説明

カルボン酸化合物およびその誘導体

【課題】 低比誘電率樹脂を合成できるカルボン酸化合物およびその誘導体を提供する。
【解決手段】 アミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物。前記カルボン酸化合物において、前記カルボン酸化合物におけるカルボキシ基は、前記ダイヤモンドイド構造上に有するものであり、また、前記ダイヤモンドイド構造は、アダマンタン構造を最小単位として有する多環式構造を1つまたは2つ以上有するものである。前記カルボン酸化合物におけるカルボキシ基の水素原子が、有機基で置換された構造を有する、カルボン酸誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸化合物およびその誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
一分子中に2つのアミノフェノール構造を有するビスアミノフェノール化合物と、一分子中に2つのカルボキシ基を有するジカルボン酸およびそのジカルボン酸誘導体とは、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂などの合成原料として用いられ、その用途に応じて、様々な構造を有する樹脂が合成され、使用されている。
これらの樹脂は、電気、電子分野など幅広い分野で用いられているが、例えば、半導体用の絶縁膜として用いられる場合、酸化膜等の無機絶縁膜と比較して、前記樹脂を用いた絶縁膜は低比誘電率であるという特徴があるため、特に、半導体用の層間絶縁膜用途において、有機材料として適用が広く検討されている。また、絶縁膜形成用の有機材料としては、ポリイミド樹脂が広く知られているが(例えば、特許文献1参照。)、半導体装置における、電気信号の高速化、電子部品の微細化、高集積化、および低消費電力化などの、更なる高性能化に対応するためには、絶縁膜としての比誘電率がなお十分でないという問題があり、これらに対応出来る樹脂が求められていた。
【特許文献1】特開平5−121396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような事情のもとで、低比誘電率樹脂を合成できるカルボン酸化合物およびその誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明は、
1. アミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物、
2. 前記カルボン酸化合物におけるカルボキシ基は、前記ダイヤモンドイド構造上に有するものである、第1項記載のカルボン酸化合物、
3. 前記ダイヤモンドイド構造は、アダマンタン構造を最小単位として有する多環式構造を1つまたは2つ有するものである、第1項乃至第2項記載のカルボン酸化合物、
4. 前記カルボン酸化合物は、アミノヒドロキシフェニル基またはカルボキシ基のいずれかを2個以上有する、第1項乃至第3項のいずれかに記載のカルボン酸化合物、
5. 第1項乃至第4項のいずれかに記載のカルボン酸化合物におけるカルボキシ基の水素原子が、有機基で置換された構造を有する、カルボン酸誘導体、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、低比誘電率である高分子の原料として好適に用いることができるカルボン酸化合物およびその誘導体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、アミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物であり、その構造に、ダイヤモンドイド構造より構成される基と、アミノヒドロキシフェニル基およびカルボキシ基とを有するものであればよく、詳しくは、前記カルボキシ基を前記ダイヤモンドイド構造上に有するものが挙げられ、低比誘電率である高分子の原料として好適に用いることができる。
【0007】
更には、上記カルボン酸化合物のうち、アミノヒドロキシフェニル基またはカルボキシ基のいずれかを2個以上有するものが挙げられ、これら多官能性化合物を用いることで、分岐構造を有する樹脂が得られ、樹脂に、優れた耐熱性や高い自由体積を付与することができる。
【0008】
また、本発明は、アミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物におけるカルボキシ基の水素原子が有機基で置換された構造を有するカルボン酸誘導体であり、詳しくは、上記カルボン酸化合物におけるカルボキシ基の水素原子が有機基で置換された構造を有するものが挙げられ、低比誘電率である高分子の原料として好適に用いることができる。
【0009】
前記ダイヤモンドイド構造より構成される基におけるダイヤモンドイド構造としては、アダマンタン構造を最小単位として有する多環式構造であり、本発明においては、これを1つまたは2つ以上有するものが挙げられ、前記多環式構造を1つ有するものとしては、例えば、アダマンチル基、ジアマンチル基、トリアマンチル基およびテトラマンチル基などが挙げられ、前記多環式構造を2つ有するものとしは、例えば、ビアダマンチル基、トリアダマンチル基およびテトラアダマンチル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらにより、低比誘電率を有する樹脂を得ることができる。
【0010】
前記ダイヤモンドイド構造中の水素原子は、脂肪族基、芳香族基およびフッ素原子で置換されていても良い。前記水素原子と置換してもよい脂肪族基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基などのアルキル基;、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基およびブトキシ基などのアルコキシ基;、ビニル基、プロペニル基およびブテニル基などのアルケニル基;、エチニル基、プロピニル基およびブチニル基などのアルキニル基;、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ジアマンチル基およびビアダマンチル基などの脂環式脂肪族基;、などが挙げられ、前記水素原子と置換してもよい芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基およびナフトキシ基;、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、前記水素原子と置換してもよい脂肪族基および芳香族基中の水素原子はフッ素原子で置換されていても良い。これらにより、溶解性、耐熱性を有する樹脂を得ることができる。
