説明

カンチレバーホルダ及びそれを備えた走査型プローブ顕微鏡

【課題】 溶液やガスの種類を問わず、様々な環境下で使用可能で、カンチレバーを効率的に加振可能にしたカンチレバーホルダ及びそれを備えて測定精度を向上させた走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【解決手段】 カンチレバー5を先端部に保持可能なカンチレバー保持部13と、カンチレバー保持部13の末端部13dが固定される第一のベース部14と、第一のベース部14が保持される第二のベース部15と、第一のベース部14においてカンチレバー保持部13が固定される面に対して裏側の面に先端を接触させて固定される圧電素子16により走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーホルダ7を構成し、圧電素子16が第一のベース部14に予圧を掛けて固定されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に探針を有するカンチレバーを振動させながらサンプルに近接又は接触させて形状観察や物性測定を行う走査型プローブ顕微鏡に関し、特にそのカンチレバーホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の走査型プローブ顕微鏡では、先端に探針を有するカンチレバーを使用して、サンプル上を3軸微動機構によりスキャンすることで、サンプル表面の形状像や物性の測定が行われている。走査型プローブ顕微鏡において探針先端とサンプル間の距離制御を行う方式はコンタクト方式と振動方式に大別される。
【0003】
振動方式の走査型プローブ顕微鏡は、以下のような原理によって測定が行われる。カンチレバーを圧電素子などにより1次の共振周波数近傍で加振しカンチレバーの振幅や位相を計測しながらサンプルと探針を近づけると両者間に原子間力などの物理的な力や間欠的な接触力が作用する。この力により、カンチレバーの振幅や位相または共振周波数が変化する。これらの変化量は、サンプルと探針間の距離に依存するため、カンチレバーの振幅や位相または共振周波数の変化量が常に一定になるように、サンプルと探針間の距離を3軸微動機構に備わっている垂直方向微動機構で制御することで高さ方向の距離制御が行われる。さらに3軸微動機構に備わっている水平方向微動機構によりサンプルと探針を相対的にサンプル面内で走査し、垂直方向微動機構の変位量をサンプルの高さ情報に対応させることでサンプル表面の形状像を測定することが出来る。また、サンプルと探針間に働く電磁気的な信号による電気特性や磁気特性、探針の押し込みまたは引っ張りあるいは走査を行った際の探針とサンプル間の摩擦力などによる機械的物性、サンプル表面に発生させた近接場光と探針先端との相互作用による光学特性などの物性測定も可能である。振動方式の距離制御方法は、探針がサンプルに及ぼす力がコンタクトモードより低く、サンプルや探針先端への損傷を少ない状態で測定できるという利点がある。
【0004】
走査型プローブ顕微鏡では一般に行われている大気環境下での測定のほか、溶液中でも測定を行えるという利点がある。溶液中では表面が軟らかいサンプルが多く、サンプルへの損傷を防止する為に振動方式で測定が行われる場合が多い。
【0005】
また、サンプルの腐食防止や、実環境下でのサンプルの反応調査を目的としてサンプルと探針を密封空間に配置して、さまざまなガス環境下で測定を行うこともある。
【0006】
ここで特許文献1により溶液中で使用される従来の走査型プローブ顕微鏡の構成を説明する。図13は特許文献1に開示される従来の走査型プローブ顕微鏡の概観図である。図13では、ガラスベースブロック134に圧電素子104を介してカンチレバー固定部105を接着固定し、カンチレバー固定部105に固定されたカンチレバー106を圧電素子104によりカンチレバーの共振周波数近傍で強制振動させる。カンチレバーの振幅は、光てこ方式の変位検出機構108により測定が行われる。変位検出機構108は半導体レーザ113からレーザ光を出射し、ビームスプリッタ114で光路を曲げて、ガラスベースブロック134を透過させてカンチレバー106の背面に照射し、反射光がガラスベースブロック134を透過した後、ミラー115で光路を曲げて4分割フォトディテクタ116によりカンチレバーの変位検出を行う構成である。
【0007】
サンプル137はシャーレ136の底面に固定され、シャーレ136は円筒型圧電素子により構成される3軸微動機構118に載せられてサンプル137がスキャンされる。シャーレ136内には溶液が入れられており、サンプル137は溶液に浸された状態である。この状態でサンプル137と探針106aを近づけていくと、ガラスベースブロック134の突起部135が液面に接し、探針106aが溶液に浸され、探針とサンプルが間欠的に接触し、両者の距離に応じてカンチレバーの振幅が変化する。このとき3軸微動機構118の垂直方向微動機構によりカンチレバーの振幅が一定となるように距離制御を行いながら、3軸微動機構の水平方向微動機構でラスタスキャンを行うことで溶液中におけるサンプルの形状像の測定が行われる。この従来技術では、カンチレバー固定部105がダイレクトに圧電素子104に固定されているため、溶液により粘性抵抗を受けてもカンチレバーを効率的に振動させることができる。
【0008】
また、特許文献2には、図14に示されるように、ガラス製ホルダ215の先端にカンチレバー210を取付け、ホルダ215のカンチレバー210が取り付いている側の逆側の基部に圧電素子217を配し、ホルダ215に振動伝播させてカンチレバーを強制振動させる溶液用のカンチレバーホルダの構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−91002号公報(図5)
