説明

カロテノイド化合物のシス異性体を含む組成物及び方法

【課題】脂質により可溶であり、結晶化する傾向が少なく、また凝集する傾向が低い、極めて高い生物学的利用可能な及び/又は生物有効な形態のカロテノイドの提供。
【解決手段】カロテノイド化合物のシス異性体を強化した少なくとも1種のカロテノイド含有抽出物、濃縮物又はオレオレジンを含む一次組成物。カロテノイド含有材料が、植物若しくは野菜材料、微生物、酵母又は動物起源の生成物から取得、抽出又は精製される。植物又は野菜材料が、トマト、ニンジン、桃、アプリコット、オレンジ、メロン、グアバ、パパイヤ、グレープフルーツ、バラの実、大豆、緑茶、コーヒーの生豆、スパイス、ブドウ又はカカオである。カロテノイド化合物が、リコペン、カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン、カプサンシン、カンタキサンチン、ルテイン、フィトフルエン又はフィトエンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロテノイド化合物のシス異性体を強化した少なくとも1種のカロテノイド含有材料を含む一次組成物、及びそれを生成する方法に関する。本発明はまた、食品、食品補助剤(foodsupplement)、化粧品又は製剤中にこの一次組成物を含む経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイド、すなわちリコペンを含む市販されている組成物は、既に知られている。リコペンは、複数の役割、特に慢性疾患を軽減する酸化防止剤の役割があることが知られている天然物である。リコペンは、様々な天然物、特にトマト、メロン、グアバ及びグレープフルーツ中に存在する。一般に市販されているリコペンを含む組成物は、オレオレジン(oleoresin)である。このオレオレジンの問題は、その中に存在するリコペンの生物学的利用能が不十分なことである。
【0003】
例えば、欧州特許第278 284号は、合成カロテノイドを含む粉状組成物に関する。この組成物の問題は、食品分野で使用できないことであり、さらに、着色用途を想定していることである。
【0004】
EP1 289 383は、少なくとも1種の親油性生物活性化合物及び乳清タンパク質を、親油性生物活性化合物の生物学的利用能を増大させるのに有効な量で含む一次組成物を提供しているが、依然として、現在市販されている製品よりも高い生物学的利用能及び生物有効性を有するカロテノイド含有生成物が求められている。カロテノイド含有組成物は、脂質及び有機溶媒に可溶であり、結晶化する傾向が少なく、また凝集する傾向が低くなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、シス異性体を強化した少なくとも1種のカロテノイド含有材料(carotenoid−containingmaterial)を含み、そのシス異性体の含有量がカロテノイド化合物の生物学的利用能及び/又は生物有効性を増大させるのに有効な量である一次組成物を提供することが本発明の第1の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
カロテノイド含有材料は、好適には植物若しくは野菜材料、微生物、酵母又は動物起源の生成物から取得、抽出、強化又は精製した抽出物、濃縮物又はオレオレジンである。
【0007】
一次組成物の好ましい形態は、経口投与するための食品、例えば栄養組成物、栄養補助食品、ペットフード製品、化粧品又は製剤中の添加物としてのものである。
【0008】
本発明はまた、当該一次組成物、一次組成物を含む栄養補助食品、化粧品又は製剤を生成する方法に関する。
【0009】
本発明による一次組成物を調製する方法は、上記のカロテノイド含有材料を、一次組成物中のカロテノイド化合物の生物学的利用能及び/又は生物有効性を増大させるのに有効な量までシス異性体の含有量を増大させるのに十分な条件下に置くことを含む。
【0010】
他の態様では、本発明は、皮膚の健康を改善するため、特に皮膚の光防護のため又は皮膚組織を老化から守るための経口、化粧又は薬剤組成物を調製するための、シス異性体を強化した少なくとも1種のカロテノイド含有材料を含む一次組成物の使用を提供する。
【0011】
本発明はまた、心血管疾患又は癌を予防又は治療するための経口、化粧又は薬剤組成物を調製するための前記一次組成物の使用に関する。
【0012】
