カンデサルタンシレキセチルの製造方法
【課題】実質的に粒子径が100μm以上の硬い粒子を含有せず、かつ安定でデスエチル体の増加が少ないフォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルの微粒子粉体を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】 カンデサルタンシレキセチルを、炭素数1〜4のケトンおよび水の混合物、または炭素数1〜4のアルコールからなる溶媒と混合し、該混合液の温度を40℃以上60℃以下として溶解した後、該溶液の温度が32℃以上38℃以下となるまで冷却し、32℃以上38℃以下で30分間以上10時間以下熟成することで、粒子径が100μm以上の硬い粒子を含有しない、カンデサルタンシレキセチルのフォームI結晶を析出させる方法である。
【解決手段】 カンデサルタンシレキセチルを、炭素数1〜4のケトンおよび水の混合物、または炭素数1〜4のアルコールからなる溶媒と混合し、該混合液の温度を40℃以上60℃以下として溶解した後、該溶液の温度が32℃以上38℃以下となるまで冷却し、32℃以上38℃以下で30分間以上10時間以下熟成することで、粒子径が100μm以上の硬い粒子を含有しない、カンデサルタンシレキセチルのフォームI結晶を析出させる方法である。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
下記式(1)
【0002】
【化1】
で示されるカンデサルタンシレキセチル(化学名称:(±)−1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル 2―エトキシ−1−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]ベンズイミダゾール−7−カルボキシラート)は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬として優れた効果を示す治療薬として有用である。
【0003】
このような治療薬として有用なカンデサルタンシレキセチルは、非常に高純度のものが望まれており、かつ安定である必要がある。ここで、カンデサルタンシレキセチルには、種々の結晶形が存在することが知られている(例えば、特許文献1〜5、非特許文献1参照)。これら文献の内、特許文献1には、C型結晶として融点が158℃以上166℃以下の結晶(以下、フォームI結晶とする場合もある。)が記載されており、非特許文献2には、フォームII結晶として融点が約120℃の結晶が記載されている。そして、これら結晶形の中で、フォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルが、最も安定であることが知られており、通常、原薬として使用されている。フォームI結晶は、上記文献に記載されているように、カンデサルタンシレキセチルをアルコール溶媒、または、アセトンおよび水の混合溶媒中で結晶化させることにより製造できる。
【0004】
また、カンデサルタンシレキセチルは、水に非常に難溶であるため、医薬品として製剤化する際には、溶解性を向上させるために微粒子化する必要がある。ところが、非特許文献1に記載されている通り、カンデサルタンシレキセチルを微粒子化するためにジェットミルなどを用いて機械的に粉砕すると、最も安定なフォームI結晶においても、安定性の低下が避けられない。そして、このような問題が発生する原因については、次のような機構によるものと推定されている。すなわち、機械的粉砕を行った場合には、結晶の一部分(或いは大部分)が安定性の低いアモルファス(非晶質)の状態となることが原因であると推定されている(特許文献6参照)。なお、恐らくアモルファス化の程度がごく僅かであり定量化が困難であること、及び、安定性についてもその低下の程度は僅かであり、長期間保存した場合において保存中に生成する分解物である下記式(2)
【0005】
【化2】
で示されるデスエチル体の増加量によってしか把握できないものであることが原因であると思われるが、アモルファス化と安定性の関係は定量的に確認されてはいない。
【0006】
上記したような粉砕による非晶質化に伴う不安定化の問題は、たとえばI型結晶を得るための結晶化工程で微粒子結晶を得ることにより回避することができると考えられる。たとえば溶液から微粒子結晶を析出させることができ、濾過や乾燥工程で凝集が起っても弱い力で解砕することができれば、非晶質化を起こすことなく微粒子粉体を得ることができると考えられる。
【0007】
ところが、結晶化工程で粗大結晶粒子を形成させることなく、微粒子結晶のみを析出させることは困難である。
例えば、特許文献4には、カンデサルタンシレキセチルのアセトン溶液に水を添加し、55±2℃で約1時間撹拌した後、25±2℃まで約30分間で冷却して、フォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる方法が示されている。しかしながら、本発明者等が追試したところ、上記方法においては、粉体の一部に、粒子径が200μm〜2000μm程度の硬く凝集した粒子が存在することが分かった。これら凝集粒子は、硬い形状であることから、非特許文献2に記載されているように、製剤の溶出性に悪影響を及ぼすことが考えられる。また、粉体中に、粒子径が100μm以上の粗大粒子が存在する場合には、その数がごく僅かであっても手触りなどによって認識できるため、そのような粗大粒子の混入は品質管理上受け入れられない。そして、このような粗大凝集粒子を選択的に除去することは困難でることも判明した。たとえば、本発明者らが、篩がけによる粗大粒子の除去を試みたところ、これら粗大凝集粒子を完全に取り除くことはできなかった。
【0008】
また、特許文献1、3および5には、アルコール溶媒を使用して結晶化する方法が記載されている。しかしながら、この方法においても、粉体の一部に、粒子径が200μm〜2000μm程度の硬く凝集した粒子が存在することが分かった。この方法においても、実用化するには、得られたカンデサルタンシレキセチルの結晶粉体を粉砕して使用する必要があった。さらに、特許文献5には、カンデサルタンシレキセチルをアセトンに溶解させ、得られた溶液を水に滴下する方法が記載されているが、この方法においても、粗大凝集粒子が生成し易く、やはり、粉砕する必要があった。
【0009】
以上の通り、従来の方法では、結晶化によって、得られる粉体は粒子径が100μm以上の硬い粒子が含まれるものしか存在しなかった。よって、製剤として実使用する場合には、どうしても粉砕が必要であった。そのため、非特許文献1に記載されているように、デスエチル体が増加するおそれがあり、その点で改善の余地があった。
【0010】
これに対し、微粒子化したカンデサルタンシレキセチルについて、デスエチル体の生成を抑制する方法の検討が行われている(特許文献6参照)。具体的には、先ず、カンデサルタンシレキセチルを粉砕して微粒子とする。次いで、該微粒子とアルコール溶媒とを混合してスラリーとした後、微粒子を回収することにより、デスエチル体の増加を抑制したカンデサルタンシレキセチル(フォームI結晶)を製造する方法である。
【0011】
しかしながら、この方法では、カンデサルタンシレキセチルを結晶化し、粉砕によって微粒子化する工程に加え、さらにスラリーとする工程、回収工程等が必要となり、工程が煩雑となる点、および工程が煩雑になる分収率が低くなる点で改善の余地があった。また、本発明者らが、上記文献に記載された方法に従いカンデサルタンシレキセチルを製造したところ、回収工程において、粒子が凝集してしまい、得られた凝集粒子は容易に解砕せず、微粉化するためには機械的粉砕が必要となり、前記非晶質化の問題が完全には回避できないことが判明した。これは、特許文献6に記載されている方法では、粉砕によって微粒子化した粉体をスラリーするため、過度に細かい微粒子が生成し、遠心分離や濾別などの圧力が加わる操作が行われる回収工程において上記微細粒子によって凝集力が強まり、簡単には解粉できない凝集粒ができるためであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許2853611号公報
【特許文献2】特開2009−185060号公報
【特許文献3】特許2514282号公報
【特許文献4】特許3003030号公報
【特許文献5】特開2005−330277号公報
【特許文献6】特表2008−505935号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ケミカル・パーマシューティカル・ブレティンVol.47,No.2,182−186,1999
【非特許文献2】ファーム・テック・ジャパンVol.27,No.5,921−934,2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、前記した粉砕に伴う非晶質化による安定性低下の問題を起こすことなく、安定性および溶解性の改善したカンデサルタンシレキセチルのフォームI型結晶の粉体の簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、カンデサルタンシレキセチルを、ケトンと水の混合物、またはアルコールからなる溶媒に溶解して得られた溶液から結晶化させる工程において、結晶化の熟成温度を制御することによって、粒子径が100μm以上の硬い形状の凝集粒子を含有しないカンデサルタンシレキセチルのフォームI型結晶を取得する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、前記式(1)で示されるカンデサルタンシレキセチルの粉体であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ=9.8、17.2、20.2、及び25.0±0.2°に特徴的なピークを有する結晶粒子の集合体からなり、15μm以下の体積平均粒子径及び90μm以下の累積体積99%粒子径を有すると共に粒子径が100μm以上である粒子を実質的に含有せず、かつ、相対湿度60%、温度25℃の環境において1年以上保存したときに、前記式(2)で示されるデスエチル体の含有量の増加量が0.05%以下となる安定性を有するカンデサルタンシレキセチルの粉体を製造する方法であって、
炭素数1〜4のケトンおよび水の混合物、またはアルコールからなる溶媒に溶媒の温度を、60℃を超える温度とすることなくカンデサルタンシレキセチルを溶解させて、液温が40℃以上60℃以下である溶液を準備する工程、および前記溶液を冷却し、該溶液の液温を32℃以上38℃で保持することにより、当該溶液からカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる工程を含むことを特徴とする製造方法である。
【0017】
なお、上記デスエチル体の含有量は、カンデサルタンシレキセチルの粉体に占めるデスエチル体の割合(%)であり、具体的には、下記の実施例で記載した条件で求めた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のピーク面積%の値であって、その増加量は、所定の期間、所定の環境にて保存した粉体における含有量(%)の値から、初期の粉体における含有量(%)の値を差し引いた値とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒子径が100μm以上の硬い凝集粒子を含有しないカンデサルタンシレキセチルのフォームI結晶の微粒子粉体を、簡便な方法で効率よく、高い収率で得ることができる。本発明による方法は、微粒子化するために通常実施される粉砕を必要せず、安定な結晶形であるフォームI結晶の状態を保持できることから、安定性が改善され、不純物であるデスエチル体の増加が少ないカンデサルタンシレキセチルを得ることができる。また、本発明によって得られる粉体は高純度のものであることから、デスエチル体が少なく、かつ保存中もデスエチル体の増加が少ないカンデサルタンシレキセチルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本図は、実施例1で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図2】本図は、実施例1で得られたカンデサルタンシレキセチルの粉末X線回折である。
【図3】本図は、実施例1で得られたカンデサルタンシレキセチルのSEM画像である。
【図4】本図は、実施例2で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図5】本図は、実施例2で得られたカンデサルタンシレキセチルのSEM画像である。