【特許文献2】国際公開第03/028036号パンフレット(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した特許文献1記載の技術の場合、サンプルを浸漬した溶液側に圧電素子が配置され、圧電素子を溶液に浸漬して測定を行うため、以下の問題がある。つまり、圧電素子をシリコーン等のモールド剤で被覆しても、サンプルを浸漬する溶液の種類によってはモールド剤が溶けて圧電素子での不具合の発生、あるいは、モールド剤が溶液に混入してサンプルの変質が生じる可能性がある。また、圧電素子の電極が溶液に触れてしまい電極の短絡や腐食の発生、あるいは、サンプルが電気化学反応により変質してしまう場合がある。さらに、圧電素子を接着している接着剤も溶けて圧電素子が剥がれてしまう。また有機溶媒などを使用した場合には、モールド剤が膨潤してしまう場合もあり、光てこの光路が遮られる場合もある。
【0011】
また、特許文献2記載の技術の場合、溶液によって圧電素子に不具合が生じる問題は少ないが、ホルダ全体を介して振動を伝播させるため、振動伝達効率が悪くカンチレバーの振幅が小さくなってしまい測定感度を低下させる問題があった。また、カンチレバーの振幅を大きくするためには圧電素子に印加する電圧を大きくして圧電素子の振幅を大きくする必要があるが、このときにはカンチレバー以外のホルダに搭載された各種測定部品や溶液も大きく振動し、カンチレバーの共振以外の振動ピークが発生しノイズが多くなり微小な信号の変動を捉えられずノイズが増加してしまう問題があった。また、測定時にカンチレバーの共振ピークの判別が困難となってしまうこともあった。
【0012】
また、密封空間に探針とサンプルを配置する場合にも溶液中での測定と同じようにガスで圧電素子の電極など変質してしまう問題があった。
【0013】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、様々な環境下で使用可能で、カンチレバーを効率的に加振可能にしたカンチレバーホルダ及びそれを備えて測定精度を向上させた走査型プローブ顕微鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明では、走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーホルダを以下のように構成した。
【0015】
本発明では、カンチレバーを先端部に保持可能なカンチレバー保持部と、前記カンチレバー保持部の末端部が固定される第一のベース部と、前記第一のベース部が保持される第二のベース部と、前記第一のベース部においてカンチレバー保持部が固定される面に対して裏側の面に先端を接触させて固定される圧電素子により走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーホルダを構成し、前記圧電素子が前記第一のベース部に予圧を掛けて固定されるようにした。
【0016】
また、本発明では前記圧電素子が、前記第一のベース部の縁部に圧電素子の片面を接触させ、反対側の面から予圧を掛けて固定されるようにした。この場合、前記圧電素子はリング型の形状であることが好ましい。さらに前記圧電素子の前記第一のベース部への接触側または反対側の少なくとも一方の面に弾性体を介して予圧を掛けるようにした。
【0017】
また、本発明では、カンチレバーを先端部に保持可能なカンチレバー保持部と、前記カンチレバー保持部の末端部が固定される第一のベース部と、前記第一のベース部が保持される第二のベース部と、前記第一のベース部においてカンチレバー保持部が固定される面に対して裏側の面に先端を接触させて固定される圧電素子により走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーホルダを構成し、前記圧電素子の末端側に前記第一のベース部の質量と前記カンチレバー保持部の質量の合計質量よりも重い部材を固定するようにした。
【0018】
さらに、本発明では、前記圧電素子に積層型または板状の圧電素子を使用した。
【0019】
また、前記第一のベース部が200nm以上2500nm以下のうち任意の範囲の波長の光を透過可能な材料で構成するようにした。
【0020】
また、前記カンチレバー保持部に保持される前記カンチレバー周辺が溶液中に浸されるように構成した。
【0021】
さらに、前記カンチレバー保持部側と前記圧電素子側が前記第一のベース部で遮断されて前記カンチレバー保持部側が大気と異なる環境下に配置されるように構成した。
【0022】
さらに本発明では、前記溶液に浸される空間内に対極および参照極として機能する2つの電極を配置し、さらにサンプルまたはカンチレバーの少なくとも一方を作用極として機能させる電極を設けた。
【0023】
さらに前記カンチレバー保持部またはカンチレバーの対向側に配置されるサンプルが載置されるサンプルホルダを、加熱または冷却する機能を設けた。
【発明の効果】
【0024】
以上のように走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダを構成することで、圧電素子が溶液やガス環境下に直接配置されることがないので、モールド剤の溶解や膨潤がなく、また圧電素子の電極の腐食や接着の剥離も防止される。そのため、溶液やガスの種類を問わず様々な環境下で走査型プローブ顕微鏡の測定を行うことが可能となる。
【0025】
また、本発明では、圧電素子を第一のベース部に予圧を掛けて固定したり、圧電素子の末端側に第一のベース部の質量とカンチレバー保持部の質量の合計質量よりも重い部材を固定するようにすることで、カンチレバーを効率的に加振可能することができ測定精度が向上する。
【0026】
さらに本発明では圧電素子を第一のベース部の縁部に圧電素子の片面を接触させ、反対側の面から予圧を掛けて固定されるようにしたので、均一に予圧が掛けられて第一のベース部が破損するのが防止される。さらに圧電素子の第一のベース部への接触側または反対側の少なくとも一方の面に弾性体を介して予圧を掛けることで第一のベース部の破損がさらに防止されるとともに加振効率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の概観図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るカンチレバーホルダの平面図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の概観図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るカンチレバーホルダの平面図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の概観図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るカンチレバーホルダの平面図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の概観図。