説明

カーテンウォール用耐火ボード支持構造、及び建物

【課題】耐火ボードの破損、損傷を抑制し、耐火ボードの支持性能を向上することを目的とする。
【解決手段】耐火ボード34の貫通孔48に挿入された雌ネジ部42Aに、第2保持部44Bの取付孔62を通して締結ボルト38を締め付けることにより、耐火ボード34が第1保持部42B及び第2保持部44Bで挟み込まれた状態で保持される。これらの第1保持部42B及び第2保持部44Bを耐火ボード34に面接触させ、耐火ボード34との接触面積を増加することにより、耐火ボード34の被保持部に作用する応力が低減される。この結果、耐火ボード34の被保持部の破損、損傷が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォール用耐火ボード支持構造、及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築基準法では、一定の高さ及び規模を超える建物に使用されるカーテンウォールに関し、上下階の窓と窓の間の部分(以下、「スパンドレル」という)については、外壁に対する技術的基準を適用し、上階への延焼防止を目的として、高さ900mm以上の層間区画部材を設けることを義務付けている。
【0003】
アルミカーテンウォールでは、一般に、スパンドレル部分に層間区画部材として耐火ボードが用いられている。この耐火ボードは、例えば、繊維混入けい酸カルシウム板、石膏ボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード等の柔らかい材料(脆い材料)で構成され、周縁部に設けられたアルミ枠(方立と無目)によって支持される。
【0004】
しかしながら、アルミ枠は耐火性能が低いため、耐火ボードの取付け強度を高める耐火ボードの支持構造が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の耐火ボードの支持構造では、図18に示されるように、方立110及び無目112からなるアルミ枠によって耐火ボード100の周縁部が支持されている。この方立110には、方立ブラケット116がボルト119で固定されている。方立ブラケット116は、方立110を挟んで水平方向に隣接する耐火ボード100にまたがって配置され、これらの耐火ボード100の幅方向端部に埋め込まれたインサートナット(図示省略)にボルト118を締め込むことで耐火ボード100に固定されている。一方、建物の室内側のスラブ102にはファスナー114がボルト117で固定されており、このファスナー114に方立ブラケット116がボルト120で固定されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の耐火ボードの支持構造は、耐火ボード100に埋め込まれたインサートナットにボルト118を締め込んで方立ブラケット116を固定する構成であるため、インサートナットの埋め込み部に応力が集中し、耐火ボード100のインサートナットの埋め込み部が破損、損傷する恐れがある。
【0006】
一方、特許文献2には、外壁用耐火ボードと床コンクリートとの間に設けられた梁材用耐火ボードを、床コンクリート打設用型枠の立ち上げ部にビスで固定する層間ふさぎ構造が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2の層間ふさぎ構造は、梁材用耐火ボードを支持するものであり、外壁用耐火ボードを支持するものではない。また、仮に外壁用耐火ボードを床コンクリート打設用型枠の立ち上げ部にビスで固定したとしても、特許文献1の耐火ボードの支持構造と同様に、ビスの取付部に応力が集中し、耐火ボードのビスの取付部が破損、損傷する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−324415号公報
【特許文献2】特開平11−36479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の事実を考慮し、耐火ボードの破損、損傷を抑制し、耐火ボードの支持性能を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載されたカーテンウォール用耐火ボード支持構造は、構造部材の上部に取り付けられ、該構造部材と隙間を空けて配置される耐火ボードの被保持部の表裏面を挟んで保持する保持手段と、前記被保持部よりも下方で前記耐火ボードの裏面と接触し、該耐火ボードの前記構造部材に接近する方向の変位を規制する規制手段と、を備えている。
【0011】
請求項1に係る発明によれば、保持手段が、耐火ボードの被保持部の表裏面を挟むことにより、耐火ボードを保持する。従って、例えば、耐火ボードの被保持部の表裏面に保持手段を面接触させ、被保持部との接触面積を増加することにより、被保持部に作用する応力を低減することができる。この結果、耐火ボードの被保持部の破損、損傷が抑制されるため、耐火ボードの支持性能が向上する。
【0012】
また、耐火ボードの被保持部よりも下方で耐火ボードの裏面と接触する規制手段によって、耐火ボードの構造部材に接近する方向の変位が規制されている。ここで、規制手段を備えない構成では、火災時に耐火ボードの周縁部を拘束するアルミ枠が溶融すると、耐火ボードが保持手段を支点として構造部材側へ傾いたり、回転したりする恐れがある。
【0013】
