説明

カルボン酸誘導体またはその塩

【課題】EP1受容体が関与する疾患、特に過活動膀胱に伴う頻尿・尿意切迫感や尿失禁,膀胱炎,間質性膀胱炎,前立腺炎などの下部尿路疾患の治療薬に用いることができる化合物の提供。
【解決手段】
ベンゼン環が縮合した二環式へテロ環を有することを特徴とするカルボン酸誘導体またはその塩が強力なEP1受容体拮抗作用を有することを見出した。以上のことからこれらのカルボン酸誘導体またはその塩はEP1受容体が関与する疾患、特に過活動膀胱に伴う頻尿・尿意切迫感や尿失禁,膀胱炎,間質性膀胱炎,前立腺炎などの下部尿路疾患の治療薬に用いることができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、特に下部尿路疾患、疼痛、癌等の治療剤として有用なカルボン酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
過活動膀胱は失禁の有無にかかわらず尿意切迫感を訴える病態であり、通常頻尿および夜間頻尿を伴う(非特許文献1)。現在その治療には主に抗コリン薬が使用され、一定の治療成績を示している。しかし一方で、口渇、便秘、かすみ目といった副作用の発現も知られているほか、尿閉の危険性もあるため、前立腺肥大患者や高齢者には使いづらいことが報告されている。また、抗コリン治療で有効性を示さない患者の存在も知られている。以上のことから、過活動膀胱に対する新規機序の薬剤への期待は大きい。
【0003】
プロスタグランジンE2(PGE2)はアラキドン酸を前駆物質とする生体内活性物質であり、G蛋白共役型受容体であるEP1、EP2、EP3およびEP4の4種類のサブタイプを介して生体の機能調節に関与することが知られている。
PGE2の膀胱内注入がヒトで強い尿意切迫感と膀胱容量減少をきたすこと(非特許文献2)、PGE2の膀胱内注入がラットの膀胱容量を減少させることが知られており(非特許文献3)、PGE2が下部尿路機能に影響する可能性が示唆されている。近年、脊髄損傷モデルラットに対するEP1受容体拮抗剤の投与が排尿機能改善に有用であるとの報告がなされていることから(非特許文献4)、EP1受容体拮抗剤は過活動膀胱に伴う頻尿・尿意切迫感や尿失禁、膀胱炎、間質性膀胱炎、前立腺炎などの下部尿路疾患治療薬として有用であると考えられる。
【0004】
加えて、EP1受容体拮抗剤は作用機序が異なるため、抗コリン治療で有効性を示さない患者に対して効果を示すことや、抗コリン薬に特有の副作用の回避が期待できるほか、抗コリン治療で有効性を示さない患者に対しても効果が期待できる。また本剤は、知覚神経に作用してより強い自覚症状の改善効果が期待できる。更に脊髄損傷ラットの排尿効率を低下させることなく病態改善効果を示すことが報告されており(非特許文献5)、
前立腺肥大症患者や高齢者にも安全に投与できることが期待できる。
【0005】
また、PGE2は炎症や組織障害に伴い局所で産生され、炎症反応を増強すると共に発痛・発熱にも関与することが広く知られている。近年EP1受容体拮抗剤が、炎症性疼痛(非特許文献6)、術後疼痛(非特許文献7)、神経因性疼痛(非特許文献8)といった各種疼痛モデル動物において有効性を示すことが知られ、また酢酸誘発内臓痛に対するEP1受容体拮抗剤投与の臨床効果についても報告されている(非特許文献9)。
【0006】
更にEP1受容体拮抗薬は大腸粘膜異常腺窩および腸内ポリープ形成の抑制作用を有することが知られており(特許文献1)、EP1受容体拮抗剤は、大腸癌、膀胱癌、前立腺癌等の治療薬として有用であると考えられる。
【0007】
EP1受容体拮抗薬としては、以下の特許文献2〜4に示される化合物が報告されている。
特許文献2には式(A)で示される化合物が開示されている。
【化2】

(式中BはC5〜15の炭素環、または1個または2個の酸素、硫黄または窒素原子を有する5〜7員複素環を示す。他の記号は当該公報参照。)
しかしながら、式(A)の化合物のB環部分としては本発明化合物の特徴であるベンゼン環が縮合した二環式へテロ環の開示はない。
【0008】
特許文献3には式(B)で示される化合物が開示されている。
【化3】

(式中、R3及びR4は(1)メチルおよびメチル、(2)メチルおよびクロロ、(3)クロロおよびメチル、(4)トリフルオロメチルおよび水素の組み合わせ、またはR3およびR4が結合している炭素原子と一体となって(5)シクロペンテンまたは(6)ベンゼン環を示す。他の記号は当該公報参照。)
しかしながら、式(B)の化合物においてR3およびR4がベンゼン環と一体となって形成する二環式環としては、本発明化合物の特徴である二環式ヘテロ環の開示はない。
【0009】
特許文献4には広範な化合物を含む式(C)で示される化合物が開示されている。
【化4】