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るカンチレバーホルダの平面図。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の概観図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るカンチレバーホルダの平面図。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の概観図。
【図12】本発明の第6の実施形態に係るカンチレバーホルダの平面図。
【図13】従来の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーホルダの概観図。
【図14】従来の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーホルダの概観図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明の実施形態においては、すべて振動方式の走査型プローブ顕微鏡の機能を有するものである。なお、以下の説明では本発明に関係する部分を記載してあり、走査型プローブ顕微鏡の公知の構成で本発明に関係のない部分の図面と説明の一部は省略している。
【0029】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の全体構成を示す概観図、図2は図1で使用するカンチレバーホルダ部の平面図である。
【0030】
図1の走査型プローブ顕微鏡1は、末端がベースに固定された円筒型圧電素子により構成されて水平方向微動機構2aと垂直方向微動機構2bの機能を有する3軸微動機構2と、3軸微動機構2の先端に固定されたサンプルステージ3と、ユニットの筐体部4と、カンチレバー5の変位検出を行うために前記筐体部4に設置される変位検出機構6と、前記筐体4に固定されるカンチレバーホルダ7から構成される。
【0031】
変位検出機構6は変位検出機構の筐体8内に、半導体レーザ9とビームスプリッタ10と全反射ミラー11、4分割フォトディテクタ12、プリアンプ(図示せず)が配置されており、半導体レーザ9から出射したレーザ光23をビームスプリッタ10で曲げ、後述するカンチレバー5の背面に直上から照射し、カンチレバー5の背面で反射した光を全反射ミラー11で曲げて、4分割フォトディテクタ12に入射させて、光てこ方式によりカンチレバー5のたわみ方向と長軸周りのねじれ変位を検出する。
【0032】
図1及び図2に記載されるカンチレバーホルダ7は、先端に探針5aを有し末端に基端部5bを有するシリコーンで一体成型されたカンチレバー5を固定するために使用される。カンチレバーホルダ7は、カンチレバー保持部13と、カンチレバー保持部13を固定する第一のベース部14と、第一のベース部14が保持される第二のベース部15と、カンチレバー5を加振するための圧電素子16により構成される。
【0033】
カンチレバー保持部13は、石英ガラスから構成された直径12mm、長さ5mmの円柱状部材の先端13aを平面状に研磨し先端の一部を平面に対して10度の角度で斜めに加工して傾斜平面部13bを設け、該傾斜平面部13bにカンチレバーの基端部5bを固定するように構成される。カンチレバー5の固定は、カンチレバー保持部13に切欠き13cを設け、該切欠き部13cにU字型に加工された板バネ17の一端を嵌め込み、他端でカンチレバーの基端部5bを前記傾斜平面部13bに押し付けて固定するようにした。
【0034】
第一のベース部14は石英ガラスから構成され、直径が30mmで厚さが3mmでカンチレバー保持部13の直径よりも一回り大きな円板状で、第一のベース部14の両面は研磨されている。カンチレバー保持部13の末端13dはこの第一のベース部14の平面部14aに中心軸を一致させて融着される。したがって。カンチレバー保持部13に対して第一のベース部14がフランジとなっており融着された接合面は屈折率が一定で一体的に構成される。
【0035】
第二のベース部15はチタン製の材料で構成されており、上面視正方形の板状で一辺の長さが60mm厚さ6mmである。中心には直径20mmの貫通穴15aが設けられて、第一のベース部14の直径とほぼ同一の外周で3mmの深さまで切削され中心の貫通穴15aまで突出した保持部15bを設け、この保持部15bに第一のベース部14が係合される。
【0036】
圧電素子16は一辺が5mmの正方形のピエゾの薄膜と同サイズの電極を5mmの長さまで交互に積層させた積層型圧電素子が用いられる。この圧電素子16の先端16aを第一のベース部14のカンチレバー保持部13が固定される面に対して裏側の面14bで、概ねカンチレバー保持部13の傾斜平面部13bの延長線の位置に接触させて配置される。積層型圧電素子の他端16bは板バネ18に接しており、板バネ18の両端は第二のベース部15にネジ19でネジ止め固定される。このとき板バネ18に曲げを発生させて弾性変形させることで積層型圧電素子16に予圧が掛けられ第一のベース部14に圧力を掛ける状態で固定される。
【0037】
積層型圧電素子16の電極は駆動電源(図示せず)に接続されて駆動電源から交流電圧を印加することで第一のベース部14が加振される。
【0038】
第一のベース部14と第二のベース部15は接着などされずに係合されているだけであり積層型圧電素子16を介した板バネ18の予圧のみで固定されている。
【0039】
なお、積層型圧電素子16の両端は接着せずに板バネ18の予圧のみで固定したが、両端またはどちらか一方を接着固定したうえで予圧を掛けてもよい。
【0040】