【図6】本図は、実施例3で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図7】本図は、実施例4で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図8】本図は、実施例4で得られたカンデサルタンシレキセチルのSEM画像である。
【図9】本図は、実施例9で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図10】本図は、実施例10で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図11】本図は、実施例11で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図12】本図は、実施例12で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、カンデサルタンシレキセチルが溶解した溶液の温度を40℃以上60℃以下とした後、該混合溶液を冷却し、該溶液の温度を32℃以上38℃以下で保持することにより、結晶を熟成させ、カンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる方法である。
先ず、溶媒中に溶解するカンデサルタンシレキセチルについて説明する。
【0021】
(溶解するカンデサルタンシレキセチル(対象物))
溶媒中に溶解するカンデサルタンシレキセチル(以下、対象物とする場合もある)は、特に制限されるものではなく、公知の方法、例えば、特許文献1、または4に記載の方法で製造することができる。また、対象物の結晶形も、特に制限されるものではなく、フォームI結晶、若しくはその他の結晶、非晶、またはこれらが混合した形態であってもよい。さらに、対象物は、溶媒に溶解できればよく、塊状物であってもよい。そのため、精製された塊状物、および該塊状物を粉砕した粉砕物、例えば、特許文献4の参考例12で得られたカンデサルタンシレキセチルの塊状物、および粉砕物を対象物とすることもできる。また、本発明においては、下記に詳述する溶媒中にカンデサルタンシレキセチルが溶解している混合溶液とすればよいため、溶媒を含む湿体が対象物となってもよい。
【0022】
カンデサルタンシレキセチルの製造方法を例示すれば、下記式(3)で示されるトリチルカンデサルタンシレキセチル(化学名称:(±)−1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル 2―エトキシ−1−[[2’−(1−トリフェニルメチル−1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]ベンズイミダゾール−7−カルボキシラートを脱トリチル化する方法を挙げることができる。なお、このトリチルカンデサルタンシレキセチルの製造方法も、特許文献1、または4に記載に記載されている。
【0023】
【化3】
【0024】
前記式(3)で示されるトリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化は、メタノール、水、酸、またはアルカリを使用することにより実施できる。例えば、メタノール、および1N−塩酸存在下、室温でトリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化を行うことができる。また、塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素溶媒中、メタノール、および塩化水素存在下、室温でトリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化を行うこともできる。このように酸を使用した場合には、中和処理を行うことが好ましい。酸を使用しない方法としては、塩化メチレン、またはクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素溶媒中、メタノール存在下、溶媒の還流温度にてトリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化を行う方法を挙げることができる。酸を使用しない方法を採用することにより、中和処理等を省略することができる。
【0025】
本発明の方法は、前記の通り、トリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化反応を行うことにより得られるカンデサルタンシレキセチル(以下、第一粗体とする場合もある)を対象物とすることができる。第一粗体は、脱トリチル化の反応条件にもよるが、カンデサルタンシレキセチルの純度が94.0%以上98.0%以下程度であり、デスエチル体が0.5%以上3.0%以下程度含まれる場合がある。
【0026】
なお、上記のカンデサルタンシレキセチルの純度、およびデスエチル体の含有量は、下記の実施例で記載した条件で求めた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のピーク面積%の値である。以下、本発明において、カンデサルタンシレキセチルの純度、およびデスエチル体の含有量は、同様の測定で求めたピーク面積%の値である。
【0027】
本発明の方法によれば、対象物にデスエチル体が含まれる場合でも、効率よく該デスエチル体を低減することができる。そのため、前記第一粗体を対象物とすることができる。ただし、最終的に得られるカンデサルタンシレキセチルの純度をより高くするためには、対象物に含まれるデスエチル体やトリチルカンデサルタンシレキセチル等不純物の量をさらに低減しておくことが好ましい。そのため、第一粗体を精製したものを対象物とすることが好ましい。具体的には、メタノールやエタノール、アセトン等の溶媒、または、アセトンおよび水の混合溶媒で、前記第一粗体を再結晶して精製したものを対象物とすることが好ましい。この内、メタノールやエタノール、アセトンで再結晶することにより、第一粗体に残留するトリチルカンデサルタンシレキセチルをより低減することができる。また、アセトンおよび水の混合溶媒で再結晶することによりデスエチル体を低減することができる。中でも、デスエチル体やトリチルカンデサルタンシレキセチル等の不純物をより低減したものを対象物とするためには、以下の方法で第一粗体を精製することが好ましい。
【0028】
すなわち、先ず、第一粗体をアセトンにより再結晶することが好ましい。アセトンの使用量は、第一粗体に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、アセトンを1ml以上5ml以下使用することが好ましく、さらには、1.5ml以上4ml以下使用することが好ましい。また、第一粗体を溶解させる際の温度は、40℃以上還流温度以下とすることが好ましい。第一粗体が溶解したアセトン溶液は、例えば、5℃/時間以上60℃/時間以下の冷却速度で0℃以上10℃以下の温度まで冷却し、結晶を析出させることが好ましい。この際、種結晶を使用することもできる。得られた結晶は、公知の方法で分取してやればよい。このような方法で得られた結晶(以下、第二粗体とする)は、カンデサルタンシレキセチルの純度を98.5%以上99.9%以下程度とすることもでき、デスエチル体の含有量を0.05%以上0.15%以下程度とすることができる。本発明の方法は、このような第二粗体を対象物とすることができるが、特にデスエチル体の量を低減するためには、この第二粗体をさらに、以下の方法で精製したものを対象物とすることが好ましい。
【0029】
すなわち、次に、第二粗体をアセトンおよびとの混合溶媒で再結晶することが好ましい。特に、以下の手順に従い、再結晶することが好ましい。具体的には、アセトンに第二粗体が溶解した溶液を、50℃以上還流温度以下とし、5℃/時間以上60℃/時間以下の冷却速度で20℃以上30℃以下まで冷却し、次いで、水を加えて結晶を析出させ、さらに、5℃/時間以上60℃/時間以下の冷却速度で0℃以上10℃まで冷却する方法である。この際、種結晶を使用することもできる。得られた結晶は、公知の方法で分取してやればよい。上記方法において、アセトンの使用量は、第二粗体に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、5ml以上15ml以下とすることが好ましく、さらに、6ml以上13ml以下とすることが好ましい。また、水の使用量は、第二粗体に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、1ml以上6ml以下とすることが好ましく、さらに、1.5ml以上4ml以下とすることが好ましい。このような方法で得られた結晶(以下、第三粗体とする)は、カンデサルタンシレキセチルの純度を99.0以上%99.9%以下程度とすることもでき、デスエチル体の含有量を0.01%以上0.1%以下とすることができる。また、上記方法で得られた第三粗体は、融点が約120℃であるフォームII結晶となる場合が多い。また、この第三粗体は、アセトン、および水が含まれてもよい。
【0030】
本発明においては、上記方法で精製された第三粗体を対象物とすることが好ましい。特に、トリチルカンデサルタンシレキセチルからカンデサルタンシレキセチルを製造した場合には、第一粗体、または第二粗体を対象物とすることもできるが、溶媒の使用量、操作性、生産効率を考慮すると、第三粗体を対象物とすることが好ましい。第三粗体を対象物とすることにより、効率よく、デスエチル体、およびトリチルカンデサルタンシレキセチル等の不純物を除去することができる。なお、第一粗体から第三粗体を製造する際、アセトンによる再結晶、アセトンおよび水の混合溶媒による再結晶という順で説明したが、当然のことながら、アセトンおよび水の混合溶媒による再結晶、アセトンによる再結晶の順で精製を行うこともできる。
【0031】
本発明は、上記のような対象物を、炭素数1〜4のケトンと水の混合溶媒、または炭素数1〜4のアルコールからなる溶媒と混合し、該混合液の温度を40℃以上60℃以下として溶解した後、該溶液の温度が32℃以上38℃以下となるまで冷却し、32℃以上38℃以下で30分間以上10時間以下熟成することでカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させることを特徴とする。次に、このカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる方法について説明する。
【0032】
(カンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる方法)
本発明では、安定性を低下させるような機械的粉砕を行うことなくフォームI型のカンデサルタンシレキセチル微粒子粉体、すなわち前記式(1)で示されるカンデサルタンシレキセチルの粉体であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ=9.8、17.2、20.2、及び25.0±0.2°に特徴的なピークを有し、好ましくは融点が158℃以上166℃以下である結晶粒子の集合体からなり、15μm以下の体積平均粒子径及び90μm以下の累積体積99%粒子径を有すると共に粒子径が100μm以上である粒子を実質的に含有しない粉体、を得るために、対象物であるカンデサルタンシレキセチルを一旦溶媒に溶解させてから、結晶粒子を析出させる。
【0033】
このとき、上記粉体を構成する結晶粒子を析出させるためには、(i)炭素数1〜4のケトンおよび水の混合物、または炭素数1〜4のアルコールからなる溶媒に溶媒の温度を、60℃を越える温度とすることなくカンデサルタンシレキセチル(対象物)を溶解させて、液温が40℃以上60℃以下である溶液を調製してから、(ii)当該溶液を32℃以上38℃以下に冷却し、この温度を保ちながらカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる必要がある。
【0034】
溶媒として炭素数1〜4のケトンおよび水の混合溶媒、または炭素数1〜4のアルコール以外の溶媒を使用した時には、フォームIの結晶を析出させることが困難であると共に、所定の条件下で結晶析出を行っても所期の粒度分布を有する結晶粒子を析出させることができない。
【0035】
本発明において、対象物を前記溶媒に溶解させる方法は、特に制限されるものではない。具体的には、予め前記溶媒と対象物とを混合し、対象物を溶解させる方法を挙げることができる。
【0036】
このうち、使用する溶媒が炭素数1〜4のケトンおよびと水の混合溶媒の場合、溶媒の使用量を低減するためには、先ず、対象物とケトンとを混合、溶解し、その後、水を混合する方法を採用することが好ましい。また、ケトンがアセトンであることが好ましい。さらに、特に制限されるものではないが、ケトンと水との容量比率(ケトン/水)が4/1〜1/1となることが好ましい。前記範囲以外でも平均粒子径の小さいカンデサルタンシレキセチルを製造することができるが、得られるカンデサルタンシレキセチルの結晶が、融点が120℃付近のフォームII結晶となり易い。そのため、最も有用なフォームI結晶とするためには、ケトンと水との容量比率(ケトン/水)が4/1〜1/1の混合溶媒を使用することが好ましい。なお、この容積比率は、23℃におけるケトンと水との容積の割合である。
