説明

カルボン酸エステルの製造方法

【課題】アルデヒドからカルボン酸エステルを製造できる新たな方法を提供すること。
【解決手段】下式(2−1)で示される化合物並びに下式(2−2)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種と、アルコールと、二酸化炭素と、アルデヒドとを混合することにより、前記アルデヒドを酸化する工程を含むことを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。


(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基等を表す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基等を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基等を形成する。Yは−S−で表される基又は−N(R)−で表される基を表す。Rは置換基を有していてもよいアルキル基等を表すか、或いは、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。Rはアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸エステルは、種々の化学製品として重要な化合物である。中でも、ケトカルボン酸エステル等のカルボン酸エステルは、アミノ酸等の製造中間体として有用であることが知られている。
【0003】
カルボン酸エステルの製造方法として、従来よりアルデヒドからカルボン酸エステルを製造する方法が開発されている。例えば非特許文献1(例えばTable1参照)には、アルデヒドである4−ニトロベンズアルデヒド、アルコール、ヨウ素及び亜硝酸ナトリウムを反応させることにより、カルボン酸エステルである4−ニトロ安息香酸メチルを製造する方法が記載されている。非特許文献2(例えばSupporting information,2頁)には、トリアゾリウム塩と1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンとから調製される触媒の存在下、アルデヒドであるケイ皮アルデヒド及びキノンを反応させることにより、カルボン酸エステルであるケイ皮酸エステルを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Synthesis,276〜282頁(2010年)
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society,第132巻,1190〜1191頁(2010年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アルデヒドからカルボン酸エステルを製造できる新たな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような状況の下、本発明者は鋭意検討し、本発明に至った。
【0007】
即ち本発明は、以下の通りである。
〔1〕式(2−1)
【0008】
【化1】

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基又は置換基を有していてもよい−CH=N−で表される基を形成する。Yは−S−で表される基又は−N(R)−で表される基を表す。Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。Rはアルキル基を表す。)
で示される化合物並びに式(2−2)
【0009】
【化2】

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種と、アルコールと、二酸化炭素と、アルデヒドとを混合することにより、前記アルデヒドを酸化する工程を含むことを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
〔2〕 前記アルデヒドを酸化する工程が、酸素の存在下で行われる〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 アルデヒドが、式(1)
【0010】
【化3】

(式中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表わす。nは0又は1を表す。)
で示される化合物であり、アルコールが、式(4)
【0011】
【化4】

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
で示される化合物であり、カルボン酸エステルが、式(3)
【0012】
【化5】

(式中、R、R及びnはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物である〔1〕又は〔2〕記載の製造方法。
〔4〕 式(2−1)で示される化合物が、式(2−3)
【0013】
【化6】

(式中、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、それらが結合する炭素原子と共に環を形成する。

は単結合又は二重結合を表す。)
で示される化合物或いは式(2−4)
【0014】
【化7】

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物であり、式(2−2)で示される化合物が、式(2−5)
【0015】
【化8】

(式中、R、R、R、Y及び

はそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物或いは式(2−6)
【0016】
【化9】

(式中、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物である〔1〕〜〔3〕のいずれか1記載の製造方法。
〔5〕 式(2−3)、(2−4)、(2−5)及び(2−6)において、Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRがそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基である〔4〕記載の製造方法。
〔6〕 式(2−1)
【0017】
【化10】

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基又は置換基を有していてもよい−CH=N−で表される基を形成する。Yは−S−で表される基又は−N(R)−で表される基を表す。Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。Rはアルキル基を表す。)
で示される化合物並びに式(2−2)
【0018】
【化11】

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の存在下に、アルデヒド、アルコール及び二酸化炭素を反応させる工程を含むことを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
〔7〕 アルデヒド、アルコール及び二酸化炭素を反応させる工程が、酸素の存在下で行われる〔6〕記載の製造方法。
〔8〕 アルデヒドが、式(1)
【0019】
【化12】

(式中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表わす。nは0又は1を表す。)
で示される化合物であり、アルコールが、式(4)
【0020】
【化13】

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
で示される化合物であり、カルボン酸エステルが、式(3)
【0021】
【化14】

(式中、R、R及びnはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物である〔6〕又は〔7〕記載の製造方法。
〔9〕 式(2−1)で示される化合物が、式(2−3)
【0022】
【化15】

(式中、R、R及びYはそれぞれ記と同義である。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、それらが結合する炭素原子と共に環を形成する。

は単結合又は二重結合を表す。)
で示される化合物或いは式(2−4)
【0023】
【化16】

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物であり、式(2−2)で示される化合物が、式(2−5)
【0024】
【化17】