本実施形態は大気中での測定のほか、液中でも測定可能であり、液中で測定を行う場合には図1のように3軸微動機構2の先端に固定されたサンプルステージ3にシャーレ20を載せてシャーレ20の底面にサンプル21を配置し溶液22を入れて、カンチレバー保持部の先端13aに溶液を接触させて溶液中22にカンチレバー5を浸して測定が行われる。
【0041】
カンチレバーホルダ7の直上には変位検出機構6が配置され、ビームスプリッタ10ーで曲げられたレーザ光23は、一体となって構成されている第一のベース部14とカンチレバー保持部13の概ね中心軸に沿って入射し、溶液中22を通りカンチレバー5の背面で反射して再びカンチレバー保持部13と第一のベース部14を通り全反射ミラー11で曲げられて4分割のフォトディテクタ12に入射させることでカンチレバー6の変位が検出される。このとき、溶液22とカンチレバー保持部の先端13aが接触しているのでレーザ光23が液面で散乱することなく入射することができる。なお、前述した積層型圧電素子16や板バネ18はレーザの光路を阻害しない位置に配置されている。
【0042】
本実施形態ではレーザ光23の波長として670nmの半導体レーザを使用したが、半導体サンプルや蛍光サンプルのようにサンプルが光で反応して変質してしまう場合もあるため、測定条件に合わせて任意の波長の光源が使用可能である。また、変位検出機構6の直上に光学顕微鏡24を配置してカンチレバー5やサンプル21の観察や分光分析などを行う場合がある。したがって、第一のベース部14とカンチレバー保持部13の少なくとも変位検出機構6のレーザ光23や、光学顕微鏡24から照射される光が透過する部分は、これらの波長特性に合わせて、200nm以上2500nm以下の波長うち任意の範囲の光を透過可能な材料で構成される。
【0043】
以上のように構成された走査型プローブ顕微鏡1を使用してカンチレバー5を一次の共振周波数近傍で加振しながら振幅の減衰が一定となるように探針5aとサンプル21間の距離を垂直方向微動機構2bでフィードバック制御し、探針5aとサンプル21を水平方
向微動機構2aによりラスタスキャンすることで溶液中22でのサンプル21の形状や各種の物性のマッピング像が測定することができる。また、ポイントごとの物性測定なども可能となる。
【0044】
本実施形態では、カンチレバー加振用の圧電素子16を第一のベース部14のカンチレバー保持部13が固定される面に対して裏側の面14bに配置しているため、圧電素子16を溶液22の外に配置することができ、溶液22による接着やモールド剤のはがれや膨潤、電極の腐食や電流のリークなどを防止することができ、純水のみならず、有機溶媒など溶液のさまざまな溶液を使用することができる。
【0045】
特に、本発明では、積層型圧電素子16の先端16aを第一のベース部14に、他端16bを板バネ18に接触させて、板バネ18の両端は第二のベース部15にネジ19でネジ止め固定し、板バネ18に曲げを発生させて弾性変形させることで積層型圧電素子16に予圧が掛けられ第一のベース部14に圧力が掛かった状態で固定するようにしたため、予圧を掛けずに第一のベース部14に積層型圧電素子16を固定した場合に比べて、第一のベース部14とカンチレバー保持部13を介してカンチレバー5を効率的に加振することができ測定精度が向上する。
【0046】
特に本実施形態のように粘性抵抗の掛かる溶液中でカンチレバーを加振させる場合でもカンチレバーの振幅が大きくなり振幅信号のノイズに対する比率が増大し低ノイズで感度のよい測定を行うことが可能となる。
【0047】
また、圧電素子の振幅が小さい状態でもカンチレバーの加振振幅を確保できるため、圧電素子の振幅を大きくしたときに発生していたホルダに搭載されたカンチレバー以外の各種測定部品や溶液が大きく振動し、カンチレバーの共振以外の振動ピークが発生してノイズが増加し、測定時にカンチレバーの共振ピークの判別が困難になることや測定データ自体のノイズレベルが多くなることなどの問題も回避できる。
【0048】
<第2の実施形態>
図3は本発明の第2の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の全体構成を示す概観図、図4は図3で使用するカンチレバーホルダ部の平面図である。
【0049】
本実施形態では、カンチレバーホルダ30以外の構成は第1の実施形態と同一であるため、同一の部材には同一の番号を付し詳細な説明は省略する。
【0050】
また、図3の走査型プローブ顕微鏡35で使用されるカンチレバーホルダ30はカンチレバー保持部13、第一のベース部14、第二のベース部15はネジ穴の位置を除き第1の実施形態と同一の部材を使用している。これらの部材についても同一の番号を付し詳細な説明は第1の実施形態での説明に委ねる。
【0051】
図3、図4に示した第2の実施形態では、カンチレバー加振用の圧電素子31としてドーナツ型の単板の圧電素子を使用している。この圧電素子31は外径22mm、内径16mm、厚さ2ミリで厚み方向にポーリング処理がなされており両面31a、31bにそれぞれ電極が設けられた構造である。
【0052】
この圧電素子31は、一方の面31aが第一のベース部14のカンチレバー保持部13が固定される面14aと反対の面14bの周囲に配置され、外径60mm、内径15mm、厚さ4mmのリング型で一方の面に直径30mmで深さ1.5mmの溝32aを設けたステンレス製の圧電素子固定部材32を使用して、溝32a部分に圧電素子31の他方の面31bを接触させて、第二のベース部15に圧電素子固定部材32の周囲4箇所をネジ33でネジ止め固定される。
【0053】
このとき第二のベース部15と圧電素子固定部材32の間34には0.5mmの隙間ができているため、ネジ止めすることで予圧が掛かり、圧電素子31が第一のベース部14に圧力を掛けた状態で固定される。
【0054】
本実施形態でも第一の実施形態と同様に、圧電素子31を溶液22の外に配置することができ、溶液22による接着のはがれやモールド剤のはがれや膨潤、電極の腐食や電流のリークなどを防止することができ、純水のみならず、有機溶媒などさまざまな溶液を使用することができる。また、第一のベース部14とカンチレバー保持部13を介してカンチレバーを効率的に加振することができ測定精度が向上する。
【0055】
また、本発明では円板状の圧電素子31を使用しているため変位検出機構6のレーザ光23や顕微鏡24の光路の邪魔をすることなく圧電素子31を配置することが可能となる。
