説明

カンプトテシン医薬処方物およびその製法

【課題】高親油性且つ水溶性に乏しいカンプトテシン誘導体の医薬処方物を提供する。
【解決手段】本発明は、水溶性に乏しいカンプトテシン誘導体、特にC7位シリル置換基を有する高親油性カンプトテシンの医薬処方物に関する。前記処方物は、様々な固形腫瘍の治療に際し、ヒト患者への静脈内経路による投与に適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医薬処方物に関し、特に、癌治療等の疾病治療を受けているヒト患者への静脈内投与に適した高親油性(又は高脂溶性)カンプトテシン化合物(highly lipophilic camptothecin compounds)の処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
カンプトテシン(CPT)およびその誘導体の特定種は、現在行われている数多くの科学的研究の課題である強力な抗腫瘍剤である。近年、米国食品医薬品局は、ヒトが使用するために、様々な形態の固形腫瘍を治療するためのCPT誘導体2種(下記に述べられる(イリノテカン(Irinotecan)及びトポテカン(Topotecan))を初めて認可した。
【0003】
カンプトテシンは1966年にウォール(Wall)およびワニ(Wani)によりカンレンボク(学名Camptotheca accuminata、英名Chinese yew)から最初に単離された。以後、CPTは、強力な抗癌活性を有することが認められ、1970年代後期にヒト臨床試験へ導入された。閉環したE−環状ラクトン型のCPTの水溶性は、極めて乏しいことが示された(1mLの水に対する溶解量で約1マイクログラム)。CPTをヒト臨床試験において投与するため、CPTは、まず、水酸化ナトリウムとともに処方された。この処方物では、カンプトテシン分子のラクトンE−環が加水分解されて、水溶性カルボン酸塩種(カルボキシレート種)が形成された。このようなCPTの水酸化ナトリウム処方物により、水溶性CPT種が開発され、臨床医は第I相および第II相臨床試験を受ける癌患者へ、この薬物を高用量で投与し得るようになった。カルボン酸塩型CPTの抗腫瘍効力が、ラクトン型CPTの約10分の1以下であることが見出されたのは、それからかなり先のことであった。水酸化ナトリウムとともに処方したCPTの臨床試験では、重大な全身毒性が頻繁に観察されたり、抗腫瘍活性が欠如したりしたため、期待に反する結果となり、CPTの臨床研究は1980年代初頭に中止された。
【0004】
カンプトテシン誘導体に関するさらなる臨床開発は、1980年代中期まで取り組まれることはなかった。その当時、遍在する細胞酵素トポイソメラーゼI(Topo I)との相互作用により、CPTがDNA合成およびDNA複製の阻害に関与する特異な作用機構を有することが報告された。CPT誘導体の作用機構に関するこの新しい情報は、抗腫瘍剤として新規なトポイソメラーゼI(Topo I)阻害剤を開発する興味を再燃させ、その後、幾つかの研究グループは、癌治療のための新しいカンプトテシン誘導体を開発する試みを開始した。一般に、カンプトテシン同様、その誘導体の多くは極めて乏しい水溶性(1μg/mL未満)を呈することが認められた。このように水溶性が低いと、この薬物の有効用量を与えるために法外なほど大容量の液体を患者へ投与しなければならないので、この薬物の実用的な臨床的有効性が大いに制限された。水中でカンプトテシン及びその誘導体の多くが有する強力な抗腫瘍活性及び乏しい水溶性(貧水溶性)のため、水溶性の新規CPT誘導体の生成に多大な研究努力が向けられた。このような研究を以下に述べる。
【0005】
先に述べたように、CPT及びその誘導体の多く(Wall and Wani Camptothecin and Taxol: Discovery to Clinic-Thirteenth Bruce F. Cain Memorial Award Lecture Cancer Research 55: 753-760; 1995)は、水溶性に乏しく、そして報告によれば、多くの薬学的に許容可能な有機溶媒に対しても同様に、溶解性に乏しい。CPTの新規に創出された水溶性誘導体については、多くの報告があり(Sawada, S. et al; Kingsbury, W. D. et al., Luzzio et al. Synthesis and Antitumor Activity of Novel Water Soluble Derivatives of Camptothecin as Specific Inhibitors of Topoisomerase I Jour. Med. Chem. 38: 395-401; 1995)、そのような誘導体は、貧水溶性(水溶性に乏しい)カンプトテシンの、癌患者への薬物投与に際し、いくつかの重大な技術的問題を克服するために合成されている。いくつかの水溶性CPT誘導体は、乏しい水溶性及び患者への投与の困難性に対処するために合成されている。これらの水溶性CPT誘導体のうち周知な例としては、9−ジメチルアミノメチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(トポテカン(Topotecan))、7−[(4−メチルピペラジノ)メチル]−10,11−エチレンジオキシカンプトテシン、7−[(4−メチルピペラジノ)メチル]−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、及び7−エチル−10−[4−(1−ピペリジノ)−1−ピペリジノ]カルボニルオキシカンプトテシン(イリノテカン(Irinotecan)又はCPT−11)が挙げられる。
【0006】
異なる溶解性および薬理学的特性を備える他の置換カンプトテシン誘導体も、同様に合成されている。これらのカンプトテシン誘導体の例としては、9−アミノカンプトテシンおよび9−ニトロカンプトテシン(ルビテカン(Rubitecan))が挙げられる。両者とも、水性媒体および非水性媒体の両方において溶解性に乏しく、ヒトにおける試験が行われてきた。9−ニトロカンプトテシンは、9−アミノカンプトテシンのプロドラッグであり、水性媒体中、並びにマウス、イヌ及びヒトの生体内で、自発的に9−アミノカンプトテシンへと変換する(Hinz et al., Pharmacokinetics of the in vivo and in vitro Conversion of 9-Nitro-20(S)-camptothecin to 9-Amino-20(S)-camptothecin in Humans, Dogs and Mice, Cancer Research 54: 3096-3100; 1994)。
