説明

カルーセル

【課題】 遠心力が働いてもカルーセルの保持部にラックを保持することができ、かつ、保持部が破損しないカルーセルの提供。
【解決手段】1個のラック201がそれぞれ保持される複数個の保持部71を備え、保持部71は、円板状テーブル72の側方となる部分が開放された開放口を有する壁面93を備えるカルーセル70であって、保持部71は、側方と垂直となる回転軸である回転軸部91aを有する円板状ローラ91と、一端部に回転軸部91aが取り付けられるとともに、他端部が壁面93に取り付けられることで、一端部が側方及び回転軸と垂直となる方向に弾性を有する板バネ部92とを備え、1個のラック201が、円板状ローラ91を回転させながら壁面93の開放口から挿入され、壁面93に挿入された際には、板バネ部92の弾性によって円板状ローラ91で壁面93に押さえつけられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のラックを保持するカルーセルに関し、例えば臨床検査において患者から採取された血液や尿等の検体を分析するための検体分析装置に使用されるカルーセルに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査において、患者から採取された血液や尿等の検体を分析することが行われている。このような検体は、検体の色や量等を確認するために、透明なガラス製またはプラスチック製の採血管(容器)に収容されている。図3は、採血管の一例を示す斜視図である。
採血管200は、透明なガラス製またはプラスチック製の容器である。採血管200は、例えば、直径13または16mmの底面と、高さ75または100mmの円筒形状の側壁を有する。そして、採血管200の上部には、円柱形状のゴム製の蓋200bを嵌めることが可能となっている。
ところで、病院の検査室では、数多くの患者から採取された検体を毎日、分析しなければならない。すなわち、病院の検査室では、多数の採血管200を取り扱うことになる。また、検体を分析する検査内容も、各患者に応じて様々な種類A、B、・・・のものがある。よって、検査内容Aを実行しなければならない採血管200と、検査内容Bを実行しなければならない採血管200とが無作為に混じりあいながら、多数の採血管200が採取室から検査室に送り込まれてくることになる。
【0003】
そこで、採血管200の側壁には、検体が採取された患者を識別したり、収容された検体の検査内容の種類A、B、・・・を決定したりするための情報が記憶されたバーコードシール(容器識別情報)200aが、採取室の看護師等によって付されることになっている。バーコードシール200aは、例えば、縦55mm、横30mmの長方形状であり、採血管200の側壁に付される。
一方、病院の検査室には、ベルトコンベア(列方向搬送機構)等からなる検体供給装置と、検体検査装置とが組み合わされた検体処理システム(検体分析装置)が設置されている。図7は、検体処理システムの一例を示す平面図であり、図8は、図7に示す検体処理システムの一部の斜視図である。
このような検体処理システム101によれば、検査室の検査員が、ベルトコンベア30の所定の位置に採血管200を保持したラック201を次々と載置していくと、ラック201がY方向に移動していくことにより、ラック201が第一設定ポジションP1に到達し、バーコードリーダ(読出部)50がX方向に移動していきながら、第一設定ポジションP1に到達したラック201のバーコードシール200aを次々と読み出し、その後、コンピュータ(制御部)80が、読み出したバーコードシール200aに基づいて、検体検査装置60のカルーセル170にラック201を移動させるとともに、検体検査装置60で検体を次々と分析することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、図7及び図8に示す検体処理システムについて詳細に説明する。なお、図4は、ラックの一例を示す斜視図である。図9は、行方向搬送機構の一例を示す平面図である。図10は、カルーセルの一例を示す平面図である。
検体処理システム101は、5個の採血管200を保持するための多数のラック201と、ベルトコンベア30と、検体検査装置60のカルーセル170に搬送する行方向搬送機構40と、バーコードシール200a等を読み出すバーコードリーダ50と、コンピュータ80とを備える。
【0005】
ラック201は、プラスチック製のケースである。そして、ラック201は、例えば、横X110mm、縦Y20mm、高さZ65mmの略直方体形状をしている。上面にはX方向(行方向)に順番に並ぶように、第一穴部201a〜第五穴部201eが形成されている。穴部201a〜201eは、円柱形状であり、例えば直径17mm、深さZ50mmとなっている。つまり、採血管200の下半分を穴部201a〜201eに挿入することができ、その結果、5個の採血管200がX方向に並ぶように、ラック201に保持されることができるようになっている。
