説明

カロテノイド組成物の製造方法、高濃度カロテノイド組成物の製造方法、高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法、カロテノイド組成物、高濃度カロテノイド組成物、及び高純度遊離型カロテノイド組成物

【課題】低コストでサプリメントに利用できるβ−クリプトキサンチン組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】
カロテノイドを含む植物体の水分含量を5%以下に乾燥させた粉末にヘキサンを加えて可溶部中のヘキサン抽出物を取得する。そして、このヘキサン抽出物を濃縮して濃縮物を取得する。さらに、濃縮物に所定量のヘキサンを加えて再溶解し、−20〜−30℃程度に冷却した後、遠心処理して可溶部を回収し濃縮して低濃度カロテノイド組成物を取得する。この低濃度カロテノイド組成物に所定量のエタノールを加え、−20〜−30℃程度に冷却し、遠心分離して不溶部を取得することで、カロテノイド組成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロテノイド組成物の製造方法、高濃度カロテノイド組成物の製造方法、高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法、カロテノイド組成物、高濃度カロテノイド組成物、及び高純度遊離型カロテノイド組成物に係り、特に医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加物用に用いられるカロテノイド組成物の製造方法、高濃度カロテノイド組成物の製造方法、高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法、カロテノイド組成物、高濃度カロテノイド組成物、及び高純度遊離型カロテノイド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドは動物、植物、微生物が産生する色素成分の一種である。
カロテノイドは抗酸化作用を有しており、体内に取り込まれた後にも抗酸化作用等が期待されることから、各種の健康食品やサプリメントにも添加されている。実際に、これらカロテノイドの摂取量や血中濃度を指標にした疫学研究の結果は、カロテノイド摂取と疾病予防との関連性を強く示唆している。
【0003】
カロテノイドのうち、植物性の食品由来の主要なカロテノイドとしては、β−カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、α−カロテン、β−クリプトキサンチンの6種が知られている。
この6種のカロテノイドについては、食品や植物により含まれるカロテノイドの組成に特徴がある。
たとえば、β−カロテンは、ニンジン、カボチャなどの緑黄色野菜に多く含まれ、マンゴーなどの果実にも含まれている。また、リコペンはトマトに特異的に多く含まれている。また、ルテインは、卵黄や緑黄色野菜に含まれ、抽出原料としてはマリーゴールドの花が用いられる。また、ゼアキサンチンは、トウモロコシ種子や卵黄に含まれている。また、α−カロテンは、緑黄色野菜に含まれている。
これらの食品由来のカロテノイドは、ヒトを含む動物と植物の食物連鎖の中で摂取されており、食品として摂取する場合の安全性に関して問題は報告されていない。
このため、これらの素材からカロテノイドを溶剤抽出した、ニンジンカロテン、オレンジ色素、トマト色素、トウモロコシ色素、マリーゴールド色素といった着色料は、食品添加物として流通している。
【0004】
ところで、β−クリプトキサンチンは、ヒトの血中に検出される主要な食品由来のカロテノイドの一つである。β−クリプトキサンチンは、ミカン類、例えば、ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)や、同じグループに属するオオベニミカン(Citrus tangerina Hort.ex Tanaka)、ポンカン(Citrus reticulata Blanco)等に、主カロテノイドとして含まれる。また、他の食品としては、カキ(Diospyros kaki Thunb.)、ビワ(Eriobotrya japonica (Thunb.) Lindl.)等、また熱帯果実ではパパイア(Carica papaya L.)にも、主カロテノイドとして含まれるが、それ以外の食品に含まれる量は少ない。
このうち、ウンシュウミカン果肉中のβ−クリプトキサンチン含有量は、100gあたり1から2mgと多い。このため、ウンシュウミカンを良く食べる日本人では、血中のβ−クリプトキサンチン濃度が、諸外国に比べて高いことが知られている。
栄養学的に見た場合、β−カロテンやβ−クリプトキサンチンはプロビタミンAとして機能する。カロテノイドは黄色〜赤色を呈することから、飲食品や医薬品等の着色剤として使用されている。
β−クリプトキサンチンは、疫学調査から、アルコール性肝障害、骨粗鬆症、糖尿病、リウマチ、動脈硬化の予防などの効果が示唆されている。動物レベルでは、発がん抑制、歯周病予防などの作用も確認されている。このように、β−クリプトキサンチンは、生活習慣病の予防効果が期待され、しかも、他のカロテノイドでは認められずβ−クリプトキサンチンのみに認められる効果も多い。
このため、医薬品、医薬部外品、機能性食品、その他の食品への利用に適した高濃度のβ−クリプトキサンチン組成物が切望されている。すなわち、複合カロテノイドサプリメントへのβ−クリプトキサンチンの配合が検討されているものの、他のカロテノイドと異なり、大量に供給する手段が確立されておらず、商品化が進んでいないため、市場において入手が難しかった。
【0005】
ここで、従来のカロテノイドの抽出と製造方法について説明する。
従来のカロテノイドの製造法としては、他のカロテノイドからの化学的変換による合成、微生物による生物的合成、植物体からの抽出等がある。
たとえば、カロテノイドの植物体からの抽出方法としては、有機溶媒を用いた抽出方法が知られている。野菜や果物などの植物体からカロテノイドを有機溶媒で抽出した例としては、ニンジンカロテン、オレンジ色素、トマト色素、トウモロコシ色素、マリーゴールド色素が市販されている。
【0006】
このうち、従来のβ−クリプトキサンチンの製造方法としても、他のカロテノイドからの化学的変換による合成、微生物による生物的合成、ミカン類やカキ等の植物体からの抽出等の方法が知られている。
ここで、特許文献1を参照すると、ルテインから化学反応でβ−クリプトキサンチンを得る方法が記載されている(特表2007−509957号公報)。しかし、原料であるルテインを精製しなければ純度の高いβ−クリプトキサンチンが得られないという問題点があげられる。加えて、β−クリプトキサンチンの合成による製造方法は、スケールアップが容易であるが、合成に伴う副産物の処理の問題や、天然由来のβ−クリプトキサンチンではないことによる消費者の心理的抵抗感があるといった問題があった。
また、生物学的な合成においては、β−クリプトキサンチンは、反応上の副産物として得られるため、β−クリプトキサンチンのみを製造するのはコストがかかるという問題があった。
また、β−クリプトキサンチンを、ミカン類やカキの果実から、通常のカロテノイドの抽出方法で抽出すると、濃度が低くなるという問題があった。
このような濃度の低い組成物は、着色用途であれば問題はないが、例えばサプリメントへの利用を考えた場合、必要とするサプリメント含有量を得るためには、より濃度の高い抽出物が必要となるため、現実的でなかった。
【0007】
一方、ミカン類の搾汁工程においては、果皮やじょうのう膜が除かれ、さらに果汁の商品性を高めるために、パルパー、フィニッシャー,遠心分離処理などの操作により食物繊維(パルプ)が除かれる。また、干し柿を作る際に発生する果皮も廃棄されることが多い。
果皮やパルプは、家畜用の飼料や食品添加物として利用されることもあるが、多くは廃棄されていた。特に、生産量の多いミカン類の加工時、例えば搾汁工程で発生する残渣においても、ほとんどが廃棄されており、あまり有効利用されていない。
ここで、β−クリプトキサンチンは、上述したように、ミカン類やカキに含まれているが、これらの廃棄される部分にも含まれており、β−クリプトキサンチンの抽出原料として有望である。
実際に、ウンシュウミカンの搾汁工程で生ずるパルプを原料にした、遠心濃縮、溶剤抽出によるβ−クリプトキサンチン組成物の製造法に関する技術も開発されている。
しかしながら、これらのβ−クリプトキサンチン組成物の製造方法で得られる組成物は、β−クリプトキサンチンの濃度が低濃度であり、実際の利用例はなかった。
このため、これらの残渣を、サプリメントに利用できる濃度のβ−クリプトキサンチン組成物の供給原料として利用する技術が求められている。
【0008】
以下にて、果皮や搾汁工程で発生する残渣を用いてβ−クリプトキサンチンを抽出する従来の方法について説明する。
特許文献2を参照すると、β−クリプトキサンチンの濃縮に関する技術が記載されている(特開2000−23637号公報)。しかし、特許文献2の実施例として、ウンシュウミカンパルプから遠心分離法により高濃度分画を得る方法では、β−クリプトキサンチンの濃度は0.67%程度と非常に低かった。
特許文献3を参照すると、ウンシュウミカンの搾汁残渣からエタノール抽出及び水洗浄で得られる抽出物が記載されている(特開2008−297215号公報)。しかし、この方法により得られるβ−クリプトキサンチンの濃度も4%程度の低さであった。
特許文献4を参照すると、高速液体クロマトグラフのような、高度なクロマトグラフ法を用いた高純度β−クリプトキサンチンの製造方法が記載されている(特開2000−136181号公報参照)。特許文献4の方法は、純度の高いβ−クリプトキサンチンが得られるが、加水分解した遊離型カロテノイドを分離に供するための複雑な処理が必要であり、また、そもそも原料自体に含まれるβ−クリプトキサンチンの濃度が低いため高コストであった。さらに、アセトニトリルなどの食品には使用しづらい有機溶剤の使用量も多かった。
特許文献5を参照すると、比較的高い濃度のβ−クリプトキサンチンを含むことが知られているカキの果皮を材料に、β−クリプトキサンチン成分含有抽出物を製造する技術が記載されている(特開2004−331528号公報参照)。これは、果皮をエタノールで抽出して、減圧濃縮するものであり、減圧濃縮の過程で低沸点成分が除かれることにより、特有の干し柿臭を低減することができる。しかしながら、この製造方法は、高濃度のβ−クリプトキサンチンを製造することを目指したものではなく、その濃度は0.01%(1mg/100mL)以下にとどまっている。