【0007】
9−ニトロカンプトテシン及び9−アミノカンプトテシンの薬物動態学的な挙動は、これらの血漿中での半減期が、より親油性(脂溶性)のCPT誘導体よりもかなり短いという点で、水溶性カンプトテシン誘導体(トポテカン及びイリノテカン)に類似する。9−アミノカンプトテシンに関する別の主要な問題は、半合成手法を用いた9−アミノカンプトテシンの化学合成が、CPTのニトロ化、それに続くアミノ基への還元により行われるため、収量が低いことである。更に、9−アミノカンプトテシンは、光感受性、熱感受性及び酸素感受性であるため、9−アミノカンプトテシンの製造及び安定化が困難である。9−アミノカンプトテシンの化学分解反応により、ヌードマウスへ高い毒性を呈する化合物が形成され得る。その一方、純粋な9−アミノカンプトテシンは、著しく毒性が低い。
【0008】
9−アミノカンプトテシンも、水性溶媒及び有機溶媒の双方への溶解性に乏しいため、患者への投与が困難である。9−ニトロカンプトテシンはより製造しやすく、化学的により安定であるが、報告によると、この薬物は、9−アミノカンプトテシンへの化学変換により、MDR/MRP媒介薬物耐性(mediated drug resistance)を起こしやすくなる。そのため、残念ながら、薬物耐性腫瘍の共通設定(common setting)での有用性はさらに限定される。薬物動態学的な挙動及び化学的特性に基づいて、9−アミノカンプトテシンは、より親油性のカンプトテシン誘導体と比べて、組織への浸透性及び組織での保持が減少することが予測される。更に、その乏しい溶解性のため、血液脳関門(blood/brain barrier)を越えることができる薬物の量を減殺する。
【0009】
ヒトにおける臨床開発に供試されている置換カンプトテシン誘導体のこの多様な群の中でも、イリノテカン(CPT−11)はヒト癌患者での第I相及び第II相臨床試験で最も広範にわたり研究された一つである。水溶性プロドラッグであるイリノテカンは、生物学的に不活性で、推定上の(putative)カルボキシルエステラーゼ酵素による活性化を必要とすることは注目に値する。イリノテカンの活性種は、SN38としても知られる脱ピペリデニル化10−ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン(1984年にミヤサカら(Miyasaka et al)による米国特許第4,473,692号において請求される)である。SN38は毒性のある親油性代謝産物であり、推定上のカルボキシルエステラーゼ酵素によるイリノテカンの生体内での生体活性化により形成される。
【0010】
SN38は水溶性が極めて乏しく、ヒト癌患者へ直接投与されていない。近年では、ヒト患者において、SN38が更に代謝を受けてグルクロニド種を形成することが報告されている。グルクロニド種は、抗腫瘍活性に関して不活性型であり、ヒトへの毒性(下痢、白血球減少症)を産出し、ならびに遊離代謝産物およびそのグルクロニドの薬物レベルにおける実質的な患者間変動性をもたらすことにも関与するようである。
【0011】
イリノテカンは、米国、欧州および日本においてヒト臨床試験で研究されている。イリノテカンの薬物毒性に直接的に起因して、100人近くの患者が死亡したことが、日本単独で報告されている。ミヤサカら(Miyasaka et al)の特許明細書(米国特許第4,473,692号及び米国特許第4,473,693号)には、彼らの発明の目的は、「抗腫瘍活性が強力であり、かつ非常に低い毒性とともに良好な生体内での吸収性を有する10−置換カンプトテシンを提供する」こと、及び「抗腫瘍活性が強力であり、かつ良好な水溶性及び極めて低い毒性を有する新規なカンプトテシン誘導体を提供すること」にあると記載されている。
【0012】
複数の薬物(の併用)に由来するヒトの死亡及び患者への深刻な毒性を有するため、ミヤサカらの発明は、彼らの言及する目的を達成していないことは明らかである。様々な形態の薬物レベル、薬物代謝、特定の薬物動態学的な特性及び毒性に関して、癌を患うヒト被験者へのイリノテカンの使用に際し、患者間の変動性が大きいことが報告されていることは、注目に値する。イリノテカンの非経口投与により、イリノテカンの血漿でのマイクロモル濃度を達成することができ、その代謝によりSN38を形成し、活性且つ代謝産生のSN38をナノモル濃度で産出することができる。近年、ヒト被験者においてSN38がさらに代謝され、SN38グルクロニドを形成することが報告されている(Gupta et al. MetaboLic Fate of Irinotecan in Humans: Correlation of Glucuronidation with Diarrhea, Cancer Research 54: 3723-3725)。
【0013】
このイリノテカンのさらなる代謝変換は重要である。なぜなら、イリノテカンのSN38への変換が大きく変動すること、及び不活性(かつ毒性)のSN38グルクロニドがSN38の代謝によりヒト被験者において形成されることは、患者間で大きく変動することも報告されているためである(Gupta et al. Metabolic Fate of Irinotecan in Humans: Correlation of Glucuronidation with Diarrhea. Cancer Research 54: 3723-3725; 1994及びOhe, Y. et al., Phase I Study and Pharmacohnetics of CPT-11 with 5-Day Continuous Infusion. JNCI 84 (12): 972-974,1992)。
【0014】
イリノテカン及び代謝されたSN38の量は個々の患者において推定し難く、重大な臨床限界が潜み、且つこのような臨床限界は、生命を脅かす薬剤毒性の危険、及び/又は起こりうる下記5つのメカニズムに起因する薬剤不活性の危険を引き起こす:(1)より多量のイリノテカンからのSN38への変換;(2)グルクロニド化によるSN38の不活性化;(3)SN38グルクロニドからの遊離SN38への変換;(4)より少量のイリノテカンからのSN38への変換に起因する抗腫瘍活性の欠乏;及び(5)SN38からのグルクロニド種へのさらに速く且つ大規模な変換による抗腫瘍活性の欠乏。遊離SN38がナノモル濃度において抗腫瘍活性を示すため、高い効力を有するイリノテカン代謝SN38の血漿濃度の倍増でさえ、重大な毒性を呈する可能性があることは、注目すべき重要な点である。