本発明は今回、天然物から得た改良組成物を消費者が利用できるようにしている。これは、カロテノイドのシス異性体含有量が既存の組成物よりも高い一次組成物を提供する。一次組成物は、脂質により可溶であり、結晶化する傾向が少なく、また凝集する傾向が低い、極めて高い生物学的利用可能な及び/又は生物有効な形態のカロテノイドを提供する。
【0013】
本発明の特徴は、添付図面を考慮して以下の説明を参照することにより、他の目的及び利点と共に最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による方法によって得られた生成物を示した、マイクロ波照射によって生成したリコペン異性体の典型的なHPLCクロマトグラムを示す図である。
【図2】従来の加熱に対してマイクロ波照射の利点を概説する図である。
【図3】リコペン異性体のHPLCクロマトグラムの比較を示す図である。(A)はトマトオレオレジンのマイクロ波照射により生成した異性体のクロマトグラムであり、(B)は、マイクロ波照射により生成し、溶媒分画により強化した異性体のクロマトグラムである。
【図4】リコペン異性体のHPLCクロマトグラムを示す図である。(A)は、トマトオレオレジンのヨウ素触媒光異性化により生成した異性体のクロマトグラムであり、(B)ヨウ素触媒光異性化により生成し、溶媒分画により強化した異性体のクロマトグラムである。
【図5】リコペン異性体の比較HPLCクロマトグラムを示す図である。(A)酢酸エチル中でトマトオレオレジンを加熱することにより生成した異性体のクロマトグラムであり、(B)酢酸エチル中でトマトオレオレジンを加熱することにより生成し、溶媒分画により強化した異性体のクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の目的によれば、前記カロテノイド化合物のシス異性体を強化したカロテノイド含有材料を含む一次組成物に関する。
【0016】
好ましい実施形態では、カロテノイド含有材料は、例えば、抽出物、濃縮物又はオレオレジンの形態である。以下の説明の範囲内で、「オレオレジン(oleoresin)」という用語は、カロテノイド、トリグリセリド、リン脂質、トコフェロール、トコトリエノール、フィトステロール及び他のより重要でない化合物を含む、カロテノイド含有材料の脂質抽出物を表すと理解される。
【0017】
好適には、カロテノイド含有材料は、植物若しくは野菜材料、微生物、酵母又は動物起源の生成物から取得、抽出、強化又は精製した抽出物、濃縮物或いはオレオレジンである。これにさらに、下記のように、そのカロテノイドのシス異性体含有量を増大させるための処理を施す。
【0018】
カロテノイドの供給源が植物起源由来の場合、それは、野菜、葉、花、果実及び植物の他の部分であってよい。好ましい実施形態では、カロテノイドの供給源は、例えば、トマト(すなわち、種を含む又は含まない、ホールトマト、トマト抽出物、トマトの果肉、トマトピューレ、トマトの皮)、ニンジン、桃、アプリコット、オレンジ、メロン、グアバ、パパイヤ、グレープフルーツ、バラの実、大豆、緑茶、コーヒーの生豆、生姜などのスパイス、ブドウ及びカカオである。適当な植物又は野菜濃縮物は、例えば切りたての植物若しくは野菜又はそのそれぞれの根、果実若しくは種を乾燥又は凍結乾燥し、次いで場合によって乾燥した物質を粉砕又は粗砕することによって得ることができる。上述の植物又は野菜の抽出物を得る適当な方法は、当技術分野で既知である。植物又は野菜抽出物は、例えば切りたての若しくは加工した植物又は野菜或いはそのそれぞれの根、果実又は種を、例えば水又は1種若しくは複数の食品用溶媒或いは水と1種若しくは複数の食品用溶媒の混合物で抽出することによって得ることができる。好ましくは、本発明による抽出物及び濃縮物は、脂質性又は水性であってよい。カロテノイドは脂溶性なので、水を用いた抽出により、例えば、糖類、アミノ酸、可溶性タンパク質、有機酸など水溶性の不要な成分が除去される。
【0019】
カロテノイド含有材料を微生物から得る場合、カロテノイドを産生する任意の微生物、例えばプロバイオティック微生物、特に乳酸菌などを使用することができる。また、動物起源の生成物は、例えば、サケ、エビ又は肝臓抽出物若しくは乳画分由来であってよい。「乳画分」という用語は、乳の任意の部分を表すと理解される。
【0020】
