリメタクリレート,テトラメチロールメタンのジ,トリ又はテトラアクリレート,テトラメチロールメタンのジ,トリ又はテトラメタクリレート,エチレングリコールジアリルエーテル,プロピレングリコールジアリルエーテル,ポリエチレングリコールジアリルエーテル,ポリプロピレングリコールジアリルエーテル,グリセリンのジ又はトリアリルエーテル,トリメチロールプロパンのジ又はトリアリルエーテル,テトラメチロールメタンのジ,トリ又はテトラアリルエーテル,メタクリル酸フエノキシエチル,メタクリル酸フエノキシジエチレングリコール,メタクリル酸フエノキシテトラエチレングリコール,メタクリル酸ベンジル,メタクリル酸シクロヘキシル,メタクリル酸テトラヒドロフルフリル,メタクリル酸ジシクロペンテニル,メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル,メタクリル酸N−ビニル−2−ピロリドン,メタクリロニトリル,メタクリルアミド,N−メチロールメタクリルアミド,メタクリル酸2−ヒドロキシエチル,メタクリル酸ヒドロキシプロピル,メタクリル酸ヒドロキシブチル,メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フエニルオキシプロピル等のビニル系単量体が,スチレン,メチルスチレン,モノビニルエチルベンゼン,アミノスチレン,ジフェニルスチレン,ビニルビフェニル,ビニルナフタレン,ジビニルナフタレン,ジフェニルエチレン,ビニルフェナントレン,クロロメチルスチレン等の芳香族系単量体が挙げられる。
これらの化合物は,単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
水性懸濁重合は,水性媒体中で懸濁重合を行うものであるが,この水性媒体としては,水は必須であり,また,懸濁系の安定性を阻害しない範囲で,水溶性有機溶媒を溶解した水を使用してもよい。
【0017】
水性懸濁重合は,重合開始剤の存在下で行う。重合開始剤としては,過酸化物系ラジカル開始剤,アゾ系ラジカル開始剤が好ましく,例えば,過酸化ベンゾイル,過安息香酸2−エチルヘキシル,過酸化アセチル,過酸化イソブチリル,過酸化オクタノイル,過酸化ラウロイル,過酸化ジtert−ブチル,クメンヒドロペルオキシド,メチルエチルケトンペルオキシド,4,4,6−トリメチルシクロヘキサノンジtert−ブチルペルオキシケタール,シクロヘキサノンペルオキシド,メチルシクロヘキサノンペルオキシド,アセチルアセトンペルオキシド,シクロヘキサノンジーtert−ブチルペルオキシケタール,アセトンジーtert−ブチルペルオキシケタール,ジイソプロピルヒドロペルオキシド等の過酸化物系ラジカル重合開始剤,2,2’−アゾビスイソブチロニトリル,2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル),(1−フェニルエチル)アゾジフェニルメタン,2,2’−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル),ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート,2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル),1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカーボニトリル),2−(カーバモイルアゾ)イソブチロニトリル,2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン),2−フェニルアゾー2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル,2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。これら重合開始剤を1種又は2種以上使用することができる。
【0018】
ラジカル重合開始剤は,ビニル基を1個有する単量体100重量部に対して0.05〜10重量部使用される。使用量が0.05重量部未満では重合時間が長くなり,また未反応の単量体が重合体微粒子中に残存して好ましくない。一方,使用量が10重量部を超える場合は重合開始剤が無駄であるばかりでなく,重合中の発熱制御が難しく,分子鎖長が不十分等の問題が発生する。この使用量は単量体の種類などにより適宜決められるものであるが,好ましくは単量体の総量対して0.1〜4.0重量%使用される。なお,水性媒体は,(a),(b)成分及び有機溶媒の総量に対して1〜50重量倍使用するのが好ましい。この場合,水性媒体としては,水が使用されるが,懸濁系の安定性を阻害しない範囲で水溶性有機溶媒を溶解して含む水を使用してもよい。
【0019】
重合時に水に不溶性又は難溶性の有機溶媒を添加することにより,生成する架橋共重合体粒子を多孔性にすることができる。本発明で用いられる水に不溶性又は難溶性の有機溶媒は,25℃で水100gに対して溶解量が15g以下のものであり,例えば,トルエン,キシレン,エチルベンゼン,ジエチルベンゼン,ヘプタノール,イソアミルアルコール,酢酸エチル,酢酸ブチル,フタル酸ジメチル,フタル酸ジエチル等の脂肪族又は芳香族エステル,酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル,ヘキサン,オクタン,デカン等,公知のものが使用できる。これらの有機溶媒は,得られる重合体の元となる単量体の種類によって適宜使い分けられ,単独で用いてもよいし,2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