これに対して本発明では、規制手段が耐火ボードの被保持部よりも下方で耐火ボードの裏面と接触することにより、耐火ボードの構造部材に接近する方向の変位を規制され、保持手段を支点とした耐火ボードの構造部材側への傾きや回転が抑制される。従って、常時だけでなく、火災時における耐火ボードの支持性能が向上する。
【0014】
更に、耐火ボードの周縁部を拘束するアルミ枠を省略することが可能となるため、コスト削減を図ることができる。
【0015】
請求項2に記載されたカーテンウォール用耐火ボード支持構造は、請求項1に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造において、前記規制手段が、前記構造部材に取り付けられ、該構造部材から前記耐火ボードに向かって張り出して前記耐火ボードの裏面と接触する張出し部を有している。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、構造部材から耐火ボードに向かって張り出す張出し部が耐火ボードの裏面と接触する。この張出し部によって、耐火ボードの構造部材に接近する方向の変位が規制され、保持手段を支点とした耐火ボードの構造部材側への傾きや回転が抑制される。このように保持手段及び規制手段を同じ構造部材に取り付けることにより、保持手段及び規制手段の取り付け作業の手間が低減される。従って、施工性が向上する。
【0017】
請求項3に記載されたカーテンウォール用耐火ボード支持構造は、請求項1又は請求項2に記載の耐火ボード支持構造において、前記張出し部が、前記隙間に設けられる層間塞ぎ材を支持している。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、耐火ボードと構造部材の隙間に設けられる層間塞ぎ材を張出し部で支持するため、層間塞ぎ材を支持する支持部材を省略することができる。従って、コスト削減を図ることができる。
【0019】
請求項4に記載されたカーテンウォール用耐火ボード支持構造は、請求項2又は請求項3に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造において、前記規制手段が、前記張出し部の張り出し方向先端部から上下方向に延び、前記耐火ボードの裏面と接触する接触部を有している。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、規制手段が、張出し部の張り出し方向先端部から上下方向に延びる接触部を有している。この接触部を耐火ボードの裏面に面接触させ、耐火ボードとの接触面積を増加することにより、耐火ボードに発生する応力が低減される。従って、耐火ボードの被保持部の破損、損傷を抑制することができる。更に、耐火ボードとの接触面積を増加することにより、耐火ボードを安定して支持することができる。
【0021】
請求項5に記載されたカーテンウォール用耐火ボード支持構造は、請求項4に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造において、前記規制手段が、前記接触部から前記耐火ボードの下面へ延びて該耐火ボードを下から支持する支持部を有している。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、規制手段が、接触部から耐火ボードの下面へ延びる支持部を有している。この支持部によって耐火ボードが下から支持されている。これにより、耐火ボードを更に安定して支持することができる。
【0023】
請求項6に記載されたカーテンウォール用耐火ボード支持構造は、請求項4又は請求項5に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造において、前記耐火ボードと前記接触部とを接合する接合手段を備えている。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、接合手段によって耐火ボードと接触部を接合することにより、地震や火災時の内部圧力等に起因して、耐火ボードの構造部材から離間する方向の傾きや回転が抑制される。従って、耐火ボードの支持性能が向上する。更に、保持手段が保持する耐火ボードの被保持部に作用する繰り返し応力が低減されるため、耐火ボードの被保持部の破損、損傷が抑制される。従って、耐火ボードの耐久性が向上する。
【0025】
請求項7に記載されたカーテンウォール用耐火ボード支持構造は、請求項2〜6の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造において、前記構造部材がコンクリートスラブであり、前記規制手段が、前記コンクリートスラブの上面に取り付けられる取付部と、前記取付部から下方へ延びて前記隙間に配置され、前記耐火ボードと対向する対向部と、を有し、前記張出し部が、前記対向部から前記耐火ボードに向かって張り出している。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、構造部材としてのコンクリートスラブの上面に規制手段の取付部を取り付けることにより、規制手段の取付部をコンクリートスラブの下面に取り付ける構成と比較して、規制手段の取り付け作業が容易となる。規制手段の取り付け作業を下向きで行うことができるためである。従って、施工性が向上する。
【0027】