(式中の記号は当該公報参照。)
式(C)の化合物のAr2で実際に合成されているのは置換フェニルのみであり本発明化合物の特徴であるベンゼン環が縮合した二環式ヘテロ環の実施例はない。
【0010】
【非特許文献1】「ニューロウロロジー・アンド・ウロダイナミクス(Neurourology and Urodynamics)」、(英国)、2002年、第21巻、p.167-78
【非特許文献2】「ウロロジカル・リサーチ(Urological Research)」、(米国)、1990年、第18巻、第5号、p.349-52
【非特許文献3】「ザ・ジャーナル・オブ・ウロロジー(The Journal of Urology)」、(米国)、1995年6月、第153巻、第6号、p.2034-8
【非特許文献4】「日本泌尿器科学会雑誌」、2001年2月、第92巻、第2号、p.304
【非特許文献5】「第89回日本泌尿器科学会総会予稿集」、神戸、2001年、MP-305
【非特許文献6】「アネシージオロジー(Anesthesiology)」、(米国)、2002年11月、第97巻、第5号、p.1254-62
【非特許文献7】「アネシージア・アンド・アナルジージア(Anesthesia and Analgesia)」、(米国)、2002年12月、第95巻、第6号、p.1708-12
【非特許文献8】「アネシージア・アンド・アナルジージア(Anesthesia and Analgesia)」、(米国)、2001年10月、第93巻、第4号、p.1012-7
【非特許文献9】「ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)」、2003年1月、第124巻、第1号、p.18-25
【特許文献1】国際公開第00/69465号パンフレット
【特許文献2】国際公開第98/27053号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/72564号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/20371号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように既存の過活動膀胱に伴う頻尿・尿意切迫感や尿失禁、膀胱炎、間質性膀胱炎,前立腺炎などの下部尿路疾患治療剤は有効性、安全性等の点で満足できるものではなく、有効性、安全性に優れた下部尿路疾患の治療剤の提供が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述のように、EP1受容体拮抗剤は、口渇、尿閉等の副作用が少なく安全性の高い下部尿路疾患治療剤となることが期待できる。そこで本発明者等は下部尿路疾患等の治療に有用な新規化合物を提供することを目的として、EP1受容体拮抗活性を有する化合物につき鋭意研究した。その結果、後記一般式(I)で示される新規なカルボン酸誘導体が強力なEP1受容体拮抗作用を有することを知見し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明は、一般式(I)で示される化合物又はその製薬学的に許容される塩に関する。
【化5】

[式中の記号は以下の意味を示す。
A環:置換されていてもよい5乃至8員へテロ環。
B環:シクロアルキル、アリールまたはヘテロ環。
R1:置換されていてもよい低級アルキル。
R2:C1-12アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環基、低級アルキレン−シクロアルキル、低級アルキレン-アリールまたは低級アルキレン-ヘテロ環基。
ただし、R2におけるC1-12アルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロ環基は置換されていてもよい。
R3:-OR0または-NR5R5a
R0、R00:それぞれ独立して、-Hまたは低級アルキル。
R5、R5a:それぞれ独立して、-R0、低級アルキレン-NR0R00、低級アルキレン-CO2R0、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環基、低級アルキレン-シクロアルキル、低級アルキレン-アリール、低級アルキレン-ヘテロ環基。
ただし、R5、R5aにおけるシクロアルキル、アリール及びヘテロ環基は置換されていてもよい。
R4:それぞれ独立して、ハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、シアノ、ニトロ、-OR0、-O-ハロゲノ低級アルキル、-C(O)R0、-NR0C(O)R00
m:0、1または2。
ただし、mが2である場合、2つのR4は同一または互いに異なっていてもよい。
J:低級アルキレン、低級アルケニレン、-O-低級アルキレン-*、低級アルキレン-O-*、-O-低級アルケニレン-*、低級アルケニレン-O-*、-C(O)NR0-*または-NR0C(O)-*。
X:単結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、*-O-低級アルキレン、*-O-低級アルケニレン、*-NR0-低級アルキレン、*-S(O)n-低級アルキレンまたは*-S(O)n-低級アルケニレン。
ただし、JとXにおける*はB環への結合を示す。
n:0、1または2。
L:単結合、-C(O)-または-S(O)2-。以下同様。]
【発明の効果】
【0014】
本発明化合物(I)の有用性は以下の試験により確認した。
(1)EP1受容体発現細胞を用いた受容体拮抗活性の測定実験
ラットEP1を安定的に発現させたHEK293細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション社(American Type Culture Collection))を、実験前日に2×104細胞/ウェルとなるように、96ウェル(well) ポリ-D-リジン-コートプレート(商品名:バイオコートPDL96Wブラック/クリアー、日本ベクトンディッキンソン社)に分注し、37℃、5% 二酸化炭素(CO2)下にて、10%ウシ胎児血清(FBS)を含む培地(商品名:DMEM、インビトロジェン社)中、一晩培養する。培地をローディングバッファー(蛍光標識試薬(商品名:Fluo3-AM、同仁堂社)、4μMを含む洗浄溶液:ハンクスバランス塩溶液(HBSS)、20mM 2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)-水酸化ナトリウム(NaOH)、2.5mMプロベネシド、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA))に置き換え、室温で3時間静置した後、洗浄溶液をセットしたプレートウォッシャー(商品名:ELx405、バイオ-テック(BIO-TEK)インスツルメント社)にて細胞を洗浄する。洗浄溶液であらかじめ溶解、希釈した化合物を添加し、細胞内カルシウム(Ca)濃度測定システム(商品名:FLIPR、モレキュラーデバイス社)にセットする。5分後に最終濃度100nMとなるようにPGE2を添加し、細胞内Ca濃度変化を測定する。細胞内Ca濃度変化の最大値と最小値の差を算出し、測定データとして保存した。100nMのPGE2添加時を0%、バッファー添加時の応答を100%としたときに、50%阻害する濃度をIC50値として算出した。
結果を下記表1に示す。Exは後記実施例化合物番号を示す。
【0015】
【表1】

