説明

カンチレバーの振動特性測定方法

【課題】 カンチレバーの周波数・振動特性検出は、長時間を要することにより、測定条件設定時の誤差を生じさせる問題があった。また、1次共振周波数の検出の誤りが発生する可能性があった。
【解決手段】 カンチレバーの共振周波数を含む範囲の周波数帯域で、加振信号発生器より、往復の高速周波数スイープ信号を発生させ、カンチレバーを振動させ、往路と復路それぞれの振幅の最大値の周波数を計測し、その中間値をカンチレバーの共振周波数として、検出することを特徴とする。さらに、1次共振周波数を検出時に6.3倍の2次共振周波数が存在するかを確認することにより、共振周波数検出の誤りを未然に防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンチレバー共振周波数近傍で振動させて使用するプローブ顕微鏡について、特に、カンチレバーの振動特性を測定する場合に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセス等を用いたナノテクノロジーの進歩により、板バネ特性を備えたカンチレバーが種々の装置やセンサ等に採用され、形状観察、質量、粘弾性、磁気力等の様々な測定に用いられている。走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)では、片持ち状態に支持されたカンチレバーを備え、該カンチレバー先端の探針(プローブ)で試料表面を走査し、探針−試料間に作用するトンネル電流、原子間力、磁気力、粘弾性等をカンチレバーの撓み量(変位)として測定することで、試料表面の形状や物性等を計測して画像化することが可能であり、幅広い分野で利用されている。
【0003】
この走査型プローブ顕微鏡におけるカンチレバーを、カンチレバーの共振周波数近傍で振動させ、その振幅、位相、周波数の変化などを検出することにより、弱い力や相互作用を、高感度に検出する共振モード(DFM)使用した測定方法が数多く提案されている。
【0004】
ここで、周波数・振幅特性(Qカーブ)測定に関しては、使用するカンチレバーに対して、共振周波数を含む範囲を、その応答性を考慮した時間で加振周波数のスイープを行い、周波数・振幅特性(Qカーブ)測定を行って共振周波数を検出ていた。長い時間をかけてスイープを行う場合、最大振幅の周波数が共振周波数と一致するようになるので、振幅の最大値の周波数を共振周波数として検出することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。以下に、これまでの一般的な周波数・振幅特性測定の例を示す。
【0005】
図9は、大気中でのこれまでの一般的な周波数・振幅特性測定の手順を示した図である。大気中にて、共振周波数は300kHz、Q値が300程度の設計値で作られた一般的なカンチレバーを、(i)最初に周波数範囲200〜400kHz、スイープ時間2secで測定した後、(ii)最大振幅を中心に周波数範囲280〜320kHz、スイープ時間2secで測定し、(iii)最後に更に精度を高めるため周波数範囲298〜302Hz、スイープ時間2secで測定をおこない、(iv)その最大振幅の周波数を検出することにより共振周波数を測定する(図9参照)。この場合、合計で6secのスイープ時間が必要となる。
【0006】
図7は、真空中でのこれまでの一般的な周波数・振幅特性測定の手順を示した図である。真空中にて作られた、共振周波数が300kHzの設計値で、Q値が30000程度と予測される一般的なカンチレバーを、(i)最初に周波数範囲200〜400kHz、スイープ時間60secで周波数・振幅特性測定した後、(ii)前回の最大振幅を中心に周波数範囲40kHz、スイープ時間60secで測定し、(iii)前回の最大振幅を中心に周波数範囲4kHz、スイープ時間60secで測定、(iv)前回の最大振幅を中心に周波数範囲400Hz、スイープ時間60secで測定し、(v)前回の最大振幅を中心に周波数範囲40Hz、スイープ時間60secで測定し、(vi)その最大振幅の周波数を検出することにより、共振周波数を測定する。この場合、合計で300secのスイープ時間が必要となる。真空中の場合は、Q値が大きくなるため、大気中の数十〜数百倍のスイープ時間が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07-174767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
共振時のQ値が大きな場合、スイープする時間を長くし、定常的な振動状態になるようにしなければ、正確な共振周波数を検出することが困難であった。カンチレバーの共振周波数とQ値が不明な場合、スイープを行う時間と周波数範囲を適切に見積もることが出来ないため、広い周波数範囲をゆっくりスイープする条件で周波数・振幅特性測定を行う必要がある。大気中でのカンチレバーの共振周波数やQ値の設計値が判明している場合であっても、溶液中で使用する場合は、共振周波数やQ値は大きく異なり、推測が難しい。また、真空中の共振周波数は、大気中に近い値となるもののQ値が数十倍〜数百倍となる傾向にあり、測定するために、長い時間を必要としていた。また、その推測も困難であった。