特許文献6を参照すると、同様に低濃度のβ−クリプトキサンチン組成物が記載されている(特開2004−329058号公報参照)。この組成物は、全くβ−クリプトキサンチンを含まないバレンシア果汁の色調改善などには一定の改善がみられるが、サプリメントなどに配合して、一定の濃度を維持するのは困難であると予想される。
特許文献7を参照すると、カキ果皮を抽出前に乾燥して抽出効率を高める方法も検討されている(特開2009−050188号公報参照)。しかしながら、この方法でも、高濃度化はできなかった。
【0009】
特許文献8を参照すると、有機溶媒を用いカロテン含有植物からのカロチン(β−カロテン)の製造法として、ヘキサンを用いニンジンからβ−カロテンを抽出し、濃縮液を−20℃に冷却することで50〜60%のβ−カロテンが含まれる析出物を得る方法が示されている(特開平4−95066号公報参照)。しかし、ニンジンは、カロテノイド含量が生重100gあたり9mg程度(五訂食品成分表)であり、他の食品に比べ高い。また、ニンジンのカロテノイドは、90%が炭化水素系カロテノイドであるα−カロテン及びβ−カロテンであり、このβ−カロテンは、100mLのヘキサンに0℃において109mgを溶解させることができる。このため、濃縮物を−20℃に冷却することによりβ−カロテンが析出したものと考えられる。
特許文献9を参照すると、マリーゴールド花弁から高濃度でカロテノイドを含有する組成物を取得する方法が記載されている(特表2008−538697号公報参照)。しかしながら、この方法にて取得した組成物は、ゼアキサンチンが主成分であり、β−クリプトキサンチンも含有するものの1%未満であった。
このように、上述のウンシュウミカン、カキの例によると、エステル型のキサントフィル類であるゼアキサンチン、ルテイン、β−クリプトキサンチンは、ヘキサンに可溶であり、単なる濃縮液の冷却による析出法では高濃度化することが困難であることは明らかである。
【0010】
上述したように、β−クリプトキサンチンを用いたサプリメント等のように、汎用的な利用には高濃度化が必須である。しかしながら、β−クリプトキサンチンを簡単な溶媒抽出で高濃度化を図った例では上記の利用には濃度が足りなかった。
高速液体クロマトグラフ法による分離法を取り入れて純β−クリプトキサンチンの製造を行う場合においても、β−クリプトキサンチン含有量の高いウンシュウミカン副産物を利用したとしても、コストは多大である。さらに、特許文献4の技術では、多量に必要な場合は調製までに長時間を要していた(特開2000−136181号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2007−509957号公報
【特許文献2】特開2000−23637号公報
【特許文献3】特開2008−297215号公報
【特許文献4】特開2000−136181号公報
【特許文献5】特開2004−331528号公報
【特許文献6】特開2004−329058号公報
【特許文献7】特開2009−050188号公報
【特許文献8】特開平4−95066号公報
【特許文献9】特表2008−538697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加物用に用いることができる濃度のβ−クリプトキサンチンを含むカロテノイド組成物を製造するには、高度なクロマトグラフ法などのコストのかかる手法を利用するしかないという問題があった。
このため、医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加物用に利用できる濃度のβ−クリプトキサンチンを含むカロテノイド組成物を、低コストで製造する方法が求められていた。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のカロテノイド組成物の製造方法は、カロテノイドを含む植物体の水分含量を5%以下に乾燥させた粉末にヘキサンを加えて可溶部中のヘキサン抽出物を取得し、前記ヘキサン抽出物を濃縮して濃縮物を取得し、前記濃縮物に再溶解溶液を加えて再溶解し、−20℃〜−30℃程度に冷却した後、遠心処理して可溶部を回収し濃縮して低濃度カロテノイド組成物を取得し、前記低濃度カロテノイド組成物に所定量のエタノールを加え、−20℃〜−30℃程度に冷却し、遠心分離して不溶部を取得することを特徴とする。
本発明のカロテノイド組成物の製造方法は、前記植物体は、ミカン類、カキ(Diospyros kaki Thunb.)、ビワ(Eriobotrya japonica (Thunb.) Lindl.)、又はパパイア(Carica papaya L.)のいずれかであることを特徴とする。
本発明のカロテノイド組成物の製造方法は、前記粉末は、ミカン類の果皮を乾燥して得られる粉末であり、前記濃縮物は、前記ヘキサン抽出物に重量の5倍程度のエタノール10%〜20%:水80〜90%を加え、50℃〜60℃で加温しながら減圧溜去して得られる残留物であり、前記濃縮物に加える再溶解溶液は、前記濃縮物の重量の3倍程度のヘキサンであり、前記低濃度カロテノイド組成物に加える所定量のエタノールは、前記低濃度カロテノイド組成物の重量の3〜4倍量程度のエタノールであることを特徴とする。
本発明のカロテノイド組成物の製造方法は、前記粉末は、ミカン類の砂じょうを起源とする部位のパルプから得られる粉末であり、前記濃縮物に加える再溶解溶液は、前記濃縮物の重量の3倍程度のヘキサンであり、前記低濃度カロテノイド組成物に加える所定量のエタノールは、前記低濃度カロテノイド組成物の重量の3倍量程度のエタノールである ことを特徴とする。
本発明のカロテノイド組成物の製造方法は、前記粉末は、ミカン類の澄明果汁製造時の濾過処理工程で発生する不溶物を吸着した珪藻土を回収して得られるパルプから得られる粉末であり、前記濃縮物に加える再溶解溶液は、前記濃縮物の重量の3倍程度のヘキサンであり、前記低濃度カロテノイド組成物に加える所定量のエタノールは、前記低濃度カロテノイド組成物の重量の3倍量程度のエタノールであることを特徴とする。
本発明の高濃度カロテノイド組成物の製造方法は、前記カロテノイド組成物に、容量比にてヘキサン40%とエタノール60%を含むヘキサン/エタノール混合液を3〜4倍量程度加え、−20℃〜−30℃に冷却し、遠心処理を行い、可溶部を回収し、減圧濃縮することを特徴とする。
本発明の高濃度カロテノイド組成物の製造方法は、前記カロテノイド組成物に、容量比にてヘキサン40%とエタノール60%を含むヘキサン/エタノール混合液を3〜4倍量程度加え、−20℃〜−30℃に冷却し、遠心処理を行い、不溶部を回収することを特徴とする。
本発明の高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法は、前記高濃度カロテノイド組成物を加水分解し、水洗によりアルカリを除去した後、有機相を濃縮した残留物に所定量のヘキサンを加え、超音波処理により分散させ放置することにより得られる不溶部を濾取し、前記不溶部にエタノールを加えて超音波処理により分散させ、放置することにより生ずる不溶部を濾過により回収することを特徴とする。
本発明の高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法は、前記高濃度カロテノイド組成物を加水分解し、水洗によりアルカリを除去した後、有機相を濃縮した残留物に所定量のヘキサンを加え、超音波処理により分散後、放置することにより得られる不溶部を濾過により回収し、前記不溶部にエタノールを加えて超音波処理により分散させ、放置することにより生ずる不溶部を濾過により回収することを特徴とする。
本発明の高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法は、前記高濃度カロテノイド組成物を加水分解し、水洗によりアルカリを除去した後、ヘキサン相及び濃赤色中間相を回収して濃縮し、ヘキサン85%〜95%:アセトン5%〜15%を含むヘキサン/アセトン混合液に懸濁し、遠心処理を行って上澄を回収し、前記上澄をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフ分離により前記ヘキサン/アセトン混合液を用いて溶離し、最も濃厚な赤色バンド部分を分画して回収することを特徴とする。
本発明のカロテノイド組成物は、β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算で少なくとも2.0重量%以上含有することを特徴とする。
本発明のカロテノイド組成物は、β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算で少なくとも4.0重量%以上含有することを特徴とする。
本発明の高濃度カロテノイド組成物は、β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算で少なくとも2.0〜2.5重量%以上含有することを特徴とする。
本発明の高濃度カロテノイド組成物は、β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算で少なくとも10重量%以上含有することを特徴とする。
本発明の高純度遊離型カロテノイド組成物は、遊離型β−クリプトキサンチンを少なくとも95重量%を含有することを特徴とする。
本発明のカロテノイド組成物の製造方法は、前記粉末はカキの果皮を乾燥して得られる粉末であることを特徴とする。
本発明の高濃度カロテノイド組成物の製造方法は、前記カロテノイド組成物に、容量比にてヘキサン40%とエタノール60%を含むヘキサン/エタノール混合液を3〜4倍量程度加え、−20℃〜−30℃に冷却し、遠心処理を行い、可溶部を回収することを特徴とする。
本発明の高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法は、前記高濃度カロテノイド組成物を加水分解し、水洗によりアルカリを除去した後、有機相を濃縮した残留物に所定量のヘキサンを加え、超音波処理により分散させ放置することにより得られる不溶部を濾取し、前記不溶部にエタノールを加えて超音波処理により分散させ、放置することにより生ずる不溶部を濾過により回収することを特徴とする。