最も好ましい実施形態では、カロテノイド含有材料はオレオレジンである。上述の植物又は野菜からオレオレジンを得る適当な方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、オレオレジンは、食品事業、化粧品又は医薬品に適合する溶媒を用いる脂質抽出によって得られる。従来の方法によって調製したオレオレジンは、約0.05%〜50重量%のカロテノイド含有量を有する。それらのカロテノイドの全トランス異性体の含有量は、通常シス異性体のものよりも高く、例えば選択されたトマトオレオレジン中のリコペンのシス−トランス異性体の比は約7:93である。オレオレジンは、本発明による一次組成物を得るのに好ましい出発物質である。というのは、オレオレジンは他のカロテノイド又はビタミンEなどの酸化防止剤を含み、これらはまた、当該組成物を安定化させるからである。オレオレジン中のカロテノイド化合物の活性及び安定性は、特に異性化過程中に改善され、一次組成物中のシス−リコペンの収率も増加している。
【0021】
カロテノイド含有材料は、例えば、リコペン、カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン、カプサンシン、カンタキサンチン、ルテイン、フィトフルエン又はフィトエンなどのカロテン及びキサントフィルを含むことが好ましい。前記カロテノイド化合物は、一次組成物中のシス異性体画分を増大させるための処理に供されている。
【0022】
したがって、このような一次組成物を調製するための方法であって、上記のカロテノイド含有材料を、一次組成物中のカロテノイド化合物の生物学的利用能及び/又は生物有効性を増大させるのに有効な量までカロテノイドのシス異性体の含有量を増大させるのに十分な条件下に置くステップを含む、方法を提供することが本発明の他の目的である。
【0023】
この方法は、例えば、熱若しくは酸処理、電磁波照射又はラジカル反応の形態であってよい。
【0024】
最も好ましい実施形態では、抽出物、濃縮物又はオレオレジンの形態のカロテノイド含有材料に、マイクロ波照射又は非熱処理を含む他の処理を施す。マイクロ波照射の条件は、材料の量及び品質によって決まる。オレオレジンを使用する場合、電子レンジの温度が少なくとも100℃、好ましくは100〜180℃、最も好ましくは115〜140℃になるように出力及び時間を調整する。水性抽出物を使用する場合、マイクロ波照射に適合する媒体を使用すればよい。媒体の目的は、カロテノイドを可溶化する又は分散させることである。酸化防止剤が存在し、且つ光がない場合に窒素下で異性化を行うと、損失を最小限にすることができる。異性化収率は、媒体中に外因性脂質を加えることによって改善することもできる。
【0025】
その生成したカロテノイド含有化合物の異性体には、所定の使用に基づいて一次組成物の異性体プロフィールを改変する他の処理を施してもよい。一部の特定のシス異性体の強化は、例えば、選択された有機溶媒中にシス異性体を可溶化させ、続いて遠心分離又はろ過を用いて相分離することによって達成することができる。
【0026】
次いで一次組成物中のシス:トランス異性体比は、少なくとも20:80、好ましくは20:80〜95:5、より好ましくは30:70〜90:10まで増大させることができる。
【0027】
したがって、本発明は、化合物単独よりも優れた生物学的利用能及び/又は生物有効性を有するカロテノイド化合物を含む、粉末、液体又はゲルの形態の一次組成物を提供する。また、粉末形態を選択する場合、一次組成物は、高水分散性組成物の形態であってよい。この場合、粉末は周囲温度で水に分散することができる。一次組成物はまた、結晶化する傾向が少なく、また凝集する傾向が低い、脂質及び有機溶媒に特に高可溶性の形態のカロテノイドを提供する。
【0028】
本発明によれば、一次組成物は、単独で、或いは例えば、ビタミンC、ビタミンE(トコフェロール及びトコトリエノール)、カロテノイド(カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチンなど)ユビキノン(例えばCoQ10)、カテキン(例えばエピガロカテキン没食子酸塩)、ポリフェノール及び/又はジテルペンを含むコーヒー抽出物(例えばカーウェオール及びカフェストール)、チコリの抽出物、イチョウ抽出物、プロアントシアニジンが豊富に含まれているブドウ又はブドウの種抽出物、香辛料抽出物(例えばローズマリー)、イソフラボン及び関連する植物エストロゲンを含む大豆抽出物並びに抗酸化活性をもつ他のフラボノイド供給源、脂肪酸、例えばn−3脂肪酸、フィトステロール、前生物的線維、プロバイオティック微生物、タウリン、レスベラトロル、アミノ酸、セレン及びグルタチオンの前駆体、又は乳清タンパク質などのタンパク質など他の活性化合物と伴に使用することができる。
【0029】
