説明

カロテノイド異性体の安定で生物学的に利用可能な皮膚及び毛髪用組成物

健康上の利点を提供する組成物及びそれに関する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、カロテノイド化合物のZ異性体が豊富な少なくとも1種のカロテノイド含有物質を含む一次組成物を提供する。例えば、カロテノイド含有物質は、5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択される異性体を、13−Z異性体より大きい重量パーセントで含有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、増大した安定性及び生物学的利用能を有する、カロテノイド化合物のZ−異性体が豊富な少なくとも1種のカロテノイド含有物質を含む一次組成物、並びにそれを形成するプロセスに関する。本発明はまた、食品中、フードサプリメント中、化粧品製剤中又は医薬品製剤中に一次組成物を含有する経口組成物に関する。
【0002】
[技術的背景]
カロテノイドの吸収は、微細構造の食品マトリックスからの放出、混合ミセル中への溶解、腸吸収、カイロミクロン中への取込み、組織への分散、肝臓による吸収、及び次第にLDLに転換するVLDL中への再分泌を伴う複雑なプロセスである。
【0003】
食物源からのリコペン吸収は広く文書化されている。トマト及びトマトジュースなどの食物からのリコペンの生物学的利用能は、非常に低い。今までのところ、トマトペーストが、生物学的に利用可能なリコペンの食物源として最もよく知られている。トマトは、約>90%のリコペンをその全E立体配置に含有している。
【0004】
大量のリコペンを含有するトマト抽出物は、含油樹脂の形態で市販されているが、ヒトにおけるカロテノイドの生物学的利用能は、これらの食物源によってかなり制限される。濃縮トマト抽出物では、リコペンが結晶形態で主に存在し、このことがリコペンの生物学的利用能を低減する主な要因の1つだと考えられている。
【0005】
今まで、大抵の市販のリコペン源は、誘導物(ソースなど)であろうと抽出物であろうと、原料トマトと非常に類似した異性体分布を示し、或いは、Z−異性体のわずかな増加のみを示している。例えば、熱処理などのいくつかの処理が、異性化を促進するものとして知られている。Shiら、Journal of Food Process Engineering 2003、25、485〜498は、トマトソースを加熱することによってZ異性体の増加が達成され得ることを示した。しかし、ある種のリコペン異性体は安定ではなく、逆異性化する傾向がある。文献によると、支配的なリコペン異性体の中で5−Zが最も安定であり、全−E、9−Z及び13−Zが続く。したがって、リコペン主体の異性化生成物の安定性は、そのリコペン異性体分布に依存し、したがって、この分布に影響を与える技術的処理によって調節できる。
【0006】
リコペンの熱異性化は、食品マトリックスからのリコペンの生物学的利用能を向上させるものとして知られている。しかし、個々のリコペン異性体の生物学的利用能はまだ調査されていない。安定性に関しては、リコペン主体の生成物の生物学的利用能がそのリコペン異性体の分布に依存し、そのため、技術的手段によって調節できると考えられ得る。
【0007】
カロテノイドの生物学的利用能を向上させるための技術的手段及び剤形を提案する特許が既にある。例えば、国際公開第2005/075575号パンフレットは、カロテノイド化合物の生物学的利用能を増大させるのに効果的な、Z異性体が豊富な一次組成物を提供している。しかし、より高い安定性、したがって増大した生物学的利用能を有するカロテノイド含有生成物への需要は依然としてある。
【0008】
[概要]
個々のZ−リコペン異性体の安定性は、個々に異なるが、特に13−Zリコペンは、5−Z、9−Z、全−E異性体のいずれよりはるかに不安定であったことが分かっている。その結果、本発明による一次組成物は、最適な安定性を示すために、可能な限り低いレベルの13−Z異性体を有していなければならない。カロテノイドのいくつかのZ異性体(例えば、5−Z及び9−Zなど)が、そのようなカロテノイドを含有する組成物の生物学的利用能を強化することも示されてきた。したがって、一次組成物は、5−Z異性体、又は9−Zと5−Z異性体との組合せを主に含有して、向上した生物学的利用能及び生物学的有効性を実現しなければならない。
【0009】
したがって、本発明の第1の目的は、カロテノイド化合物のZ異性体の特定の混合物が豊富な少なくとも1種のカロテノイド含有物質を有する一次組成物であって、そのカロテノイド含有物質が5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択された異性体を13−Z異性体より大きな重量パーセントで含有する一次組成物を提供することである。
【0010】
一実施形態では、本発明は、食品中、フードサプリメント中、化粧品製剤中又は医薬品製剤中に一次組成物を含有する経口組成物を提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、栄養組成物、フードサプリメント、ペットフード製品、化粧品製剤又は医薬品製剤などの、経口投与用の食品中の添加物として一次組成物を提供する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、一次組成物又は一次組成物を含有するフードサプリメント、化粧品製剤若しくは医薬品製剤の製造方法を提供する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、皮膚の健康を向上させること、具体的には、皮膚の光防護又は皮膚組織の加齢からの保護を目的とした、経口用、化粧用又は医薬用の組成物の調製のために、上述のような一次組成物の使用を提供する。
【0014】
代替実施形態では、本発明は、循環器疾患若しくは癌の予防又は治療用の、経口用、化粧用若しくは医薬用の組成物の調製のために、一次組成物の使用を提供する。
【0015】
本発明の利点は、より高い安定性、生物学的利用能及び生物学的有効性を示す、カロテノイドのZ異性体の組成物を提供することである。
【0016】
さらなる特徴及び利点は、本明細書に記載されており、以下の詳細な説明及び図から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トマトペースト(全E−リコペン)、5−Zリコペンが豊富なトマト含油樹脂(5−Z含油樹脂)、13−Zリコペンが豊富なトマト含油樹脂(13−Z含油樹脂)、9及び13−Zリコペンが豊富なトマト含油樹脂(9−&13−Z含油樹脂)のいずれかのリコペンを合計で25mg含有する標準食を摂取した後の、TRLの血漿リコペン/トリグリセリドの曲線下面積(AUC)を示す図である。