また、ラック201の下部には、Y方向(列方向)に貫通し、かつ、X方向(行方向)に並ぶように4個の貫通孔202が形成されている。これにより、詳細は後述するが、行方向搬送機構40の2本の棒部41が、ラック201を搬送するために4個の貫通孔202のうちの2個の貫通孔202に挿入されるようになっている。
【0006】
さらに、ラック201の前面の右部には、多数のラック201のうちからどのラック201であるかを識別するための情報が記憶されたバーコードラベル(ラック識別情報)203が、検査室の検査員等によって付されている。バーコードラベル203は、例えば、縦25mm、横15mmの長方形状である。
また、ラック201の前面には、各穴部201a〜201eと繋がる開口部がそれぞれ形成されている。そして、各穴部201a〜201eの後面側の側壁には、穴部201a〜201eに採血管200が挿入されているか否かを識別するためのバーコードラベル(ラック識別情報)204a〜204e(図示は204dのみ)が、予め付されている。バーコードラベル204a〜204eは、例えば、縦30mm、横8mmの長方形状である。
【0007】
ベルトコンベア30は、2個の円柱形状のローラ31と、2個のローラ31間に掛け回された搬送ベルト32とを有する。これにより、搬送ベルト32が、モータ等の駆動手段(図示せず)によっていずれかのローラ31が駆動することにより、循環して移動する。このとき、ベルトコンベア30は、上側になっている搬送ベルト32がY方向(列方向)に移動するように、検体処理システム101において配置される。なお、搬送ベルト32のX方向(行方向)の長さは、ラック201の横幅Xと同じになっている。
このようなベルトコンベア30によれば、上側になっている搬送ベルト32の上面に、ラック201のX方向がY方向と垂直となるように、ラック201が検査員によって載置されることにより、ラック201がY方向に移動していくことになる。
また、ベルトコンベア30のY方向における中央部には、第一設定ポジションP1が設定されており、搬送してきたラック201を第一設定ポジションP1で停止させるために、X方向に伸びた停止板33が形成されている。
【0008】
バーコードリーダ50は、設定範囲の光を−Y方向(列方向と反対方向)に出射するものである。設定範囲は、例えば、長方形状であり、1度に1個のバーコード200a、203、204a〜204eを読み出すことができる。
行方向搬送機構40は、直方体形状の筐体42と、2本の棒部41と、X方向(行方向)に伸びるレール部43とを有する。筐体42は、レール部43に沿ってX方向に移動することが可能となっており、第一設定位置から第六設定位置まで段階的に1個の採血管200の横幅分ずつ移動することができ、さらに第六設定位置から第七設定位置まで移動することができるようになっている。また、2本の棒部41は、Y方向に移動可能となるように、筐体42の内部に取り付けられている。これにより、2本の棒部41が、筐体42の内部から飛び出した突出状態(図9(b)及び図9(c)参照)と、筐体42の内部に収納された収納状態(図9(a)参照)とのいずれかの状態となる。
なお、バーコードリーダ50が、筐体42の上に取り付けられている。これにより、バーコードリーダ50も、筐体42が移動すればX方向に段階的に移動することになる。
【0009】
このような行方向搬送機構40によれば、第一設定ポジションP1に1個のラック201が搬送されてきた場合に、収納状態の筐体42が第一設定位置に配置されれば、バーコードリーダ50がラック201のバーコードラベル203の前に配置されるようになっている(図9(a)参照)。また、収納状態の筐体42が、第二設定位置に移動されれば、バーコードリーダ50が第一穴部201aの採血管200のバーコードシール200aの前に配置されるようになっている。このように筐体42がX方向に第一設定位置から第六設定位置まで段階的に移動していくことで、バーコードリーダ50が穴部201b〜201eの採血管200のバーコードシール200aの前に順に配置されていくようになっている。
また、第一設定ポジションP1に1個のラック201が搬送されてきた場合に、第一設定位置に配置された収納状態の筐体42を突出状態にすれば、ラック201の2個の貫通孔202に2本の棒部41が挿入されるようになっている(図9(b)参照)。そして、突出状態の筐体42が第七設定位置に移動すれば、1個のラック201も所定の位置(カルーセル170)に移動する(図9(c)参照)。その後、第七設定位置に配置された突出状態の筐体42を収納状態にすれば、ラック201の2個の貫通孔202から2本の棒部41が外れる。つまり、ラック201がカルーセル170の所定の位置に搬送されることになる。
【0010】
カルーセル170は、中心部172aと周縁部172bとを有する円板状テーブル172と、円板状テーブル172を回転させる駆動機構(図示せず)と、10個の保持部171a〜171jとを備える。
