説明

カルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルの製造方法

【課題】高い水膨潤性を有する新規な有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供する。
【解決手段】カルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機高分子(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成している有機無機複合ヒドロゲルの製造方法であって、水膨潤性粘土鉱物(B)の共存下、加水分解性を有する(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーを重合させて得られる有機無機複合ヒドロゲルを、苛性アルカリにより加水分解して、有機高分子(A)中のアミド基又はエステル基の少なくとも一部をカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基に変換することを特徴とするカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生用品、農業、食品、医療、建築、土木、機械、運輸、電子部材、家庭用品、縫製などの分野で用いられる高分子ゲルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高吸水性樹脂が紙おむつや生理用品といった衛生材料の他、医療、食品、園芸、建築など多くの分野で広く使われている。何れの場合も高い水膨潤率と高いゲル強度が求められている。従来公知の吸水性樹脂としては、例えばデンプンーアクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、デンプンーアクリル酸グラフト共重合体の中和物、酢酸ビニルーアクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリルもしくはアクリルアミド系共重合体の加水分解物、ポリアクリル酸塩系架橋体などが挙げられる。このような高吸水性樹脂のうち、例えば、架橋ポリアクリル酸ナトリウム樹脂(PAc)は自重の数百倍から1000倍の水を吸収する性質を有する。しかし、ポリアクリル酸ナトリウムをわずかに架橋したもので、吸水後の力学特性が弱く、形が保持しにくい欠点がある一方、吸水力も十分高いとは言いにくい。近年、水に均一分散している粘土鉱物の共存下に(メタ)アクリルアミド誘導体の重合を行わせることによって、数百kPa引張破断強度の有機無機複合ヒドロゲルが得られることが報告されている(特許文献1)。この有機無機複合ヒドロゲルは水を吸収し、大きく膨潤するだけでなく、吸水後の形が保持できる特徴を有する。しかしながら、市販の高吸水樹脂と比べて、吸水率がまた低く、改良の余地がある。
【0003】
また、特許文献2には、粘土鉱物の共存下でアクリルアミド系モノマーの重合により製造される有機無機複合ヒドロゲルに関する技術が開示され、該重合体にはその他のモノマーとしてスルホン酸基やカルボキシル基を有するモノマーを共重合できることが記載されている。しかしながら、該文献にはそのようなモノマーを用いた有機無機複合ヒドロゲルの安定した製造方法の詳細については開示されておらず、また、高い水膨潤比率を示すためにスルホン酸基やカルボキシル基を有するモノマーを高比率で共重合することは困難であった。更に、高い水膨潤比率を示すゲルを得るためにはゲルを形成する樹脂がカルボン酸塩構造やカルボキシアニオン構造の基を有することが必要であるが、特許文献2にはそのような技術は開示されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2002-053629号公報
【特許文献2】特開2006-169314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い水膨潤性を有する新規な有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、水膨潤性粘土鉱物の共存下、加水分解性モノマーであるアクリルアミド又は(メタ)アクリル酸エステルを重合させて得られる有機無機複合ヒドロゲルを加水分解させて、極めて高い水膨潤性のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルを製造することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、カルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機高分子(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成している有機無機複合ヒドロゲルの製造方法であって、水膨潤性粘土鉱物(B)の共存下、加水分解性を有する(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーを重合させて得られる有機無機複合ヒドロゲルを、苛性アルカリにより加水分解して、有機高分子(A)中のアミド基又はエステル基の少なくとも一部をカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基に変換することを特徴とするカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記の製造方法により得られるカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルを提供するものである。