請求項8に記載されたカーテンウォール用耐火ボード支持構造は、請求項1〜7の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造において、前記保持手段が、前記耐火ボードに形成された貫通孔に挿入される雌ネジ部と、前記雌ネジ部から該雌ネジ部の径方向に突出し、前記耐火ボードの表面と接触する第1保持部と、前記耐火ボードの裏面と接触する第2保持部と、前記第2保持部に形成された取付孔を通して前記雌ネジ部に締結される締結ボルトと、を有している。
【0028】
請求項8に係る発明によれば、耐火ボードの貫通孔に挿入された雌ネジ部に、第2保持部の取付孔を通して締結ボルトを締め付けることにより、耐火ボードの被保持部の表裏面が第1保持部及び第2保持部で挟み込まれる。これらの第1保持部及び第2保持部を耐火ボードに面接触させ、耐火ボードとの接触面積を増加することにより、耐火ボードの被保持部に作用する応力を低減することができる。この結果、耐火ボードの被保持部の破損、損傷が抑制されるため、耐火ボードの支持性能が向上する。
【0029】
また、耐火ボードに形成された貫通孔に雌ネジ部を挿入する構成であるため、従来(例えば、特許文献1)のようなインサートナットを埋め込む構成と比較して、施工性が向上する。
【0030】
請求項9に記載された建物は、請求項1〜8の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造を備えている。
【0031】
請求項9に係る発明によれば、請求項1〜8の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造を備えることにより、耐火ボードの支持性能が向上するため、建物の耐火性能が向上する。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、上記の構成としたので、耐火ボードの破損、損傷を抑制し、耐火ボードの支持性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係るカーテンウォールを室外側から見た図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る保持手段及び規制手段を示す、斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る規制手段の変形例を示す、図4に相当する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る規制手段の変形例を示す、図4に相当する図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る規制手段の変形例を示す、図4に相当する図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る規制手段の変形例を示す、図4に相当する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る規制手段の変形例を示す、図4に相当する図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る保持手段の変形例を示す、図4に相当する要部拡大図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る保持手段の変形例を示す、図4に相当する図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る保持手段の変形例を示す、図3に相当する要部拡大図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る保持手段の変形例を示す、図3に相当する要部拡大図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る保持手段の変形例を示す、図4に相当する要部拡大図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る保持手段の変形例を示す、図4に相当する要部拡大図である。
【図17】本発明の一実施形態に係る構造部材の変形例を示す、図4に相当する図である。
【図18】従来技術を示す、図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るカーテンウォール用耐火ボード支持構造について説明する。
【0035】
先ず、カーテンウォール用耐火ボード支持構造10の構成について説明する。
【0036】
<カーテンウォールの構成>
図1には、カーテンウォール用耐火ボード支持構造10が適用されたカーテンウォール12が示されている。カーテンウォール12は、水平方向に間隔を空けて立てられた複数の方立14と、方立14の間に上下方向に間隔を空けて架設された複数の無目16を備えている。これらの方立14及び無目16はアルミ製で、格子状に連結されており、この格子枠内に窓ガラス18が配置されている。
【0037】
図2及び図3に示されるように、方立14はコンクリートスラブ(構造部材)20に隣接して配置されており、方立ブラケット22及びファスナー24を介してコンクリートスラブ20に支持されている。
【0038】
方立ブラケット22は断面L字状で、方立14の両側面にそれぞれボルト26で固定されている。ファスナー24は、断面L字状でコンクリートスラブ20の上面にボルト28で固定されている。このファスナー24に方立ブラケット22をボルト30及びナット31で固定することにより、カーテンウォール12がコンクリートスラブ20に支持されている。なお、コンクリートスラブ20は鉄骨梁32(図2参照)に支持されている。
