説明

カンプトテシン類の高分子誘導体

治療効果が高く、癌化学療法に適したカンプトテシン類の水溶性誘導体を提供すること。 ポリエチレングリコール類とポリカルボン酸との重合体のカルボン酸基と、フェノール性カンプトテシン類のフェノール性水酸基とを、エステル結合することにより、徐放性にも優れたカンプトテシン類の水溶性高分子誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明はカンプトテシン類の高分子誘導体、その製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
カンプトテシン(Camptothecin)は、中国原産の喜樹等の植物に含有されている抗腫瘍性アルカロイドであるが、水に極めて難溶性であるため、臨床上使用可能な水溶性誘導体の研究が行われてきた。又、ベンゼン環上への水酸基、アルコキシル基やアミノ基等の置換基の導入は、効果を増強することが知られていた。(非特許文献1)
例えば、特許文献1や特許文献2にはポリエチレングリコールを結合したプロドラッグとしてのカンプトテシンの高分子誘導体について言及されている。これらの特許では、ポリエチレングリコール類部分の分子量の最適化と同時に、ポリエチレングリコール類部分とカンプトテシンとを結合するスペーサーの重要性についても報告している。スペーサーは、上記誘導体が生体内に滞留している間は安定に存在し、標的部位でのみ速やかに切断されることが望ましい。これらの文献では、単なるアルコールのエステル結合体では標的部位での加水分解速度が遅いので十分な薬物濃度を得ることができないとして、標的部位で加水分解されやすいスペーサーを開示している。
又、カンプトテシンの水溶性誘導体としてCPT−11(7−エチル−10−ピペリジノピペリジノカルボニルオキシカンプトテシン)が知られている(非特許文献1)。
更に、特許文献3には、カンプトテシン類にポリグルタミン酸が結合した高分子誘導体が記載されている。
一方、特許文献4及び非特許文献2にはポリエチレングリコールとポリアスパラギン酸とのブロック共重合体に薬剤を結合した分子の集合体がミセルを形成して水溶性が増し、ポリマー1分子あたりの薬剤含有量を増加させることができることが示されており、特許文献5にはポリエチレングリコール類とポリグルタミン酸とのブロック共重合体の側鎖カルボン酸に抗癌性物質を結合した高分子抗癌剤が示されており、特許文献6にはポリエチレングリコール類とポリ酸性アミノ酸とのブロック共重合体の側鎖カルボン酸に疎水性物質を結合した高分子薬物運搬体が示されている。しかしながら、特許文献4、特許文献5及び特許文献6には、カンプトテシン類の結合体については記載されていない。
文献のリスト:
・特許文献1:特表平10−513187号公報
・特許文献2:特表2000−517304号公報
・特許文献3:国際公開第01/70275号パンフレット
・特許文献4:特許第2694923号公報
・特許文献5:特開平5−955号公報
・特許文献6:特許第3268913号公報
・非特許文献1:宮坂貞ほか、抗がん剤イリノテカン、現代化学、1999年10月号、東京化学同人、58〜66頁。
・非特許文献2:T.Nakanishi等、Development of the polymer micelle carrier system for doxorubicin、Journal of Controlled Release、2001年、74巻、Elsevier、295〜302頁。
特許文献1や特許文献2に記載されたポリエチレングリコールが結合したプロドラッグは、構造上ポリエチレングリコール1分子に対して1〜2個の薬剤しか結合することができず、その結果、有効量の薬剤を投与するためには大量のポリマーの投与が必要である。
又、カンプトテシンの水溶性誘導体であるCPT−11には、重篤な副作用があり、使いやすい薬剤ではないので、新規なカンプトテシン誘導体が求められている。
特許文献4、特許文献5及び非特許文献2に具体的に記載されているアドリアマイシン結合体は、ブロック共重合体とアドリアマイシン残基とが化学的に安定な結合様式であるアミド結合で結合されており、実際に、非特許文献2に記載のように、結合したアドリアマイシンは抗腫瘍活性を有しない。
【発明の開示】
本発明者等は前記したような課題を解決すべく鋭意努力した結果、フェノール性カンプトテシン類に、ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体のカルボン酸基を、フェニルエステル結合させることにより得られるカンプトテシン類の高分子誘導体を見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
(1) ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体のカルボン酸基と、フェノール性カンプトテシン類のフェノール性水酸基とが、エステル結合した構造であることを特徴とするカンプトテシン類の高分子誘導体;
(2) ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体が、ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとのブロック共重合体である上記(1)に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体;
(3) 側鎖にカルボン酸基を有するポリマーが、ポリ酸性アミノ酸である上記(1)又は(2)に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体;
(4) ポリ酸性アミノ酸がポリグルタミン酸又はポリアスパラギン酸である上記(3)に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体;
(5) 一般式(I)