【0009】
また、短時間でのスイープでは、応答の遅れが生じることから共振周波数の検出に誤差が発生し、Q値が大きな状態(真空中や軽いガスの中の環境などで)では、その誤差はより拡大する傾向にあった。
【0010】
真空中でのSPMの使用は、空気による粘性抵抗が生じず、大気中の場合より数十倍〜数百倍程度のQ値になることが知られている。よって、真空中での周波数・振幅特性測定は、スイープを行う時間として大気中の数十倍〜数百倍程度必要となり、さらに長い時間が必要となっていた。
【0011】
従って、これまでの周波数・振幅特性測定は、未知の振動特性を持つカンチレバーに対して行なう場合、安全を見込んで長い時間を費やした測定を行うか、短時間で測定を行い測定精度が低い測定を行うかがという選択を要し、短時間に高精度な測定の実施が成せない状況であった。
【0012】
また、別途の問題として、長時間かけた測定であっても、カンチレバーの1次共振周波数近傍に、複数のピークが発生することも多く、真の共振周波数を選択できない場合もあった。
【0013】
また、カンチレバーを振動させるために、加振周波数をスイープし加振器を振動させる場合は、加振器と機械的に接続した周辺部(カンチレバーホルダ、斜面ブロックなど)も振動し、副次の振動が発生することがある。副次の振動は、カンチレバーの振動にも影響を与え、カンチレバーの共振周波数以外にも振幅のピークを発生させ、カンチレバーの共振周波数検出の誤りを引き起こす場合があった。
【0014】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、カンチレバーの共振周波数を、短時間で、しかも高精度に測定することを目的とする。また、2次共振周波数を同時に検出することにより、1次共振周波数を示すピークであるかを判別することも可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
すなわち、本発明は、カンチレバーと、前記カンチレバーを振動させる加振部と、前記加振部へ加振信号を供給する加振信号発生器と、前記カンチレバーの変位を検出する変位検出器と、変位検出器から出力される変位の振幅を示す交流信号を直流のレベル信号へ変換する交流−直流変換機構と、加振周波数に対するカンチレバーの変位の振幅を測定する周波数・振動特性検出機構を設けた、走査型プローブ顕微鏡(SPM)において、
カンチレバーの共振周波数を含む範囲の周波数帯域で、加振信号発生器より、これまでの「数十から数百分の1」の短時間による、往復の周波数スイープ信号を発生させ、加振部により前記カンチレバーを振動させ、往路と復路それぞれの振幅の最大値の周波数を計測し、その中間値をカンチレバーの共振周波数として、検出することを特徴とする。
【0016】
また、 前回検出した共振周波数を基に、前回検出した共振周波数を含む前回の周波数帯域より狭い範囲の新たな周波数帯域により、新たに往復の周波数スイープ信号を発生させ、加振部により前記カンチレバーを振動させ、往路と復路それぞれの振幅の最大値の周波数を新たに計測し、その中間値をカンチレバーの新たな共振周波数として検出する操作を、1回以上繰り返して行うことにより、カンチレバーの共振周波数の検出精度を高めて検出することが可能となった。
【0017】
また、本発明は、広い周波数範囲であっても、高速にスイープが可能であるため、カンチレバーの1次共振周波数と2次共振周波数を同時に、短時間で検出することが可能となった。
【0018】
さらに、1次共振周波数の6.3倍の周波数近傍に、2次共振周波数の存在することが知られていることより、その有無を確認することで、真の1次共振周波数であるかを判断することが可能となった。
【0019】
前回検出した1次共振周波数と、2次共振周波数を、同時に検出した後、それぞれの共振周波数に対して、狭い周波数範囲による往復のスイープを、1回以上繰り返して行うことにより、カンチレバーの1次共振周波数と2次共振周波数の検出精度を高めて検出することが可能となった。
【0020】
片持ちバネ形状のカンチレバーの場合、1次共振周波数の6.3倍近傍に2次共振周波数による振幅のピークが発生することが知られており、1次共振周波数を検出時に6.3倍の2次共振周波数が存在するかを確認することにより、共振周波数検出の誤りを、未然に防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明では、往復のスイープを行う場合、高速スイープによる誤差が往路と復路で同程度の遅れとして発生することを知得したことより、往路と復路それぞれの振幅の最大値の周波数を計測し、その中間値をカンチレバーの共振周波数として検出することによって、誤差の少ない共振周波数の測定時間を、従来の精度を求めた場合の測定に比して数十から数百分の1という時短化が可能とする(図6参照)。