【0039】
カーテンウォール12の上階の窓と下階の窓との間のスパンドレルには、層間区画部材としての耐火ボード34が設けられている。耐火ボード34は、窓ガラス18の室内側に設けられ、方立14及び無目16で囲まれたアルミ枠内に配置されている。耐火ボード34は、繊維混入けい酸カルシウム板、石膏ボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード等で構成されており、その周縁部が方立14及び無目16に設けられたレール36内に配置されている。このレール36によって耐火ボード34がコンクリートスラブ20と隙間D(図2参照)を空けた状態で保持されている。
【0040】
<保持手段の構成>
図4に示されるように、耐火ボード34は、保持手段40を介してコンクリートスラブ20に支持されている。保持手段40は、耐火ボード34に取り付けられるナット部材42と、コンクリートスラブ20の上面に取り付けられる取付部材44と、ナット部材42と締結される締結ボルト38を備えている。なお、説明の便宜上、耐火ボード34の室外側の面を表面34Aとし、室内側の面を裏面34Bとして以下説明する。
【0041】
図5に示されるように、ナット部材42は、雌ネジ部42Aと、雌ネジ部42Aの端部に設けられた第1保持部42Bを有している。雌ネジ部42Aは筒状で、その内部には雌ネジが切られており、締結ボルト38が締結可能になっている。第1保持部42Bは、円盤状で雌ネジ部42Aと同軸上に配置され、雌ネジ部42Aの端部から当該雌ネジ部42Aの径方向へつば状に突出している。
【0042】
一方、ナット部材42が取り付けられる耐火ボード34の幅方向両端部には、貫通孔48がそれぞれ形成されている。貫通孔48の耐火ボード34の表面34A側の縁には、貫通孔48よりも直径が大きい座グリ50が形成されている。この貫通孔48にナット部材42の雌ネジ部42Aが、耐火ボード34の裏面34Bから突出しないように挿入されると共に、ナット部材42の第1保持部42Bが、座グリ50の底面に面接触した状態で収納されている。なお、第1保持部42Bは、耐火ボード34の表面34Aと略面一となるように座グリ50に収納されている。これにより、耐火ボード34の室外側からの見栄えが良くなっている。
【0043】
ナット部材42と対向する位置には、取付部材44が設けられている。取付部材44は断面L字状の鋼板で構成され、コンクリートスラブ20上面から耐火ボード34に向かって張り出している。この取付部材44は、コンクリートスラブ20に取り付けられる取付部44Aと、取付部44Aの張り出し方向先端部から耐火ボード34に沿って上方へ屈曲された第2保持部44Bを有し、耐火ボード34の裏面34Bに第2保持部44Bを面接触させた状態で配置されている。この第2保持部44Bに形成された取付孔52を通して、ナット部材42の雌ネジ部42Aに締結ボルト38を締め込むことにより、ナット部材42の第1保持部42Bと取付部材44の第2保持部44Bとの間で耐火ボード34の被保持部34X(図4参照)の表面34A及び裏面34Bが挟み込まれた状態で保持されている。
【0044】
なお、耐火ボード34の表面34A及び裏面34Bは、座グリ50の底面のように、耐火ボード34の表面34Aから凹んだ面も含む概念である。また、耐火ボード34の被保持部34Xとは、第1保持部42Bと第2保持部44Bで挟みこまれる耐火ボード34の部位を意味し、本実施形態では、耐火ボード34の幅方向両端部にそれぞれ設けられている。この被保持部34Xは、耐火ボード34の支持条件に応じて、耐火ボード34の必要部位に適宜設けることができる。
【0045】
取付部材44の取付部44Aには取付孔54が形成されており、この取付孔54に貫通されるボルト56をコンクリートスラブ20の上面に埋設されたアンカーナット58に締め込むことにより、取付部材44がコンクリートスラブ20の上面に固定されている。また、取付孔54は取付部44Aの張り出し方向(矢印A方向)に延びる長孔とされており、耐火ボード34とコンクリートスラブ20との隙間Dを調整可能になっている。なお、取付孔54は、取付部44Aの張り出し方向と直交する方向に延びる長孔としても良い。
【0046】
<規制手段の構成>
また、図4に示されるように、コンクリートスラブ20には、規制手段60が取り付けられている。規制手段60は鋼板をZ字状に屈曲させて構成され、取付部60A、対向部60B、及び張出し部60Cを有している。取付部60Aは、コンクリートスラブ20の上面と取付部材44の取付部44Aとの間に配置され、取付部材44と共にコンクリートスラブ20の上面に取り付けられている。
【0047】
具体的には、規制手段60の取付部60Aには取付孔62が形成されており、この取付孔62及び取付部材44の取付孔54に貫通されるボルト56をコンクリートスラブ20の上面に埋設されたアンカーナット58に締め込むことにより、規制手段60及び取付部材44がコンクリートスラブ20の上面に固定されている。また、規制手段60の取付部60Aの取付孔62は、後述する張出し部60Cの張り出し方向(矢印A方向)に延びる長孔とされており、耐火ボード34とコンクリートスラブ20との隙間Dを調整可能になっている。なお、この取付孔62は、張出し部60Cの張り出し方向と直交する方向に延びる長孔としても良い。
【0048】
