説明

カーテンウォール用耐火ボード、及び耐火ボードの支持構造

【課題】カーテンウォールの層間区画を構成する作業性の良いカーテンウォール用耐火ボード、及び取り付け強度の高い耐火ボード支持構造を提供する。
【解決手段】カーテンウォール用耐火ボード10の板材12には凹部20が形成され、凹部20の内部には接合金具16が取付けられている。接合金具16は、凹部20の底壁と当接する平面部18を有し、平面部18にはナット14の端部が接合されている。接合金具16は平面部18の端部から立ち上げられ、凹部20の周壁と接合される立上部26を有し、ネジ22で周壁に接合されている。凹部20の開口部は化粧板28で塞がれている。カーテンウォール用耐火ボード10は、ナット14の挿入口側を建物側(矢印Aの方向)に向けて配置され、取付金具32の取付孔33に挿入されたボルト36とナット14を螺合して、支持されている。即ち、取り付け金具32を介して建物躯体から支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォール用耐火ボード、及び耐火ボードの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築基準法では、一定の高さ及び規模を超える建物に使用されるカーテンウォールに関し、上下階の窓と窓の間の部分(以下スパンドレルという。)については、外壁に対する技術的基準を適用し、上階への延焼防止を目的として、高さ900mm以上の層間区画部材を設けることを義務づけている。
【0003】
アルミカーテンウォールでは、一般に、スパンドレル部分に層間区画部材としてカーテンウォール用耐火ボードを取付ける方法が用いられている。ここに、カーテンウォール用耐火ボードは、繊維混入けい酸カルシウム板等で成形され、カーテンウォール用耐火ボードの取り付けは、アルミカーテンウォールのアルミ枠(方立と無目材)に挟み込む方法が用いられている。
【0004】
しかし、アルミ枠は耐火性能が低いため、カーテンウォール用耐火ボードの取付け強度を高めることを目的として、アルミ枠に挟み込む固定方法に加え、スラブ等の建物の構造部材に取付金具を固定し、カーテンウォール用耐火ボードにはインサートナット(鬼目ナット)を埋め込み、取付金物に設けた取付孔に挿入したボルトと、カーテンウォール用耐火ボードに埋め込まれたインサートナットを螺合させて、カーテンウォール用耐火ボードを支持する支持構造が提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、特許文献1の支持構造では、カーテンウォール用耐火ボードは繊維混入けい酸カルシウム板、石膏ボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード等の柔らかい材料(脆い材料)で形成されていることが多い為、施工現場でのカーテンウォール用耐火ボードへのインサートナットの埋め込み作業に慎重な取り扱いが要求され、作業性が悪いという問題がある。このため、作業性の良いカーテンウォール用耐火ボードが求められている。
【0006】
また、特許文献1の支持構造では、カーテンウォール用耐火ボードにインサートナットを埋め込む構成であることから、カーテンウォール用耐火ボードとインサートナットとの接合部の接合強度が、カーテンウォール用耐火ボードの機械的強度に大きく影響されるという問題がある。耐火ボードには前記のような機械的強度があまり高くない材料が用いられるため、接合部の強度があまり期待出来ない。取付け強度の高い耐火ボードの支持構造が求められている。
【特許文献1】特開平7−324415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実に鑑み、カーテンウォールの層間区画を構成する作業性の良いカーテンウォール用耐火ボード、及び取り付け強度の高い耐火ボード支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係るカーテンウォール用耐火ボードは、板面に凹部が設けられた耐火用の板材と、前記凹部の底壁と当接する平面部と、前記平面部の端部から立ち上げられ、前記凹部の周壁と接合される立上部とを有する接合部材と、前記平面部に端部が接合されたナットと、を有することを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、耐火用の板材の板面に設けられた凹部の底壁と接合部材の平面部が当接し、凹部の周壁と接合部材の立上部が接合される。また、接合部材の平面部にはナットが接合されている。
【0010】
請求項1に記載のカーテンウォール用耐火ボードは、板材に予めナットが接合されており、施工現場でのナットの埋め込み作業が不要となる。これにより、施工性の良いカーテンウォール用耐火ボードが提供できる。
【0011】