【0015】
患者間の変動性及び毒性を左右する他の原因は、SN38及び類似のCPT誘導体の生体内での脱グルクロニド化であり、この脱グルクロニド化により、薬剤の遊離活性種を産生する。A−環グルクロニド化に敏感なSN38のようなCPT誘導体の脱グルクロニド化は、血漿又は局所組織における薬剤の遊離活性種(形態)の濃度を増加させ、そして患者への毒性が十分高いレベルに達する場合、患者の死亡を引き起こすかもしれない。
【0016】
前記2つの認可薬に加え、ヒト臨床試験の様々な段階において、現在少なくとも9つのカンプトテシン誘導体が存在する。
【0017】
1.カレニテシン(Karenitecin)(BNP1350)
BNP1350は、7−トリメチルシリルエチル基を有する高親油性カンプトテシン誘導体である。処方物及びその使用とともに、米国特許第5,910,491号において請求される。BNP1350とN−メチルピロリジノン(NMP)との処方物は、米国特許第5,726,181号及びその他において請求される。
【0018】
2.ルルトテカン(Lurtotecan)(NX211)
NX211は、10,11−エチレンジオキシ基及びC7位に開裂可能な4−メチルピペラジノメチル基を有する水溶性カンプトテシンである。その化合物、処方物、及びその使用が、米国特許第5,559,235号及びその他で記載され、請求される。
【0019】
3.エクサテカン(Exatecan)(DX−8951f)
DX−8951fは、10−メチル及び11−フルオロ置換基を有する六環系(hexacyclic)カンプトテシン誘導体であり、C7位及びC9位の間で縮合した第6環(sixth ring)を有する。その化合物、処方物、及びその使用が、米国特許第5,637,770号及びその他に記載され、請求される。
【0020】
4.ジフロモテカン(Diflomotecan)(BN80915)
5.BN80915は、10,11−ジフルオロカンプトテシンであり、7員E−環(ホモカンプトテシン)を有する。その化合物、処方物、及びその使用が、米国特許第5,981,542号及びその他に記載され、請求される。
【0021】
ルビテカン(Rubitecan)(9−ニトロCPT)
上述したように、9−ニトロカンプトテシンは、水性溶媒及び有機溶媒の双方に対し、貧溶解性である。そして、前記化合物は、1982年の特願昭57−160944号において初めて公開された化合物であるとともに、いずれの米国特許明細書にも記載はされているが、権利請求はされていない。それ以降、この化合物の調製方法並びにその使用に関して複数の特許が発行されている。
【0022】
6.アフェレテカン(Afeletecan)(CPT複合糖質)
アフェレテカンは、C20位で複合糖質化されたカンプトテシンの水溶性誘導体であり、米国特許第6,492,335号において記載され、請求される。
【0023】
7.ギマテカン(Gimatecan)(ST1481)
ST1481は、C7位にイミノ基を有し、このイミノ基に対し、末端にtert−ブトキシ基が結合する水溶性プロドラッグである。この化合物は、米国特許第6,242,257号に記載され、請求される。
【0024】
8.ムレレテカン(Mureletecan)(PNU166148)
ムレレテカンは、エステルを形成するように、C20位で結合される、開裂可能なペプチド部分を有する別の水溶性プロドラッグである。
【0025】
9.ペグベトテカン、ペグカモテカン、ペグリンキソテカン(PEG CPT;プロテカン(Prothecan)(登録商標))
このプロドラッグは、C20位でエステルを形成し、開裂可能な水溶性ポリエチレングリコール部分を含む。この化合物は、米国特許第5,840,900号及びその他で記載され、請求される。
【0026】
表1に上記化合物の分子構造を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
水溶性に乏しいカンプトテシンは、投与するために有機溶媒に溶解又は懸濁して処方することが必要である。米国特許第5,447,936号;米国特許第5,726,181号;米国特許第5,859,022号;米国特許第5,859,023号;米国特許第5,880,133号;米国特許第5,900,419号;米国特許第5,935,967号;米国特許第5,955,467号;及びその他において、様々な有機溶媒中、すなわち、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA);N,N−ジメチルイソソルビド(DMI);及びN−メチルピロリジノン(NMP)中に含まれる高親油性且つ水溶性に乏しいカンプトテシン誘導体の医薬処方物が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第5,447,936号
【特許文献2】米国特許第5,726,181号
【特許文献3】米国特許第5,859,022号
【特許文献4】米国特許第5,859,023号
【特許文献5】米国特許第5,880,133号
【特許文献6】米国特許第5,900,419号
【特許文献7】米国特許第5,935,967号
【特許文献8】米国特許第5,955,467号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
(発明の要約)
本発明は、水溶性に乏しいカンプトテシン誘導体、特にC7位シリル置換基を有する高親油性カンプトテシンの医薬処方物に関する。前記処方物は、様々な固形腫瘍の治療に際し、ヒト患者への静脈内経路による投与に適合する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、ヒト患者への投与に適合した医薬処方物であって、本質的に以下の(a)〜(e)
(a)10〜20重量%の溶媒;
(b)5〜25重量%の非イオン性界面活性剤;
(c)1〜10重量%の低分子量アルコール;
(d)50〜80重量%の低分子量ポリエチレングリコール;及び
(e)0.1〜2.0重量%の薬学的に許容可能な酸
からなる溶液に溶解した有効量の医薬グレードの高親油性カンプトテシン誘導体で構成され、前記溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドを含む医薬処方物を包含する。