【0016】
(2)EP1受容体発現細胞を用いた受容体結合実験
ラットEP1受容体は、N末端にシグナルペプチド(MKTIIALSYIFCLVFA:配列番号1)、およびFLAG配列(DYKDDDDK:配列番号2)を導入したうえ、発現ベクター(商品名:pCEP4、インビトロジェン社)へサブクローニングした。このラットEP1発現ベクターを、トランスフェクション試薬(商品名:Fugene-6、ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いてHEK293EBNA細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション社(American Type Culture Collection))にトランスフェクションした後、37℃、5% CO2下にて、10% FBSを含む培地(商品名:DMEM、インビトロジェン社)中、2日間培養した。培養後の細胞を回収し、細胞溶解液(20mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝液pH7.5、 5mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA))にて細胞を処置し、超遠心(23000回転、 25分×2回)により膜標品を粗調整した。
調整した膜標品(15μg)と3H-PGE2を含む反応液(150μl、組成:10mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)/水酸化カリウム(KOH)pH6.0、 1mM EDTA、10mM 塩化マグネシウム(MgCl2)、0.02% 3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸(CHAPS))を、室温で1時間インキュベートした。反応を氷冷バッファーで停止し、減圧下、吸引ろ過して結合した3H-PGE2をガラスフィルター(商品名:ユニフィルター-96、 GF/B、パーキンエルマー社)にトラップし、結合放射活性をマイクロシンチ(商品名:マイクロシンチ20、パーキンエルマー社)を用いてマイクロプレートシンチレーションカウンター(商品名:トップカウント、パッカード社)で測定した。
解離定数(Kd)値と最大結合量(Bmax)値は、スキャッチャードプロットから求めた(「アナルス・オブ・ザ・ニュー・ヨーク・アカデミー・オブ・サイエンス(Annals of the New York Academy of Science)」、(米国)、1949年、第51巻、p.660)。非特異的結合は過剰量(2.5μM)の非標識PGE2の存在下での結合として求めた。本発明化合物による3H-PGE2結合阻害作用の測定は、3H-PGE2を2.5nM、および本発明化合物を添加して行った。
各化合物の阻害定数Ki(nM)は次式により求めた:
Ki=IC50/(1+([C]/Kd))
式中、[C]は反応系に用いた3H-PGE2濃度を表す。
結果を下記表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
(3)酢酸誘発頻尿ラットに対する化合物の作用
化合物の抗頻尿作用を病態モデルを用いて検討した。酢酸のラット膀胱内処置により膀胱粘膜が障害され、侵害刺激伝達求心性神経が活性化されることが知られている(「ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス(The Journal of Neuroscience)」、(米国)、1992年12月、第12巻、第12号、p.4878-89)。酢酸の膀胱内処置により頻尿状態が誘発されるため、これら症状に対する薬効評価が可能である。
実験には体重200〜450gのWistar系雄性ラット(チャールズリバー社)を用いた。ペントバルビタール(50mg/kg、 i.p.)麻酔下に腹部を正中切開して膀胱を露出し、27Gの注射針を装着したシリンジで膀胱内の残尿を除去した。その後1%酢酸溶液0.5〜0.7mLを膀胱内に注射し、閉創した。その2日後に実験を行った。ラットを代謝ケージに入れ、1時間馴化した後に、被検薬を投与し、その直後から6時間排尿重量変化を連続的に測定した。総排尿量を総排尿回数で除することにより、有効膀胱容量を算出した。その結果、酢酸膀胱内処置群においては偽手術群に比べて有効膀胱容量が減少し、頻尿状態を呈した。一方、本発明化合物は頻尿状態を良好に改善した。
以上の試験(1)〜(3)の結果より本発明化合物はEP1に強力な拮抗作用を有すること、及び、頻尿状態を良好に改善することが確認できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「低級」なる語は、特に断らない限り炭素数1乃至6個の直鎖または分枝状の炭化水素鎖を意味する。
【0020】
「低級アルキル」とは、C1-6のアルキルを意味する。具体的には、メチル、エチル、ノルマルプロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ノルマルペンチル、ノルマルヘキシル等が挙げられる。好ましくはメチル、エチル、ノルマルプロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルである。
「低級アルケニル」とは、C2-6のアルケニルを意味する。二重結合は任意の位置でよくまた、複数の二重結合を有していてもよい。具体的には例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル等が挙げられる。好ましくは、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニルである。
「低級アルキレン」とは、C1-6のアルキルの任意の位置の水素を1個除去してなる2価基を意味する。具体的にはメチレン、エチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、プロピレン等が挙げられる。好ましくはエチレン、プロピレンである。
「低級アルケニレン」とは、C2-6のアルケニルの任意の位置の水素を1個除去してなる2価基を意味する。具体的にはビニレン、プロペニレン、1−ブテニレン、2−ブテニレン等が挙げられる。好ましくはビニレンである。
【0021】
「シクロアルキル」とは、C3-15の非芳香族の炭化水素環を意味し、架橋環やスピロ環を形成していてもよく、また部分的に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロヘキセニル、シクロオクタンジエニル、アダマンチル及びノルボルニル等が挙げられる。好ましくはシクロブチル、シクロペンチル若しくはシクロヘキシルである。
【0022】
「ハロゲン」とは、ハロゲン原子を意味する。具体的にはフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードが挙げられる。好ましくはフルオロ、クロロである。
【0023】
「ハロゲノ低級アルキル」とは、前記「低級アルキル」の1個以上の任意の水素原子が、同一または互いに異なって前記「ハロゲン」で置換された基を意味する。具体的には、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等が挙げられる。好ましくは、トリフルオロメチルである。
【0024】
「アリール」とは、単環乃至3環式のC6-14の芳香族の炭化水素環を意味し、具体的には例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられる。好ましくはフェニルである。また、C5-8のシクロアルキル環が縮環していてもよく、例えば、インダニル、テトラヒドロナフチルを形成していてもよい。
【0025】
「ヘテロ環」とは、O、S及びNから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する飽和、不飽和又は部分的に不飽和の3乃至8員単環へテロ環、8乃至14員二環式へテロ環、11乃至20員三環式へテロ環を意味する。環原子であるS又はNが酸化されオキシドやジオキシドを形成してもよく、また、架橋環やスピロ環を形成してもよい。単環へテロ環としては具体的には、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、フリル、ジヒドロフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル等が挙げられる。二環式へテロ環としては具体的には、インドリル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンズフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル等が挙げられる。三環式へテロ環としては具体的には、カルバゾリル、アクリジニル等が挙げられる。好ましくは、ピリジル、フリル、ジヒドロフリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンズフラニル、ベンゾチエニル等が挙げられる。
【0026】
「置換されていてもよい」とは、「置換されていない」、あるいは「同一又は異なる1〜5個の置換基で置換された」ことを意味する。
【0027】
本明細書において、「置換されていてもよい」の語の許容される置換基としては、それぞれの基の置換基として、当該技術分野で通常用いられる置換基であればいずれでもよい。また、それぞれの基に同一又は異なった置換基が1つ以上存在していてもよい。
A環の「置換されていてもよい5乃至8員ヘテロ環」における置換基として好ましくは、ハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、-OR0または-O-ハロゲノ低級アルキルである。
R1の「置換されていてもよい低級アルキル」における置換基として好ましくは、以下のG群から選択される基である。
G群:ハロゲン、-OR0、-O-ハロゲノ低級アルキル、-O-SiR0R00(アリール)、オキソ、-NR0R00、-C(O)R0、-CO2R0、-NR0C(O)R00、-C(O)NR0R00、シクロアルキル、アリール及びヘテロ環基。ただし、G群におけるシクロアルキル、アリール及びヘテロ環基はハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、-OR0または-O-ハロゲノ低級アルキルで置換されていてもよい。
R2における置換されていてもよい「C1-12アルキル」における置換基として好ましくは、ハロゲン、-OR0、-NR0R00、-CO2R0または-C(O)NR0R00である。
R2におけるそれぞれ置換されていてもよい「シクロアルキル」、「アリール」及び「ヘテロ環基」における置換基として好ましくは、以下のP群から選択される基である。
P群:ハロゲン、-OR0、-O-SiR0R00(アリール)、-NR0R00、-CO2R0及び-C(O)NR0R00からなる群より選択される基で置換されていてもよい低級アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、-OR0、-O-ハロゲノ低級アルキル、-C(O)R0、-CO2R0、-NR0C(O)R00、-C(O)NR0R00
R5、R5aにおけるそれぞれ置換されていてもよい「シクロアルキル」、「アリール」及び「ヘテロ環基」における置換基として好ましくは、ハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、-OR0または-O-ハロゲノ低級アルキルである。
【0028】
本発明における好ましい態様を以下に示す。
A環として好ましくは、フランまたはジヒドロフランであり、縮合するベンゼン環とともにそれぞれベンゾフラン、ジヒドロベンゾフランを形成する。
B環として好ましくは、ベンゼンである。
R1として好ましくは、置換されていてもよい低級アルキルであり、より好ましくはイソブチルである。
R2として好ましくは、それぞれ置換されていてもよいアリールまたはヘテロ環基である。
R3として好ましくは、-OHである。
Xとして好ましくは、単結合である。
Jとして好ましくは、-O-低級アルキレン-*であり、より好ましくは-O-メチレン-*である。
Lとして好ましくは、-S(O)2-である。
【0029】
本発明化合物は置換基の種類によっては幾何異性体や互変異性体が存在する場合があるが、本発明にはこれらの異性体の分離したもの、あるいは混合物が包含される。
また、本発明化合物は不斉炭素原子を有する場合があり、これに基づく(R)体、(S)体などの光学異性体が存在しうる。本発明はこれらの光学異性体の混合物や単離されたものを全て包含する。
【0030】
更に、本発明化合物には、薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解によりまたは生理学的条件下で本発明のNH2、OH、CO2H等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、「プログレス・イン・メディシン(Progress in Medicine)」、ライフサイエンス・メディカ社、1985年、5巻、p.2157-2161や「医薬品の開発(第7巻)分子設計」、廣川書店、1990年、p.163-198に記載の基が挙げられる。
【0031】
本発明化合物は、酸付加塩または置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もある。かかる塩としては、製薬学的に許容される塩であり、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
さらに、本発明は、化合物(I)及びその塩の各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質をも包含する。
【0032】
(製造法)
本発明化合物(I)及びその製薬学的に許容される塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(T. W. Greene)及びウッツ(P. G. M. Wuts)著、「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)」、(米国)、第3版、ジョン・ウィレイ・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、1999年に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、あるいは所望の基に転化することにより、所望の化合物を得ることができる。
【0033】
以下に本発明化合物の代表的な製造法を説明する。
(製法1)
【化6】