【0037】
本発明において、ケトンおよび水の混合溶媒の使用量は、容量比率、冷却温度等に応じて適宜決定すればよいが、対象物に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、2ml以上30ml以下とすることが好ましく、特にフォームI結晶を得るためには3ml以上12ml以下とすることが好ましい。この範囲であれば、純度の高いカンデサルタンシレキセチルを効率よく製造することができる。
【0038】
また、使用する溶媒が炭素数1〜4のアルコールの場合は、メタノール、またはエタノールであることが好ましい。また、その使用量は、冷却温度等に応じて適宜決定すればよいが、対象物に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、2ml以上30ml以下とすることが好ましく、特にフォームI結晶を得るためには3ml以上20ml以下とすることが好ましい。この範囲であれば、純度の高いカンデサルタンシレキセチルを効率よく製造することができる。
【0039】
本発明においては、対象物が溶解した溶液の温度を40℃以上60℃以下としなければならない。混合液の温度が40℃未満の場合は、溶媒の使用量が増加したり、カンデサルタンシレキセチルの収量が低下したりするため好ましくない。さらに、フォームI結晶を取得し難くなるため好ましくない。一方、60℃を超える場合には、デスエチル体が増加し易くなるため好ましくない。操作性、カンデサルタンシレキセチルの収量、デスエチル体の低減、フォームI結晶の取得の容易さ等を考慮すると、混合液の温度は、45℃以上57℃以下とすることが好ましく、さらに、47℃以上55℃以下とすることが好ましい。
【0040】
混合液の温度を前記範囲とする方法は、特に制限されるものではない。例えば、対象物と溶媒とを混合した後、該混合液を40℃以上60℃以下に加熱する方法を採用することができる。また、予め溶媒の温度を40℃以上60℃以下とした後、対象物を混合する方法を採用することもできる。また、ケトンと水の混合溶媒の場合、操作性、生産性を考慮すると、先ず、対象物とケトンとを混合し、40℃以上ケトンの還流温度以下、好ましくは50℃以上ケトンの還流温度以下に加熱し、次いで、40℃未満、または60℃を超える温度とならないように所定量の水(必要に応じて温水)を混合する方法を採用することが好ましい。この間、混合液は、攪拌混合しておくことが好ましい。
【0041】
次に、本発明においては、上記方法により得られた、40℃以上60℃以下の温度である溶液を、32℃以上38℃以下の温度となるように冷却する。その後、32℃以上38℃以下で30分間以上10時間以下熟成することにより、純度が高く、粒子径が100μm以上の硬い粒子を含有せず、平均粒子径の小さい、安定なカンデサルタンシレキセチルの粉体を製造することができる。この温度範囲を超える場合、デスエチル体が増加し易く、結晶の成長速度が遅くなることから好ましくなく、この温度範囲未満である場合、粒子径が100μm以上の硬い粒子が生成する可能性があるため好ましくない。粒子径が100μm以上の硬い粒子が生成する可能性があるのは、この温度範囲未満になることによって、結晶が非常に析出しやすい状態となり、析出した結晶を核として凝集しやすいことが考えられる。また、適切な純度、および粒子径が100μm以上の硬い粒子の生成を考慮すると、さらに好ましくは33℃以上37℃以下の温度で熟成する。
【0042】
また、前記溶液には、フォームI結晶の種結晶を混合することもできる。種結晶を使用する場合には、対象物とアルコールを混合し、温度を40℃以上60℃以下とし、溶解させてから種結晶を混合することもできる。また、溶媒としてケトンおよび水の混合溶媒を使用する場合は、対象物とケトンを混合し、温度を40℃以上ケトンの還流温度以下とし、該溶液と水(必要に応じて温水)とを混合する際に、種結晶を混合することもできる。種結晶を使用する場合、その使用量は、特に制限されるものではないが、対象物に含まれるカンデサルタンシレキセチル100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、さらに、0.2質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。また、該種結晶は、体積平均粒子径d50があまり大きいと結晶化の効率が良くないため、20μm以下のものを使用することが好ましい。
【0043】
本発明において、種結晶を使用する場合、該種結晶は、公知の方法で製造されたカンデサルタンシレキセチル、本発明の方法で製造されたカンデサルタンシレキセチルから調整することができる。具体的には、上記方法等で得られたフォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルを粉砕したり、篩い分けしたりすることによっても得ることができる。フォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルを粉砕して種結晶とする方法は、特に制限されるものではなく、公知の粉砕機を使用すればよい。中でも、ジェットミルを使用することが好ましい。ジェットミルは、高速の気流によって粒子を加速し、粒子同士の衝突によって粉砕を行う装置であり、連続処理、大量処理が可能であり、発生した摩擦熱は直ちに除去できるし、装置を小型化でき、メンテナンスし易いなどの利点がある。ただし、上記方法で粉砕して得られる種結晶は、粉砕後、長時間保存していないものを使用することが好ましい。種結晶の使用量は少ないため、その影響は少ないが、前記の通り、粉砕したフォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルは、デスエチル体の含有量が増加する傾向にある。そのため、粉砕して得られた種結晶は、粉砕後、直に使用するか、粉砕後、0℃以上10℃以下の温度範囲で1ヶ月程度まで保存したものを使用することが好ましい。種結晶として使用する微粒子は、デスエチル体が2%以下であることが好ましい。特に、種結晶の生産性、最終的に得られるカンデサルタンシレキセチルの純度を考慮すると、種結晶に含まれるデスエチル体は、0.01%以上1%以下であることがより好ましい。
【0044】
本発明においては、32℃以上38℃以下の温度で30分間以上10時間以下熟成すれば、その後の処理は、特に制限されるものではない。この熟成操作により、最終的に得られるカンデサルタンシレキセチルの粉体に粒子径が100μm以下の硬い粒子が含有されるかが決定されるものと考えられる。そのため、それ以降の条件は、特に制限されるものではないが、カンデサルタンシレキセチルの収量を考慮すると、以下のように処理することが好ましい。例えば、熟成後は、そのまま、より低い温度に冷却し、20℃以上30℃以下に保持した後、さらに冷却してより低い温度としてもよい。
【0045】
特に、カンデサルタンシレキセチルの収量を考慮すると、20℃以上30℃以下の混合液をさらに冷却し、0℃以上15℃以下の温度(冷却到達温度)とすることが好ましい。この際、新たに、メタノール、エタノール、アセトン、水等の溶媒は加えない方がよい。混合溶液の温度を20℃以上30℃以下から0℃以上15℃以下に冷却する際の冷却速度は、特に制限されるものではなく、1℃/時間以上60℃/時間以下とすればよい。また、冷却到達温度に混合液を保持する時間は、特に制限されるものではないが、通常、1時間以上48時間以下であればよい。なお、0℃以上15℃以下に冷却するまでの間、冷却到達温度に達してから保持する間は、溶液を攪拌混合しておくことが好ましい。
【0046】
以上のような方法で粒子径が100μm以上の硬い形状の凝集粒子を含有しない、安定なカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出することができる。得られた結晶は、ろ過や遠心分離などにより固液分離し、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥などにより乾燥することによって分離、回収すればよい。なお、分離された粉体は、溶媒が付着した湿潤状態においては凝集しているが、十分に乾燥した場合には特に解砕操作を行わなくても、或いは解砕操作を必要とする場合であっても(ミル粉砕のような強力な機械粉砕を行わずに)極弱い力をかけるだけでほぐれて、所期の粒度分布を有する微粒子粉体となる。したがって、本発明の方法によって得られる粉体は、非晶質化を引き起こすような機械粉砕を経ていないので、高い安定性、具体的には、相対湿度60%、温度25℃の環境において1年以上保存したときに、前記式(2)で示されるデスエチル体の含有量の増加量が0.05%以下となる安定性を有するカンデサルタンシレキセチルの粉体を得ることができる。
【0047】
また、得られたカンデサルタンシレキセチルの粉体は、下記の実施例の測定条件において、体積平均粒子径d50が15μm以下、好ましくは3μm以上12μm以下、より好ましくは5μm以上10μm以下のものであり、累積体積99%粒子径d99が90μm以下、より好ましくは60μm以下であって、実質的に粒子径が100μm以上の硬い形状の凝集粒子を含有しないカンデサルタンシレキセチルの微粒子粉体を得ることができる。そのため、粉砕することなく、そのまま医薬品として実使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
なお、実施例、比較例で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒子径の測定、純度測定、デスエチル体の含有量の測定、粉末X線回折の測定、走査型電子顕微鏡の測定、融点の測定は、以下のように行った。
また、実施例、比較例では製造スケールが異なるため、各撹拌速度は撹拌動力を合わせて行った。
【0049】
<カンデサルタンシレキセチルの純度、デスエチル体の含有量の測定>
装置:高速液体クロマトグラフィー
機種:2695−2489−996(Waters社製)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム:Inertsil ODS−3、内径4.6mm、長さ15cm(粒子径5μm、細孔径12nm)(株式会社ジーエルサイエンス製)
カラム温度:40℃一定
サンプル温度:25℃一定
移動相:アセトニトリル/1%酢酸水溶液=80/20
流量:1.5ml/分
上記条件において、カンデサルタンシレキセチルは約4.9分にピークが確認され、デスエチル体は、約3.0分にピークが確認される。以下の実施例、比較例において、カンデサルタンシレキセチルの純度、デスエチル体の含有量は共に、上記条件で測定したピーク面積%の値である。
【0050】
<粒子径測定方法>
装置:レーザー回折方式粒度分布計
機種:Helos&Rodos system(Sympatec社製)
計算方法:Windox5.2
分散圧:1.5bar
引圧:0
回転:なし
以上の条件により、体積粒度分布を求めた。
<カンデサルタンシレキセチルの粉末X線回折の測定>
装置:X線回折装置
機種:RINT(株式会社リガク製)
X線出力:30mA、40kV
波長:CuKa/1.541858Å
スキャン速度:10℃/分
<カンデサルタンシレキセチルの走査型電子顕微鏡の測定>
装置:走査型電子顕微鏡(SEM)
機種:S−3400N(日立社製)
試料をPtコーティング後、上記装置にて測定した。
<カンデサルタンシレキセチルの融点>
装置:融点測定装置
機種:B−540(柴田科学株式会社製)
昇温速度:150℃から180℃まで1℃/分
【0051】
製造例1(カンデサルタンシレキセチルの製造)
容量100Lの4つ口フラスコに、トリチルカンデサルタンシレキセチル10.86kg、クロロホルム13L、メタノール44Lを加え、60℃で4時間反応した(反応終了時、カンデサルタンシレキセチルの純度は96.4%、デスエチル体の含有量は1.08%であった。)。反応後、45℃で溶媒を減圧濃縮し、アセトン33Lを加え、10℃以上30℃以下で終夜撹拌した。次いで、0℃で2時間撹拌後、析出した結晶を遠心分離して分取し、第二粗体の湿体を得た(カンデサルタンシレキセチルの純度99.7%、デスエチル体0.11%)。この第二粗体を52.5Lのアセトンに50℃で溶解し、溶解後、冷却して27℃とした。この溶液に17.5Lの水を加え、20℃以上30℃以下で終夜撹拌した。次いで、0℃で2時間撹拌後、析出した結晶を遠心分離して分取し、該結晶を乾燥し、カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%の第三粗体を4.96kg得た。