カルーセル170の周縁部172bには反時計周りに順番に並ぶように、第一保持部171a〜第十保持部171jが形成されている。各保持部171a〜171jは、平面視でコの字形状で所定の高さ(例えば50mm)となる壁面193を備える。そして、壁面193のコの字形状の開放口部分が円板状テーブル172の側方(−B方向)となるように配置されている。つまり、1個のラック201を1個の保持部171a〜171jの壁面193に当接するように配置することができ、その結果、10個のラック201が反時計周りに並ぶように、カルーセル170に保持されるようになっている。
【0011】
そして、カルーセル170は、駆動機構によって中心部172を軸として時計周りや反時計周りで回転することが可能となっており、第一設定位置から第十設定位置まで段階的に36°ずつ矢印A方向に回転移動することができるようになっている。
このようなカルーセル170によれば、行方向搬送機構40の第七設定位置に1個のラック201が搬送される際に、カルーセル170の第一保持部171aを第七設定位置と一致するように配置させておけば、ラック201が矢印B方向から挿入されることで第一保持部171aに保持される。また、行方向搬送機構40の第七設定位置に次の1個のラック201が搬送される際に、カルーセル170の第二保持部171bを第七設定位置と一致するように配置させておけば、次のラック201が矢印B方向から挿入されることで第二保持部171bに保持される。このように10個のラック201が各保持部171a〜171jに保持されていくようになっている。つまり、50個の採血管200がカルーセル170に保持される。このとき、採血管200のバーコードシール200aが保持前に読み出されているので、カルーセル170の各位置に保持された採血管200がどの検査内容A、B、・・・を実行しなければならないことがコンピュータ80には把握されている。よって、コンピュータ80はカルーセル170を回転させることで所定の採血管200を、プローブ(検体検査装置60)の回転軌跡であるピペット操作場所PSライン上に次々と移動させながら、50個の採血管200に収容された検体を分析していくことができる。
【0012】
コンピュータ80は、CPUとメモリとを備える。また、CPUが処理する機能をブロック化して説明すると、検査内容決定部81と検査内容実行部82とを有する。
検査内容決定部81は、バーコードリーダ50で読み出されたバーコードラベル203、204a〜204eとバーコードシール200aとに基づいて、検体検査装置60でどの検体にどの検査内容を実行するかを決定する制御を行う。
例えば、第一設定ポジションP1に1個のラック201が搬送されてきた場合に、バーコードラベル203を読み出すことにより、どのラック203であるかを把握して、バーコードラベル204a〜204e或いはバーコードシール200aのいずれかを読み出すことにより、各穴部201a〜201eの採血管200に実行する検査内容A、B、・・・を把握する。そして、コンピュータ80は、行方向搬送機構40とカルーセル170とを制御しながら、カルーセル170の各保持部171a〜171jにラック201を搬送させながら、どのラック201がどの保持部171a〜171jに搬送されたかを把握する。
【0013】
検査内容実行部82は、検査内容決定部81で決定された検査内容に基づいて、検体検査装置60で検体を分析する制御を行う。
例えば、カルーセル170の保持された50個の採血管200のうちで所定の採血管200をピペット操作場所PSライン上に移動させながら、例えば、カルーセル170を回転させることで、第一保持部171aのラック201の第一穴部201aの採血管200をピペット操作場所PSライン上に移動させ、第一穴部201aの採血管200には、検査内容Aを実行し、その後、カルーセル170を回転させることで、第二保持部171bの第二穴部201bの採血管200をピペット操作場所PSライン上に移動させ、第二穴部201bの採血管200には、検査内容Bを実行していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−19899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、カルーセル170の円板状テーブル172は、カルーセル170に保持された50個の採血管200のうちで所定の採血管200をピペット操作場所PSライン上に移動させるために、駆動機構によって中心部172を軸として時計周りや反時計周りで所定の速度で回転することになる。このとき、カルーセル170の保持部171a〜171jに保持されたラック201には、半径方向に遠心力が作用する。
よって、保持部171a〜171jからラック201が壁面193から抜け出さないようにするために、保持部171a〜171jは、コの字形状の壁面193と、半球形状のプラスチック製の凸部と、板バネ部とを備える。