【0056】
<第3の実施形態>
図5は本発明の第3の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の全体構成を示す概観図、図6は図5で使用するカンチレバーホルダ部の平面図である。
【0057】
本実施形態でも、カンチレバーホルダ40以外の構成は第1の実施形態と同一であるため、同一の部材には同一の番号を付し詳細な説明は省略する。
【0058】
また、図5の走査型プローブ顕微鏡45で使用されるカンチレバーホルダ40もカンチレバー保持部13、第一のベース部14、第二のベース部15はネジ穴の位置を除き第1の実施形態と同一の部材を使用している。これらの部材についても同一の番号を付し、詳細な説明は第1の実施形態での説明に委ねる。
【0059】
図5、図6に示した第3の実施形態のカンチレバーホルダ40では、第一のベース部14は周囲を4箇所の爪41でシリコーンゴム42を介して第二のベース部15にネジ固定される。
【0060】
また、カンチレバー加振用の圧電素子16として第1の実施形態と同様の一辺が5mmの正方形のピエゾの薄膜と同サイズの電極を5mmの長さまで積層させた積層型圧電素子が用いられる。この圧電素子16の先端16aを第一のベース部14のカンチレバー保持部13が固定される面14aに対して裏側の面14bで、概ねカンチレバー保持部13の傾斜平面部13bの延長線の位置に接着固定される。このため積層型圧電素子16が溶液中22に浸かることがない。また、積層型圧電素子16の他端16bには黄銅製で、縦25mm、横12mm、厚さ20mmのブロック43が接着固定される。このときブロック43の質量は約52gとなる。一方、第一のベース部14とカンチレバー保持部13の合計の質量は約6gとなる。このように、圧電素子16の末端側に第一のベース部14の質量とカンチレバー保持部13の質量の合計質量よりも重い黄銅製のブロック43を固定することで第一のベース部を効率的に加振させることができ測定精度が向上する。
【0061】
このとき、第一のベース部14の質量とカンチレバー保持部13の質量の合計質量に対して、ブロック43の質量が重ければ重いほど加振効果は向上する。
【0062】
<第4の実施形態>
図7は第4の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡及び密封型のカンチレバーホルダの概観図。図8は図7の走査型プローブ顕微鏡で使用される密封型のカンチレバーホルダの平面図である。
【0063】
本実施形態でも、密封型のカンチレバーホルダ50以外の構成は第1の実施形態と同一であるため、同一の部材には同一の番号を付し詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡66で使用されるカンチレバーホルダ50は、カンチレバー5とサンプル21を密封空間51内に備え、密封空間51内には溶液やガスなどが入れられており、サンプル21を実環境下に近い状態で観察することが可能であり、揮発性の有機溶媒を使用する場合などにも用いられる。
【0065】
図7、図8の密封型のカンチレバーホルダ50では、カンチレバー保持部52と、カンチレバー保持部52を固定する第一のベース部53と、第一のベース部53が保持される第二のベース部54と、カンチレバー5を加振するため圧電素子55、密封空間を形成するテフロン(登録商標)のメンブレンフィルム56、メンブレンフィルム56を保持するための第三のベース部57、内側サンプルホルダ部58により構成される。
【0066】
カンチレバー保持部52は、石英ガラスから構成された直径12mm、長さ5mmの円柱状部材の先端52aを平面状に研磨し先端52aの一部を平面に対して10度の角度で斜めに加工して傾斜平面部52bを設け、傾斜平面部52bにカンチレバーの基端部5bを固定するように構成される。カンチレバー5の固定は、カンチレバー保持部52に切欠き52cを設け、切欠き部52bにU字型に加工された板バネ17の一端を嵌め込み、他端でカンチレバーの基端部5bを前記傾斜平面部52bに押し付けて固定するようにした。
【0067】
第一のベース部53は石英ガラスから構成され、直径が30mmで厚さが3mmでカンチレバー保持部52の直径よりも一回り大きな円板状で、第一のベース部53の両面53a,53bは研磨されている。カンチレバー保持部の末端52dは、この第一のベース部53の平面部53aに中心軸を一致させて融着される。したがって。カンチレバー保持部52に対して第一のベース部53がフランジとなっており融着された接合面52dは屈折率が一定で一体的に構成される。
【0068】
第二のベース部54は耐薬品性の強いポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PEEK)製の材料で構成されており、上面視正方形の板状で一辺の長さが60mm厚さ6mmである。中心には直径20mmの貫通穴54aが設けられて、第一のベース部53の直径とほぼ同一の外周で3mmの深さまで切削され、中心の貫通穴54aまで突出した保持部54bを設け、この保持部54bにフッ素樹脂製のOリング65を介して、第一のベース部53が係合される。
【0069】
この圧電素子55は外径22mm、内径16mmの薄膜状のピエゾと電極を厚さ4ミリまで交互に積層したリング型の積層型圧電素子が用いられる。
【0070】
この圧電素子55は、一方の面55aが第一のベース部53の周囲に配置され、外径60mm、内径15mm、厚さ4mmのリング型で一方の面に直径30mmで深さ3.5mmの溝59aを設けたステンレス製の圧電素子固定部材59を使用して、溝部分59aに圧電素子55の他方の面55bを接触させて、第二のベース部54に圧電素子固定部材59の周囲4箇所をネジ60でネジ止め固定される。
【0071】
このとき第二のベース部54と圧電素子固定部材59の間61には0.5mmの隙間ができているため、ネジ止めすることで、圧電素子55に予圧が掛けられ第一のベース部53に圧力を掛けた状態で固定される。
【0072】
また、圧電素子55を介した予圧により第一のベース部53と第二のベース部54の間のOリング65も潰されて、両者の間がOリング65により封止される。