取付部60Aの耐火ボード34側の端部には、当該端部からコンクリートスラブ20の端面に沿って下方へ屈曲された対向部60Bが設けられている。対向部60Bは、耐火ボード34とコンクリートスラブ20との隙間Dに配置され、コンクリートスラブ20と対向している。
【0049】
対向部60Bの下端部には、当該下端部から耐火ボード34に向かって張り出す張出し部60Cが設けられている。張出し部60Cは、コンクリートスラブ20の下面と略面一となるように略水平に配置され、その張り出し方向(矢印A方向)先端部が耐火ボード34の被保持部34Xよりも下方で耐火ボード34の裏面34Bと接触している。これにより、ナット部材42又は取付部材44を支点とした耐火ボード34のコンクリートスラブ20に接近する方向の傾きや回転(矢印B方向)が規制されている。
【0050】
また、張出し部60Cの上には、耐火ボード34とコンクリートスラブ20の隙間Dを塞ぐ板材64が載置されている。板材64は、耐火ボード34とコンクリートスラブ20の隙間Dに沿って配置され、隣接する規制手段60の張出し部60Cの間に渡されている。この板材64の上には、耐火ボード34とコンクリートスラブ20との隙間Dを埋めるロックウール等の層間塞ぎ材66が載置されている。この層間塞ぎ材66によって、火災時に耐火ボード34とコンクリートスラブ20との隙間Dを通して、コンクリートスラブ20の下階からコンクリートスラブ20の上階へ流入する熱気や炎が抑制されている。
【0051】
次に、一実施形態に係るカーテンウォール用耐火ボード支持構造10の作用について説明する。
【0052】
耐火ボード34の被保持部34Xには、ナット部材42が取り付けられている。このナット部材42の雌ネジ部42Aに取付部材44の第2保持部44Bに形成された取付孔52を通して締結ボルト38を締め込むことにより、ナット部材42の第1保持部42Bと取付部材44の第2保持部44Bの間で、被保持部34Xの表面34A及び裏面34Bが挟み込まれて保持されている。
【0053】
ここで、従来(例えば、特許文献1)のように耐火ボード34にインサートナットを埋め込む構成では、インサートナットの埋め込み部に応力が集中し、当該埋め込み部が破損、損傷する恐れがある。これに対して本実施形態では、耐火ボード34の被保持部34Xの表面34A及び裏面34Bに面接触される第1保持部42B及び第2保持部44Bによって、被保持部34Xの表面34A及び裏面34Bを挟んで保持するため、被保持部34Xの表面34A及び裏面34Bに作用する応力が低減されると共に、ナット部材42の雌ネジ部42Aが挿入された貫通孔48の内周面に作用する応力が低減される。
【0054】
また、火災時の熱気や、風、地震等の外力によって耐火ボード34が振動すると、耐火ボード34の被保持部34Xに繰り返し応力が作用するところ、本実施形態では、第1保持部42B及び第2保持部44Bが耐火ボード34の被保持部34Xの表面34A及び裏面34Bに面接触するため、繰り返し応力が分散されて被保持部34Xに伝達される。従って、耐火ボード34の被保持部34Xの破損、損傷が抑制されるため、耐火ボード34の支持性能が向上する。
【0055】
更に、耐火ボード34の被保持部34Xに作用する応力が低減されるため、被保持部34Xに要求される強度、剛性を小さく抑えることができる。従って、耐火ボード34の材料コスト等を削減することができる。
【0056】
更にまた、耐火ボード34に形成された貫通孔48に雌ネジ部42Aを挿入することにより、耐火ボード34にナット部材42を取り付ける構成であるため、従来(例えば、特許文献1)のように、耐火ボードにインサートナットを埋め込む構成と比較して、ナット部材42の取り付け作業の手間が低減される。
【0057】
ここで、耐火ボード34を支持するカーテンウォール12の方立14及び無目16は、一般にアルミ製であるため、火災時の温度上昇によって溶融する恐れがある。これらの方立14及び無目16が溶融し、レール36(図2、図3参照)による耐火ボード34の周縁部の拘束が解除されると、保持手段40が耐火ボード34の全重量を負担することなる。この際、本実施形態のように、コンクリートスラブ20から耐火ボード34に向かって張り出す保持手段40によって耐火ボード34を支持する構成では、耐火ボード34の重量によって取付部材44が撓んだり、ナット部材42の周辺の耐火ボード34が圧壊されたりして、これらの取付部材44又はナット部材42を支点として、耐火ボード34がコンクリートスラブ20に接近する方向(図4において、矢印B方向)へ傾いたり、回転したりする恐れがある。
【0058】
この対策として本実施形態では、コンクリートスラブ20に規制手段60を設けている。この規制手段60は、コンクリートスラブ20から耐火ボード34に向かって張り出す張出し部60Cを有し、この張出し部60Cの張り出し方向(矢印A方向)先端部が、耐火ボード34の被保持部34Xよりも下方で耐火ボード34の裏面34Bに接触することにより、耐火ボード34のコンクリートスラブ20に接近する方向(矢印B方向)の傾きや回転が抑制されている。これにより、常時だけなく、火災時における耐火ボード34の支持性能を向上することができる。
【0059】
また、規制手段60によって耐火ボード34の傾きや回転が抑制されるため、耐火ボード34の周縁部を拘束するレール36等を省略することが可能になる。従って、カーテンウォール12の構造が単純化されるため、製作コストを削減することができる。
【0060】