【0018】
[発明の詳細な説明]
本発明は、健康に有益な組成物に一般に関する。より具体的には、本発明は、皮膚及び毛髪を改善するのに使用し得る有益な栄養組成物、並びにそれに関する方法に関する。
【0019】
本発明は、天然物から得られる改善された組成物を消費者が利用できるようにする。一次組成物は、カロテノイドを特に高度に、生物学的に利用可能であり、及び/又は生物学的に有効である形態で提供する。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明は、現在利用可能な生成物のうちの天然のものとは異なる異性体比を有する、トマト抽出物又はその誘導物を提供する。特に、本発明は、総リコペン含有量に対して60%以下のE異性体含有量、好ましくは総リコペン含有量に対して40%以下のE異性体含有量(HPLCによる)の抽出物又は誘導物に関する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、Z異性体の特定の組合せを含有する一次組成物を提供する。好ましくは、本発明の一次組成物中のZ/E異性体の比は1を超えるべきである。
【0022】
さらに、組成物は、好ましくは5−Z及び9−Zが豊富で、13−Zが乏しい。好ましい実施形態では、5−Z及び9−Zの量は、総カロテノイド含有量に対して30%より多く、好ましくは40%より多く、最も好ましくは50%より多い。また、13−Zの量は、総カロテノイド含有量に対して10%未満であり、好ましくは5%未満、最も好ましくは3%未満である。例えば、特定の5−Zと9−Z異性体を増加させること及び/又は13−Z異性体を減少させることによって、より生物学的に利用可能でより生物学的に有効な一次組成物の安定した形態を得ることができる。さらに、本発明の抽出物又は誘導物は、標準の保存条件下で安定であり、逆異性化を受けない。通常の保護条件下(光及び酸素が存在しない)では、リコペン総含有量及びE異性体含有量は一定のままである。後者は、抽出物を室温で維持しても増加しない。
【0023】
そのような分布(すなわち、カロテノイドの13−Z異性体などの不安定な異性体の量が少ない)は、例えば、クレーなどの固体マトリックス上の触媒作用を使用してカロテノイドを異性化すること、又は長時間加熱によって得ることができる。
【0024】
一実施形態では、カロテノイド含有物質は、例えば、抽出物、濃縮物又は含油樹脂の形態とし得る。本明細書では、「含油樹脂」という用語が、カロテノイド、トリグリセリド、リン脂質、トコフェロール、トコトリエノール、植物ステロール及び他の重要性の低い化合物を含むカロテノイド含有物質の脂質抽出物を意味すると理解すべきである。驚くべきことに、異性化トマト含油樹脂中のリコペンの逆異性化を、13−Z異性体の含有量を減少させることによって最小化し得ることが判明した。
【0025】
一実施形態では、カロテノイド含有物質は、植物若しくは野菜素材、微生物、酵母菌又は動物起源の生成物から入手、抽出、濃縮又は精製した、抽出物、濃縮物又は含油樹脂とし得る。以下に記載するように、カロテノイド含有物質にさらに処理を施して、カロテノイド含有物質のカロテノイドのZ異性体含有量を増加させる。
【0026】
カロテノイドの源が植物起源からのものである場合、それは野菜、葉、花、果実及び植物の他の部分であることができる。好ましい実施形態では、カロテノイドの源は、トマト(すなわち、種子あり及び種子なしの、ホールトマト、トマト抽出物、トマト果肉、トマトピューレ、トマトの皮)、ニンジン、モモ、アプリコット、オレンジ、メロン、グアバ、パパイヤ、グレープフルーツ、クコ、ローズヒップ、大豆、緑茶、ショウガなどの香辛料、ブドウ及び/又はココアである。好適な植物又は野菜濃縮物は、例えば、新鮮な切断した植物若しくは野菜又はそのそれぞれの根部、果実若しくは種子を乾燥又は凍結乾燥し、次いで乾燥した物質を任意選択で粉砕又は粒状化することによって入手可能である。上述の植物又は野菜の抽出物を得る好適な方法は、当技術分野で知られている。植物又は野菜抽出物は、例えば、新鮮な切断した又は処理した植物又は野菜又はそのそれぞれの根部、果実若しくは種子を、水を用いて、又は1種若しくは複数の食品用溶媒を用いて、或いは水と1種若しくは複数の食品用溶媒との混合物を用いて抽出することによって得ることができる。好ましくは、本発明の抽出物及び濃縮物は、脂質性又は水性でもよい。カロテノイドが脂溶性であるので、水による抽出は、例えば、砂糖、アミノ酸、可溶性タンパク質及び/又は有機酸などの、水溶性の所望していない構成物を除去することになる。
【0027】
カロテノイド含有物質を微生物から得る場合、カロテノイドを生成する任意の微生物、特に、例えば、乳酸菌などのプロバイオティック微生物を使用することができる。また、動物起源の生成物は、例えば、サケ、エビ、オキアミ又は肝臓抽出物若しくは乳画分からのものでもよい。本明細書では、「乳画分」という用語が、乳の任意の部分を意味すると理解すべきである。
【0028】
代替実施形態では、カロテノイド含有物質は、含油樹脂とし得る。上述の植物又は野菜から含油樹脂を得る好適な方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、含油樹脂は、食品事業、化粧品又は医薬品と適合した溶媒を使用して脂質抽出物から得ることができる。例えば、従来の方法で調製した含油樹脂は、約0.05重量%から50重量%のカロテノイドの含有量を有する。カロテノイドの全−E異性体の含油樹脂の含有量は、通常Z−異性体のものより高く、例えば、選択したトマト含油樹脂中のリコペンのZ/E異性体の比は、約7:93である。
【0029】
やはり組成物を安定化する、他のカロテノイド又はビタミンEなどの抗酸化物質を含有するので、含油樹脂は、本発明の一次組成物を得るために好ましい出発物質である。含油樹脂中のカロテノイド化合物の生物活性及び安定性は、特に、異性化プロセス中に向上させることができ、一次組成物中のZリコペンの収率も向上させることができる。
【0030】
カロテノイド含有物質は、好ましくは、カロテン、並びに例えば、リコペン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン、カプサンシン、カンタキサンチン、ルテイン及び例えば、エステルなどのそれらの誘導体などのキサントフィルを含む。カロテノイド化合物に処理を施して、一次組成物中のZ異性体画分を増加させてきた。
【0031】