板バネ部は、水平方向に所定の長さ(例えば、25mm)を有し、一端部の上面に凸部が取り付けられるとともに、他端部は、円板状テーブル172に取り付けられている。これにより、板バネ部の一端部は、上下方向に弾性を有し、つまり凸部が上下方向に移動可能となっている。そして、凸部は壁面193のコの字形状の内部に配置される。
【0016】
このような保持部171a〜171jによれば、ラック201が矢印B方向から挿入される際に、凸部の上面を押さえつけながら、凸部を下方に位置させることで挿入される。その後、ラック201が壁面193の内部に挿入された際には、板バネ部の弾性によって凸部がラック201の下面の開口部に挿入される。よって、保持部171a〜171jに保持されたラック201には、半径方向に遠心力が作用しても、保持部171a〜171jにラック201を保持することができる。
【0017】
しかしながら、このような保持部171a〜171jにラック201を、検査室では次から次と挿入していくことになるので、凸部の上面に摩擦力が働き破損することがあった。
そこで、本発明は、遠心力が作用してもカルーセルの保持部にラックを保持することができ、かつ、保持部が破損しないカルーセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するためになされた本発明のカルーセルは、中心部と周縁部とを有する円板状テーブルと、前記円板状テーブルの中心部を回転軸として回転させる駆動機構と、前記円板状テーブルの周縁部に形成され、1個のラックがそれぞれ保持される複数個の保持部とを備え、前記保持部は、前記円板状テーブルの側方となる部分が開放された開放口を有する壁面を備えるカルーセルであって、前記保持部は、前記側方と垂直となる回転軸である回転軸部を有する円板状ローラと、一端部に回転軸部が取り付けられるとともに、他端部が壁面に取り付けられることで、当該一端部が側方及び回転軸と垂直となる方向に弾性を有する板バネ部とを備え、1個のラックが、前記円板状ローラを回転させながら壁面の開放口から挿入され、前記壁面の内部に挿入された際には、前記板バネ部の弾性によって円板状ローラで壁面に押さえつけられるようにしている。
【0019】
本発明のカルーセルによれば、ラックは、円板状ローラを回転させながら壁面の開放口から挿入される。このとき、円板状ローラは回転するので、摩擦力が働かず破損しにくい。その後、壁面の内部に挿入された際には、板バネ部の弾性によって円板状ローラで壁面に押さえつけられる。よって、カルーセルの保持部に保持されたラックに、半径方向に遠心力が作用しても、保持部にラックを保持することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明のカルーセルによれば、遠心力が働いてもカルーセルの保持部にラックを保持することができ、かつ、保持部が破損しない。
【0021】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明のカルーセルは、前記ラックには、前記側方及び回転軸と垂直となる方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記ラックが壁面の内部に挿入された際には、前記円板状ローラが貫通孔の周縁部に当接するようにしてもよい。
そして、本発明のカルーセルは、前記円板状ローラは、前記回転軸部と、前記回転軸部の周りに形成された円環形状のゴム製のローラ部とを有するようにしてもよい。
さらに、本発明のカルーセルは、前記保持部は、平面視でコの字形状で所定の高さとなる壁面を備え、前記板バネ部は、上下方向に所定の長さを有し、下端部に回転軸部が取り付けられるとともに、上端部は壁面の上部に取り付けられているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る検体処理システムの一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す検体処理システムの一部の斜視図である。
【図3】採血管の一例を示す斜視図である。
【図4】ラックの一例を示す斜視図である。
【図5a】図1に示すカルーセルの一例を示す平面図である。
【図5b】図5aに示すカルーセルの斜視図である。
【図6】搬送方法について説明するためのフローチャートである。
【図7】検体処理システムの一例を示す平面図である。
【図8】図7に示す検体処理システムの一部の斜視図である。
【図9】行方向搬送機構の一例を示す平面図である。
【図10】図7に示すカルーセルの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0024】
図1は、本発明に係る検体処理システムの一例を示す平面図であり、図2は、図1に示す検体処理システムの一部の斜視図である。なお、上述した検体処理システム101と同様のものについては、同じ符号を付している。