(式中、R、R、R、Y及び

はそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物或いは式(2−6)
【0025】
【化18】

(式中、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物である〔6〕〜〔8〕のいずれか1記載の製造方法。
〔10〕 式(2−3)、(2−4)、(2−5)及び(2−6)において、Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRがそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基である〔9〕記載の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アルデヒドからカルボン酸エステルを製造できる新たな方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明におけるカルボン酸エステルの製造方法は、式(2−1)で示される化合物(以下、化合物(2−1)と記すことがある)並びに式(2−2)で示される化合物(以下、化合物(2−2)と記すことがある)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、アルコールと、二酸化炭素と、アルデヒドとを混合することにより、前記アルデヒドを酸化する工程を含むことを特徴とする。また、本発明におけるカルボン酸エステルの製造方法は、化合物(2−1)並びに化合物(2−2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の存在下に、アルデヒド、アルコール及び二酸化炭素を反応させる工程を含むことを特徴とする。以下、アルデヒドの酸化を本反応と記すことがある。また、アルデヒド、アルコール及び二酸化炭素の反応を、本反応と記すことがある。本反応により、アルデヒドが酸化されてカルボン酸エステルに変換される。
【0028】
まず、本発明に用いるアルデヒドについて説明する。
【0029】
本発明において、アルデヒドは、−CHOで表わされる基を有する化合物であれば制限なく用いることができる。アルデヒドとしては、式(1)で示される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある。)が好ましく用いられる。
以下、アルデヒドとして化合物(1)を用いる態様を例示して、本発明を詳細に説明する。
【0030】
式(1)において、Rで表される置換基を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基及び置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
【0031】
において、置換基を有していてもよいアルキル基における、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びデシル基等の直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びメンチル基等の環状のC〜C12アルキル基が挙げられる。
かかるアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、下記群G1から選ばれる基が挙げられる。
【0032】
<群G1>
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C20アラルキルオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C20アラルキルオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基、
〜C10アルキルチオ基、
〜C10アルコキシカルボニル基、
〜C20アリール基、
〜C20へテロアリール基、
及び
ハロゲン原子。
【0033】
群G1において、フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基及びトリフルオロメチルオキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C20アラルキルオキシ基としては例えば、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基及び4−メトキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C20アラルキルオキシ基としては例えば、3−フェノキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基としては例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基及び4−メトキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基としては例えば、3−フェノキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基及び4−メトキシベンゾイル基が挙げられ、
〜C10アルキルチオ基としては例えば、メチルチオ基、エチルチオ基及びイソプロピルチオ基が挙げられ、
〜C10アルコキシカルボニル基としては例えば、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、
〜C20アリール基としては例えば、フェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、
〜C20へテロアリール基としては例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−キノリル基、3−キノリル基及び4−キノリル基が挙げられ、
ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
【0034】
群G1から選ばれる基を有するアルキル基としては例えば、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、フェニルメチル基、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、1−エトキシカルボニル−2,2−ジメチル−3−シクロプロピル基及び2−メチルチオエチル基が挙げられる。
【0035】
において、置換基を有していてもよいアルケニル基における、アルケニル基としては例えば、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−シクロヘキセニル基等の直鎖状、分枝状又は環状のC〜C12アルケニル基が挙げられる。
かかるアルケニル基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G1から選ばれる基が挙げられる。
【0036】
群G1から選ばれる基を有するアルケニル基としては例えば、2−クロロビニル基及び2−トリフルオロメチルビニル基が挙げられる。
【0037】
において、置換基を有していてもよいアリール基における、アリール基としては例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基及びスチリル基等のC〜C20アリール基が挙げられる。
かかるアリール基が有していてもよい置換基としては例えば、下記群G2から選ばれる基が挙げられる。
【0038】
<群G2>
フッ素原子又はC〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アルコキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基、
〜Cアルキレンジオキシ基
ニトロ基、
及び
ハロゲン原子。
【0039】
群G2において、フッ素原子又はC〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基及びメトキシエトキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基としては例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基及び4−メトキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基としては例えば、3−フェノキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基及び4−メトキシベンジルカルボニル基が挙げられ、
〜Cアルキレンジオキシ基としては例えば、メチレンジオキシ基及びエチレンジオキシ基が挙げられ、
ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子及び塩素原子が挙げられる。
【0040】
群G2から選ばれる基を有するアリール基としては例えば、4−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基及び3−フェノキシフェニル基が挙げられる。
【0041】
で表される置換基を有していてもよいヘテロアリール基における、ヘテロアリール基としては例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも一個含むC〜C10ヘテロアリール基が挙げられ、具体的には例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フリル基、3−フリル基、5−メチル−2−フリル基及び2−クロロ−3−ピリジニル基が挙げられる。
【0042】
式(1)におけるnが0を表す場合、化合物(1)としては、例えば、ベンズアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、4−フルオロベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、2−ニトロベンズアルデヒド、2−ナフチルベンズアルデヒド、2−ピリジルアルデヒド、アセトアルデヒド、n−プロピルアルデヒド、イソプロピルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、4−(メチルチオ)−1−ブタナール、アクロレイン及び3−フェニル−2−プロペンアルデヒドが挙げられる。
式(1)におけるnが0を表す場合、化合物(1)としては、市販品及び任意の公知の方法に準じて製造したものが挙げられる。公知の方法としては、例えばアルキルアルコールやベンゼンメタノールを酸化する方法、末端2重結合をヒドロホルミル化する方法、及びメチル部分をジハロゲン化したのち加水分解する方法が挙げられる。