そのような異性体分布の一次組成物を得るために、カロテノイド化合物のZ異性体の含有量を増加させるのに十分な条件下でカロテノイド含有物質に処理を施し、具体的には、カロテノイド含有物質が、5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択した異性体を、13−Z異性体より大きい重量パーセント含有する。
【0032】
一実施形態では、抽出物、濃縮物又は含油樹脂の形態のカロテノイド含有物質に、中性、酸性又は塩基性固体触媒(例えば、クレー、ゼオライト、分子篩、イオン交換体)を使用することによって異性化を施して、高Z/E比を有する混合物を生成する。固体触媒を使用してカロテノイドのZ−異性体を富化することは、単純な濾過又は遠心分離によって触媒を便利に除去し得るので、食品を汚染せず、食品に有害ではない。また、固体触媒と他の一般的な手段(例えば、熱、光及びラジカル開始剤)との組合せは、さらに幾何異性化を促進し得る。
【0033】
別の実施形態では、本発明の抽出物又は誘導物は、トマト、トマトの部分(皮など)、誘導物(ソース及び濃縮物など)若しくは抽出物から出発して調製することができる。異性化は、溶媒中での長時間加熱によって実行する。具体的には、トマト又はその誘導物を出発物質として使用する場合、リコペンを抽出可能な溶媒でそれらを処理し得る。次いで、生じた抽出物を加熱し、溶媒を除去し、したがって異性化した抽出物を回収する。
【0034】
一方で、抽出物又は誘導物を出発物質として使用する場合、これを溶媒中に吸収し、混合物を好適な時間加熱し、次いで溶媒を除去し、したがって異性化した抽出物を回収する。異性化ステップに使用し得る溶媒は、炭化水素、塩素化炭化水素、エステル、ケトン、アルコール、具体的には、C3〜C10脂肪族炭化水素、C1〜C3塩素化溶媒、C3〜C6エステル、C3〜C8ケトン及びC1〜C8アルコール、より具体的には、ヘキサン、四塩化炭素、酢酸エチル、アセトン及びブタノールである。溶媒中での異性化は、50〜150℃の範囲の温度、好ましくは60〜130℃の範囲の温度で実行する。異性化時間は、4〜240時間、好ましくは10〜180時間に及ぶ。
【0035】
次いで、一次組成物中のZ/E異性体比を、少なくとも20:80、好ましくは20:80と95:5の間、より好ましくは30:70から90:10まで増大させることができる。好ましい実施形態では、(5Z+9Z)/E比が1を超え、13Zを部分的に除去する。
【0036】
一実施形態では、本発明は、粉末、液体又はゲルの形態で、化合物単体より良好な生物学的利用能及び/又は生物学的有効性を有するカロテノイド化合物を含む一次組成物を提供する。また、一次組成物は、粉末形態を選択した場合、高水分散性組成物の形態であることができる。この例では、粉末は、外界温度で水に分散可能である。一次組成物はまた、脂質及び有機溶媒中に、結晶化する傾向が小さく、凝集する傾向がより低い、特に高溶解性の形態でカロテノイドを提供する。
【0037】
本発明の別の実施形態では、一次組成物を、単独或いはビタミンC、ビタミンE(トコフェロール及びトコトリエノール)、カロテノイド(カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチンなど)、ユビキノン(例えば、CoQ10)、カテキン(例えば、エピガロカテキン没食子酸塩)、ポリフェノール及び/又はジテルペン(例えば、カーウェオール及びカフェストール)を含有するコーヒー抽出物、チコリーの抽出物、イチョウ葉抽出物、プロアントシアニジンが豊富なブドウ又はブドウ種子抽出物、香辛料抽出物(例えば、ローズマリー)、イソフラボン及び関連する植物性エストロゲン並びに抗酸化活性を有するフラボノイドの他の源を含有する大豆抽出物、脂肪酸(例えば、n−3脂肪酸)、植物ステロール、プレバイオティック繊維、プロバイオティック微生物、タウリン、レスベラトロール、アミノ酸、セレン及びグルタチオンの前駆体、又は、例えば、乳清タンパク質などのタンパク質などの他の活性化合物と共に使用することができる。
【0038】
一次組成物は、乳化剤、安定剤及び他の添加剤のうちの1種又は複数をさらに含み得る。食品の領域に適合した乳化剤は、例えば、リン脂質、レシチン、ポリオキシエチレンソルビタンのモノ若しくはトリステアレート、モノラウレート、モノパルミテート、モノ若しくはトリオレイン酸;モノ若しくはジグリセリドである。食品事業、化粧品又は医薬品で知られている任意のタイプの安定剤を添加し得る。また、食品事業、化粧品又は医薬品で知られている調味料、着色剤及び任意の他の好適な添加剤を添加し得る。これらの乳化剤、安定剤及び添加剤を、一次組成物の最終用途に従って添加し得る。
【0039】
代替実施形態では、本発明は、食品中、フードサプリメント中、ペットフード製品中、化粧品製剤中又は医薬品製剤中に上述の一次組成物を含む経口組成物を提供する。
【0040】
好ましい実施形態では、食用の食品組成物を、一次組成物によって補足することができる。この食品組成物は、例えば、栄養的に完全な調整乳、乳製品、冷凍若しくは保存安定飲料、ミネラルウォーター、液体飲料、スープ、ダイエタリーサプリメント、食事代替品、栄養バー、菓子類、乳若しくは発酵乳製品、ヨーグルト、粉ミルク、経腸栄養製品、乳児用調製粉乳、乳児用栄養製品、穀物製品若しくは発酵穀物製品、アイスクリーム、チョコレート、コーヒー、調理製品(マヨネーズ、トマトピューレ若しくはサラダドレッシングなど)又はペットフードである。
【0041】
食品組成物で使用するために、例えば、リコペンなどの一次組成物中に含有されるカロテノイドの1日摂取量が約0.001と50mgの間となるように、一次組成物を上述の食品又は飲料に添加し得る。1日当たり約5〜20mgの1日摂取量が好ましくは予想される。
【0042】
経口投与用の栄養サプリメントは、一次組成物の約0.001%から100%の用量の、カプセル、ゼラチンカプセル、ソフトカプセル、錠剤、糖衣錠、丸剤、ペースト若しくはトローチ、ガム、又は飲料溶液若しくは乳液、シロップ或いはゲル中にあってよく、次いでこれらを、水で直接、又は任意の他の知られている手段で服用し得る。このサプリメントはまた、甘味料、安定剤、添加剤、調味料又は着色剤を含むことができる。化粧用途のサプリメントは、皮膚に対して活性な化合物をさらに含み得る。当業者に知られている任意の方法でサプリメントを作ることができることを理解すべきである。
【0043】
別の実施形態では、一次組成物を含有する医薬組成物を、予防的及び/又は治療的処置のために、疾病の症状及びその合併症を治療又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与し得る。本明細書では、これを達成するのに十分な量を「治療有効用量」と定義する。これに効果的な量は、疾病の重症度並びに患者の体重及び全身状態に左右される。
