説明

カーテンの懸吊構造および懸吊方法

【課題】 コストをいたずらに大きくせずして、汎用性の向上を期待できる。
【解決手段】 舞台Sの間口に配設されて舞台Sの間口を開閉するカーテンCを舞台Sの上方に配備の保持手段4で保持してなるカーテンの懸吊構造において、一端がカーテンCに連結されて牽引時にカーテンCを折り畳みあるいは引き割る操作用牽引体3の他端が舞台Sの上方に配備されて保持手段4に近隣する懸吊手段4に連結されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーテンの懸吊構造および懸吊方法に関し、特に、舞台の間口を開閉するカーテンへの利用に向くカーテンの懸吊構造および懸吊方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
舞台の間口を開閉するカーテンへの利用に向くカーテンの懸吊構造および懸吊方法としては、これまでに、種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1には、カーテンたるオペラカーテンへの利用に向くカーテンの懸吊構造の提案が開示されている。
【0003】
すなわち、特許文献1に開示の提案は、オペラカーテンの昇降操作と、開放操作たる絞り操作および閉鎖操作たる復帰操作とを可能にするもので、舞台上方の簀の子上に配設の昇降装置と絞り装置の作動の選択で、上記の各操作を実現可能にしている。
【0004】
ちなみに、オペラカーテンは、舞台上方から垂下されて舞台の間口方向に整列される複数本となる懸吊用の牽引体の下端に連結された杆体に懸吊され、この状態下に、間口の中央部分で左右方向にオーバーラップする開口縁部に言わば左右の絞り操作用の牽引体における各一端を連結させている。
【0005】
そして、この左右の絞り用牽引体における各他端が上記の絞り装置におけるドラムに連繋し、この絞り装置におけるドラムが駆動源で駆動され、この駆動源には、クラッチを介して昇降装置におけるドラムが連繋している。
【0006】
それゆえ、上記の文献開示の提案にあっては、クラッチをオフにして絞り装置のみを作動させると、オペラカーテンが開口縁部から持ち上げられる開放操作たる絞り操作、および、持ち上げられたオペラカーテンの開口縁部を下げる閉鎖操作たる復帰操作が実現される。
【0007】
なお、上記の提案にあっては、クラッチをオンにして絞り装置を作動させる場合には、昇降装置も作動されて、オペラカーテンが昇降しながら開閉する。
【特許文献1】特開平6‐221011号公報(要約,特許請求の範囲 請求項1,明細書中の段落0006,同0008,同0012,図1,図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献1に開示の提案にあっては、オペラカーテンの絞り操作および復帰操作が実現される点で、基本的に不具合がある訳ではないが、実施に際して些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0009】
すなわち、上記の提案にあって、カーテンたるオペラカーテンを懸吊して昇降させる昇降装置は、舞台上方に配設されるバトン装置であり、したがって、オペラカーテンの絞り操作および復帰操作を実現する絞り装置は、バトン装置に併設される。
【0010】
その結果、上記の提案にあっては、バトン装置に絞り装置を併設させるから、この絞り装置を併設させる分、オペラカーテンたるカーテンの懸吊構造を複雑にし、また、これを利用する場合のコストを増大させる不具合がある。
【0011】
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、具現化や運用に際してのコストをいたずらに大きくせずして、その汎用性の向上を期待するのに最適となるカーテンの懸吊構造および懸吊方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、この発明によるカーテンの懸吊構造の構成を、基本的には、舞台の間口に配設されて舞台の間口を開閉するカーテンを有すると共に、このカーテンを上下方向に折り畳んで、あるいは、左右方向に引き割りして舞台の間口を開放してなるカーテンの懸吊構造において、カーテンが舞台の上方に配備の保持手段に保持されると共に、一端がカーテンに連結されて牽引時にカーテンを折り畳みあるいは引き割る操作用牽引体の他端が舞台の上方に配備されて保持手段に近隣する懸吊手段に連結されてなるとする。
【0013】
