説明

カーテンのヒダ形成テープ

【課題】 カーテン最上部に縫付けられたテープに通された引き紐が、軽い力で引き絞る事ができ、簡単に見栄えのよいカーテンのヒダを形成できるテープを提供する。
【解決手段】 テープ長さ方向の縦糸にマルチフィラメントを用い、幅方向の横糸には芯部に高融点素材であり、鞘部分には低融点成分でできた、二重構造の芯鞘型複合フィラメントをテープ状に製織し、長さ方向に延長するトンネル状部分を過密にした縦糸で構成しその部分に規則的に引き紐を通し、所望温度にて加熱加工を施した織物テープである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテン最上部に装着するテープであって、このテープに織り込まれた引き紐を引き絞ることによって、カーテンのヒダを簡単に形成できるテープとその製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーテンの最上部に装着し、テープに織り込まれた引き紐を引き絞ることにより、カーテンのヒダを形成させている。
【0003】
この時、テープに織り込まれた引き紐の配置、間隔などによって形成されるヒダの種類や大きさ(高さ)が決められた。
【0004】
それにより、ミシンによる縫製作業では形成しにくいデザインのヒダも、容易に形成することができた。
【0005】
従って、引き紐を絞り形成されるヒダの間隔と後述するテープ生地の剛性、目崩れ防止は確実なものが要求されていた。
(特許文献1、2参照)
【0005】
従来のヒダ形成テープは、長さ方向には縦糸として、しなやかさのあるマルチフィラメント(150〜300デシテックス程度)を用い、幅方向の横糸には剛性を必要とすることからモノフィラメント(300〜440デシテックス)が使用されていた。
【0006】
しかし、マルチフィラメントとモノフィラメントの交織だけでは糸同士の交差点の固着が不安定で、テープ生地に目崩れが起こってしまっていた。
【0007】
これを解消する為、テープを製織後テープ全体に樹脂液を浸透させ、その後乾燥させる、目崩れ防止の樹脂加工を必要とされた。(特許文献3)
【0008】
【特許文献1】 特許第2796672号
【特許文献2】 特許第3386448号
【特許文献3】 特許第3639639号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目崩れ防止の樹脂加工は、製織したテープを樹脂液に浸し、ローラーで余分な樹脂液を絞り、乾燥させる工程を一連の工程で行うものの、この時の樹脂濃度の設定には最新の注意が必要であった。
【0010】
樹脂濃度として、東海製油工業(株)のマロンテックスHD−A(アクリル酢ビ系)を使用した場合10%以上の濃度での加工で目崩れ防止の効果があった。
【0011】
樹脂加工は、生地の目崩れ防止目的では非常に効果的であるが、樹脂液をテープ全体に浸透させる必要がある。これにより縦糸と横糸を固着させる効果はあるものの、テープに組込まれている引き紐とそれに密着する糸とも固着されて、引き紐の動きを重くしていた。
【0012】
また、引き紐の動きを円滑なものにするには、樹脂液濃度を低く設定する事が好ましいが、目崩れの防止にはならない。目崩れの発生は、薄手のカーテンに装着した場合には目崩れが透けて見えたり、またカーテンのヒダが不均等で見栄えの悪いものにした。また、それらを補修するためにヒダ形成の作業効率を著しく低下させた。目崩れの防止は、カーテンのヒダ形成テープにおいて絶対条件であった。
【0013】
本発明は以上の問題を解消し、テープ生産効率向上と、カーテンのヒダ形成作業の効率を向上させるテープの発明である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題を解決するためには、カーテンの最上部に装着して、テープに織り込まれた引き紐を引き絞る事により、カーテンのヒダ形成テープにおいて、テープの長さ方向の縦糸にマルチフィラメントを用い、対する横糸には芯鞘型複合マルチフィラメントを使用して製織し、所望温度にて加熱加工をした事を特徴とするものである。
【0015】