【0009】
更に、本発明は、カルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機高分子(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成していることを特徴とする有機無機複合ヒドロゲルを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、高密度のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルが容易に得られ、これまでの材料からは想像できない極めて高い水膨潤性を有する。市販の高吸水性樹脂で最も優れた吸水性を持つ架橋アクリル酸ナトリウムですら自重千倍の水を吸収するのに対し、本発明のヒドロゲルでは、ゲル固形分の2万倍以上の水を吸収することが可能であり、これまでの高吸水樹脂の常識を打ち破る材料と言える。従って、新規な高吸水性樹脂材料として、衛生用品(紙おむつ、生理ナプキンなど)を始め、吸水材料、保水剤、脱水剤、結露防止剤などの用途に広く用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で加水分解に用いられる有機無機複合ヒドロゲルの有機高分子は、加水分解性モノマーを含む慣用の水溶性ビニル系モノマーのラジカル重合によって形成され、加水分解性モノマーの単独重合又は加水分解性モノマーと水溶性ビニル系モノマー、特に(メタ)アクリルアミド誘導体との共重合であってもよい。これらのモノマーから得られた重合体は、水に分散した水膨潤性粘土鉱物(B)と水素結合やイオン結合等の非共有結合により三次元網目を形成できることが好ましい。
【0012】
ここでいう加水分解性モノマーとは、アミド結合又はエステル結合を持つ水溶性ビニル系モノマーであり、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。その具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0013】
上記加水分解性モノマーと共重合する水溶性ビニル系モノマーとしては、実質上加水分解を受けないモノマーであることが必要である。そのようなモノマーとしては、アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体が特に好ましい。その具体例としては、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-シクロプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-シクロプロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N-アクリロイルピロリディン、N-アクリロイルピペリディン、N-アクリロイルメチルホモピペラディン、N-アクリロイルメチルピペラディンなどが例示される。その中に、水溶液中でのポリマー物性(親水性と疎水性)がLCST(下限臨界共溶温度)を持つN-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミドなどは機能性の観点から好ましく用いられる。
【0014】
加水分解に用いられる有機高分子のモノマー組成、即ち、加水分解性モノマーとアルキル置換アクリルアミドとの共重合比率は、用いる加水分解性モノマーの種類によって適宜設定する。アクリルアミドを使用する場合、モノマー全体に対して0.1〜100モル%で広範囲に設定することができる。アクリルアミドの含有率が高くなるにつれ、加水分解することによってカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基の密度が上がり、ヒドロゲルの水膨潤性は著しく増加する。一方、(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合、その共重合比率としては、モノマー全体に対して0.1〜70モル%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜60モル%であり、特に好ましくは10〜50モル%である。0.1モル%未満では、加水分解後のヒドロゲルの水膨潤性は不十分であり、70モル%を超えると、得られたヒドロゲルの力学強度が大きく低下する恐れがある。
【0015】
本発明に用いる水膨潤性粘土鉱物(B)は、水に膨潤し均一分散可能なものであり、特に好ましくは水中で分子状(単一層)またはそれに近いレベルで均一分散可能な層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。これらの粘土鉱物は、水溶性有機高分子のモノマーが重合する前の水溶液中で微細、且つ均一に分散していることが必要であり、特に水溶液中に単位層レベルで分散していることが望ましい。ここで、水溶液中に粘土鉱物の沈殿となるような粘土鉱物凝集体がないことが必要であり、より好ましくは1〜10層程度のナノオーターの厚みで分散しているもの、特に好ましくは1又は2層程度の厚みで分散しているものである。
【0016】
本発明の有機無機複合ヒドロゲルにおける水溶性有機高分子(A)と水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物(B)との比率は、(A)と(B)とからなる三次元網目を有する有機無機ヒドロゲルが調製されれば良く、また用いる(A)や(B)の種類によっても異なり必ずしも限定されないが、ヒドロゲル合成の容易さや均一性の点からは、好ましくは前記水膨潤性粘土鉱物(B)と前記水溶性有機高分子(A)の質量比((B)/(A))は0.01〜10である。また、より好ましくは(B)/(A)の質量比が0.01〜5、特に好ましくは0.03〜3である。