検体処理システム1は、5個の採血管200を保持するための多数のラック201と、ベルトコンベア30と、検体検査装置60のカルーセル70に搬送する行方向搬送機構40と、バーコードシール200a等を読み出すバーコードリーダ50と、コンピュータ80とを備える。
【0025】
カルーセル70は、中心部72aと周縁部72bとを有する円板状テーブル72と、円板状テーブル72を回転させる駆動機構(図示せず)と、10個の保持部71a〜71jとを備える。
カルーセル70の周縁部72bには反時計周りに順番に並ぶように、第一保持部71a〜第十保持部71jが形成されている。各保持部71a〜71jは、平面視でコの字形状で所定の高さの壁面93を有する。そして、壁面93のコの字形状の開放口部分が円板状テーブル72の側方(−B方向)となるように配置されている。つまり、1個のラック201を1個の保持部71a〜71jの壁面93の内部に当接するように配置することができ、その結果、10個のラック201が反時計周りに並ぶように、カルーセル70に保持されるようになっている。
【0026】
そして、カルーセル70の円板状テーブル72は、駆動機構によって中心部72を軸として時計周りや反時計周りで回転することが可能となっており、第一設定位置から第十設定位置まで段階的に36°ずつ矢印A方向に回転移動することができるようになっている。
このようなカルーセル70によれば、行方向搬送機構40の第七設定位置に1個のラック201が搬送される際に、カルーセル70の第一保持部71aを第七設定位置と一致するように配置させておけば、ラック201が矢印B方向から挿入されることで第一保持部71aに保持される。また、行方向搬送機構40の第七設定位置に次の1個のラック201が搬送される際に、カルーセル70の第二保持部71bを第七設定位置と一致するように配置させておけば、次のラック201が矢印B方向から挿入されることで第二保持部71bに保持される。このように10個のラック201が各保持部71a〜71jに保持されていくようになっている。つまり、50個の採血管200がカルーセル70に保持される。このとき、採血管200のバーコードシール200aが保持前に読み出されているので、カルーセル70の各位置に保持された採血管200がどの検査内容A、B、・・・を実行しなければならないことがコンピュータ80には把握されている。よって、コンピュータ80はカルーセル70を回転させることで所定の採血管200をピペット操作場所PSライン上に次々と移動させながら、50個の採血管200に収容された検体を分析していくことができる。
【0027】
ここで、保持部71a〜71jについて詳細に説明する。図5bは、図5aに示すカルーセルの斜視図である。
保持部71a〜71jは、円板状ローラ91と板バネ部92と壁面93とを備える。
円板状ローラ91は、矢印B方向(側方)と垂直となる回転軸である円柱形状の回転軸部91aと、回転軸部91aの周りに形成された円環形状のゴム製のローラ部91bとを有する。
板バネ部92は、上下方向に所定の長さ(例えば、25mm)を有し、下端部(一端部)に回転軸部91aが取り付けられるとともに、上端部(他端部)は、壁面93のコの字形状の下辺部分の壁面の上部に取り付けられている。これにより、板バネ部92の下端部は、矢印C方向である水平方向に弾性を有し、つまり円板状ローラ91が水平方向に移動可能となっている。
【0028】
このような保持部71a〜71jによれば、ラック201が矢印B方向から挿入される際に、円板状ローラ91を回転させながら挿入される。このとき、円板状ローラ91は回転するので、摩擦力が働かず破損しない。その後、ラック201が壁面93に当接するように挿入された際には、板バネ部92の弾性によって円板状ローラ91でラック201の1個の貫通孔202の周縁部が壁面93のコの字形状の上辺部分の壁面の内壁に向かって押さえつけられる。よって、保持部71a〜71jに保持されたラック201に、半径方向に遠心力が働いても、保持部71a〜71jにラック201を保持することができる。
【0029】
コンピュータ80は、CPUとメモリとを備える。また、CPUが処理する機能をブロック化して説明すると、検査内容決定部81と検査内容実行部82とを有する。
ここで、検体処理システム1によるラック201を搬送する搬送方法について説明する。図6は、搬送方法について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、ラック201を搬送すべき位置が第一保持部71aであることを示すN=1とする。
次に、ステップS102の処理において、ベルトコンベア30が複数のラック201をY方向に(列方向)に移動させることで、1個のラック201を第一設定ポジションP1に搬送する。
次に、ステップS103の処理において、検査内容決定部81は、収納状態の筐体42を第一設定位置に配置する。