前記テープの組織構成として、長さ方向に延長する縦糸の織り組織によるトンネル状部分を有し、このトンネル状部分には引き紐を規則的に等間隔にて織り込んであり、このトンネル状部分の縦糸を他の部分の縦糸より1.2倍程度過密にし、またトンネル状部分の両脇に沿う縦糸に1本ずつ芯鞘型複合マルチフィラメントを配置した事を特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下のとおり、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
本発明テープは図2に示すように、カーテン(2)の最上部(13)に縫付けられ、テープに織り込まれた引き紐を引き絞ることによってカーテンのヒダ(11)を形成するテープである。
【0018】
図1に示すように、本テープ(1)は長さ方向(L)に縦糸(4)としてポリエステルマルチフィラメントを用い、幅方向(W)には横糸(5)として図6に示すように芯部分(a)に融点が約250℃の高融点ポリエステル素材をもち、鞘部分(b)には160℃の低融点ポリエステル成分からできた二重構造の芯鞘型複合マルチフィラメント(5)を使用し、テープ状に製織する。
【0019】
この時、本テープには図1に示すように、長さ方向(L)に延長するトンネル状部分(A)を縦糸(4)の織り組織によって、この場合2箇所に設ける。
【0020】
このトンネル状部分(A)は、図3で示すように前述の縦糸(4)を他の部分より1.2倍程度過密に配し、トンネル状部分(A)の両側に沿う縦糸には芯鞘複合フィラメント(6)を1本ずつ配置する。なお、図で示す縦糸及び横糸はイメージとして示したもので実際の本数とは関係ないものとする。
【0021】
図3で示すように、トンネル状部分(A)には、縦糸(4)にて包み込むようにして引き紐(3)を織り込む。
【0022】
この引き紐(3)は、図5に示すように一定の間隔にてトンネル状部分(A)の中を通したり、テープ表面に浮かせたりして規則的に織り込まれている。
【0023】
また、この引き紐(3)はテープの幅(W)やカーテンに形成しようとするヒダの形状によって、設定箇所や本数および通る間隔が変更され、それによって、トンネル状部分の位置も変更がされるものとする。
【0024】
製織された上記テープ(1)は、図4で示すように入力側ローラー(9)と出力側ローラー(10)によって、テープ(1)を常時伸張状態を維持しながら補助ローラー(7)を介し、加熱ローラー(8)の表面を沿わせ、加熱ローラーの表面温度165℃を上限として160℃から165℃(163℃が理想である)の範囲で、7〜8秒間加熱加工を施す。
【0025】
以上の素材構成と製造工程を経て、前述の縦糸(4)と横糸(5)の交差点は確実に接着された。
【0026】
また、前述の縦糸(4)と横糸(5)の固着は確実なものであるが、図3に示すトンネル状部分(A)は縦糸(4)を過密にしたことにより、トンネル内部への熱の伝達が悪くなり、その部分に配置された横糸(5)の溶融率を低下させ、トンネル内部に配置した引き紐(3)とそれに密着する部分との固着を防止することができた。
【0027】
またこの時、図3に示すトンネル状部分(A)の両側に織りこまれた縦糸(6)の芯鞘型複合フィラメントによって、トンネル状部分(A)の過密にした縦糸群を乱れることなく保持することができた。
【0028】
以上のことにより、引き紐(3)は非常に軽い滑りにすることができた。
【実施例】
【0029】
本発明に係るテープ製作の一部の例を説明し、後述の物性試験により従来のものと比較した。
【0030】
(実施例1)
図10に示す縦糸(4)をエステルマルチフィラメントウーリー加工糸168dtex/36f、撚糸120回/mを2本を合撚した糸を、2.54cmあたり67本の割合で配し、トンネル状部分(A)には上記縦糸本数の1.2倍の割合にし、4箇所に配置した。引き紐(3)はエステルマルチフィラメントウーリー加工糸330dtexの3本合撚して、それをさらに3本合撚した撚糸紐を使用した。トンネル状部分の両脇側に沿う縦糸(6)には、芯鞘型複合マルチフィラメント280dtex/48fを使用した。横糸(5)として、芯鞘型複合マルチフィラメント560dtex/48fを2.54cmあたり30本の割合で仕上り幅75mmになるように製織した。
