説明

カーテンのひだ付け方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、カーテン生地に丈方向のひだを多数本付けて波板状とするためのひだ付け方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】カーテンとして、図3に示すように、波板状に断面円弧形のひだ山部10aおよびひだ谷部10bを交互に、かつ丈方向に長く型付けにより形成し、熱処理で固定したカーテン10が知られている。このひだ付きカーテン10は、縫製で天部のみにひだを付けたカーテンに比べ、吊下げ時に裾の高さが揃って外観が良好であるため、好まれている。
【0003】上記のひだを形成する方法の一例が特公平4−23025号公報に記載されている。この方法によれば、カーテン生地の大きさに合わせた第1型紙と第2型紙とを重ね合わせ、それら型紙の外側にあってカーテンのひだ方向に合わせて平行に並べた柱状体を、第1型紙と第2型紙とで交互に間にくるように配列してそれら型紙の外側に貼着し、これら柱状体を相手方の型紙の方に押し込んで断面波形のひだとなるように湾曲し、蒸熱を利用して上記ひだを固定して、夫々を、波形の弾性力を有する紙型に形成し、この波形紙型を伸張させて、伸張した第1型紙と第2型紙との間にカーテン生地を挟み込ませてカーテン生地を型込めした後、波形型紙の弾性力によって所定の形態になるように復元させて紙型を設定し、この設定された紙型を処理釜に入れて脱気して空気を除去し、ついで蒸気を供給して蒸熱し、蒸熱後処理釜内を減圧冷却し、続いて蒸熱と減圧冷却とを繰返してカーテン生地のひだ付けをする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の方法は、第1、第2の型紙に型付けする工程を除いても、第1、第2の型紙間にカーテン生地を挟む型込めの際に上記型紙の伸張を可能にする広いスペースと型込めしたカーテン生地を高圧蒸熱で処理するための高圧の処理釜と真空ポンプおよびそれらの設置スペーすを必要とし、更に第1、第2の型紙に型付けする工程を含めると、第1、第2の型紙を伸張状態で重ねるためのスペース、この伸張状態の型紙を乗せることができるように多数本の柱状体を間隔を空けて配列するためのスペース、この型紙を高圧蒸熱で処理するための大容量の高圧処理釜と真空ポンプおよびそれらの設置用スペースを必要とした。
【0005】また、上記の方法は、第1、第2の型紙間にカーテン生地を挟み込み、これを高圧処理釜に運んで蒸熱で処理するものであり、しかも蒸熱で処理する際は、処理釜を脱気した後、蒸気を供給し、次いで減圧冷却し、さらに蒸熱と減圧冷却とを繰り返すので、生産性が低く、大量生産には不向きであった。
【0006】この発明は、カーテン生地にプレス加工を施すことにより、波板状のひだをカーテン生地の全丈にわたって形成し、これによって型紙や大容量の高圧処理釜および真空ポンプを不要とし、装置を小型化してスペースを節約し、生産性を向上し、コストを低下するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、箱形の上部基板の下面開口部に波板状に形成され、その山方向長さがカーテン生地の丈長よりも大きく、表面が繊維シートで被覆された波形多孔板を固定してなる上型と、箱形の下部基板の上面開口部に上記上型の波形多孔板と噛合って密着可能な波板状に形成され、その山方向長さがカーテン生地の丈長よりも大きく、表面が繊維シートで被覆された波形多孔板を固定してなる下型との間に上記の繊維シートを介して熱可塑性を有するカーテン生地を強く挟み、上部基板および下部基板の一方から温度100〜160℃の過熱蒸気を供給しながら他方から吸引して該過熱蒸気を上記カーテン生地の厚さ方向に通過させ、しかるのち過熱蒸気を冷風に切替えて上記のカーテン生地を急冷することを特徴とするカーテンのひだ付け方法である。
【0008】上記のカーテン生地は、熱可塑性を有する編織物であればよいが、特にナイロン、ポリエステル、アクリル等の合成繊維を50%以上含有する場合は、ひだ付けが容易であり、得られるひだの耐久性も向上する。そして、この繊維の種類に応じて過熱蒸気の温度が設定される。例えば、カーテン生地がアクリル繊維製の場合は100℃に、またポリエステル繊維製の場合は160℃が好ましい。また、加熱時間は目的のひだが熱固定される程度、例えば3〜5分程度に設定される。なお、カーテンは、カーテン用の原反織物を所望のカーテン丈に合わせて切断し、得られた複数枚のカーテン生地を幅方向につないで所望のカーテン幅に合わせているが、この発明に使用するカーテン生地は、カーテン丈に合わせて切断したものであれば、幅方向につなぐ前の単位カーテン生地、またはつないだ後の広幅カーテン生地のいずれでもよい。
【0009】上記の第1手段は、カーテン生地にプレス加工で波形に型付けするものであるが、このプレスに使用する上型および下型は、互いに噛合う波形多孔板を備えており、この波形多孔板は、その山または谷方向の長さがカーテン生地の丈よりも大きく設定される。他方、波形多孔板の幅は、任意であるが、少なくとも1枚の単位カーテン生地にひだを形成できる幅、すなわち波形多孔板を平坦に延ばしたときの幅が単位カーテン生地の幅よりも大きいことが好ましい。なお、上下の波形多孔板の各表面を被覆する繊維シートは、フェルト、不織布、織物、編物のいずれでもよい。
【0010】波形多孔板の幅は、上記のとおり任意に設定できる。例えば、波形多孔板の幅を広幅カーテン生地の幅以上に設定し、広幅カーテン生地の全幅に対し1回のプレスでひだ付けを行ってもよい。また、波形多孔板の幅を広幅カーテン生地の幅よりも狭く設定し、この広幅カーテン生地に対して片側から波形多孔板の幅ずつプレスを複数回行ってひだ付けしてもよい。また、波形多孔板の幅を単位カーテン生地にひだを形成できる幅に設定し、必要枚数の単位カーテン生地に1枚ずつひだ付けし、しかるのち接合してもよい。また、波形多孔板の幅を単位カーテン生地にひだを形成できる幅よりも狭く設定し、単位カーテン生地に複数回のプレスでひだ付けし、しかるのち複数枚の単位カーテン生地を接合してもよい。