また、ナットは接合部材の平面部に固定されており、平面部は凹部の底壁と当接している。このため、平面部の面積を増せば、平面部とカーテンウォール用耐火ボードとの接合面積を広く確保でき、カーテンウォール用耐火ボードが風や地震等の外力を受けても、カーテンウォール用耐火ボードに加えられた力を分散して接合部材に伝えることができる。また、底壁の板厚が小さくても、周壁面で力を伝えるので、カーテンウォール用耐火ボードの支持性能を高めることができる。
【0012】
更に、カーテンウォール用耐火ボードの片側のみに接合部材が取り付けられるため、接合部材が取り付けられていない側の板面をそのまま仕上げ面とすることができ、仕上げの手間が省ける。また、耐火用の板材としては繊維混入けい酸カルシウム板、石膏ボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード、ALC等の既存の耐火板を利用できるが、中でも耐火性や加工性の点から繊維混入けい酸カルシウム板が好ましい。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカーテンウォール用耐火ボードにおいて、前記接合部材の立上部から前記凹部の周壁に向けて固定部材を差し込んで、前記立上部と前記周壁とを接合することを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、接合部材の立上部から凹部の周壁に向けて、固定部材が差し込まれ、固定部材で立上部と周壁が接合されている。これにより、固定部材の使用本数と固定部材の長さを調節することで、立上部と周壁の接合強度を調節できる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のカーテンウォール用耐火ボードにおいて、前記凹部を塞ぐ化粧板を有し、前記化粧板には、前記ナットと螺合されるボルトが挿入される貫通孔が設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、凹部は化粧板で塞がれ、化粧板には、ナットと螺合されるボルトが挿入される貫通孔が設けられている。
これにより、化粧板で接合部材が隠され、カーテンウォール用耐火ボードの表面の見栄えが良くなる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火ボードにおいて、 前記カーテンウォール用耐火ボードに用いられる耐火用の板材が繊維混入けい酸カルシウム板であることを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、カーテンウォール用耐火ボードに用いられる耐火用の板材が繊維混入けい酸カルシウム板とされている。これにより、耐火性や加工性のよいカーテンウォール用耐火ボードが提供できる。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る耐火ボード支持構造は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボードと、建物の構造部材に固定された取付金具と、前記取付金具に形成された取付孔へ挿入され、前記ナットと螺合するボルトと、を有することを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、建物の構造部材に固定された取付金具の取付孔にボルトを挿入し、カーテンウォール用耐火ボードのナットとボルトを螺合させることで、カーテンウォール用耐火ボードを取付金具で支持することができる。
このように、建物の構造部材に固定された取付金具で、カーテンウォール用耐火ボードを直接に支持するため、アルミ枠に挟み込む方法に比べ、カーテンウォール用耐火ボードの取付け強度を高めることができる。
【0020】
また、風や地震等の外力が作用しても、カーテンウォール用耐火ボードのナットは、凹部に取付けられた取付金具でカーテンウォール用耐火ボードに取付けられているため、カーテンウォール用耐火ボードからナットへ伝えられる外力が分散され、カーテンウォール用耐火ボードの支持性能を高めることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の耐火ボード支持構造において、一端に前記カーテンウォール用耐火ボードの下部端面を下側から保持する保持部を備え、他端に前記ボルトが挿入される貫通孔が設けられた耐火ボード保持部材を有し、前記取付孔へ挿入されたボルトが前記貫通孔を貫通することを特徴としている。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、耐火ボード保持部材の一端に設けた保持部が、カーテンウォール用耐火ボードの下部端面を下側から保持する。耐火ボード保持部材の他端にはボルトが挿入される貫通孔が設けられ、耐火ボード保持部材がボルトで建物に固定される。