【0043】
式(1)におけるnが1を表す場合、化合物(1)としては、例えば、フェニルグリオキサール、4−クロロフェニルグリオキサール、2−メチルフェニルグリオキサール、4−フルオロフェニルグリオキサール、2−メトキシフェニルグリオキサール、2,4−ジクロロフェニルグリオキサール、2−ニトロフェニルグリオキサール、2−ナフチルグリオキサール、2−ピリジングリオキシルアルデヒド、メチルグリオキサール、エチルグリオキサール、n−プロピルグリオキサール、イソプロピルグリオキサール、シクロヘキシルグリオキサール、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール、ビニルグリオキサール及びスチリルグリオキサールが挙げられる。
式(1)におけるnが1を表す場合、化合物(1)としては、市販品及び、例えば、ケトアルコールを金属触媒の存在下に酸素酸化する方法(例えば、特開2000−336055号公報参照。)等の任意の公知の方法に準じて製造したものが挙げられる。
【0044】
次いで、本発明に用いるアルコールについて説明する。
【0045】
本発明において、アルコールは制限なく用いることができる。アルコールとしては、式(4)で示される化合物(以下、化合物(4)と記すことがある)が好ましく用いられる。
【0046】
式(4)において、Rで表される置換基を有していてもよいアルキル基における、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びデシル基等の直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びメンチル基等の環状のC〜C12アルキル基が挙げられる。
かかるアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、下記群G3から選ばれる基が挙げられる。
【0047】
<群G3>
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C20アラルキルオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C20アラルキルオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基、
〜C10アルキルチオ基、
〜C10アルコキシカルボニル基、
〜C20アリール基、
〜C20へテロアリール基、
及び
ハロゲン原子。
【0048】
群G3において、フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基及びトリフルオロメチルオキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C20アラルキルオキシ基としては例えば、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基及び4−メトキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C20アラルキルオキシ基としては例えば、3−フェノキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基としては例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基及び4−メトキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基としては例えば、3−フェノキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基及び4−メトキシベンゾイル基が挙げられ、
〜C10アルキルチオ基としては例えば、メチルチオ基、エチルチオ基及びイソプロピルチオ基が挙げられ、
〜C10アルコキシカルボニル基としては例えば、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、
〜C20アリール基としては例えば、フェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、
〜C20へテロアリール基としては例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−キノリル基、3−キノリル基及び4−キノリル基が挙げられ、
ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
【0049】
群G3から選ばれる基を有するアルキル基としては例えば、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、フェニルメチル基、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、1−エトキシカルボニル−2,2−ジメチル−3−シクロプロピル基及び2−メチルチオエチル基が挙げられる。
【0050】
化合物(4)としては例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール及び2−ピリジンメタノールが挙げられる。
これら化合物(4)としては、市販品及び任意の公知の方法に準じて製造したものが挙げられる。公知の方法としては、例えばアルカン又はアルキル置換ベンゼンを部分酸化する方法、2重結合に水を付加する方法、及び醗酵法で製造する方法が挙げられる。
【0051】
アルコールの使用量は、アルデヒド1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、その上限は制限されないが、経済性の点で100モル以下が好ましい。
【0052】
次いで、化合物(2−1)及び化合物(2−2)について説明する。
【0053】
式(2−1)及び式(2−2)において、Rで表される置換基を有していてもよいアルキル基及びRで表される置換基を有していてもよいアルキル基における、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びデシル基等の直鎖状又は分枝状のC〜C12アルキル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の環状のC〜C12アルキル基が挙げられる。
かかるアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、下記群G4から選ばれる基が挙げられる。
【0054】
<群G4>
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリール基、
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基、
〜C10アルコキシ基、C〜C10アルキル基及びC〜C10アリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよいベンジルオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基、
カルボキシ基、
及び
フッ素原子。
【0055】
群G4において、C〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられ、
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基及びトリフルオロメトキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基、C〜C10アルキル基及びC〜C10アリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよいベンジルオキシ基としては例えば、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基及び3−フェノキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基としては例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基及び4−メトキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基としては例えば、3−フェノキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基及び4−メトキシベンゾイル基が挙げられる。
【0056】
群G4から選ばれる基を有するアルキル基としては例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、フェナシル基及び2−カルボキシエチル基が挙げられる。
【0057】
式(2−1)及び式(2−2)において、Rで表される置換基を有していてもよいアリール基及びRで表される置換基を有していてもよいアリール基における、アリール基としては例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等のC〜C10アリール基が挙げられる。
かかるアリール基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G2から選ばれる基が挙げられる。
【0058】
群G2から選ばれる基を有するアリール基としては例えば、4−クロロフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられる。
【0059】
式(2−1)及び式(2−2)において、RとRとが一緒になって置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成していてもよい。2価の炭化水素基としては例えば、エチレン基、トリメチレン基、ビニレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロペン−1,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、2−ブテン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、o−フェニレン基、1,2−ジフェニルエチレン基及び1,2−ジフェニルビニレン基が挙げられる。かかる2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G2から選ばれる基が挙げられる。
【0060】
及びRは、好ましくはRとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。
【0061】