[式中、R1は水素原子又は置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基を示し、tは5〜11500の整数を示し、Aは結合基を示し、d+e+fは3〜200の整数を示し、R2は水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基又は置換基を有していてもよいシリル基を示し、R3は水素原子又は置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基を示し、R4は同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルコキシル基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジ(C1〜C20)アルキルアミノ基又は置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルキルアミノカルボニル(C1〜C20)アルキルアミノ基を示し、Pは水素原子、(C1〜C6)アシル基又は(C1〜C6)アルコキシカルボニル基を示す]
で表されるカンプトテシン類の高分子誘導体;
(6) R1が置換基を有していてもよい(C1〜C4)アルキル基であり、tが100〜300の整数であり、Aが(C2〜C6)アルキレン基であり、d+e+fが6〜60の整数であり、d+e+fに対するdの割合が0〜60%、eの割合が0〜60%、fの割合が1〜100%であり、R2が水素原子又は置換基を有していてもよい(C1〜C4)アルキル基であり、R3が水素原子又は無置換の(C1〜C4)アルキル基であり、R4が同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい(C1〜C8)アルコキシル基、置換基を有していてもよい(C1〜C8)アルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジ(C1〜C8)アルキルアミノ基又は置換基を有していてもよい(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基であり、Pが(C2〜C4)アシル基である上記(5)に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体;
(7) R1がメチル基であり、Aがトリメチレン基であり、R2が水素原子であり、R3がジメチルアミノメチル基であり、R4がイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基であり、Pがアセチル基である上記(6)に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体;
(8) R1がメチル基であり、Aがトリメチレン基であり、R2がエチル基であり、R3が水素原子であり、R4がイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基であり、Pがアセチル基である上記(6)に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体;
(9) ポリエチレングリコール類部分及びポリアミノグルタミン酸若しくはポリアスパラギン酸のブロック共重合体と、フェノール性カンプトテシン類とを、有機溶媒中で、縮合剤を用いて反応させることにより得られるカンプトテシン類の高分子誘導体;
(10) ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体のカルボン酸基と、フェノール性カンプトテシン類のフェノール性水酸基とを、縮合剤を用いてエステル結合させることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体の製造法;
(11) 上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体を含有する抗癌剤;
に関する。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例3における加水分解酵素非存在状態での薬剤の放出量を全薬剤量に対する比として示す曲線図である。横軸は時間を、縦軸は放出量を表している。
図2は、実施例4におけるマウス血漿存在状態での薬剤の放出量を全薬剤量に対する比として示す曲線図である。横軸は時間を、縦軸は放出量を表している。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体は、フェノール性カンプトテシン類のフェノール性水酸基と、ポリエチレングリコール類部分及び側鎖のカルボン酸基を有するポリマーのカルボン酸基とが、フェニルエステル結合した構造であることを特徴とする。
本発明において、フェノール性カンプトテシン類とは、フェノール性水酸基を有するカンプトテシン誘導体を意味し、特に限定されない。上記フェノール性水酸基は、カンプトテシン骨格中の芳香環部位、特にその9位、10位、11位及び12位、から選ばれる任意の1〜4個の位置に結合していることができる。上記フェノール性カンプトテシン類として具体的には、例えば7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンやトポテカン(9−ジメチルアミノメチル−10−ヒドロキシカンプトテシン;グラクソ・スミスクライン社製)等が挙げられる。
また、本発明におけるポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体には、グラフト型ポリマーやブロック型ポリマー等が含まれる。
グラフト型ポリマーとしては、例えば特開平11−279083号公報に記載のポリエチレングリコールとアクリル酸類との縮合物と、アクリル酸類あるいは無水マレイン酸等を共重合反応に供し、必要に応じて加水分解反応に付すこと等によって得られるポリマーが挙げられる。又、ブロック型ポリマーとしては、末端に官能基を有するポリエチレングリコール類と末端に官能基を有するポリカルボン酸類とを結合したポリマーや、特許文献5に記載されている、末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール類で重合を開始する、アミノ酸活性化物の重合反応によって得られるポリマーが挙げられる。