(式中、Lvは脱離基を意味する。R1a及びR2aは後述する還元的アミノ化反応によりそれぞれR1及びR2に変換される基を示す。)
【0034】
第一工程
第一工程はアルキル化により化合物(II)より化合物(V)を製造する工程である。
(1)第一工程−1
本工程は化合物(II)とカルボニル化合物(III)とを還元的アルキル化することにより化合物(V)を製造する工程である。反応は、例えば日本化学会編「実験化学講座(20巻)有機合成2」、第4版、丸善、1992年、p.300等に記載の方法が適用できる。具体的には、無溶媒中またはジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸等の反応に不活性な溶媒中、水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムシアノボロヒドリド、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用い冷却下、室温下乃至加熱還流下に行うのが好適である。化合物によっては硫酸、塩酸、臭化水素酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸等の有機酸等の酸、あるいは四塩化チタン等のルイス酸存在下反応を行うことが有利な場合がある。また、例えば触媒として、パラジウム−炭素、ラネーニッケル、白金等を用い、常圧乃至加圧の水素雰囲気下、前述の芳香族炭化水素類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル、酢酸等反応に不活性な溶媒中、室温乃至加熱還流下に行うことができる。化合物によっては酸(好ましくは、塩酸、酢酸等)の存在下に反応させることが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
(2)第一工程−2
本工程は化合物(II)を脱離基を有する化合物(IV)によりアルキル化することにより化合物(V)を製造する工程である。Lvで示される脱離基は、求核置換反応において常用される脱離基であればいずれでもよく、クロロ、ブロモ等のハロゲン、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ、低級アルキルスルホニル、アリールスルホニル等のスルホニル等が好適に用いられる。本工程のアルキル化反応は当業者が通常用いうるアルキル化を採用することができる。例えば、無溶媒下、若しくは前述の芳香族炭化水素類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、DMF、DMA、NMP、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル等の反応に不活性な溶媒、あるいはアルコール類等の溶媒中、室温乃至加熱還流下に行うことができる。化合物によっては、有機塩基(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン等が好適に用いられる)、又は金属塩塩基(炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、tert-ブトキシカリウム等が好適に用いられる)の存在下に行うことが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
【0035】
第二工程−1
本工程は化合物(V)を化合物(VI)によりスルホニル化することにより、Lが-S(O)2-である本発明化合物(I-a)を製造する工程である。Lvの脱離基としてはクロロ、ブロモ等のハロゲンが好適に用いられる。反応は例えば、前記の「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)」に記載のスルホニル化の条件が適用できる。具体的には、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、アセトニトリル等の溶媒中、必要によりトリエチルアミン、ピリジン等の塩基の存在下、冷却下乃至加熱還流下にて行うことができる。
【0036】
第二工程−2
本工程は化合物(V)をカルボン酸(VII)またはその反応性誘導体とアシル化することにより、Lが-C(O)-である本発明化合物(I-b)を製造する工程である。反応性誘導体としては酸ハロゲン化物(酸クロリド、酸ブロミド等)、酸無水物(クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸ベンジル、クロロ炭酸フェニル、p-トルエンスルホン酸、イソ吉草酸等との反応で得られる混合酸無水物、或いは対称酸無水物)、活性エステル(ニトロ基あるいはフッ素原子などの電子吸引基で置換していてもよいフェノール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N-ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)等を用いて調製できるエステル)、低級アルキルエステル、酸アジド等が挙げられる。これらの反応性誘導体は常法により製造することができる。反応はカルボン酸化合物(VII)またはその反応性誘導体と化合物(V)とを等モルあるいは一方を過剰量用いて、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、DMF、DMA、NMP、酢酸エチル又はアセトニトリル等の反応に不活性な溶媒中、冷却下〜加熱下で行うことができる。反応性誘導体の種類によっては、塩基(好ましくは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン等)の存在下に反応させるのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。ピリジンは溶媒を兼ねることもできる。
遊離カルボン酸を用いる場合には、縮合剤(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド(WSC)、1,1’-カルボニルビスイミダゾール(CDI)、N,N’-ジスクシンイミジルカルボナート、Bop試薬(Aldrich社、米国)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HBTU)、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)、オキシ塩化リン、三塩化リン、トリフェニルホスフィン/N-ブロモスクシンイミド等)、場合によっては、更に添加剤(例えば、HONSu、HOBt等)を用いるのが好ましい。
【0037】
第二工程−3
本工程は化合物(V)を化合物(VIII)または化合物(IX)とアルキル化することにより、Lが単結合である本発明化合物(I-c)を製造する工程である。本工程のアルキル化は第一工程のアルキル化と同様にして行うことができる。
【0038】
(製法2)
【化7】