【0044】
予防的用途では、本発明の一次組成物を、ある特定の疾病に罹患しやすい又はさもなければ罹患する危険性がある患者に投与し得る。そのような量を、「予防有効用量」として定義する。この使用では、正確な量は、やはり患者の健康状態及び体重に左右される。
【0045】
代替実施形態では、本発明の一次組成物は、医薬上許容可能な担体と共に投与し得、担体の種類は、投与の様式、例えば、非経口、静脈、経口及び局所(眼を含む)経路によって異なる。例えば、医薬品等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリンセルロース、炭酸マグネシウムを含めた様々な賦形剤を使用して、所望の製剤を作り得る。医薬組成物は、錠剤、カプセル、丸剤、溶液、懸濁液、シロップ、乾燥経口サプリメント、湿性経口サプリメントであってよい。
【0046】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、ヒト用には、カロテノイドの量が約0.01mgから100mgに及ぶように、毎日の投与ついて、上述の量の一次組成物を含むことができる。ペットに毎日投与する場合、カロテノイドの量は、約0.01mgから100mgに及び得る。
【0047】
当業者が、自身の知識に基づいて、投与の経路(注射、局所適用、鼻腔内投与、埋込み型又は経皮性の持続放出製剤による投与などによることができる)を考慮しながら適切な構成成分及び生薬の形態を選択して、対象となる組織、例えば、皮膚、結腸、胃、腎臓又は肝臓に活性化合物を向けることが理解されよう。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、上述の一次組成物を含む化粧品組成物を提供する。化粧品組成物は、例えば、ローション、シャンプー、クリーム、日焼け止め剤、日焼け手入れ用クリーム、老化防止クリーム及び/又は軟膏に製剤することができる。好ましくは、一次組成物の含有量は、化粧品組成物の10−10重量%と10重量%の間とし得る。より好ましくは、化粧品組成物は、10−8重量%と5重量%の間のカロテノイド化合物を含む。局所的に使用することができる化粧品組成物は、例えば、CTFA work、Cosmetic Ingredients Handbook、Washingtonで述べられているものなどの化粧品に使用することができる脂肪又は油をさらに含み得る。
【0049】
本発明の化粧品組成物はまた、任意の他の好適な化粧用の活性成分を含み得る。組成物は、構造化剤及び乳化剤をさらに含む。他の賦形剤、着色剤、香料又は乳白剤もまた、化粧品組成物に添加し得る。本化粧品が、当業者に知られている様々な成分の混合物を含有し、目的物質の皮膚への早い浸透を確実にし、保存の間に目的物質が劣化することを予防することになることが理解されよう。
【0050】
本発明の概念を、現在使用している薬剤を補助するアジュバント療法として同様に適用することができることもまた理解すべきである。本発明の一次化合物を、食物材料と共に容易に投与することができるので、大量の一次組成物を含有する特別な臨床の食事を適用することができる。本明細書を添付の特許請求の範囲と共に読んだ際、当業者であれば本明細書に述べた代替実施形態について様々な異なる代替を思いつくことは明らかなはずである。
【0051】
本発明は、皮膚組織を加齢から保護すること、具体的には、コラゲナーゼを抑制し、コラーゲンの合成を強化することによって、皮膚及び/又は粘膜に対する損傷を抑制することを意図とした製品を調製することを目的とした、上述の一次組成物、或いは経口組成物又は化粧品組成物の使用にさらに関する。実際、上述のような一次組成物の使用は、例えば、体内のカロテノイド化合物の生物学的利用能の強化、及び皮膚の加齢の鈍化を可能にする。一次組成物はまた、敏感性、乾燥性若しくは反応性皮膚の予防又は治療、或いは皮膚の密度又は硬度の改善、皮膚の光防護の改良、循環器の疾病若しくは障害及び癌の予防又は治療に有用であることができる。一次組成物はまた、改善した毛髪又は毛皮の密度、繊維径、色、油性、光沢性、並びに毛髪又は毛皮の減少予防の補助など、ペットの毛髪及び毛皮に特に有益である。
【0052】
本発明の一次組成物のヒト又はペットの皮膚に対する好ましい効果は、例えば、最小紅斑量(MED)、測色、経上皮水分損失、DNA修復、インターロイキン及びプロテオグリカン製造量、又はコラゲナーゼ活性、バリア機能又は細胞再生又は超音波検査などの従来の方法を使用して測定し得る。
【0053】
[実施例]
(実施例1:リコペン異性体の安定性の調査)
有機溶媒中とトマト抽出物中の両方でリコペン異性体の安定性を評価した。
【0054】
(材料)
リコペンが豊富なトマト含油樹脂をIndena s.p.a.(Milan、Italy)から得た。その総リコペン含有量が9.1%に達し、そのうち全−E及び5−Z異性体がそれぞれ93.5%と6.5%を示した。トマト含油樹脂の懸濁液(1:10w/w)を酢酸エチル中で1時間又は48時間加熱することによって、2つの異性化含油樹脂を調製した。室温で冷却した後、懸濁液を遠心分離し、回収した上澄み中の酢酸エチルを、減圧下で蒸留によって除去した。ジ−t−ブチル−ヒドロキシ−トルエン(BHT)及びN−エチルジイソプロピルアミンはFluka AG社製であった。全ての溶媒がHPLC等級のものであり、精製せずに使用した。
【0055】
(純リコペン異性体の単離)
HPLC分離後の対応ピークを含有する画分を収集することによって(以下の実験条件を参照されたい)、純5−Z、9−Z、13−Z及び全−Eリコペンを異性化トマト含油樹脂から単離した(1時間加熱を施した)。2回の連続したHPLC運転の間にピークを収集し、対応画分をプールした。
【0056】
(リコペン分析)
総リコペンの量を、C18前置カラム(ODS Hypersil、5μm、20×4mm;Hewlett Packard、Geneva、Switzerland)及びC18カラム(Nova pak、内径3.9μm×長さ300mm、Millipore、Volketswil、Switzerland)上で逆相HPLCによって測定した。分離を、室温で、均一濃度条件下で、アセトニトリル/テトラヒドロフラン/メタノール/アンモニウム酢酸1%(533.5:193.6:53.7:28、wt/wt/wt/wt)からなる移動相を用いて達成した。移動相の流速は、1.5mL/分であった。
【0057】