更に、規制手段60の張出し部60Cは、耐火ボード34とコンクリートスラブ20との間の隙間Dに配置されており、この張出し部60Cによって板材64及び層間塞ぎ材66が支持されている。このように張出し部60Cを層間塞ぎ材66の支持部材として利用することにより、層間塞ぎ材66を支持する支持部材を省略することができるため、コスト削減を図ることができる。
【0061】
更にまた、本実施形態では、保持手段40及び規制手段60をコンクリートスラブ20の上面に取り付けることにより、保持手段40及び規制手段60の取り付け作業が容易となる。保持手段40及び規制手段60の取り付け作業を下向きで行うことができるためである。また、保持手段40及び規制手段60を1つのボルト56でコンクリートスラブ20の上面に固定するため、保持手段40と規制手段60とを別々に取り付ける構成と比較して、保持手段40及び規制手段60の取り付け作業の手間が低減される。従って、施工性が向上する。
【0062】
このように本実施形態に係るカーテンウォール用耐火ボード支持構造10を備えることにより、耐火ボード34の破損、損傷が抑制されると共に、火災時における耐火ボード34の傾きや回転が抑制され、耐火ボードの支持性能が向上する。この結果、建物の耐火性能が向上する。
【0063】
次に、一実施形態に係るカーテンウォール用耐火ボード支持構造10の変形例について説明する。なお、上記実施形態と同じ構成のものは同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0064】
先ず、規制手段の変形例について説明する。
【0065】
上記実施形態では、規制手段60に設けられた張出し部60Cの張り出し方向先端部を耐火ボード34の裏面34Bに接触させたがこれに限らず、張出し部60Cの張り出し方向先端部に上下方向へ延びる接触部を設け、耐火ボード34との接触面積を増加しても良い。
【0066】
具体的には、図6に示されるように、規制手段60には、張出し部60Cの張り出し方向先端部から耐火ボード34の裏面34Bに沿って下方へ屈曲された接触部60Dが設けられている。この接触部60Dが耐火ボード34の裏面34Bと面接触することにより、耐火ボード34に発生する応力が低減される。従って、耐火ボード34の破損、損傷が抑制される。更に、接触部60Dによって、耐火ボード34との接触面積を増加することにより、耐火ボードを安定して支持することができるため、耐火ボード34の支持性能が向上する。
【0067】
なお、図6に示す構成では、張出し部60Cの張り出し方向先端部から下方へ延びる接触部60Dが設けたが、張出し部60Cの張り出し方向先端部から上方へ延びる接触部を設けても良いし、更に、断面T字状となるように、張出し部60Cの張り出し方向先端部から上方及び下方に延びる接触部を設けても良い。
【0068】
また、図7に示されるように、接触部60Dと耐火ボード34とを接合手段72によって接合しても良い。この接合手段72は、耐火ボード34に埋め込まれるインサートナット74と、インサートナット74に締め込まれるボルト76を備えている。このインサートナット74に、接触部60Dに形成された貫通孔78を通してボルト76を締め込むことにより、耐火ボード34と接触部60Dとが接合されている。
【0069】
ここで、火災時に方立14及び無目16が溶融すると、耐火ボード34の室内側に発生する熱気等による内部圧力により、耐火ボード34がナット部材42又は取付部材44を支点としてコンクリートスラブ20から離間する方向(矢印C方向)に傾いたり、回転したりする恐れがある。
【0070】
これに対して本変形例では、接合手段72によって耐火ボード34と接触部60Dを接合したことにより、ナット部材42又は取付部材44を支点とした耐火ボード34のコンクリートスラブ20から離間する方向の傾きや回転が抑制される。従って、火災時における耐火ボード34の支持性能が向上する。更に、風、地震等に起因する耐火ボード34の振動も抑制されるため、耐火ボード34の被保持部34Xに作用する繰り返し応力が低減される。従って、耐火ボード34の被保持部34Xの破損、損傷が抑制されるため、耐火ボード34の支持性能、及び耐久性が向上する。
【0071】
なお、本変形例では、耐火ボード34と接触部60Dをインサートナット74及びボルト76で接合したが、タッピングネジや、ピン、接着剤等で接合しても良い。更に、耐火ボード34にナット部材42を取り付けて締結ボルト38で接合しても良い。この構成によれば、耐火ボード34の破損、損傷を抑制することができる。
【0072】
更に、図8に示されるように、接触部60Dを耐火ボード34の下端部まで延ばし、この接触部60Dに耐火ボード34の下面へ延びる支持部60Eを設けても良い。支持部60Eは、接触部60Dの下端部から耐火ボード34の下面に沿って水平方向へ屈曲されている。また、支持部60Eの先端部には、耐火ボード34の表面34A側へ回り込むように、耐火ボード34の表面34Aに沿って上方へ屈曲された折り返し部60Fが設けられている。この支持部60Eによって耐火ボード34が下から支持されると共に、折り返し部60F及び接触部60Dによって耐火ボード34の水平方向の変位が規制されている。これにより、耐火ボード34を更に安定して支持することができる。
【0073】
更に、上記実施形態では、規制手段60をコンクリートスラブ20の上面に取り付けたがこれに限らない。規制手段60は、耐火ボード34の被保持部34Xよりも下方で耐火ボード34の裏面と接触可能であれば良く、例えば、図9に示されるように、コンクリートスラブ20の下面に取り付けても良い。