組成物は、付加的に1種又は複数の乳化剤、安定剤及び他の添加物を含む。リン脂質、例えばレシチン、モノ又はトリステアリン酸、モノラウリン酸、モノパルミチン酸、モノ又はトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノ又はジグリセリドなど食品分野に適合する乳化剤が使用される。また食品事業、化粧品又は医薬品で知られているどんなタイプの安定剤も使用することができる。添加物として、香味料、着色剤及び食品事業、化粧品又は医薬品で知られている任意の他の添加物が使用される。これらの乳化剤、安定剤及び添加物は、一次組成物の最終用途に応じて加えられる。
【0030】
他の目的によれば、本発明は、食品、食品補助剤、ペットフード製品、化粧品又は製剤中に上記の一次組成物を含む経口組成物に関する。
【0031】
好ましい実施形態では、ヒト摂取のための食品組成物を、上記一次組成物で補充する。この組成物は、完全栄養調合乳、乳製品、冷蔵又は貯蔵安定飲料、ミネラルウォーター、液体飲料、スープ、栄養補助食品(dietarysupplement)、食事代替品、栄養バー、菓子、乳又は発酵乳製品、ヨーグルト、ミルクベース粉末、経腸栄養製品、乳児用調合乳、乳児用栄養製品、穀物製品又は発酵させた穀物ベース製品、アイスクリーム、チョコレート、コーヒー、マヨネーズ、トマトピューレ又はサラダドレッシングなどの料理用製品或いはペットフードであってよい。
【0032】
この場合、例えばリコペンなどの一次組成物中に含まれているカロテノイドの1日摂取量が約0.001〜50mgになるように、粉末を上述の食品又は飲料中に溶解させる。1日当たり約5〜20mg程度の1日摂取量を想定することが好ましい。
【0033】
経口投与のための栄養補給剤は、約0.001〜100%の用量の一次組成物を含むカプセル剤、ゼラチンカプセル剤、軟カプセル剤、錠剤、糖衣錠、丸剤、パスタ剤又は香錠、ゴム、或いは飲用液剤又は乳剤、シロップ剤又はゲル剤であってよく、その場合これらは、直接水で又は任意の他の既知の手段によって摂取することができる。この栄養補給剤はまた、甘味料、安定剤、添加物、香味料又は着色剤を含んでいてもよい。化粧目的の栄養補給剤は、皮膚に対して活性な化合物をさらに含んでいてよい。それらを調製するための方法は、常識的事項である。
【0034】
別の実施形態では、薬剤組成物は、予防及び/又は治療的な処置のために投与することができる。治療的使用では、組成物を、以下に記載のように、疾患の症状及びその合併症を治癒又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で、既に疾患に罹っている患者に投与する。これを達成するのに十分な量は、「治療有効投与量」と定義する。このために有効な量は、疾患の重症度並びに患者の体重及び全身状態によって決まるはずである。
【0035】
予防的使用では、本発明による組成物は、特定の疾患に罹り易い、さもなければ具体的疾患のリスクがある患者に投与する。このような量は、「予防有効投与量」と定義する。この使用では、正確な量はやはり患者の容態及び体重によって決まる。
【0036】
本発明の化合物は、薬剤として許容される担体と一緒に投与することが好ましく、担体の性質は投与の形態、例えば非経口、静脈内、経口及び局所(眼を含む)経路によって異なる。所望の製剤は、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリンセルロース、炭酸マグネシウムを含む種々の賦形剤を用いて作製することができる。この組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、乾燥経口栄養補助食品、ウェット経口栄養補助食品、乾燥経管栄養、ウェット経管栄養などであってよい。
【0037】
ヒトの場合、本発明による薬剤組成物は、1日の投与に対して、カロテノイド量が約0.01mg〜100mgとなるような量の上記一次組成物を含むことが好ましい。ペットに毎日投与する場合、カロテノイド量は、約0.01mg〜100mgである。
【0038】
当業者が、自らの知識に基づき、注射、局所適用、鼻腔内投与、埋込又は経皮徐放システムなどによる投与方法による投与経路を考慮に入れて、標的である所定の組織、例えば皮膚、結腸、胃、腎臓又は肝臓に活性化合物を送達するために適切な成分及び生薬形態を選択することが理解されよう。
【0039】