【0033】
前記高親油性カンプトテシン誘導体は、C7位にシリル置換基を有するカンプトテシン誘導体(例えば、7−(2−トリメチルシリルエチル)カンプトテシン)であってもよい。前記高親油性カンプトテシン誘導体の有効量は、0.01mg/mL〜0.5mg/mL程度であってもよい。
【0034】
前記溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミドに加えて、N−メチルピロリジノン、及びジメチルイソソルビドからなる群より選択された溶媒を含んでいてもよい。例えば、N−メチルピロリジノン及びN,N−ジメチルアセトアミドが共溶媒であり、溶液中に、各々が5〜15重量%で含まれていてもよい。
【0035】
前記非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート、ソルビタンエステル及びノノキシノールからなる群より選択される少なくとも一種(例えば、ポリソルベート80)であってもよい。
【0036】
前記薬学的に許容可能な酸は、クエン酸であってもよい。
【0037】
前記低分子量アルコールは、エタノール及び/又はベンジルアルコール(例えば、エタノール)であってもよい。
【0038】
前記低分子量ポリエチレングリコールは、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600及びPEG800からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0039】
前記医薬処方物は、投与に先立ち薬学的に許容可能な希釈剤(例えば、5%デキストロース溶液、0.9%塩化ナトリウム溶液など)に溶解されてもよい。
【0040】
本発明は、本質的に以下の(a)〜(f)からなる医薬処方物も包含する。
(a)0.01mg/mL〜0.50mg/mLの医薬グレードの7−(2−トリメチルシリルエチル)カンプトテシン;
(b)10〜20重量%のN,N−ジメチルアセトアミド;
(c)5〜25重量%のポリソルベート80;
(d)1.0〜10.0重量%のエタノール;
(e)50〜80重量%のPEG300;及び
(f)0.1〜2.0重量%のクエン酸。
【0041】
前記エタノールは、脱水エタノールであってもよい。
【0042】
前記医薬処方物は、例えば、本質的に以下の(a)〜(f)からなっていてもよい。
(a)0.05mg/mL〜0.2mg/mLの実質的に純粋な7−(2−トリメチルシリルエチル)カンプトテシン;
(b)13〜14重量%のN,N−ジメチルアセトアミド;
(c)13〜14重量%のポリソルベート80;
(d)6〜7重量%の脱水エタノール;
(e)64〜66重量%のPEG300;及び
(f)1.0〜1.4重量%のクエン酸。
【0043】
前記医薬処方物において、処方物が滅菌された単回用量の容器に収容され、この単回用量容器は、無菌で密封されるとともに、光から保護されていていてもよい。
【0044】
前記医薬処方物は、患者への投与に先立ち、薬学的に許容可能な希釈剤に希釈されてもよい。
【0045】
また、本発明の医薬処方物は、以下の工程で製造されてもよい。
(a)所望の量の低分子量アルコールを量り、第1の調合容器に加える工程;
(b)所望の量の薬学的に許容可能な酸を量り、第1の調合容器に加え、酸が完全に溶解するまで混合する工程;
(c)所望の量の溶媒を、第2の調合容器に加える工程;
(d)所望の量の高親油性カンプトテシン誘導体を量り、第2の調合容器に加える工程;
(e)第2の調合容器の内容物を高親油性カンプトテシン誘導体が分散するまで混合し、第2の調合容器を30〜60℃の間で加熱する工程;
(f)高親油性カンプトテシン誘導体が溶解するまで第2の調合容器の内容物を音波処理する工程;
(g)非イオン性界面活性剤及び低分子量ポリエチレングリコールを、第1の調合容器に加え、30〜60℃の間で加熱する工程;及び
(h)30〜60℃の間での加熱を維持しながら第2の調合容器の内容物を第1の調合容器へ移し、均一な溶液が形成されるまで混合する工程。
【0046】
上記製造工程は、さらに以下の工程:
(i)工程(h)からの均一な溶液を濾過して、粒状物を除去する工程;
(j)滅菌バイアルを用意し、このバイアルに所定量の濾過溶液を分配する工程;及び
(k)前記滅菌バイアルを滅菌シールで密封する工程、
又は以下の工程:
(c1)溶媒の25〜90%を、待機容器に移す工程;及び
(h1)待機容器の内容物で、第2の調合容器をすすぎ、次いで第2の調合容器の内容物を再び第1の調合容器へ移す工程
を含んでいてもよい。
【0047】
さらに、本発明は、有効量の医薬グレードの高親油性カンプトテシン誘導体を溶解するための組成物も開示する。この組成物は以下の(a)〜(e)
(a)10〜20重量%の溶媒;
(b)5〜25重量%の非イオン性界面活性剤;
(c)1〜10重量%の低分子量アルコール;
(d)50〜80重量%の低分子量ポリエチレングリコール;及び
(e)0.1〜2.0重量%の薬学的に許容可能な酸
を含み、前記溶媒はN,N−ジメチルアセトアミドを含んでいる。
【0048】
前記処方物は、有効成分として、有効量の高親油性カンプトテシン誘導体を含有し、典型的には、固形腫瘍の治療に用いられる。前記有効成分は、下記の溶液に対して溶解する。
a.10〜20重量%の1種又は2種以上の溶媒;
b.5〜25重量%の非イオン性界面活性剤;
c.1〜10重量%の低分子量アルコール;
d.50〜80重量%の低分子量ポリエチレングリコール;及び
e.0.1〜2.0重量%の薬学的に許容可能な酸。
【0049】
前記処方物は、有効成分として、有効量の高親油性カンプトテシン誘導体を含有し、典型的には、固形腫瘍の治療に用いられる。前記有効成分は、下記の溶液に対して溶解する。
a.10〜20重量%の1種又は2種以上の溶媒;
b.5〜25重量%の非イオン性界面活性剤;
c.1〜10重量%の低分子量アルコール;
d.50〜80重量%の低分子量ポリエチレングリコール;及び
e.0.1〜2.0重量%の薬学的に許容可能な酸。
【0050】
処方物は、溶解後、単回用量(1回投与量)の形態(unit dose form)に詰められるのが好ましい。この形態は、前記有効成分を利用して治療する癌等の疾病を治療中の患者に対する非経口投与のために用いられる。
【0051】
本発明の処方物を製造するために用いられる製法についても記載する。多くの腫瘍学的薬剤のように、有効成分の治療指数は狭小であり、効果を奏するためには、正確に測定された用量を必要とする。処方物の製造に使用される方法は、下記の工程で構成される:
