説明

カレット、カレットの製造装置及びカレットの製造方法

【課題】 一定形状に形成されてガラス溶融炉の初動時に用いて好適なカレットを効率よく製造する。
【解決手段】 アルミナ製のルツボ21内に所定量のガラスビーズ12を入れ、蓋24を被せて収容パレット22の保持部22aに保持させて並べる。収容パレット22を電気炉23へ入れ、ルツボ21内のガラスビーズ12の表面が溶融する程度に加熱する。収容パレット22を取り出して冷却させた後、ルツボ21を逆さまにし、複数のガラスビーズ12の表面が溶着して一体化したカレット11を取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス溶融炉の初動時に用いるカレット、そのカレットの製造装置及びカレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉施設にて発生する高放射性廃液は、粒子状のガラスビーズからなるガラス原料とともにガラス溶融炉に投入することにより、溶融ガラスに混入され、その後、溶融炉の流下ノズルから送り出されて固化体とされ、この固化体の状態にて廃棄処理されていた(例えば、特許文献1参照)。
図4に示すように、ガラス溶融炉1では、その初動時に、炉内に投入する粒子状のガラスビーズが溶融せずに流下ノズル2から落下することがないように、炉底部にガラスカレット3を敷き詰めて表面を溶融固化して流下ノズル2を塞いでいる。
ガラスカレット3は、図5に示すように、ガラスビーズ4を入れたステンレス製のパレット5を電気炉6で加熱してガラスビーズ4を溶融させ、その後、パレット5を電気炉6から取り出して溶融ガラスを冷却、固化させ、この固化ガラス7をパレット5から外力を加えて取り出し、ハンマーなどの工具で粉砕して適当な大きさとすることにより得ていた。
【特許文献1】特開2001−59887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、廃液を混入させて固化させるガラス原料は、高純度である必要があるが、上記のようにカレット3を形成すると、ガラスビーズ4が溶融固化されるパレット5や、固化ガラスの粉砕時に用いる工具などの成分の混入が避けられなかった。
また、固化ガラスをパレット5から外力を加えて取り出し、さらに、粉砕するという煩雑な作業を行っていたため、作業効率が悪く、計画的な生産が困難であった。
しかも、粉砕したカレット3は、その形状、大きさが様々であり、特に、細かくなりすぎると、ガラス溶融炉1の流下ノズル2から落下してしまうため、使用できない不良品となり、歩留まりが悪かった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、一定形状に形成されてガラス溶融炉の初動時に用いて好適なカレット、及びこのカレットを不純物の混入なく効率良く製造することが可能なカレットの製造装置、製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のカレットは、炉内に供給されるガラス原料を加熱溶融して炉底部の流下ノズルから流出させるガラス溶融炉の初動時に前記炉底部に敷き詰められるカレットであって、複数のガラスビーズの表面が互いに溶着されて一体化され、前記流下ノズルの径よりも大きな前記ガラスビーズの集合体とされたことを特徴とする。
【0006】
このように、複数のガラスビーズの表面が互いに溶着されて一体化され、流下ノズルの径よりも大きな集合体とされているので、そのままガラス溶融炉の炉底部に敷き詰めることができ、ガラス溶融炉の初動時の作業を大幅に簡略化することができる。
【0007】
本発明のカレットの製造装置は、炉内に供給されるガラス原料を加熱溶融して炉底部の流下ノズルから流出させるガラス溶融炉の初動時に前記炉底部に敷き詰められるカレットの製造装置であって、複数のガラスビーズが入れられるルツボと、該ルツボを加熱する加熱炉とを備えたことを特徴とする。
【0008】
すなわち、ルツボへガラスビーズを入れて加熱炉によって加熱することにより、複数のガラスビーズの表面が互いに溶着されて一体化された形状、大きさの統一されたカレットを極めて容易に製造することができる。
これにより、カレットの不良率を大幅に抑えることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0009】
また、本発明のカレットの製造装置は、前記ルツボが前記ガラスビーズと同一材料から形成されていることを特徴とする。
このように、カレットとなるガラスビーズと同一材料からルツボが形成されているので、不純物の混入がない高純度のカレットを製造することができ、歩留まりをさらに向上させることができるとともに、ガラス溶融炉にて溶融され固化されたガラス固化体の品質も高めることができる。
【0010】
さらに、前記ルツボがアルミナから形成されていることを特徴とする。
このように、カレットを構成するガラスビーズと同質材料であるアルミナによってルツボが形成されているので、不純物の混入がない高純度のカレットを製造することができ、ガラス溶融炉にて溶融され固化されたガラス固化体の品質も高めることができる。