本発明におけるポリエチレングリコール類には、両末端又は片末端が修飾されたポリエチレングリコールも含まれ、両末端の修飾基は同一でも異なっていてもよい。末端の修飾基としては、置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基が挙げられる。置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基としては、好ましくは置換基を有していてもよい(C1〜C4)アルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、ジメトキシエチル基、ジエトキシエチル基等が挙げられる。
ポリエチレングリコール類部分の分子量は、通常300〜500000程度であり、好ましくは500〜100000程度、更に好ましくは1000〜50000程度である。
ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体における1分子あたりのカルボン酸基の数は、3〜200個が好ましく、より好ましくは6〜60個である。カルボン酸基の数はアルカリによる中和滴定から求められる。その際、カルボン酸基にカンプトテシン類等の置換基が結合している場合等は加水分解後に測定すればよい。
又、本発明におけるポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体の分子量は、通常500〜500000程度であり、好ましくは、600〜100000程度であり、更に好ましくは、800〜80000である。
なお、本明細書中において分子量とは、GPC法で測定した重量平均分子量である。
本発明において、ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体に結合するカンプトテシン類の結合量は、薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常、ポリマーの総カルボン酸基数の1〜100%であり、好ましくは10〜90%である。
なお、本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体には、プロドラッグとして効果を示す誘導体も含まれている。
本発明におけるポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体としては、好ましくはブロック共重合体が挙げられ、ポリ酸性アミノ酸とポリエチレングリコール類とのブロック共重合体が更に好ましい。側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとしては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリンゴ酸、ポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸等が挙げられ、好ましくはポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸等である。
本発明における側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとポリエチレングリコール類とのブロック共重合体としては、例えばアルコキシポリエチレングリコール−ポリアクリル酸、アルコキシポリエチレングリコール−ポリメタクリル酸、アルコキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸、アルコキシポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸等が挙げられる。好ましいブロック共重合体としては例えば、(C1〜C4)アルコキシポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸又は(C1〜C4)アルコキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸等が挙げられる。
更に本発明におけるポリエチレングリコール類とポリ酸性アミノ酸とのブロック共重合体にフェノール性カンプトテシン類をエステル結合したカンプトテシン類の高分子誘導体としては、例えば、上記一般式(I)の化合物[式中、R1は水素原子又は置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基を示し、tは5〜11500の整数を示し、Aは結合基を示し、d+e+fは3〜200の整数を示し、R2は水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基又は置換基を有していてもよいシリル基を示し、R3は水素原子又は置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基を示し、R4は同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルコキシル基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジ(C1〜C20)アルキルアミノ基又は置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルキルアミノカルボニル(C1〜C20)アルキルアミノ基を示し、Pは水素原子、(C1〜C6)アシル基又は(C1〜C6)アルコキシルカルボニル基を示す]が挙げられる。