そして、この発明によるカーテンの懸吊方法の構成を、基本的には、舞台の上方に配備の保持手段に保持されながら舞台の間口に配設されて舞台の間口を閉鎖するカーテンを上下方向に折り畳みあるいは左右方向に引き割りして舞台の間口を開放してなるカーテンの懸吊方法において、一端をカーテンに連結させて牽引時にカーテンを折り畳みあるいは引き割る操作用牽引体の他端が懸吊手段に連結されると共に、この懸吊手段が保持手段に近隣されながら操作用牽引体を牽引してカーテンを上下方向に折り畳みあるいは左右方向に引き割るとする。
【発明の効果】
【0014】
それゆえ、この発明にあっては、カーテンにおける開閉操作をカーテンの保持手段とは別体となる懸吊手段で実現し得るから、懸吊手段の配備でこの発明の具現化が可能になる。
【0015】
そして、多くの場合に、劇場などの舞台の上方には、複数基のバトン装置が配備されているから、この既存の複数基となるバトン装置における一基のバトン装置を懸吊手段にすることで、懸吊手段の配備が容易になる。
【0016】
このとき、懸吊手段と同様に、カーテンの保持手段が既存の複数基となるバトン装置における一基のバトン装置とされることで、この発明によるカーテンの懸吊構造の具現化が一層容易になる。
【0017】
その結果、カーテンの開閉を実現するために、たとえば、開閉装置を昇降装置たるバトン装置に併設する場合に比較して、カーテンの懸吊構造を複雑にせず、また、これを利用する場合にコストをいたずらに増大させない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるカーテンの懸吊構造を説明しながらこの発明によるカーテンの懸方法についても説明する。
【0019】
まず、この発明によるカーテンの懸吊構造は、図1に示すところでは、舞台Sの間口(符示せず)に配設されて舞台Sの間口の開閉を可能にする引き割り型のオペラカーテンからなるカーテンCを有している。
【0020】
ちなみに、図1は、舞台Sの奥側から客席G(図3参照)側を看る状態を示し、カーテンCは、舞台Sの間口を左右方向から閉鎖する一対のカーテン体1,2を有し、この一対のカーテン体1,2による舞台Sの間口の閉鎖時に各カーテン体1,2における開口縁部1a,2aが舞台Sの間口の中央部に位置決められながら互いに適宜の幅でオーバーラップすると共に、各カーテン体1,2における開口縁部1a,2aに操作用牽引体3の一端が連結されている。
【0021】
なお、各カーテン体1,2の開口縁部1a,2aが舞台Sの間口の中央部でオーバーラップされるのは、開口縁部1a,2aを突き合わせる場合よりも簡単にいわゆる隙間をなくせるからである。
【0022】
したがって、各カーテン体1,2の開口縁部1a,2aを突き合わせたときに隙間を出現させない場合には、上記したオーバーラップが不要であることもちろんである。
【0023】
そして、このカーテンCは、上記の操作用牽引体3の他端を連結させる後述の懸吊手段でこの操作用牽引体3が牽引されると、図1中に仮想線図で示すように、各カーテン体1,2が絞り操作されて、飾りカーテン風になって間口を開放する。
【0024】
なお、舞台Sの間口は、舞台床Fと、この舞台床Fに立設される門形の額縁F1とで画成され、客席Gの観客は、この間口を通して舞台Sの状況を視認するもので、カーテンCは、この間口を言わば舞台S側から全面的に覆う大きさに設定される(図3参照)。
【0025】
上記のカーテンCは、舞台Sの上方に配備の保持手段に保持され、この保持手段についてだが、図示するところでは、舞台Sの上方に配備されているバトン装置4からなる。
【0026】
と言うのも、一般に、劇場や多目的ホールなどにおける舞台Sにあっては、吊り物装置としてのバトン装置4を有しており、それも多数有して、種々の用途に同時に利用できる態勢にしている。
【0027】
そこで、この発明にあっては、基本的には、カーテンCが保持手段たるバトン装置4に保持されるとし、後述する懸吊手段についても、同様の見地からバトン装置4で代替されるとし、保持手段と懸吊手段とが共に近隣するバトン装置4からなるとしている。
【0028】
バトン装置4は、言わば周知の構成からなり、図1に示すように、舞台Sの間口方向に整列される複数本の牽引体41と、この複数本となる各牽引体41の下端に連結されて舞台Sの間口方向に延在されるバトン42とを有してなる。
【0029】
そして、バトン42は、図2に示すように、牽引体41の下端を連結させるトラス体42aと、このトラス体42aに束材42bを介して連結されるパイプ体42cとを有してなる。
【0030】