これにより、寸法が大きく重いカーテンウォール用耐火ボードであっても、カーテンウォール用耐火ボードの貫通孔に過度の負担をかけずにカーテンウォール用耐火ボードを建物に取付けることができ、カーテンウォール用耐火ボードの支持性能を高めることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の耐火ボード支持構造において、前記カーテンウォール用耐火ボードの背面を支持すると共に、前記ボルトが挿入される貫通孔が設けられた背面部と、前記背面部の上端部と下端部に形成され、前記カーテンウォール用耐火ボードの上部端面と下部端面を外側から保持する保持部を備えた耐火ボード保持部材を有し、前記取付孔へ挿入されたボルトが前記貫通孔を貫通することを特徴としている。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、耐火ボード保持部材の上端部と下端部に形成された保持部が、カーテンウォール用耐火ボードの上部端面と下部端面を外側から保持する。耐火ボード保持部材の背面部にはボルトが挿入される貫通孔が設けられ、耐火ボード保持部材がボルトで建物躯体に固定される。
【0025】
これにより、寸法が大きく重いカーテンウォール用耐火ボードであっても、カーテンウォール用耐火ボードの取付金具に過度の負担をかけずに、カーテンウォール用耐火ボードを建物に取付けることができ、カーテンウォール用耐火ボードの支持性能を高めることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の耐火ボード支持構造において、前記耐火ボード保持部材と前記カーテンウォール用耐火ボードの間には、緩衝材が取付けられていることを特徴としている。
請求項8に記載の発明によれば、緩衝材が耐火ボード保持部材とカーテンウォール用耐火ボードの間に設けられている。これにより、風や地震等でカーテンウォール用耐火ボードが振動しても、カーテンウォール用耐火ボードが耐火ボード保持部材から受ける損傷を防止できる。
請求項9に記載の発明は、請求項5〜8のいずれか1項に記載の耐火ボード支持構造において、前記カーテンウォール用耐火ボードに用いられる耐火用の板材が繊維混入けい酸カルシウム板であることを特徴としている。
請求項9に記載の発明によれば、カーテンウォール用耐火ボードに用いられる耐火用の板材が繊維混入けい酸カルシウム板とされている。これにより、耐火性や加工性のよいカーテンウォール用耐火ボードが提供できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記構成としてあるので、カーテンウォールの層間区画を構成する作業性の良いカーテンウォール用耐火ボード、及び取り付け強度の高い耐火ボードの支持構造を提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
図1、2に示すように、第1の実施の形態に係るカーテンウォール用耐火ボード10は、耐火用の板材12を有している。板材12は、建物の層間区画に用いられる層間区画部材であり、繊維混入けい酸カルシウム板で形成され、取付け場所に応じて、高さH1、幅W1、厚さT1の各寸法が決定される。
【0029】
板材12の板面には円筒状の凹部20が形成されている。凹部20は深さT3とされ、底部に厚さT2を残し、内部には接合金具(接合部材)16が取付けられている。
接合金具16は、金属(アルミを除く)で筒状に形成され、凹部20の底壁と当接する平面部18を有し、平面部18には、後述するボルト36と螺合するナット14の端部が接合されている。
【0030】
ナット14の長さはT4とされ、凹部20の深さT3より小さく、ナット14の先端が凹部20から突き出ることはない。
また、接合金具16は、平面部18の端部から立ち上げられ、凹部の周壁と接合される立上部26を有している。立上部26には、固定用のネジ22(固定部材)をねじ込むための貫通孔24が設けられている。
【0031】
また、凹部20は、化粧板28で塞がれている。化粧板28は、板材12と同じ材質で円柱状に形成され、中心にはナット14と螺合されるボルト36が挿入されるための貫通孔48が設けられている。
このように、カーテンウォール用耐火ボード10の板材12には、予めナット14が取付けられており、施工現場で、板材12にナット14を埋め込む作業が不要となり、作業性が向上する。
【0032】
また、ナット14は接合金具16の平面部18に固定されており、平面部18は凹部20の底壁と当接している。このため、平面部18の面積を増せば、平面部18と板材12との接合面積を広く確保でき、カーテンウォール用耐火ボード10が風や地震等の外力を受けても、板材12に加えられた力を分散して接合金具16に伝えることができる。また、底壁の板厚が小さくても、周壁面で力を伝えるので、カーテンウォール用耐火ボード10の支持性能を高めることができる。
【0033】