【0030】
次に、ステップS104の処理において、検査内容決定部81は、行方向搬送機構40を第一設定位置から第六設定位置まで段階的に1個の採血管200の横幅分ずつX方向(行方向)に移動させながら、バーコードリーダ50が、バーコードラベル203、204a〜204eとバーコードシール200aとを順番に読み出していく。
次に、ステップS105の処理において、検査内容決定部81は、収納状態の筐体42を第一設定位置に配置する。
【0031】
次に、ステップS106の処理において、検査内容決定部81は、収納状態の筐体42を突出状態とし、行方向搬送機構40を第一設定位置から第七設定位置まで移動させ、突出状態の筐体42を収納状態とする。つまり、ラック201をX方向(行方向)に移動させることでカルーセル70の第N保持部71に搬送する。
次に、ステップS107の処理において、N=10であるか否かを判定する。N=10でないと判定したときには、ステップS108の処理において、N=N+1とするとともにカルーセル70を一段階、回転移動させて、ステップS102の処理に戻る。
【0032】
一方、N=10であると判定したときには、ステップS109の処理において、検査内容実行部82は、カルーセル70で所定の採血管200をピペット操作場所PSライン上に次々と移動させながら、50個の採血管200に収容された検体を分析していく。
次に、検査を終了するか否かを判定する。検査を終了しないと判定したときには、ステップS101の処理に戻る。
一方、検査を終了すると判定したときには、本フローチャートを終了させる。
【0033】
以上のように、本発明の検体処理システム1によれば、遠心力が働いてもカルーセル70の保持部71a〜71jにラック201を保持することができ、かつ、保持部71a〜71jが破損しない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、臨床検査において患者から採取された血液や尿等の検体を分析するための検体分析装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1、101: 検体分析装置
30: ベルトコンベア
40: 行方向搬送機構
50: バーコードリーダ
60: 分析検査装置
70: カルーセル
71: 保持部
72: 円板状テーブル
72a: 中心部
72b: 周縁部
91: 円板状ローラ
91a: 回転軸部
92: 板バネ部
93: 壁面
200: 採血管
200a:バーコードシール
201: ラック
203: バーコードラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部と周縁部とを有する円板状テーブルと、
前記円板状テーブルの中心部を回転軸として回転させる駆動機構と、
前記円板状テーブルの周縁部に形成され、1個のラックがそれぞれ保持される複数個の保持部とを備え、
前記保持部は、前記円板状テーブルの側方となる部分が開放された開放口を有する壁面を備えるカルーセルであって、
前記保持部は、前記側方と垂直となる回転軸である回転軸部を有する円板状ローラと、
一端部に回転軸部が取り付けられるとともに、他端部が壁面に取り付けられることで、当該一端部が側方及び回転軸と垂直となる方向に弾性を有する板バネ部とを備え、
1個のラックが、前記円板状ローラを回転させながら壁面の開放口から挿入され、前記壁面の内部に挿入された際には、前記板バネ部の弾性によって円板状ローラで壁面に押さえつけられることを特徴とするカルーセル。
【請求項2】
前記ラックには、前記側方及び回転軸と垂直となる方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記ラックが壁面の内部に挿入された際には、前記円板状ローラが貫通孔の周縁部に当接することを特徴とする請求項1に記載のカルーセル。
【請求項3】
前記円板状ローラは、前記回転軸部と、前記回転軸部の周りに形成された円環形状のゴム製のローラ部とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカルーセル。
【請求項4】
前記保持部は、平面視でコの字形状で所定の高さとなる壁面を備え、
前記板バネ部は、上下方向に所定の長さを有し、下端部に回転軸部が取り付けられるとともに、上端部は壁面の上部に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のカルーセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−185651(P2011−185651A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49270(P2010−49270)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】