式(2−1)及び式(2−1)において、Rで表される置換基を有していてもよいアルキル基及びRで表される置換基を有していてもよいアルキル基における、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、tert−ペンチル基及びデシル基等の直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基及びアダマンチル基等の環状のC〜C12アルキル基が挙げられる。
かかるアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、下記群G5から選ばれる基が挙げられる。
【0062】
<群G5>
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリール基、
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C20アラルキルオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C20アラルキルオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基、
及び
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基。
【0063】
群G5において、C〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられ、
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基及びトリフルオロメトキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C20アラルキルオキシ基としては例えば、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基及び4−メトキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C20アラルキルオキシ基としては例えば、3−フェノキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基としては例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基及び4−メトキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基としては例えば、3−フェノキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基及び4−メトキシベンゾイル基が挙げられる。
【0064】
群G5から選ばれる基を有するアルキル基としては例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基及びフェナシル基が挙げられる。
【0065】
式(2−1)及び式(2−2)において、Rで表される置換基を有していてもよいアリール基及びRで表される置換基を有していてもよいアリール基における、アリール基としては例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基等のC〜C20アリール基が挙げられる。
かかるアリール基が有していてもよい置換基としては例えば、下記群G6から選ばれる基が挙げられる。
【0066】
<群G6>
フッ素原子又はC〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アルコキシ基、
及び
ハロゲン原子。
【0067】
群G6において、フッ素原子又はC〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基及びメトキシエトキシ基が挙げられ、
ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子及び塩素原子が挙げられる。
【0068】
群G6から選ばれる基を有するアリール基としては例えば、4−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基及び2,6−ジクロロフェニル基が挙げられる。
【0069】
式(2−1)及び式(2−2)において、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成していてもよい。2価の炭化水素基としては、例えばエチレン基、トリメチレン基及びテトラメチレン基等のポリメチレン基、ビニレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロペン−1,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、2−ブテン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基並びにo−フェニレン基が挙げられる。2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G2から選ばれる基が挙げられる。
【0070】
式(2−1)において、Rで表されるアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分枝状のC〜Cアルキル基が挙げられる。
【0071】
化合物(2−1)は、好ましくは式(2−3)で示される化合物(以下、化合物(2−3)」と記すことがある)又は式(2−4)で示される化合物(以下、化合物(2−4)と記すことがある)であり、より好ましくは化合物(2−3)である。また、化合物(2−2)は、好ましくは式(2−5)で示される化合物(以下、化合物(2−5)と記すことがある)又は式(2−6)で示される化合物(以下、化合物(2−6)と記すことがある)であり、より好ましくは化合物(2−5)である。
即ち、本反応は、好ましくは化合物(2−3)、化合物(2−4)、化合物(2−5)及び化合物(2−6)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、アルコールと、二酸化炭素と、アルデヒドとを混合することにより実施される。また、本反応は、好ましくは化合物(2−3)、化合物(2−4)、化合物(2−5)及び化合物(2−6)からなる群より選ばれる少なくとも一種の存在下に実施される。
以下、化合物(2−3)、化合物(2−4)、化合物(2−5)及び化合物(2−6)について説明する。
【0072】
式(2−3)、式(2−4)、式(2−5)及び式(2−6)において、Rは式(2−1)及び式(2−2)におけるRと同義であり、Yは式(2−1)及び式(2−2)におけるYと同義である。Yが−N(R)−で表される基である場合、Rは式(2−1)及び式(2−2)におけるRと同義である。
式(2−3)及び式(2−4)において、Rは式(2−1)におけるRと同義である。
【0073】
式(2−3)、式(2−4)、式(2−5)及び式(2−6)において、Yは−N(R)−で表される基であることが好ましい。
【0074】
式(2−3)、式(2−4)、式(2−5)及び式(2−6)において、R及びRの少なくともいずれかが嵩高い基であることが好ましく、R及びRのいずれもが嵩高い基であることがより好ましい。R及びRは同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
ここで、R及びRにおける嵩高い基としては例えば、
tert−ブチル基、tert−ペンチル基等のC〜C12第三級アルキル基、
シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基、アダマンチル基等のC〜C10シクロアルキル基、
2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基等の少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基(2,6−ジ置換フェニル基)、
及び
2−メチルナフチル基等の2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基
が挙げられる。2,6−ジ置換フェニル基における置換基としては例えば、C〜C12アルキル基及びハロゲン原子が挙げられる。
嵩高い基は、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基又は2,6−ジ置換フェニル基が好ましく、2,6−ジ置換フェニル基がより好ましく、2,6−ジイソプロピルフェニル基がより一層好ましい。
【0075】
式(2−3)及び式(2−5)において、Rで表される置換基を有していてもよいアルキル基及び式(2−3)、式(2−4)、式(2−5)及び式(2−6)において、Rで表される置換基を有していてもよいアルキル基における、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝状又は環状のC〜C10アルキル基が挙げられる。
かかるアルキル基が有していてもよい置換基としては、上述した群G4から選ばれる基が挙げられる。
【0076】
群G4から選ばれる基を有するアルキル基としては例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、フェナシル基及び2−カルボキシエチル基が挙げられる。
【0077】
式(2−3)及び式(2−5)において、Rで表される置換基を有していてもよいアリール基及び式(2−3)、式(2−4)、式(2−5)及び式(2−6)において、Rで表される置換基を有していてもよいアリール基における、アリール基としては例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等のC〜C10アリール基が挙げられる。
かかるアリール基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G2から選ばれる基が挙げられる。
【0078】
群G2から選ばれる基を有するアリール基としては例えば、4−クロロフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられる。
【0079】
式(2−3)及び式(2−5)において、RとRとが一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。かかる環としては例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環及びベンゼン環が挙げられる。
【0080】
式(2−3)及び式(2−5)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、R及びRは共に水素原子であることがより好ましい。
【0081】
式(2−3)及び式(2−5)において、好ましくは、