ちなみに、バトン42の長さについてだが、上記したカーテンCの保持を可能にするのはもちろんのこと、引き割り型のオペラカーテンを構成する各カーテン体1,2が横方向に折り畳まれて舞台Sの左右部となる袖部に退避可能とされるためにも、舞台Sの間口幅より長く設定されるのが一般的であろう。
【0031】
なお、バトン42において、トラス体42aは、実質的に種々の物を吊持させるパイプ体42cが負荷によって水平方向に曲り、近隣する他のバトン42におけるパイプ体42cに干渉するのを阻止する剛体として機能する。
【0032】
したがって、カーテンCを保持する上で、上記したような不都合が招来されないならば、図示しないが、バトン42がトラス体42aを有しないなど、任意の構成に設定されて良い。
【0033】
また、バトン装置4における複数本の牽引体41は、鋼索からなり、図示しないが、舞台Sの天井近くに配設の簀の子上に設置のそれぞれのドラムに巻装され、各ドラムがそれぞれの駆動源で同期駆動されることで、送り出しされまた巻き取られる。
【0034】
ところで、操作用牽引体3は、カーテンCたる引き割り態様に形成される一対のカーテン体1,2を開閉するもので、諸般を考慮して繊維索からなり、一端がカーテンCに連結されると共に他端がプーリ31を介するなどして懸吊手段たるバトン装置4におけるバトン42に、具体的には、図2に示すように、バトン42におけるパイプ体42cに連結される。
【0035】
なお、プーリ31については、任意の位置の配設されて良いが、図示するとことでは、操作用牽引体3がカーテンCの背面側に配在されるから、カーテンCを保持する保持手段たるバトン装置4におけるバトン42に配設されている。
【0036】
それゆえ、以上のように形成されたこの発明によるカーテンの懸吊構造にあっては、カーテンCが舞台Sの上方に配備の保持手段たるバトン装置4に保持された状態でいわゆる閉鎖状態におかれるとき、舞台Sの間口を閉鎖する。
【0037】
そして、この状態からカーテンCを開放状態にする場合には、保持手段たるバトン装置4に近隣する別のバトン装置4からなる懸吊手段によって操作用牽引体3を牽引して各カーテン体1,2を絞り操作し、飾りカーテン風にして間口を開放する。
【0038】
そして、舞台Sの間口を開放したカーテンCを元に戻す、すなわち、閉鎖状態に復帰させるには、懸吊手段たるバトン装置4の戻し操作で各カーテン体1,2を元通りにすれば足りる。
【0039】
一方、上記したところでは、カーテンCが一対のカーテン体1,2を有してなる引き割り型のオペラカーテンとされる場合を例にしたが、この発明が意図するところからすれば、カーテンCは、図3に示すように、舞台Sの間口を上下方向に開閉する一枚のカーテン体からなるとしても良い。
【0040】
そして、この場合に、カーテンCは、上記の一対のカーテン体1,2と同様に、保持手段たるバトン装置4に保持されて昇降可能とされると共に、懸吊手段たるバトン装置4(図示せず)によって開閉操作される。
【0041】
そして、このカーテンCにあっては、詳しく図示しないが、カーテンCの裏面における上下方向の中央部あるいは中央近傍部に左右方向に延在されて連結される貫体C1を有し、この貫体C1に操作用牽引体3の一端が連結される。
【0042】
それゆえ、この一枚のカーテン体からなるカーテンCにあっては、貫体C1が操作用牽引体3によって吊り上げられるとき、図3中に実線図で示すように、上下方向に折り畳まれる。
【0043】
そして、このとき、折り畳まれたカーテンCは、その部分たる上半側部が舞台Sの間口を閉鎖する態勢にあるから、このカーテンCを保持する保持手段たるバトン装置4によってこれを全体的に吊り上げることで、舞台Sの間口を全面的に開放することになる。
【0044】
この図3に示すカーテンCを利用する場合には、舞台Sの間口を全面的に開放するについては、保持手段によるカーテンCの昇降操作が必須になるから、昇降手段としてバトン装置4が選択されることは好ましいことになる。
【0045】
以上からすれば、この発明によるカーテンの懸吊構造および懸吊方法にあっては、カーテンCの開閉がカーテンCを保持する保持手段以外の懸吊手段たるバトン装置4によって実践されるところに特徴があると言い得る。
【0046】
しかも、懸吊手段たるバトン装置4は、保持手段が同じくバトン装置4からなる場合にも、この保持手段たるバトン装置4とは、独立しながら近隣するバトン装置4からなるもので、前記した文献開示の提案のように、カーテンを昇降させる言わば一基のバトン装置にカーテンの開閉を可能にする装置を併設させるものでなく、既存のバトン装置4の構成を変更させないばかりか、既存のバトン装置4の利用で足りるので、この発明を利用するについて、いたずらなコストの増大を招来しない。