本発明のカロテノイド組成物は、前記カロテノイド組成物の製造方法により得られたβ−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算にて、少なくとも4重量%以上、遊離型の総カロテノイドとして8%以上含有することを特徴とする。
本発明の高濃度カロテノイド組成は、前記高濃度カロテノイド組成物の製造方法により得られたβ−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算にて、少なくとも10重量%以上、遊離型の総カロテノイドとして25%以上含有することを特徴とする物。
本発明の高純度遊離型カロテノイド組成物は、前記高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法により得られた遊離型ルテイン:ゼアキサンチン:β−クリプトキサンチン:β−カロテン=2:3:4:0.1程度の比率で少なくとも90重量%を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヘキサンとエタノールを用いての抽出により、医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加物用に利用できる濃度のカロテノイドを製造することができるカロテノイド製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るβ−クリプトキサンチンの抽出方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係るカロテノイド抽出に係る抽出液組成と回収物の分配量を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態に係る再溶解溶液の組成と可溶部・不溶部への分配を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態に係る再溶解溶液中のエタノール含量とβ−クリプトキサンチンの分配を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係るヘキサン再溶解時の冷却温度と可溶部・不溶部の重量を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態に係るヘキサン再溶解時の可溶部・不溶部中のβ−クリプトキサンチン含量を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態に係るヘキサン再溶解時の可溶部・不溶部中のβ−クリプトキサンチン含有率(%)を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係るエタノール再溶解時の冷却温度と可溶部・不溶部の重量比(%)を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態に係るエタノール再溶解時の可溶部・不溶部中のβ−クリプトキサンチン含量(mg/100g)を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態に係るエタノール再溶解時の可溶部・不溶部中のβ−クリプトキサンチン含有率(%)を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態に係るヘキサン/エタノール溶液の混合比と可溶部・不溶部中のβ−クリプトキサンチン含有率(%)を示すグラフである。
【図12】本発明の実施の形態に係る遠心処理パルプにおけるβ−クリプトキサンチン濃縮組成物の収量、含量、含有率、及び回収率を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る濾過処理珪藻土におけるβ−クリプトキサンチン濃縮組成物の収量、含量、含有率、及び回収率を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る遊離型β−クリプトキサンチン組成物のHPLC(高速液体クロマトグラム)の結果を示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態に係る遊離型β−クリプトキサンチン組成物の1H核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。(a)は、標準サンプルのグラフである。(b)は、本実施形態の遊離型β−クリプトキサンチン組成物のグラフである。
【図16】本発明の実施の形態に係るウンシュウミカン果皮から製造したβ−クリプトキサンチン濃縮組成物の収量、含量、含有率、及び回収率を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態に係るカキ果皮におけるカロテノイド濃縮組成物の収量、含量、及び含有率を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態に係るカキ果皮由来の高濃度カロテノイド組成物の加水分解で得られる遊離型カロテノイド組成物の収量、含量、及び含有率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態>
〔カロテノイド組成物の抽出方法〕
上述のように、医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加物用に利用できる濃度のβ−クリプトキサンチン組成物を得る製造方法を開発すべく、本発明の発明者らは鋭意検討と実験を行った。
この際、発明者らは、カロテノイドを含有する野菜や果物などの食品等を用いた。たとえば、カロテノイドとして、β−クリプトキサンチンを含有する果実の加工工程、すなわちミカン類、例えば、ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)や、同じグループに属するオオベニミカン(Citrus tangerina Hort.ex Tanaka)、ポンカン(Citrus reticulata Blanco)等の果汁製造工程や、カキなどの果実加工等の工程で発生する果皮、パルプ等の副産物を原料に用いた。
そして、発明者らは、抽出溶媒の組み合わせと抽出温度を最適化することで、クロマトグラフ法などの手段を用いずに、混在するカロテノイド以外の成分を可能なかぎり取り除くことができ、簡便に、短時間で、医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加物用に利用できる濃度のカロテノイド組成物を取得する方法を見いだした。
さらに、発明者らは、このカロテノイド組成物から高濃度カロテノイド組成物を製造する方法も見いだした。加えて、この高濃度カロテノイド組成物を基に、高速液体クロマトグラフのような、高度なクロマトグラフ法などの手段を用いずに、カロテノイド以外の成分をほとんど含まない遊離型カロテノイドを、簡便に取得する方法を見いだした。
これにより、発明者らは、本発明の実施の形態に係るβ−クリプトキサンチン又はその他のカロテノイドを医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加物用に利用できる濃度で含有するカロテノイド組成物を低コストで製造する製造方法を完成するに至った。
以下で、図1の工程図(フローチャート)を参照して本実施形態のカロテノイド組成物の抽出方法を用いて、主にβ−クリプトキサンチン組成物を抽出する方法について詳細に説明する。
【0018】
(抽出原料の素材の前処理)
まず、ステップS101の工程において、抽出原料の素材の前処理を行う。
具体的に、本発明の実施の形態に係るβ−クリプトキサンチンの抽出方法で使用する原料の素材は、植物や食品そのものに限らず、食品素材の加工時に発生する果皮などの副産物でもよく、また含有するカロテノイドの組成に依存しない。
しかしながら、β−クリプトキサンチンを主カロテノイドとして含むミカン類、例えば、ウンシュウミカンの搾汁時に発生する剥皮後の果皮又はパルプを用いることが、資源の有効利用に資するため、特に好ましい。
また、ルテイン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、β−カロテンを含有するカキの干し柿製造時に発生する果皮などについても、資源利用の点で望ましい。
これら抽出素材は水分を除くために、公知の凍結乾燥装置、減圧乾燥、ドラム式食品乾燥装置あるいは粉霧式乾燥装置等による乾燥を行う。この時の水分含量は5%以下が抽出効率の点で望ましい。
【0019】
また、剥皮果皮として、一般的に行われるように酵素処理によりスラリー化し、遠心により回収した沈殿物の乾燥品や、生薬調製の常法に従って、湯通し後、温風又は凍結等により乾燥したものを用いてもよい。
この果皮としては、より具体的には、ウンシュウミカンを、例えば、搾汁あるいは果実缶詰の加工工程で発生する果皮残渣を粗く粉砕した後、湯通し(90℃)を行い、圧搾あるいは遠心分離にて水分を除き、温風乾燥、凍結乾燥その他の乾燥方法で得られる水分含量5%以下の乾燥物を粉末として用いることができる。
また、カキの場合は、果皮を起源とする部位、例えば干し柿の加工工程で発生する剥皮果皮を、温風、凍結乾燥あるいはその他の乾燥方法を用いて乾燥したものを用いてもよい。
【0020】
パルプとしては、篩別時のフィニシャーパルプ、遠心分離パルプ、ならびに果汁透明化処理時の濾過用珪藻土吸着パルプを用いることができる。
より具体的には、このパルプとして、ウンシュウミカンの砂じょうを起源とする部位、例えば搾汁工程における果汁篩別や遠心処理で発生する副産物であるパルプから水分を遠心処理等により除いた後、温風乾燥、凍結乾燥あるいはその他の乾燥方法によって得られる水分含量5%以下の乾燥物を粉末として用いることができる。
また、澄明果汁製造時の濾過処理工程で発生する不溶物を吸着した珪藻土を回収し、遠心処理等で水分を除いた後、温風乾燥、凍結乾燥、又はその他の乾燥方法によって得られる水分含量5%以下の乾燥物を粉末として用いることができる。