リコペン異性体分布を、Schierleら(1997).Food.Chem.59:459に記載されている方法に従って順相HPLCで測定した。異性化含油樹脂の試料を、50ppmのBHTを含有するn−ヘキサン中に溶解し、Eppendorf Labの遠心分離器で最大速度で回転した。結果として得た上澄みを直ちにHPLCによって分析した。使用したHPLCシステムは、紫外可視フォトダイオードアレイ検出器を備えたHewlett−Packardモデルの1100シリーズであった。470nm、464nm、346nm及び294nmで同時にデータを取得した。3個のNucleosil300−5カラム(内径4mm×長さ250mm、Macherey−Nagel)の組合せを使用して試料(10μL)を分離した。分離を、室温で、均一濃度条件下で、n−ヘキサンからなる移動相を用いて、0.15%のN−エチルジイソプロピルアミンを用いて達成した。流速は0.8mL/分であった。リコペンZ−異性体を、文献データに従って同定した。
【0058】
リコペン異性体の量を、HPLCピークの表面積に基づいて、全−Eリコペンと同じ吸光係数を使用して計算した。したがって、Z−異性体を含有する生成物のリコペン濃度を、Z−異性体の吸光係数が全−E異性体のものより低いと考えられるので、わずかに過小評価した。
【0059】
(安定性試験の条件)
リコペン異性体の安定性を、n−ヘキサン中と酢酸エチル中で4時間加熱して異性化したトマト含油樹脂中の両方で調査した。この目的のために、純リコペン異性体を33日間n−ヘキサン中に、室温で、光が存在しない状態で保存し、異性化トマト含油樹脂を55日間室温で、光が存在しない状態で維持した。総リコペン濃度及びリコペン異性体分布を、保存中に様々な時間間隔で測定した。
【0060】
(結果)
(n−ヘキサン中のリコペンの安定性)
n−ヘキサン中に、室温で、光が存在しない状態で保存中の純リコペン異性体の安定性試験の結果を表1に記録している。全ての異性体、すなわち、全−E異性体を含めた全ての異性体が、保存中に幾何異性化を受けた。13−Zがより安定ではない異性体であり、一方、5−Z、9−Z及び全−Eリコペンの50%未満が33日間の保存後に転換し、13−Zリコペンの80%を上回るものがこの時間中に他の異性体に転換した。また、転換の経路は、13−Zリコペンの場合、他のZ−異性体と比較して異なっていた。n−ヘキサン中での保存中、13−Z異性体が主に全−E異性体に転換した一方、5−Z及び9−Z異性体が主として他のZ−異性体に転換した。
【0061】
【表1】

【0062】
酢酸エチル中で48時間加熱したトマト含油樹脂中のリコペン異性体の安定性試験の結果を表2に記録している。
【0063】
【表2】

【0064】
総リコペン含有量は、室温での保存中安定であった。しかし、リコペン異性体分布は、13−Zリコペン含有量の減少及び全−Eリコペンの増加と共に著しく変化した。9−Z及び5−Zリコペンの含有量は、保存期間中安定なままであった。
【0065】
(結論)
両方の安定性試験は、13−Zリコペンが、5−Z、9−Z、全−E異性体のいずれよりはるかに不安定であることを示してきた。したがって、低レベルの13−Zリコペンを有する異性化トマト含油樹脂は、そのリコペン異性体分布の良好な安定性を示すはずである。
【0066】
(実施例2:生物学的利用能が増大した異性化トマト含油樹脂)
(目的)
本作業の目的は、ヒト内の様々なZ−リコペン異性体の生物学的利用能を調査することであった。ヒト内の特定のZ−リコペン異性体の生物学的利用能を明瞭にするため、トマト含油樹脂に対して、総リコペンの含有量の約60%に達する様々なZ−リコペン異性体を富化してきた(すなわち、1種は5−Zリコペンが豊富で、別の1種は13−Zリコペンが豊富で、最後の1種は9−Zリコペンと13−Zリコペンの混合物が豊富である)。
【0067】
(材料及び方法)
(被験者)
30人の健康な男性が調査に参加した。参加基準は、被験者が非菜食主義者であり非喫煙者であるべきであること、並びに糖尿病などの代謝性疾患、高血圧症、腎臓、肝臓若しくは膵臓疾患、又は潰瘍に罹っていないことであった。被験者は、血中脂質が正常、すなわち、血漿コレステロールのHDLコレステロールに対する比が<5.0であり、血漿トリアシルグリセロール(TAG)濃度が<1.5mmol/Lであった。調査中に大量の血液を抜き出したので、被験者は、>13g/dLの血中ヘモグロビン濃度を有する必要があった。調査の開始3カ月前から調査の完了までにコレステロール調節薬剤若しくは脂質低下治療薬又はビタミン及びミネラルサプリメントを使用した場合、或いは、大きな消化管手術をした場合、マラソンを走るなどの激しい運動をした場合、及び毎日>2グラスのワイン(3dL)、>2ビール(3dL)、又は>1グラス(ショットグラス)の強い酒を摂取した場合、被験者を調査から除外した。30人のボランティアのうち27人が摂取後の調査を4回完了した。3人のボランティアが、以下の理由から終了前に調査を放棄した。理由は、不便さ、眼の手術に関する治療、脂肪過多の食事を摂取することに関する悪心である。被験者は、70±1kgの体重で、22.5±0.3kg/cmの肥満度指数(BMI)の、24±1歳であった。
【0068】
手順は、マルセイユ倫理委員会(the ethical committee of Marseille)(Marseille、France)によって承認された。被験者は、調査の背景及びデザインに関する情報を受け取り、書面にしたインフォームドコンセントを参加前に与えた。彼らは、いつでも自由に調査から離脱できた。
【0069】
(調査デザイン)
これは、最短で3週間の洗浄期間を有する、二重盲検、無作為化、4期、4処置のクロスオーバー臨床試験であった。夜間絶食の後、被験者は、マルセイユ大学の臨床薬理学及び治験センター(Clinical Pharmacology and Therapeutic Trial Center of University of Marseille)に到着し、小麦セモリナ70gと混合したピーナッツ油40gに組み込まれた25mgのリコペンからなる標準食(水道水200mLで調理した)を摂取した。さらに、彼らは、パン40g、調理済み卵白60g、白砂糖5gを含有するヨーグルト125gを摂取し、水(Aquarel、Nestle)330mLを飲んだ。この標準食は、以下の栄養組成物:タンパク質(11.7%)、炭水化物(39.3%)及び脂質(49.0%)と共に842kcal(3520kJ)を供給した。この食事を15分以内に摂取した。その後の6時間にわたって、他の食品を許可しなかったが、吸収後の最後の3時間の間にペットボトルに入った水(Aquarel、Nestle)(330ml)を飲むことを被験者に許可した。
【0070】