【0017】
(B)/(A)の質量比が0.01未満では、本発明のヒドロゲルの伸縮性が十分でない場合が多く、10を越えては、得られたヒドロゲルが硬くなるなどの製造上の問題が生じる場合がある。一方、(A)+(B)に対する(C)水の比率は、重合過程での水量調整、もしくはその後の膨潤や乾燥により、目的に応じて広い範囲で任意に設定できる。
【0018】
本発明のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルは、以下の方法で製造できる。有機高分子(A)のモノマーと、水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物(B)と、水(C)とを含む均一溶液を調製後、層状剥離した(B)の共存下に(A)のモノマーの重合を行わせる。重合過程で(A)のモノマーと粘土鉱物(B)との相互作用により(B)がモノマーの架橋剤の働きをして、(A)と(B)との分子レベルでの複合化が達成され、三次元網目形成によりゲル化した加水分解性モノマー含有有機無機複合ヒドロゲルが得られる。次に、このヒドロゲルを苛性アルカリで加水分解させて、目的のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルを製造する。
【0019】
具体的には、水中に微細分散した(B)の水溶液に、加水分解性モノマーとアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体を加え、窒素バブリングする。次に反応系を低温にして重合触媒(TEMED)とラジカル重合開始剤(KPS水溶液)を添加させ、所定温度と時間で重合を行わせる。得られたヒドロゲルを水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カルシウム水懸濁液に浸して、所定温度と時間で加水分解をした後、酸中和又は/及び水洗浄により、過剰のアルカリを除去させ、本発明のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルを得られる。
【0020】
本発明において加水分解性モノマー含有有機無機複合ヒドロゲルのラジカル重合反応は、ラジカル重合開始剤及び/又は放射線照射など公知の方法により行わせることができる。ラジカル重合開始剤及び触媒としては、公知慣用のラジカル重合開始剤及び触媒を適時選択して用いることができる。好ましくは水分散性を有し、系全体に均一に含まれるものが用いられる。
【0021】
具体的には、重合開始剤として、水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性のアゾ化合物、例えば、VA-044, V-50, V-501の他、ポリエチレンオキシド鎖を有する水溶性のラジカル開始剤などが挙げられる。一方、触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンやβ-ジメチルアミノプロピオ二トリルなどが用いられる。
【0022】
重合温度は、開始剤の種類にあわせて0℃〜100℃の範囲で設定できる。重合時間も他の重合条件によって異なり、一般に数十秒〜数十時間の間で行われる。
【0023】
アルカリ加水分解においては通常の強塩基が用いられる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどが挙げられる。実用性や水溶性の観点から、水酸化ナトリウムが特に好ましい。アルカリの使用量は、加水分解性モノマーの含有比率に応じて適宜使用されるが、通常、理論量より過剰量で使用される。加水分解温度は30℃〜100℃、好ましくは50℃〜90℃であり、温度が低すぎると加水分解反応が良好に進行せず、逆に温度が高すぎるとヒドロゲルの形状が保持できない場合があり、好ましくない。また、感温性モノマー、例えばN-イソプロピルアクリルアミドやN,N-ジエチルアクリルアミドなどを用いて得られたヒドロゲルは、加水分解時に収縮して含水率が大きく低下したため、加水分解がなかなか進行しない問題を生じる。この場合、水と相溶する有機溶媒の添加が有効である。例えば、メタノール、エタノール、アセトン、THFなどが挙げられる。加水分解に用いるアルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウムの濃度は0.1N〜5Nが好ましく、特に好ましくは1Nである。
【0024】
本発明の加水分解性モノマーを有する有機無機複合ヒドロゲルは、有機無機複合ヒドロゲルの特徴を保持しており、従来の有機架橋ゲルと比べて、優れた力学物性を示している。例えば、強度、伸び、タフネスなどの力学物性において、有機架橋ゲルよりすべて優れている。このような優れた力学物性を持つ有機無機複合ヒドロゲルはアルカリ加水分解された後、水膨潤性が著しく増加したにもかかわらず、ヒドロゲルの形が崩れにくい特徴を有する。加水分解性モノマーがアクリルアミドである場合、その共重合比率は全組成範囲に任意に設定することが出来る。また、加水分解性モノマーがアクリレート、例えば、2-メトキシエチルアクリレートである場合も、その共重合比率は70モル%までに広範囲に設定することが可能である。加水分解することにより、アクリルアミドのアミド基又は2-メトキシエチルアクリレートのエステル基はカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基に変換される。従って、加水分解性モノマーの共重合比率を設定することによって、加水分解して得られるカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基の密度をコントロールが出来て、その有機無機複合ヒドロゲルの水膨潤性を自由に制御することができる。