一般式(I)のR1における置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖又は分岐鎖の(C1〜C6)アルキル基が挙げられ、置換基を有していてもよい直鎖又は分岐鎖の(C1〜C4)アルキル基が好ましく、具体的には例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、2,2−ジメトキシエチル基、2,2−ジエトキシエチル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
一般式(I)のAで表される結合基は、ポリエチレングリコール類とポリ酸性アミノ酸との結合部分であり、生理活性を阻害しない限り特に限定されないが、(C2〜C6)アルキレン基が好ましく、具体的には、例えば、エチレン基、トリメチレン基、ブチレン基等が挙げられ、特にトリメチレン基が好ましい。
一般式(I)のR2における置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基のアルキル基としては、直鎖または分岐鎖の(C1〜C6)アルキル基が挙げられ、直鎖または分岐鎖の(C1〜C4)アルキル基が好ましく、具体的には例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。また、置換基としては、アミノ基、(C1〜C3)アルキルアミノ基、ジ(C1〜C3)アルキルアミノ基等が挙げられる。
一般式(I)のR2における置換基を有していてもよいシリル基としては、例えば、(1,1−ジメチルエチル)ジメチルシリル基等が挙げられる。
一般式(I)のR2として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、ジメチルアミノメチル基、2−[(1−メチルエチル)アミノ]エチル基、2−(トリメチルシリル)エチル基、(4−メチル−1−ピペリジニル)メチル基、[(2,3−ジデオキシ−α−D−エリスロヘキシ−2−エノピラノシル)オキシ]メチル基等が挙げられる。R2として好ましくは水素原子又はエチル基である。
一般式(I)のR3における置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基のアルキル基としては、上記R2における(C1〜C6)アルキル基と同じ基が挙げられる。また、置換基としては、上記R2の置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基におけるのと同じ置換基が挙げられる。
一般式(I)のR3として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、ジメチルアミノメチル基、2−[(1−メチルエチル)アミノ]エチル基等が挙げられる。R3として好ましくは水素原子又はジメチルアミノメチル基である。
一般式(I)のR4における置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルコキシル基として、好ましくは置換基を有していてもよい(C1〜C8)アルコキシル基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられる。
一般式(I)のR4における置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルキルアミノ基として、好ましくは置換基を有していてもよい(C1〜C8)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ベンジルアミノ基、アセチルアミノ基等が挙げられる。又、カルボキシル基を保護したアミノ酸基でもよい。
一般式(I)のR4における置換基を有していてもよいジ(C1〜C20)アルキルアミノ基として、好ましくは置換基を有していてもよいジ(C1〜C8)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、N−メチル−N−ベンジルアミノ基等が挙げられる。
一般式(I)のR4における置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルキルアミノカルボニル(C1〜C20)アルキルアミノ基は、N(R5)CONHR6[R5及びR6は同一でも異なっていてもよい(C1〜C20)のアルキル基]であり、好ましくは置換基を有していてもよい(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には、メチルアミノカルボニルメチルアミノ基、エチルアミノカルボニルエチルアミノ基、イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノカルボニルシクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。
一般式(I)のPにおける(C1〜C6)アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基等が挙げられ、アセチル基が好ましい。
一般式(I)のPにおける(C1〜C6)アルコキシルカルボニル基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
一般式(I)のd、e及びfはそれぞれ整数であって、d+e+fとしては、3〜200の整数であるが、好ましくは6〜60の整数、更に好ましくは6〜40の整数である。また、d+e+fに対するdの割合は好ましくは0〜60%、より好ましくは5〜50%、更に好ましくは15〜40%であり、eの割合は好ましくは0〜60%、より好ましくは0〜40%であり、fの割合は1〜100%、好ましくは10〜90%、より好ましくは30〜70%である。上記一般式(I)の化合物中におけるカンプトテシン類とそれ以外の基の結合したポリグルタミン酸と遊離のポリグルタミン酸とは、ブロック重合型であっても、ランダム重合型であってもよい。d+e+fは上記のポリマー1分子中のカルボン酸基の総数であり、原料の仕込み量や前記の中和滴定から求められる。ポリマー中のカンプトテシン類の結合したグルタミン酸基数fは、例えば紫外線吸収スペクトルの強度から求めることができる。R4の結合したグルタミン酸基数dは、もしカンプトテシン類の高分子誘導体がミセルを形成する場合にはミセルを壊す条件下、水素核磁気共鳴スペクトルを測定し、得られるシグナルの強度比から求めることができる。