【0074】
図9に示す構成では、コンクリートスラブ20の下面に、規制手段としての鋼板80が取り付けられている。鋼板80は、コンクリートスラブ20の下面から耐火ボード34に向かって張り出しており、張り出し方向先端部が耐火ボード34の裏面34Bと接触している。一方、鋼板80のコンクリートスラブ20側の端部には取付孔82が形成されており、この取付孔82を通して、コンクリートスラブ20の下面に埋設されたアンカーナット84にボルト86を締め込むことにより、鋼板80がコンクリートスラブ20の下面に固定されている。更に、鋼板80の上には、層間塞ぎ材66を支持する板材64が載置されている。
【0075】
また、図10に示されるように、コンクリートスラブ20を支持する鉄骨梁32に規制手段としての鋼板90を取り付けても良い。鋼板90は、その一端部が鉄骨梁32の下部フランジ32Bに溶接、接着剤等で固定され、その他端部が下部フランジ32Bから耐火ボード34に向かって張り出し、耐火ボード34の被保持部34Xの下方で耐火ボード34の裏面34Bに接触されている。なお、層間塞ぎ材66を支持する板材64は、図示しない鉄筋等の支持部材によって支持されている。
【0076】
このように、耐火ボード34を保持する保持手段40と規制手段としての鋼板90の支持点間の距離Lを広げることにより、即ち、モーメントの腕の長さを長くすることにより、耐火ボード34の傾きや回転を効率的に抑制することができる。
【0077】
なお、本変形例では、鉄骨梁32の下部フランジ32Bに鋼板90を固定したが、鉄骨梁32のウェブ32Aに鋼板90を固定しても良い。更には、鉄骨梁32ではなく、耐火ボード34に隣接する鉄骨柱等に鋼板90を固定しても良い。
【0078】
次に、保持手段の変形例について説明する。
【0079】
図11に示されるように、耐火ボード34に形成された座グリ50内に、耐火ボード34と同じ材料で構成された化粧板92を配置し、座グリ50を塞いでも良い。これにより、化粧板92によってナット部材42が隠されるため、耐火ボード34の見栄えが良くなる。
【0080】
また、耐火ボード34の貫通孔48とナット部材42の雌ネジ部42Aとの間や、座グリ50の底面と第1保持部42Bとの間、耐火ボード34の裏面34Bと第2保持部44Bとの間に、接着剤や緩衝材、シール部材等の機能性材料を設けても良い。
【0081】
ここで、機能性材料として接着剤を設けることにより、耐火ボード34とナット部材42との接合強度が上がるため、耐火ボード34の支持強度が向上する。また、耐火ボード34の搬送時におけるナット部材42の抜け落ち等が防止されるため、施工性が向上する。
【0082】
なお、接着剤としては、有機系無機系を問わずに使用可能である。有機系の場合は繊維混入けい酸カルシウム板への表面処理(シーラー処理)が必要となる。耐火性能上は無機系接着剤のうち、セラミック系やけい酸ソーダ系の使用が望ましく、また、繊維混入けい酸カルシウム板には、けい酸ソーダ系が一般的に使用される。
【0083】
また、機能性材料として緩衝材又はシール部材を設けることにより、耐火ボード34のガタツキが抑制されると共に、緩衝材又はシール部材が耐火ボード34に対する衝撃を吸収するため、耐火ボード34の支持性能が向上する。
【0084】
なお、緩衝材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、粘弾性体等を用いることができる。また、シール部材としては、例えば、シリコン系充填材、熱膨張性耐火充填材の充填材や、これらの成形品を用いることができる。また、熱膨張性耐火材の成形品としては、例えば、ゴム材とスポンジ材等がある。
【0085】
また、上記実施形態では、コンクリートスラブ20の上面に取付部材44を直接取り付けたがこれに限らない。例えば、図12に示されるように、取り付け高さ調整用の調整部材94を介して取付部材44をコンクリートスラブ20に取り付けても良い。この調整部材94は鋼板をZ字状に屈曲させて構成され、高さの異なる取付部94Aと連結部94Bを有している。この調整部材94は、その取付部94Aが規制手段60の取付部60Aの上に重ねられ、連結部94Bがコンクリートスラブ20から耐火ボード34に向かって張り出すように配置されている。
【0086】
取付部94Aには取付孔96が形成されており、この取付孔96及び規制手段60の取付部60Aの取付孔62に貫通されるボルト56をコンクリートスラブ20の上面に埋設されたアンカーナット58に締め込むことにより、調整部材94及び規制手段60がコンクリートスラブ20の上面に固定されている。
【0087】
また、調整部材94の取付部94Aの取付孔96は、連結部94Bの張り出し方向(矢印A方向)に延びる長孔とされており、耐火ボード34とコンクリートスラブ20との隙間D(図2参照)を調整可能になっている。なお、この取付孔96は、連結部94Bの張り出し方向と直交する方向に延びる長孔としても良い。
【0088】
取付部94Aよりもコンクリートスラブ20に対して高い位置に配置された連結部94Bの上には、取付部材44の取付部44Aが重ねられている。この連結部94Bには貫通孔98が形成されており、この貫通孔98及び取付部44Aの取付孔54に貫通されるボルト121及びナット122によって連結部94Bと取付部44Aが連結されている。
【0089】
