説明

カンナビノイドの新規キノノイド誘導体及び悪性腫瘍の治療におけるそれらの使用

置換ヒドロキシル基を有する新規カンナビノイド由来のキノン誘導体(キノノイド誘導体)、それを含む医薬組成物、及び抗増殖剤としてのそれらの使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その幾つかの実施形態において、本明細書では互換的にカンナビノイドキノンとも呼ばれるカンナビノイドの新規キノノイド誘導体、それを含む医薬組成物、及び抗癌剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
植物及び動物に存在する様々な化学族のキノンは、生物調節因子として働き、天然及び合成キノンの両方が薬物として広く使用されている。
【0003】
ストレプトマイセスの様々な株によって生成される大きな群のキノノイド化合物であるアントラサイクリンは、抗生物質及び抗新生物効果を発揮し、幾つかの形態の癌を治療するために使用される。この化学族で最も知られているメンバーは、最初に識別されたアントラキノンである、ダウノルビシン及びドキソルビシンである。
【0004】
他のキノンも抗癌薬として使用される。ストレプトマイセスによって生成されるマイトマイシンC及びストレプトニグリン並びに合成エピルビシン及びミトキサントロンは、周知の例である。これら及び他のキノノイド化合物は、多くの異なる形態の癌の治療に効果的であるが、それらの副作用、それらの最も重篤なものである心臓への蓄積毒性によって、それらの使用が制限される。したがって抗新生物活性を示すが毒性の少ないキノノイド化合物の開発は、治療の主な目標である[1〜3]。
【0005】
多数のカンナビノイドが合成されており、様々な疾患のインビトロ及びインビボモデルにおいて試験されてきた[4〜6]。カンナビノイド由来のキノンが説明され、広範な治療上の使用及び指標について研究された[7〜14]。WO2005067917は、抗増殖剤及び抗炎症剤として有用なキノノイド誘導体を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、その幾つかの実施形態において、新規カンナビノイド由来のキノン誘導体を提供する。本発明はさらに、これらのカンナビノイド由来のキノン誘導体を含有する医薬組成物、並びに増殖性疾患及び障害の治療におけるそれらの使用を提供する。
【0007】
したがって本発明の一態様によれば、一般式I
【化1】


を有する化合物、そのエナンチオマー、水和物、溶媒和物又は薬学的に許容できる塩が提供され、
式中、
Aは、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換ヘテロ脂環式、非置換又は置換アリール、及び非置換又は置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
は、水素、及び1〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキルからなる群から選択され、
は、1〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキル、アルコキシ及びアリールオキシからなる群から選択され、
Dは、NR、O及びSからなる群から選択され、
は、1〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキルである。
【0008】
本明細書に記載の本発明の幾つかの実施形態におけるさらなる特徴によれば、DはOである。
【0009】
本明細書に記載の本発明の幾つかの実施形態におけるまたさらなる特徴によれば、Aは、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換ヘテロ脂環式、及び非置換又は置換ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0010】
本明細書に記載の本発明の幾つかの実施形態におけるまたさらなる特徴によれば、Aは、非置換又は置換ヘテロ脂環式である。
【0011】
本明細書に記載の本発明の幾つかの実施形態におけるまたさらなる特徴によれば、Rは、ペンチル及びジメチル−ヘプチルからなる群から選択される。
【0012】
幾つかの実施形態におけるまたさらなる特徴によれば、Rは水素であり、Aは1−メチルピペリジン−4−イルである。
【0013】
幾つかの実施形態におけるまたさらなる特徴によれば、Aは、非置換又は置換シクロアルキルである。
【0014】
幾つかの実施形態におけるまたさらなる特徴によれば、シクロアルキルは、単環式非置換又は置換シクロアルキル及び二環式非置換又は置換シクロアルキルからなる群から選択される。
【0015】
幾つかの実施形態におけるまたさらなる特徴によれば、二環式非置換又は置換シクロアルキルは、非置換又は置換ピネンである。
【0016】
幾つかの実施形態におけるまたさらなる特徴によれば、単環式非置換又は置換シクロアルキルは、一般式IIを有し、
【化2】


式中、
及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシル、カルボニル、ホルミル、アセチル及びアミンからなる群から選択され、
破線は単結合又は二重結合であり、
波線は、R又はS立体配置を有する結合である。
【0017】
幾つかの実施形態におけるまたさらなる特徴によれば、Rは、6〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキル、及び1〜10個の炭素原子を有する置換の分岐又は直鎖アルキルからなる群から選択される。
【0018】
幾つかの実施形態における他の特徴によれば、Rは、1〜5個の炭素原子を有する置換の分岐又は直鎖アルキルである。
【0019】
幾つかの実施形態における他の特徴によれば、Aは、3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニルである。
【0020】
幾つかの実施形態における他の特徴によれば、Rは、2−イル−酢酸、エチル2−イル−アセテート、エトキシ−2−オキソ−エタン−1−イル、エタノール−2−イル、エタンアミン−2−イル、N−Boc−エタンアミン−2−イル、N−Fmoc−エタンアミン−2−イル、3−モルホリノプロパノイル及びアセトニトリル−2−イルからなる群から選択される。
【0021】
幾つかの実施形態における他の特徴によれば、Rは、エトキシ−2−オキソ−エタン−1−イル、2−イル−酢酸、エタノール−2−イル及びエタンアミン−2−イルからなる群から選択される。
【0022】
幾つかの実施形態における他の特徴によれば、Rは、ペンチル及びジメチル−ヘプチルからなる群から選択される。
【0023】
幾つかの実施形態における他の特徴によれば、Rは1−ペンチルである。
【0024】
幾つかの実施形態における他の特徴によれば、Rは、ペンチル及びジメチル−ヘプチルからなる群から選択される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、
エチル2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)アセテート(HU−701)、
2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)酢酸(HU−702)、
3−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−5−ペンチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(HU−703)、
3−(2−アミノエトキシ)−2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−5−ペンチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(HU−704)、
3−ヒドロキシ−2−(1−メチルピペリジン−4−イル)−5−ペンチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(HU−705)
からなる群から選択される化合物、並びにそれらの任意のエナンチオマー、水和物、溶媒和物又は薬学的に許容できる塩が提供される。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態における特徴によれば、本明細書に提示の化合物は、抗増殖活性を示す。
【0027】
したがって本発明の別の態様によれば、本明細書に提示の化合物を有効成分として含む医薬組成物が提供される。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態における特徴によれば、医薬組成物は、増殖性疾患又は障害の治療における使用のために、包装材料に包装され、その包装材料の中又は上の印刷により識別される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、本明細書に提示の治療有効量の化合物を、それを必要としている患者に投与することによって行われる、増殖性疾患又は障害の治療方法が提供される。
【0030】
本発明の別の態様によれば、医薬品の調製における本明細書に提示の化合物の使用が提供される。
【0031】
幾つかの実施形態における特徴によれば、医薬品は、増殖性疾患又は障害の治療のためのものである。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態における特徴によれば、増殖性疾患又は障害は、悪性増殖性疾患又は障害、非悪性増殖性疾患又は障害、先天的増殖性疾患又は障害、及び後天的増殖性疾患又は障害からなる群から選択される。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態における特徴によれば、悪性増殖性疾患又は障害は、芽腫、癌腫、リンパ腫、白血病、肉腫、中皮腫、神経膠腫、胚細胞腫、絨毛癌、黒色腫、グリア芽腫、リンパ性悪性腫瘍、及び任意の他の新生物性(癌性)疾患又は障害からなる群から選択される。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態における特徴によれば、非悪性増殖性疾患又は障害は、乾癬、子宮内膜症、強皮症、血管疾患、結腸ポリープ、線維腺腫及び呼吸器疾患からなる群から選択される。
【0035】
別段定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものに類似の又はそれと等価の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む本明細書によって調節されよう。さらに、材料、方法及び実施例は、単に例示的であり、限定的なものではない。