(リコペンサプリメント)
4種の様々なトマト製品を、それぞれに総リコペンの25mgを供給することにより試験した。それらは、以下のものからなる。
・ 主に全−E立体配置にリコペンを含有しているトマトペースト(THOMY、Switzerland)
・ 5−Zリコペンが豊富なトマト含油樹脂
・ 13−Zリコペンが豊富なトマト含油樹脂
・ 9−Z及び13−Zリコペンの混合物が豊富なトマト含油樹脂
【0071】
表3は、これらの4種のトマト製品のリコペン含有量並びにリコペン異性体分布を提示する。
【0072】
【表3】

【0073】
(血液試料の収集)
空腹時血液を、カリウムEDTA/Kを含有する真空管への静脈穿刺によって肘正中静脈から抜き出し、直ちに氷浴中に置いて、露光を回避するためにアルミ箔で覆った。空腹時血液を、事前に、すなわち、標準食の摂取の20分及び5分前に、並びに、吸収後2時間、3時間、4時間、5時間、6時間して収集した。血液を含有する管を光から保護し、4℃で保存し、次いで血漿を分離するために2時間以内で遠心分離(10分、4℃、2800rpm)した。阻害剤のカクテル(10μL/mL)を添加した(Cardinら、Degradation of apolipoprotein B−100 of human plasma low density lipoproteins by tissue and plasma kallikreins、Biol Chem 1984;259:8522−8)。
【0074】
(血漿トリグリセリドが豊富なリポタンパク質(TRL)の単離)
脂肪過多な食事の摂取後、食事性の新油性分子が、血中に分泌されたカイロミクロン中に組み込まれる。リポタンパク質を、その密度に基づいて、超遠心分離法によって分離する。カイロミクロン(0.95g/ml)とVLDL(1.006g/ml)の密度が非常に類似しているため、それらを互いに分離することは可能ではなく、トリグリセリドが豊富なリポタンパク質(TRL)と呼ばれる画分中でまとめて収集する。しかし、摂取後状態では、この血漿TRL画分は、腸から分泌されるカイロミクロンを主に含有し、腸の生物学的利用能の良好な評価対象である。
【0075】
少量のVLDLと共にカイロミクロンを主に含有するトリグリセリドが豊富なリポタンパク質(TRL)は、以下のような超遠心分離によって直ちに単離した。血漿6mLに0.9%のNaCl溶液を重ね、SW41TIローター(Beckman)で、L7超遠心分離(Beckman)で、10℃、32000rpmで28分間超遠心分離した。遠心分離の直後にTRLを等分し、分析測定の前に−80℃で保存した。リコペン分析を10日以内で実施し、トリアシルグリセロール分析を30日以内で実施した。
【0076】
(分析測定)
トリグリセリドを、市販のキット(Kit Bio−Merieux)を使用して酵素法及び比色法によって分析した。総リコペン及びリコペン異性体分布を、逆相及び順相HPLC法によってそれぞれ測定した(M.Richelle、K.Bortlik、S.Liardet、C.Hager、P.Lambelet、L.A.Applegate、E.A.Offord、J.Nutr.(2002)132、404〜408)。総リコペン含有量を、5−Z、9−Z、13−Z、x−Z及び全−Eリコペン異性体の合計として計算した。全ての個々のZ−リコペンの厳密値が未だ未知であるので、全−Eリコペンの吸光係数を使用してリコペン異性体を定量化した。リコペン異性体の分布を、パーセンテージで表現する、個々のリコペン異性体の総リコペンに対する比によって測定する。
【0077】
(統計分析)
リコペンの生物学的利用能を、TRL−時間曲線のリコペン濃度の下の面積(AUC)を測定することにより評価した。この面積は、台形法を使用して0〜6時間の期間にわたって計算した(AUC(0〜6h))。データを、平均±SEMとして提示した。ベースライン濃度は、トマトマトリックスからのリコペンを25mg含有する標準食の摂取の前に収集した2つの血漿試料中で測定した濃度の平均であった。各被験者及び各リコペン処置に関して、ベースライン濃度を吸収後の各時点で測定した濃度値から除算することによって、AUC(0〜6h)の計算を実施した。この値が負数である場合、それをゼロとみなした。
【0078】
各処置に関して、対数変換あり又は対数変換なしでAUC(0〜6h)の分布が正常(歪み及び尖度検定)であった場合、処置を固定効果とし、被験者を変量効果とする線形混合モデルを使用して比較を実施した。全ての統計分析を、SASソフトウェア(バージョン8.2;SAS Institute、Cary、NC)を用いて行った。統計検定の拒絶レベルは5%と等しかった。
【0079】
(結果)
(リコペンの生物学的利用能)
4種のトマトの処置がトリグリセリド分泌の程度の変動を誘発したので、リコペンの生物学的利用能が、トリグリセリド吸収(AUC(0〜6h))を使用して正常化した。正常化リコペンの生物学的利用能は、4種のトマトの処置の間で著しく異なっていた(図1)。
【0080】
驚くべきことに、リコペンは、5−Zリコペンが豊富なトマト含油樹脂からのほうが、他の3種の処置、すなわち、トマトペースト、13−Zリコペンが豊富なトマト含油樹脂並びに13−Z及び9−Zリコペンの混合物が豊富なトマト含油樹脂からより、約2倍、より良好に生物学的に利用可能(p<0.0001)であった(図1)。
【0081】
リコペンは、13−Z及び9−Zトマト含油樹脂の混合物からと同様に、トマトペーストから生物学的に利用可能であった。13−Zトマト含油樹脂中のリコペンは、トマトペーストと比較して、わずかだが有意な、より低い生物学的利用能(p<0.03)を示した。
【0082】
(結論)
これらの結果は、リコペン分子の立体配置が、消化管内でのリコペンの輸送、及び結果として吸収されるリコペンの量に著しく影響を与えることを示唆する。5−Zリコペンが豊富なトマト抽出物からのリコペンの生物学的利用能は、トマトペーストからのものの約2倍である。対照的に、9−Z及び13−Zリコペンの混合物が豊富なトマト抽出物中に存在するリコペンは、トマトペースト中に存在するものと同様に生物学的に利用可能であり、一方で13−Zリコペンが豊富なトマト含油樹脂は、わずかに生物学的に利用可能ではないリコペンを提示する。トマト製品中のZ−リコペンの存在が、リコペンの生物学的利用能の増大と関わりがあることを、複数の著者が既に指摘してきている。これは、リコペンの生物学的利用能の強化が、リコペンの立体配置に特異的に関係していること、すなわち、5−Zリコペン>9−Zリコペン>13−Zリコペンであることを証明する初めての調査である。
【0083】
(実施例3:酢酸エチル中での抽出及び単離)