これらのパルプにおいては、水洗と遠心を繰り返し、水洗液の溶液中の固形分濃度を表す、Brix°が2(度)以下になるまで行った後、沈殿を凍結乾燥あるいは加熱乾燥して用いることができる。なお、Brix°(度)は、20℃におけるショ糖溶液の重量百分率濃度(W/W%)に換算した屈折率の目盛(スケール)名である。
これらの抽出素材を、カロテノイド抽出のための原料として用いることができる。
【0021】
(原料からの脂溶性物質の抽出)
次に、ステップS102の工程において、原料からのカロテノイドを含む脂溶性物質の抽出を行う。
具体的に、図2を参照して説明すると、本実施形態において、カロテノイド抽出は、原料中の脂溶性物質の抽出と同時に行う。
図2は、ウンシュウミカンパルプを用いた実験例である。以下、図2〜図11のグラフにおいて、グラフ中の「○」丸印を溶媒に対する抽出できた可溶部(可溶性成分の分画)、「□」四角印を不溶部(不溶性成分の分画、沈殿)として描画する。
図2の縦軸は、可溶部に分配された抽出物、又は不溶部に分配された抽出物に含まれる様々な脂溶性物質の含有量を、分配量(%)として示す。すなわち、分配量は、抽出された抽出液又は抽出物中に含まれる脂溶性物質の重量%を示す。この脂溶性物質内にβ−クリプトキサンチンが含まれている。
図2の横軸は、純粋なヘキサンと99.5%エタノール(以下、単にエタノールと称する。)からなる抽出液のヘキサンの含量(%)を示す。左端がヘキサン:エタノール=100%:0%であり、右端がヘキサン:エタノール=0%:100%になる。
【0022】
図2によると、ヘキサンとエタノールの混合比を変えて、試料にカロテノイドの着色がほとんど見られなくなるまで抽出した場合、可溶部に抽出されるカロテノイドが最も多くなるのはヘキサン100%での抽出であることが分かる。逆に、エタノールの含有量を40%以上に増やすと、不溶部にカロテノイドが含まれるようになる。このため、ヘキサン100%により脂溶性物質を抽出するのが最も望ましい抽出条件である。
なお、この抽出時においては、−20℃から18℃の間で、抽出の温度による抽出量の違いは、ほとんど認められない。
したがって、この脂溶性物質の抽出は、室温での抽出で問題ない。また、ヘキサン抽出液は、減圧濃縮等でヘキサンを留去し、油状のヘキサン抽出物(濃縮物)を取得する。この際のヘキサンを回収し、再度抽出操作に利用することができる。
また、抽出溶媒は、抽出原料の状態により、適量のエタノールを加えた後、ヘキサンで抽出してもよい。
【0023】
なお、剥皮果皮からの脂溶性物質の抽出については、後述するように果皮には精油が含まれるため、ヘキサン抽出物に重量の5倍程度のエタノール10%〜20%:水80〜90%を加え、50℃〜60℃で加温しながら減圧溜去することで、濃縮物を取得することが好適である。
【0024】
(低濃度カロテノイド組成物の製造)
次に、ステップS103の工程において、低濃度カロテノイド組成物の製造を行う。
具体的には、上述の原料からの脂溶性物質の抽出工程にて抽出した油状のヘキサン抽出物(濃縮物)に、2から3倍量の再溶解溶液を加え溶解、生じた沈殿を遠心分離(4500rpm、4min、室温等)して、可溶部を回収する。この再溶解液としては、100%ヘキサンを用いることが好適である。
以下で、図3〜図7を参照して、低濃度カロテノイド組成物の製造方法について、詳しく説明する。
【0025】
まず、図3を参照して、再溶解溶液のヘキサンとエタノールの混合比について検討をした結果を説明する。
図3は、再溶解溶液により、脂溶性物質の可溶部・不溶部の各分画への分配比率を調べた図である。図3においては、図2と同様に、縦軸は分配量(%)、横軸は再溶解溶液のヘキサンの含量(%)を示す。
この結果のように、エタノール混合比が0から40%までは、分配率の値に大きな変化はないことが分かった。すなわち、ヘキサン:エタノール=100%:0%から、ヘキサン:エタノール=60%:40%の濃度においては、可溶部と不溶部への脂溶性物質の分配について、大きな変化はなかった。
【0026】
次に、図4を参照して、β−クリプトキサンチンの可溶部と不溶部への分配について説明する。
具体的には、図4は、図3のヘキサンとエタノールの混合比を変更して分配された各再溶解液において、可溶部・不溶部へのβ−クリプトキサンチンの分配比率についての測定結果を示している。図4の縦軸は、可溶部と不溶部に含まれるβ−クリプトキサンチンの割合(%)を示している。すなわち、可溶部の割合(%)+不溶部の割合(%)=100(%)である。また、図4の横軸は、再溶解溶液中の99.5%エタノールの含量(%)を示している。すなわち、図4の左端ではヘキサン:エタノール=100%:0%であり、図4の右端ではヘキサン:エタノール=0%:100%である。
図4では、エタノール含量0から50%の間では大きな変化は認められず、可溶部にほとんどが分配する。
エタノール濃度90%近傍で分配は反転し、エタノール100%では不溶部にβ−クリプトキサンチンの80%が分配している。
このため、再溶解液としては、50%〜100%ヘキサンが好適である。
【0027】
次に、図5を参照して、再溶解時の冷却温度と可溶部・不溶部の重量の関係について説明する。ここでは、ヘキサン100%の溶液への再溶解を行った。図5においては、縦軸は可溶部と不溶部の重量比(%)を示す。すなわち、可溶部+不溶部=100(%)となる。また、図5の横軸は冷却温度を示す。
図5に示すようにヘキサン分画時の冷却温度と可溶部と不溶部の比率は、直線的に変化する。すなわち、低温度であるほど、沈殿物が多くなる。
【0028】
次に、図6を参照して、図5の再溶解時に得られた可溶部・不溶部中におけるβ−クリプトキサンチンの含量の関係について説明する。図6では、縦軸は可溶部と不溶部のそれぞれ100gあたりのβ−クリプトキサンチンの含量(mg/100g)を示し、横軸は図5と同様の冷却温度を示す。
図6に示すように、可溶部と不溶部中の単位重量あたりのβ−クリプトキサンチンの含量と冷却温度の関係は、−10から−30℃の間では、ほとんどが可溶部へ溶解している。
【0029】
次に、図7を参照して、図5の再溶解時に得られた可溶部・不溶部中におけるβ−クリプトキサンチンの含有率について説明する。図7においては、縦軸は可溶部・不溶部それぞれの重量あたりのβ−クリプトキサンチンの含有率(%)を示す。また、図7の横軸は、図5と同様の冷却温度を示す。
図7に示すように、可溶部と不溶部中のカロテノイド含有率は−30℃近傍で極値となる。
なお、本実施形態の低濃度カロテノイド組成物の製造工程では、カロテノイド以外の成分を除くことを目的としている。すなわち、特許文献8のカロテンの濃縮法に開示されているような濃縮によるカロテンの析出を目的とはしていない。
【0030】
このように、ステップS103の低濃度カロテノイド組成物の製造における第一段階の抽出は、ヘキサンを用い、−20℃〜−30℃の冷却で得られる可溶部を取得することにより達成できる。
ここで得られる低濃度カロテノイド組成物は、室温及び冷凍時に油状の濃赤色物質である。
【0031】
(中濃度カロテノイド組成物の製造)
次に、ステップS104の工程において、中濃度カロテノイド組成物の製造を行う。
この工程においては、上述の工程で得られた低濃度カロテノイド組成物に、重量換算で2〜4倍量の99.5%エタノールを添加、冷却し、生じた不溶部を遠心分離(4500rpm、4min、室温)し回収する。これにより、中濃度カロテノイド組成物が得られる。この中濃度カロテノイド組成物は、医薬品、健康補助食品、医薬部外品、食品添加物として十分用いることができる濃度を備えている。
以下で、図8〜図10を参照して、低濃度カロテノイド組成物の製造方法について、詳しく説明する。
【0032】
まず、図8を参照して、エタノール再溶解時の冷却温度と可溶部・不溶部の重量比(%)について説明する。
図8において、図5と同様に、縦軸は可溶部と不溶部の重量比(%)を示し、横軸は、冷却温度(℃)を示す。
図8に示すように、99.5%エタノールに再溶解を行った際の、分画時の冷却温度と可溶部・不要部の重量の関係は直線的に変化する。
【0033】
次に、図9を参照して、エタノール再溶解時の可溶部・不溶部中のβ−クリプトキサンチン含量について説明する。
図9においては、図6と同様に、縦軸は可溶部と不溶部のそれぞれ100gあたりのβ−クリプトキサンチンの含量(mg/100g)を示し、横軸は冷却温度を示す。
図9に示すように、可溶部と不溶部に分配するカロテノイド量は、−20から−30℃に変曲点がある。
【0034】
次に、図10を参照して、エタノール再溶解時の可溶部・不溶部中のβ−クリプトキサンチン含有率(%)について説明する。
図10は、図7と同様に、縦軸は可溶部・不溶部それぞれの重量あたりのβ−クリプトキサンチンの含有率(%)を示し、横軸は冷却温度を示す。
図10に示すように、不溶部中のカロテノイド含量は−20℃〜−30℃に極値を持つ。
【0035】
このように、ステップS104中濃度カロテノイド組成物の製造工程による抽出の第二段階は、エタノールを用い、−20℃〜−30℃への冷却で得られる不溶性成分の分画により達成できることを見いだした。
ここで得られる製造物は室温及び冷凍時において、油状の濃赤色物質である。
【0036】
(高濃度カロテノイド組成物の製造)
次に、ステップS105の工程において、高濃度カロテノイド組成物の製造を行う。
この工程においては、上述の工程で得られた中濃度カロテノイド組成物に、2倍〜3倍量のヘキサン/エタノール混合液を加え、−20から−30℃に冷却し、生じた不溶部を遠心分離(4500rpm、2min、室温)し回収する。
【0037】
ここで、図11を参照して、ヘキサン/エタノール混合比と可溶部・不溶部中のβ−クリプトキサンチン含有率(%)について説明する。
図11の縦軸は、可溶部・不溶部中それぞれの重量中のβ−クリプトキサンチンの含有率(%)を示す。
図11の横軸は、純粋なヘキサンと99.5%エタノールからなる抽出液のエタノールの含量(%)を示す。左端がヘキサン:エタノール=100%:0%であり、右端がヘキサン:エタノール=0%:100%になる。
図11に示すように、ヘキサン/エタノール混合液の組成と、不溶部中のカロテノイド含量との関係をみると、ヘキサン:エタノール=40%:60%に極大があることから、この組成にて分画するのが効果的である。
この高濃度カロテノイド組成物の製造工程で得られる製造物は室温で油状、冷凍時固化する濃暗赤色の物質である。