これらの有機溶媒の配合割合は,多孔性の点からビニル単量体総量に対して5〜300重量%,好ましくは20〜200重量%,より好ましくは50〜100重量%にされる。この配合割合が5重量%未満または300重量%を超えると所望の多孔性が得られにくくなる。
【0021】
重合反応は,通常,60〜90℃の温度範囲で,5〜10時間進行させる。以上のようにして得られた粒径1〜200μm,好ましくは3〜25μmの球状粒子は,必要に応じて分級して使用する。
【0022】
以上で得られた球状粒子に対し,交換基は,強酸性基であることが好ましく,スルホン基またはリン酸基を導入することがより好ましい。導入方法としては,例えば,担体をスルホン基含有ポリマーで被服する方法,担体と化学結合する方法等が挙げられるが,耐久性の見地から,担体と化学結合する方法が好ましい。上記担体と化学結合する方法としては,例えば,エポキシ基を有する担体を前記方法にしたがって合成し,スルホン基またはリン酸基を反応させ,スルホン基またはリン酸基を導入する方法などが挙げられる。
例えば,リン酸基を導入する場合,多孔性の架橋重合体粒子をリン酸と反応させる。この反応には,グリシジル基を有する多孔性の架橋重合体粒子1重量部に対してリン酸水溶液を15重量部以上用いる。反応溶媒としては,リン酸を溶解するもので,グリシジル基と反応して陰イオン交換基を導入しないものであれば,特に制限はない。リン酸水溶液の濃度は,0.01重量%以上,好ましくは1重量%以上で,100重量%(濃リン酸)までの範囲で使用できる。
【0023】
反応は,30〜200℃,好ましくは50〜90℃で,数分〜10時間行う。上記の反応条件で反応させると,リン酸基導入反応と加水分解反応が競争的起こるため,リン酸水溶液の濃度を調整することにより,この競争反応を制御でき,定量的なリン酸基の導入を容易に行うことができる。
【0024】
この多孔性架橋重合体粒子へのコーティング方法は,特に限定するものではないが,吸着剤を有機溶媒又は水に溶解し,多孔性架橋重合体粒子を含浸しながら,イオン結合させる方法が好ましい。また過剰量のカルボニル化合物を捕集する捕集材はアセトニトリル等の有機溶媒で容易に取り除くことが出来る。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0026】
実施例1
(a)グリシジルエステル基を有する架橋重合体粒子の製造
ビニルシクロヘキセンモノオキサイド130g,テトラメチロールメタンメタクリレート60g,酢酸ブチル180g,イソアミルアルコール120g及びアゾビスイソブチロニトリル0.7gの混合物にイオン交換水1000mlを加え,攪拌しながら水化ナトリウム水溶液を用いてpH7〜8に調整した。その後,70℃で6時間重合反応を行った。反応物を冷却した後,生成した共重合体粒子を濾取し,メタノール及び水で順次洗浄した。次いで,一日風乾し,さらに80℃の真空乾燥機に入れて6時間乾燥した。乾燥粒子を分級して150μmの多孔性架橋重合体粒子80gを得た。
(b)リン酸基の導入反応(a)で得られた多孔性架橋重合体粒子20gを濃リン酸300ml中に入れ,よく攪拌した。これを60℃で加熱し,3時間攪拌して反応を行った。反応後,冷却し,得られた多孔性架橋重合体粒子を中性になるまでイオン交換水で洗浄した。その後,イオン交換水を用いて5回デカンテーションを行い,微粒子を取り除いた。
(c)交換基量の測定
(b)で得られた多孔性架橋重合体粒子を真空乾燥機に入れ,80℃で6時間乾燥し,その1gをカラムに充填し,カラム充填剤とした。これを0.1塩酸水溶液で洗浄し,さらに,イオン交換水で洗浄液が中性になるまで洗浄を繰り返した。次に,0.1N水酸化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し,その濾液を回収した。この濾液を0.1N塩酸水溶液で滴定し,次式により交換基量を求めた結果,1.8meq /gとなった。
X=(20−Y)×0.1/Z
〔式中,Xは交換基量(meq/g),Yは滴定量(ml),Zはカラム充填剤量(g)を示す〕
(d) 吸着剤のコーティング
吸着剤は,窒素気流下でコーティングを行った。500mLのセパラブルフラスコに2,4-ジニトロフェニルヒドラジン (DNPH) 40gをアセトニトリル200mLに溶解したものに,(c)で得られた平均粒子径150 μmの多孔性架橋重合体粒子80g分散させ,スリーワンモ−ターおよび攪拌羽根を用いて200rpmの回転数で30分攪拌した。この分散液を,グラスろ過器を用いて吸引ろ過し,その後200mLのアセトニトリルで2回洗浄した。ろ上を回収し,0.1mPa以下で8時間減圧乾燥を行った。
この吸着剤100 mgを市販のDSD-DNPH(SPELCO社製)容器をアセトニトリルで洗浄し,乾燥させたものに充填し,パッシブサンプリング用吸着管を作製した.