更に、接合金具16の立上部26に設けられた貫通孔24から凹部20の周壁にネジ22をねじ込んで、立上部26と周壁を接合している。ネジ22は、ナット14を中心に放射状に複数ねじ込まれており、接合金具16を周壁に均等に接合している。これにより、ネジ22の使用本数とネジ22の長さ等を調節することで、立上部26と周壁の接合強度を調節できる。なお、ネジ22は固定部材の例示であり、カーテンウォール用耐火ボードに用いられる耐火用の板材の種類に合わせて、釘・ピン等の既存の固定部材でもよい。
【0034】
また、接合金具16がカーテンウォール用耐火ボード10の片側に取り付けられているため、接合金具16が取り付けられていない側の板面を、そのまま仕上げ面として利用でき、仕上げの手間が省ける。
【0035】
(第2の実施の形態)
図3に示すように、第2の実施の形態に係る耐火ボード支持構造30は、第1の実施の形態で説明したカーテンウォール用耐火ボード10を有している。
【0036】
カーテンウォール用耐火ボード10は、接合金具16が取付けられた側を、建物側(矢印Aの方向)に向けて配置され、取付金具32の取付孔33に挿入されたボルト36とナット14が螺合されている。
【0037】
取付金具32は、金属(アルミ材を除く)の平板をL字状に折り曲げて形成され、片方の平面部を横方向に向けて、建物の構造部材であるスラブ34の上面にボルト38で固定されている。
【0038】
図4、5に示すように、取付金具32の縦方向の平面部は板材12に沿って立ち上げられ、先端部には取付孔33が設けられている。取付孔33にはボルト36が挿入され、ボルト36とナット14を螺合させてカーテンウォール用耐火ボード10を支持している。このとき、取付金具32と接合金具16の間に化粧板28を配置し、貫通孔48にボルト36を挿入することで、凹部20を化粧板28で覆うことができる。
【0039】
スラブ34の先端34Eとカーテンウォール用耐火ボード10の板材12の間には、幅L4の隙間が生じている。この隙間の下方には、スラブ34の下面から板材12に至る層間塞ぎプレート40が取付けられている。そして、層間塞ぎプレート40の上と、取付金具32の間には、隙間を塞ぐロックウール42が充填されている。
【0040】
このように、カーテンウォール用耐火ボード10に予め取付けられたナット14と、スラブ34に固定された取付金具32の取付孔33を一致させ、取付孔33からボルト36を挿入してナット14と螺合させることで取付けができるので、作業性が向上する。
【0041】
また、スラブ34に固定された取付金具32で、板材12に接合された接合金具16を支持する構成であり、従来のアルミ枠に挟み込む方法(図示せず)や片面からインサートナットで接合する方法に比べ、カーテンウォール用耐火ボード10の取付け強度を高めることができる。
【0042】
更に、カーテンウォール用耐火ボード10に風や地震等の外力が作用しても、接合金具16と板材12が広い面積で当接しているため、カーテンウォール用耐火ボード10から接合金具16に伝える外力が均一化され、カーテンウォール用耐火ボード10の支持性能を高めることができる。
【0043】
図6に示すように、他の実施例である耐火ボード支持構造50は、上述の耐火ボード支持構造30におけるカーテンウォール用耐火ボード10及び取付金具32を有している。
【0044】
即ち、カーテンウォール用耐火ボード10は、接合金具16が取付けられた側を、建物側(矢印Aの方向)に向けて配置され、取付金具32の取付孔33に挿入されたボルト36とナット14が螺合されている。取付金具32は、躯体側金具46とボルト38で接合され、躯体側金具46は、スラブ34とボルト44で固定されている。
【0045】
躯体側金具46は、金属(アルミ材を除く)の平板をL字状に2度折り曲げて形成されている。躯体側金具46の片方の平面部は、横に向けてスラブ34に固定され、他方の平面部は、同じく横に向けて取付金具32と接合されている。
【0046】
これにより、カーテンウォール用耐火ボード10の設置位置を変更(縦方向にV2、横方向にH2)する必要が生じても、躯体側金具90の寸法を変更することで、取付金具78とスラブ76の位置のずれに容易に対応できる。
【0047】
(第3の実施の形態)
図7に示すように、第3の実施の形態に係る耐火ボード支持構造52は、第2の実施の形態で説明した耐火ボード支持構造30において、カーテンウォール用耐火ボード10と取付金具32との間に、耐火ボード保持部材54を追加した構成である。
【0048】
耐火ボード保持部材54は、金属の平板で、L字状に折り曲げて形成され、L字状に折り曲げた端部54Lで、カーテンウォール用耐火ボード10の下部端面を下側から保持している。
【0049】
耐火ボード保持部材54の端部54Lは、板材12の厚さT1に相当する水平部を有し、再び先端が立ち上げられ、板材12を挟み込んでいる。これにより、カーテンウォール用耐火ボード10の横方向(矢印X方向)の移動を抑制できる。