【0025】
本発明のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルは、これまでの材料からは想像できない極めて高い水膨潤性を有する。市販の高吸水性樹脂で最も優れた吸水性を持つ架橋アクリル酸ナトリウムですら自重千倍の水を吸収するのに対し、本発明のヒドロゲルでは、ゲル固形分の2万倍以上の水を吸収することが可能であり、これまでの高吸水樹脂の常識を打ち破る材料と言っても過言ではない。このような高い水膨潤性を有することは有機無機複合ヒドロゲルの特異なネットワーク構造に由来すると考えられる。即ち、層状剥離したクレイ層が水媒体中にnmスケールで均一に分散し、多官能架橋剤として働く。隣接するクレイ層間を多数の屈曲高分子鎖が連結することで、架橋点間距離が極めて長いネットワークを形成している。水膨潤する際、クレイ層間の屈曲高分子鎖が伸びて、より多くの水を包み込むことができるため、高い水膨潤性が発現される。
【0026】
なお、水膨潤性の高低は、水で膨潤した状態のヒドロゲルの質量(Wgel)をゲルの固形分質量(Wdry)で除した水膨潤比率(Wgel)/(Wdry)により判断でき、(Wgel)/(Wdry)が1000〜30000であることが好ましい。また、(Wgel)/(Wdry)が2200〜25000であることがより好ましい。
【0027】
本発明のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルには、低温側で透明及び/又は体積膨潤状態にあり、且つ高温側で不透明及び/又は体積収縮状態となる臨界温度(Tc)を有し、Tcを境にした上下の温度変化により透明性や体積を可逆的に変化できる特徴を有するものが含まれる。このような有機無機複合ヒドロゲルは有機モノマーとして水溶液中でLCST(下限臨界共溶温度)を示す感温性モノマー、例えばN-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミドを用いて調製できる。加水分解性モノマーと共重合する場合、感温性モノマーのLCSTが消失する傾向がある。高い水膨潤性と感温性を併せ持つため、加水分解性モノマーの共重合比率が30モル%以下に抑えることが好ましく、より好ましくは20モル%以下である。
【0028】
本発明のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルは優れた刺激応答性を示している。例えば、酸性又は塩基性水溶液の中にヒドロゲルが大きく収縮することに対し、中性の水の中にヒドロゲルが大きく膨潤する。この膨潤と収縮はPHの変化によって繰り返すことができる。この特徴を生かして、ドラックデリバリーシステム(DDS)での応用展開が期待される。
【0029】
また、本発明には、得られたカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルを慣用の方法で乾燥し、溶媒の一部もしくは全部を除去した高分子ゲル複合体の乾燥物を得ることが出来る。得られた乾燥体を更に粉砕、分級、成形などを行うことによって、球状、鱗片状、粉末状、フィルム状、繊維状、ペレット状などの形態を取ることができる。このような各種形状の有機無機複合ヒドロゲル乾燥物は、水又は水と混合する有機溶媒などの溶媒を再び含ませることにより、可逆的にカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルを再生することができる。
【0030】
本発明のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルの優れた水膨潤性を有するため、液吸収、増粘効果、結露防止、保水、薬効剤の保持・徐放、刺激応答ゲルなどの機能を利用した様々な用途に使用でき、その具体例を列挙すれば、次の通りである。
(1)衛生用品、例えば紙おむつ用、生理用ナプキン、母乳バッド
(2)農園芸用途、例えば種子の発芽・成長助材(野菜、花等の種子の播種助材、種子の発芽促進材、種子コーティング剤)、植物の成長培地用(育苗床、土壌保水、土壌改良、砂漠緑化、菌種などの培養基材)、植物への薬剤投与方法(樹幹への薬剤投与デバイス、農薬徐放剤)
(3)食品分野用、例えば鮮度保持剤、ドリップ吸収剤、食品の吸水剤、結露防止シート、保冷剤
(4)メディカル分野、例えば医療用材料(創傷被覆材、コンタクトレンズ、高血栓性材料、人工皮膚)、薬剤保持・徐放(錠剤(徐放性薬剤)、腸溶性薬剤、外用軟膏剤)
(5)化粧品、例えば保湿性に優れたクリーム又は乳液などの保湿剤、抱水性ゲル状のローション、皮膜型バック剤
(6)土木・建築用、例えばシーリング材(止水材)、結露防止建築資材、法面吹付用保水材、コンクリート養生材
(7)その他、例えば芳香消臭剤、廃液吸収剤、石油回収剤、高吸水繊維、油中水分除去、水膨張性塗料
【実施例】
【0031】
本発明は、次の実施例及び合成例によって更に具体的に説明する。
【0032】
(測定条件)
<破断強度の測定>
以下の合成例及び比較例において、破断強度を測定するための引張り試験は、島津製作所(株)製卓上型万能試験機AGS-Hを用いて、未精製の丸棒状のヒドロゲル(直径=5.5mm)をチャック部での滑りのないようにして引っ張り試験装置に装着し、標点間距離=30mm、引っ張り速度=100mm/分にて測定を行った。
<水膨潤度の測定>
水膨潤度は直径5.5mmの丸棒状ヒドロゲル約0.2gを大量の水の中に浸して、その質量増加の時間依存性から求めた。
<FT-IRの測定>