なお、必要があれば、遠心分離後の不溶物を、ヘキサン:エタノール=40%:60%の溶液に再溶解して、再度分画を行うことができる。
【0038】
(高純度遊離型カロテノイド組成物の製造)
次に、ステップS106の工程において、高純度遊離型カロテノイド組成物の製造を行う。
上述の高濃度カロテノイド組成物は、高濃度エステル型のカロテノイド組成物となっている。すなわち、カロテノイドが脂肪酸とエステル結合した状態で存在している。
このエステル結合を公知の方法を用いて、有機溶媒中で水酸化カリウムで加水分解することで、純粋なカロテノイドのみを抽出し、高純度遊離型カロテノイド組成物を製造することができる。
【0039】
ここで、カロテノイド組成物から、アルカリ加水分解により遊離型カロテノイドを製造する場合には、中濃度あるいは高濃度カロテノイド組成物を用いるのが合理的である。
具体的には、高濃度カロテノイド組成物にt−ブチルメチルエーテルを加え溶解した後、3分の1量の10%水酸化カリウムメタノール溶液を加えて混合、窒素置換をして室温にて一晩放置する。
この反応物にt−ブチルメチルエーテルを追加し、水を加え撹拌後、遠心分離にて有機相と水相に分配し、水相を除き再度水を加え撹拌、再び水相を除去する。
この操作を水相が中性となるまで数回繰り返した後、有機相を減圧下で濃縮し、暗赤色の残留物を得る。
残留物1gに対して約10mLのn−ヘキサンを加え超音波槽中で分散後、濾過あるいは遠心分離により沈殿を回収する。
このとき生成する微細な不溶物を濾過すると金属様光沢を持つ帯紫色の物質を得ることができる。
さらに必要な場合は、回収物に約10mLのエタノールを加え約60℃に加温後、超音波槽中で分散させ、冷却時に生成する微細な不溶物を濾過すると金属様光沢を持つ帯紫色の物質を得ることができる。
この得られた物質は、カロテノイド類以外の成分をほとんど含まない高濃度の遊離型カロテノイド組成物となる。
以上により、カロテノイド組成物の抽出方法の各工程を終了する。
【0040】
抽出したカロテノイド組成物は、例えば、ウンシュウミカンの場合には高濃度の遊離型β−クリプトキサンチン組成物であるため、各種サプリメント、例えば医薬品、健康補助食品、医薬部外品、食品添加物として効率よく利用することができる。
【0041】
(ウンシュウミカンの果皮抽出物からの遊離型カロテノイドの製造方法)
ウンシュウミカンの果皮抽出物の場合は、上述の製造方法で高濃度の遊離型カロテノイド組成物を抽出した場合、収率が2%程度になる。
この高濃度カロテノイド組成物から、加水分解で得られる遊離型のクリプトキサンチンは、溶媒の操作のみでも結晶化するものの、脂質が夾雑するために収率が低い。
これに対して、シリカゲルカラムを1回、通すことで容易に結晶化させることができる。
【0042】
ウンシュウミカン果皮から遊離型カロテノイドを製造する場合について、下記で、より具体的に説明する。
果皮由来の高濃度カロテノイド組成物には、油脂(約35%、NMR法によるグリセロールのメチレンプロトンと内部標準物質として加えたエタノールのメチレンプロトンとの積分強度比から算出)を始めとする脂質が多量に含まれる。
この脂質類は室温で液状のため、ヘキサンとエタノールに加え脂質の3成分が溶媒となる。この組成物は、ヘキサンとエタノールの混合比により完全に混合するか、2相とはなるものの、脂質の影響によって、カロテノイドは両相に分散してしまい、不溶物としては得られない。
このため、果皮を用いた場合は、パルプを由来とするときのように、ヘキサンとエタノールの組成の最適化だけでは10%を超える高濃度化は難しく、濃度が平均で約2%に留まる。つまり、このような脂質が多く含まれる組成物(濃縮物)から遊離型カロテノイドを得る場合、溶媒の組み合わせで高純度の遊離型カロテノイドを結晶として得られるものの、アルカリ加水分解処理後も脂質の混入により、上述のパルプを由来とする場合のように高収量で得ることが困難である。
そこで、シリカゲルを用いた簡易的なカラムクロマトグラフ法による分離を行う。この分離において、溶離に用いる溶媒は、医薬用外劇物に該当せず発がん性のおそれの疑いが指摘されていないヘキサンとアセトンの組み合わせにより行うことができる。すなわち、高速液体クロマトグラフのように高度なクロマトグラフ法を用いず、さらに、アセトニトリルのような医薬用外劇物である溶媒を用いる必要もない。
より具体的には、濃色の赤色バンドを指標に分画を一回行い、当該分画をエバポレーターにて濃縮乾固後にエタノールを加え、加熱溶解後冷暗所に放置することで、容易にβ−クリプトキサンチン結晶を得ることができる。
【0043】
なお、パルプを由来とする高純度遊離型β−クリプトキサンチン製造工程において溶媒の操作のみで析出させる場合に発生する結晶母液について、加水分解後において遊離型β−クリプトキサンチン濃度が低いため再結晶が困難な場合、上述の簡易なシリカゲルカラムクロマトグラフ法による分離を用いて、遊離型β−クリプトキサンチンを濃縮することもできる。
これにより、残存する遊離型β−クリプトキサンチンを再度結晶化させ、回収率を高めることが可能となる。
【0044】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
従来は、高濃度のβ−クリプトキサンチン組成物を取得するには、高速液体クロマトグラフ法などのコストのかかる手法を利用するしかないという問題があった。
これに対して、本発明の実施の形態に係るカロテノイド組成物抽出方法は、高速液体クロマトグラフ法などのコストのかかる手法を利用することなしに、これまでに提供されていない高濃度のβ−クリプトキサンチン組成物を製造することができる。
これにより、βクリプトキサンチンを、医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加用に安価に利用することができる。
【0045】
また、本発明の実施の形態に係るカロテノイド組成物抽出方法は、原料物にβ−クリプトキサンチン以外の、ルテイン、ゼアキサンチン、ビオラキサンチンなどのキサントフィル類、β−カロテンなどのハイドロカーボンカロテノイド類が含まれる場合も、その組成に応じた濃縮物を得ることができる。
これにより、例えば、カキの果皮等を用いて医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加物用に用いることができる濃度のカロテノイド組成物を得ることができる。
【0046】
また、本発明の実施の形態に係るカロテノイド組成物抽出方法は、食品添加物として認められている2種類の溶媒、ヘキサン及びエタノールを用い、組成、抽出順序、抽出温度を工夫することで、エステル型β−クリプトキサンチンを高濃度で含む組成物を抽出して製造することができる。
これにより、発がん性のある有機溶媒等を用いることがなく、安全な医薬品、医薬部外品、サプリメント、又は食品添加物用のカロテノイド組成物を得ることができる。
【0047】
また、本発明の実施の形態に係るカロテノイド組成物抽出方法は、工業的規模に製造を拡大することが容易である。
まず、上述の原料の素材のパルプは、ミカン類のインライン搾汁などで発生する果皮とじょうのう膜からなる搾汁残渣を湯通しし、圧搾あるいは遠心分離により脱水し、果汁篩別や遠心処理をすることで発生する副産物である。
このパルプは、一般的な工業用圧搾機や家庭用の脱水機でも、水洗し、遠心分離により脱水することで、水分を糖分や水溶性成分とともに除くことが可能である。
また、凍結乾燥機も用いなくとも、工業用の温風乾燥機等で十分に乾燥させることができる。同様に、粉砕機も一般的な装置で何ら問題ない。
【0048】
原料からの脂溶性物質の抽出においては、粉砕され粉末になった原料をステンレス等の抽出管に入れ、上部よりヘキサンを滴下して溶出液を回収し、エバポレーター等で濃縮し回収されたヘキサンを再度抽出に循環させることが好適である。これにより、少量のヘキサンで無駄なく抽出操作を行える。
また、濃縮物を遠心分離用容器に入れてヘキサンに再溶解し、冷却後遠心分離し上澄を回収することでヘキサンの揮散を抑えることができる。
上澄の濃縮は容易で、エタノールへの再溶解、冷却後の不溶物回収も上述のヘキサン処理と同様に行える。さらに、容器を変えることなくヘキサンとエタノールの混合液による冷却時不溶部の回収もエタノール処理と同様に行える。
また高純度遊離型β−クリプトキサンチンの製造も、上述の容器中でそのまま実施できる。加水分解生成物の回収も、容器内に塩化ナトリウム溶液を入れ混和後遠心分離を行い、溶液吸引装置のノズルを入れ必要とする相のみを回収することが容易である。
簡易的なカラムクロマトグラフ法による分離も、ガラス製のカラムを用いることで検出器等を使用せず目視で目的物を得ることができることから、工業的規模への拡大が容易である。
【0049】
また、従来から、果実などの加工工程で発生する果皮等の副産物にもカロテノイドが含まれることが知られていたが、必ずしも有効に利用、活用されていなかった。
これに対して、本発明の実施の形態に係るカロテノイド組成物抽出方法は、ウンシュウミカン果汁製造時に発生する果皮、種々の形態のパルプを有効利用し、医薬品、健康補助食品、医薬部外品、食品添加物用に効率よく利用できる高濃度β−クリプトキサンチンエステル型組成物を得ることができる。
具体的には、果皮からは遊離型換算値で4%(平均的には2%程度)、パルプからは14%程度の高濃度のβ−クリプトキサンチン組成物を得ることができる。これは、β−クリプトキサンチンの原料からの回収率として、遊離型換算値で抽出原料の67%に相当する量であり、皮、パルプ等のこれまでは廃棄されていた原料を用いて、資源を有効活用することができる。
また、この高濃度β−クリプトキサンチンエステル型組成物を販売することができるため、収支上、搾汁コストを低減することが可能になる。
【0050】
また、高濃度β−クリプトキサンチンエステル型組成物を加水分解することで、クロマトグラフ法による分離を行うことなしに、遊離型β−クリプトキサンチンを結晶として得ることができる。
また、果皮由来の高濃度β−クリプトキサンチンエステル型組成物の場合には、シリカゲルを担体とした簡便なクロマトグラフ法による分離を一回行うのみで、遊離型β−クリプトキサンチンを結晶として得ることができる。この際に、医薬用外劇物であるアセトニトリル等の有機溶媒を用いる必要がない。
また、干し柿などの加工で発生するカキ果皮に含まれるカロテノイドも同様に処理することで、高濃度のβ−クリプトキサンチンを含むキサントフィル組成物を得ることができる。