【0036】
「含む」という用語は、最終結果に影響を与えない他のステップ及び成分が追加され得ることを意味する。この用語は、「からなる」及び「実質的に〜からなる」を包含する。
【0037】
「実質的に〜からなる」という句は、追加の成分及び/又はステップが特許請求される組成物又は方法の基本的及び新規特徴を実質的に変えない限り、組成物又は方法が、その追加の成分及び/又はステップを含み得ることを意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈によって別段明白に示されない限り、複数の参照物を含む。例えば、「一化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含むことができる。
【0039】
この開示を通して、本発明の様々な態様を様々な形式で提供することができる。様々な形式における説明は、単に便宜上、及び簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する確固たる制約と解釈するべきでないことを理解されたい。したがって、ある範囲の説明は、可能なあらゆる部分範囲並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1〜6などのある範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5及び6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、その範囲の幅に関わらず適用される。
【0040】
本明細書で使用される場合、初めから終わりまで「約」という用語は+10%を指す。
【0041】
数値範囲が本明細書で示される場合はいつでも、示された範囲内の任意に引用される数(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲/範囲をとる」及び第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲/範囲をとる」という句は、本明細書では互換的に使用され、第1及び第2の指示された数、並びにその間のあらゆる分数及び整数値を含むことを意味する。
【0042】
本発明を、単なる例示目的により添付の図を参照することによって、ここに記載する。ここで詳細な図に特に関連して、示されている個々の項目は単に一例であり、本発明の実施形態を例示的に論じる目的のためのものであり、本発明の原理及び概念的態様の最も有用で容易に理解される説明になると考えられているものを提供するために提示されることを強調しておく。これに関連して、本発明の基本的な理解のために、必要以上に詳細に本発明の構造的な詳細を示す試みはなされず、本発明の幾つかの形態が実際どのように実施され得るかを当業者に明らかにする図によって説明する。図は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の幾つかの実施形態の例示的化合物、HU−701、HU−702、HU−703、HU−704及びHU−705を使用して実施し、HU−331と比較した、ジャーカットヒトリンパ腫細胞系でのインビトロ細胞増殖アッセイの結果を示す図である。
【図2】本発明の幾つかの実施形態の例示的化合物、HU−701、HU−702、HU−703、HU−704及びHU−705を使用し、HU−331と比較した、ヒト結腸癌HT−29細胞系のインビトロ細胞増殖アッセイの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、その幾つかの実施形態において、本明細書では互換的にキノノイド誘導体とも呼ばれる新規カンナビノイド由来のキノン誘導体化合物を提供する。本発明はさらに、これらのキノノイド誘導体を含有する医薬組成物並びに増殖性疾患及び障害の治療におけるそれらの使用を提供する。
【0045】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳説する前に、本発明は、その用途において、以下の説明に示される、並びに/或いは図及び/又は実施例に例示されている成分及び/又は方法の構成及び配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々なやり方で実施又は実行することができる。
【0046】
前述のように、カンナビノイド由来のキノン誘導体化合物の研究が過去に準備され、潜在的な抗癌剤として評価された([8、3、14〜16]及びWO2005067917)。本発明の幾つかの実施形態は、改善された抗増殖活性を示す、本明細書では互換的にキノノイド誘導体又はカンナビノイド由来のキノンとも呼ばれる新規カンナビノイド由来のキノン誘導体化合物を提供する。
【0047】
本発明の着想の間、幾つかのカンナビノイド誘導体の中心の芳香環上のヒドロキシル基に対して、幾つかの種類の置換基を導入することによって、改善された可溶性を有し、したがってそれらの治療価値の著しい改善をもたらす、より活性な化合物が提供されることが見出された。
【0048】
本発明を実行に移す間、本明細書に開示の新規カンナビノイド由来のキノンを、医薬用抗増殖剤として評価した。したがって本発明は、これらのキノン誘導体の医薬上の使用を、特にインビトロ及びインビボでのそれらの強力な抗新生物及び抗癌活性に関して包含する。
【0049】
したがって本発明の一態様によれば、一般式I
【化3】


を有する化合物が提供され、
式中、
Aは、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換ヘテロ脂環式、非置換又は置換アリール、及び非置換又は置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
は、水素、及び1〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキルからなる群から選択され、
は、1〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキル、アルコキシ及びアリールオキシからなる群から選択され、
Dは、NR、O及びSからなる群から選択され、
は、1〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキルである。
【0050】
本発明の実施形態はさらに、本明細書に記載の化合物の任意のエナンチオマー、プロドラッグ、溶媒和物、水和物及び/又は薬学的に許容できる塩を包含する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「エナンチオマー」という用語は、互いの完全な反転/反射(鏡像)によってのみその対応物と重ね合わせることができる化合物の立体異性体を指す。エナンチオマーは、それらが右手と左手のように互いに参照することから、「対掌性」を有すると言われている。エナンチオマーは、あらゆる生物系などの、それ自体対掌性を有する環境に存在する場合を除き、同一の化学及び物理特性を有する。
【0052】
「プロドラッグ」という用語は、インビボで活性な化合物(活性な親薬物)に変換される薬剤を指す。プロドラッグは一般に、親薬物の投与を容易にするのに有用である。それらは、例えば経口投与によって生体利用できるが、親薬物はそうではない。プロドラッグはまた、医薬組成物における親薬物と比較して改善された可溶性を有することができる。プロドラッグはまた、インビボでの活性化合物の持続放出を達成するためにしばしば使用される。それに限定されるものではないが、プロドラッグの一例は、エステルとして投与される1つ若しくは複数のカルボン酸部分、又はアミドとして投与されるアミン基を有する本明細書に提示の化合物(「プロドラッグ」)となろう。かかるプロドラッグは、インビボで加水分解され、それによって遊離化合物(親薬物)が提供される。選択されたエステルは、プロドラッグの可溶特性及び加水分解速度の両方に影響を与え得る。本発明の幾つかの実施形態のプロドラッグは、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等を使用して製造することができる。
【0053】
「溶媒和物」という用語は、可変の化学量論(例えば、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−等)の複合体を指し、これは溶媒が溶質の生物活性を妨害しない溶質(本発明の化合物)及び溶媒によって形成される。適切な溶媒には、例えばエタノール、酢酸等が含まれる。
【0054】
「水和物」という用語は、溶媒が水である、先に定義の溶媒和物を指す。
【0055】
「薬学的に許容できる塩」という句は、一般に、親化合物の可溶特性を改変し、且つ/又は親化合物によって有機体への任意の著しい刺激を低減するために使用されるが、投与される化合物の生物活性及び特性を無効にしない親化合物の荷電種及びその対イオンを指す。それに限定されるものではないが、薬学的に許容できる塩の一例は、カルボン酸アニオン、及びそれに限定されるものではないが、アンモニウム、ナトリウム、カリウムなどのカチオンとなろう。
【0056】
例えば、DがOであり、Rが、カルボキシル基で置換されているアルキルである化合物(例えば、以下の実施例部分でHU−702を参照のこと)は、以前から知られているキノノイド誘導体の濃度よりもはるかに高い濃度の水性媒体に高度に可溶性であることによって、改善された生体利用能プロファイルを示す。さらに、かかるキノノイド誘導体は、例えば、ナトリウム、カリウム、エチレンジアミン、エタノールアミン、カルシウム、デアノール、マグネシウム、亜鉛、ピペラジン、ジエタノールアミン、ピロリジン、ベタイン、トロメタミン、コリン、リシン、モルホリン、トリエタノールアミン、アルギニン、N−メチルグルカミンなどのカチオンを有する多数の薬学的に許容できる塩のアニオンに容易に変換することができる。或いは、かかる誘導体は、エチルエステルHU−701(以下の表1参照)などのエステルに容易に変えることができ、化合物HU−702のプロドラッグとして投与することができる。
【0057】
別の例では、DがN(窒素)、即ち第2級又は第3級アミンである化合物、親化合物は、正に帯電するように、したがって塩のカチオンになるようにイオン化することができる。
【0058】
さらに別の例では、R又はAのいずれか一方の上にアミン基を含有する化合物は、薬学的に許容できる酸付加塩のカチオンに変換することができる。
【0059】