フーリェ変換赤外吸収スペクトル(FT-IR)はジャスコエンジニアリング(株)製 FT-IR 4200を用い、4000cm-1〜400cm-1の範囲で測定を行った。
【0033】
(試薬)
・粘土鉱物
XLG: 水膨潤性合成ヘクトライト(商標ラポナイトXLG、日本シリカ株式会社製)
XLS: 6%ピロリン酸ナトリウム含有水膨潤性合成ヘクトライト(商標ラポナイトXLS、日本シリカ株式会社製)
・苛性アルカリ
NaOH: 1N NaOH水溶液(和光純薬工業株式会社製)
Ca(OH)2: 水酸化カルシウム(和光純薬工業株式会社製)
・有機溶媒
EtOH: エタノール(和光純薬工業株式会社製)
・モノマー
DMAA: ジメチルアクリルアミド(和光純薬工業株式会社製)、活性アルミナを用いて重合禁止剤を取り除いてから使用した。
NIPAM: N-イソプロピルアクリルアミド(興人株式会社製)、トルエンとヘキサンの混合溶媒を用いて再結晶し無色針状結晶に精製してから用いた。
ACMO: アクリロイルモルフォリン(興人株式会社製)、活性アルミナを用いて重合禁止剤を取り除いてから使用した。
DEAA: ジエチルアクリルアミド(興人株式会社製)、活性アルミナを用いて重合禁止剤を取り除いてから使用した。
AAm: アクリルアミド(和光純薬工業株式会社製)、エタノールとヘキサンの混合溶媒を用いて再結晶し無色燐片状結晶に精製してから用いた。
MEA: 2-メトキシエチルアクリレート(和光純薬工業株式会社製)、活性アルミナを用いて重合禁止剤を取り除いてから使用した。
HOA: 2-ヒドロキシエチルアクリレート(和光純薬工業株式会社製)、試薬そのまま使用した。
DMAEA: ジメチルアミノエチルアクリレート(和光純薬工業株式会社製)、試薬そのまま使用した。
AM: メチルアクリレート(和光純薬工業株式会社製)、試薬そのまま使用した。
BIS: N,N'-メチレンビスアクリルアミド(関東化学株式会社製)、試薬そのまま使用した。
・重合開始剤
KPS: ペルオキソ二硫酸カリウム(関東化学株式会社製)、KPS/水=0.2/10(g/g)の割合で純水で希釈し、水溶液にして使用した。
・重合触媒
TEMED: N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(和光純薬工業株式会社製)
【0034】
(合成例1と比較例1)
平底ガラス容器に、純水34.2gを攪拌しながら、1.44gのXLGを添加して無色透明の溶液を調製した。これにDMAA 3.24gとAAm 0.36g(モノマー合計に対して13モル%)を加え、15分間窒素バブリングした。続いて、氷浴下、KPS水溶液1.8g、TEMED 29μlを順次攪拌して加え、均一溶液を得た。得られた均一溶液を底の閉じた内径5.5mm,長さ150mmのガラス管容器に酸素に触れないようにして移した後、上部を密栓し、20℃で静置重合を行った。24時間後にガラス管容器内に伸縮性、強靭性のある均一な棒状のヒドロゲルが生成された。ヒドロゲルは大量の水に浸して精製した。得られた精製ヒドロゲルを100℃、減圧下にて乾燥して水分を除いたヒドロゲル乾燥体を得た。ゲル乾燥体を20℃の水に浸漬することにより、乾燥前と同じ形状の伸縮性のあるヒドロゲルに戻ることが確認された。また、ゲル乾燥体の熱重量分析(セイコー電子工業株式会社製TG-DTA220:空気流通下、10℃/分で600℃まで昇温)を行い、(B)/(A)=0.4(質量比)を得た。
【0035】
以上から、本実施例で得られたゲルは、有機高分子の合成において架橋剤を添加していないにもかかわらず、均一なヒドロゲルとなること、ヒドロゲルから水分を除いて得られるゲル乾燥体を水に浸漬することにより再びもとの形状のヒドロゲルに戻ることなどから、有機高分子と粘土鉱物が分子レベルで複合化した三次元網目が水中で形成されていると結論された。
【0036】
未精製の丸棒状のヒドロゲルの引っ張り試験を行い、その結果を図1に示す。また、粘土鉱物の変わりに有機架橋剤を用いて、比較例1の有機架橋ゲルを合成した。比較例1のゲルが極めて脆弱で引っ張り試験を行おうとしたが、チャックに装着前に殆どのサンプルが壊れた。また、チャックに軽く装着したものでも試験直後に破断し、物性値は得られなかった。これに対して、図1に示したように、合成例1の有機無機複合ヒドロゲルは、従来の有機架橋ゲルと比べて、強度、伸び及び弾性率がすべて優れていることがわかった。
【0037】
(合成例2〜25)
表1及び表2に示した組成で、合成例1と同様にして、合成例2〜25の加水分解性モノマー含有有機無機複合ヒドロゲルを合成した。図1〜7に示したように、これらのヒドロゲルは、いずれも高い破断強度と伸びを有しており、力学物性が優れていることが明らかである。
【0038】
(比較合成例26〜29)
表2に示した組成で、比較例の原料として、加水分解性モノマーを用いない有機無機複合ヒドロゲルを合成した。
【0039】
(実施例1と比較例2,7)
合成例1のゲル3.8gを1N水酸化ナトリウム水溶液に浸し、60℃で10時間加熱処理を行った。得られたカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基含有有機無機ヒドロゲルを50mlの水中に1時間含浸洗浄した。含浸洗浄を3回繰り返して、過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次に、約0.2g原料ゲル相当分の加水分解したヒドロゲルを大量の水の中に浸し、膨潤実験を行った。膨潤実験は10〜15時間毎に水を交換しながら、ヒドロゲルの重量増加を測った。得られた水膨潤度を図8に示した。
【0040】