a.所望の量の低分子量アルコールを量り、第1の調合容器に加える工程;
b.所望の量の薬学的に許容可能な酸を量り、第1の調合容器に加え、酸が完全に溶解するまで混合する工程;
c.所望の量の溶媒を、第2の調合容器に加える工程;
d.前記溶媒の25〜90%を待機容器(standby vessel)へ移す工程;
e.所望の量の高親油性カンプトテシン誘導体を量り、第2の調合容器に加える工程;
f.第2の調合容器の内容物を高親油性カンプトテシン誘導体が溶解するまで混合し、第2の調合容器を30〜60℃の間で加熱する工程;
g.高親油性カンプトテシン誘導体が溶解するまで第2の調合容器の内容物を音波処理(超音波処理)する工程;
h.非イオン性界面活性剤及び低分子量ポリエチレングリコールを、第1の調合容器に加え、30〜60℃の間で加熱する工程;及び
i.30〜60℃の間での加熱を維持しながら第2の調合容器の内容物を第1の調合容器へ移し、均一な溶液が形成されるまで混合する工程。
【0052】
待機容器の内容物は、第2の調合容器をすすぐために用いられ、第2の調合容器の内容物が第1の調合容器へ完全に移されることを確実とする。
【0053】
さらに、前記製造方法は、最終産物を濾過する工程、及び患者へ投与するための単回用量(1回投与量)(unit dose)の容器に、濾過された溶液を充填する工程を含んでいてもよい。好ましい処方物は、本明細書において、以下に開示されるが、特許請求の範囲に規定される本発明の範囲を限定するものではない。
【発明の効果】
【0054】
本発明では、水溶性に乏しいカンプトテシン誘導体、特にC7位シリル置換基を有する高親油性カンプトテシンの医薬処方物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(好ましい実施態様)
本明細書に記載される好ましい実施態様は、本発明を完全に網羅するものではなく、本発明は以下の詳細に限定されるものではない。好ましい実施態様は、本発明を例証するため、及び本発明の原理及びその応用並びに当業者への実際的な使用について説明するために、選ばれ、記載される。
【0056】
本発明の処方物は、特にヒト患者への投与に適する。処方物は、もっとも好ましくは、静脈内投与に適合するが、いずれの好都合な非経口経路により投与されてもよい。処方物は、有効成分として、当業者に認識される高親油性カンプトテシン誘導体(HLCD)を含む。HLCDは、水1mL当たり5マイクログラム未満の水溶性を有すると規定される。HLCDは、ヒト患者への投与に適する医薬グレードであるのが好ましい。本願の目的にかなうための医薬グレードとは、少なくとも98%の純度を有するHLCDであることを意味する。
【0057】
処方物はまた、以下の成分を含有する:
a)10〜20重量%の1種又は2種以上の溶媒;
b)5〜25重量%の非イオン性界面活性剤;
c)1〜10重量%の低分子量アルコール;
d)50〜80重量%の低分子量ポリエチレングリコール;及び
e)0.1〜2.0重量%の薬学的に許容可能な酸。
【0058】
処方物は、以下の基本方法により調製される:
a.所望の量の低分子量アルコールを量り、第1の調合容器に加える工程;
b.所望の量の薬学的に許容可能な酸を量り、第1の調合容器に加え、酸が完全に溶解するまで混合する工程;
c.所望の量の溶媒を、第2の調合容器に加える工程;
d.所望の量の高親油性カンプトテシン誘導体を量り、第2の調合容器に加える工程;
e.第2の調合容器の内容物を高親油性カンプトテシン誘導体が分散するまで混合し、第2の調合容器を30〜60℃の間で加熱する工程;
f.高親油性カンプトテシン誘導体が溶解するまで第2の調合容器の内容物を音波処理する工程;
g.非イオン性界面活性剤及び低分子量ポリエチレングリコールを、第1の調合容器に加え、30〜60℃の間で加熱する工程;及び
h.30〜60℃の間での加熱を維持しながら第2の調合容器の内容物を第1の調合容器へ移し、均一な溶液が形成されるまで混合する工程。
【0059】
好ましい処方物では、HLCDは、C7位置換カンプトテシン誘導体であり;最も好ましいHLCDは、7−(2−トリメチルシリルエチル)カンプトテシン(BNP1350;カレニテシン)である。好ましい溶媒としては、N−メチルピロリジノン(NMP);ジメチルアセトアミド(DMA);及び/又はジメチルイソソルビド(DMI)が挙げられ、又は上記溶媒2種以上の組み合わせが、共溶媒(cosolvents)として用いられてもよい。最も好ましい溶媒は、NMP、又は共溶媒としてのNMP及びDMAの組み合わせである。
【0060】
好ましい界面活性剤としては、ポリソルベート;ソルビタンエステル;ノノキシノール等が挙げられ、最も好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80である。好ましいアルコールとしては、エチルアルコール及びベンジルアルコールが挙げられ、最も好ましいアルコールは、エチルアルコールである。好ましい低分子量ポリエチレングリコール(PEG)としては、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG800が挙げられ、最も好ましいのはPEG300である。
【0061】
処方物は、成分を組み合わせた後に濾過及び精製され、次いで滅菌された単回用量容器へと分配される。容器は、内容物を光から保護する色を有し、充填後に滅菌シールで密封される。容器に含まれる内容物を明らかにするため、及び/又は容器内の処方物の投与法及び安全な手順のための説明書を提供するために、単回用量容器には1又は複数個のラベルを貼付する。
【実施例】
【0062】
下記の実施例は、本発明の処方物を製造するために使用される方法を説明する。
【0063】
実施例1
【0064】
【表3】

【0065】
装置
40Lカーボイ(Carboy)、9Lカーボイ、4Lメスシリンダ、テフロン(登録商標)でコートされた羽根車及び撹拌棒を備えたライトニンラブマスタ・ミキサ(Lightnin’ Labmaster Mixer)、加熱ベルト(Heat Belts)、音波処理可能な水浴
手順