リコペンを100ppm含有する新鮮なトマト52kgを細断し、均質化する。水の一部を減圧下で蒸留して、トマト濃縮物を18kg得る。これを、水飽和酢酸エチル36 lを用いて抽出し、抽出中、混合物を光から防護し、2時間攪拌しながら室温で維持する。次いで、抽出物をトマト濃縮物から分離する。上述の手順を、そのようなトマト濃縮物について2回繰り返し、合計で溶媒を108 l使用する。組み合わせた抽出物を別個の漏斗で水27 lを用いて洗浄する。次いで、水性相を廃棄する一方で、有機相を減圧下で濃縮して乾燥残留物(総リコペン含有量が9.1%w/w、Z異性体含有量が0.46%w/wである)10%w/vを有する懸濁液を得る。この混合物を、7日間攪拌しながら還流(76℃)した後で、減圧下で乾燥状態まで濃縮する。
【0084】
総リコペン含有量が9%w/w、Z異性体含有量が5.59%w/wの最終抽出物46.8gを得る。特に、E異性体含有量が3.41%w/w、13−Z異性体含有量が0.16%w/wである。抽出物のHPLC分布を図に記録する。
【0085】
(実施例4:ヘキサン中での抽出及び単離)
リコペンを140ppm含有する新鮮なトマト10kgを細断し、均質化する。水の一部を減圧下で蒸留して、ヘキサン12.5 lを用いて抽出したトマト濃縮物を2.5kg得る。抽出中、混合物を光から防護し、2時間攪拌しながら室温で維持する。次いで、抽出物をトマト濃縮物から分離する。上述の手順を、そのようなトマト濃縮物について1回繰り返し、合計で溶媒を25 l使用する。抽出物を組み合わせて減圧下で濃縮して、乾燥残留物(総リコペン含有量が9.1%w/w、Z異性体含有量が0.46%w/wである)10%w/vを有する溶液を得る。この混合物を、6日間攪拌しながら還流(69℃)した後で、減圧下で乾燥状態まで濃縮する。総リコペン含有量が9.1%w/w、Z異性体含有量が5.62%w/wである最終抽出物16.5gを得る。特に、E異性体含有量が3.38%w/w、13−Z異性体含有量が0.18%w/wである。
【0086】
(実施例5:ブタノール中での単離)
リコペンを90ppm含有する新鮮なトマト10kgを細断し、均質化する。水の一部を減圧下で蒸留して、水飽和酢酸エチル7 lを用いて抽出したトマト濃縮物を3.4kg得る。抽出の間、混合物を光から防護し、2時間攪拌しながら室温で維持する。次いで、抽出物をトマト濃縮物から分離する。上述の手順を、そのようなトマト濃縮物について2回繰り返し、合計で溶媒を21 l使用する。組み合わせた抽出物を、別個の漏斗で水5.3 lを用いて洗浄する。次いで、水性相を廃棄する一方で、有機相を減圧下で乾燥状態まで濃縮する。総リコペン含有量が7.8%w/w、Z−異性体含有量が0.40%w/wである乾燥残留物(9.8g)をn−ブタノール98ml中で懸濁する。混合物を、4時間攪拌しながら130℃で維持した後、減圧下で乾燥状態まで濃縮する。総リコペン含有量が6.35%w/w、Z異性体含有量が4.50%w/wである最終抽出物9.8gを得る。特に、E異性体含有量が1.85%w/w、13−Z異性体含有量が0.47%w/wである。
【0087】
(実施例6:固体触媒上での単離)
(材料)
リコペンが豊富なトマト含油樹脂をIndena s.p.a.(Milan、Italy)から得た。その総リコペン含有量が9.1%に達し、そのうち全−E及び5−Z異性体が、それぞれ93.5%と6.5%を示した。
【0088】
(方法)
酢酸エチル中のトマト含油樹脂の懸濁液(1:100w/w)を、室温で2時間一定に攪拌しながら濾過し、固体触媒の5%を用いてインキュベートした。Eppendorf Lab遠心分離器で最大速度で混合物を遠心分離し、上澄みの一定分量をN下で蒸発し、n−ヘキサン/BHT中で再懸濁した。
【0089】
(リコペン分析)
総リコペンの量及びリコペン異性体分布を、実施例1に記載した分析条件下で、逆相及び順相HPLCによってそれぞれ測定した。
【0090】
(結果)
固体触媒を使用して室温で2時間異性化したトマト含油樹脂中で測定したリコペン異性体分布を表4に記録している。
【0091】
【表4】

【0092】
リコペンを、Tonsil Optimum又はAmberlyst15の存在下で、室温での酢酸エチル中での2時間の反応の間に効率的に異性化した。両方の触媒により、リコペン全−E異性体の大きな画分をZ−異性体に転換した。同定したリコペン異性体のうち、5−Zが過半数を形成し、続いて9−Z及び13−Zがそれぞれ形成した。したがって、13−Z異性体の濃度は、したがって、異性化トマト含油樹脂中で10%未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイド化合物のZ異性体が豊富な少なくとも1種のカロテノイド含有物質を含む安定な一次組成物であって、前記カロテノイド含有物質が、5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択される異性体を、13−Z異性体より大きな重量パーセントで含有する、安定な一次組成物。
【請求項2】
前記カロテノイド含有物質が、5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択される異性体を、30重量%より多量に含有する、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項3】
前記カロテノイド含有物質が、13−Z異性体を10重量%未満の量で含有する、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項4】
E異性体の含有量が、総カロテノイド含有量の60%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項5】
前記カロテノイド含有物質が、植物若しくは野菜素材、微生物、酵母菌又は動物起源の生成物から入手、抽出又は精製される、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項6】
前記カロテノイド含有物質が、抽出物、濃縮物又は含油樹脂の形態である、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項7】
前記カロテノイド化合物の前記Z異性体が、前記カロテノイド化合物の生物学的利用能及び/又は生物学的有効性を増大させるのに効果的な量である、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項8】