一般式(I)のtは、通常5〜11500程度の整数であるが、好ましくは8〜2300程度の整数であり、更に好ましくは16〜1200程度の整数、特に好ましくは100〜300程度の整数である。上記tは、例えばポリエチレングリコール類部分及び側鎖のカルボン酸基を有するポリマーの分子量から、上記カルボン酸基の総数に基づく側鎖にカルボン酸基を有する部分ポリマーの分子量を除くことにより求めることができる。
上記ポリエチレングリコール類とカンプトテシン類の結合したポリグルタミン酸とのブロック共重合体は、水中でポリエチレングリコール類を外殻とするミセルを形成していてもよい。
本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体の製造は、例えば特許文献5に記載の方法に準じて調製されたポリエチレングリコール類−ポリグルタミン酸ブロック共重合体と、副反応を起こす可能性のある活性基を有する場合はその活性基を保護したフェノール性水酸基を有するカンプトテシン類とを、両者が溶解する溶媒中、好ましくは有機溶媒中、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリドン(NMP)等の水溶性極性溶媒中、通常0〜180℃、好ましくは5〜50℃の温度で、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキシキノリノン(EEDQ)、二炭酸ジ−tert−ブチル((BOC)O)等の縮合剤を用いた反応に付すことにより実施することができる。上記縮合反応の際に、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の反応補助剤を用いてもよい。反応後、必要に応じて脱保護を行い、通常の分離等のための操作を行うことにより、本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体を取得することができる。
ただし、本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体の製造法は上記の方法に限定されるわけではない。
また、反応条件の調整により高分子誘導体中の単量体組成を調整することもできる。例えば、縮合剤の変更、具体的には縮合剤としてEEDQ或いは(BOC)O等を使用するエステル活性化法、或いはオキシ塩化リン等を使用する酸クロリド形成法、によれば、上記一般式(I)の化合物中におけるカンプトテシン類以外の基の結合したポリグルタミン酸の数、即ちdを0にすることもできる。加えて、R4がアルキルアミノカルボニルアルキルアミノ基であるカンプトテシン類の高分子誘導体は、上記のカルボジイミド類を縮合剤として用いる反応によっても得られる。
また、一般式(I)の化合物中にR4を導入する方法としては、共重合体のカルボン酸基を上記したような方法にて活性化してから、添加したい量のアルコール、アミン等を塩基性条件下に反応させる方法、アルコールやアミンの方を活性化させてからポリマーに反応させる方法等も挙げられる。また、ポリマーを精製した後に、同様の反応でポリマー中の未反応のカルボン酸基を再活性化させることができ、ここにフェノール性水酸基を有するカンプトテシン類を縮合してもよいし、或いは別のアルコール、アミン等を繰り返し反応させれば、R4の種々の置換基の混成体を合成することができるので、最後にフェノール性水酸基を有するカンプトテシン類を縮合してもよい。
本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体は、抗癌剤として使用することができる。本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体は、主としてプロドラッグとして、体内においてカンプトテシン類を放出し、それが抗腫瘍活性を示すものと推定される。本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体は、注射剤、錠剤、散剤等通常使用されている剤形に製剤化することにより使用され得る。製剤化に当っては、通常使用されている薬学的に許容される担体、例えば結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、保存剤、無痛化剤、色素、香料等が使用できる。注射剤の場合は、通常溶剤を使用する。溶剤としては、例えば水、生理食塩水、5%ブドウ糖又はマンニトール液、水溶性有機溶媒、例えばグリセロール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、クレモフォア等、及びそれらの混合液、並びに水と該水溶性有機溶媒の混合液等が挙げられる。
本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体の投与量は、患者の性別、年齢、生理的状態、病態等により当然変更され得るが、非経口的に、通常、成人1日当たり、活性成分として0.01〜500mg/m(体表面積)、好ましくは0.1〜250mg/mを投与する。注射による投与は、静脈、動脈、患部(腫瘍部)等に行われる。
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 化合物1(分子量約12000のメトキシポリエチレングリコールと重合数が約28のポリグルタミン酸のブロック共重合体と、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンとの縮合体:一般式(I)のR1=Me、A=トリメチレン基、d+e+f=約28、t=約273、R2=Et、R3=H、P=Ac)の合成