当技術分野で周知の通り「酸付加塩」という句は、特定の化学量論的割合で適切な条件下で相互反応する場合、ベース部分の1つ又は複数のカチオン及び酸部分の1つ又は複数のアニオンを含む塩を形成する、2つのイオン化部分、塩基及び酸の錯体を説明している。本明細書で使用される場合、「酸付加塩」という句は、塩基部分がアミンであり、したがってその塩が、アミンのカチオン形態(アンモニウム)及び酸のアニオン形態を含むような錯体を指す。
【0060】
以下に詳説する通り、塩錯体中の塩基及び酸の化学量論的割合に応じて、酸付加塩は、単付加塩又は重付加塩のいずれかであってよい。
【0061】
「単付加塩」という句は、本明細書で使用される場合、酸アニオン及びアミンカチオンの化学量論的割合が1:1であり、したがって酸付加塩が、共役1モル当量当たり酸1モル当量を含む塩錯体を指す。
【0062】
「重付加塩」という句は、本明細書で使用される場合、酸アニオン及びアミンカチオンの化学量論比が1:1を超え、例えば2:1、3:1、4:1等であり、したがって酸付加塩が、共役1モル当量当たり酸2モル当量以上を含む塩錯体を指す。
【0063】
本発明の幾つかの実施形態の塩錯体の塩基及び酸の化学量論的割合は、塩基:酸6:1〜1:6当量、塩基:酸4:1〜1:4当量、塩基:酸3:1〜1:3当量、又は塩基:酸1:1〜1:3当量の範囲である。
【0064】
したがって、本発明の化学共役の酸付加塩は、化合物の1つ又は複数のアミノ基と、1当量又は複数当量の酸とで形成された錯体である。したがって酸付加塩は、それに限定されるものではないが、塩酸付加塩(並びに臭化物及びヨウ化物の塩)を提供する塩酸などのハロゲン酸、酢酸付加塩を提供する酢酸、アスコルビン酸付加塩を提供するアスコルビン酸、安息香酸付加塩(ベンゾエート)を提供する安息香酸、ベンゼンスルホン酸付加塩を提供するベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸付加塩を提供するカンファースルホン酸、ナフチルスルホン酸付加塩を提供するナフチルスルホン酸、トルエンスルホン酸付加塩(トシレート)を提供するトルエンスルホン酸(p−トルエンスルホン酸)、トリフルオロ酢酸付加塩を提供するトリフルオロ酢酸、クエン酸付加塩を提供するクエン酸、マレイン酸付加塩(マレエート)を提供するマレイン酸、メタンスルホン酸(メシレート又はメタンスルホネート)付加塩を提供するメタンスルホン酸、ナプシレート(napsylate)付加塩を提供するナフタレンスルホン酸、シュウ酸付加塩を提供するシュウ酸、リン酸付加塩を提供するリン酸、コハク酸付加塩(スクシネート)を提供するコハク酸、硫酸付加塩を提供する硫酸、及び酒石酸付加塩を提供する酒石酸などの様々な有機酸及び無機酸を含むことができる。これらの酸付加塩のそれぞれは、酸単付加塩又は酸重付加塩であってよく、これらの用語は、先に定義の通りである。
【0065】
別の例では、R又はA上に1つ又は複数の−OH(ヒドロキシル)又は−NH(アミン)基を含有する本明細書に提示のキノノイド誘導体化合物は、例えば、コハク酸、フマル酸、マレイン酸及び他の適切な酸と結合してプロドラッグを形成することによってプロドラッグに変換することができ、それは、例えばエステラーゼ又はアミダーゼによって体内で酵素的に加水分解され得る。
【0066】
本明細書に提示の全てのキノノイド誘導体化合物(即ちエーテル、エステル、塩、プロドラッグ等)は、過去に説明されたキノノイド誘導体と比較して、水性媒体への可溶性が相当高い。
【0067】
前述のように、Aは、飽和、部分的に飽和の又は芳香族であってよい環式部分であり(シクロアルキル又はアリール)、これは環の一部として1つ又は複数のヘテロ原子を有することができ(ヘテロ脂環式又はヘテロアリール)、さらに置換されていても、置換されていてもよい。
【0068】
「シクロアルキル」(脂環式としても公知)という用語は、本明細書で使用される場合、環の1つ又は複数が完全共役したπ−電子系を有していない、全て炭素の単環式又は縮合環(即ち、炭素原子の隣接した対を共有する環)を説明している。シクロアルキルは、置換されていなくても、1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば本明細書で定義されている、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン(ハロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロアルキル、アミン、カルボニル、カルボキシル、アミド、チオアミド、シアノ及びカルバメート、並びにそれらの組合せであってよい。
【0069】
「ヘテロ脂環式」という用語は、環(複数可)の中に、窒素、酸素及び硫黄などの1つ又は複数の原子を有する単環式又は縮合環基を説明している。これらの環は、1つ又は複数の二重結合を有することもできる。しかしこれらの環は、完全共役したπ−電子系を有していない。ヘテロ脂環式は、シクロアルキルについて前述のように、置換されていなくてもよく、1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。ヘテロ脂環式の代表例には、それに限定されるものではないが、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ等が含まれる。
【0070】
「アリール」という用語は、完全共役したπ−電子系を有する、全て炭素の単環式又は縮合環の多環式(即ち、炭素原子の隣接した対を共有する環)基を説明している。アリール基は、シクロアルキルについて前述のように、置換されていなくてもよく、1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。
【0071】
「ヘテロアリール」という用語は、環(複数可)の中に、例えば窒素、酸素及び硫黄などの1つ又は複数の原子を有し、さらに、完全共役したπ−電子系を有する、単環式又は縮合環(即ち、炭素原子の隣接した対を共有する環)基を説明している。ヘテロアリール基は、シクロアルキルについて前述のように、置換されていなくてもよく、1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例には、それに限定されるものではないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン及びプリンが含まれる。
【0072】
式IにAを包含することができる部分の代表的な基には、本発明の幾つかの実施形態に従って、それに限定されるものではないが、[1,2]ジアゾカン−3−オン、[1,3]ジアゾカン−2−オン、[1,4]ジアゾカン、[1,4]オキサゼパン、1,2,3−トリアジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアジン、1,2,4−トリアゾール、1,2−ジアゼピン、1,2−オキサチエパン、1,2−オキサチオラン、1,2−オキサジン、1,2−チアジン、1,3,5−トリアジン、1,3−ジアゼピン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキソレン、1,3−オキサジン、1,3−チアジン、1,3−チアゾール、1,4−ジアザパン、1,4−ジアゼピン、1,4−オキサゼパン、1,4−オキサジン、1,4−チアジン、2−イソキサゾリン、5,6,7,8−テトラヒドロ−1H−アゾシン−2−オン、アクリジン、アザスピロデカン、アゼピン、アゼチジン、アジリジン、アジリン、アゾカン、アゾカン−2−オン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、カルバゾール、シンノリン、シクロヘキシル、ジアジリジン、ジアジリン、ジオキサン、ジオキサジン、ジオキサゾール、ジオキシン、ジオキソラン、ジオキソール、ジチアン、ジチアジン、ジチアゾール、ジチオラン、フラン、イミダゾール、イミダゾリジン、イミダゾリン、イミダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソインドール、イソキノリン、イソチアゾール、イソチアゾリジン、イソチアゾリン、イソキサゾール、イソキサゾリジン、イソキサゾリン、ケトピペラジン、モルホリン、ナフチリジン、オキサジアジン、オキサジアゾール、オキサチアゾール、オキサチアゾリジン、オキサジン、オキサジリジン、オキサゾール、オキシラン、オキソカン−2−オン、オキソカン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フェニル、フタラジン、ピペラジン、ピペリジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリン、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、ピロリジノン、ピロリン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピリジン、テトラジン、テトラゾール、チアジアジン、チアジアゾール、チアナフタレン、チアトリアゾール、チアジン、チアゾール、チアゾリジン、チアゾリン、チエニル、チエタン、チオモルホリン、チオフェン、チオピラン、トリアジン、トリアゾール及びトリチアンが含まれる。
【0073】
Aがシクロアルキル又はアリール部分であり、DがO(酸素)であり、Rが水素又は1〜5個の炭素原子を有する非置換の分岐若しくは直鎖アルキルである、一般式Iを有する化合物は、過去に記載されており(例えばWO2005067917)、したがって本発明のこの態様の範囲から排除される。
【0074】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖及び分岐鎖の基を含む脂肪族炭化水素を説明している。幾つかの実施形態によれば、別段の指定がない限り、アルキル基は、1〜10個の炭素原子、他の実施形態によれば1〜5個の炭素原子、さらに他の実施形態によれば6〜10個の炭素原子、さらに他の実施形態によれば4〜6個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1〜10」が本明細書で示される場合、それはその基、この場合はアルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、最大10個を含む炭素原子を含有できることを意味する。アルキルは、置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば本明細書で定義されている、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン(ハロ)、ヒドロキシ、オキソ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロアルキル、アミン、カルボニル、カルボキシル、アミド、チオアミド、シアノ及びカルバメートであってよい。