これにより、安価に医薬品、健康補助食品、医薬部外品、食品添加物として利用できる遊離型のカロテノイド組成物を得ることができる。
【実施例】
【0051】
次に、以下の実施例によって本発明の実施の形態に係るカロテノイド組成物の製造方法をさらに具体的に説明する。しかしながら、この実施例は一例にすぎず、これに限定されるものではない。
【0052】
〔実験・検出方法〕
(カロテノイド分析試料の調整)
まず、カロテノイド分析試料の調整について説明する。抽出原料の素材の前処理として、生果実は10gを精密に量り、ヘキサン:アセトン:エタノール=50%:25%:25%である抽出溶媒50mLを加えて氷冷下ホモジナイザーにて激しく混和(30秒)する。
乾燥果実試料の場合は、1gを精密に量り、水10mLを加えた後、同様の操作を行う。
なお、以下でヘキサン、エタノール、アセトンは、和光純薬工業(特級)を用いた。
【0053】
次に、混和物をポリプロピレン製遠沈管(50mL,2本)に移し、4500rpm、10分、25℃での遠心分離(トミー精工社製、LC−220)にて不溶分(不溶部)を遠沈する。
そして、可溶部である上層(ヘキサン層)を回収し,ついでわずかに残った上層にヘキサン(5mL、2回)を加えて回収する。得られた上層をナス型フラスコ(100mL)に合わせ、30℃にてロータリーエバポレーター(東京理化器械、N−1000S型)で減圧濃縮する。
次に、濃縮された上層を、窒素にて大気圧に戻し、濃縮物を0.1%ブチルヒドロキシトルエン含有t−ブチルメチルエーテル(和光純薬工業製、HPLC用)で溶かし、ポリプロピレン性製遠沈管(15mL)に移す。そして、t−ブチルメチルエーテル(和光純薬工業製、HPLC用)を加えて、3mLにする。
次に、得られたt−ブチルメチルエーテル溶液に10%メタノール性水酸化カリウム(2mL)を加え、遠沈管内を窒素置換後、室温で遮光下1晩放置し加水分解を行う。なお、水酸化カリウム溶液は、和光純薬工業製、特級を用いた。
加水分解した反応溶液を水(50mL)を入れた分液ろうと(100mL)に移し、加水分解を行った遠沈管を0.1%ブチルヒドロキシトルエン含有t−ブチルメチルエーテル(3mL,2回)で洗い、分液ろうとに合わせる。
次に、分液ろうとを振盪後放置、分離した水層を除き、有機層を水(10mL)で2回洗浄後有機層を回収し、エバポレーター溶媒を減圧溜去する。
溶媒除去後の残留物を0.1%ブチルヒドロキシトルエン含有t−ブチルメチルエーテル:エタノール混液=1:1にて溶かし、2.0mLとし、これをPTFE(0.2μm)フィルターにてろ過して分析用バイアルに移す。バイアル内の空間は窒素ガス置換しておく。(上述の方法は,Lee・Castle(2001)(J. Agric. Food Chem. 49:877〜882)の方法をもとに一部変更を加えたものである)。
【0054】
分画溶液中のカロテノイド分析は、各分画を一定容量とし、マイクロシリンジで所定量(10〜20μL)を量り取り、0.1%ブチルヒドロキシトルエン含有t−ブチルメチルエーテル2mLを入れた15mLポリプロピレン製遠沈管に加え、10%水酸化カリウムメタノール溶液1mLを加えて窒素置換後、一晩室温放置した。
その後、水8mLを加え混和、遠心処理(4500rpm、1分、室温)し、水を追加し下層を10mLとし、0.1%ブチルヒドロキシトルエン含有t−ブチルメチルエーテルを追加し上相を2mLとした。そして、上相から、濃度に応じてマイクロシリンジで所定量(100μLから1mL)を分取し、メスフラスコに移しエタノールを加え2mLとし、これをHPLC(High performance liquid chromatography、高速液体クロマトグラフ)分析用試料とした。
【0055】
(カロテノイドHPLC分析法)
HPLC法によるカロテノイド分析は、Sanderら(1994)(Anal. Chem. 66:1667〜1674)の方法に変更を加えて行った。HPLC装置については、アジレント社製HP1100を用いた。測定条件は以下の通りである。
カラム、YMC社製Carotenoid S−3μ(3.0 mm i.d.×150 mm,Waters)。カラム温度、30℃。
溶媒系、A液:メタノール:アセトニトリル:水=7:1:2、B液:t−ブチルメチルエーテル:メタノール=9:1。なお、このメタノール、アセトニトリル、t−ブチルメチルエーテルは、和光純薬工業、HPLC用を用いた。また、HPLC分析用カロテノイド標準品は、DHI Water & Environment社製の標準品を用いた。
濃度勾配プログラム、B液濃度を分析開始後0.5分間22.5%に維持し、65%まで44.5minで直線的に増加させる。
流量、1.0 mL/min。試料注入量、2μl。検出波長、455nm。含量は絶対検量線法により定量した。
【0056】
(核磁気共鳴装置による分析)
核磁気共鳴装置として、ブルカー社製Avance DPX400を用いて分析を行った。
核磁気共鳴スペクトルは、各分画溶液を濃縮後、約10mgを量り、重水素化クロロホルムに溶かし、テトラメチルシラン蒸気を溶液に吹き込みδ値基準とした。
【0057】
〔ウンシュウミカンを用いた高濃度化カロテノイド組成物の製造〕
(実施例1)
上述の実施の形態に係る処理を用いて、ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)の果皮を原料として用いてβ−クリプトキサンチンを含む高濃度化カロテノイド組成物を製造した例について説明する。
まず、ウンシュウミカンの果皮(果樹研究所栽培のウンシュウミカンの果皮)を粗くフードカッター(Food Machine Instrument社製、R3−1500)で粉砕した後、沸騰水中に投入し加熱を中止、15分間、時々攪拌しながら湯通しを行った。
そして、ナイロンメッシュで果皮を回収し、圧搾又は脱水機により水分を除き、50℃に設定した温風乾燥機で約12時間乾燥した。この乾燥物の水分含量は、真空減圧乾燥後の減量から算出すると5%以下であった。この果皮粉砕物の乾燥物を粉砕器(ワーリング社製、ワーリングブレンダー 7011HS)で微粉末とした。
その後、ガラスフィルターの着いた直径10cm長さ80cmのガラス製カラム管に入れヘキサン3Lで抽出し、その濃縮物に約5倍量のエタノール:水=2:8を加え、60℃で加温しながらエバポレーターで減圧溜去して油状の残留物である粗抽出物を得た。この操作は、リモネン等の精油成分を水とともに溜去するために行った。
この粗抽出物に、約3倍量のヘキサンを加えて−30℃で1日冷却した後、4500rpm、3分、室温での遠心処理を行い、上層の可溶部を回収し、減圧濃縮して油状物を得た。
この油状物に、約3倍量のエタノールを加え、超音波槽(イワキ社製USC−1.5D)中で分散させ−30℃で1日冷却した。その後、4500rpmで3分の室温遠心処理をして、下層の不溶部を回収し、エバポレーターで減圧濃縮し油状物を得た。
この油状物は、β−クリプトキサンチンを少なくとも2.0重量%(遊離型β−クリプトキサンチン換算)以上含有する高濃度化カロテノイド組成物であった。
【0058】
(実施例2)
次に、図12を参照して、ウンシュウミカン果汁篩別(ふるい分け)時の遠心パルプ(日本果実工業製)を原料として使用し、β−クリプトキサンチンを含む高濃度化カロテノイド組成物を製造した例について説明する。製造の過程は、上述の実施例1と同様にして、最終的にβ−クリプトキサンチンを含む油状物を得た。
図12の例では、工程毎に、各組成物の取得量である収量(g)、β−クリプトキサンチンの含量(g)、収量/含量である含有率(%)、油状回収率(%)を示している。この各値は、上述のカロテノイド分析試料の調整の方法を用いて試料を用意して測定した。
【0059】
図12を参照すると、実施例2において、取得した低濃度カロテノイド組成物において、β−クリプトキサンチン含有率は、遊離型として約3.6%、原料からの回収率は96%以上であった。ここで、回収率は、原料に含まれていたβ−クリプトキサンチンが、各工程の組成物のうち何%が残存して含まれているかを示す。
また、中濃度カロテノイド組成物において、β−クリプトキサンチン含有率は、遊離型として約4.9%、原料からの回収率は92%であった。これは、高濃度を必要しない場合には最も回収率が良かった。
また、高濃度カロテノイド組成物において、β−クリプトキサンチン含有率は、遊離型として約13%、原料からの回収率は75%以上であった。
このように、ウンシュウミカンの遠心パルプを用いることで、β−クリプトキサンチンを従来より高い濃度で含むカロテノイド組成物を高効率に製造することができる。
【0060】
(実施例3)
次に、図13を参照して、ウンシュウミカンの澄明果汁(日本果実工業製)の製造時に発生する濾過処理珪藻土を使用して、β−クリプトキサンチンを含む高濃度化カロテノイド組成物を製造した例について説明する。
製造の過程は、上述の実施例1と同様であり、最終的にβ−クリプトキサンチンを含む油状物を得た。図13の例でも、図12と同様に、工程毎に各値を示している。
【0061】
図13を参照すると、実施例3において、低濃度カロテノイド組成物は、β−クリプトキサンチン含有率(遊離型として)約2.1%、原料からの回収率は91%以上であった。
また、中濃度カロテノイド組成物は、β−クリプトキサンチン含有率(遊離型として)約6.5%、回収率は80%程度であった。このため、実施例2と同様に、高濃度を必要しない場合には最も回収率が良かった。
また、高濃度カロテノイド組成物は、β−クリプトキサンチン含有率(遊離型として)約14%、原料からの回収率は66%以上であった。
このように、ウンシュウミカンの濾過処理珪藻土を用いても。高効率にβ−クリプトキサンチンを含むカロテノイド組成物を製造することができる。
【0062】
〔ウンシュウミカンパルプ由来の高純度遊離型β−クリプトキサンチンの製造結果〕
次に、図14〜図15を参照して、上述の実施例2のウンシュウミカンパルプ(日本果実工業)から得られた高純度遊離型β−クリプトキサンチンの製造の結果について説明する。
実施例2のウンシュウミカンパルプから得られた高濃度エステル型カロテノイド組成物1gを、30mLのt−メチルブチルエーテル(和光純薬工業社製、HPLC用)に溶解後、20mLの10%水酸化カリウムメタノール溶液を加え、窒素置換後に混和し、室温暗所にて1晩放置し加水分解を行った。