【0039】
第一工程
本工程はスルホニル化、アシル化またはアルキル化により化合物(II)より化合物(X)を製造する工程である。スルホニル化、アシル化、アルキル化はそれぞれ製法1の第二工程−1乃至第二工程−3と同様にして行うことができる。
【0040】
第二工程
本工程はアルキル化により化合物(X)より本発明化合物(I)を製造する工程である。本工程のアルキル化反応は製法1の第一工程−2と同様の方法で製造できる。また、Lvが-OHである化合物(IV)を用いて、テトラヒドロフラン、塩化メチレン等の溶媒中、トリフェニルホスフィン及びジエチルアゾジカルボキシレートの存在下、冷却下乃至室温下にて行うことができる。
【0041】
(製法3)
【化8】

(式中、Rは低級アルキルを示す。)
【0042】
第一工程
本工程は加水分解によりR3が-ORである本発明化合物(I-d)よりR3が-OHである本発明化合物(I-e)を製造する工程である。本工程の加水分解反応は、例えば前記の「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)」に記載の脱保護反応に準じて行うことができる。
【0043】
第二工程
本工程はアミド化によりR3が-OHである本発明化合物(I-e)よりR3が-NR5R5aである本発明化合物(I-f)を製造する工程である。本工程のアミド化反応は製法1の第二工程−2と同様にして行うことができる。
【0044】
本発明化合物(I)の製造に使用する原料化合物は、例えば下記の方法、公知の方法、あるいはその変法を用いて製造することができる。
(原料合成1)
【化9】

【0045】
第一工程
本工程は化合物(XII)をニトロ化して化合物(XIII)を製造する工程である。ニトロ化は当業者が通常採用しうる方法により製造することができる。例えば、酢酸、濃硫酸等の溶媒中、濃硝酸をニトロ化剤として行うことができる。
【0046】
第二工程
本工程はニトロ化合物(XIII)を還元して化合物(II)を製造する工程である。本工程のニトロの還元反応は当業者が通常採用しうるニトロ基の還元反応を用いることができる。例えば、還元鉄、塩化スズ等の還元剤を用いた還元反応やパラジウム-炭素等を触媒とした水素添加反応が挙げられる。
【0047】
(原料合成2)
【化10】