【0022】
また、本発明の測定方法によれば、極めて短時間の測定が可能であり、従来の測定時間比(数十〜数百分の1)を考慮して、複数回の平均演算も可能でありよりいっそうの精度向上が可能となる。
【0023】
また、本発明は、特に、大気中の場合と比べて数十〜数百倍程度のQ値となる真空中でSPMを使用する場合に有意性が高く、周波数・振幅特性測定のスイープを行う時間を極めて短い時間に短縮することを可能とする。
【0024】
このように本発明では、カンチレバーの1次共振周波数近傍に、複数のピークが発生し、真の共振周波数を選択できない場合においても、共振周波数が短い時間で終了する1次共振周波数と2次共振周波数の比較により、真の1次共振周波数であるかを判断できるため、周波数の誤認を防止、ひいては測定の失敗を防ぐことも期待できる。
【0025】
特に、1次共振周波数と2次共振周波数(1次共振周波数でFM制御によるノンコンタクトモードの形状測定を行い、2次共振周波数でKFM測定を行う等)を使用するSPMの応用による測定方法において、同時に1次共振周波数と2次共振周波数の測定を行う場合に、本発明は極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】走査型プローブ顕微鏡のブロック図である。
【図2】本発明による大気中での一般的な周波数・振幅特性測定の手順である。
【図3】本発明による真空中での一般的な周波数・振幅特性測定の手順である。
【図4】本発明による大気中での1次共振周波数の誤り判定を含む周波数・振幅特性測定の手順である。
【図5】本発明による大気中での1次共振周波数と2次共振周波数を測定の手順である。
【図6】本発明による高速での周波数・振動特性(Qカーブ)の往復測定例である。
【図7】大気中でのこれまでの一般的な周波数・振幅特性測定の手順である。
【図8】真空中でのこれまでの一般的な周波数・振幅特性測定の手順である。
【図9】一般的な周波数・振動特性(Qカーブ)の測定例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るカンチレバー、及びプローブ顕微鏡の第1実施形態を、図1を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している。
【0028】
カンチレバー1は、カンチレバーチップ部8の側面に接し、片持ちバネの構造を構成し、カンチレバーチップ部8は、斜面ブロック2にカンチレバーチップ部押さえ9により押さえつけられ、斜面ブロック2は、加振器3に固定され、加振機3は加振信号発生器4からの電気信号により振動し、カンチレバーを振動させ、カンチレバーの探針99の鉛直方向の変位は、レーザー光源30から照射されたレーザーを、ダイクロックミラー31で反射し、カンチレバー1の背面へ照射され、カンチレバーの上下の移動量は、反射したレーザーの光路の変化に反映し、ミラー32で反射され、変位検出器5でカンチレバーの移動量として電気信号として検出され、カンチレバー1の振動振幅は、変位検出器の電気信号の振幅に対応し、電気信号の振幅は、交流−直流変換機構6により振幅の大きさに対応した直流のレベル信号に変換され、プローブ顕微鏡コントローラー24の周波数・振動特性検出機構7へ入力され、加振信号発生器4からの電気信号も、周波数・振動特性検出機構7へ入力され、周波数・振動特性をコンピュータ40へ伝達し、カンチレバーの振動振幅の大きさを示す直流のレベル信号は、Z制御回路20へも入力され、目標の振幅と一致するように、X,Y,Z出力アンプ22のZ信号部へ制御信号を伝達し、カンチレバーの振動振幅が目標の振幅となるようにスキャナ11を変位させ、探針99と試料10の接する力を制御しながら、XとYの出力アンプからの信号によりスキャナを変位させスキャンを行い、表面の形状や物性値をマッピングすることにより、走査型プローブ顕微鏡を構成している。
【0029】
プローブ顕微鏡コントローラー24とコンピュータ40は、データの高速通信が可能で、プローブ顕微鏡コントローラー24内の回路の動作条件を、コンピュータ40は制御することが可能であり、測定されたデータを取り込み制御し、周波数・振動特性、表面形状測定、表面物性測定、フォースカーブ測定、などを実現する。
【0030】
スキャナの面内の変位に対して、(i)スキャナの高さの変位から三次元形状像を、(ii)共振状態の位相の値から位相像を、(iii)振動振幅の目標値との差により誤差信号像を、(iv)探針試料間の物性地から多機能測定像を、コンピュータ40上に表示し、解析や処理を行うことにより、プローブ顕微鏡として動作させる。
【0031】