本発明はまた、上記の一次組成物を含む化粧組成物に関する。これは、例えば、ローション剤、シャンプー、クリーム剤、日焼け止め、日焼け後クリーム、抗老化クリーム及び/又は軟膏剤に調製することができる。この場合、一次組成物の含有量は、10−10〜10%である。化粧組成物は、10−8〜5%のカロテノイド化合物を含むことが好ましい。局所的に使用できるこの組成物は、化粧品に使用できる脂肪又は油、例えばCTFA著作物、化粧品成分ハンドブック(CosmeticIngredients Handbook,Washington)に記載されているものをさらに含む。化粧品に有効な他の成分を加えることも可能である。この組成物は、構成剤(structuringagent)及び乳化剤をさらに含む。他の賦形剤、着色剤、芳香剤又は乳白剤も組成物に加えることができる。この化粧品は、確実に目的物質を皮膚中に速く浸透させ、且つ貯蔵中におけるその分解を防ぐ、当業者に既知の異なる成分の混合物を含むであろうことが理解されよう。
【0040】
本発明の概念は、現在使用されている薬物を補助するアジュバント療法としてさらに適用できることが理解されたい。本発明の化合物は食品素材と一緒に容易に投与できるので、目的物質を多量に含む特別な臨床食品を使用することができる。この明細書を添付の特許請求の範囲と一緒に読んだとき、当業者は、本明細書に記載した具体的な実施形態に対する種々の異なる代替法を予想するであろうことが明らかである。
【0041】
本発明はさらに、皮膚の組織を老化から守るための組成物を調製するため、特にコラゲナーゼの阻害及びコラーゲンの合成の増強による皮膚及び/又は粘膜への損傷を妨げるための、上記の一次組成物、或いは経口組成物又は化粧組成物の使用に関する。実際、上記の一次組成物の使用により、例えば、体内におけるカロテノイド化合物の生物学的利用能を高め、皮膚の老化を遅らせることが可能になる。これはまた、感じやすい、乾燥若しくは敏感な皮膚の予防又は治療に、或いは皮膚密度若しくは締まりの改善、皮膚光防護の回復、心血管疾患若しくは障害及び癌の予防又は治療を行うのに有用なものでもよい。これらはまた、髪又は毛皮密度、繊維直径、色、油性、光沢性の向上及び髪又は毛皮の減少を防ぐのに役立つなどペット動物の髪及び毛皮に対して特定の利点がある。
【0042】
ヒト又はペットの皮膚に対する本発明による一次組成物の栄養補充効果は、最少紅斑量(MED)、比色分析、経表皮水分損失、DNA修復(例えば53ページ)、インターロイキン及びプロテオグリカン産生、又はコラゲナーゼ活性、バリア機能若しくは細胞再生の測定、或いは超音波診断法を含む従来の方法を用いて測定することができる。
【0043】
以下の実施例は、それに対して限定しないで本発明をより詳細に例示している。全ての百分率は、特に指示がない限り重量によって示している。
【実施例】
【0044】
(実施例1:マイクロ波処理による一次組成物の調製)
イスラエルのLycoRed Natural ProductsIndustries,Ltd.製のリコペンオレオレジン25gに、約105℃の温度、2.45GHzで150秒のマイクロ波処理を施す。このようにして得た一次組成物を、カロテノイド分解を防ぐために窒素下で冷却する。得られた組成物におけるリコペンに対するシス:トランス異性体の比は、約65:35である。
【0045】
(実施例2:熱処理による一次組成物の調製)
酢酸エチル30mLに溶かしたオレオレジン(Indena 10%リコペン)0.28gを、窒素雰囲気で還流させながら1時間加熱し、減圧下で溶媒を蒸発させることによって異性化する。シス:トランス異性体比は、加熱後約35%である。
【0046】
(実施例3:ラジカル反応による一次組成物の調製)
CHCl100mLに溶かしたオレオレジン(Indena 10%リコペン)2gをヨウ素溶液(CHCl 298μLに溶かしたヨウ素2.8mg)116μLと混合する。この混合物を室温で1時間50分光異性化し、溶媒を減圧下で除去する。シス:トランス異性体比は、光異性化後約77%である。
【0047】
(実施例4:熱反応による一次組成物の調製)
トマトペースト(Thomy)10gを室温で高オレイン酸ひまわり油(Trisun)10gと混合する。この混合物を、プレートヒーターを用いて15分間加熱する(最終温度100℃)。シス:トランス異性体比は、加熱後40%である。
【0048】
(実施例5:マイクロ波処理及び従来の加熱によるリコペン異性化の比較)
マイクロ波又は従来の加熱(オイルバス)によって処理したイスラエルのLycoRedNatural Products Industries,Ltd.製のトマトオレオレジンの異性化収率を測定する。
【0049】