は単結合である。
【0082】
化合物(2−3)としては例えば、2−メトキシ−1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリジン、2−エトキシ−1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリジン、2−n−プロポキシ−1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン、2−エトキシ−1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン、2−プロポキシ−1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ジフェニルイミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−プロポキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−プロポキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−ブトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−ブトキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−イソプロポキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−イソプロポキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジクロロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジフェニル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジフルオロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4−メチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジクロル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−1−tert−ブチル−3−フェニルイミダゾリジン、2−メトキシ−1−シクロヘキシル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−1−フェニル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−1−tert−ブチル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン及び2−エトキシ−1−tert−ブチル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン等が挙げられる。
【0083】
化合物(2−4)としては例えば、5−メトキシ−1,4−ジメチル−1,2,4(5H)−トリアゾリン、5−メトキシ−1,3,4−トリフェニル−1,2,4(5H)−トリアゾリンを挙げることができる。
【0084】
化合物(2−5)としては例えば、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ジアダマンチルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ジフェニルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジクロロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジフェニル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジフルオロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4−メチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ビス[(2,6−ジクロル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−tert−ブチル−3−フェニルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−シクロヘキシル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−フェニル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−tert−ブチル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム及び2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−tert−ブチル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム等を挙げることができる。
【0085】
化合物(2−6)としては例えば、5−カルボキシ−1,3,4−トリフェニル−4H、1,2,4−トリアゾリウム等を挙げることができる。
【0086】
化合物(2−1)及び化合物(2−2)としては、市販品及び、例えば、J.Am.Chem.Soc.,第127巻,9079頁(2005年)に記載される方法に準じて製造されたものが挙げられる。
【0087】
化合物(2−1)並びに化合物(2−2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用量は、アルデヒド1モルに対して、好ましくは0.001モル〜0.5モルであり、より好ましくは0.01モル〜0.3モルである。
【0088】
本反応に用いる二酸化炭素は、ガス状のものであってもよいし、固体状のもの(ドライアイス)であってもよいし、超臨界状態のものであってもよい。ガス状の二酸化炭素は、窒素等の不活性ガスで希釈されたものであってもよい。
二酸化炭素の使用量は、アルデヒド1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、その上限は制限されない。
【0089】
本反応は、酸素の存在下で行われることが好ましい。本反応に用いられる酸素は、酸素ガスであってもよいし、窒素等の不活性ガスにより希釈された酸素ガスであってもよいし、大気に含まれる酸素であってもよい。また、大気に含まれる酸素を窒素等の不活性ガスにより希釈したものであってもよい。酸素の使用量は、アルデヒド1モルに対して、好ましくは、1モル〜100モルの範囲である。
【0090】
本反応は、さらに溶媒(但し、アルコール溶媒を除く)の存在下に行うこともできる。
溶媒としては、本反応を阻害しないものであれば制限されず、例えば、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
溶媒の使用量は制限されず、アルデヒド1重量部に対して、100重量部以下とすることが実用的である。
【0091】
本反応において、反応試剤の混合順序は制限されない。好ましい実施態様としては、例えば、アルデヒドと、アルコールと、化合物(2−1)並びに化合物(2−2)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、必要に応じて溶媒とを混合し、得られる混合物に二酸化炭素を添加する方法が挙げられる。混合は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0092】