【0052】
実施例1
直径37cmの3枚後退翼を供えた50L反応機に、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)3.75kg、アセトン17.8kgを仕込んで、撹拌速度188rpmで撹拌し、還流温度(約56℃)まで加熱し、カンデサルタンシレキセチルを溶解させた。溶解後、水7.5kgを加え、攪拌しながら溶液の温度を55℃とした。その後、溶液を攪拌しながら溶液の温度を35℃まで冷却した。
さらに、その後、溶液を5時間攪拌熟成し、冷却して5℃とした。得られた溶液には、結晶が析出しており、遠心分離機で結晶を分取し、乾燥した。得られた結晶は、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.01%)のカンデサルタンシレキセチルであった(収量27.1g(収率90%))。このカンデサルタンシレキセチルの結晶は、手触りではゴロゴロした感触が無く、粒度分布測定、電子顕微鏡測定において、粒子径が100μm以上の硬い粒子は確認されなかった。また、体積平均粒子径d50が7.9μm、累積体積99%粒子径d99が41.0μmであった。また、融点は163.2℃であり、粉末X線回折測定によって、フォームI結晶であることが確認された。
【0053】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図1に示した。
このカンデサルタンシレキセチルの粉末X線回折を図2に示した。
このカンデサルタンシレキセチルのSEM画像を図3に示した。
【0054】
このカンデサルタンシレキセチルについて、保存安定性試験を、25℃、60%RH(相対湿度60%)の環境下、40℃、75%RH(相対湿度75%)の環境下、60℃、90%RH(相対湿度90%)の環境下において、それぞれ12ヶ月までの期間行った。結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例2
直径12cmの2枚撹拌翼を供えた10Lの4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)300g、メタノール2.0Lを仕込んで、撹拌速度400rpmで撹拌し、55℃の温度で加熱溶解させた。次いで、冷却し、34℃で約6時間撹拌した。その後5℃まで冷却し、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.02%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量240.2g(収率80%))。このカンデサルタンシレキセチルの結晶は、手触りではゴロゴロした感触が無く、粒度分布測定、電子顕微鏡測定において、粒子径が100μm以上の硬い粒子は確認されなかった。また、体積平均粒子径d50が7.4μm、累積体積99%粒子径d99が43.9μmであった。また、融点は163.8℃であり、フォームI結晶であることが確認された。
【0057】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図4に示した。
このカンデサルタンシレキセチルのSEM画像を図5に示した。
【0058】
このカンデサルタンシレキセチルについて、保存安定性試験を、25℃、60%RH(相対湿度60%)の環境下、40℃、75%RH(相対湿度75%)の環境下、60℃、90%RH(相対湿度90%)の環境下において、それぞれ12ヶ月までの期間行った。結果を表1に示した。
【0059】
実施例3
直径12cmの2枚撹拌翼を供えた10Lの4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)300g、エタノール3.6Lを仕込んで、撹拌速度400rpmで撹拌し、55℃の温度で加熱溶解させた。次いで、冷却し、34℃で約6時間撹拌した。その後5℃まで冷却し、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.02%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量246.1g(収率82%))。このカンデサルタンシレキセチルの結晶は、手触りではゴロゴロした感触が無く、粒度分布測定、電子顕微鏡測定において、粒子径が100μm以上の硬い粒子は確認されなかった。また、体積平均粒子径d50が6.8μm、累積体積99%粒子径d99が46.6μmであった。また、融点は163.8℃であり、フォームI結晶であることが確認された。
【0060】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図6に示した。
【0061】
比較例1
直径12cmの2枚撹拌翼を供えた5Lの4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)300g、アセトン4.5Lを仕込んで、撹拌速度400rpmで撹拌し、40℃以上50℃以下の温度で加熱し、カンデサルタンシレキセチルを溶解させた。次いで、減圧濃縮し、カンデサルタンシレキセチルの濃度を約30%w/w(アセトン量1.25L)とした。予め60℃まで加熱した純水100mlを添加し、約10分間撹拌した。純水200mlを約5分間で滴下し、53℃で約1時間撹拌した。30℃まで約30分間(冷却速度46℃/時間)で冷却し、アセトン/水=3/1の混合液を300ml添加し、1℃まで冷却し、1℃で1時間撹拌した後、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.05%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量274.8g(収率92%))。このカンデサルタンシレキセチルの結晶は、手触りはゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると100μm以上にも分布が観測された。また、体積平均粒子径d50が4.2μm、累計体積99%粒子径d99が137.6μmであった。さらに、1000μmの篩がけを行い、得られた結晶のSEM画像を確認したところ、図7に示した200μm程度の硬い粒子が存在することが分かった。
【0062】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図7に示した。
このカンデサルタンシレキセチルのSEM画像を図8に示した。
【0063】
このカンデサルタンシレキセチルの粉体2kgを、日本ニューマチック工業社製ジェットミル(型式PJM−100)を用いて、供給速度2.5kg/時間、粉砕圧力0.6MPaで粉砕し、カンデサルタンシレキセチルの粉砕粉体1.12kg(回収率56%)を得た。このカンデサルタンシレキセチルの粉砕粉体は、手触りではゴロゴロした感触が無く、粒度分布測定、電子顕微鏡測定において、粒子径が100μm以上の硬い粒子は確認されなかった。また、体積平均粒子径d50が1.1μm、累積体積99%粒子径d99が3.1μmであった。
このカンデサルタンシレキセチルの粉砕粉体について、保存安定性試験を、25℃、60%RH(相対湿度60%)の環境下、40℃、75%RH(相対湿度75%)の環境下、60℃、90%RH(相対湿度90%)の環境下において、それぞれ12ヶ月までの期間行った。結果を表1に示した。
【0064】
比較例2
直径5cmの2枚撹拌翼を供えた500mlの4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)30g、メタノール163mlを仕込んで、撹拌速度700rpmで撹拌し、還流温度まで加熱し溶解させた。この溶液を23℃まで冷却し、4時間撹拌後、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.8%(デスエチル体の含有量0.10%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量25.5g(収率85%))。このカンデサルタンシレキセチル結晶の手触りはゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると100μm以上にも分布が観測された。また、体積平均粒子径d50が3.3μm、累積体積99%粒子径d99が138.7μmであった。
【0065】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図9に示した。
【0066】
比較例3
500ml 4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)30g、アセトン330mlを仕込んで、還流温度まで加熱し、カンデサルタンシレキセチルを溶解させた(アセトン溶液を調整した。)。直径5cmの2枚撹拌翼を供えた700ml 4つ口フラスコに、水150mlを加え、撹拌速度500rpmで撹拌し、調整したカンデサルタンシレキセチルのアセトン溶液を20〜25℃で添加し、30分間撹拌後、0℃で30分間撹拌した後、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.8%(デスエチル体の含有量0.10%)
のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量24.9g(収率83%))。このカンデサルタンシレキセチル結晶の手触りはゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると100μm以上にも分布が観測された。また、体積平均粒子径d50が4.7μm、累積体積99%粒子径d99が283.6μmであった。
【0067】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図10に示した。
【0068】
比較例4
製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)30gを30℃でメタノール5Lに溶解させ、溶媒を留去し、無定形のカンデサルタンシレキセチルを得た。その粉体にエタノール180mlを加え室温で3時間撹拌した。(撹拌速度700rpm)その後、7℃で1時間撹拌し、結晶を遠心分離し、得られた結晶を乾燥し、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.02%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量27.2g(収率91%))。このカンデサルタンシレキセチル結晶の手触りはゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると100μm以上にも分布が観測された。
【0069】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図11に示した。
【0070】
比較例5
実施例1で得られたカンデサルタンシレキセチル100gをジェットミルで粉砕し、90gの微粉砕カンデサルタンシレキセチル(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.09%)を得、その内30gを500ml4つ口フラスコに、メタノール330mlを仕込んで撹拌速度700rpmで25℃、24時間撹拌した。その後、遠心分離し、乾燥した。このカンデサルタンシレキセチル結晶の手触りは若干ゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると全体的に粒子が小さい傾向にあったが、100μm以上にも分布が観測された。
【0071】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図12に示した。
【背景技術】
【0001】
下記式(1)
【0002】
【化1】
で示されるカンデサルタンシレキセチル(化学名称:(±)−1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル 2―エトキシ−1−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]ベンズイミダゾール−7−カルボキシラート)は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬として優れた効果を示す治療薬として有用である。
【0003】