(式中、J1及びJ2はJに変換しうる基を示す。)
【0048】
第一工程
本工程は化合物(XIV)及び化合物(XV)を縮合して化合物(XVI)を製造する工程である。本工程はJの構造に応じて当業者が通常採用しうるアミド化、アルキル化等により製造することができる。例えば、Jが-O-低級アルキレン-*(ただし*はB環への結合を示す)である化合物(XVI)は、J1が-OHである化合物(XIV)とJ2が-低級アルキレン-Lv(Lvは脱離基を示す。)である化合物(XV)を用いてアルキル化により製造することができる。当該アルキル化は製法1の第一工程−2と同様の方法で行うことができる。
【0049】
上記各製法により得られた反応生成物は、遊離化合物、その塩あるいは水和物など各種の溶媒和物として単離、精製することができる。塩は通常の造塩処理に付すことにより製造できる。
単離、精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行うことができる。
各種異性体は異性体間の物理化学的な差を利用して常法により単離できる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法、例えば分別結晶化またはクロマトグラフィー等により分離できる。また、光学異性体は、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
【0050】
本発明化合物またはその塩の1種または2種以上を有効成分として含有する製剤は通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、経口投与の場合、成人1日当たり0.001 mg/kg乃至100 mg/kg程度であり、これを1回で、あるいは2〜4回に分けて投与する。また、静脈投与される場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至10 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。また、経鼻投与の場合、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至10 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。また、吸入の場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至1 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。
【0051】
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤または丸剤は必要により糖衣または胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
【0052】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水または無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体、半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば、ラクトースや澱粉のような賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入または吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独でまたは処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液または懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回または多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末または粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカンまたは二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明化合物の製造例を挙げ、本発明化合物の製造方法を具体的に説明するが本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、本発明化合物の原料化合物には新規な化合物も含まれており、これらの化合物の製造方法を参考例として説明する。
【0054】
なお、参考例、実施例中の記号は以下の意味を示す(以下同様)。
Rf:参考例番号、Ex:実施例番号、No:化合物番号、Structure:構造式、DATA:物理学的データ((EI:EI-MS([M]+); EP:ESI-MS(Pos)([M+H]+); EN:ESI-MS(Neg)([M-H]-) ; API:API-MS(Pos)(無記載である場合は[M+H]+); FP:FAB-MS(Pos)(無記載である場合は[M+H]+); FN:FAB-MS(Neg)(無記載である場合は[M-H]-); NMR1:DMSO-d6中の1HNMRにおける特徴的なピークのδ(ppm); NMR2:CDCl3中の1HNMRにおける特徴的なピークのδ(ppm); Sal:塩(無記載はフリー体であることを示し、例えばHClが記載されている場合、その化合物が塩酸塩であることを示す。))、Me:メチル、Et:エチル、cPr:シクロプロピル、iPr:イソプロピル、nBu:ノルマルブチル、cBu:シクロブチル、iBu:イソブチル、cPen:シクロペンチル、cHex:シクロヘキシル、nOct:ノルマルオクチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、Ac:アセチル、Py:ピリジル、furyl:フリル、thienyl:チエニル、TBDPS:tert-ブチルジフェニルシリル。置換基の前の数字は置換位置を示し、従って、例えば2,4-diF-Phは2,4-ジフルオロフェニルを示す。)、Syn:製造方法(数字は、その番号を実施例番号として有する実施例化合物と同様に、対応する原料を用いて製造したことを示す。数字の前にRが着いている場合はその番号を参考例番号として有する参考例化合物と同様に、対応する原料を用いて製造したことを示す。)。
【0055】
参考例1
2,3-ジヒドロ‐6‐ヒドロキシベンゾフラン12.6gの酢酸(90.0ml)溶液を15℃に冷却し、攪拌下濃硝酸(69%)7.17mlを滴下した。滴下終了後、反応液を35℃まで昇温し、10分間攪拌した。反応液に水を加えた後、混合物を減圧濃縮し、析出した粗製物を濾取した。得られた粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、5‐ニトロ‐2,3-ジヒドロ‐6‐ヒドロキシベンゾフラン9.00gを得た。
【0056】
参考例2
濃硝酸(69%)11.7mlと酢酸25.0mlの混合物に、氷冷下1,3-ベンゾジオキソール‐5‐イル 酢酸17.5gの酢酸(20.0ml)溶液を滴下した。氷冷下30分間攪拌した後、反応液を氷水に注ぎ、析出した沈殿物を濾取し、6‐ニトロ‐1,3-ベンゾジオキソール‐5‐イル 酢酸19.7gを淡黄色固体として得た。6‐ニトロ‐1,3-ベンゾジオキソール‐5‐イル 酢酸4.50gのメタノール溶液(160ml)に、3M 塩酸80.0mlを加え、4.5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却した後、約100mlまで減圧濃縮した。氷冷により析出した沈殿物を濾取、減圧下乾燥し、6‐ニトロ‐5‐ヒドロキシ‐1,3-ベンゾジオキソール3.49gを得た。
【0057】
参考例3
2,3-ジヒドロ-5-ヒドロキシベンゾフラン4.04gをDMF 50mlに溶解し、これにメチル 4-(ブロモメチル)安息香酸7.47gと炭酸カリウム2.75gを加え、80℃にて終夜攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水と食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=30:1)で精製し、メチル 4-[(2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イルオキシ)メチル]安息香酸5.62gを得た。
【0058】
参考例4
5‐ニトロ‐2,3-ジヒドロ‐1‐ベンゾフラン‐6‐オール3.00gをDMF 30mlに溶解し、これにメチル 4-(ブロモメチル)安息香酸4.17gと炭酸カリウム2.75gを加え、60℃にて終夜攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、水と酢酸エチルを加え、析出した沈殿物を濾取、減圧下乾燥し、メチル 4-{[(5-ニトロ-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸5.40gを得た。
【0059】
参考例5
メチル 4-[(2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イルオキシ)メチル]安息香酸1.00gを酢酸10mlに溶解し、攪拌下濃硝酸(69%)0.245mlを滴下した。滴下終了後、室温にて10分間攪拌した。析出した沈殿物を濾取し、水で洗浄した後、減圧下乾燥し、メチル4-{[(6-ニトロ-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イル)オキシ]メチル}安息香酸1.16gを得た。
【0060】
参考例6
メチル 4-{[(5-ニトロ-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸5.50gを酢酸60mlと水15mlに溶解し、60℃まで昇温した後、還元鉄4.64gを加え、60℃にて3時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、濾液を減圧濃縮した。残渣に酢酸エチルと水を加えた後、炭酸水素ナトリウムで溶液を中和した後、セライト濾過した。濾液を、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=4:1)で精製し、メチル 4-{[(5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸4.47gを得た。
【0061】
参考例7
メチル 4-{3-[(5-ニトロ-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]プロピル}安息香酸507mgをメタノール10mlとテトラヒドロフラン5mlに溶解し、これに10% w/w パラジウム炭素(50%含水)を232mg加え、水素雰囲気下2時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、メチル 4-{3-[(5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]プロピル}安息香酸412mgを得た。
【0062】
参考例8
メチル 4-{[(5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸4.46gをピリジン60mlに溶解し、これに5-メチルフラン-2-スルホニルクロリド3.50gを加え、室温にて終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮した後、残渣に1M塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)で精製し、メチル 4-{[(5-{[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸6.14gを得た。
【0063】
参考例9
メチル 4-{[(5-{[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸1.00gをトルエン10mlに溶解し、これに2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン512mgを加え、100℃にて3時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液と食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1〜1:1)で精製し、メチル 4-{[(5-{[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸852mgを得た。
【0064】
参考例10
メチル 4-{[(5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸3.49gをジクロロエタン100mlに溶解し、これにイソブチルアルデヒド1.17mlとトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム3.21gを加え、室温にて終夜攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、クロロホルムで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜5:1)で精製し、メチル 4-({[5-(イソブチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル]オキシ}メチル)安息香酸3.60gを得た。
【0065】
上記参考例1〜10の方法と同様にして、後記表3〜12に示す参考例化合物をそれぞれ対応する原料を使用して製造した。表3〜12にの参考例化合物の構造及び物理化学的データを示す。
【0066】
実施例1
メチル 4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸385mgをメタノール5mlとテトラヒドロフラン10mlに溶解し、これに1M水酸化ナトリウム水溶液3mlを加え、室温にて3.5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮して得られた残渣に1M塩酸とクロロホルムを加え、有機層をフェイズ・セパレート・フィルター(Phase Separate-filter、アイソテュート(Isotute)社製)を用いて分離した。溶媒を減圧留去して得られた残渣に酢酸エチルを加え、析出した結晶を濾取した。得られた粗製物を酢酸エチルから再結晶し、4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸294mgを得た。
【0067】
実施例2