【0073】
また、外径が60mm、内径が30mm、厚さが3mmのリング型の第3のベース57上に、密封空間を作るためのテフロン(登録商標)製のメンブレンフィルム56の周囲を載せて、その上にOリング62を載せて、第二のベース部54と第三のベース部57で挟み込んでネジ止め固定し隙間を封止する。
【0074】
メンブレンフィルム56の中心付近には内側サンプルホルダ58を設け、メンブレンフィルム56を内側サンプルホルダ58と3微動機構先端のサンプルホルダ3で挟み込み、3微動機構の動作2に合わせて内側サンプルステージ58が動作するようにする。
【0075】
なお、メンブレンフィルム56は柔らかいので3軸微動機構2の動きを阻害することはない。
【0076】
そして、第三のベース部57を走査型プローブ顕微鏡の筐体部4に固定することによりカンチレバーホルダ50が固定される。
【0077】
このように密封型のカンチレバーホルダ50を構成することで、第一のベース部53、第二のベース部54、メンブレンフィルム56で囲まれた領域51に密封空間を確保することができ、密封空間51内にカンチレバー5とサンプル21が配置される。
【0078】
密封空間51内に溶液やガスを注入する場合には、カンチレバーホルダ50の前面に設けた注入口63からポンプやシリンジなどにより注入する。
【0079】
またカンチレバーホルダ50の前面には排出口64も設けられており溶液やガスの排気の他、循環を行うことも可能である。密封状態にする場合にはこれらの注入口63や排出口64を封止する。
【0080】
このように構成された密封型のカンチレバーホルダ50を使用して、積層型圧電素子55の電極を駆動電源(図示せず)に接続し駆動電源から交流電圧を印加することで第一のベース部53が加振され、カンチレバー保持部52を介してカンチレバー5が加振される。
【0081】
以上のように構成された走査型プローブ顕微鏡を使用してカンチレバー5を共振周波数近傍で加振しながら振幅の減衰が一定となるように探針5aとサンプル21間の距離を垂直方向微動機構2bでフィードバック制御し、探針5aとサンプル21を水平方向微動機構5bによりラスタスキャンすることで溶液中でのサンプル21の形状や各種の物性のマッピング像を測定することができる。また、特定のポイントごとの物性測定なども可能となる。
【0082】
本実施形態では、カンチレバー加振用の圧電素子55を第一のベース部53のカンチレバー保持部52が固定される面53aに対して裏側の面53bに配置しているため、圧電素子55を密封空間外に配置することができ、圧電素子の接着やモールド剤のはがれや膨潤、電極の腐食や電流のリークなどを防止することができ、純水のみならず、有機溶媒や腐食性のガス、窒素雰囲気などさまざまな環境下で走査型プローブ顕微鏡の測定を行うことができる。
【0083】
特に、本発明では、積層型圧電素子55に予圧が掛けられ第一のベース部53に圧力が掛かった状態で固定するようにしたため、予圧を掛けずに第一のベース部53に積層型圧電素子を固定した場合に比べて、第一のベース部53を介してカンチレバー5を効率的に加振することができ測定精度が向上する。
【0084】
<第5の実施形態>
図9は本発明の第5の実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の全体構成を示す概観図、図10は図9で使用するカンチレバーホルダ部の平面図である。
【0085】
本実施形態では、リング型の弾性体70以外は図3、図4にて説明した第2の実施形態と同じ構成であるので、同一の部材には同一の番号を付し詳細な説明は省略する。
【0086】
第一のベース部14はガラスでできているため予圧を掛けた際の応力集中が起きるとガラスの割れが発生しやすい。特に応力を掛けた状態で圧電素子を振動させると、さらに割れが発生しやすくなる。特に第一のベース部の共振周波数と一致するとガラスが割れる可能性が大きい。
【0087】
第2の実施形態や第5の実施形態のように円板型の第一のベース部14の固定端に近い縁部にリング型の圧電素子31の一方の面31aを第一のベース部14に接触させて配置し、反対側の面31b側から圧電素子固定部材32により第一のベース部14に固定することで均一に予圧がかかり応力集中が抑制されるためガラスの割れが発生しづらくなる。
【0088】
また、第5の実施形態では圧電素子31の一方の面31bと圧電素子固定部材32の間に厚さ0.5mmで内径と外形がリング型の圧電素子と同一形状の弾性体をはさみ圧電素子固定部材32により予圧を掛けるようにした。このように構成することでより均一に予圧がかかるようになりガラスの割れが発生しづらくなる。また圧電素子31に印加する単位電圧あたりのカンチレバーの振幅量も向上して振動の伝達特性も向上した。
【0089】
このような弾性体は、圧電素子31のもう一方の面31aと第一のベース部14の間に入れてもよい。また圧電素子31の両側に入れてもよい。弾性体の材質としてはテフロン(登録商標)シートのほか、シリコーンゴムなど弾性効果が得られるものであれば任意の材質が使用できる。
【0090】
<第6の実施形態>
図11は本発明の第6の実施形態に係る電気化学測定に用いられる走査型プローブ顕微鏡及び密封型のカンチレバーホルダの概観図。図12は図11の走査型プローブ顕微鏡で使用される密封型のカンチレバーホルダの平面図である。
【0091】
本実施形態の大部分の構成は図7、図8に示した第4実施形態の密封型のカンチレバーホルダと概ね同じであるため、同一の部材には同一の番号を付し詳細な説明は省略する。
【0092】
本実施形態ではリング型の単板の圧電素子81が使用されて、一方の面81aを第一のベース部53の縁部に接触させて配置し、反対側の面81b側から圧電素子固定部材59によりテフロン(登録商標)シートからなるリング型の弾性体82を介して第一のベース部53に固定することで均一に予圧がかかり応力集中が起こらなくなるため第一のベース部53のガラスの割れが発生しづらくなる。
【0093】