全ての設備及び装置が清潔であり医薬製剤の製造における使用に適していることを確認する。40Lカーボイの重さを量り、傍らに置いておく。USPグレードの脱水アルコールを2559.0mL量り、4Lメスシリンダ内に入れ、撹拌器(agitator)をシリンダ内に置き、稼働させる。USPグレードの無水クエン酸を400.0g量り、前記脱水アルコールに加える。アルコールの揮発を防ぐためにシリンダを覆い、クエン酸が完全に溶解するまで撹拌し続ける。必要であれば、前記混合物を、25〜30℃まで加熱して、溶解を促進してもよい。そして、前記混合物を室温まで放冷する。前記カーボイ及び溶液の重さを量り、その重さを記録する。
【0066】
NMP(4143.3g)を9Lカーボイに加え、すすぎ液として後で使用するために500〜600mLを別の容器に取り出す。BNP1350を2800.0mg量り、9Lカーボイへ加える。ラブマスタ・ミキサの軸を、カーボイ内に配置し、動かしはじめ、BNP1350をNMP中に分散するために、少なくとも10分間、500rpmで回転する。溶液が泡立ち始めたら回転速度を減少する。加熱ベルト及び水浴を使用して、混合物を45〜50℃の間で温め、この混合物を、少なくとも30分間、又は粒状物が見えなくなるまで音波処理する。その後、ラブマスタ・ミキサの軸を、カーボイから除く。
【0067】
音波処理後、NMPとBNP1350との混合物を、アルコール及び酸溶液を含む40Lカーボイへ加える。9Lカーボイを、取り出しておいたNMPですすぎ、その内容物を40Lカーボイへ加える。
【0068】
次いで、ポリソルベート−80,NFを4000.0g量り、40Lカーボイへ加える。PEG−300を、全溶液量が30,240.0gになるまでこのカーボイへ加える。ラブマスタ・ミキサの軸を再び挿入し、低速度で回転を開始する。溶液が泡立たないように、少なくとも60分間低速度で回転し、完全に溶液を混合する。
【0069】
溶液の透明度及び完全性について、目視により確認し、そして5mLのサンプルを取り出し、濾過に先立ってBNP1350の濃度(0.1mg/mL±0.005)を分析する。
【0070】
実施例2
バルク処方物の濾過及び単回用量容器への充填
装置
Pall HDC II Abs0.6マイクロ滅菌前置フィルタ
Pall Sol−vent DCF カプセル0.2マイクロ滅菌フィルタ
コハク色の5mL充填ボトル(fill bottle)、開口20mm−滅菌
灰色の栓20mmテフロン(登録商標)4432/50−滅菌
20mm白色のフリップオフ・シール−滅菌
滅菌濾過チューブ(tubing)
手順
全ての設備及び装置が清潔であり医薬製剤の濾過及び充填の操作における使用に適していることを確認する。設備(以下、クリーンルーム)が、適切に滅菌されていることを確認した後、実施例1で得られた溶液をクリーンルームへ移す。クリーンルームでは、空中に浮遊する粒子及び一般フロラ、並びにクリーンルームの外の圧力と比較した圧力差を、継続して監視する。実施例1の溶液を有する40Lカーボイに対して、加熱ベルトを適用して、35〜40℃の間で、この溶液を温める。溶液を前記温度で一晩放置した後、前記溶液を、0.6マイクロ滅菌前置フィルタにより濾過し、次いで0.2マイクロ滅菌フィルタにより濾過する。溶液が全てフィルタを通過したら、フィルタのバブルテストを行い、イソプロピルアルコール60%及び水40%の溶液を用いてフィルタを洗い流し、水泡のポイントが11psiに達するようにする。このテストに失敗した場合、新しいフィルタを用いて、バブルテストが成功するまで、濾過を繰り返さなければならない。溶液の5mLのサンプルを取り出し、充填工程へ進む前に純度について分析する。
【0071】
次いで、溶液をフレキシコン(Flexicon(登録商標))半自動式充填機へ移す。前記充填機により、各滅菌バイアル(ガラス瓶)中に6.0g±0.1gを分配する。その後、各バイアルに滅菌栓をして、最後に各バイアルに滅菌シールを当てて密封する(crimped)。充填及び密封後に、20〜40個のバイアルを試験用に取り出す。充填したバイアルの数を記録し、そのバイアルを、検査のため隔離域(quarantine area)へ移す。バイアルの検査後、内容物、使用注意及び/又は安全情報に関する情報が印刷されたラベルを各バイアルに貼り付ける。各バイアルに含まれるBNP1350の濃度は0.1mg/mLであり、注射用抗腫瘍剤として使用するようラベル付けされる。
【0072】
実施例3
【0073】
【表4】

【0074】
装置
13Lカーボイ,100mLビーカー,4Lフラスコ,ライトニンラブマスタ・ミキサ,加熱ベルト,水浴
手順
全ての設備及び装置が清潔であり医薬製剤を製造における使用に適していることを確認する。13Lカーボイの重さを量り、傍らに置いておく。USPグレードの脱水アルコールを644.40g量り、4Lフラスコ内に注ぎ入れ、マグネチックスターラをシリンダ内に置き、稼働させる。USPグレードの無水クエン酸を127.92g量り、前記脱水アルコールに加える。アルコールの揮発を防ぐためにシリンダを覆い、クエン酸が完全に溶解するまで撹拌し続ける。必要であれば、前記混合物を、25〜30℃まで加熱して、溶解を促進してもよい。そして、前記混合物を室温まで放冷する。前記フラスコ及び溶液の重さを量り、その重さを記録する。
【0075】
894.72gのNMP及び1150.44gのDMAをアルコール/クエン酸溶液に加え、少なくとも10分間混合して、均一な溶液を形成する。この溶液の約3/4を、すすぎ液として後で使用するために別の容器に取り出す。BNP1350を1200.0mg量り、100mLビーカーへ加え、次いで4Lフラスコへ加える。ビーカーを、取り出しておいた上記溶液の一部ですすぎ、その洗浄物を4Lフラスコへ加える。ラブマスタ・ミキサの軸を、フラスコ内に配置し、動かしはじめ、BNP1350を分散するために、少なくとも10分間、1000rpmで回転する。溶液が泡立ち始めたら回転速度を減少する。加熱ベルト及び水浴を使用して、混合物を45〜50℃の間で温め、この混合物を、少なくとも30分間、又は粒状物が見えなくなるまで音波処理する。その後、ラブマスタ・ミキサの軸を、カーボイから除く。
【0076】
ポリソルベート−80,NFを1662.12g量り、13Lカーボイへ加える。このカーボイへPEG−300を8307.36g加え、マグネチックスターラの上にカーボイを置き、中程度の速さで撹拌する。加熱ベルトをカーボイに当て、カーボイの温度を45〜50℃の間に上昇させる。カーボイが前記温度に到達した後、4Lフラスコの内容物を13Lカーボイに移す。先に取り出しておいた溶液の残りを使用して、4Lフラスコをすすぎ、その内容物を13Lカーボイに移す。カーボイを、最低でも60分間、45〜50℃の間に維持し、撹拌速度に気をつけ、溶液が泡立たないようにする。
【0077】