メチル 4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸4.67gを1,4-ジオキサン60mlとメタノール60mlに溶解し、これに1M水酸化ナトリウム水溶液40mlを加え、60℃にて終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮して得られた残渣に、1M塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製した。得られた粗製物をエタノールに溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液を加えた後、減圧濃縮した。得られた粗結晶を水から再結晶し、4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸ナトリウム 1水和物3.25gを得た。
【0068】
実施例3
4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸220mgをDMF 5mlに溶解し、これに炭酸アンモニウム216mg、WSC・塩酸塩104mg及びHOBt 73mgを加え、室温にて終夜攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水と食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣に、トルエンを加え、析出した結晶を濾取した。得られた粗製物をエタノールから再結晶することにより、4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}ベンズアミド100mgを得た。
【0069】
実施例4
メチル 4-{[(5-{[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸209mgをDMF 5mlに溶解し、これにヨウ化イソブチル130mgと炭酸セシウム459mgを加え、100℃にて3時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水と食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製した。得られた粗製物をエタノールから再結晶することにより、メチル 4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸140mgを得た。
【0070】
実施例5
メチル 4-({[5-(イソブチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル]オキシ}メチル)安息香酸380mgをジクロロエタン10mlに溶解し、5-メチル-2-フルアルデヒド0.29mlとトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム750mgを加え、室温にて終夜攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、メチル 4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)メチル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸478mgを得た。
【0071】
実施例6
メチル 4-{[(5-{[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸4.54gをDMF 50mlに溶解し、これにヨウ化イソブチル3.77gと炭酸セシウム9.97gを加え、100℃にて2時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=19:1)で精製し、メチル 4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸4.68gを得た。
【0072】
実施例7
メチル 4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}桂皮酸160mgと塩化ニッケル(II)・6水和物14mgを、メタノール5mlとテトラヒドロフラン1mlに溶解し、これに氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム28mgを加えた。室温にて3時間攪拌した後、反応液に1M塩酸を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、メチル 3-(4-{[(5-{イソブチル[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}フェニル)プロピオン酸155mgを得た。
【0073】
実施例8
メチル 4-{[(5-{((2R)-3-{[tert-ブチルジフェニル)シリル]オキシ}-2-メチルプロピル)[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸453mgをテトラヒドロフラン6mlに溶解し、これに1M テトラブチルアンモニウムフルオリド テトラヒドロフラン溶液0.9mlを加え、室温にて1時間攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1〜1:1)で精製し、メチル 4-{[(5-{[(2R)-3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル][(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチルl}安息香酸296mgを得た。
実施例9
メチル 4-({[5-(イソブチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル]オキシ}メチル)安息香酸360mgをピリジン10mlに溶解し、これにベンゼンスルホニルクロリド231mgを加え、室温にて終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮した後、残渣に食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=3:1)で精製し、メチル 4-[({5-[イソブチル(フェニルスルホニル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル}オキシ)メチル]安息香酸477mgを得た。
【0074】
実施例10
tert-ブチル(2-フリルメトキシ)ジフェニルシラン16.5gをジクロロエタン100mlに溶解し、これにSO3-ピリジン複合体27.3gを加え、80℃にて6日間攪拌した。室温まで冷却した後、反応液にDMF 1mlと塩化オキサリル25.3mlを加え、室温にて4時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルと炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、5-({[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}メチル)フラン-2-スルホニルクロリド10.9gを得た。
メチル 4-({[5-(イソブチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル]オキシ}メチル)安息香酸300mgをピリジン8mlに溶解し、これに5-({[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}メチル)フラン-2-スルホニルクロリド1.84gを加え、室温にて終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、メチル 4-[({5-[{[5-({[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}メチル)-2-フリル]スルホニル}(イソブチル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル}オキシ)メチル]安息香酸537mgを得た。
【0075】
実施例11
メチル 4-[({5-[{[5-({[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}メチル)-2-フリル]スルホニル}(イソブチル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル}オキシ)メチル]安息香酸537mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、これに1M テトラブチルアンモニウムフルオリド テトラヒドロフラン溶液1.42mlを加え、室温にて1時間攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、メチル 4-[({5-[{[5-(ヒドロキシメチル)-2-フリル]スルホニル}(イソブチル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル}オキシ)メチル]安息香酸334mgを得た。
【0076】
実施例12
メチル 4-{[(5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸450mgをジクロロエタン7mlと酢酸3.5mlに溶解し、これに2-アセチルピリジン0.18mlとトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム413mgを加え、室温にて5時間攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、クロロホルムで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られたメチル 4-[({5-[(1-ピリジン-2-イルエチル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル}オキシ)メチル]安息香酸の粗製物を、をピリジン15mlに溶解し、これに5-メチルフラン-2-スルホニルクロリド406mgを加え、室温にて終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮した後、残渣に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、メチル 4-[({5-[[(5-メチル-2-フリル)スルホニル](1-ピリジン-2-イルエチル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル}オキシ)メチル]安息香酸547mgを得た。
【0077】
実施例13
メチル 4-{[(5-{[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸300mgをピリジン4mlに溶解し、これにプロピレンオキシド196mgを加え、封管中100℃にて終夜攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、減圧濃縮した。残渣に酢酸エチルを加え、有機層を1M塩酸、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=4:1)で精製し、メチル 4-{[(5-{(2-ヒドロキシプロピル)[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸333mgを得た。
【0078】
実施例14
メチル 4-{[(5-{(2-ヒドロキシプロピル)[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシプロピル}安息香酸433mgをDMF 4mlに溶解し、これに水素化ナトリウム(55%)165mgとヨウ化メチル0.82mlを加え、封管中80℃にて2日間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、減圧濃縮した。残渣に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=3:1)で精製し、メチル 4-{[(5-{(2-メトキシプロピル)[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸281mgを得た。
【0079】
実施例15
メチル 4-{[(5-{[(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸222mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解し、これに2-(ジメチルアミノ)エタノール53mg、トリフェニルホスィン262mg及びアゾカルボン酸ジエチル(40%トルエン溶液)0.458mlを加え、室温にて5時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1〜クロロホルム:メタノール=100:1)で精製し、メチル 4-{[(5-{[2-(ジメチルアミノ)エチル][(5-メチル-2-フリル)スルホニル]アミノ}-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)オキシ]メチル}安息香酸188mgを得た。
【0080】
実施例16
メチル 4-({[5-(イソブチルアミノ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル]オキシ}メチル)安息香酸250mgをジクロロエタン10mlに溶解し、これにトリエチルアミン0.29mlと塩化ベンゾイル231mgを加え、室温にて終夜攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液をを加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1〜3:1)で精製し、メチル 4-[({5-[ベンゾイル(イソブチル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル}オキシ)メチル]安息香酸318mgを得た。
【0081】
上記実施例1〜16の方法と同様にして、後記表13〜41に示す実施例化合物をそれぞれ対応する原料を使用して製造した。表13〜41に実施例化合物の構造及び物理化学的データを示す。
【0082】
また、表42に本発明の別の化合物の構造を示す。これらは、上記の製造法や実施例に記載の方法及び当業者にとって自明である方法、またはこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。
【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