【0031】
前記製織テープを熱加工機(図4)にて加熱ローラーの表面温度163℃の設定にて、7秒間加熱加工した。
【0032】
(比較例1)
従来のテープを比較対象物として、前述の縦糸(4)を同様の割合で使用し、トンネル状部分も他の部分の縦糸と同じ割合の本数で配置し、横糸にはポリエステルモノフィラメント370dtexを2.54cm当たり30本の割合で製織し、10%濃度のアクリル酢ビ系樹脂を用いて樹脂加工をした。
【0033】
実施例1と比較例1とを図9に示すように、定速伸長形引張試験機を使用して、長さ30cmに切断したテープの一端を、引き紐を押え付けないように試験機の台座(14)に固定し、反対部分のテープに織り込まれた引き紐(3)を4本纏めて引上げ固定器具(17)に固定して、毎分30cmの速度にて約30cm間、上方向に引っ張り上げ、その時の最大抵抗力をそれぞれ計測した結果は下記の表1の通りである。
【0034】
【表1】

【発明の効果】
【0035】
以上のことから本発明は次のように優れた効果がある。
【0036】
本発明は、カーテンのヒダ形成テープにおける絶対条件である目崩れ防止が前述の資材構成と製織後の加熱加工で容易に達成され、尚且つ従来の樹脂加工の煩わしさを解消させ、テープの生産効率を向上させた。
【0037】
さらに、表1からも判るように本発明テープに織り込まれた引き紐の動きは従来のものに比べて格段に円滑なものにし、それによってカーテンのヒダ形成の作業効率を飛躍的に向上させた。
【0038】
また、カーテンのヒダ形成がスムーズになった事により、カーテンの生地に与えるダメージが減り、ヒダの高さヒダの間隔が均一に乱れることなく形成され設定寸法どおりのカーテンを仕上げる事ができた。
【0039】
ミシンによる縫製作業では形成しにくいデザインのヒダも、熟練を要さずとも簡単に形成できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】 本発明の拡大斜視図
【図2】 本発明の使用を説明する図
【図3】 繊維の組織構成を示す図
【図4】 加熱加工を表す略図
【図5】 本発明テープを説明する正面図
【図6】 加熱前の芯鞘複合フィラメントの拡大図
【図7】 加熱後の芯鞘複合フィラメントの拡大図
【図8】 本発明テープをカーテンに装着後、引き紐を引き絞る作業を表す図
【図9】 引張り試験機を説明する図
【図10】 本発明テープの実施例を示す図
【符号の説明】
【0041】
1本発明テープ本体
2カーテン
3引き紐
4縦糸(マルチフィラメント)
5横糸(芯鞘複合マルチフィラメント)
6縦糸(芯鞘複合マルチフィラメント)
7補助ローラー
8加熱ローラー
9入力側ローラー
10出力側ローラー
11カーテンヒダ部分
12カーテンレール
13カーテン最上部
14試験機台座
15引上げモーター
16抵抗測定メーター
17引上げ固定器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテン最上部に装着して、テープに織り込まれた引き紐を引き絞る事によりカーテンのヒダを形成するテープにおいて、テープの長さ方向の縦糸にマルチフィラメントを用い、対する横糸には芯鞘型複合マルチフィラメントを使用して製織し、所望温度にて加熱加工をした事を特徴とするカーテンのヒダ形成テープ。
【請求項2】
前記テープの組織構成として、長さ方向に延長する縦糸の織り組織によるトンネル状部分を有し、このトンネル状部分には引き紐を規則的に等間隔にて織り込んであり、このトンネル状部分の縦糸を他の部分の縦糸より1.2倍程度過密にし、またトンネル状部分の両脇に沿う縦糸に1本ずつ芯鞘型複合マルチフィラメントを配置した事を特徴とする請求項1のカーテンのヒダ形成テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−231492(P2007−231492A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86492(P2006−86492)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(506102488)
【Fターム(参考)】