溶液の透明度及び完全性については、目視により確認し、そして5mLのサンプルを取り出し、濾過に先立ってBNP1350の濃度(0.1±0.005mg/mL)を分析する。
【0078】
実施例4
バルク処方物の濾過及び単回用量容器への充填
装置
Pall HDC II Abs0.6マイクロ滅菌前置フィルタ
Pall Sol−vent DCF カプセル0.2マイクロ滅菌フィルタ
コハク色の5mL充填ボトル(fill bottle)、開口20mm−滅菌
灰色の栓20mmテフロン(登録商標)4432/50−滅菌
20mm白色のフリップオフ・シール−滅菌
滅菌濾過チューブ(tubing)
手順
全ての設備及び装置が清潔であり医薬製剤の濾過及び充填の操作における使用に適していることを確認する。設備(以下、クリーンルーム)が、適切に滅菌されていることを確認した後、実施例1で得られた溶液をクリーンルームへ移す。クリーンルームでは、空中に浮遊する粒子及び一般フロラ、並びにクリーンルームの外の圧力と比較した圧力差を継続して監視する。実施例1の溶液を有する40Lカーボイに対して、加熱ベルトを適用して、35〜40℃の間で、この溶液を温める。溶液を前記温度で一晩放置した後、前記溶液を、0.6マイクロ滅菌前置フィルタにより濾過し、次いで0.2マイクロ滅菌フィルタにより濾過する。溶液が全てフィルタを通過したら、フィルタのバブルテストを行い、イソプロピルアルコール60%及び水40%の溶液を用いてフィルタを洗い流し、水泡のポイントが11psiに達するようにする。このテストに失敗した場合、新しいフィルタを用いて、バブルテストが成功するまで、濾過を繰り返さなければならない。溶液の5mLのサンプルを取り出し、充填工程へ進む前に純度について分析する。
【0079】
次いで、溶液をフレキシコン(Flexicon(登録商標))半自動式充填機へ移す。前記充填機により、各滅菌バイアル(ガラス瓶)中に6.0g±0.1gを分配する。その後、各バイアルに滅菌栓をして、最後に各バイアルに滅菌シールを当てて密封する(crimped)。充填及び密封後に、20〜40個のバイアルを試験用に取り出す。充填したバイアルの数を記録し、そのバイアルを、検査のため隔離域(quarantine area)へ移す。バイアルの検査後、内容物、使用注意及び/又は安全情報に関する情報が印刷されたラベルを各バイアルに貼り付ける。各バイアルに含まれるBNP1350の濃度は0.1mg/mLであり、注射用抗腫瘍剤として使用するようラベル付けされる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の処方物は、様々な固形腫瘍の治療に際し、ヒト患者への静脈内経路による投与に適合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者への投与に適合した医薬処方物であって、本質的に以下の(a)〜(e)
(a)10〜20重量%の溶媒;
(b)5〜25重量%の非イオン性界面活性剤;
(c)1〜10重量%の低分子量アルコール;
(d)50〜80重量%の低分子量ポリエチレングリコール;及び
(e)0.1〜2.0重量%の薬学的に許容可能な酸
からなる溶液に溶解した有効量の医薬グレードの高親油性カンプトテシン誘導体で構成され、前記溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドを含む医薬処方物。
【請求項2】
高親油性カンプトテシン誘導体が、C7位にシリル置換基を有するカンプトテシン誘導体である請求項1記載の医薬処方物。
【請求項3】
高親油性カンプトテシン誘導体が、7−(2−トリメチルシリルエチル)カンプトテシンである請求項1又は2記載の医薬処方物。
【請求項4】
高親油性カンプトテシン誘導体の有効量が0.01mg/mL〜0.5mg/mLである請求項1〜3のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項5】
溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミドに加えて、N−メチルピロリジノン、及びジメチルイソソルビドからなる群より選択された溶媒を含む請求項1〜4のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート、ソルビタンエステル及びノノキシノールからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項7】
非イオン性界面活性剤がポリソルベート80である請求項1〜6のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項8】
薬学的に許容可能な酸がクエン酸である請求項1〜7のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項9】
低分子量アルコールがエタノール及び/又はベンジルアルコールである請求項1〜8のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項10】
低分子量アルコールがエタノールである請求項1〜9のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項11】
低分子量ポリエチレングリコールが、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600及びPEG800からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜10のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項12】
N−メチルピロリジノン及びN,N−ジメチルアセトアミドが共溶媒であり、溶液中に、各々が5〜15重量%で含まれる請求項5記載の医薬処方物。
【請求項13】
投与に先立ち薬学的に許容可能な希釈剤に溶解される請求項1〜12のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項14】
希釈剤が5%デキストロース溶液である請求項13記載の医薬処方物。
【請求項15】
希釈剤が0.9%塩化ナトリウム溶液である請求項13記載の医薬処方物。
【請求項16】
本質的に以下の(a)〜(f)からなる医薬処方物。
(a)0.01mg/mL〜0.50mg/mLの医薬グレードの7−(2−トリメチルシリルエチル)カンプトテシン;