また、本実施形態では密封型カンチレバーホルダ80の第二のベース部54の側面から対極および参照極をなす電極をそれぞれ密封空間内51に挿入した。対極83は外径1mmの白金ワイヤーにより構成されて、溶液に浸かる密封空間内部51の周囲に半円弧状の電極をなすように折曲げ加工されている。また参照極84は外径1mmの銀ワイヤーで構成されて、密封空間51の周辺部に折曲げ加工されて配置され密封空間51側の先端部と大気側の末端以外はテフロン(登録商標)コートを施して絶縁処理が施されている。各電極の第二のベース部54からの導入口にはシールが施されている。
【0094】
また、サンプル91またはカンチレバー92が作用極として作用するようにサンプル91の裏側またはカンチレバー92の背面にコンタクトピン85、86を配置し密封空間51の外部と電気的に接続されるようにした。またコンタクトピン85、86の周囲はOリング87、88でシールされる。
【0095】
サンプル91を作用極として使用する場合には導電体のサンプルを使用してサンプルの裏面の液に触れない位置に電極を設け、この電極とサンプル表面の電気的導通を確保してこの電極にコンタクトピン85を接触させる。
【0096】
また、カンチレバー92を作用極として使用する場合には、金や白金などでカンチレバー92をコートし、先端以外の部分を絶縁膜でコートする。また、カンチレバーの一部に絶縁体でコートされない部分を設け、溶液に接触しないようにカンチレバーホルダに設けられたコンタクトピン86に接触させる。
【0097】
第一のベース部53は石英ガラス、第二のベース部54とサンプルホルダ89はPEEK材、板バネ90はテフロン(登録商標)、メンブレンフィルム56はテフロン(登録商標)フィルムで構成したため溶液中には各電極以外に電気化学測定に影響を及ぼすような金属の材質はない。
【0098】
これらの対極、参照極、作用極を外部に設けられたポテンショスタットに接続することで電気化学測定を行うことが可能である。サンプル91とカンチレバー92は測定の目的に合わせていずれか一方を作用極に設定する。またカンチレバー92とサンプル91の双方を作用極としてバイポテンショスタットに接続することも可能となる。
【0099】
なお、対極と参照極は大気側の先端をポテンショスタットに接続する。作用極はコンタクトピンに接続された配線材を介してポテンショスタット接続する。
【0100】
電気化学測定を行う場合に溶液内に圧電素子が配置されると圧電素子に印加される電流がリークして正確な電気化学測定が行えない可能性がある。また圧電素子の電極が電気化学反応を起こしてしまうことがあるが、このように密封空間の外部に圧電素子を配置することで正確な電気化学が可能となる。
【0101】
なお、各電極の材質や形状、配置などは本実施形態に限定されず測定目的に合わせて任意の形態が適用される。さらに密封型のホルダ以外にオープン型のホルダも使用可能である。
【0102】
以上、本発明の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーホルダについて説明したが、本発明は上記の発明に限定されず、さまざまな形態に用いることができる。
【0103】
例えば変位検出機構は光てこ方式の変位検出機構を用いたが、カンチレバーに抵抗体を設けてたわみ変形による抵抗値の変化で変位検出を行う自己検知型のカンチレバーも使用できる。
【0104】
自己検知レバーのように光てこを使用しない場合や顕微鏡観察が不要な場合には、カンチレバー保持部や第一のベース部が光を透過しない材料でも構わない。
【0105】
また、カンチレバー保持部と第一のベース部は別体として構成してもよいし、一体として構成することもできる。また、それぞれの部品を複数に分割して構成してもよい。さらにカンチレバー保持部が第一のベース部を兼ねる構成でもよい。
【0106】
第一のベース部とカンチレバー保持部に光を透過させる場合には全体を透過性の材料で構成してもよいし、一部を透過性の材料で構成してもよい。
【0107】
また、本実施形態ではサンプル側を3軸微動機構で駆動するようにしたが、カンチレバー側に3軸微動機構を設けてもよいし、水平方向微動機構と垂直方向微動機構をサンプル側とカンチレバー側に分割して配置してもよい。
【0108】
また、カンチレバーホルダを構成する部材の形状や材質、圧電素子の形状、予圧手段、ピエゾの末端のブロックの材質や形状、密封手段、カンチレバー固定手段、カンチレバーの形状や材質なども任意の構造や方法が使用できる。
【0109】
圧電素子は加振効率の点で単位印加電圧あたりの変位量が大きい積層型圧電素子が好ましいが、単板タイプも使用可能である。
【0110】
さらに、カンチレバー保持部側を真空中に配置し、圧電素子側を大気環境化に配置してもよい。この場合、圧電素子や接着剤などからのガスの発生を防止することができる。
【0111】
また、カンチレバー保持部側を高湿度環境下に配置し、圧電素子側を大気環境化に配置してもよい。この場合、湿度による圧電素子にマイグレーションの発生や電極の腐食を防止することができる。
【0112】
さらに、カンチレバー保持部またはサンプルホルダを加熱しながら測定を行う走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダにも適用できる。この場合、高温部材の近傍から圧電素子を遠ざけることができるため熱により圧電素子のポーリングが壊れることが防止される。
【0113】
また、カンチレバー保持部またはサンプルホルダを冷却しながら測定を行う走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダにも適用できる。この場合、冷却部材の近傍から圧電素子を遠ざけることができるため冷却により圧電素子の振幅が減少し加振効率が悪くなる現象を防止できる。
【0114】
これらの加熱または冷却を行う場合には、圧電素子と第一のベース部またはカンチレバー保持部の間に断熱部材を介在させることでより効果が上がる。
【0115】
さらに、振動ノイズを低減させるために、圧電素子を固定する板バネやブロックに制振材を使用してもよいし、あるいは、該制振材を介在させて圧電素子を固定してもよい。
【0116】
また、カンチレバーは1次の共振周波数近傍で加振し振幅の減衰量により距離制御を行ったが、1次の共振周波数での加振や振幅の減衰量の検出に限定されず任意の周波数での加振することや、位相変化や周波数変化を検出して距離制御を行う手法など、カンチレバーをピエゾで加振しながら測定を行う走査型プローブ顕微鏡の測定手段にはすべて適用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1、35、45、66 走査型プローブ顕微鏡