【0011】
【0012】
【0013】
【作用】第1手段において、上型および下型を開き、下型の波形多孔板を被覆する繊維シート上にカーテン生地を置き、上型および下型を閉じると、上下の波形多孔板が噛合うことによって上下の波形多孔板間に上下の繊維シートを介してカーテン生地が波板状に屈曲されながら挟み込まれる。次いで、上型および下型の一方から温度100〜160℃の過熱蒸気を噴射しながら他方から吸引して上記のカーテン生地に所定時間の湿熱処理を施すと、カーテン生地に上記の波形多孔板の形状に応じた塑性変形と織りずれ変形を生じる。そして、冷風等で急冷することにより、上記の変形がセットされ、波板状のひだを有し、テカリの無いカーテンが得られる。
【0014】
【0015】
【実施例】
実施例1図1は、上記の第1手段に使用することができるプレスの上型11および下型15の一例を示す断面図であり、上型11は、昇降フレーム(図示されていない)に固定された箱形の上部基板12の下面開口部にステンレス鋼板製の波形多孔板13を固定し、その表面(下面)をフェルト14で被覆して形成され、上部基板12の上底に開口した排出口12aがバキューム装置(図示されていない)に接続されている。一方、下型15は、固定ベース(図示されていない)に固定された箱形の下部基板16の上面開口部にステンレス鋼板製の波形多孔板17を固定し、その表面(上面)をフェルト18で被覆して形成され、下部基板16の下底に開口した供給口16aが切り替え弁(図示されていない)を介してボイラーおよび送風機に並列接続されている。
【0016】図示のように下型15のフェルト18上にポリエステルフィラメント糸条からなる熱可塑性のカーテン生地10Aを乗せ、上型11を下降させて上下の波形多孔板13、17を噛み合わせると、上記のカーテン生地10Aが上下のフェルト14、18の間に挟まれ、その表面に沿った波形に屈曲され、その形で強く挟圧される。次いで、上記のバキューム装置を駆動して上型11の内側空気を吸引しながら、この下型15の内側空所に下側の供給口16aから温度100〜160℃の過熱蒸気を噴出させると、この過熱蒸気は、下側の波形多孔板17の小孔、フェルト18の繊維間隙、カーテン生地10A、上側のフェルト14、波形多孔板13を迅速に通過し、その間にカーテン生地10Aを急速に湿熱処理し、しかるのちバキューム装置から大気中に放出される。そして、3〜5分間の処理後、過熱蒸気を冷風に切り替えることにより、上記のカーテン生地10Aが急速に冷却され、波形ひだを有する図3のカーテン10が得られる。
【0017】
【0018】
【0019】
【発明の効果】請求項1に記載された発明によれば、カーテン生地を波形多孔板の幅に対応する幅ずつ短時間で波板状に型付けすることができ、カーテン生地の幅が波形多孔板の幅に比べて広い場合であっても、その差に応じてカーテン生地の片側から波形多孔板の幅ずつ順に型付けを繰り返すことにより、極めて能率的にひだ付けすることができ、従来に比べて生産性が著しく向上する。また、プレス加工でひだ付けするので、従来の大容量の高圧処理釜や真空ポンプが不要となり、スペースが節約される。
【0020】
【0021】請求項2に記載された発明は、カーテン生地が熱可塑性合成繊維を50%以上含むものであるから、カーテン生地に形成したひだの固定が容易になると共に、得られたひだの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に使用する装置の横断面図である。
【図2】ひだを形成したカーテンの斜視図である。
【符号の説明】
10:カーテン、10a:ひだ山、10b:ひだ谷、10A:カーテン生地、11:上型、12、16:箱形の基板、12a:過熱蒸気(冷風)の排出口、13、17:波形多孔板、14、18:繊維シート(フェルト)、15:下型、16a:過熱蒸気(冷風)の供給口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 箱形の上部基板の下面開口部に波板状に形成され、その山方向長さがカーテン生地の丈長よりも大きく、表面が繊維シートで被覆された波形多孔板を固定してなる上型と、箱形の下部基板の上面開口部に上記上型の波形多孔板と噛合って密着可能な波板状に形成され、その山方向長さがカーテン生地の丈長よりも大きく、表面が繊維シートで被覆された波形多孔板を固定してなる下型との間に上記の繊維シートを介して熱可塑性を有するカーテン生地を強く挟み、上部基板および下部基板の一方から温度100〜160℃の過熱蒸気を供給しながら他方から吸引して該過熱蒸気を上記カーテン生地の厚さ方向に通過させ、しかるのち過熱蒸気を冷風に切替えて上記のカーテン生地を急冷することを特徴とするカーテンのひだ付け方法。
【請求項2】 カーテン生地が熱可塑性合成繊維を50%以上含むものである請求項1に記載のカーテンのひだ付け方法。

【図1】
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【図2】
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【特許番号】第2652519号
【登録日】平成9年(1997)5月23日
【発行日】平成9年(1997)9月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−169006
【出願日】平成6年(1994)6月27日
【公開番号】特開平8−13326
【公開日】平成8年(1996)1月16日
【出願人】(591158335)株式会社鈴寅 (20)
【参考文献】
【文献】特公 平4−23025(JP,B2)
【文献】特公 昭49−38942(JP,B1)