【0011】
また、前記ルツボは、その底部が円弧状の湾曲面とされていることを特徴とする。
このように、ルツボの底部が円弧状の湾曲面とされているので、ガラスビーズを一体化したカレットとの剥離性が高められ、カレットを容易に取り出すことができ、取り出しのための工具の使用をなくすことができ、工具からの不純物の混入を防止することができる。
【0012】
また、複数の前記ルツボを保持した状態にて前記加熱炉内へ収容可能な収容パレットを備えたことを特徴とする。
そして、複数のルツボを保持した状態にて加熱炉内へ収容可能な収容パレットを用いることにより、複数のカレットを効率良く製造することができる。
【0013】
本発明のカレットの製造方法は、炉内に供給されるガラス原料を加熱溶融して炉底部の流下ノズルから流出させるガラス溶融炉の初動時に前記炉底部に敷き詰められるカレットの製造方法であって、複数のガラスビーズをルツボに入れて加熱して前記ガラスビーズの表面を溶融させ、冷却後に、表面が互いに溶着されて一体化された前記ガラスビーズの集合体からなるカレットを前記ルツボから取り出すことを特徴とする。
【0014】
つまり、パレットにて溶融固化させたガラスを粉砕させるような作業工程をなくすことができ、極めて容易にかつ効率良くカレットを製造することができる。また、ガラスを溶融固化させるパレットあるいは粉砕のための工具を用いないので、カレットへの不純物の混入を確実に防止することができる。
【0015】
また、本発明のカレットの製造方法は、前記ルツボを逆さまにすることにより前記カレットを前記ルツボから剥離させて取り出すことを特徴とする。
このように、単にルツボを逆さまにすることによりカレットを取り出すので、作業効率を大幅に向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカレットによれば、一定形状に形成されてガラス溶融炉の初動時に用いて好適である。
また、本発明のカレットの製造装置及び製造方法によれば、不純物の混入なく効率良くカレットを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るカレットの斜視図、図2は、カレットが用いられるガラス溶融炉の断面図、図3は、カレットの製造装置及び製造方法を説明する概略工程図である。
図1に示すように、本実施形態に係るカレット11は、複数のガラスビーズ12からなる集合体である。カレット11は、集合体を構成するガラスビーズ12の表面が互いに溶着されて一体化されている。このカレット11を構成するガラスビーズ12は、高放射性廃液を混入させるガラス原料となるガラスビーズと同一のものが用いられている。
【0018】
このカレット11は、図2に示すように、ガラス溶融炉13の初動時に、炉底部に敷き詰められて表面を溶融固化される。ここで、カレット11は、ガラス溶融炉13の流下ノズル14の径よりも十分に大きな大きさに形成されており、流下ノズル14から落下することはない。
そして、ガラス溶融炉13は、カレット11によって流下ノズル14が塞がれ、その後に炉内へ投入される高放射性廃液及びガラスビーズの流下ノズル14からの流出が防がれる。
【0019】
次に、上記カレット11を製造する場合について説明する。
図3に示すように、カレット11を製造する装置は、ガラスビーズ12が入れられるルツボ21と、このルツボ21を整列状態に保持する収容パレット22と、収容パレット22に保持された複数のルツボ21内のガラスビーズ12を加熱溶融させる加熱炉である電気炉23とを備えている。
【0020】
ルツボ21は、アルミナから形成されており、その底部が円弧状の湾曲面とされた統一規格形状のものである。また、このルツボ21には、その上部に蓋24が被せられる。
収容パレット22は、例えば、ワイヤを折り曲げ加工することにより形成された複数の保持部22aを有しており、これら保持部22aに、それぞれルツボ21が収容または収容可能されて保持される。
【0021】
カレット11を製造する場合は、まず、ルツボ21内に所定量のガラスビーズ12を入れ、次いで、蓋24を被せて収容パレット22の保持部22aに保持させて並べる。
次に、複数のルツボ21を収容した収容パレット22を、電気炉23へ入れ、この電気炉23によって加熱する。なお、電気炉23による加熱温度及び加熱時間は、ルツボ21内のガラスビーズ12の表面が溶融する程度である。
【0022】
所定温度及び所定時間による加熱が終了したら、収容パレット22を取り出して冷却させる。これにより、ルツボ21内にて表面が溶融したガラスビーズ12同士が、互いに溶着して一体化する。
その後、収容パレット22の保持部22aに保持されているルツボ21を、蓋24を取り外してアルミナ製のパレット25上にて逆さまにする。
このようにすると、ガラスビーズ12同士が互いに溶着して一体化したガラスビーズ12の集合体であるカレット11が、ルツボ21から剥離してパレット25上に取り出される。
【0023】