下記参考例1に記載した、メトキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体(210mg)及び、特公昭62−47193号公報に記載された方法にて製造した、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(80mg)をDMF(14ml)に溶解し、DMAP(13.5mg)、DIPC(0.116ml)を加え、室温にて20時間撹拌した。反応液にエタノール(40ml)及びジイソプロピルエーテル(160ml)を加え、室温にて30分攪拌した後、沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、150ml)で、洗浄した。得られた沈析物を、アセトニトリル/水(1/3(v/v)、40ml)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウエックス50(H)、5ml)に通塔し、アセトニトリル/水(1/3(v/v)、40ml)にて、溶出した。得られた溶出画分から、アセトニトリルを減圧下留去したのち、凍結乾燥することによって、化合物1(270mg)を得た。化合物1のポリグルタミン酸部分には、カンプトテシン類とイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基が結合している。本化合物のカンプトテシン類の含量を、DMF溶液中での330nmにおける吸光度に基づいて定量したところ、25.4%(w/w)であった。又、イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基の含量は、カンプトテシン類の高分子誘導体を重水酸化ナトリウムを含む重水−重アセトニトリル混合溶液中で水素核磁気共鳴スペクトルを測定し、そのシグナルの強度比と上記のカンプトテシン類の含量から算出したところ、3.0%(w/w)であった。この結果、d+e+fに対するdの割合は15.5%、fの割合は48.4%であった。上記で得られた化合物1について高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、遊離のカンプトテシン類は0.3%以下の含量であった。
実施例2 化合物2(分子量約12000のモノメトキシポリエチレングリコールと重合数が約7のポリグルタミン酸のブロック共重合体と、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンとの縮合体:一般式(I)のR1=Me、A=トリメチレン基、d+e+f=約7、t=約273、R2=Et、R3=H、P=Ac)の合成
下記参考例2に記載した、メトキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸(797mg)及び、特公昭62−47193号公報に記載された方法にて製造した、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(80mg)をDMF(14ml)に溶解し、DMAP(16.6mg)、DIPC(0.142ml)を加え、室温にて20時間撹拌した。反応液にエタノール(40ml)及びジイソプロピルエーテル(160ml)を加え、室温にて30分攪拌した後、沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、150ml)で、洗浄した。得られた沈析物を、アセトニトリル/水(1/3(v/v)、40ml)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウエックス50(H)、5ml)に通塔し、アセトニトリル/水(1/3(v/v)、40ml)にて、溶出した。得られた溶出画分から、アセトニトリルを減圧下留去したのち、凍結乾燥することによって、化合物2(818mg)を得た。本化合物のカンプトテシン類の含量を、DMF溶液中での330nmにおける吸光度に基づいて定量したところ、9.6%(w/w)であった。又、実施例1と同様の操作によりイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基の含量を求めたところ、1.5%(w/w)であった。この結果、d+e+fに対するdの割合は20.3%、fの割合は47.2%であった。上記で得られた化合物2についてHPLCで分析したところ、遊離のカンプトテシン類は0.2%以下の含量であった。
実施例3(加水分解酵素非存在状態における薬剤放出)
実施例1及び2のカンプトテシン類の高分子誘導体を、それぞれ、PBS(リン酸緩衝生理食塩水;pH7.1)に溶解し、37℃にてインキュベートした。該高分子誘導体より放出された7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンを、HPLCにて分離・測定した。本処理における標準曲線と比較して、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンの量を計算した。その値を高分子プロドラッグの薬剤含有量から求めた全薬剤量の比として図1に示した。図1は、本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体から、加水分解酵素に依存せずに薬物が徐放されることを示している。
実施例4(マウス血漿存在状態における薬剤放出)
実施例1及び2のカンプトテシン類の高分子誘導体を、それぞれ、5%グルコース水溶液に溶解後、マウス(オス)血漿を、5%グルコース水溶液の4倍量(v/v)加え、37℃にてインキュベートした。その後、0.1mlづつを経時的に取り出し、メタノール/アセトニトリル(1/1(v/v)、0.4ml)を加えて除タンパク処理を行い、該高分子誘導体より放出された7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンを、HPLCにて分離・測定した。本処理における標準曲線と比較して、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンの量を計算した。その値を高分子プロドラッグの薬剤含有量から求めた全薬剤量の比として図2に示した。図2は本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体から、血漿中でも薬物が徐放されることを示している。