(b)10〜20重量%のN,N−ジメチルアセトアミド;
(c)5〜25重量%のポリソルベート80;
(d)1.0〜10.0重量%のエタノール;
(e)50〜80重量%のPEG300;及び
(f)0.1〜2.0重量%のクエン酸
【請求項17】
エタノールが脱水エタノールである請求項16記載の医薬処方物。
【請求項18】
本質的に以下の(a)〜(f)からなる請求項16記載の医薬処方物。
(a)0.05mg/mL〜0.2mg/mLの実質的に純粋な7−(2−トリメチルシリルエチル)カンプトテシン;
(b)13〜14重量%のN,N−ジメチルアセトアミド;
(c)13〜14重量%のポリソルベート80;
(d)6〜7重量%の脱水エタノール;
(e)64〜66重量%のPEG300;及び
(f)1.0〜1.4重量%のクエン酸
【請求項19】
処方物が滅菌された単回用量の容器に収容され、この単回用量容器は、無菌で密封されるとともに、光から保護されている請求項16〜18記載の医薬処方物。
【請求項20】
患者への投与に先立ち、薬学的に許容可能な希釈剤に希釈される請求項16〜18のいずれかの項に記載の医薬処方物。
【請求項21】
以下の工程で製造される請求項1〜20のいずれかの項に記載の医薬処方物。
(a)所望の量の低分子量アルコールを量り、第1の調合容器に加える工程;
(b)所望の量の薬学的に許容可能な酸を量り、第1の調合容器に加え、酸が完全に溶解するまで混合する工程;
(c)所望の量の溶媒を、第2の調合容器に加える工程;
(d)所望の量の高親油性カンプトテシン誘導体を量り、第2の調合容器に加える工程;
(e)第2の調合容器の内容物を高親油性カンプトテシン誘導体が分散するまで混合し、第2の調合容器を30〜60℃の間で加熱する工程;
(f)高親油性カンプトテシン誘導体が溶解するまで第2の調合容器の内容物を音波処理する工程;
(g)非イオン性界面活性剤及び低分子量ポリエチレングリコールを、第1の調合容器に加え、30〜60℃の間で加熱する工程;及び
(h)30〜60℃の間での加熱を維持しながら第2の調合容器の内容物を第1の調合容器へ移し、均一な溶液が形成されるまで混合する工程
【請求項22】
以下の工程で製造される請求項1〜20のいずれかの項に記載の医薬処方物。
(a)所望の量の低分子量アルコールを量り、第1の調合容器に加える工程;
(b)所望の量の薬学的に許容可能な酸を量り、第1の調合容器に加え、酸が完全に溶解するまで混合する工程;
(c)所望の量の溶媒を、第2の調合容器に加える工程;
(d)所望の量の高親油性カンプトテシン誘導体を量り、第2の調合容器に加える工程;
(e)第2の調合容器の内容物を高親油性カンプトテシン誘導体が分散するまで混合し、第2の調合容器を30〜60℃の間で加熱する工程;
(f)高親油性カンプトテシン誘導体が溶解するまで第2の調合容器の内容物を音波処理する工程;
(g)第2の調合容器の内容物を第1の調合容器へ移す工程;及び
(h)非イオン性界面活性剤及び低分子量ポリエチレングリコールを、第1の調合容器に加え、均一な溶液が形成されるまで混合する工程
【請求項23】
以下の工程で製造される請求項1〜20のいずれかの項に記載の医薬処方物。
(a)所望の量の低分子量アルコールを量り、第1の調合容器に加える工程;
(b)所望の量の薬学的に許容可能な酸を量り、第1の調合容器に加え、酸が完全に溶解するまで混合する工程;
(c)所望の量の溶媒を、第1の調合容器に加える工程;
(d)所望の量の高親油性カンプトテシン誘導体を量り、第1の調合容器に加える工程;
(e)第1の調合容器の内容物を高親油性カンプトテシン誘導体が分散するまで混合し、第1の調合容器を30〜60℃の間で加熱する工程;
(f)高親油性カンプトテシン誘導体が溶解するまで第1の調合容器の内容物を音波処理する工程;
(g)非イオン性界面活性剤及び低分子量ポリエチレングリコールを、第2の調合容器に加え、30〜60℃の間で加熱する工程;及び
(h)第1の調合容器の内容物を第2の調合容器へ移し、均一な溶液が形成されるまで混合する工程
【請求項24】
請求項21〜23のいずれかに記載の工程に加え、さらに以下の工程で製造される医薬処方物。
(i)工程(h)からの均一な溶液を濾過して、粒状物を除去する工程;
(j)滅菌バイアルを用意し、このバイアルに所定量の濾過溶液を分配する工程;及び
(k)前記滅菌バイアルを滅菌シールで密封する工程
【請求項25】
請求項21に記載の工程に加え、さらに以下の工程で製造される医薬処方物。
(c1)溶媒の25〜90%を、待機容器に移す工程;及び
(h1)待機容器の内容物で、第2の調合容器をすすぎ、次いで第2の調合容器の内容物を再び第1の調合容器へ移す工程
【請求項26】
請求項22に記載の工程に加え、さらに以下の工程で製造される医薬処方物。
(c1)溶媒の25〜90%を、待機容器に移す工程;及び
(g1)待機容器の内容物で、第2の調合容器をすすぎ、次いで第2の調合容器の内容物を再び第1の調合容器へ移す工程
【請求項27】
請求項23に記載の工程に加え、さらに以下の工程で製造される医薬処方物。
(c1)溶媒の25〜90%を、待機容器に移す工程;及び
(h1)待機容器の内容物で、第1の調合容器をすすぎ、次いで第1の調合容器の内容物を再び第2の調合容器へ移す工程
【請求項28】
有効量の医薬グレードの高親油性カンプトテシン誘導体を溶解するための組成物であって、以下の(a)〜(e)
(a)10〜20重量%の溶媒;
(b)5〜25重量%の非イオン性界面活性剤;
(c)1〜10重量%の低分子量アルコール;
(d)50〜80重量%の低分子量ポリエチレングリコール;及び
(e)0.1〜2.0重量%の薬学的に許容可能な酸
を含み、前記溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドを含む組成物。

【公開番号】特開2012−214509(P2012−214509A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176425(P2012−176425)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2006−545626(P2006−545626)の分割
【原出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(500175967)バイオニューメリック・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】