加水分解処理を行なわない有機無機複合ヒドロゲル(合成例5のゲル)を比較例2として実施例1のゲルと同様に膨潤実験を行なった。膨潤度を示すグラフを図17に示した。また、アクリルアミドを用いないで製造した比較合成例26のゲルを実施例1のゲルと同様に加水分解処理し、膨潤実験を行なった(比較例7)(図18)。比較例2及び比較例7のゲルと比較して、実施例1のゲルは水膨潤度が大幅に増加していることが判る。
【0041】
なお、比較例7の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、原料ゲルと比較して、FT-IRスペクトルが全く変化せず、加水分解していないことが確認された。
【0042】
実施例1のゲル(合成例1のゲルを加水分解したゲル)のFT-IRスペクトルデータを図19に、比較例2のゲル(合成例5のゲル)のFT-IRスペクトルデータを図20に、比較例7における加水分解前後のゲル(比較合成例26のゲルとその加水分解処理後のゲル)のFT-IRスペクトルデータを図21及び図22にそれぞれ示す。図に示したように、実施例1の加水分解処理したゲルのFT-IRスペクトルでは、比較例2と比べて、新たに1570cm-1にカルボン酸ナトリウムのカルボニル吸収が観測され、原料ゲルのアミド基が加水分解によりカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基に変換したことがわかった。
【0043】
(比較例11)
内径25mm,長さ80mmの平底ガラス容器に、純水19gと0.64gのXLGを攪拌して無色透明の溶液を調製した。これにDMAA 1.9gを加え、15分間窒素バブリングした。続いて、氷浴下、KPS水溶液0.2gを攪拌して加えた直後に、AAc 0.2g(モノマー合計に対して14mol%)と10wt%のNaOH水溶液2gとの反応溶液を加えた。AAcとNaOH水溶液との反応溶液を添加している途中に、溶液は直ちに著しく増粘し、AAcとNaOH水溶液との反応溶液を均一に分散できなかった。
【0044】
(実施例2〜9)
表3に示した組成及び加水分解条件で実施例1と同様にして、実施例2〜9のゲルを合成し、その水膨潤度を求めた(図8,9)。図に示したように、アクリルアミドの含有率の増加につれ、加水分解処理後のヒドロゲルの水膨潤度が著しく増加した。また、実施例4の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、実施例1の加水分解したゲルと比較して、1570cm-1のカルボン酸ナトリウムのカルボニル吸収が増大することを確認した(図23)。
【0045】
(実施例10〜12,比較例3,8)
表3に示した組成及び加水分解条件で実施例1と同様にして、実施例10〜12のゲルを合成し、その水膨潤度を求めた(図10)。図に示したように、アクリルアミドの含有率の増加につれ、加水分解処理後のヒドロゲルの水膨潤度が著しく増加した。加水分解処理せずの有機無機複合ヒドロゲルの比較例3(合成例12のゲル)(図17)と、また、アクリルアミドを用いずに合成した比較合成例27のゲルを加水分解処理した有機無機ヒドロゲルの比較例8(図18)と比べて、実施例10〜12のゲルの水膨潤度が大幅に増加した。なお、比較例8の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、原料ゲルと比較して、FT-IRスペクトルが全く変化せず、加水分解していないことが確認された。
【0046】
(実施例13〜15,比較例4,9)
表3に示した組成及び加水分解条件で実施例1と同様にして、実施例13〜15のゲルを合成し、その水膨潤度を求めた(図11)。図に示したように、アクリルアミドの含有率の増加につれ、加水分解処理後のヒドロゲルの水膨潤度が著しく増加した。加水分解処理せずの有機無機複合ヒドロゲルの比較例4(合成例15のゲル)(図17)と、また、アクリルアミドを用いずに合成した比較合成例28のゲルを加水分解処理した有機無機ヒドロゲルの比較例9(図18)と比べて、実施例13〜15のゲルの水膨潤度が大幅に増加した。また、実施例13の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、原料ゲルと比較して、新たに1565cm-1にガルボン酸ナトリウムのカルボニル吸収が観測され、原料ゲルのアミド基が加水分解によりカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基に変換したことがわかった(図24)。
なお、比較例9の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、原料ゲルと比較して、FT-IRスペクトルが全く変化せず、加水分解していないことが確認された。
【0047】
(実施例16〜19,比較例5,10)
表3に示した組成及び加水分解条件で実施例1と同様にして、実施例16〜19のゲルを合成し、その水膨潤度を求めた(図12,13)。図に示したように、アクリルアミドの含有率の増加につれ、加水分解処理後のヒドロゲルの水膨潤度が著しく増加した。加水分解処理せずの有機無機複合ヒドロゲルの比較例5(合成例19のゲル)(図17)と、また、アクリルアミドを用いずに合成した比較合成例29のゲルを加水分解処理した有機無機ヒドロゲルの比較例10(図18)と比べて、実施例16〜19のゲルの水膨潤度が大幅に増加した。実施例19のゲルの水膨潤度は20057であった。
【0048】
また、実施例18の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、原料ゲルと比較して、新たに1570cm-1にガルボン酸ナトリウムのカルボニル吸収が観測され、原料ゲルのアミド基が加水分解によりカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基に変換したことがわかった(図25)。