加水分解した反応液を分液ろうとに移し、t−ブチルメチルエーテルを適宜追加し、水を加え攪拌し有機相を水洗、250mLの遠心ボトルに入れて4500rpmで4分遠心分離し、水相を分離・除去した。本操作を数回繰り返し、水洗液が中性になった時点で、有機相を回収した。
その後、回収した有機相を、ロータリーエバポレーターで濃縮後、ヘキサンを加え超音波処理(イワキ社製USC−1.5D使用)により分散させ、放置した。すると、金属様光沢をもつ暗紫色の結晶が析出した。
この暗紫色の結晶を4500rpmで4分遠心分離し、ヘキサン可溶部を除去し、沈殿にエタノールを適宜加え超音波処理により分散させ、この分散させた結晶を濾取するエタノール処理を行った。
その後、エタノール処理後に濾取した結晶を、高速液体クロマトグラフ法(図14)及び核磁気共鳴装置(図15)にて分析した。
【0063】
図14は、遊離型β−クリプトキサンチン製造物のHPLCの結果である。この図14の結果では、β−クリプトキサンチンのほぼ単一の大きなピークが検出できた。
また、図15は、遊離型β−クリプトキサンチン純品製造物の1H核磁気共鳴スペクトル)による分析を示した結果である。ここで、上方のグラフである図15(a)は、コントロールの純粋なβ−クリプトキサンチン標準サンプル(四国八洲薬品株式会社製、δ3.5付近のピークは残存する夾雑物由来)の分析結果である。下方のグラフである図15(b)は本実施例により得られた高純度遊離型β−クリプトキサンチンの分析結果である。図15(b)では、ほぼ同じ大きさとスペクトルのピークを検出でき、ほぼ純粋なβ−クリプトキサンチンを得ることができたことを示している。
以上の結果から、ほぼ純粋(96%)な遊離型β−クリプトキサンチン(91.8mg)を同定することができた。
このように、原料の高濃度エステル型β−クリプトキサンチン組成物から、約65%の回収率で遊離型β−クリプトキサンチンを得ることができる。
なお、上述のエタノール処理は、場合によっては省略することができる。また、より精製度を高めたいときには、エタノール処理時に約60℃に加温し溶解させ再結晶を行うこともできる。
【0064】
〔加水分解操作時にt−メチルブチルエーテル及びメタノールを使用しない高純度遊離型β−クリプトキサンチンの製造結果〕
上述の実施例においては、加水分解時に、t−メチルブチルエーテル及びメタノールを使用して高純度遊離型のカロテノイド組成物の抽出を行った。
これに対して、t−メチルブチルエーテル及びメタノールを使用せずに高純度遊離型β−クリプトキサンチンを取得することも可能であった。
たとえば、高濃度エステル型カロテノイド組成物(10g)をヘキサン(100mL)に溶解後、10%水酸化カリウムエタノール溶液を(20mL)加え混和し、窒素置換後、暗所室温で4時間放置したところ暗赤色の針状結晶が析出した。
これを濾取したところ、HPLC分析を行うと(図示せず)、ほぼ純粋(96%)な遊離型β−クリプトキサンチン(1.3g)を得ることができた。
このように構成することで、ヘキサン・エタノール抽出を用いた製造工程のみで、安価に高純度遊離型β−クリプトキサンチンを得ることが可能になる。
【0065】
〔ウンシュウミカン果皮由来の高純度遊離型β−クリプトキサンチンの製造結果〕
(実施例4)
実施例1のウンシュウミカン果皮から得られた高濃度エステル型カロテノイド組成物6.62gを、ヘキサン(100mL)に溶解後、用時調製した10%水酸化カリウムエタノール溶液を(20mL)加え混和し、窒素置換後、室温暗所にて1晩放置し加水分解を行った。
反応液の不溶物を遠心処理(4500rpm、4分、室温)後、上澄を回収し、精製水(50mL)、飽和食塩水(50mL)を加え、よく混和し250mLの遠心ボトルに入れて遠心分離(4500rpm、4分間、室温)し、水相を分離し、これを除去した。本操作を数回繰り返して水相の中性をpH試験紙で確認した。
上記の遠心分離操作により液体は3相となった。中間相は濃赤色を呈するもののβ−クリプトキサンチン濃度をHPLC法にて確認すると含有量は最上相のヘキサン相の35%ほどであった。
ヘキサン相及び濃赤色中間相を回収し、ロータリーエバポレーターで突沸を起こさないように注意して濃縮後、3.71gの油状物を得た。この油状物をヘキサン:アセトン=90%:10%混液(40mL)に懸濁させ、激しく混和後、遠心分離(4500rpm、4分間、室温)を行い、上澄を回収した。
シリカゲル(メルクジャパン株式会社,シリカゲル60、400g)をヘキサン:アセトン=90%:10%混液に懸濁後、ガラス製クロマトグラフカラムに充填し、上記の回収物をカラム内のシリカゲルの上部に静かに積層し、ヘキサン:アセトン=90%:10%混液にて溶離を行った。
β−クリプトキサンチンは最も濃厚な赤色バンド部分に相当するのでこの部分を分画し、ロータリーエバポレーターで濃縮し0.136gの濃縮物を得た。
ここにエタノールを加え約60℃に加熱溶解後、冷暗所に放置すると金属様光沢をもつ暗紫色の結晶が析出した。
これを濾取することで、高純度遊離型β−クリプトキサンチン0.104gを得た。このものはNMRでカロテノイド以外の夾雑物を認めず、またHPLC分析で96%の純度であった。
【0066】
図16を参照して、実施例4に係る工程毎のカロテノイド組成物に係る各値について説明する。
図16の実施例4において、低濃度カロテノイド組成物は、β−クリプトキサンチン含有率(遊離型として)約1.3%、原料からの回収率は87%以上であった。
また、中濃度カロテノイド組成物は、β−クリプトキサンチン含有率(遊離型として)約2.13%、回収率は83%程度であった。
また、アルカリ加水分解後に得られる有機相のシリカゲルクロマトグラフ分離後、エタノール処理により再結晶した高濃度カロテノイド組成物について、β−クリプトキサンチン含有率(遊離型として)は、ほぼ100%、原料からの回収率は61%以上であった。
このように、ウンシュウミカンの果皮を用いて、簡易なシリカゲルクロマトグラフ分離を1回行うだけで、高効率に遊離型β−クリプトキサンチンを製造することができる。
【0067】
〔カキを用いた高濃度化カロテノイド組成物の製造〕
(実施例5)
次に、図17を参照して、カキ(Diospyros kaki Thunb.)果皮を使用して、濃度を高めたカロテノイド組成物を製造した例について説明する。製造の過程は、上述の実施例1と同様であり、最終的にカロテノイドを含む油状物を得た。
図17に、乾燥カキ果皮74.34gを使用してカロテノイド組成物製造した例を示す。カキは、ルテイン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、β−カロテンを主カロテノイドとして含有する。このため、図17においては、各工程における組成物のうち、各分画において、回収率(%)、ルテイン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、β−カロテン、及びカロテノイドの合計に係る含量(mg)、含有率(%)を示している。
図17の実施例5では、原料中の遊離型としての総カロテノイド含有率は0.035%、ヘキサン抽出物中の含有率は約4.1%であった。
ヘキサン不溶部中の総カロテノイド含有率は7.5%以上であるが、原料から回収率は約26%であった。
低濃度カロテノイド組成物は、総カロテノイド含有率(遊離型として)約3.6%、原料からの回収率は73%以上であった。
低濃度カロテノイド組成物をもとに製造した中濃度カロテノイド組成物は、総カロテノイド含有率(遊離型として)約8.9%、原料からの回収率は70%以上であり、高濃度を必要しない場合には最も回収率が良かった。
中濃度カロテノイド組成物をもとに製造した高濃度カロテノイド組成物は、総カロテノイド含有率(遊離型として)約28.3%、原料からの回収率は52%以上であった。
【0068】
実施例5において、ヘキサン抽出物と比較した高濃度カロテノイド組成物におけるカロテノイドの濃縮率は、ルテイン6.4倍、ゼアキサンチン7.1倍、β−クリプトキサンチン7.0倍、β−カロテン4.6倍であった。
このように、カロテノイド種によって若干の違いはあるが、いずれもほぼ同様の傾向を示しており、β−クリプトキサンチン以外のカロテノイドを含む組成の原料であっても、本実施形態の濃縮が可能であることを示している。
【0069】
〔カキ果皮由来の高濃度遊離型カロテノイド組成物の製造結果〕
実施例5にて、カキ果皮から得られた高濃度カロテノイド組成物(38mg)を、t−メチルブチルエーテル(3mL)に溶解後,10%水酸化カリウムメタノール溶液(2mL)を加え、窒素置換後混和し、室温暗所にて1晩放置し加水分解を行った。
加水分解反応液を分液ろうとに移し、t−ブチルメチルエーテルを適宜追加し、水を加え攪拌し有機相を水洗、50mLの遠心管に入れて遠心(4500rpm、4min)し水相を分離・除去した。この操作を数回繰り返し、水洗液が中性になった時点で有機相を回収した。回収した有機層をロータリーエバポレーターで濃縮後、ヘキサンを加え超音波処理により分散させた。その後、放置すると金属様光沢をもつ暗紫色の沈殿を得た。これを濾取して、高濃度遊離型カロテノイド組成物を得た。
【0070】
ここで、図18を参照して、カキ果皮由来の高濃度カロテノイド組成物の加水分解で得られる遊離型カロテノイド組成物の収量、含量、および含有率について説明する。
図18の不溶部の含有率を参照すると、実施例5のカキ果皮由来の高濃度遊離型カロテノイドをHPLCで分析した結果、ルテイン17.9%、ゼアキサンチン31.4%、β−クリプトキサンチン40.6%、及びβ−カロテン1.5%からなるカロテノイド含有率90%以上の混合物を得ることができた。
また、この含有率から換算すると、原料の高濃度エステル型カロテノイド組成物中に含まれるカロテノイドの約95%を回収することができた。
このように、本発明の実施の形態に係るカロテノイド組成物の抽出方法を用いて、カキの果皮からも、高効率で濃度を高めたカロテノイド組成物を取得することができる。
【0071】
このように、本実施例により、ウンシュウミカンから、エステル型β−クリプトキサンチンを高い濃度で含むカロテノイド組成物、及び純度の高い遊離型β−クリプトキサンチン結晶を得ることができる。なお、オオベニミカン、ポンカンのような他のミカン類や、柑橘類においても、同様の工程により、高濃度のβ−クリプトキサンチンを含む組成物や、遊離型β−クリプトキサンチン結晶を得ることができる。