そして、上記のようにして製造されたカレット11によれば、複数のガラスビーズ12の表面が互いに溶着されて一体化され、ガラス溶融炉13の流下ノズル14の径よりも大きな集合体とされているので、そのままガラス溶融炉13の炉底部に敷き詰めることができ、ガラス溶融炉13の初動時の作業を大幅に簡略化することができる。
【0024】
また、カレット11を製造する装置及び製造方法によれば、ルツボ21へガラスビーズ12を入れて電気炉23によって加熱することにより、複数のガラスビーズ12の表面が互いに溶着されて一体化された形状、大きさが統一されたカレット11を極めて容易に製造することができる。
しかも、ガラスを溶融固化させるパレットあるいは粉砕のための工具を用いないので、カレット11への不純物の混入を確実に防止することができる。
これにより、カレット11の不良率を大幅(約3%未満)に抑えることができ、歩留まりを向上させることができる。
また、単にルツボ21を逆さまにすることによりカレット11を取り出すので、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0025】
また、カレット11となるガラスビーズ12と同質の材料であるアルミナからルツボ21が形成されているので、不純物の混入がない高純度のカレット11を製造することができ、ガラス溶融炉13にて溶融され固化されたガラス固化体の品質も高めることができる。
さらに、ルツボ21の底部が円弧状の湾曲面とされているので、ガラスビーズ12を一体化したカレット11との剥離性が高められ、カレット11を逆さまにするだけで容易に取り出すことができ、取り出しのための工具の使用をなくすことができ、工具からの不純物の混入を防止することができる。
【0026】
また、複数のルツボ21を保持した状態にて電気炉23内へ収容可能な収容パレット22を用いることにより、複数のカレット11を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るカレットの斜視図である。
【図2】カレットが用いられるガラス溶融炉の断面図である。
【図3】カレットの製造装置及び製造方法を説明する概略工程図である。
【図4】従来技術の初動時におけるガラス溶融炉の断面図である。
【図5】従来技術におけるカレットを形成する手順を説明する概略工程図である。
【符号の説明】
【0028】
11…カレット、12…ガラスビーズ、13…ガラス溶融炉、14…流下ノズル、21…ルツボ、22…収容パレット、23…電気炉(加熱炉)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に供給されるガラス原料を加熱溶融して炉底部の流下ノズルから流出させるガラス溶融炉の初動時に前記炉底部に敷き詰められるカレットであって、
複数のガラスビーズの表面が互いに溶着されて一体化され、前記流下ノズルの径よりも大きな前記ガラスビーズの集合体とされたことを特徴とするカレット。
【請求項2】
炉内に供給されるガラス原料を加熱溶融して炉底部の流下ノズルから流出させるガラス溶融炉の初動時に前記炉底部に敷き詰められるカレットの製造装置であって、
複数のガラスビーズが入れられるルツボと、該ルツボを加熱する加熱炉とを備えたことを特徴とするカレットの製造装置。
【請求項3】
前記ルツボが前記ガラスビーズと同一材料から形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカレットの製造装置。
【請求項4】
前記ルツボがアルミナから形成されていることを特徴とする請求項3に記載のカレットの製造装置。
【請求項5】
前記ルツボは、その底部が円弧状の湾曲面とされていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のカレットの製造装置。
【請求項6】
複数の前記ルツボを保持した状態にて前記加熱炉内へ収容可能な収容パレットを備えたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のカレットの製造装置。
【請求項7】
炉内に供給されるガラス原料を加熱溶融して炉底部の流下ノズルから流出させるガラス溶融炉の初動時に前記炉底部に敷き詰められるカレットの製造方法であって、
複数のガラスビーズをルツボに入れて加熱して前記ガラスビーズの表面を溶融させ、冷却後に、表面が互いに溶着されて一体化された前記ガラスビーズの集合体からなるカレットを前記ルツボから取り出すことを特徴とするカレットの製造方法。
【請求項8】
前記ルツボを逆さまにすることにより前記カレットを前記ルツボから剥離させて取り出すことを特徴とする請求項7に記載のカレットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−16264(P2006−16264A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196649(P2004−196649)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】