2 3軸微動機構
2a 水平方向微動機構
2b 垂直方向微動機構
3 サンプルステージ
4 ユニット筐体部
5 カンチレバー
5a 探針
5b カンチレバー基端部
6 変位検出機構
7、30、40 カンチレバーホルダ
8 変位検出機構筐体
9 半導体レーザ
10 ビームスプリッタ
11 全反射ミラー
12 4分割フォトディテクタ
13、52 カンチレバー保持部
14、53 第一のベース部
15、54 第二のベース部
16、31、55 圧電素子
17 板バネ
18 板バネ
19、33、44、60 ネジ
20 シャーレ
21 サンプル
22 溶液
23 レーザ光
24 光学顕微鏡
32、59 圧電素子固定部材
34、61 隙間
41 爪
42 シリコーンゴム
43 ブロック
50 密封型カンチレバーホルダ
51 密封空間
56 メンブレンフィルム
57 第三のベース部
58 内側サンプルホルダ部
62、65 Oリング
63 注入口
64 排出口
70 弾性体
80 密封型カンチレバーホルダ
81 圧電素子
82 弾性体
83 対極
84 参照極
85、86 コンタクトピン
87、88 Oリング
89 内側サンプルホルダ部
90 板バネ
91 サンプル
92 カンチレバー
104 圧電素子
105 カンチレバー固定部
106 カンチレバー
106a 探針
108 変位検出機構
113 半導体レーザ
114 ビームスプリッタ
115 ミラー
116 4分割フォトディテクタ
118 3軸微動機構
134 ガラスベースブロック
137 サンプル
136 シャーレ
215 ガラス製ホルダ
210 カンチレバー
215 ホルダ
217 圧電素子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンチレバーを先端部に保持可能なカンチレバー保持部と、前記カンチレバー保持部の末端部が固定される第一のベース部と、前記第一のベース部が保持される第二のベース部と、前記第一のベース部においてカンチレバー保持部が固定される面に対して裏側の面に先端を接触させて固定される圧電素子により構成され、前記圧電素子が前記第一のベース部に予圧を掛けて固定されることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項2】
前記圧電素子が、前記第一のベース部の縁部に圧電素子の片面を接触させ、反対側の面から予圧を掛けて固定される請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項3】
前記圧電素子がリング型の形状である請求項2に記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項4】
前記圧電素子の前記第一のベース部への接触側または反対側の少なくとも一方の面に弾性体を介して予圧を掛けるようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項5】
カンチレバーを先端部に保持可能なカンチレバー保持部と、前記カンチレバー保持部の末端部が固定される第一のベース部と、前記第一のベース部が保持される第二のベース部と、前記第一のベース部においてカンチレバー保持部が固定される面に対して裏側の面に先端を接触させて固定される圧電素子により構成され、前記圧電素子の末端側に前記第一のベース部の質量と前記カンチレバー保持部の質量の合計質量よりも重い部材が固定されることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項6】
前記圧電素子が積層型圧電素子であることを特徴とする請求項1または5に記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項7】
前記圧電素子が板状の圧電素子であることを特徴とする請求項1または5に記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項8】
前記第一のベース部が200nm以上2500nm以下のうち任意の範囲の波長の光を透過可能な材料で構成される請求項1乃至7のいずれかに記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項9】
前記カンチレバー保持部に保持される前記カンチレバー周辺が溶液中に浸されるように構成される請求項1乃至8のいずれかに記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項10】
前記カンチレバー保持部側と前記圧電素子側が前記第一のベース部で遮断されて前記カンチレバー保持部側が大気と異なる環境下に配置されるように構成された請求項1乃至9のいずれかに記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項11】
前記溶液に浸される空間内に対極および参照極として機能する2つの電極が配置され、さらにサンプルまたはカンチレバーの少なくとも一方を作用極として機能させる電極が設けられた請求項9または10に記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項12】
前記カンチレバー保持部またはカンチレバーの対抗側に配置されるサンプルが載置されるサンプルホルダを、加熱または冷却する機能が設けられた走査型プローブ顕微鏡に使用される請求項1乃至11のいずれかに記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーホルダを備えた走査型プローブ顕微鏡。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−180126(P2011−180126A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3408(P2011−3408)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)