また、カキから、エステル型β−クリプトキサンチンを高い濃度で含むカロテノイド組成物、及び遊離型β−クリプトキサンチンを含むカロテノイドのみからなる結晶を得ることができる。
【0072】
〔ビワとパパイアを用いた高濃度化カロテノイド組成物の製造〕
なお、ビワとパパイアに関しても、同様の方法にて、エステル型β−クリプトキサンチンを高い濃度で含むカロテノイド組成物、及び遊離型β−クリプトキサンチンを含むカロテノイドのみからなる結晶を得ることもできる。
【0073】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の実施の形態に係るエステル型β−クリプトキサンチンを高濃度で含む組成物の製造方法により、ミカン類の果汁及び缶詰製造時に発生する果皮、果汁製造時に発生する種々の形態のパルプを有効利用し、医薬品、健康補助食品、医薬部外品、食品添加物として効率よく利用できる高濃度β−クリプトキサンチンエステル型組成物及び高純度遊離型β−クリプトキサンチンを得ることができ、産業上利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイドを含む植物体の水分含量を5%以下に乾燥させた粉末にヘキサンを加えて可溶部中のヘキサン抽出物を取得し、
前記ヘキサン抽出物を濃縮して濃縮物を取得し、
前記濃縮物に再溶解溶液を加えて再溶解し、−20℃〜−30℃程度に冷却した後、遠心処理して可溶部を回収し濃縮して低濃度カロテノイド組成物を取得し、
前記低濃度カロテノイド組成物に所定量のエタノールを加え、−20℃〜−30℃程度に冷却し、遠心分離して不溶部を取得する
ことを特徴とするカロテノイド組成物の製造方法。
【請求項2】
前記植物体は、ミカン類、カキ(Diospyros kaki Thunb.)、ビワ(Eriobotrya japonica (Thunb.) Lindl.)、又はパパイア(Carica papaya L.)のいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド組成物の製造方法。
【請求項3】
前記粉末は、ミカン類の果皮を乾燥して得られる粉末であり、
前記濃縮物は、前記ヘキサン抽出物に重量の5倍程度のエタノール10%〜20%:水80〜90%を加え、50℃〜60℃で加温しながら減圧溜去して得られる残留物であり、
前記濃縮物に加える再溶解溶液は、前記濃縮物の重量の3倍程度のヘキサンであり、
前記低濃度カロテノイド組成物に加える所定量のエタノールは、前記低濃度カロテノイド組成物の重量の3〜4倍量程度のエタノールである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカロテノイド組成物の製造方法。
【請求項4】
前記粉末は、ミカン類の砂じょうを起源とする部位のパルプから得られる粉末であり、
前記濃縮物に加える再溶解溶液は、前記濃縮物の重量の3倍程度のヘキサンであり、
前記低濃度カロテノイド組成物に加える所定量のエタノールは、前記低濃度カロテノイド組成物の重量の3倍量程度のエタノールである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカロテノイド組成物の製造方法。
【請求項5】
前記粉末は、ミカン類の澄明果汁製造時の濾過処理工程で発生する不溶物を吸着した珪藻土を回収して得られるパルプから得られる粉末であり、
前記濃縮物に加える再溶解溶液は、前記濃縮物の重量の3倍程度のヘキサンであり、
前記低濃度カロテノイド組成物に加える所定量のエタノールは、前記低濃度カロテノイド組成物の重量の3倍量程度のエタノールである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカロテノイド組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項3で得られたカロテノイド組成物に、
容量比にてヘキサン40%とエタノール60%を含むヘキサン/エタノール混合液を3〜4倍量程度加え、−20℃〜−30℃に冷却し、遠心処理を行い、可溶部を回収し、減圧濃縮する
ことを特徴とする高濃度カロテノイド組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項4又は5で得られたカロテノイド組成物に、
容量比にてヘキサン40%とエタノール60%を含むヘキサン/エタノール混合液を3〜4倍量程度加え、−20℃〜−30℃に冷却し、遠心処理を行い、不溶部を回収する
ことを特徴とする高濃度カロテノイド組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項6で得られた高濃度カロテノイド組成物を加水分解し、
水洗によりアルカリを除去した後、有機相を濃縮した残留物に所定量のヘキサンを加え、
超音波処理により分散させ放置することにより得られる不溶部を濾取し、
前記不溶部にエタノールを加えて超音波処理により分散させ、放置することにより生ずる不溶部を濾過により回収する
ことを特徴とする高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項7で得られた高濃度カロテノイド組成物を加水分解し、
水洗によりアルカリを除去した後、有機相を濃縮した残留物に所定量のヘキサンを加え、
超音波処理により分散後、放置することにより得られる不溶部を濾過により回収し、
前記不溶部にエタノールを加えて超音波処理により分散させ、放置することにより生ずる不溶部を濾過により回収する
ことを特徴とする高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項6で得られた高濃度カロテノイド組成物を加水分解し、
水洗によりアルカリを除去した後、ヘキサン相及び濃赤色中間相を回収して濃縮し、
ヘキサン85%〜95%:アセトン5%〜15%を含むヘキサン/アセトン混合液に懸濁し、遠心処理を行って上澄を回収し、
前記上澄をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフ分離により前記ヘキサン/アセトン混合液を用いて溶離し、
最も濃厚な赤色バンド部分を分画して回収する
ことを特徴とする高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法。
【請求項11】
β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算で少なくとも2.0重量%以上含有する
ことを特徴とする請求項3に記載のカロテノイド組成物。
【請求項12】
β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算で少なくとも4.0重量%以上含有する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のカロテノイド組成物。
【請求項13】
β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算で少なくとも2.0〜2.5重量%以上含有する
ことを特徴とする請求項6に記載の高濃度カロテノイド組成物。
【請求項14】
β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算で少なくとも10重量%以上含有する
ことを特徴とする請求項7に記載の高濃度カロテノイド組成物。
【請求項15】
遊離型β−クリプトキサンチンを少なくとも95重量%を含有する
ことを特徴とする請求項8に記載の高純度遊離型カロテノイド組成物。
【請求項16】
前記粉末はカキの果皮を乾燥して得られる粉末である
ことを特徴とするカロテノイド組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項16で得られたカロテノイド組成物に、
容量比にてヘキサン40%とエタノール60%を含むヘキサン/エタノール混合液を3〜4倍量程度加え、−20℃〜−30℃に冷却し、遠心処理を行い、可溶部を回収する
ことを特徴とする高濃度カロテノイド組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項17で得られた高濃度カロテノイド組成物を加水分解し、
水洗によりアルカリを除去した後、有機相を濃縮した残留物に所定量のヘキサンを加え、
超音波処理により分散させ放置することにより得られる不溶部を濾取し、
前記不溶部にエタノールを加えて超音波処理により分散させ、放置することにより生ずる不溶部を濾過により回収する
ことを特徴とする高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法。
【請求項19】
請求項16に係るカロテノイド組成物の製造方法により得られた
β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算にて、少なくとも4重量%以上、遊離型の総カロテノイドとして8%以上含有する
ことを特徴とするカロテノイド組成物。
【請求項20】
請求項17に係る高濃度カロテノイド組成物の製造方法により得られた
β−クリプトキサンチンを、遊離型β−クリプトキサンチン換算にて、少なくとも10重量%以上、遊離型の総カロテノイドとして25%以上含有する
ことを特徴とする高濃度カロテノイド組成物。
【請求項21】
請求項18に係る高純度遊離型カロテノイド組成物の製造方法により得られた
遊離型ルテイン:ゼアキサンチン:β−クリプトキサンチン:β−カロテン=2:3:4:0.1程度の比率で少なくとも90重量%を含有する
ことを特徴とする高純度遊離型カロテノイド組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−241197(P2011−241197A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116988(P2010−116988)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(304001419)日本果実工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】