【0011】
前記カルボン酸化合物におけるカルボキシ基の水素原子と置換してもよい有機基としては、脂肪族基および芳香族基が挙げられる。前記カルボキシ基の水素原子と置換してもよい脂肪族基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基などのアルキル基;、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ジアマンチル基およびビアダマンチル基などの脂環式脂肪族基;、などが挙げられ、前記カルボキシ基の水素原子と置換してもよい芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基およびベンゾトリアゾール基;、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
本発明の、アミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物の具体例としては、これらの内、カルボキシ基がダイヤモンドイド構造上に有するものとして、例えば、アミノヒドロキシフェニル基を3個とカルボキシ基を1個有するものとして、3,5,7−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸、3’,5’,7’−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンチル−3−カルボン酸、2,6,11−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジアマンタン−1−カルボン酸などが挙げられ、アミノヒドロキシフェニル基を1個とカルボキシ基を3個有するものとして、6−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3,5−トリカルボン酸、7−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3,5−トリカルボン酸などが挙げられ、アミノヒドロキシフェニル基を1個とカルボキシ基を4個有するものとして、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジアマンタン−1,4,6,9−テトラカルボン酸などが挙げられ、アミノヒドロキシフェニル基またはカルボキシ基のいずれかを2個有するものとして、例えば、3,5−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸、4,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸、3,5−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−7−メチルアダマンタン−1−カルボン酸、6,6−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルアダマンタン−1−カルボン酸、5−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3−ジカルボン酸、6−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3−ジカルボン酸、6,6−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3−ジカルボン酸、5,7−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3−ジカルボン酸、5−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−7−メチルアダマンタン−1,3−ジカルボン酸、6−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン−1,3−ジカルボン酸、6,6−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3,5−トリカルボン酸、4,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジアマンタン−1−カルボン酸、4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジアマンタン−1,6−ジカルボン酸、4,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジアマンタン−1,6−ジカルボン酸、1−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジアマンタン−4,9−ジカルボン酸、1,6−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジアマンタン−4,9−ジカルボン酸、3’,5’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンチル−3−カルボン酸、5,5’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸、5,5’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−7,7’−ジメチル−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸および7,7’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸、などを挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0013】