本反応は、減圧下、常圧下及び加圧下のいずれの条件下でも行われるが、好ましくは常圧下又は加圧下で行われる。
【0093】
本反応の反応温度は、化合物(2−1)並びに化合物(2−2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の種類、使用量等により異なるが、好ましくは−20℃〜150℃の範囲、より好ましくは0〜100℃の範囲である。反応温度が−20℃よりも低い場合は、本反応の反応速度が低下する傾向にあり、反応温度が150℃よりも高い場合は、本反応の選択率が低下する傾向にある。
【0094】
本反応の進行度合いは、例えばガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の分析手段により確認することができる。
【0095】
反応終了後、本反応に用いた二酸化炭素、及び本反応により二酸化炭素から生じる一酸化炭素を、得られる反応混合物から気体として容易に除去することができる。得られる反応混合物を、例えば、必要に応じて濃縮処理に付した後、冷却処理等を行うことにより、カルボン酸エステルを取り出すこともできる。
取り出したカルボン酸エステルは、蒸留、カラムクロマトグラフィー、結晶化などの精製手段により、精製してもよい。
【0096】
かくして得られるカルボン酸エステルは、アルデヒドが化合物(1)であり、アルコールが化合物(4)である場合には、式(3)で示される化合物(以下、化合物(3)と記すことがある)である。
【0097】
式(1)におけるnが0を表す化合物(1)をアルデヒドとして用いた場合、式(3)におけるnが0を表す化合物(3)が得られる。かかる化合物(3)としては、例えば、安息香酸メチル、4−クロロ安息香酸メチル、2−メチル安息香酸メチル、4−フルオロ安息香酸メチル、4−メトキシ安息香酸メチル、2−ニトロ安息香酸メチル、2,4−ジクロロ安息香酸メチル、2−ナフタレンカルボン酸メチル、2−ピリジンカルボン酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ブタン酸メチル、ペンタン酸メチル、ヘキサン酸メチル、ヘプタン酸メチル、オクタン酸メチル、シクロヘキサン酸メチル、4−(メチルチオ)ブタン酸メチル、3−ブテン酸メチル、アクリル酸メチル、3−フェニル−2−プロペン酸メチル、安息香酸エチル、4−クロロ安息香酸エチル、2−メチル安息香酸エチル、4−フルオロ安息香酸エチル、4−メトキシ安息香酸エチル、2−ニトロ安息香酸エチル、2,4−ジクロロ安息香酸エチル、2−ナフタレンカルボン酸エチル、2−ピリジンカルボン酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ブタン酸エチル、ペンタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、シクロヘキサン酸エチル、4−(メチルチオ)ブタン酸エチル、3−ブテン酸エチル、アクリル酸エチル、3−フェニル−2−プロペン酸エチル、安息香酸ベンジル、4−クロロ安息香酸ベンジル、2−メチル安息香酸ベンジル、4−フルオロ安息香酸ベンジル、4−メトキシ安息香酸ベンジル、2−ニトロ安息香酸ベンジル、2,4−ジクロロ安息香酸ベンジル、2−ナフタレンカルボン酸ベンジル、2−ピリジンカルボン酸ベンジル、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、ブタン酸ベンジル、ペンタン酸ベンジル、ヘキサン酸ベンジル、ヘプタン酸ベンジル、オクタン酸ベンジル、シクロヘキサン酸ベンジル、4−(メチルチオ)ブタン酸ベンジル、3−ブテン酸ベンジル、アクリル酸ベンジル及び3−フェニル−2−プロペン酸ベンジルが挙げられる。
【0098】
式(1)におけるnが1を表す化合物(1)をアルデヒドとして用いた場合、式(3)におけるnが1を表す化合物(3)が得られる。かかる化合物(3)としては、例えば、ベンゾイルギ酸メチル、4−クロロベンゾイルギ酸メチル、2−メチルベンゾイルギ酸メチル、4−フルオロベンゾイルギ酸メチル、4−メトキシベンゾイルギ酸メチル、2−ニトロベンゾイルギ酸メチル、2,4−ジクロロベンゾイルギ酸メチル、2−ナフトイルギ酸メチル、α−オキソ−2−ピリジン酢酸メチル、ピルビン酸メチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソペンタン酸メチル、3−メチル−2−オキソブタン酸メチル、α−オキソ−シクロヘキサン酢酸メチル、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチル、2−オキソ−3−ブテン酸メチル、2−オキソ−4−フェニル−3−ブテン酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル、4−クロロベンゾイルギ酸エチル、2−メチルベンゾイルギ酸エチル、4−フルオロベンゾイルギ酸エチル、4−メトキシベンゾイルギ酸エチル、2−ニトロベンゾイルギ酸エチル、2,4−ジクロロベンゾイルギ酸エチル、2−ナフトイルギ酸エチル、α−オキソ−2−ピリジン酢酸エチル、ピルビン酸エチル、2−オキソブタン酸エチル、2−オキソペンタン酸エチル、3−メチル−2−オキソブタン酸エチル、α−オキソ−シクロヘキサン酢酸エチル、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸エチル、2−オキソ−3−ブテン酸エチル、2−オキソ−4−フェニル−3−ブテン酸エチル、ベンゾイルギ酸ベンジル、4−クロロベンゾイルギ酸ベンジル、2−メチルベンゾイルギ酸ベンジル、4−フルオロベンゾイルギ酸ベンジル、4−メトキシベンゾイルギ酸ベンジル、2−ニトロベンゾイルギ酸ベンジル、2,4−ジクロロベンゾイルギ酸ベンジル、2−ナフトイルギ酸ベンジル、α−オキソ−2−ピリジン酢酸ベンジル、ピルビン酸ベンジル、2−オキソブタン酸ベンジル、2−オキソペンタン酸ベンジル、3−メチル−2−オキソブタン酸ベンジル、α−オキソ−シクロヘキサン酢酸ベンジル、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸ベンジル、2−オキソ−3−ブテン酸ベンジル及び2−オキソ−4−フェニル−3−ブテン酸ベンジルが挙げられる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0100】
<実施例1>
磁気回転子を付した50mLシュレンク管に、窒素雰囲気下でメチルグリオキサール1水和物140mg、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン50mg、メタノール1g及びテトラヒドロフラン5gを仕込み、得られた混合物を25℃の水浴で保温しながら攪拌した。そこへドライアイス1.0gを加えて反応を開始し、常圧条件下、8時間室温で攪拌した。反応開始から30分後と、1時間後とにドライアイス各1gを反応混合物に加えた。
反応終了後、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物をガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、ピルビン酸メチルの収率を求めたところ、収率は10%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応のメチルグリオキサールが80%残存していた。
【0101】