前記植物又は野菜素材が、トマト、ニンジン、モモ、アプリコット、オレンジ、メロン、グアバ、パパイヤ、グレープフルーツ、ローズヒップ、大豆、緑茶、香辛料、ブドウ、ココア及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の一次組成物。
【請求項9】
前記カロテノイド化合物が、リコペン、カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン、カプサンシン、カンタキサンチン、ルテイン、フィトフルエン、フィトエン及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項10】
前記カロテノイド化合物のZ/E異性体比が、少なくとも20:80である、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項11】
前記組成物が、液体、ゲル又は粉末の形態である、請求項1に記載の一次組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の一次組成物を含む経口組成物。
【請求項13】
前記一次組成物が、食品中、フードサプリメント中、ペットフード製品中又は医薬品製剤中にある、請求項12に記載の経口組成物。
【請求項14】
前記食品が、栄養的に完全な調整乳、乳製品、冷凍若しくは保存安定飲料、ミネラルウォーター、液体飲料、スープ、ダイエタリーサプリメント、食事代替品、栄養バー、菓子類、乳若しくは発酵乳製品、ヨーグルト、粉ミルク、経腸栄養製品、乳児用調製粉乳、乳児用栄養製品、穀物製品若しくは発酵穀物製品、アイスクリーム、チョコレート、コーヒー、調理製品、ペットフード及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載の経口組成物。
【請求項15】
前記フードサプリメントが、カプセル、ゼラチンカプセル、ソフトカプセル、錠剤、糖衣錠、丸剤、ペースト若しくはトローチ、ガム、飲料溶液若しくは乳液、シロップ又はゲルの形態で提供される、請求項13に記載の経口組成物。
【請求項16】
甘味料、安定剤、調味料及び着色剤のうちの少なくとも1種をさらに含む、請求項12に記載の経口組成物。
【請求項17】
前記一次組成物の含有量が、約0.001と100重量%の間である、請求項12に記載の経口組成物。
【請求項18】
前記一次組成物の含有量が、約10と50重量%の間である、請求項12に記載の経口組成物。
【請求項19】
カロテノイド化合物のZ異性体が豊富な少なくとも1種のカロテノイド含有物質を有する一次組成物を含む化粧組成物であって、前記カロテノイド含有物質が、5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択される異性体を、13−Z異性体より大きい重量パーセントで含有する、化粧組成物。
【請求項20】
一次組成物の含有量が、化粧組成物の約10−10重量%と10重量%の間である、請求項19に記載の化粧組成物。
【請求項21】
一次組成物を製造するプロセスであって、方法が、カロテノイド化合物のZ異性体の含有量を増大させるのに十分な条件下で、カロテノイド含有物質に処理を施すステップを含むプロセスにおいて、前記Z異性体含有量が、前記カロテノイド化合物の生物学的利用能及び生物学的有効性を増大させるのに効果的な量であり、具体的には、前記カロテノイド含有物質が、5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択される異性体を、13−Z異性体より大きい重量パーセントで含有するプロセス。
【請求項22】
前記処理が、酸処理、電磁波照射又はラジカル反応である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記処理が、中性、酸性若しくは塩基性の固体触媒、例えば、クレー、ゼオライト、分子篩、イオン交換体を使用して、高Z/E比を有する混合物を生成する異性化である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記処理が、選択される有機溶媒中でのZ異性体の可溶化と、その後の遠心分離又は濾過を使用した相分離である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項25】
Z異性体が豊富であり、5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択される異性体を、13−Z異性体より大きい重量パーセントで含有する、少なくとも1種のカロテノイド含有物質を有する一次組成物の使用であって、皮膚の健康を向上させるための経口、化粧又は医薬組成物を調製するための使用。
【請求項26】
前記一次組成物が、皮膚組織の加齢から保護するために、敏感性、乾燥性若しくは反応性皮膚の予防又は治療において、或いは皮膚の密度又は硬度を改善するため、皮膚の光防護を増大させるために使用される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
Z異性体が豊富であり、5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択される異性体を、13−Z異性体より大きい重量パーセント含有する、少なくとも1種のカロテノイド含有物質を有する一次組成物の使用であって、毛髪及び毛皮の品質を向上させるための経口、化粧又は医薬組成物を調製するための使用。
【請求項28】
前記一次組成物が、毛髪若しくは毛皮の密度、繊維径、色、油性、光沢性の向上、及び/又は毛髪若しくは毛皮の減少の予防のために使用される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
Z異性体が豊富であり、5−Z、9−Z及びそれらの組合せからなる群から選択される異性体を、13−Z異性体より大きい重量パーセントで含有する、少なくとも1種のカロテノイド含有物質を有する一次組成物の使用であって、循環器疾患の予防又は治療用の経口、化粧又は医薬組成物を調製するための使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−502572(P2010−502572A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523196(P2009−523196)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006972
【国際公開番号】WO2008/017455
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】