【0075】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、飽和又は不飽和の炭化水素も包含し、したがってこの用語はさらに、アルケニル及びアルキニルを包含する。
【0076】
「アルケニル」という用語は、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する、本明細書で定義の不飽和アルキルを説明している。アルケニルは、アルキルについて前述のように、置換されていなくても、1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。
【0077】
「アルキニル」という用語は、本明細書で定義されるように、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する不飽和アルキルである。アルキニルは、アルキルについて前述のように、置換されていなくても、1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。
【0078】
本明細書で使用される場合、「アミン」という用語は、R’及びR”のそれぞれが、独立に水素、本明細書で定義されているアルキル、シクロアルキル、ヘテロ脂環式、アリール又はヘテロアリールである−NR’R”基を説明している。
【0079】
本明細書で使用される場合、本明細書では互換的に「ハロ」、「ハロゲン」及び「ハロゲン化物」を指す用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を説明しており、これらは本明細書では、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物も指している。
【0080】
「ハロアルキル」という用語は、1つ又は複数のハロゲン化物(複数可)でさらに置換されている、先に定義のアルキル基を説明している。
【0081】
「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」という用語は、本明細書で使用される場合、互換的に−OH基を指す。
【0082】
「アルコキシ」という用語は、R’が本明細書で定義されている通りの−OR’基を説明している。
【0083】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、R”がアリールである−OR”基を指す。
【0084】
「チオヒドロキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、−SH基を指す。
【0085】
「チオアルコキシ」という用語は、R’が本明細書に定義されている通りの−SR’基を説明している。
【0086】
「チオアリールオキシ」という用語は、R”がアリールである−SR”基を説明している。
【0087】
「カルボニル」又は「ケトン」という用語は、本明細書で使用される場合、R’が本明細書に定義されている通りの−(C=O)H又は−(C=O)−R’基を指す。例示的カルボニルは、R’が水素であるホルミル基である。別の例示的カルボニルは、R’がメチルであるアセチル基である。
【0088】
「オキソ」という用語は、炭素置換基がカルボニルを構成している(=O)基、即ち二重結合によって結合している酸素を指す。
【0089】
「カルボキシ」、「カルボキシル」又は「カルボン酸塩」という用語は、本明細書で使用される場合、R’がない(カルボン酸アニオンの場合のように)、又は水素(例えば、カルボン酸)、本明細書で定義されているアルキル(例えばエステル)、シクロアルキル、ヘテロ脂環式、アリール若しくはヘテロアリールからなる群から選択され得る−C(=O)−O−R’を互換的に指す。
【0090】
「アミド」という用語は、R’が本明細書で定義されている通りであり、R”がR’について定義されている通りである−C(=O)−NR’R”を説明している。
【0091】
「チオアミド」という用語は、R’が本明細書で定義されている通りであり、R”がR’について定義されている通りである−C(=S)−NR’R”を説明している。
【0092】
「チオイミド」という用語は、R’及びR”が本明細書で定義されている通りである−C(=NR’)−SR”を説明している。
【0093】
「シアノ」という用語は、本明細書で使用される場合、−C≡N基を指す。例えばアセトニトリル置換基は、−CH−基を介して分子に結合し、−CH−C≡N基を構成するシアノ基である。
【0094】
「カルバメート」という用語は、R’及びR”が本明細書で定義されている通りである−OC(=O)−NR’R”を説明している。
【0095】
特定の例示的カルバメートは、アミンがBoc保護基で保護され、tert−ブチルカルバメートを提供する場合に提供される。
【0096】
別の例示的カルバメートは、アミンがFmoc保護基で保護され、(9H−フルオレン−9−イル)メチルカルバメートを提供する場合に提供される。
【0097】
したがって別段の指定がない限り、R及び/又はRは、それぞれ置換されてなくてもよく、又は先に提示した幾つかの基並びにそれらの組合せで置換されていてもよく、特定の化学基のそれぞれについての定義に関わらず、同じ定義が、非置換又は置換と定義される任意の変数に適用されることに留意されたい。
【0098】
式Iに提示のように、Rは、置換されていなくてもよく、又は1〜10個の炭素原子を有する分岐又は直鎖アルキル、アルコキシ若しくはアリールオキシで置換されていてもよい。多数のカンナビノイド及び本発明の幾つかの実施形の化合物態では、式IのR変数に相当する基は、1−ペンチル又はジメチルヘプチル(DMH)である。幾つかの例示的カンナビノイド及び本発明の幾つかの実施形態の化合物では、この基は、例えば1,2−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチルヘプチル等であってよい。
【0099】
任意選択で、Rは、その一方又は両端上で終了している、或いは1つ又は複数の酸素、窒素又は硫黄原子で妨げられている、1〜10個の炭素原子を有するアルキルであってよく、さらに任意選択で、本明細書で定義されているアルコキシ基又はアリールオキシ基で終了していてもよい。
【0100】
幾つかの実施形態では、Rは、5〜12個の炭素原子の直鎖(線状)又は分岐アルキル;基−O−アルキル(このアルキルは、直鎖(線状)又は分岐であり、5〜9個の炭素原子を有する)、或いはフェニル基によって端部の炭素原子で置換されている直鎖(線状)又は分岐アルキル;基−(CH)n−O−アルキル(nは1〜7の整数であり、このアルキル基は1〜5個の炭素原子を含有する)であってよい。
【0101】
前述のように、本発明の幾つかの実施形態では、Aは、先に定義され例示されている非置換又は置換ヘテロ脂環式であってよい。かかる場合において幾つかの実施形態によれば、Rは、水素、又は1〜10個の炭素原子を有する非置換若しくは置換の分岐若しくは直鎖アルキルである。この特定の化合物の群に属するある例示的な化合物は、Rが水素であり、Aが1−メチルピペリジン−4−イルである化合物HU−705(以下の表1参照)である。
【0102】
本発明の他の実施形態によれば、本明細書で提示される新規化合物は、カンナビジオール(CBD)の誘導体であり、したがってAは、単環式非置換又は置換シクロアルキル及び二環式非置換又は置換シクロアルキルであってよい。
【0103】
これらの実施形態の幾つかにおいて、Aは、置換単環式の6員シクロアルキルであってよい。
【0104】
さらに他の実施形態では、置換単環式の6員シクロアルキルは、一般式IIを有する部分であり、
【化4】


式中、
及びRは、それぞれ独立に、水素、先に定義されているアルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシル、カルボニル、ホルミル、アセチル及びアミンからなる群から選択される。
【0105】
式IIの破線のそれぞれは、単結合又は二重結合を表し、波線のそれぞれは、R又はS立体配置を有する結合を表す。
【0106】
及びRのそれぞれは、独立に、その性質及びこれらの基が結合する原子の価数に応じて、単結合又は二重結合を介して一般式IIを有する部分の主要部に結合できることに留意されたい。
【0107】
さらに、式I及び式IIの変数、即ちA、D及びR〜Rのそれぞれ、指示された位置に置かれる結合変数、並びにそれらの任意選択の置換基の実現可能性は、関与する変数、結合又は置換基の価数及び化学的適合性、置換されている位置、及び他の隣接置換基に応じて決まることに留意されたい。したがって本発明の幾つかの実施形態の一般式によって表される化合物は、化学的に実現可能な分子のみを包含し、任意の所与の位置に関して化学的に実現可能な置換基のみを有することを目的とする。
【0108】
Aが一般式IIを有し、Dが酸素であり、Rが1〜5個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキルである化合物は、過去にWO2005067917に説明されており、したがって本発明の実施形態の範囲から排除される。しかし、Dが酸素ではなく、又はAが一般式IIを有していない置換若しくは非置換シクロアルキルであり、又はRが5個を超える炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキルである化合物は、本発明の実施形態の幾つかによって包含される。
【0109】
本発明の幾つかの実施形態によれば、DがOであり、Aが一般式IIを有する部分である場合、本発明の幾つかの実施形態の化合物は、天然に存在するCBD分子の多数の構造的特徴を共有する。薬学的なプロファイルを改善しながら実行可能且つ拡張可能な合成を維持するために、これらの化合物は、それらの調製及びそれらの生体利用能が、変数R〜Rのいずれかにおいて特定の置換基によって改善され、さらに得られる化合物、即ちその塩に変換できる酸又は塩基が、生理的pHでイオン化できる場合に改善されるように、設計且つ選択された。
【0110】
或いは、CBDなどではDがOであり、Aが3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニルであり、Rは、1〜10個の炭素原子を有する置換の分岐又は直鎖アルキル;6〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換アルキル;或いはその一方若しくは両端で終了している又は1つ若しくは複数の酸素、窒素若しくは硫黄原子によって妨げられている非置換又は置換アルキルであってよい。
【0111】
本発明の幾つかの実施形態では、Rは、例えば1〜5個の炭素原子を有する置換されている短い直鎖アルキルである。このアルキルは、例えばオキソ、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン及びニトリルの1つ又は複数によって置換されている。