実施例5(抗腫瘍作用)
マウス皮下で継代培養しているマウス大腸癌Colon26腫瘍を約2mm角のブロックにし、套管針を用いてマウス皮下に移植した。腫瘍移植後7日目に本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体及び対照薬としてのCPT−11を、各々5%グルコース水溶液にて溶解し、単回静脈内に投与した。投与後、腫瘍の長径(Lmm)及び短径(Wmm)を、キャリパーを用いて2〜3日間隔で計測し、腫瘍体積を(LxW)/2により計算し、投与開始日の体積から相対腫瘍体積を求めた(表1)。又、毒性の指標として、体重の変動も調べた(表2)。その結果、本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体は、毒性(体重減少)は少なく、CPT−11に比較して抗腫瘍効果が増強されていた。又、薬剤含有量が多いカンプトテシン類の高分子誘導体(化合物1)は、薬剤含有量が少ないカンプトテシン類の高分子誘導体(化合物2)と比べて、より少ない投与量で高い抗腫瘍効果が得られた。


参考例1(分子量約12000のモノメトキシポリエチレングリコールと重合数が約28のポリグルタミン酸のブロック共重合体 N−アセチル化物の合成)
片末端メトキシ基片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日本油脂社製、平均分子量12000、1.0g)をDMSO(20ml)に溶解後、γ−ベンジル L−グルタメート N−カルボン酸無水物(0.77g)を加えて35℃にて20時間撹拌した。反応液にエタノール(80ml)及びジイソプロピルエーテル(320ml)を加え、室温にて90分攪拌した後、沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、100ml)で洗浄した。得られた沈析物をDMF(20ml)に溶解し、無水酢酸(0.4ml)を加えて室温にて15時間撹拌した。反応液にエタノール(80ml)及びジイソプロピルエーテル(320ml)を加え、室温にて90分攪拌した後、沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、100ml)で洗浄することによって、1.56gのポリマーを得た。得られたポリマーをDMF(47ml)に溶解後、5%パラジウム−炭素(780mg)を加えて、35℃にて3時間加水素分解を行った。反応液にメタノール(90ml)及びセライト(8g)を加えて2時間撹拌したのち、5%パラジウム−炭素を濾別した。減圧下にてメタノールを留去したのち、エタノール(90ml)及びジイソプロピルエーテル(360ml)を加え、室温にて90分攪拌した。沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、100ml)で洗浄したのち、10%食塩水(100ml)に溶解した。1N水酸化ナトリウム水溶液にて溶解液のpHを10.0に調整後、分配吸着樹脂カラムクロマトグラフィー、続いてイオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶出した溶液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、目的化合物(1.18g)を得た。0.02N水酸化ナトリウムを用いた滴定値に基づく本化合物1分子中のグルタミン酸の重合数は約28であった。
参考例2(分子量約12000のモノメトキシポリエチレングリコールと重合数が約7のポリグルタミン酸のブロック共重合体 N−アセチル化物の合成)
片末端メトキシ基片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日本油脂社製、平均分子量12000、2.0g)をDMSO(40ml)に溶解後、γ−ベンジル L−グルタメート N−カルボン酸無水物(0.40g)を加えて35℃にて20時間撹拌した。反応液にエタノール(160ml)及びジイソプロピルエーテル(640ml)を加え、室温にて90分攪拌した後、沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、150ml)で洗浄した。得られた沈析物をDMF(40ml)に溶解し、無水酢酸(0.8ml)を加えて室温にて15時間撹拌した。反応液にエタノール(160ml)及びジイソプロピルエーテル(640ml)を加え、室温にて90分攪拌した後、沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、150ml)で洗浄することによって、2.12gのポリマーを得た。得られたポリマーをDMF(64ml)に溶解した後、5%パラジウム−炭素(1.06g)を加えて、35℃にて3時間加水素分解を行った。反応液にメタノール(130ml)及びセライト(14g)を加えて2時間撹拌したのち、5%パラジウム−炭素を濾別した。減圧下にてメタノールを留去したのち、エタノール(130ml)及びジイソプロピルエーテル(520ml)を加え、室温にて90分攪拌した。沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、160ml)で洗浄したのち、10%食塩水(160ml)に溶解した。1N水酸化ナトリウム水溶液にて溶解液のpHを10.0に調整後、分配吸着樹脂カラムクロマトグラフィー、続いてイオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶出した溶液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、目的化合物(1.56g)を得た。0.02N水酸化ナトリウムを用いた滴定値に基づく本化合物1分子中のグルタミン酸の重合数は約7であった。
【産業上の利用の可能性】