このような治療薬として有用なカンデサルタンシレキセチルは、非常に高純度のものが望まれており、かつ安定である必要がある。ここで、カンデサルタンシレキセチルには、種々の結晶形が存在することが知られている(例えば、特許文献1〜5、非特許文献1参照)。これら文献の内、特許文献1には、C型結晶として融点が158℃以上166℃以下の結晶(以下、フォームI結晶とする場合もある。)が記載されており、非特許文献2には、フォームII結晶として融点が約120℃の結晶が記載されている。そして、これら結晶形の中で、フォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルが、最も安定であることが知られており、通常、原薬として使用されている。フォームI結晶は、上記文献に記載されているように、カンデサルタンシレキセチルをアルコール溶媒、または、アセトンおよび水の混合溶媒中で結晶化させることにより製造できる。
【0004】
また、カンデサルタンシレキセチルは、水に非常に難溶であるため、医薬品として製剤化する際には、溶解性を向上させるために微粒子化する必要がある。ところが、非特許文献1に記載されている通り、カンデサルタンシレキセチルを微粒子化するためにジェットミルなどを用いて機械的に粉砕すると、最も安定なフォームI結晶においても、安定性の低下が避けられない。そして、このような問題が発生する原因については、次のような機構によるものと推定されている。すなわち、機械的粉砕を行った場合には、結晶の一部分(或いは大部分)が安定性の低いアモルファス(非晶質)の状態となることが原因であると推定されている(特許文献6参照)。なお、恐らくアモルファス化の程度がごく僅かであり定量化が困難であること、及び、安定性についてもその低下の程度は僅かであり、長期間保存した場合において保存中に生成する分解物である下記式(2)
【0005】
【化2】
で示されるデスエチル体の増加量によってしか把握できないものであることが原因であると思われるが、アモルファス化と安定性の関係は定量的に確認されてはいない。
【0006】
上記したような粉砕による非晶質化に伴う不安定化の問題は、たとえばI型結晶を得るための結晶化工程で微粒子結晶を得ることにより回避することができると考えられる。たとえば溶液から微粒子結晶を析出させることができ、濾過や乾燥工程で凝集が起っても弱い力で解砕することができれば、非晶質化を起こすことなく微粒子粉体を得ることができると考えられる。
【0007】
ところが、結晶化工程で粗大結晶粒子を形成させることなく、微粒子結晶のみを析出させることは困難である。
例えば、特許文献4には、カンデサルタンシレキセチルのアセトン溶液に水を添加し、55±2℃で約1時間撹拌した後、25±2℃まで約30分間で冷却して、フォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる方法が示されている。しかしながら、本発明者等が追試したところ、上記方法においては、粉体の一部に、粒子径が200μm〜2000μm程度の硬く凝集した粒子が存在することが分かった。これら凝集粒子は、硬い形状であることから、非特許文献2に記載されているように、製剤の溶出性に悪影響を及ぼすことが考えられる。また、粉体中に、粒子径が100μm以上の粗大粒子が存在する場合には、その数がごく僅かであっても手触りなどによって認識できるため、そのような粗大粒子の混入は品質管理上受け入れられない。そして、このような粗大凝集粒子を選択的に除去することは困難でることも判明した。たとえば、本発明者らが、篩がけによる粗大粒子の除去を試みたところ、これら粗大凝集粒子を完全に取り除くことはできなかった。
【0008】
また、特許文献1、3および5には、アルコール溶媒を使用して結晶化する方法が記載されている。しかしながら、この方法においても、粉体の一部に、粒子径が200μm〜2000μm程度の硬く凝集した粒子が存在することが分かった。この方法においても、実用化するには、得られたカンデサルタンシレキセチルの結晶粉体を粉砕して使用する必要があった。さらに、特許文献5には、カンデサルタンシレキセチルをアセトンに溶解させ、得られた溶液を水に滴下する方法が記載されているが、この方法においても、粗大凝集粒子が生成し易く、やはり、粉砕する必要があった。
【0009】
以上の通り、従来の方法では、結晶化によって、得られる粉体は粒子径が100μm以上の硬い粒子が含まれるものしか存在しなかった。よって、製剤として実使用する場合には、どうしても粉砕が必要であった。そのため、非特許文献1に記載されているように、デスエチル体が増加するおそれがあり、その点で改善の余地があった。
【0010】
これに対し、微粒子化したカンデサルタンシレキセチルについて、デスエチル体の生成を抑制する方法の検討が行われている(特許文献6参照)。具体的には、先ず、カンデサルタンシレキセチルを粉砕して微粒子とする。次いで、該微粒子とアルコール溶媒とを混合してスラリーとした後、微粒子を回収することにより、デスエチル体の増加を抑制したカンデサルタンシレキセチル(フォームI結晶)を製造する方法である。
【0011】
しかしながら、この方法では、カンデサルタンシレキセチルを結晶化し、粉砕によって微粒子化する工程に加え、さらにスラリーとする工程、回収工程等が必要となり、工程が煩雑となる点、および工程が煩雑になる分収率が低くなる点で改善の余地があった。また、本発明者らが、上記文献に記載された方法に従いカンデサルタンシレキセチルを製造したところ、回収工程において、粒子が凝集してしまい、得られた凝集粒子は容易に解砕せず、微粉化するためには機械的粉砕が必要となり、前記非晶質化の問題が完全には回避できないことが判明した。これは、特許文献6に記載されている方法では、粉砕によって微粒子化した粉体をスラリーするため、過度に細かい微粒子が生成し、遠心分離や濾別などの圧力が加わる操作が行われる回収工程において上記微細粒子によって凝集力が強まり、簡単には解粉できない凝集粒ができるためであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許2853611号公報
【特許文献2】特開2009−185060号公報
【特許文献3】特許2514282号公報
【特許文献4】特許3003030号公報
【特許文献5】特開2005−330277号公報
【特許文献6】特表2008−505935号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ケミカル・パーマシューティカル・ブレティンVol.47,No.2,182−186,1999
【非特許文献2】ファーム・テック・ジャパンVol.27,No.5,921−934,2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、前記した粉砕に伴う非晶質化による安定性低下の問題を起こすことなく、安定性および溶解性の改善したカンデサルタンシレキセチルのフォームI型結晶の粉体の簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、カンデサルタンシレキセチルを、ケトンと水の混合物、またはアルコールからなる溶媒に溶解して得られた溶液から結晶化させる工程において、結晶化の熟成温度を制御することによって、粒子径が100μm以上の硬い形状の凝集粒子を含有しないカンデサルタンシレキセチルのフォームI型結晶を取得する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、前記式(1)で示されるカンデサルタンシレキセチルの粉体であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ=9.8、17.2、20.2、及び25.0±0.2°に特徴的なピークを有する結晶粒子の集合体からなり、15μm以下の体積平均粒子径及び90μm以下の累積体積99%粒子径を有すると共に粒子径が100μm以上である粒子を実質的に含有せず、かつ、相対湿度60%、温度25℃の環境において1年以上保存したときに、前記式(2)で示されるデスエチル体の含有量の増加量が0.05%以下となる安定性を有するカンデサルタンシレキセチルの粉体を製造する方法であって、
炭素数1〜4のケトンおよび水の混合物、またはアルコールからなる溶媒に溶媒の温度を、60℃を超える温度とすることなくカンデサルタンシレキセチルを溶解させて、液温が40℃以上60℃以下である溶液を準備する工程、および前記溶液を冷却し、該溶液の液温を32℃以上38℃で保持することにより、当該溶液からカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる工程を含むことを特徴とする製造方法である。
【0017】
なお、上記デスエチル体の含有量は、カンデサルタンシレキセチルの粉体に占めるデスエチル体の割合(%)であり、具体的には、下記の実施例で記載した条件で求めた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のピーク面積%の値であって、その増加量は、所定の期間、所定の環境にて保存した粉体における含有量(%)の値から、初期の粉体における含有量(%)の値を差し引いた値とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒子径が100μm以上の硬い凝集粒子を含有しないカンデサルタンシレキセチルのフォームI結晶の微粒子粉体を、簡便な方法で効率よく、高い収率で得ることができる。本発明による方法は、微粒子化するために通常実施される粉砕を必要せず、安定な結晶形であるフォームI結晶の状態を保持できることから、安定性が改善され、不純物であるデスエチル体の増加が少ないカンデサルタンシレキセチルを得ることができる。また、本発明によって得られる粉体は高純度のものであることから、デスエチル体が少なく、かつ保存中もデスエチル体の増加が少ないカンデサルタンシレキセチルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本図は、実施例1で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図2】本図は、実施例1で得られたカンデサルタンシレキセチルの粉末X線回折である。
【図3】本図は、実施例1で得られたカンデサルタンシレキセチルのSEM画像である。
【図4】本図は、実施例2で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図5】本図は、実施例2で得られたカンデサルタンシレキセチルのSEM画像である。
【図6】本図は、実施例3で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図7】本図は、実施例4で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図8】本図は、実施例4で得られたカンデサルタンシレキセチルのSEM画像である。
【図9】本図は、実施例9で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図10】本図は、実施例10で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図11】本図は、実施例11で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【図12】本図は、実施例12で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒度分布である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、カンデサルタンシレキセチルが溶解した溶液の温度を40℃以上60℃以下とした後、該混合溶液を冷却し、該溶液の温度を32℃以上38℃以下で保持することにより、結晶を熟成させ、カンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる方法である。
先ず、溶媒中に溶解するカンデサルタンシレキセチルについて説明する。
【0021】
(溶解するカンデサルタンシレキセチル(対象物))
溶媒中に溶解するカンデサルタンシレキセチル(以下、対象物とする場合もある)は、特に制限されるものではなく、公知の方法、例えば、特許文献1、または4に記載の方法で製造することができる。また、対象物の結晶形も、特に制限されるものではなく、フォームI結晶、若しくはその他の結晶、非晶、またはこれらが混合した形態であってもよい。さらに、対象物は、溶媒に溶解できればよく、塊状物であってもよい。そのため、精製された塊状物、および該塊状物を粉砕した粉砕物、例えば、特許文献4の参考例12で得られたカンデサルタンシレキセチルの塊状物、および粉砕物を対象物とすることもできる。また、本発明においては、下記に詳述する溶媒中にカンデサルタンシレキセチルが溶解している混合溶液とすればよいため、溶媒を含む湿体が対象物となってもよい。
【0022】