【0112】
したがって、本発明の幾つかの実施形態によれば、Rは、それに限定されるものではないが、2−イル−酢酸、エチル2−イル−アセテート、エトキシ−2−オキソ−エタン−1−イル、エタノール−2−イル、エタンアミン−2−イル、N−Boc−エタンアミン−2−イル、N−Fmoc−エタンアミン−2−イル、3−モルホリノプロパノイル及びアセトニトリル−2−イルであってよい。
【0113】
他の実施形態によれば、Rは、幾つかの実施形態における他の特徴にしたがって選択され、Rは、エトキシ−2−オキソ−エタン−1−イル、2−イル−酢酸、エタノール−2−イル及びエタンアミン−2−イルからなる群から選択される。
【0114】
さらに、変数Rが1−ペンチルである場合、本発明の実施形態によれば、これらのキノノイド誘導体化合物は、それに限定されるものではないが、エチル2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)アセテート(HU−701)、2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)酢酸(HU−702)、3−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−5−ペンチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(HU−703)、3−(2−アミノエトキシ)−2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−5−ペンチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(HU−704)、及び3−ヒドロキシ−2−(1−メチルピペリジン−4−イル)−5−ペンチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(HU−705)を含む化合物の群の部分であり、それらは全て、以下の実施例部分の表1に提示されている。
【0115】
現在公知であり広く研究されているカンナビノイドの多くは、植物由来であるため、その大きなファミリーはピネン部分を含有しており、これは、本発明の幾つかの実施形態の化合物の幾つか、特にAが一般式IIを有する化合物に見られるように、1−メチル−4−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキサ−1−エン部分のより偏在的な自然変換の1つである。簡潔に述べれば、化合物ピネンは、モノテルペンとしても公知の二環式テルペンであり、α−ピネン配置及びβ−ピネン配置(系統名は、それぞれ(1S,5S)−2,6,6−トリメチルビシクロ[3.1.1]へプト−2−エン及び(1S,5S)−6,6−ジメチル−2−メチレンビシクロ[3.1.1]ヘプタンである)の両方に見られ、これは以下のスキーム1に例示のように、例えば1−メチル−4−(イソプロペン−2−イル)シクロヘキセンカルボカチオン中間体から代謝され、又は合成的に生成され得る。
【化5】

【0116】
Aが置換又は非置換ピネンである式Iに対応する化合物は、過去に説明されておらず、したがって本発明の実施形態の幾つかによって包含される。
【0117】
以下の実施例部分に記載し示すように、本発明の幾つかの実施形態の化合物を、それらの抗増殖活性について試験し、実際に抗癌薬剤及び薬物に対してかなり強力な候補であることが見出された。
【0118】
本明細書で使用される場合、「抗癌活性」という句などの「抗癌性」という用語は、直接的又は間接的に、良性細胞及び組織に対して新生物の細胞及び組織の成長を選択的に阻害することによって、癌を治療するために使用できる物質の治療活性を指す。
【0119】
「新生物組織」という句は、本明細書で使用される場合、一般に悪性腫瘍、新生物又は腫瘍と呼ばれ、総称として癌と呼ばれる、通常明確な細胞の塊を形成する、組織又は臓器における細胞の異常で無秩序な、一般に制御されない増殖及び成長を指す。
【0120】
したがって本発明の別の態様によれば、本明細書に提示の治療有効量の化合物の1つ又は複数、並びに先に定義のそれらのエナンチオマー、水和物、溶媒和物、プロドラッグ又は任意の薬学的に許容できる塩を、それを必要としている対象に投与することによって行われる、増殖性疾患又は障害の治療方法が提供される。
【0121】
本明細書で使用される場合、「増殖性疾患又は障害」という句は、正常な細胞又は組織に局限せずに生じる、一般に制御されずしばしば侵攻性の細胞の成長及び/又は分裂を特徴とする、哺乳動物における異常な、したがって望ましくない生理的状態を説明している。幾つかの増殖性疾患はまた、隣接する組織に侵入しそれを破壊する、侵襲性の細胞の成長及び/又は分裂、並びに/或いは時に体内の他の場所に広がる転移性増殖を特徴とする。
【0122】
本発明の幾つかの実施形態によれば、以下の実施例部分に提示される、表1に提示の治療有効量の化合物の任意の1つ、並びに先に定義のそれらのエナンチオマー、水和物、溶媒和物、プロドラッグ又は任意の薬学的に許容できる塩の1つ又は複数を、それを必要としている対象に投与することによって行われる、増殖性疾患又は障害の治療方法が提供される。
【0123】
本明細書で使用される場合、「治療する」及び「治療」という用語は、状態の進行を停止し、実質的に阻害し、遅延させ、若しくは改善し、状態の臨床的若しくは審美的症候を実質的に緩和し、又は状態の臨床的若しくは審美的症候の出現を実質的に防止することを含む。
【0124】
したがって本発明の別の態様は、本明細書に提示の化合物の1つ又は複数、並びに先に定義のそれらのエナンチオマー、水和物、溶媒和物、プロドラッグ又は任意の薬学的に許容できる塩の、増殖性疾患又は障害の治療のための医薬品の調製における使用を提供する。
【0125】
本発明の幾つかの実施形態によれば、以下の実施例部分に提示される、表1に提示の化合物の任意の1つ、並びに先に定義のそれらのエナンチオマー、水和物、溶媒和物、プロドラッグ又は任意の薬学的に許容できる塩の1つ又は複数の、増殖性疾患又は障害の治療のための医薬品の調製における使用が提供される。
【0126】
増殖性疾患又は障害は、悪性増殖性疾患又は障害、非悪性増殖性疾患又は障害、先天的増殖性疾患又は障害、或いは後天的増殖性疾患又は障害であってよい。
【0127】
本明細書で使用される場合、「悪性」という用語は、罹患している対象にとって潜在的に致命的な脅威をもたらす重篤且つ悪化する進行性疾患を説明するために使用される医学用語である。悪性という用語は、一般に癌を説明するために使用される。したがって、悪性新生物及び悪性腫瘍(malignant tumor)などの悪性腫瘍(malignancy)は、癌と互換的に使用され、また悪性腹水症、悪性転換などの他の腫瘍学用語の接頭辞となる。
【0128】
悪性増殖性疾患又は障害に対抗するために使用される場合、本明細書に提示の抗癌性化合物は、芽腫、癌腫、リンパ腫、白血病、肉腫、中皮腫、神経膠腫、胚細胞腫、絨毛癌、黒色腫、グリア芽腫、リンパ性悪性腫瘍及び任意の他の新生物疾患又は障害など、総称して癌を指す広範囲の癌(新生物)を治療するために使用できる。
【0129】
本発明の幾つかの実施形態の化合物を使用して治療できる癌の他の例には、それに限定されるものではないが、扁平上皮癌(squamous cell cancer)(例えば扁平上皮細胞癌(epithelial squamous cell cancer))、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮細胞癌腫を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃(gastric)癌又は胃(stomach)癌、膵臓癌、グリア芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓又は肝臓(renal)癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓(hepatic)癌腫、肛門癌腫、陰茎癌、並びに頭部及び頸部癌が含まれる。
【0130】
「非悪性」という用語は、直接的な致命的脅威をもたらさない、良性の非癌性又は非新生物性の異常増殖成長を説明するために使用される医学用語である。悪性腫瘍は、悪性腫瘍がその成長において自己限定性でなく、隣接組織に侵入することができ、遠位組織に広がる(転移する)ことができるという点で、非癌性の良性腫瘍と対比することができ、良性腫瘍はこれらの特徴を有していない。
【0131】
したがって本発明の文脈では、良性の増殖性障害は、細胞増殖に関係し、医療関係者によって異常と認識される患者の状態を指す。異常な状態は、障害に罹患していない有機体において観測されるレベルとは統計的に異なるレベルの特性を特徴とする。細胞増殖は、細胞の繁殖による成長又は伸長を指し、細胞分裂を含む。細胞増殖の速度は、所与の時間単位に生成される細胞の数を計数することによって測定できる。良性の増殖性障害の例には、乾癬及びポリープが含まれる。
【0132】
非悪性(良性)増殖性疾患又は障害の他の例には、それに限定されるものではないが、自己免疫疾患(例えば、乾癬、以下の定義参照)、子宮内膜症、強皮症、再狭窄、結腸ポリープ、鼻ポリープ又は胃腸ポリープなどのポリープ、線維腺腫、呼吸器系疾患(以下の定義参照)、胆嚢炎、神経線維腫症;多発性嚢胞腎;炎症性疾患;乾癬及び皮膚炎を含む皮膚障害、血管疾患(以下の定義参照)、血管上皮細胞の異常増殖を伴う状態、胃腸の潰瘍、メネトリエ病、分泌腺腫又はタンパク質喪失症候群、腎障害、血管新生障害、加齢性黄斑変性症、推定眼ヒストプラスマ症候群、増殖性糖尿病網膜症から生じる網膜新生血管、網膜血管化、糖尿病性網膜症、又は加齢性黄斑変性症などの眼疾患、変形性関節炎、くる病及び骨粗鬆症などの骨に関連する病変、脳虚血イベント後の損傷、肝硬変、肺線維症、サルコイドーシス、甲状腺炎、過粘稠度症候群(血液/全身)、オースラーウェーバー−ランデュ病、慢性閉塞性肺疾患又は火傷後の浮腫などの線維性又は浮腫疾患、外傷、放射線、卒中、低酸素症又は虚血、皮膚の過敏性反応、糖尿病性網膜症及び糖尿病性腎症、ギラン−バレー症候群、移植片対宿主病又は移植拒絶反応、パジェット病、骨又は間接の炎症、光による老化(例えばヒトの皮膚のUV放射によって生じるもの)、良性前立腺肥大症、アデノウィルス、ハンタウィルス、ボレリアブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、エルシニア(Yersinia)及び/又はボルデテラ(Bordetella)誘発性百日咳から選択される微生物病原体を含む特定の細菌感染症、血栓によって生じる血小板凝集、子宮内膜症、卵巣過剰刺激症候群、子癇前症、機能性子宮出血(dysfunctional uterine bleeding)又は機能性子宮出血(menometrorrhagia)などの生殖状態、滑膜炎、アテローム、急性及び慢性腎症(増殖性糸球体腎炎及び糖尿病誘発性腎疾患を含む)、湿疹;肥厚性瘢痕形成、内毒素性ショック及び真菌感染症、家族性大腸腺腫症、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、AIDS関連認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症及び小脳変性症)、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、虚血性障害、肺、腎臓又は肝臓の線維症、T細胞媒介性過敏性疾患、乳児肥厚性幽門狭窄症、尿路閉塞症候群、乾癬性関節炎並びに橋本甲状腺炎が含まれる。