また、本発明のカルボン酸誘導体、即ち、アミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物中のカルボキシ基の水素原子を有機基で置換されたものとしては、例えば、上記カルボン酸化合物のメチルエステル化物、エチルエステル化物、フェニルエステル化物、ピリジルエステル化物、キノリルエステル化物、キノキサリルエステル化物およびベンゾトリアゾールエステル化物、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの内、ピリジルエステル化物における例を挙げると、例えば、3−ピリジルエステルの例としては、3,5,7−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸−(3−ピリジル)エステル、7−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3,5−トリカルボン酸−トリ(3−ピリジル)エステル、3,5−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸−(3−ピリジル)エステル、4,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジアマンタン−1,6−ジカルボン酸−ジ(3−ピリジル)エステル、5,5’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸−ジ(3−ピリジル)エステルおよび5−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3−ジカルボン酸−ジ(3−ピリジル)エステル、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明のカルボン酸化合物の製造方法としては、例えば、以下のルートによって合成することができる。
なお、ダイヤモンドイド構造より構成される脂環式化合物への、ハロゲン原子、カルボキシ基およびヒドロキシ芳香族基の導入は、文献(I.K.Moiseev,Russian.Cehm.Rev.,68(12),1001−1020,1999)に記載の方法に従い、合成を行った。
【0015】
まず、上記文献に従い、ダイヤモンドイド構造より構成される脂環式化合物より合成される、ダイヤモンドイド構造より構成される基を有するハロゲン化化合物を、濃硫酸および濃硝酸などの強酸中で、ギ酸と反応させ、ダイヤモンドイド構造にカルボキシ基を結合させることにより、ハロゲン原子およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物を得る。
【0016】
前記ダイヤモンドイド構造より構成される脂環式化合物としては、アダマンタン、ジメチルアダマンタン、トリメチルアダマンタン、ジアダマンチルエーテル、フェニルアダマンタン、フェノキシアフダマンタン、ビアダマンチル、テトラメチルビアダマンチルおよびジアマンタン、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、前記ハロゲン化化合物におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などを挙げることができる。
【0017】
次に、上記で得たハロゲン原子およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物と、ヒドロキシ芳香族化合物とを、フリーデルクラフツ反応により反応させ、ハロゲン原子をヒドロキシフェニル基で置換させることで、ダイヤモンドイド構造にヒドロキシフェニル基が結合した、カルボキシ基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するヒドロキシ芳香族化合物を得る。
【0018】
前記フリーデル−クラフツ反応において、溶媒としては、特には限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリルまたはニトロメタンなどが好ましいが、無溶媒で行ってもよい。溶媒の使用量としては、この反応に使用される原料に対して、0.5重量倍以上、50重量倍以下が好ましく、より好ましくは、0.5重量倍以上、10重量倍以下である。
【0019】
前記フリーデル−クラフツ反応において、触媒を用いても良く、そのような触媒としては、塩化アルミニウムおよび臭化アルミニウムなどのルイス酸触媒が好ましいが、無触媒で行ってもよい。触媒の使用量としては、前記ハロゲン化化合物に対して、0.05当量倍以上、10当量倍以下であることが望ましく、好ましくは、0.05当量倍以上、1当量倍以下、更に好ましくは、0.05当量倍以上、0.5当量倍以下である。
【0020】
反応温度としては、それぞれの化合物が有する反応の活性度によるため、特に限定しないが、−20℃以上、200℃以下が好ましく、無触媒で反応を行う場合は、100℃以上、200℃以下が好ましい。また、反応時間としては、1時間以上、100時間以下、より好ましくは、1時間以上、48時間以下である。
【0021】
上記ヒドロキシ芳香族化合物の、ハロゲン原子およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物に対する割合としては、目的のダイヤモンドイド構造より構成される基の導入数によるため、特に限定しないが、前記カルボン酸のハロゲン原子に対して1当量倍以上、20当量倍以下であることが望ましい。
【0022】
上記ヒドロキシ芳香族化合物としては、フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、クレゾール、ナフトール、ビナフトール、ナフタレンジオール、ヒドロキシビフェニル、ヒドロキシビフェニルエーテル、ジヒドロキシビフェニルおよびビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、などを挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0023】
次に、上記で得たカルボキシ基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するヒドロキシ芳香族化合物のヒドロキシ芳香族基を、硫酸および硝酸などのニトロ化剤を用いてニトロ化し、カルボキシ基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するニトロヒドロキシ芳香族化合物を得る。