【0049】
なお、比較例10の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、原料ゲルと比較して、FT-IRスペクトルが全く変化せず、加水分解していないことが確認された。
【0050】
(実施例20〜22,比較例6)
表3に示した組成及び加水分解条件で実施例1と同様にして、実施例20〜22のゲルを合成し、その水膨潤度を求めた(図14)。図に示したように、2-メトキシエチルアクリレートの含有率の増加につれ、加水分解処理後のヒドロゲルの水膨潤度が著しく増加した。加水分解処理せずの有機無機複合ヒドロゲルの比較例6(合成例22のゲル)(図17)と比べて、実施例20〜22の水膨潤度が大幅に増加した。また、実施例20の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、原料ゲルと比較して、1730cm-1のアクリレートのカルボニル吸収が消失し、新たに1570cm-1にガルボン酸ナトリウムのカルボニル吸収が観測され、原料ゲルのエステル基が加水分解によりカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基に変換したことがわかった(図26)。
【0051】
(実施例23〜26)
表3に示した組成及び加水分解条件で実施例1と同様にして、実施例23〜26のゲルを合成し、その水膨潤度を求めた(図15)。図に示したように、アクリレートの含有によって、加水分解処理後のヒドロゲルの水膨潤度が著しく増加した。実施例23の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、原料ゲルと比較して、1730cm-1のアクリレートのカルボニル吸収が消失し、新たに1570cm-1にガルボン酸ナトリウムのカルボニル吸収が観測され、原料ゲルのエステル基が加水分解によりカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基に変換したことがわかった(図27)。
【0052】
(実施例27,28)
水酸化ナトリウム水溶液の変わりに水酸化カルシウムの水懸濁液を使い、表3に示した組成及び加水分解条件で実施例1と同様にして、実施例27,28のゲルを合成し、その水膨潤度を求めた(図16)。図に示したように、加水分解性モノマーを用いた共重合によって、加水分解処理後のヒドロゲルの水膨潤度が著しく増加した。実施例27,28の加水分解処理したヒドロゲルのFT-IRを測定したところ、原料ゲルと比較して、新たに1570cm-1にガルボン酸カルシウムのカルボニル吸収が観測され、水酸化カルシウムの水懸濁液でも加水分解が進行したことがわかった(図28,29)。
【0053】
(実施例29)
実施例16のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基含有有機無機複合ヒドロゲル1.5g(水膨潤度Wgel/Wdry=94)を100mlの50℃の水に15時間浸し、ヒドロゲルは白濁して収縮した。次に収縮したヒドロゲルを25℃の水に15時間浸し、ヒドロゲルが膨潤して透明状態に戻った。更にこの膨潤したゲルを50℃の水に浸すと、ヒドロゲルが再び白濁して収縮した。このように水温を変えることによって、ヒドロゲルが応答して、図30に示したように膨潤と収縮を繰り返した。
【0054】
(実施例30)
実施例17のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基含有有機無機複合ヒドロゲル2.6g(水膨潤度Wgel/Wdry=455)を50mlの0.1N水酸化ナトリウム水溶液(PH=11)に15時間浸し、ヒドロゲルが収縮した。次に収縮したヒドロゲルを純水(PH=7)に15時間浸し、ヒドロゲルが膨潤した。更にこの膨潤したゲルを水酸化ナトリウム水溶液に浸すと、ヒドロゲルが再び収縮した。このようにPHを変えることによって、ヒドロゲルが応答して、図31に示したように膨潤と収縮を繰り返した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】合成例1,2,3,4で得られたヒドロゲルの破断強度と伸びを示す図である。
【図2】合成例5,6,7,8,9で得られたヒドロゲルの破断強度と伸びを示す図である。
【図3】合成例10,11,12で得られたヒドロゲルの破断強度と伸びを示す図である。
【図4】合成例13,14,15で得られたヒドロゲルの破断強度と伸びを示す図である。
【図5】合成例16,17,18,19で得られたヒドロゲルの破断強度と伸びを示す図である。
【図6】合成例20,21,22で得られたヒドロゲルの破断強度と伸びを示す図である。
【図7】合成例23,24,25で得られたヒドロゲルの破断強度と伸びを示す図である。
【図8】実施例1,2,3,4,5で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図9】実施例6,7,8,9で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図10】実施例10,11,12で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図11】実施例13,14,15で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図12】実施例16,17で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図13】実施例18,19で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図14】実施例20,21,22で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図15】実施例23,24,25,26で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図16】実施例27,28で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図17】比較例2,3,4,5,6で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図18】比較例7,8,9,10で得られたヒドロゲルの水膨潤度を示す図である。