それには、電子レンジ(2.45GHz)内で最長150秒までの様々な時間、ガラスバイアル中のトマトオレオレジン(Lycored6%)に照射した。各照射時間の終了時に、オレオレジン試料の温度を測定した。冷却後、試料をn−ヘキサン(BHT 200ppmを含む)中に溶解させ、HPLCによって異性体形成について分析した。さらに、ガラスバイアル中のトマトオレオレジンを、マイクロ波処理の終了時に既に測定したものと同じ温度までオイルバス中で加熱した。これらを直ちにオイルバスから取り出し、そのままにして冷却し、マイクロ波照射試料と同じ方法で分析した。Schierleら(1997)FoodChem.59、459〜65頁からリコペン異性体測定に関するHPLC法を使用した。
【0050】
結果を図1及び2に示す。図1は、マイクロ波照射によって、主としてリコペンの9−及び13−シス異性体がいくつかの他の未知の異性体及び残りの全トランスリコペンと共に生成したことを示す。図2は、従来の方法で加熱した試料と比べて、リコペン異性化がマイクロ波で処理したオレオレジンより強く、シス異性体を生成するのに必要な温度がより低かったことを示す。
【0051】
結論として、マイクロ波は、リコペンの幾何異性体を生成するのに極めて効率的な方法である。
【0052】
(実施例6:加工及び分画したトマトオレオレジン中のリコペンシス異性体の量)
Indena,spa.製のトマトオレオレジン中のリコペン異性体の特徴を、実施例5と同様にしてHPLCによって決定して、以下の処理を比較する。
【0053】
オレオレジン(Indena、10%)2gを2.45GHzで90秒マイクロ波処理することによりリコペンを異性化(図3A)し、その後エタノール中へ再懸濁し、遠心分離(13,000×g、5分、周囲温度)し、固体画分を除去し、減圧下で溶媒を蒸発させる(図3B)。
【0054】
CHClに溶かしたオレオレジン(Indena10%)2gのヨウ素触媒光異性化(1時間50秒)によりリコペン異性体を生成(図4A)し、その後CHClを蒸発させ、エタノール中へ再懸濁し、遠心分離(13,000×g、5分、周囲温度)し、酢酸エチル中へ固体画分を再懸濁し、遠心分離(13,000×g、5分、周囲温度)し、固体画分を除去し、減圧下で溶媒を蒸発させる(図4B)。
【0055】
酢酸エチル30mL中に溶かしたオレオレジン(Indena10%)0.28gを1時間還流させることによりリコペンの異性化(図5A)し、その後酢酸エチルを蒸発させ、エタノール中へ再懸濁し、遠心分離(13,000×g、5分、周囲温度)し、固体画分を除去し、減圧下で溶媒を蒸発させる(図5B)。
【0056】
結果
図3Aは、トマトオレオレジンのMW処理により範囲の広いリコペンシス異性体の形成が誘導されたことを示す。図3Bは、溶媒分画によりMW処理したトマトオレオレジンのシス対トランス異性体比が特に増大することを示す。
【0057】
図4Aは、トマトオレオレジンの光異性化中には主として5−シス異性体が形成されることを示す。図4Bは、溶媒分画後にはほとんど全トランス及び5−シス異性体だけが回収されることを示す。
【0058】
図5Aは、酢酸エチル中でトマトオレオレジンを短時間還流させている間に13−シス異性体が主として形成されることを示す。図5Bは、溶媒分画後には可溶性画分中に主に13−シス異性体が保持されることを示す。
【0059】
(実施例7:経口投与のための化粧品)
硬カプセル剤の形態の組成物は、以下の処方を有する。
【表1】

【0060】
組成物は、毎日カプセル剤2〜3個の量で個体に投与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイド化合物のシス異性体を強化した、少なくとも1種のカロテノイドを含有する材料(material)を含む一次組成物。
【請求項2】
前記カロテノイド含有材料が、植物若しくは野菜材料、微生物、酵母又は動物起源の生成物から取得、抽出又は精製される、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項3】
前記カロテノイド含有材料が、抽出物、濃縮物又はオレオレジンの形態である、請求項1又は2に記載の一次組成物。
【請求項4】
前記カロテノイド化合物のシス異性体が、前記カロテノイド化合物の生物学的利用能及び/又は生物有効性を増大させるのに有効な量である、請求項1から3までの一項に記載の一次組成物。
【請求項5】
前記植物又は野菜材料が、トマト、ニンジン、桃、アプリコット、オレンジ、メロン、グアバ、パパイヤ、グレープフルーツ、バラの実、大豆、緑茶、コーヒーの生豆、スパイス、ブドウ又はカカオである、請求項1から4までの一項に記載の一次組成物。