周波数・振動特性の測定は、走査型プローブ顕微鏡で試料表面の測定を行う前に実施し、測定を行うための最適な条件を設定するために使用する。FM制御を行う場合は自励発振を行う周波数の初期値の設定とし、AM制御を行う場合は加振する周波数と加振電圧の設定とし、位相制御を行う場合は位相信号が検出可能な周波数範囲の設定とする。
【0032】
次に、本実施形態の走査型プローブ顕微鏡による測定方法を説明する。
図2は、大気中での、本発明による一般的な周波数・振幅特性測定の手順を示した図である。大気中にて、共振周波数は300kHz、Q値が300程度の設計値で作られた一般的なカンチレバーを、(i)最初に周波数範囲200〜400kHz、スイープ時間0.05secの往復測定した後、(ii)前回の往復測定のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を中心に、周波数範囲40kHz、スイープ時間0.05secの往復測定し、(iii)最後により精度を高めるため周波数範囲4kHz、スイープ時間0.2secで測定を行い、最大値振幅周波数の中間値を検出することによって共振周波数を測定する。この場合、合計で0.4secのスイープ時間となった。
【0033】
次に、図3は、真空中での本発明による一般的な周波数・振幅特性測定の手順を示した図である。真空中にて、共振周波数は300kHzの設計値で作られた、Q値が30000程度と予測される一般的なカンチレバーを、(i)最初に周波数範囲200〜400kHz、スイープ時間0.05secの往復測定した後、(ii)前回の往復測定のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を中心に周波数範囲40kHz、スイープ時間0.05secの往復測定し、(iii)前回の往復測定のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を中心に周波数範囲4kHz、スイープ時間0.05secの往復測定し、(iv)前回の往復測定のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を中心に、周波数範囲400Hz、スイープ時間0.05secの往復測定し、(v)前回の往復測定のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を中心に、周波数範囲40Hz、スイープ時間0.05secの往復測定し、(vi)前回の往復測定のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を中心に、最後に周波数範囲40Hz、スイープ時間10secで測定を行い、最大振幅の周波数を検出することによって共振周波数とする。この場合、合計で10.5secのスイープ時間となった。
【0034】
次に、図4は、大気中での本発明による1次共振周波数の誤り判定を含む周波数・振幅特性測定の手順を示した図である。大気中にて、共振周波数は30kHz、Q値が100程度の設計値で作られた一般的なカンチレバーを、(i)最初に周波数範囲1〜300kHz、スイープ時間0.05secの往復測定した後、(ii)前回の往復測定の30kHz近傍のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を1次共振周波数(f1)として検出して189kHz近傍のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を2次共振周波数(f2)として検出し、(iii)f1の6.3倍近傍にf2が存在することを数1の条件が成立すれば「(iv)」へ、非成立ならばカンチレバーの取り付けの再確認および再測定を行う(副次の振動振幅の影響が大きい可能性がある)、(iv)前回の往復測定の1次共振周波数を中心に周波数範囲3kHz、スイープ時間0.05secの往復測定し、(v)最後により精度を高めるため周波数範囲2kHz、スイープ時間0.2secで測定して、最大振幅の周波数を検出することにより共振周波数とする。この場合、合計で0.4secのスイープ時間となった。
【0035】
[数1] (5.8×f1)≦f2≦(6.8×f1)
次に、図5は、大気中での本発明による1次共振周波数と2次共振周波数を測定の手順を示した図である。大気中にて、共振周波数は30kHz、Q値が100程度の設計値で作られた一般的なカンチレバーを、(i)最初に周波数範囲1〜300kHz、スイープ時間0.05secの往復測定した後、(ii)前回の往復測定の30kHz近傍のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を1次共振周波数(f1)として検出して189kHz近傍のそれぞれの最大値振幅周波数の中間値を2次共振周波数(f2)として検出し、(iii)f1の6.3倍近傍にf2が存在することを上記の数1の条件が成立すれば「(iv)」へ、非成立ならばカンチレバーの取り付けの再確認および再測定を行う(副次の振動振幅の影響が大きい可能性がある)、(iv)前回の往復測定の1次共振周波数を中心に、周波数範囲3kHz、スイープ時間0.05secの往復測定し、前回の往復測定の2次共振周波数を中心に、周波数範囲20kHz、スイープ時間0.05secの往復測定し、(vi)前回の往復測定の1次共振周波数を中心に周波数範囲2kHz、スイープ時間0.2secで測定し、前回の往復測定の2次共振周波数を中心に周波数範囲3kHz、スイープ時間0.2secで測定し、(vii)1次共振周波数近傍の最大振幅の周波数を検出して1共振周波数とし、2次共振周波数近傍の最大振幅の周波数を検出して2共振周波数とする。