【0024】
続けて、上記で得たニトロヒドロキシ芳香族化合物を、テトラヒドロフラン、エタノールおよびN,N−ジメチルホルムアミドなどの適当な溶媒に、分散または溶解させ、水素雰囲気下、パラジウム−活性炭もしくは白金−活性炭などの触媒で処理することにより、目的のアミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物を得ることができる。
このとき、反応温度としては、それぞれの化合物が有する反応の活性度によるため、特に限定しないが、10℃以上、100℃以下が好ましく、反応時間としては、10時間以上、100時間以下である。
【0025】
また、本発明のカルボン酸化合物誘導体の製造方法としては、例えば、以下のルートによって合成することができる。
【0026】
上記アミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物を合成する工程において、いずれの構造でも同様にして得られる、カルボキシ基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するニトロヒドロキシ芳香族化合物を、ヒドロキシピリジン、ヒドロキシキノリンおよびフェノール化合物などのヒドロキシ化合物と反応させ、エステル化してから、水素雰囲気下、室温で、パラジウム−活性炭または白金−活性炭などの触媒で処理することにより、アミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸誘導体が得られる。
【0027】
上記ヒドロキシ化合物としては、カルボキシ基の水素原子と置換してもよい有機基を有するヒドロキシ化合物が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アダマンタノールおよびシクロヘキサノールなどの有機基として脂肪族基を有するヒドロキシ化合物が挙げられ、フェノール、ヒドロキシピリジン、ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの有機基として芳香族基を有するヒドロキシ化合物などが挙げられる。
【0028】
上記で得られたアミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物およびその誘導体は、アミノ基とカルボキシ基またはカルボン酸エステル基を縮合反応させることにより、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体およびポリベンゾオキサゾール樹脂などへと変換することができる。また、前記アミノ基は、塩酸と塩を形成したアミン塩酸塩の形態で縮合反応に用いても構わない。
【実施例】
【0029】
以下に本発明を説明するために実施例を示すが、これによって本発明を限定するものではない。
【0030】
得られた化合物は、特性評価のため、質量分析および元素分析を行った。各特性の測定条件は、次の通りとした。
[試験方法]
(1)質量分析(MS):日本電子(株)製JMS−700型を用いてフィールド脱着法で測定した。
(2)元素分析:PERKIN ELMER社製2400型を用いて測定した。
(3)比誘電率:日本エス・エス・エム(株)製自動水銀プローブCV測定装置SSM495を用いて、温度22℃、湿度45%の雰囲気下において、下記で得られた測定用試料を熱硬化させて作製した皮膜(膜厚1μm)の比誘電率を測定した。
前記測定用試料は、まず、下記実施例で得たカルボン酸化合物またはカルボン酸化合物誘導体5g、N−メチルピロリドン20mLおよび攪拌子を、0.1Lフラスコに投入し、窒素気流下、100℃で24時間攪拌した後、反応液をメタノール0.3Lに投入した。析出固体をメタノール0.3Lで洗浄し、60℃で2日間減圧乾燥して得たものを測定用試料とした。
皮膜は、上記で得た測定用試料とN−メチルピロリドンからなるコーティングワニスを、スピンコート法により、シリコンウエハ上に塗布して、均一な膜厚の被膜を形成した後、150℃で10分間加熱乾燥させ、更に、窒素を流入して酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、350℃で60分間加熱したものを用いた。
【0031】
[実施例1]
(1)60%硝酸0.2L、濃硫酸2L、発煙硫酸1Lおよび攪拌子を3Lフラスコに投入し、続けて、1,3−ジブロモアダマンタン235g(0.8mol)およびギ酸221g(4.8mol)を投入し、30℃で4時間攪拌した。反応液を氷水10Lに投入し、析出固体を水3Lおよび10%水酸化ナトリウム水溶液3Lで洗浄した後、減圧乾燥することにより、3,5−ジブロモアダマンタン−1−カルボン酸84gを得た(収率31%)。
【0032】
(2)上記で得た3,5−ジブロモアダマンタン−1−カルボン酸84g(0.25mol)、フェノール350g(3.7mol)および攪拌子を1Lフラスコに投入し、窒素気流下、160℃で5時間攪拌した。続けて、フラスコ内部を減圧にし、未反応のフェノールを除去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、3,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸38gを得た(収率42%)。
【0033】
(3)上記で得た3,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸38g(0.1mol)、ジクロロメタン0.2Lおよび攪拌子を1Lフラスコに投入し、液温を10℃以下に保ちながら、60%硝酸32g(0.3mol)を30分間かけて滴下した。続けて、室温で3時間攪拌後、炭酸水素ナトリウム17g(0.2mol)および無水硫酸ナトリウム142g(1mol)を投入し、更に1時間攪拌した後、反応液を濾過した。溶媒を減圧除去して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、3,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸19g(収率40%)を得た。
【0034】