【0133】
「呼吸器系疾患」には、本明細書で使用される場合、呼吸器系が伴い、慢性気管支炎、急性喘息及びアレルギー性喘息を含む喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症、アレルギー性又は他の鼻炎又は副鼻腔炎、α1−アンチトリプシン又はα−アンチトリプシン(A1AT)欠乏症、咳、肺気腫、肺線維症又は過反応性気道、慢性閉塞性肺疾患及び慢性閉塞肺障害が含まれる。
【0134】
「自己免疫疾患」は、本明細書で使用される場合、個体自身の組織からそれに対して生じる非悪性疾患又は障害を指す。自己免疫疾患又は障害の例には、それに限定されるものではないが、乾癬及び皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎及び接触性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患などの炎症反応、全身性強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎など)と関連する反応、呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;ARDSを含む)、皮膚炎、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、湿疹及び喘息などのアレルギー状態、並びにT細胞の浸潤及び慢性炎症反応を含む他の状態、アテローム性動脈硬化症、白血球接着不全症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病(例えばI型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病)、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、アレルギー性脳脊髄炎、シューグレン症候群、若年発症糖尿病、一般に結核、サルコイド−シス、多発性筋炎、肉芽腫症及び血管炎に見られるサイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅延型過敏症と関連する免疫反応、悪性貧血(アジソン病)、白血球漏出を伴う疾患、中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器損傷症候群、溶血性貧血(それに限定されるものではないがクリオグロブリン血症又はクームス陽性貧血を含む)、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質症候群、アレルギー性神経炎、グレイブス病、Lambert−Eaton筋無力症候群、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病、スティフマン症候群、ベーチェット病、巨細胞性動脈炎、免疫複合体性腎炎、IgA腎症、IgM多発性神経障害、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、或いは自己免疫性血小板減少症が含まれる。
【0135】
「乾癬」という用語は、本明細書で使用される場合、限局性、離散性及び融合性の、赤色がかった、銀色鱗屑を伴う丘疹の発疹を特徴とする増殖性病状を指す。乾癬病巣は一般に、主に肘、膝、頭皮及び胴体に生じ、特徴的な錯角化症及び乳頭間隆起の伸長を微視的に示す。該用語は、紅皮症性、膿疱性、中程度から重度の難治性形態の疾患を含む様々な形態の乾癬を含む。
【0136】
「子宮内膜症」という用語は、変質した血液を含有する嚢胞を頻繁に形成する子宮内膜組織の異所性発生を指す。
【0137】
「血管疾患又は障害」という句は、本明細書で使用される場合、心臓血管系を含む血管系に影響を及ぼす様々な疾患又は障害を指す。かかる疾患の例には、動脈硬化症、血管再閉塞、アテローム性動脈硬化症、術後血管狭窄、再狭窄、血管閉塞又は頸動脈閉塞性疾患、冠動脈疾患、狭心症、小血管疾患、高コレステロール血症、高血圧、及び血管上皮細胞の異常増殖又は異常機能を伴う状態が含まれる。
【0138】
「狭窄症」という用語は、本明細書で使用される場合、体内の中空通路(例えば管(duct)又は管(canal))の狭窄、又は狭まることを指す。
【0139】
「血管狭窄症」という句は、血管の閉塞又は狭窄を指す。血管狭窄症は、脂肪性沈着物(アテローム性動脈硬化症の場合のように)、又は血管平滑筋細胞及び内皮細胞の過剰遊走及び増殖から生じることが多い。動脈は、特に狭窄を受けやすい。したがって「狭窄」という用語は、本明細書で使用される場合、特に最初の狭窄及び再狭窄を含む。
【0140】
「再狭窄」という用語は、明白な成功を伴う最初の狭窄の治療後の狭窄の発症を指す。例えば、血管狭窄という文脈では、再狭窄は、例えば血管形成術(例えば、経皮経管冠動脈形成術)、方向性冠動脈粥腫切除術又はステントにより脂肪性沈着物を除去することによって、明白な成功を伴って治療された後の血管狭窄の再発症を指す。再狭窄の要因の1つは、内膜過形成である。「内膜過形成」という用語は、「新生内膜過形成」及び「新生内膜形成」と互換的に使用され、血管平滑筋細胞及び内皮細胞の過剰増殖及び遊走の結果としての、血管内部の殆どの層である内膜の肥厚を指す。再狭窄中に生じる様々な変化は、しばしば「血管壁再構築」と総称して呼ばれる。「バルーン血管形成術」及び「経皮経管冠動脈形成術(PTCA)」という用語は、しばしば互換的に使用され、冠状動脈からプラークを除去するための、非外科的カテーテル系治療を指す。狭窄又は再狭窄は、しばしば血流の耐性増加の結果として高血圧をもたらす。
【0141】
「高血圧」という用語は、正常範囲の上の値を超える異常に高い血圧を指す。
【0142】
「ポリープ」という用語は、正常な表面レベルから外側又は内側に膨張又は突出し、それによって比較的幅広の基底又は細長い茎から成長する半球状、長円状、又は不規則な塚のような構造として肉眼で見える組織の塊を指す。それらの例には、結腸、直腸及び鼻ポリープが含まれる。
【0143】
「線維腺腫」という用語は、増殖性線維芽細胞及び結合組織要素の明確な間質が存在する、腺上皮由来の良性新生物を指す。これは一般に、乳房組織に生じる。
【0144】
「喘息」という用語は、呼吸困難をもたらす病状を指す。気管支喘息は、平滑筋の収縮(痙攣)、気管支及び細気管支の内腔の粘液又は粘膜の浮腫に起因し得る、気道の広範な狭窄が存在する肺の状態を指す。「気管支炎」という用語は、気管支の粘膜の炎症を指す。
【0145】
本発明の幾つかの実施形態によれば、本明細書に提示の化合物は、乾癬、子宮内膜症、強皮症、血管疾患、結腸ポリープ、線維腺腫及び呼吸器疾患などの非悪性増殖性疾患又は障害を治療するために使用することができる。
【0146】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という句は、治療される状態の症候の1つ又は複数を、ある程度緩和するはずの投与化合物の量を説明している。
【0147】
以下の実施例部分で示されるように、本発明の化合物の例示的治療有効量は、体重1kg当たり約0.1mg及び体重1kg当たり約100mgの間の範囲である。
【0148】
本明細書に記載の方法及び使用のいずれかにおいて、本発明の実施形態のカンナビジオール誘導体化合物は、それ自体利用することができ、又は幾つかの実施形態によれば、薬学的に許容できる担体をさらに含む医薬組成物の部分として利用することもできる。
【0149】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、先に定義の一般式Iを有する1つ又は複数の化合物、及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物が提供される。
【0150】
本発明の幾つかの実施形態によれば、以下の実施例部分に提示される表1に提示の化合物のいずれか1つ、及び薬学的に許容できる担体、並びに先に定義のその任意のエナンチオマー、水和物、溶媒和物、プロドラッグ又は任意の薬学的に許容できる塩の1つ又は複数を含む医薬組成物が提供される。
【0151】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、本明細書に提示する化合物と、薬学的に許容できる適切な担体及び賦形剤などの他の化学成分との調製物を指す。医薬組成物の目的は、有機体への化合物の投与を容易にすることである。
【0152】
以下、「薬学的に許容できる担体」という用語は、有機体に著しい刺激をもたらさず、投与化合物の生物活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。担体の例は、それに限定されるものではないが、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルション、及び有機溶媒と水の混合物、並びに固体(例えば粉末化)及び気体担体である。
【0153】
本明細書では「賦形剤」という用語は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例には、それに限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類及び様々な種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0154】
薬物の処方及び投与技術は、参照によって本明細書に組み込まれる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」Mack Publishing Co.、ペンシルべニア州イーストン、最新版に見ることができる。
【0155】