【請求項6】
前記カロテノイド化合物が、リコペン、カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン、カプサンシン、カンタキサンチン、ルテイン、フィトフルエン又はフィトエンである、請求項1から5までの一項に記載の一次組成物。
【請求項7】
前記カロテノイド化合物のシス:トランス異性体比が少なくとも20:80である、請求項1から6までの一項に記載の一次組成物。
【請求項8】
液体、ゲル又は粉末の形態である、請求項1から7までの一項に記載の一次組成物。
【請求項9】
食品、食品補助剤(food supplement)、ペットフード製品、化粧品又は製剤中に請求項1から8までの一項に記載の一次組成物を含む経口組成物。
【請求項10】
前記食品が、完全栄養調整乳、乳製品、冷蔵又は貯蔵安定飲料、ミネラルウォーター、液体飲料、スープ、栄養補助食品、食事代替品、栄養バー、菓子製品、乳又は発酵乳製品、ヨーグルト、ミルクベース粉末、経腸栄養製品、乳児用調合乳、乳児用栄養製品、シリアル製品又は発酵させたシリアルベース製品、アイスクリーム、チョコレート、コーヒー、調理用製品或いはペットフード製品からなる群から選択される、請求項9に記載の経口組成物。
【請求項11】
前記食品補助剤が、カプセル剤、ゼラチンカプセル剤、軟カプセル剤、錠剤、糖衣錠、丸剤、パスタ剤又は香錠、ゴム、飲用液剤又は乳剤、シロップ剤又はゲル剤の形態で提供される、請求項9又は10に記載の経口組成物。
【請求項12】
甘味料、安定剤、香味料及び着色剤のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項11に記載の経口組成物。
【請求項13】
前記化粧品が、皮膚に対して活性な化合物をさらに含む、請求項9に記載の経口組成物。
【請求項14】
一次組成物の含有量が約0.001〜100%、好ましくは約10〜50%である、請求項9から13までの一項に記載の経口組成物。
【請求項15】
請求項1から8までの一項に記載の一次組成物を含む化粧組成物。
【請求項16】
一次組成物の含有量が約10−10〜10%である、請求項15に記載の化粧組成物。
【請求項17】
前記カロテノイド含有材料に、該カロテノイド化合物のシス異性体の含有量を増大させるのに十分な条件での処理を施すことを含む、請求項1から8までに記載の一次組成物を調製するための方法。
【請求項18】
前記シス異性体の含有量が、前記カロテノイド化合物の生物学的利用能及び生物有効性を増大させるのに十分な量である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記処理が、熱若しくは酸処理、電磁波照射又はラジカル反応である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記一次組成物に、その異性体プロフィールを改変するための処理をさらに施す、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前期処理が、選択された有機溶媒中でのシス異性体の可溶化とそれに続く遠心分離又はろ過を用いた相分離である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
皮膚の健康を改善するための経口、化粧又は薬剤組成物を調製するための、シス異性体を強化した少なくとも1種のカロテノイド含有材料を含む一次組成物の使用。
【請求項23】
皮膚の組織を老化から守るための、感じやすい、乾燥若しくは敏感な皮膚の予防又は治療での、皮膚密度又は締まり(firmness)を改善させるための、或いは皮膚光防護を増大させるための請求項22に記載の使用。
【請求項24】
心血管疾患若しくは癌を予防又は治療するための経口、化粧又は薬剤組成物を調製するための、シス異性体を強化した少なくとも1種のカロテノイド含有材料を含む一次組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−211169(P2012−211169A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−142198(P2012−142198)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2006−552528(P2006−552528)の分割
【原出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】