カンデサルタンシレキセチルの製造方法を例示すれば、下記式(3)で示されるトリチルカンデサルタンシレキセチル(化学名称:(±)−1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル 2―エトキシ−1−[[2’−(1−トリフェニルメチル−1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]ベンズイミダゾール−7−カルボキシラートを脱トリチル化する方法を挙げることができる。なお、このトリチルカンデサルタンシレキセチルの製造方法も、特許文献1、または4に記載に記載されている。
【0023】
【化3】
【0024】
前記式(3)で示されるトリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化は、メタノール、水、酸、またはアルカリを使用することにより実施できる。例えば、メタノール、および1N−塩酸存在下、室温でトリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化を行うことができる。また、塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素溶媒中、メタノール、および塩化水素存在下、室温でトリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化を行うこともできる。このように酸を使用した場合には、中和処理を行うことが好ましい。酸を使用しない方法としては、塩化メチレン、またはクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素溶媒中、メタノール存在下、溶媒の還流温度にてトリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化を行う方法を挙げることができる。酸を使用しない方法を採用することにより、中和処理等を省略することができる。
【0025】
本発明の方法は、前記の通り、トリチルカンデサルタンシレキセチルの脱トリチル化反応を行うことにより得られるカンデサルタンシレキセチル(以下、第一粗体とする場合もある)を対象物とすることができる。第一粗体は、脱トリチル化の反応条件にもよるが、カンデサルタンシレキセチルの純度が94.0%以上98.0%以下程度であり、デスエチル体が0.5%以上3.0%以下程度含まれる場合がある。
【0026】
なお、上記のカンデサルタンシレキセチルの純度、およびデスエチル体の含有量は、下記の実施例で記載した条件で求めた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のピーク面積%の値である。以下、本発明において、カンデサルタンシレキセチルの純度、およびデスエチル体の含有量は、同様の測定で求めたピーク面積%の値である。
【0027】
本発明の方法によれば、対象物にデスエチル体が含まれる場合でも、効率よく該デスエチル体を低減することができる。そのため、前記第一粗体を対象物とすることができる。ただし、最終的に得られるカンデサルタンシレキセチルの純度をより高くするためには、対象物に含まれるデスエチル体やトリチルカンデサルタンシレキセチル等不純物の量をさらに低減しておくことが好ましい。そのため、第一粗体を精製したものを対象物とすることが好ましい。具体的には、メタノールやエタノール、アセトン等の溶媒、または、アセトンおよび水の混合溶媒で、前記第一粗体を再結晶して精製したものを対象物とすることが好ましい。この内、メタノールやエタノール、アセトンで再結晶することにより、第一粗体に残留するトリチルカンデサルタンシレキセチルをより低減することができる。また、アセトンおよび水の混合溶媒で再結晶することによりデスエチル体を低減することができる。中でも、デスエチル体やトリチルカンデサルタンシレキセチル等の不純物をより低減したものを対象物とするためには、以下の方法で第一粗体を精製することが好ましい。
【0028】
すなわち、先ず、第一粗体をアセトンにより再結晶することが好ましい。アセトンの使用量は、第一粗体に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、アセトンを1ml以上5ml以下使用することが好ましく、さらには、1.5ml以上4ml以下使用することが好ましい。また、第一粗体を溶解させる際の温度は、40℃以上還流温度以下とすることが好ましい。第一粗体が溶解したアセトン溶液は、例えば、5℃/時間以上60℃/時間以下の冷却速度で0℃以上10℃以下の温度まで冷却し、結晶を析出させることが好ましい。この際、種結晶を使用することもできる。得られた結晶は、公知の方法で分取してやればよい。このような方法で得られた結晶(以下、第二粗体とする)は、カンデサルタンシレキセチルの純度を98.5%以上99.9%以下程度とすることもでき、デスエチル体の含有量を0.05%以上0.15%以下程度とすることができる。本発明の方法は、このような第二粗体を対象物とすることができるが、特にデスエチル体の量を低減するためには、この第二粗体をさらに、以下の方法で精製したものを対象物とすることが好ましい。
【0029】
すなわち、次に、第二粗体をアセトンおよびとの混合溶媒で再結晶することが好ましい。特に、以下の手順に従い、再結晶することが好ましい。具体的には、アセトンに第二粗体が溶解した溶液を、50℃以上還流温度以下とし、5℃/時間以上60℃/時間以下の冷却速度で20℃以上30℃以下まで冷却し、次いで、水を加えて結晶を析出させ、さらに、5℃/時間以上60℃/時間以下の冷却速度で0℃以上10℃まで冷却する方法である。この際、種結晶を使用することもできる。得られた結晶は、公知の方法で分取してやればよい。上記方法において、アセトンの使用量は、第二粗体に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、5ml以上15ml以下とすることが好ましく、さらに、6ml以上13ml以下とすることが好ましい。また、水の使用量は、第二粗体に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、1ml以上6ml以下とすることが好ましく、さらに、1.5ml以上4ml以下とすることが好ましい。このような方法で得られた結晶(以下、第三粗体とする)は、カンデサルタンシレキセチルの純度を99.0以上%99.9%以下程度とすることもでき、デスエチル体の含有量を0.01%以上0.1%以下とすることができる。また、上記方法で得られた第三粗体は、融点が約120℃であるフォームII結晶となる場合が多い。また、この第三粗体は、アセトン、および水が含まれてもよい。
【0030】
本発明においては、上記方法で精製された第三粗体を対象物とすることが好ましい。特に、トリチルカンデサルタンシレキセチルからカンデサルタンシレキセチルを製造した場合には、第一粗体、または第二粗体を対象物とすることもできるが、溶媒の使用量、操作性、生産効率を考慮すると、第三粗体を対象物とすることが好ましい。第三粗体を対象物とすることにより、効率よく、デスエチル体、およびトリチルカンデサルタンシレキセチル等の不純物を除去することができる。なお、第一粗体から第三粗体を製造する際、アセトンによる再結晶、アセトンおよび水の混合溶媒による再結晶という順で説明したが、当然のことながら、アセトンおよび水の混合溶媒による再結晶、アセトンによる再結晶の順で精製を行うこともできる。
【0031】
本発明は、上記のような対象物を、炭素数1〜4のケトンと水の混合溶媒、または炭素数1〜4のアルコールからなる溶媒と混合し、該混合液の温度を40℃以上60℃以下として溶解した後、該溶液の温度が32℃以上38℃以下となるまで冷却し、32℃以上38℃以下で30分間以上10時間以下熟成することでカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させることを特徴とする。次に、このカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる方法について説明する。
【0032】
(カンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる方法)
本発明では、安定性を低下させるような機械的粉砕を行うことなくフォームI型のカンデサルタンシレキセチル微粒子粉体、すなわち前記式(1)で示されるカンデサルタンシレキセチルの粉体であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ=9.8、17.2、20.2、及び25.0±0.2°に特徴的なピークを有し、好ましくは融点が158℃以上166℃以下である結晶粒子の集合体からなり、15μm以下の体積平均粒子径及び90μm以下の累積体積99%粒子径を有すると共に粒子径が100μm以上である粒子を実質的に含有しない粉体、を得るために、対象物であるカンデサルタンシレキセチルを一旦溶媒に溶解させてから、結晶粒子を析出させる。
【0033】
このとき、上記粉体を構成する結晶粒子を析出させるためには、(i)炭素数1〜4のケトンおよび水の混合物、または炭素数1〜4のアルコールからなる溶媒に溶媒の温度を、60℃を越える温度とすることなくカンデサルタンシレキセチル(対象物)を溶解させて、液温が40℃以上60℃以下である溶液を調製してから、(ii)当該溶液を32℃以上38℃以下に冷却し、この温度を保ちながらカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる必要がある。
【0034】
溶媒として炭素数1〜4のケトンおよび水の混合溶媒、または炭素数1〜4のアルコール以外の溶媒を使用した時には、フォームIの結晶を析出させることが困難であると共に、所定の条件下で結晶析出を行っても所期の粒度分布を有する結晶粒子を析出させることができない。
【0035】
本発明において、対象物を前記溶媒に溶解させる方法は、特に制限されるものではない。具体的には、予め前記溶媒と対象物とを混合し、対象物を溶解させる方法を挙げることができる。
【0036】
このうち、使用する溶媒が炭素数1〜4のケトンおよびと水の混合溶媒の場合、溶媒の使用量を低減するためには、先ず、対象物とケトンとを混合、溶解し、その後、水を混合する方法を採用することが好ましい。また、ケトンがアセトンであることが好ましい。さらに、特に制限されるものではないが、ケトンと水との容量比率(ケトン/水)が4/1〜1/1となることが好ましい。前記範囲以外でも平均粒子径の小さいカンデサルタンシレキセチルを製造することができるが、得られるカンデサルタンシレキセチルの結晶が、融点が120℃付近のフォームII結晶となり易い。そのため、最も有用なフォームI結晶とするためには、ケトンと水との容量比率(ケトン/水)が4/1〜1/1の混合溶媒を使用することが好ましい。なお、この容積比率は、23℃におけるケトンと水との容積の割合である。
【0037】
本発明において、ケトンおよび水の混合溶媒の使用量は、容量比率、冷却温度等に応じて適宜決定すればよいが、対象物に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、2ml以上30ml以下とすることが好ましく、特にフォームI結晶を得るためには3ml以上12ml以下とすることが好ましい。この範囲であれば、純度の高いカンデサルタンシレキセチルを効率よく製造することができる。
【0038】
また、使用する溶媒が炭素数1〜4のアルコールの場合は、メタノール、またはエタノールであることが好ましい。また、その使用量は、冷却温度等に応じて適宜決定すればよいが、対象物に含まれるカンデサルタンシレキセチル1gに対して、2ml以上30ml以下とすることが好ましく、特にフォームI結晶を得るためには3ml以上20ml以下とすることが好ましい。この範囲であれば、純度の高いカンデサルタンシレキセチルを効率よく製造することができる。
【0039】
本発明においては、対象物が溶解した溶液の温度を40℃以上60℃以下としなければならない。混合液の温度が40℃未満の場合は、溶媒の使用量が増加したり、カンデサルタンシレキセチルの収量が低下したりするため好ましくない。さらに、フォームI結晶を取得し難くなるため好ましくない。一方、60℃を超える場合には、デスエチル体が増加し易くなるため好ましくない。操作性、カンデサルタンシレキセチルの収量、デスエチル体の低減、フォームI結晶の取得の容易さ等を考慮すると、混合液の温度は、45℃以上57℃以下とすることが好ましく、さらに、47℃以上55℃以下とすることが好ましい。
【0040】
混合液の温度を前記範囲とする方法は、特に制限されるものではない。例えば、対象物と溶媒とを混合した後、該混合液を40℃以上60℃以下に加熱する方法を採用することができる。また、予め溶媒の温度を40℃以上60℃以下とした後、対象物を混合する方法を採用することもできる。また、ケトンと水の混合溶媒の場合、操作性、生産性を考慮すると、先ず、対象物とケトンとを混合し、40℃以上ケトンの還流温度以下、好ましくは50℃以上ケトンの還流温度以下に加熱し、次いで、40℃未満、または60℃を超える温度とならないように所定量の水(必要に応じて温水)を混合する方法を採用することが好ましい。この間、混合液は、攪拌混合しておくことが好ましい。