したがって、本発明に従って使用される医薬組成物は、化合物を薬学的に使用できる調製物に処理するのを容易にする賦形剤及び助剤を含む1つ又は複数の薬学的に許容できる担体を使用して、従来の方法で処方することができる。適切な処方は、選択される投与経路に依存して決まる。用量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて変わり得る。正確な処方、投与経路及び用量は、患者の状態を鑑みながら担当医によって選択され得る(例えば、Finglら、1975年、「治療の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、第1章、1頁参照)。
【0156】
医薬組成物は、局所又は全身治療又は投与が選択されるかどうか、及び治療される領域に応じて、経路の1つ又は複数で投与するように処方され得る。投与は、経口、吸入、又は非経口、例えば点滴若しくは腹腔内、皮下、筋肉内若しくは静脈注射、又は局所(眼科的、経膣、直腸、鼻腔内を含む)に行うことができる。
【0157】
局所投与のための処方には、それに限定されるものではないが、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、坐剤、ドロップ、液体、スプレー及び粉剤が含まれ得る。従来の薬剤担体である、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤等が必要となり、又は望ましいことがある。
【0158】
経口投与のための組成物には、粉剤若しくは顆粒剤、水若しくは非水性媒体中の懸濁剤若しくは液剤、サシェ、丸薬、カプレット、カプセル又は錠剤が含まれる。増粘剤、希釈剤、風味剤、分散助剤、乳化剤又は結合剤が望ましいこともある。
【0159】
非経口投与用の処方には、それに限定されるものではないが、やはり緩衝剤、希釈剤及び他の適切な添加剤を含有することができる滅菌溶液が含まれ得る。徐放組成物が治療のために想定される。
【0160】
投与される組成物の量は、当然のことながら、治療される対象、疾患の重篤度、投与方法、担当医の判断等に依存して決まることになる。
【0161】
本発明の組成物は、望むならば、有効成分を含有する1つ又は複数の単位剤形を含有することができる、FDA(米食品医薬品局)承認のキットなどの、パック又はディスペンサー装置で提供することができる。そのパックは、例えばそれに限定されるものではないが、ブリスターパック又は加圧容器(吸入用)などの金属又はプラスチックホイルを含むことができる。パック又はディスペンサー装置には、投与のための指示物を添付することができる。パック又はディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用又は販売を規制する行政機関によって指示された形態の容器に関連する通知を添付することができ、ヒト又は動物への投与のための組成物形態のその通知は、該機関の承認を反映するものである。かかる通知は、例えば処方薬のために米食品医薬品局によって承認されたラベルであってよく、又は承認された製品の装入物であってもよい。相溶性のある薬剤担体において処方された本発明の化合物を含む組成物は、先に詳説のように、増殖性疾患又は障害の治療のために調製し、適切な容器に入れ、ラベルを付すこともできる。
【0162】
したがって、本発明の一実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、先に定義の増殖性疾患又は障害の治療における使用のために、包装材料に包装され、該包装材料の中又は上の印刷により識別される。
【0163】
本明細書に提示の方法、使用及び組成物のいずれかのさらなる実施形態によれば、本発明の化合物は、細胞増殖関連の疾患及び障害を治療するために一般に使用される他の有効成分と組み合わせることができる。
【0164】
本発明のさらなる目的、利点、及び新規特徴は、限定するものではない以下の実施例の試験の際に当業者には明らかとなろう。さらに、先に詳説され、以下の特許請求の範囲の部分で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様のそれぞれによって、以下の実施例の実験的確証が得られる。
【実施例】
【0165】
ここで、先の説明と一緒に以下の実施例を参照して、非限定的な方式で本発明を例示する。
【0166】
(実施例1)
化学合成
材料及び方法
全ての化学試薬を、Sigma−Aldrichから購入した。
有機溶媒は、イスラエル、Bio−Lab Ltd.から購入した。
カンナビノイドは、過去に記載の通り[17]、大麻(Cannabis sativa)植物から抽出した。
【0167】
キノノイド誘導体へのカンナビノイド誘導体の酸化−一般手順
一般式I’を有するカンナビノイドを、以下のスキーム2に例示のようにビス[トリフルオロアセトキシ]ヨードベンゼン(BTIB)を使用して、一般式Iを有するキノノイド誘導体に酸化する。
【化6】

【0168】
BTIB(0.3mmol)のアセトニトリル/水(6:1、0.7ml)中溶液を、カンナビノイド(0.15mmol)のアセトニトリル/水(6:1、0.7ml)中溶液に滴加する。反応混合物を、室温で15分間撹拌し、NaHCO飽和水溶液で中和し、ジエチルエーテルで抽出する。その後、有機層を水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製して、キノノイドを得る。
【0169】
エチル2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)アセテート(HU−701)の調製
ビス[トリフルオロアセトキシ]ヨードベンゼン(BTIB)を使用して、先に提示の一般手順に従って先のスキーム2に例示のように、エチル2−(3−ヒドロキシ−2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−5−ペンチルフェノキシ)アセテートを、エチル2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)アセテート(HU−701)に酸化した。
【化7】

【0170】
BTIB(0.3mmol)のアセトニトリル/水(6:1、0.7ml)中溶液を、エチル2−(3−ヒドロキシ−2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−5−ペンチルフェノキシ)アセテート(0.15mmol)のアセトニトリル/水(6:1、0.7ml)中溶液に滴加した。反応混合物を室温で15分間撹拌し、NaHCO飽和水溶液で中和し、ジエチルエーテルで抽出した。その後、有機層を水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製して、エチル2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)アセテート(HU−701)を収率20%で得た。
【0171】
エチル2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)酢酸(HU−702)の調製
【化8】


ビス[トリフルオロアセトキシ]ヨードベンゼン(BTIB)を使用して、先に提示の一般手順に従って先のスキーム2に例示のように、2−(3−ヒドロキシ−2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−5−ペンチルフェノキシ)酢酸を、2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)酢酸(HU−702)に、収率20%で酸化した。
【0172】
先に提示の一般手順に従って先のスキーム2に例示のように、対応するカンナビノイド誘導体化合物から出発して調製した、本発明の実施形態の他の例示的カンナビノイド由来のキノノイド誘導体化合物を、以下の表1に提示する。
【表1−1】


【表1−2】

【0173】
(実施例2)
生物活性
本発明の幾つかの実施形態の例示的カンナビノイド由来のキノノイド誘導体化合物の抗増殖活性を、以下に提示の通り試験した。
【0174】
抗増殖活性アッセイのためのジャーカット細胞の調製
ジャーカット細胞を、37℃において5%のCO湿潤雰囲気下で、20%の加熱不活化したウシ胎仔血清(H−I FCS)、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、及び0.01mg/mlのストレプトマイシンを補充したRPMI 1640培地に懸濁した。HT−29細胞を、37℃において5%のCO湿潤雰囲気下で、10%のH−I FCS、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、及び0.01mg/mlのストレプトマイシンを補充したRPMI 1640培地に懸濁した。
【0175】
細胞増殖試験
癌細胞の懸濁液の一定分量(200μl)を、96ウェルの組織培養プレートに、1ウェル当たり0.02×106個の細胞密度で分注した。様々な濃度のキノノイド誘導体化合物をウェルに導入し、培養開始の3日後に、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイを使用してそれらの有効性を試験した。
【0176】
このアッセイの原理は、様々な化合物への曝露後に生存する細胞が、MTTを暗色のホルマザンに還元することができ、死滅した細胞にはそれができないということにある。アッセイは、過去に説明されている通りに実施した[18〜20]。
【0177】
各MTTアッセイでは、全ての濃度の細胞毒性物質を、マイクロプレートウェル中、5回反復して試験した。全ての細胞系に関するアッセイを、2回から3回の反復実験で実施した。様々な化合物の阻害作用を、ビヒクル(0.5%エタノール)を添加した未処理ウェルで得られた値と比較して、阻害率(%)として算出した。
【0178】
結果
本発明の幾つかの実施形態の幾つかの例示的化合物、即ちHU−701、HU−702、HU−703、HU−704及びHU−705を、ヒトの癌細胞系の成長の阻害について試験し、公知のカンナビノイド系抗癌剤であるHU−331と比較した。生物活性のアッセイの結果を、図1及び2に提示する。
【0179】
図1は、ジャーカットヒトリンパ腫細胞系でのインビトロ細胞増殖アッセイの結果を表す。
【0180】
図2は、ヒト結腸癌HT−29細胞系のインビトロ細胞増殖アッセイの結果を表す。
【0181】
図1及び2から分かるように、本発明の幾つかの実施形態に従って設計した全ての試験化合物は、ヒト癌細胞系の成長を阻害した。図1及び2の両方でさらに分かるように、本明細書に提示の化合物は、HU−331よりも優れた抗増殖活性を示した。
【0182】