【0050】
耐火ボード保持部材54の平面部は、カーテンウォール用耐火ボード10の板材12に沿って立ち上り、上部には、ボルト36が挿入される取付孔62が設けられている。
【0051】
取付金具32の取付孔33と、耐火ボード保持部材54の取付孔62を重ね、ボルト36を取付孔33と取付孔62に挿入させ、ナット14と螺合させることで、耐火ボード保持部材54でカーテンウォール用耐火ボード10を保持できる。
【0052】
即ち、カーテンウォール用耐火ボード10の寸法が大きく重い場合であっても、カーテンウォール用耐火ボード10の板材12と接合金具16の接合部に過度の負担をかけずに、カーテンウォール用耐火ボード10を建物に取付けることができる。これにより、カーテンウォール用耐火ボード10に要求される機械的強度を小さくできる。
【0053】
なお、耐火ボード保持部材54の幅は、カーテンウォール用耐火ボード10と同じ幅とする必要はなく、帯状の構成でよい。他は、第5の実施の形態と同じ構成である。
【0054】
(第4の実施の形態)
図8に示すように、第4の実施の形態に係る耐火ボード支持構造56は、第3の実施の形態で説明した耐火ボード支持構造52の、耐火ボード10の周囲に複数の緩衝材58を有している。
【0055】
緩衝材58は、例えばゴム材で板状に成形され、カーテンウォール用耐火ボード10の下部、側面、ナット14が設けられた位置等の荷重を受ける場所に所定の幅で挿入されている。
なお、耐火ボード保持部材60は、緩衝材58の厚さに合わせて、L字状に折り曲げる折り曲げ幅60L等を変更している。
【0056】
これにより、カーテンウォール用耐火ボード10と耐火ボード保持部材60が直接接触するのを防止でき、風や地震等でカーテンウォール用耐火ボード10が振動しても、カーテンウォール用耐火ボード10と耐火ボード保持部材60との間の損傷が防止できる。
(第5の実施の形態)
図9に示すように、第5の実施の形態に係る耐火ボード支持構造64は、第2の実施の形態で説明した耐火ボード支持構造30において、カーテンウォール用耐火ボード10と取付金具32との間に、耐火ボード保持部材66を追加した構成である。
【0057】
耐火ボード保持部材66は金属の平板で形成され、カーテンウォール用耐火ボード10の背面を支持する背面部と、背面部の上端部と下端部をL字状に折り曲げた端部66Lを有し、カーテンウォール用耐火ボード10の背面と、上部端面と、下部端面を保持している。
【0058】
耐火ボード保持部材66の端部66Lは、板材12の厚さT1に相当する水平部を有し、再び先端がカーテンウォール用耐火ボード10の前面に折り曲げられ、カーテンウォール用耐火ボード10の上部端面と、下部端面を挟み込んでいる。これにより、カーテンウォール用耐火ボード10の横方向(矢印X方向)と縦方向(矢印Y方向)の移動を抑制できる。
【0059】
耐火ボード保持部材66の背面部は、カーテンウォール用耐火ボード10の板材12の背面に沿って立ち上り、ボルト36が挿入される取付孔68が設けられている。
【0060】
取付金具32の取付孔33と、耐火ボード保持部材66の取付孔62を重ね、ボルト36を取付孔33と取付孔68に挿入させ、ナット14と螺合させることで、耐火ボード保持部材66でカーテンウォール用耐火ボード10を保持できる。
【0061】
即ち、カーテンウォール用耐火ボード10の寸法が大きく重い場合であっても、カーテンウォール用耐火ボード10の板材12と接合金具16の接合部に過度の負担をかけずに、カーテンウォール用耐火ボード10を建物に取付けることができる。これにより、カーテンウォール用耐火ボード10に作用する力を小さくできる。
【0062】
なお、耐火ボード保持部材66の幅は、カーテンウォール用耐火ボード10と同じ幅とする必要はなく、帯状の構成でよい。他は、第3の実施の形態と同じ構成である。
【0063】
(第6の実施の形態)
図10に示すように、第6の実施の形態に係る耐火ボード支持構造70は、第5の実施の形態で説明した耐火ボード支持構造64の、カーテンウォール用耐火ボード10の周囲に複数の緩衝材58を有している。
【0064】
緩衝材58は、例えばゴム材で板状に成形され、カーテンウォール用耐火ボード10の上部端面、下部端面、背面、更にナット14が設けられた位置等の荷重を受ける場所に所定の幅で挿入されている。
なお、耐火ボード保持部材72は、緩衝材58の厚さに合わせて、上端部と下端部にL字状に2度折り曲げた保持部72Lを有している。
【0065】