【0047】
また、この発明が意図するところは、カーテンCの開閉を保持手段に近隣する懸吊手段たる一基のバトン装置4で実現するところにあるから、このことからすれば、引き割り型のカーテンCの上端部が間口を画成する額縁F1の上辺部などに固着されている場合であっても、そのカーテンCの背後に一基のバトン装置4あるいはこれに代る手段を有する場合には、それらバトン装置4などによってそのカーテンCの開閉を可能にし得る、すなわち、この発明を利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明によるカーテンの懸吊構造を具現化した一実施形態を舞台の奥側から看る正面図である。
【図2】保持手段たるバトン装置に懸吊手段たるバトン装置が近隣している状態を示す部分縦断面図である。
【図3】この発明によるカーテンの懸吊構造を具現化した他の実施形態を劇場の横側から看る側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1,2 カーテン体
1a,2a 開口縁部
3 操作用牽引体
4 保持手段および懸吊手段たるバトン装置
31 プーリ
41 牽引体
42 バトン
42a トラス体
42c パイプ体
C カーテン
C1 貫体
F 舞台床
F1 額縁
G 客席
S 舞台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舞台の間口に配設されて舞台の間口を開閉するカーテンを舞台の上方に配備の保持手段で保持してなるカーテンの懸吊構造において、一端がカーテンに連結されて牽引時にカーテンを折り畳みあるいは引き割る操作用牽引体の他端が舞台の上方に配備されて保持手段に近隣する懸吊手段に連結されてなることを特徴とするカーテンの懸吊構造。
【請求項2】
カーテンが舞台の間口を上下方向に開閉する一枚のカーテン体からなり、このカーテン体の裏面における上下方向の中央部に左右方向に延在されて連結される貫体を有し、この貫体に操作用牽引体の一端が連結されてなる請求項1に記載のカーテンの懸吊構造。
【請求項3】
カーテンが舞台の間口を左右方向に開閉する一対のカーテン体を有し、この一対のカーテン体による舞台の間口の閉鎖時に各カーテン体における開口縁部が舞台の間口の中央部に位置決められながら互いにオーバーラップすると共に、各カーテン体の裏面側において各カーテン体における開口縁部に操作用牽引体の一端が連結されてなる請求項1に記載のカーテンの懸吊構造。
【請求項4】
懸吊手段がバトン装置とされあるいは保持手段が懸吊手段と共にバトン装置とされ、バトン装置が舞台の間口方向に整列される複数本の牽引体と、この複数本となる各牽引体の下端に連結されて舞台の間口方向に延在されて操作用牽引体を連結させあるいはカーテンを吊持するバトンとを有してなる請求項1,請求項2または請求項3に記載のカーテンの懸吊構造。
【請求項5】
舞台の上方に配備の保持手段に保持されながら舞台の間口に配設されて舞台の間口を閉鎖するカーテンを上下方向に折り畳みあるいは左右方向に引き割りして舞台の間口を開放してなるカーテンの懸吊方法において、一端をカーテンに連結させて牽引時にカーテンを折り畳みあるいは引き割る操作用牽引体の他端が懸吊手段に連結されると共に、この懸吊手段が保持手段に近隣されながら操作用牽引体を牽引してカーテンを上下方向に折り畳みあるいは左右方向に引き割ることを特徴とするカーテンの懸吊方法。
【請求項6】
懸吊手段でカーテンを開閉するときに同期してあるいは同期せずに保持手段によってカーテンが昇降されてなる請求項5に記載のカーテンの懸吊方法。
【請求項7】
懸吊手段がバトン装置とされあるいは保持手段が懸吊手段と共にバトン装置とされ、バトン装置が舞台の間口方向に整列される複数本の牽引体と、この複数本となる各牽引体の下端に連結されて舞台の間口方向に延在されて操作用牽引体を連結させあるいはカーテンを吊持するバトンとを有してなる請求項5または請求項6に記載のカーテンの懸吊方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−247485(P2009−247485A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97088(P2008−97088)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】