(4)上記で得た3,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸19g(0.04mol)、10%パラジウム活性炭2g(0.002mol)、テトラヒドロフラン57mLおよび攪拌子を0.2Lフラスコに投入し、水素雰囲気下、室温で24時間攪拌した。反応液を濾過して得た濾液を水1Lに投入し、析出個体を水0.5Lで2回洗浄することにより、目的の3,5−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸13g(収率79%)を得た。
以下に、外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、得られた化合物が目的物であることを示している。
外観:茶色固体
MS(FD)(m/z):394(M+)
元素分析:理論値(/%):C,70.03;H,6.64;N,7.10;O,16.22、実測値(/%):C,69.89;H,6.34;N,7.00
比誘電率:2.8
【0035】
[実施例2]
実施例1(1)において、1,3−ジブロモアダマンタン235g(0.8mol)を1−ブロモアダマンタン86g(0.4mol)に、実施例1(2)において、60%硝酸32g(0.3mol)を60%硝酸10g(0.1mol)とした以外は、実施例1と同様にして、5−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1,3−ジカルボン酸5gを得た。
以下に、外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、得られた化合物が目的物であることを示している。
外観:茶色固体
MS(FD)(m/z):331(M+)
元素分析:理論値(/%):C,65.24;H,6.39;N,4.23;O,24.14、実測値(/%):C,65.77;H,6.51;N,4.02
比誘電率:2.7
【0036】
[実施例3]
実施例1(1)において、1,3−ジブロモアダマンタン235g(0.8mol)を3,3’−ジブロモ−1,1’−ビアダマンチル171g(0.4mol)とした以外は、実施例1と同様にして、5,5’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸9gを得た。
以下に、外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、得られた化合物が目的物であることを示している。
外観:茶色固体
MS(FD)(m/z):572(M+)
元素分析:理論値(/%):C,71.31;H,7.04;N,4.89;O,16.76、実測値(/%):C,71.84;H,7.23;N,4.73
比誘電率:2.7
【0037】
[実施例4]
実施例1(3)で得た3,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸19g(0.04mol)、3−ヒドロキシピリジン4.17g(0.04mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物1.5g(0.008mol)、4−ジメチルアミノピリジン1g(0.008mol)、テトラヒドロフラン100mLおよび攪拌子を0.5Lフラスコに投入した。ここに、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド13g(0.06mol)およびテトラヒドロフラン13mLの溶液を投入し、室温で4時間攪拌した。反応液を濾過した後、溶媒を減圧除去して得た粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、3,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸−(3−ピリジル)エステル8g(収率36%)を得た。
次に、実施例1(4)において、3,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸19g(0.04mol)を3,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸−(3−ピリジル)エステル8g(0.015mol)とした以外は、実施例1(4)と同様にして、3,5−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸−(3−ピリジル)エステル6gを得た。
以下に、外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、得られた化合物が目的物であることを示している。
外観:茶色固体
MS(FD)(m/z):471(M+)
元素分析:理論値(/%):C,71.32;H,6.20;N,8.91;O,13.57、実測値(/%):C,70.56;H,6.53;N,8.47
比誘電率:2.8
【0038】
[比較例1]
実施例1(3)において、3,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン−1−カルボン酸38g(0.1mol)を4−ヒドロキシフタル酸19g(0.1mol)とした以外は、実施例1(3)および実施例(4)と同様にして、5−アミノ−4−ヒドロキシフタル酸10gを得た。
比誘電率:3.3
【0039】
以上から明らかな様に、本発明により提供されるカルボン酸化合物およびその誘導体は、低比誘電率である高分子の原料として好適に用いることができることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノヒドロキシフェニル基およびダイヤモンドイド構造より構成される基を有するカルボン酸化合物。
【請求項2】
前記カルボン酸化合物におけるカルボキシ基は、前記ダイヤモンドイド構造上に有するものである、請求項1記載のカルボン酸化合物。
【請求項3】
前記ダイヤモンドイド構造は、アダマンタン構造を最小単位として有する多環式構造を1つまたは2つ有するものである、請求項1乃至請求項2記載のカルボン酸化合物。
【請求項4】
前記カルボン酸化合物は、アミノヒドロキシフェニル基またはカルボキシ基のいずれかを2個以上有する、請求項1乃至3のいずれかに記載のカルボン酸化合物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のカルボン酸化合物におけるカルボキシ基の水素原子が、有機基で置換された構造を有する、カルボン酸誘導体。