この場合、合計で0.7secのスイープ時間となった。
【0036】
以上のように、本発明に係わるカンチレバーの振動特性測定方法によれば、大気または真空中に係わらず、10秒程度以内の測定による測定であり、従来のQ値が高い場合であっても、極めて短時間に行なうことができる。
【符号の説明】
【0037】
1.カンチレバー
2.斜面ブロック
3.加振器
4.加振信号発生器
5.変位検出器
6.交流−直流変換機構
7.周波数・振動特性検出機構
8.カンチレバーチップ部
9.カンチレバーチップ部押さえ
10.試料
11.スキャナー
12.粗動機構
13.カンチレバーホルダ
20.Z制御回路
21.加振信号発生器
22.X,Y,Z出力アンプ
23.粗動制御回路
24.プローブ顕微鏡コントローラー
30.レーザー光源
31.ダイクロックミラー
32.ミラー
40.コンピュータ
99.探針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンチレバーと、前記カンチレバーを振動させる加振部と、前記加振部へ加振信号を供給する加振信号発生器と、前記カンチレバーの変位を検出する変位検出器と、変位検出器から出力される変位の振幅を示す交流信号を直流のレベル信号へ変換する交流−直流変換機構と、加振周波数に対するカンチレバーの変位の振幅を測定する周波数・振動特性検出機構を設けた、走査型プローブ顕微鏡(SPM)において、
カンチレバーの共振周波数を含む範囲の周波数帯域で、加振信号発生器より往復の周波数スイープ信号を発生させ、加振部により前記カンチレバーを振動させ、往路と復路それぞれの振幅の最大値の周波数を計測し、その中間値をカンチレバーの共振周波数として検出するカンチレバーの振動特性測定方法。
【請求項2】
前記検出した共振周波数を基に、当該共振周波数を含む前記周波数帯域より狭い範囲の新たな周波数帯域において、新たに往復の周波数スイープ信号を発生させ、加振部により前記カンチレバーを振動させ、往路と復路それぞれの振幅の最大値の周波数を新たに計測し、その中間値をカンチレバーの新たな共振周波数として検出する操作を、1回以上繰り返して行うことにより、カンチレバーの共振周波数を検出する請求項1に記載のカンチレバーの振動特性測定方法。
【請求項3】
前記カンチレバーの1次共振周波数と、該1次共振周波数の約6.3倍付近の2次共振周波数を含む範囲の周波数帯域で、加振信号発生器より往復の周波数スイープ信号を発生させ、加振部により前記カンチレバーを振動させ、往路と復路それぞれの低周波側の振幅の最大値の周波数を計測し、その中間値をカンチレバーの1次共振周波数として検出し、1次共振周波数の6.3倍近傍にある、往路と復路それぞれの振幅の最大値の周波数を計測し、その中間値をカンチレバーの2次共振周波数として検出する請求項1に記載のカンチレバーの振動特性測定方法。
【請求項4】
前記検出した1次共振周波数と、該1次共振周波数の約6.3倍付近の2次共振周波数を基に、前記検出した1次共振周波数を含む前記周波数帯域より狭い範囲の新たな周波数帯域による1次共振周波数の測定と、前記検出した2次共振周波数を含む前記周波数帯域より狭い範囲の新たな周波数帯域による2次共振周波数の測定を、新たに往復の周波数スイープ信号を発生させ、加振部により前記カンチレバーを振動させ、1次共振周波数の測定と2次共振周波数の測定で、往路と復路それぞれの振幅の最大値の周波数を新たに計測し、その中間値をカンチレバーの新たな1次共振周波数、2次共振周波数として検出する操作を、1回以上繰り返して行うことにより、カンチレバーの1次共振周波数と2次共振周波数を検出する請求項3に記載のカンチレバーの振動特性測定方法。
【請求項5】
前記1次共振周波数の6.3倍近傍の2次共振周波数を検出できない場合、当該検出した1次共振周波数が誤測定であると判断する請求項3または4に記載のカンチレバーの振動特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−202841(P2012−202841A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68038(P2011−68038)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)