明確にするために個々の実施形態の文脈で説明されている本発明の幾つかの特徴は、組合せで、単一の実施形態で提供できることも理解されたい。逆に言えば、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴も、個々に又は任意の適切な下位の組合せで提供することができる。
【0183】
本発明を、その特性の実施形態と共に説明してきたが、当業者には、多くの代替、改変及び変更が明らかになろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の精神及び広範な範囲内にある全てのかかる代替、改変及び変更を包含することを企図する。本明細書で言及した全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個々の刊行物、特許又は特許出願が、参照によってあたかも具体的に個々に本明細書に組み込まれることが示されるのと同じように、参照によってそれらの全てが本明細書に組み込まれる。さらに、本願における任意の参考文献の引用又は識別は、かかる参考文献が本発明にとって従来技術として利用可能ということを承認するものと解釈するべきではない。
【0184】
数字により引用した参考文献(他の参考文献は本文に引用されている)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】


を有する化合物、そのエナンチオマー、水和物、溶媒和物又は薬学的に許容できる塩
[式中、
Aは、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換ヘテロ脂環式、非置換又は置換アリール、及び非置換又は置換ヘテロアリールからなる群から選択され、
は、水素、及び1〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキルからなる群から選択され、
は、1〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキル、アルコキシ及びアリールオキシからなる群から選択され、
Dは、NR、O及びSからなる群から選択され、
は、1〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキルである]。
【請求項2】
DがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換ヘテロ脂環式、及び非置換又は置換ヘテロアリールからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、非置換又は置換ヘテロ脂環式である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
が、ペンチル及びジメチル−ヘプチルからなる群から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が水素である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Aが1−メチルピペリジン−4−イルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Aが非置換又は置換シクロアルキルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項9】
前記シクロアルキルが、単環式非置換又は置換シクロアルキル及び二環式非置換又は置換シクロアルキルからなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記二環式非置換又は置換シクロアルキルが非置換又は置換ピネンである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記単環式非置換又は置換シクロアルキルが、一般式IIを有する、請求項9に記載の化合物。
【化2】


[式中、
及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシル、カルボニル、ホルミル、アセチル及びアミンからなる群から選択され、
破線は単結合又は二重結合であり、
波線はR又はS立体配置を有する結合である]。
【請求項12】
が、6〜10個の炭素原子を有する非置換又は置換の分岐又は直鎖アルキル及び1〜10個の炭素原子を有する置換の分岐又は直鎖アルキルからなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が、1〜5個の炭素原子を有する置換の分岐又は直鎖アルキルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
Aが3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
が、2−イル−酢酸、エチル2−イル−アセテート、エトキシ−2−オキソ−エタン−1−イル、エタノール−2−イル、エタンアミン−2−イル、N−Boc−エタンアミン−2−イル、N−Fmoc−エタンアミン−2−イル、3−モルホリノプロパノイル及びアセトニトリル−2−イルからなる群から選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
が、エトキシ−2−オキソ−エタン−1−イル、2−イル−酢酸、エタノール−2−イル及びエタンアミン−2−イルからなる群から選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
が、ペンチル及びジメチル−ヘプチルからなる群から選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が1−ペンチルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
が、ペンチル及びジメチル−ヘプチルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
抗増殖活性を有する、請求項1から19までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
エチル2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)アセテート(HU−701)、
2−(2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−3,6−ジオキソ−5−ペンチルシクロヘキサ−1,4−ジエニルオキシ)酢酸(HU−702)、
3−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−5−ペンチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(HU−703)、
3−(2−アミノエトキシ)−2−((6R)−3−メチル−6−(プロプ−1−エン−2−イル)シクロヘキス−2−エニル)−5−ペンチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(HU−704)、
3−ヒドロキシ−2−(1−メチルピペリジン−4−イル)−5−ペンチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(HU−705)からなる群から選択される化合物、並びに
その任意のエナンチオマー、水和物、溶媒和物又は薬学的に許容できる塩。
【請求項22】
抗増殖活性を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
請求項1から22までのいずれか一項に記載の化合物を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項24】
増殖性疾患又は障害の治療における使用のために、包装材料に包装され、前記包装材料の中又は上の印刷により識別される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項1から22までのいずれか一項に記載の治療有効量の化合物を、それを必要としている患者に投与するステップを含む、増殖性疾患又は障害の治療方法。
【請求項26】
増殖性疾患又は障害の治療のための医薬品の調製における、請求項1から22までのいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項27】
請求項22に記載の化合物を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項28】
増殖性疾患又は障害の治療における使用のために、包装材料に包装され、前記包装材料の中又は上の印刷により識別される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項22に記載の治療有効量の化合物を、それを必要としている患者に投与するステップを含む、増殖性疾患又は障害の治療方法。
【請求項30】
医薬品の調製における、請求項22に記載の化合物の使用。
【請求項31】
前記医薬品が増殖性疾患又は障害の治療のためのものである、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記増殖性疾患又は障害が、悪性増殖性疾患又は障害、非悪性増殖性疾患又は障害、先天的増殖性疾患又は障害及び後天的増殖性疾患又は障害からなる群から選択される、請求項23から31までのいずれか一項に記載の組成物、方法又は使用。
【請求項33】
前記悪性増殖性疾患又は障害が、芽腫、癌腫、リンパ腫、白血病、肉腫、中皮腫、神経膠腫、胚細胞腫、絨毛癌、黒色腫、グリア芽腫、リンパ性悪性腫瘍及び任意の他の新生物性(癌性)疾患又は障害からなる群から選択される、請求項32に記載の組成物、方法又は使用。
【請求項34】
前記非悪性増殖性疾患又は障害が、乾癬、子宮内膜症、強皮症、血管疾患、結腸ポリープ、線維腺腫及び呼吸器疾患からなる群から選択される、請求項32に記載の組成物、方法又は使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−520269(P2010−520269A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552324(P2009−552324)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000280
【国際公開番号】WO2008/107878
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(502275425)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム (10)
【Fターム(参考)】