本発明のカンプトテシン類の高分子誘導体は、化学的に分解しやすいフェニルエステル結合によりカンプトテシン類を結合させたことにより、生体内においても徐放性を有し、治療効果に優れた高分子誘導体である。更に、ミセルを形成する高分子誘導体は選択的に患部にて薬効を示し、副作用の少ないことが期待できる。又、酵素に依存しない生理活性物質の放出が可能であることは、治療効果の点で患者の個体差に影響されにくいと期待される。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体のカルボン酸基と、フェノール性カンプトテシン類のフェノール性水酸基とが、エステル結合した構造であることを特徴とするカンプトテシン類の高分子誘導体。
【請求項2】
ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体が、ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとのブロック共重合体である請求項1に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体。
【請求項3】
側鎖にカルボン酸基を有するポリマーが、ポリ酸性アミノ酸である請求項1又は2に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体。
【請求項4】
ポリ酸性アミノ酸がポリグルタミン酸又はポリアスパラギン酸である請求項3に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体。
【請求項5】
一般式(I)

[式中、R1は水素原子又は置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基を示し、tは5〜11500の整数を示し、Aは結合基を示し、d+e+fは3〜200の整数を示し、R2は水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基又は置換基を有していてもよいシリル基を示し、R3は水素原子又は置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基を示し、R4は同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルコキシル基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジ(C1〜C20)アルキルアミノ基又は置換基を有していてもよい(C1〜C20)アルキルアミノカルボニル(C1〜C20)アルキルアミノ基を示し、Pは水素原子、(C1〜C6)アシル基又は(C1〜C6)アルコキシカルボニル基を示す]
で表されるカンプトテシン類の高分子誘導体。
【請求項6】
R1が置換基を有していてもよい(C1〜C4)アルキル基であり、tが100〜300の整数であり、Aが(C2〜C6)アルキレン基であり、d+e+fが6〜60の整数であり、d+e+fに対するdの割合が0〜60%、eの割合が0〜60%、fの割合が1〜100%であり、R2が水素原子又は置換基を有していてもよい(C1〜C4)アルキル基であり、R3が水素原子又は無置換の(C1〜C4)アルキル基であり、R4が同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい(C1〜C8)アルコキシル基、置換基を有していてもよい(C1〜C8)アルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジ(C1〜C8)アルキルアミノ基又は置換基を有していてもよい(C1〜C8)アルキルアミノカルボニル(C1〜C8)アルキルアミノ基であり、Pが(C2〜C4)アシル基である請求項5に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体。
【請求項7】
R1がメチル基であり、Aがトリメチレン基であり、R2が水素原子であり、R3がジメチルアミノメチル基であり、R4がイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基であり、Pがアセチル基である請求項6に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体。
【請求項8】
R1がメチル基であり、Aがトリメチレン基であり、R2がエチル基であり、R3が水素原子であり、R4がイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基であり、Pがアセチル基である請求項6に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体。
【請求項9】
ポリエチレングリコール類部分及びポリアミノグルタミン酸若しくはポリアスパラギン酸のブロック共重合体と、フェノール性カンプトテシン類とを、有機溶媒中で、縮合剤を用いて反応させることにより得られるカンプトテシン類の高分子誘導体。
【請求項10】
ポリエチレングリコール類と側鎖にカルボン酸基を有するポリマーとの共重合体のカルボン酸基と、フェノール性カンプトテシン類のフェノール性水酸基とを、縮合剤を用いてエステル結合させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体の製造法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のカンプトテシン類の高分子誘導体を含有する抗癌剤。

【国際公開番号】WO2004/039869
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548065(P2004−548065)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013838
【国際出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】