【図19】実施例1で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図20】比較例2で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図21】比較合成例26で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図22】比較例7で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図23】実施例4で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図24】実施例13で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図25】実施例18で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図26】実施例20で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図27】実施例23で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図28】実施例27で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図29】実施例28で得られたヒドロゲル乾燥体のFT-IRスペクトルである。
【図30】実施例29で得られたヒドロゲルの温度応答性を示す図である。
【図31】実施例30で得られたヒドロゲルのPH応答性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機高分子(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成している有機無機複合ヒドロゲルの製造方法であって、水膨潤性粘土鉱物(B)の共存下、加水分解性を有する(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーを重合させて得られる有機無機複合ヒドロゲルを、苛性アルカリにより加水分解して、有機高分子(A)中のアミド基又はエステル基の少なくとも一部をカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基に変換することを特徴とするカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
【請求項2】
前記水膨潤性粘土鉱物(B)と前記有機高分子(A)の質量比((B)/(A))が0.01〜10である請求項1に記載のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
【請求項3】
前記加水分解性を有する(メタ)アクリル酸エステルが、2-メトキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート又はメチルアクリレートである請求項1又は2に記載のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
【請求項4】
前記有機高分子(A)中の加水分解性を有するアクリルアミドの共重合比率が0.1〜100モル%である請求項1〜3のいずれか一つに記載のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
【請求項5】
前記有機高分子(A)中の加水分解性を有するアクリル酸エステルの共重合比率が0.1〜70モル%である請求項1〜3のいずれか一つに記載のカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られるカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機無機複合体ヒドロゲル。
【請求項7】
カルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造の基を有する有機高分子(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成していることを特徴とする有機無機複合ヒドロゲル。
【請求項8】
水で膨潤した状態のヒドロゲルの質量(Wgel)をゲルの固形分質量(Wdry)で除した水膨潤比率(Wgel)/(Wdry)が1000〜30000である請求項7に記載の有機無機複合ヒドロゲル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−270048(P2009−270048A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123257(P2008−123257)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】