これにより、カーテンウォール用耐火ボード10と耐火ボード保持部材72が直接接触するのを防止でき、風や地震等でカーテンウォール用耐火ボード10が振動しても、カーテンウォール用耐火ボード10と耐火ボード保持部材72との間の損傷が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るカーテンウォール用耐火ボードの基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るカーテンウォール用耐火ボードの接合金具の断面を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る耐火ボード支持構造の基本構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る耐火ボード支持構造の接合金具との接合構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る耐火ボード支持構造の接合金具の断面を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る耐火ボード支持構造の基本構成を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る耐火ボード支持構造の基本構成を示す図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係る耐火ボード支持構造の基本構成を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る耐火ボード支持構造の基本構成を示す図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態に係る耐火ボード支持構造の基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
10 カーテンウォール用耐火ボード
12 板材
14 ナット
16 接合金具(接合部材)
18 平面部
20 凹部
22 ネジ(固定部材)
26 立上部
28 化粧板
30 耐火ボード支持構造
32 取付金具
33 取付孔
34 スラブ(建物の構造部材)
54 耐火ボード保持部材
58 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板面に凹部が設けられた耐火用の板材と、
前記凹部の底壁と当接する平面部と、前記平面部の端部から立ち上げられ、前記凹部の周壁と接合される立上部とを有する接合部材と、
前記平面部に端部が接合されたナットと、
を有するカーテンウォール用耐火ボード。
【請求項2】
前記接合部材の立上部から前記凹部の周壁に向けて固定部材を差し込んで、前記立上部と前記周壁とを接合する請求項1に記載のカーテンウォール用耐火ボード。
【請求項3】
前記凹部を塞ぐ化粧板を有し、
前記化粧板には、前記ナットと螺合されるボルトが挿入される貫通孔が設けられている請求項1又は2に記載のカーテンウォール用耐火ボード。
【請求項4】
前記カーテンウォール用耐火ボードに用いられる耐火用の板材が繊維混入けい酸カルシウム板である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火ボード。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボードと、
建物の構造部材に固定された取付金具と、
前記取付金具に形成された取付孔へ挿入され、前記ナットと螺合するボルトと、
を有する耐火ボード支持構造。
【請求項6】
一端に前記カーテンウォール用耐火ボードの下部端面を下側から保持する保持部を備え、他端に前記ボルトが挿入される貫通孔が設けられた耐火ボード保持部材を有し、
前記取付孔へ挿入されたボルトが前記貫通孔を貫通する請求項5に記載の耐火ボード支持構造。
【請求項7】
前記カーテンウォール用耐火ボードの背面を支持すると共に、前記ボルトが挿入される貫通孔が設けられた背面部と、前記背面部の上端部と下端部に形成され、前記カーテンウォール用耐火ボードの上部端面と下部端面を外側から保持する保持部を備えた耐火ボード保持部材を有し、
前記取付孔へ挿入されたボルトが前記貫通孔を貫通する請求項5に記載の耐火ボード支持構造。
【請求項8】
前記耐火ボード保持部材と前記カーテンウォール用耐火ボードの間には、緩衝材が取付けられている請求項6又は7に記載の耐火ボード支持構造。
【請求項9】
前記カーテンウォール用耐火ボードに用いられる耐火用の板材が繊維混入けい酸カルシウム板である請求項5〜8のいずれか1項に記載の耐火ボード支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−65397(P2010−65397A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230289(P2008−230289)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000149136)日本インシュレーション株式会社 (19)
【Fターム(参考)】