<実施例2>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、窒素雰囲気下でフェニルグリオキサール1水和物200mg、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン30mg及びメタノール5gを仕込み、得られた混合物を−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を60℃にて、6時間攪拌して反応させた。
反応終了後、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、ベンゾイルギ酸メチルの収率を求めたところ、収率は7%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応のフェニルグリオキサールが90%残存していた。
【0102】
<実施例3>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、窒素雰囲気下で4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール100mg、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン20mg、メタノール500mg及びテトラヒドロフラン2gを仕込み、得られた混合物を−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を60℃にて、6時間攪拌して反応させた。
反応終了後、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの収率を求めたところ、収率は20%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応の4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールが30%残存していた。
【0103】
<実施例4>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、窒素雰囲気下でn−ヘキシルアルデヒド140mg、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン30mg、メタノール100mg及びテトラヒドロフラン3gを仕込み、得られた混合物を−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を60℃にて、6時間攪拌して反応させた。
反応終了後、反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、ヘキサン酸メチルの収率を求めたところ、収率は14%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応のn−ヘキシルアルデヒドが80%残存していた。
反応終了後に、耐圧反応管から二酸化炭素ガスを放出させて常圧に戻す際に、ガス中の一酸化炭素濃度をCO濃度計(コスモス電機製ガス検出器XX2200T)で測定したところ、78ppmであった。
【0104】
<実施例5>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、窒素雰囲気下で4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール100mg、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ビス[(2,4、6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム10mg、メタノール500mg及びテトラヒドロフラン3gを仕込み、得られた混合物を−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を60℃にて、4時間攪拌して反応させた。
反応終了後、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの収率を求めたところ、収率は10%であった。
【0105】
<実施例6>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、窒素雰囲気下でn−ヘキシルアルデヒド140mg、5−メトキシ−1,3,4−トリフェニル−1,2,4(5H)−トリアゾリン23mg、メタノール100mg及びテトラヒドロフラン2gを仕込み、得られた混合物を−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を60℃にて、6時間攪拌して反応させた。
反応終了後、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、ヘキサン酸メチルの収率を求めたところ、収率は5%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応のn−ヘキシルアルデヒドが80%残存していた。
【0106】
<実施例7>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、窒素雰囲気下でベンズアルデヒド150mg、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン30mg、メタノール140mg及びテトラヒドロフラン2gを仕込み、得られた混合物を−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を40℃にて、6時間攪拌して反応させた。
反応終了後、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、安息香酸メチルの収率を求めたところ、収率は5%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応のベンズアルデヒドが92%残存していた。
反応終了後に、耐圧反応管から二酸化炭素ガスを放出させて常圧に戻す際に、ガス中の一酸化炭素濃度をCO濃度計(コスモス電機製ガス検出器XX2200T)で測定したところ、98ppmであった。
【0107】
<実施例8>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、窒素雰囲気下でフェニルグリオキサール1水和物130mg、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ビス[(2,4、6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム30mg、メタノール300mg及びテトラヒドロフラン3gを仕込み、得られた混合物を−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を、空気で1MPaまで加圧した後、60℃にて、3時間攪拌して反応させた。
反応終了後、空気、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、ベンゾイルギ酸メチルの収率を求めたところ、収率は31%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応のフェニルグリオキサールが35%残存していた。
【産業上の利用可能性】
【0108】
カルボン酸エステルは、種々の化学製品として重要な化合物である。ケトカルボン酸エステル等のカルボン酸エステルは、アミノ酸等の製造中間体として有用であることも知られている。本発明は、かかるカルボン酸エステルの製造方法として産業上利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2−1)
【化1】