【0041】
次に、本発明においては、上記方法により得られた、40℃以上60℃以下の温度である溶液を、32℃以上38℃以下の温度となるように冷却する。その後、32℃以上38℃以下で30分間以上10時間以下熟成することにより、純度が高く、粒子径が100μm以上の硬い粒子を含有せず、平均粒子径の小さい、安定なカンデサルタンシレキセチルの粉体を製造することができる。この温度範囲を超える場合、デスエチル体が増加し易く、結晶の成長速度が遅くなることから好ましくなく、この温度範囲未満である場合、粒子径が100μm以上の硬い粒子が生成する可能性があるため好ましくない。粒子径が100μm以上の硬い粒子が生成する可能性があるのは、この温度範囲未満になることによって、結晶が非常に析出しやすい状態となり、析出した結晶を核として凝集しやすいことが考えられる。また、適切な純度、および粒子径が100μm以上の硬い粒子の生成を考慮すると、さらに好ましくは33℃以上37℃以下の温度で熟成する。
【0042】
また、前記溶液には、フォームI結晶の種結晶を混合することもできる。種結晶を使用する場合には、対象物とアルコールを混合し、温度を40℃以上60℃以下とし、溶解させてから種結晶を混合することもできる。また、溶媒としてケトンおよび水の混合溶媒を使用する場合は、対象物とケトンを混合し、温度を40℃以上ケトンの還流温度以下とし、該溶液と水(必要に応じて温水)とを混合する際に、種結晶を混合することもできる。種結晶を使用する場合、その使用量は、特に制限されるものではないが、対象物に含まれるカンデサルタンシレキセチル100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、さらに、0.2質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。また、該種結晶は、体積平均粒子径d50があまり大きいと結晶化の効率が良くないため、20μm以下のものを使用することが好ましい。
【0043】
本発明において、種結晶を使用する場合、該種結晶は、公知の方法で製造されたカンデサルタンシレキセチル、本発明の方法で製造されたカンデサルタンシレキセチルから調整することができる。具体的には、上記方法等で得られたフォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルを粉砕したり、篩い分けしたりすることによっても得ることができる。フォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルを粉砕して種結晶とする方法は、特に制限されるものではなく、公知の粉砕機を使用すればよい。中でも、ジェットミルを使用することが好ましい。ジェットミルは、高速の気流によって粒子を加速し、粒子同士の衝突によって粉砕を行う装置であり、連続処理、大量処理が可能であり、発生した摩擦熱は直ちに除去できるし、装置を小型化でき、メンテナンスし易いなどの利点がある。ただし、上記方法で粉砕して得られる種結晶は、粉砕後、長時間保存していないものを使用することが好ましい。種結晶の使用量は少ないため、その影響は少ないが、前記の通り、粉砕したフォームI結晶のカンデサルタンシレキセチルは、デスエチル体の含有量が増加する傾向にある。そのため、粉砕して得られた種結晶は、粉砕後、直に使用するか、粉砕後、0℃以上10℃以下の温度範囲で1ヶ月程度まで保存したものを使用することが好ましい。種結晶として使用する微粒子は、デスエチル体が2%以下であることが好ましい。特に、種結晶の生産性、最終的に得られるカンデサルタンシレキセチルの純度を考慮すると、種結晶に含まれるデスエチル体は、0.01%以上1%以下であることがより好ましい。
【0044】
本発明においては、32℃以上38℃以下の温度で30分間以上10時間以下熟成すれば、その後の処理は、特に制限されるものではない。この熟成操作により、最終的に得られるカンデサルタンシレキセチルの粉体に粒子径が100μm以下の硬い粒子が含有されるかが決定されるものと考えられる。そのため、それ以降の条件は、特に制限されるものではないが、カンデサルタンシレキセチルの収量を考慮すると、以下のように処理することが好ましい。例えば、熟成後は、そのまま、より低い温度に冷却し、20℃以上30℃以下に保持した後、さらに冷却してより低い温度としてもよい。
【0045】
特に、カンデサルタンシレキセチルの収量を考慮すると、20℃以上30℃以下の混合液をさらに冷却し、0℃以上15℃以下の温度(冷却到達温度)とすることが好ましい。この際、新たに、メタノール、エタノール、アセトン、水等の溶媒は加えない方がよい。混合溶液の温度を20℃以上30℃以下から0℃以上15℃以下に冷却する際の冷却速度は、特に制限されるものではなく、1℃/時間以上60℃/時間以下とすればよい。また、冷却到達温度に混合液を保持する時間は、特に制限されるものではないが、通常、1時間以上48時間以下であればよい。なお、0℃以上15℃以下に冷却するまでの間、冷却到達温度に達してから保持する間は、溶液を攪拌混合しておくことが好ましい。
【0046】
以上のような方法で粒子径が100μm以上の硬い形状の凝集粒子を含有しない、安定なカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出することができる。得られた結晶は、ろ過や遠心分離などにより固液分離し、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥などにより乾燥することによって分離、回収すればよい。なお、分離された粉体は、溶媒が付着した湿潤状態においては凝集しているが、十分に乾燥した場合には特に解砕操作を行わなくても、或いは解砕操作を必要とする場合であっても(ミル粉砕のような強力な機械粉砕を行わずに)極弱い力をかけるだけでほぐれて、所期の粒度分布を有する微粒子粉体となる。したがって、本発明の方法によって得られる粉体は、非晶質化を引き起こすような機械粉砕を経ていないので、高い安定性、具体的には、相対湿度60%、温度25℃の環境において1年以上保存したときに、前記式(2)で示されるデスエチル体の含有量の増加量が0.05%以下となる安定性を有するカンデサルタンシレキセチルの粉体を得ることができる。
【0047】
また、得られたカンデサルタンシレキセチルの粉体は、下記の実施例の測定条件において、体積平均粒子径d50が15μm以下、好ましくは3μm以上12μm以下、より好ましくは5μm以上10μm以下のものであり、累積体積99%粒子径d99が90μm以下、より好ましくは60μm以下であって、実質的に粒子径が100μm以上の硬い形状の凝集粒子を含有しないカンデサルタンシレキセチルの微粒子粉体を得ることができる。そのため、粉砕することなく、そのまま医薬品として実使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
なお、実施例、比較例で得られたカンデサルタンシレキセチルの粒子径の測定、純度測定、デスエチル体の含有量の測定、粉末X線回折の測定、走査型電子顕微鏡の測定、融点の測定は、以下のように行った。
また、実施例、比較例では製造スケールが異なるため、各撹拌速度は撹拌動力を合わせて行った。
【0049】
<カンデサルタンシレキセチルの純度、デスエチル体の含有量の測定>
装置:高速液体クロマトグラフィー
機種:2695−2489−996(Waters社製)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム:Inertsil ODS−3、内径4.6mm、長さ15cm(粒子径5μm、細孔径12nm)(株式会社ジーエルサイエンス製)
カラム温度:40℃一定
サンプル温度:25℃一定
移動相:アセトニトリル/1%酢酸水溶液=80/20
流量:1.5ml/分
上記条件において、カンデサルタンシレキセチルは約4.9分にピークが確認され、デスエチル体は、約3.0分にピークが確認される。以下の実施例、比較例において、カンデサルタンシレキセチルの純度、デスエチル体の含有量は共に、上記条件で測定したピーク面積%の値である。
【0050】
<粒子径測定方法>
装置:レーザー回折方式粒度分布計
機種:Helos&Rodos system(Sympatec社製)
計算方法:Windox5.2
分散圧:1.5bar
引圧:0
回転:なし
以上の条件により、体積粒度分布を求めた。
<カンデサルタンシレキセチルの粉末X線回折の測定>
装置:X線回折装置
機種:RINT(株式会社リガク製)
X線出力:30mA、40kV
波長:CuKa/1.541858Å
スキャン速度:10℃/分
<カンデサルタンシレキセチルの走査型電子顕微鏡の測定>
装置:走査型電子顕微鏡(SEM)
機種:S−3400N(日立社製)
試料をPtコーティング後、上記装置にて測定した。
<カンデサルタンシレキセチルの融点>
装置:融点測定装置
機種:B−540(柴田科学株式会社製)
昇温速度:150℃から180℃まで1℃/分
【0051】
製造例1(カンデサルタンシレキセチルの製造)
容量100Lの4つ口フラスコに、トリチルカンデサルタンシレキセチル10.86kg、クロロホルム13L、メタノール44Lを加え、60℃で4時間反応した(反応終了時、カンデサルタンシレキセチルの純度は96.4%、デスエチル体の含有量は1.08%であった。)。反応後、45℃で溶媒を減圧濃縮し、アセトン33Lを加え、10℃以上30℃以下で終夜撹拌した。次いで、0℃で2時間撹拌後、析出した結晶を遠心分離して分取し、第二粗体の湿体を得た(カンデサルタンシレキセチルの純度99.7%、デスエチル体0.11%)。この第二粗体を52.5Lのアセトンに50℃で溶解し、溶解後、冷却して27℃とした。この溶液に17.5Lの水を加え、20℃以上30℃以下で終夜撹拌した。次いで、0℃で2時間撹拌後、析出した結晶を遠心分離して分取し、該結晶を乾燥し、カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%の第三粗体を4.96kg得た。
【0052】
実施例1
直径37cmの3枚後退翼を供えた50L反応機に、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)3.75kg、アセトン17.8kgを仕込んで、撹拌速度188rpmで撹拌し、還流温度(約56℃)まで加熱し、カンデサルタンシレキセチルを溶解させた。溶解後、水7.5kgを加え、攪拌しながら溶液の温度を55℃とした。その後、溶液を攪拌しながら溶液の温度を35℃まで冷却した。
さらに、その後、溶液を5時間攪拌熟成し、冷却して5℃とした。得られた溶液には、結晶が析出しており、遠心分離機で結晶を分取し、乾燥した。得られた結晶は、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.01%)のカンデサルタンシレキセチルであった(収量27.1g(収率90%))。このカンデサルタンシレキセチルの結晶は、手触りではゴロゴロした感触が無く、粒度分布測定、電子顕微鏡測定において、粒子径が100μm以上の硬い粒子は確認されなかった。また、体積平均粒子径d50が7.9μm、累積体積99%粒子径d99が41.0μmであった。また、融点は163.2℃であり、粉末X線回折測定によって、フォームI結晶であることが確認された。
【0053】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図1に示した。
このカンデサルタンシレキセチルの粉末X線回折を図2に示した。
このカンデサルタンシレキセチルのSEM画像を図3に示した。
【0054】
このカンデサルタンシレキセチルについて、保存安定性試験を、25℃、60%RH(相対湿度60%)の環境下、40℃、75%RH(相対湿度75%)の環境下、60℃、90%RH(相対湿度90%)の環境下において、それぞれ12ヶ月までの期間行った。結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例2
直径12cmの2枚撹拌翼を供えた10Lの4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)300g、メタノール2.0Lを仕込んで、撹拌速度400rpmで撹拌し、55℃の温度で加熱溶解させた。次いで、冷却し、34℃で約6時間撹拌した。その後5℃まで冷却し、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.02%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量240.2g(収率80%))。このカンデサルタンシレキセチルの結晶は、手触りではゴロゴロした感触が無く、粒度分布測定、電子顕微鏡測定において、粒子径が100μm以上の硬い粒子は確認されなかった。また、体積平均粒子径d50が7.4μm、累積体積99%粒子径d99が43.9μmであった。また、融点は163.8℃であり、フォームI結晶であることが確認された。