【0088】
【表8】

【0089】
【表9】

【0090】
【表10】

【0091】
【表11】

【0092】
【表12】

【0093】
【表13】

【0094】
【表14】

【0095】
【表15】

【0096】
【表16】

【0097】
【表17】

【0098】
【表18】

【0099】
【表19】

【0100】
【表20】

【0101】
【表21】

【0102】
【表22】

【0103】
【表23】

【0104】
【表24】

【0105】
【表25】

【0106】
【表26】

【0107】
【表27】

【0108】
【表28】

【0109】
【表29】

【0110】
【表30】

【0111】
【表31】

【0112】
【表32】

【0113】
【表33】

【0114】
【表34】

【0115】
【表35】

【0116】
【表36】

【0117】
【表37】

【0118】
【表38】

【0119】
【表39】

【0120】
【表40】

【0121】
【表41】

【0122】
【表42】

【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明化合物は、EP1受容体拮抗活性に優れており、EP1受容体が関与する疾患、特に過活動膀胱に伴う頻尿・尿意切迫感や尿失禁,膀胱炎,間質性膀胱炎,前立腺炎などの下部尿路疾患の治療薬として有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0124】
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号1の配列で表されるアミノ酸配列は、人工的に合成したシグナルペプチド配列である。また、配列表の配列番号2の配列で表されるアミノ酸配列は、人工的に合成したFLAG配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【化1】

[式中の記号は以下の意味を示す。
A環:置換されていてもよい5乃至8員へテロ環。
B環:シクロアルキル、アリールまたはヘテロ環。
R1:置換されていてもよい低級アルキル。
R2:C1-12アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環基、低級アルキレン−シクロアルキル、低級アルキレン-アリールまたは低級アルキレン-ヘテロ環基。
ただし、R2におけるC1-12アルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロ環基は置換されていてもよい。
R3:-OR0または-NR5R5a
R0、R00:それぞれ独立して、-Hまたは低級アルキル。
R5、R5a:それぞれ独立して、-R0、低級アルキレン-NR0R00、低級アルキレン-CO2R0、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環基、低級アルキレン-シクロアルキル、低級アルキレン-アリール、低級アルキレン-ヘテロ環基。
ただし、R5、R5aにおけるシクロアルキル、アリール及びヘテロ環基は置換されていてもよい。
R4:それぞれ独立して、ハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、シアノ、ニトロ、-OR0、-O-ハロゲノ低級アルキル、-C(O)R0、-NR0C(O)R00
m:0、1または2。
ただし、mが2である場合、2つのR4は同一または互いに異なっていてもよい。
J:低級アルキレン、低級アルケニレン、-O-低級アルキレン-*、低級アルキレン-O-*、-O-低級アルケニレン-*、低級アルケニレン-O-*、-C(O)NR0-*または-NR0C(O)-*。
X:単結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、*-O-低級アルキレン、*-O-低級アルケニレン、*-NR0-低級アルキレン、*-S(O)n-低級アルキレンまたは*-S(O)n-低級アルケニレン。
ただし、J及びXにおける*はB環への結合を示す。
n:0、1または2。
L:単結合、-C(O)-または-S(O)2-。]

【公開番号】特開2008−189549(P2008−189549A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139466(P2005−139466)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】