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基又は置換基を有していてもよい−CH=N−で表される基を形成する。Yは−S−で表される基又は−N(R)−で表される基を表す。Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。Rはアルキル基を表す。)
で示される化合物並びに式(2−2)
【化2】

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種と、アルコールと、二酸化炭素と、アルデヒドとを混合することにより、前記アルデヒドを酸化する工程を含むことを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
前記アルデヒドを酸化する工程が、酸素の存在下で行われる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
アルデヒドが、式(1)
【化3】

(式中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表わす。nは0又は1を表す。)
で示される化合物であり、アルコールが、式(4)
【化4】

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
で示される化合物であり、カルボン酸エステルが、式(3)
【化5】

(式中、R、R及びnはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
式(2−1)で示される化合物が、式(2−3)
【化6】

(式中、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、それらが結合する炭素原子と共に環を形成する。

は単結合又は二重結合を表す。)
で示される化合物或いは式(2−4)
【化7】

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物であり、式(2−2)で示される化合物が、式(2−5)
【化8】

(式中、R、R、R、Y及び

はそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物或いは式(2−6)
【化9】

(式中、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物である請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
式(2−3)、(2−4)、(2−5)及び(2−6)において、Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRがそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
式(2−1)
【化10】

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基又は置換基を有していてもよい−CH=N−で表される基を形成する。Yは−S−で表される基又は−N(R)−で表される基を表す。Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。Rはアルキル基を表す。)
で示される化合物並びに式(2−2)
【化11】

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の存在下に、アルデヒド、アルコール及び二酸化炭素を反応させる工程を含むことを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項7】
アルデヒド、アルコール及び二酸化炭素を反応させる工程が、酸素の存在下で行われる請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
アルデヒドが、式(1)
【化12】

(式中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表わす。nは0又は1を表す。)
で示される化合物であり、アルコールが、式(4)
【化13】

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
で示される化合物であり、カルボン酸エステルが、式(3)
【化14】

(式中、R、R及びnはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物である請求項6又は7記載の製造方法。
【請求項9】
式(2−1)で示される化合物が、式(2−3)
【化15】

(式中、R、R及びYはそれぞれ記と同義である。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、それらが結合する炭素原子と共に環を形成する。

は単結合又は二重結合を表す。)
で示される化合物或いは式(2−4)
【化16】

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物であり、式(2−2)で示される化合物が、式(2−5)
【化17】

(式中、R、R、R、Y及び

はそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物或いは式(2−6)
【化18】

(式中、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物である請求項6〜8のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
式(2−3)、(2−4)、(2−5)及び(2−6)において、Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRがそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基である請求項9記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−32328(P2013−32328A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174752(P2011−174752)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】