【0057】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図4に示した。
このカンデサルタンシレキセチルのSEM画像を図5に示した。
【0058】
このカンデサルタンシレキセチルについて、保存安定性試験を、25℃、60%RH(相対湿度60%)の環境下、40℃、75%RH(相対湿度75%)の環境下、60℃、90%RH(相対湿度90%)の環境下において、それぞれ12ヶ月までの期間行った。結果を表1に示した。
【0059】
実施例3
直径12cmの2枚撹拌翼を供えた10Lの4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)300g、エタノール3.6Lを仕込んで、撹拌速度400rpmで撹拌し、55℃の温度で加熱溶解させた。次いで、冷却し、34℃で約6時間撹拌した。その後5℃まで冷却し、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.02%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量246.1g(収率82%))。このカンデサルタンシレキセチルの結晶は、手触りではゴロゴロした感触が無く、粒度分布測定、電子顕微鏡測定において、粒子径が100μm以上の硬い粒子は確認されなかった。また、体積平均粒子径d50が6.8μm、累積体積99%粒子径d99が46.6μmであった。また、融点は163.8℃であり、フォームI結晶であることが確認された。
【0060】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図6に示した。
【0061】
比較例1
直径12cmの2枚撹拌翼を供えた5Lの4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)300g、アセトン4.5Lを仕込んで、撹拌速度400rpmで撹拌し、40℃以上50℃以下の温度で加熱し、カンデサルタンシレキセチルを溶解させた。次いで、減圧濃縮し、カンデサルタンシレキセチルの濃度を約30%w/w(アセトン量1.25L)とした。予め60℃まで加熱した純水100mlを添加し、約10分間撹拌した。純水200mlを約5分間で滴下し、53℃で約1時間撹拌した。30℃まで約30分間(冷却速度46℃/時間)で冷却し、アセトン/水=3/1の混合液を300ml添加し、1℃まで冷却し、1℃で1時間撹拌した後、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.05%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量274.8g(収率92%))。このカンデサルタンシレキセチルの結晶は、手触りはゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると100μm以上にも分布が観測された。また、体積平均粒子径d50が4.2μm、累計体積99%粒子径d99が137.6μmであった。さらに、1000μmの篩がけを行い、得られた結晶のSEM画像を確認したところ、図7に示した200μm程度の硬い粒子が存在することが分かった。
【0062】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図7に示した。
このカンデサルタンシレキセチルのSEM画像を図8に示した。
【0063】
このカンデサルタンシレキセチルの粉体2kgを、日本ニューマチック工業社製ジェットミル(型式PJM−100)を用いて、供給速度2.5kg/時間、粉砕圧力0.6MPaで粉砕し、カンデサルタンシレキセチルの粉砕粉体1.12kg(回収率56%)を得た。このカンデサルタンシレキセチルの粉砕粉体は、手触りではゴロゴロした感触が無く、粒度分布測定、電子顕微鏡測定において、粒子径が100μm以上の硬い粒子は確認されなかった。また、体積平均粒子径d50が1.1μm、累積体積99%粒子径d99が3.1μmであった。
このカンデサルタンシレキセチルの粉砕粉体について、保存安定性試験を、25℃、60%RH(相対湿度60%)の環境下、40℃、75%RH(相対湿度75%)の環境下、60℃、90%RH(相対湿度90%)の環境下において、それぞれ12ヶ月までの期間行った。結果を表1に示した。
【0064】
比較例2
直径5cmの2枚撹拌翼を供えた500mlの4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)30g、メタノール163mlを仕込んで、撹拌速度700rpmで撹拌し、還流温度まで加熱し溶解させた。この溶液を23℃まで冷却し、4時間撹拌後、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.8%(デスエチル体の含有量0.10%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量25.5g(収率85%))。このカンデサルタンシレキセチル結晶の手触りはゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると100μm以上にも分布が観測された。また、体積平均粒子径d50が3.3μm、累積体積99%粒子径d99が138.7μmであった。
【0065】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図9に示した。
【0066】
比較例3
500ml 4つ口フラスコに、製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)30g、アセトン330mlを仕込んで、還流温度まで加熱し、カンデサルタンシレキセチルを溶解させた(アセトン溶液を調整した。)。直径5cmの2枚撹拌翼を供えた700ml 4つ口フラスコに、水150mlを加え、撹拌速度500rpmで撹拌し、調整したカンデサルタンシレキセチルのアセトン溶液を20〜25℃で添加し、30分間撹拌後、0℃で30分間撹拌した後、遠心分離機で結晶を分取した。乾燥後、純度99.8%(デスエチル体の含有量0.10%)
のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量24.9g(収率83%))。このカンデサルタンシレキセチル結晶の手触りはゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると100μm以上にも分布が観測された。また、体積平均粒子径d50が4.7μm、累積体積99%粒子径d99が283.6μmであった。
【0067】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図10に示した。
【0068】
比較例4
製造例1で得られた第三粗体(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.04%)30gを30℃でメタノール5Lに溶解させ、溶媒を留去し、無定形のカンデサルタンシレキセチルを得た。その粉体にエタノール180mlを加え室温で3時間撹拌した。(撹拌速度700rpm)その後、7℃で1時間撹拌し、結晶を遠心分離し、得られた結晶を乾燥し、純度99.9%(デスエチル体の含有量0.02%)のカンデサルタンシレキセチルが得られた(収量27.2g(収率91%))。このカンデサルタンシレキセチル結晶の手触りはゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると100μm以上にも分布が観測された。
【0069】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図11に示した。
【0070】
比較例5
実施例1で得られたカンデサルタンシレキセチル100gをジェットミルで粉砕し、90gの微粉砕カンデサルタンシレキセチル(カンデサルタンシレキセチルの純度99.9%、デスエチル体の含有量0.09%)を得、その内30gを500ml4つ口フラスコに、メタノール330mlを仕込んで撹拌速度700rpmで25℃、24時間撹拌した。その後、遠心分離し、乾燥した。このカンデサルタンシレキセチル結晶の手触りは若干ゴロゴロした感触があり、粒度分布を測定すると全体的に粒子が小さい傾向にあったが、100μm以上にも分布が観測された。
【0071】
このカンデサルタンシレキセチルの粒度分布を図12に示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるカンデサルタンシレキセチルの粉体であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ=9.8、17.2、20.2、及び25.0±0.2°に特徴的なピークを有する結晶粒子の集合体からなり、15μm以下の体積平均粒子径及び90μm以下の累積体積99%粒子径を有すると共に粒子径が100μm以上である粒子を実質的に含有せず、かつ、相対湿度60%、温度25℃の環境において1年以上保存したときに、下記式(2)で示されるデスエチル体の含有量の増加量が0.05%以下となる安定性を有するカンデサルタンシレキセチルの粉体を製造する方法であって、
炭素数1〜4のケトンおよび水の混合物、または炭素数1〜4のアルコールからなる溶媒に溶媒の温度を、60℃を越える温度とすることなくカンデサルタンシレキセチルを溶解させて、液温が40℃以上60℃以下である溶液を準備する工程、および前記溶液を32℃以上38℃以下に冷却し、該溶液の液温を32℃以上38℃以下で保持することにより、当該溶液からカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記溶液を32℃以上38℃以下の温度で30分間以上10時間以下保持した後、該溶液をさらに冷却し、該溶液の液温を0℃以上15℃以下に保持して、当該溶液からカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒として、ケトン/水の容積比率が4/1〜1/1であるケトンと水の混合物を使用する請求項1または2に記載の方法。
【請求項1】
下記式(1)で示されるカンデサルタンシレキセチルの粉体であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ=9.8、17.2、20.2、及び25.0±0.2°に特徴的なピークを有する結晶粒子の集合体からなり、15μm以下の体積平均粒子径及び90μm以下の累積体積99%粒子径を有すると共に粒子径が100μm以上である粒子を実質的に含有せず、かつ、相対湿度60%、温度25℃の環境において1年以上保存したときに、下記式(2)で示されるデスエチル体の含有量の増加量が0.05%以下となる安定性を有するカンデサルタンシレキセチルの粉体を製造する方法であって、
炭素数1〜4のケトンおよび水の混合物、または炭素数1〜4のアルコールからなる溶媒に溶媒の温度を、60℃を越える温度とすることなくカンデサルタンシレキセチルを溶解させて、液温が40℃以上60℃以下である溶液を準備する工程、および前記溶液を32℃以上38℃以下に冷却し、該溶液の液温を32℃以上38℃以下で保持することにより、当該溶液からカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記溶液を32℃以上38℃以下の温度で30分間以上10時間以下保持した後、該溶液をさらに冷却し、該溶液の液温を0℃以上15℃以下に保持して、当該溶液からカンデサルタンシレキセチルの結晶を析出させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒として、ケトン/水の容積比率が4/1〜1/1であるケトンと水の混合物を使用する請求項1または2に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−87089(P2013−87089A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229150(P2011−229150)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】
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