吸着管を,スタンドに立てて24時間室内のホルムアルデヒドのパッシブサンプリングを行った。サンプリング終了後,吸着剤に吸着され2,4-ジニトロフェニルヒドラジン (DNPH) 誘導体化されたホルムアルデヒドを,マルチピペット(エッペンドルフ)を用いてアセトニトリルで溶出させ,5mlに定容した。この時,溶出開始から,定容終了までの時間(5mlを溶出する時間)を測定したところ,3.1分であった。また,溶出させたホルムアルデヒドの2,4-ジニトロフェニルヒドラジン (DNPH) 誘導体は,液体クロマトグラフィーにより定量を行った。
評価条件は,カラム:GL-OP100,溶離液:アセトニトリル/水=60/40,サンプルサイズ:50μL,流量:1ml/分 検出器 吸光度(366nm) である。
【0027】
比較例1
市販のパッシブサンプラDSD-DNPH(SPELCO社製)をスタンドに立てて24時間室内のホルムアルデヒドのパッシブサンプリングを行った。サンプリング終了後,吸着剤に吸着され2,4-ジニトロフェニルヒドラジン (DNPH) 誘導体化されたホルムアルデヒドを,マルチピペット(エッペンドルフ)を用いてアセトニトリルで溶出させ,5mlに定容した。この時,溶出開始から,定容終了までの時間(5mlを溶出する時間)を測定したところ,3.0分であった。また,溶出させたホルムアルデヒドの2,4-ジニトロフェニルヒドラジン (DNPH) 誘導体は,液体クロマトグラフィーにより定量を行った。評価条件は実施例1と同様の方法を用いた。
【0028】
比較例2
市販のアクティブサンプラ「XposurAldehydeSampler」(ウォーターズ社製)を吸引ポンプを接続し,100ミリリットル/分で,24時間室内のホルムアルデヒドのアクティブサンプリングを行った。サンプリング終了後,吸着剤に吸着され2,4-ジニトロフェニルヒドラジン (DNPH) 誘導体化されたホルムアルデヒドを,マルチピペット(エッペンドルフ)を用いてアセトニトリルで溶出させ,5mlに定容した。また,溶出させたホルムアルデヒドの2,4-ジニトロフェニルヒドラジン (DNPH) 誘導体は,液体クロマトグラフィーにより定量を行った。評価条件は実施例1と同様の方法を用いた。
【0029】
【表1】

【0030】
本実施例および比較例の方法で,湿度70%に調整した室内のほぼ同じ場所にサンプラ-を設置し測定した結果および,湿度90%に調整した室内のほぼ同じ場所にサンプラ-を設置し,測定した結果を表1に示した。この結果,いずれも高湿度での捕集率の低下が認められるが,本発明の実施例によれば,湿度の影響を受けにくいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニル化合物を捕集する捕集材を多孔質担体に担持したカルボニル化合物用捕集材。
【請求項2】
多孔質担体が,多孔性架橋重合体粒子よりなる請求項1記載のカルボニル化合物用捕集材。
【請求項3】
多孔質担体が,イオン交換基を持つ請求項1記載のカルボニル化合物用捕集材。
【請求項4】
カルボニル化合物を捕集する捕集材が,R1-ONH2または,R2-NH−NH2で表されることを特徴とする請求項1記載のカルボニル化合物用捕集材。
【請求項5】
R1およびR2がフェニル基の誘導体よりなる請求項1記載のカルボニル化合物用捕集材。
【請求項6】
多孔質担体のイオン交換基が,アルキル基またはアリル基などのスペーサーとなる官能基を介して多孔性架橋重合体粒子に結合していることを特徴とする請求項1記載のカルボニル化合物用捕集材。
【請求項7】
多孔質担体のイオン交換基が,酸基であることを特徴とする請求項1記載のカルボニル化合物用捕集材。
【請求項8】
酸基が,スルホン基または,リン酸基であることを特徴とする請求項1記載のカルボニル化合物用捕集材。


【公開番号】特開2006−10390(P2006−10390A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184890(P2004−184890)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】