このように、調整部材94を介して取付部材44をコンクリートスラブ20に取り付けることにより、耐火ボード34の取り付け高さを調整することができる。これにより、カーテンウォール12の施工誤差やコンクリートスラブ20の施工誤差を調整部材94で吸収することができるため、施工性が向上する。
【0090】
更に、図13に示されるように、耐火ボード34を支持するファスナー24を介して、取付部材44をコンクリートスラブ20に取り付けても良い。ファスナー24の上には、断面L字状のアングル124が配置されている。このアングル124は耐火ボード34と略平行して配置され、その両端部がファスナー24から水平方向両側へ張り出している。
【0091】
アングル124は、ファスナー24をコンクリートスラブ20に固定するボルト28によって、ファスナー24と共にコンクリートスラブ20の上面に固定されている。このアングル124の両端部に、取付部材44の取付部44Aが取り付けられている。取付部材44は、アングル124と略直交するように配置され、その取付部44Aがアングル124の両端部にそれぞれ重ねられている。アングル124の両端部には、連結孔(図示省略)がそれぞれ形成されており、各連結孔及び取付部44Aの取付孔54に貫通される連結ボルト126及びナット(図示省略)によって取付部材44がアングル124に固定されている。この取付部材44は、アングル124から耐火ボード34に向かって張り出し、第2保持部44Bを耐火ボード34の裏面34Bに接触させた状態で配置されている。
【0092】
このように、ファスナー24を介して取付部材44を取り付けることより、コンクリートスラブ20に埋設するアンカーナット58(図4参照)を省略することができるため、取り付け作業の手間が低減される。従って、施工性が向上する。
【0093】
また、取付部材44の形状は断面L字状に限らない。例えば、図14に示されるように、断面Z字状の取付部材140を用いても良い。この取付部材140はアングル142を介してコンクリートスラブ20の上面に取り付けられている。アングル142は断面L字状で、その一端部に設けられた取付部142Aがボルト144でコンクリートスラブ20の上面に固定され、他端部に設けられた連結部142Bがコンクリートスラブ20から耐火ボード34に向かって張り出した状態で配置されている。
【0094】
取付部材140は鋼板をZ字状に屈曲させて構成され、高さの異なる取付部140Aと第2保持部140Bを有し、その長手方向を水平方向にして配置されている。この取付部材140は、その取付部140Aがアングル142の連結部142Bに重ねられ、取付部140Aよりも耐火ボード34側に配置された第2保持部140Bが耐火ボード34の裏面34Bに面接触された状態でアングル142に支持されている。この取付部140A及びアングル142の連結部142Bには、取付孔146及び貫通孔(図示省略)がそれぞれ形成されており、これらの取付孔146及び貫通孔に貫通されるボルト148及びナット149によって取付部140Aが連結部142Bに連結されている。
【0095】
なお、取付部材140の取付部140Aに形成された取付孔146は、アングル142の張り出し方向(矢印A方向)と直交する方向に延びる長孔とされており、アングル142と耐火ボード34の水平方向の施工誤差等を吸収可能となっている。また、取付孔146は、鉛直方向に延びる長孔としても良い。これと同様に、アングル142の連結部142Bに形成された貫通孔も長孔としても良い。
【0096】
耐火ボード34の裏面34Bに面接触された第2保持部140Bには取付孔145が形成されており、この取付孔145を通してナット部材42の雌ネジ部42A(図4参照)に締結ボルト38を締め込むことにより、耐火ボード34の被保持部34Xが保持されている。
【0097】
このように、取付部材140の形状、配置する向きは適宜変更可能である。また、取付部材140の長手方向を水平方向にすることにより、コンクリートスラブ20と耐火ボード34との水平方向の施工誤差等を容易に吸収することができる。
【0098】
また、上記実施形態では、取付部材44をコンクリートスラブ20の上面に取り付けたがこれに限らない。取付部材44は、コンクリートスラブ20の上部に取り付けられていれば良く、例えば、コンクリートスラブ20の端面の上部に取り付けても良い。
【0099】
更に、上記実施形態では、耐火ボード34にナット部材42を取り付けたが、これに限らない。保持手段40は、耐火ボード34の被保持部34Xの表面34A及び裏面34Bを挟んで保持できれば良く、即ち、耐火ボード34の厚さ方向両側から耐火ボード34を挟んで保持する構成であれば良く、例えば、図15に示されるように、耐火ボード34の表面34Aに第1保持部としての当て板128を面接触させ、この当て板128と第2保持部44Bとの間で、被保持部34Xの表面34A及び裏面34Bを挟んでも良い。
【0100】
具体的には、当て板128及び耐火ボード34の被保持部34Xには貫通孔130、132がそれぞれ形成されており、これらの貫通孔130、132及び第2保持部44Bの取付孔52を貫通するボルト134及びナット136によって、当て板128と第2保持部44Bの間隔を狭くすることにより、耐火ボード34の被保持部34Xの表面34A及び裏面34Bが挟み込まれている。これにより、上記実施形態に係る保持手段40と同様の効果を得ることができる。
【0101】
また、上記実施形態に係るナット部材42では、雌ネジ部42Aの端部に第1保持部42Bを設けたがこれに限らない。例えば、直径が大きくされた円盤状の第1保持部42Bに、複数の雌ネジ部42Aを設けても良い。これにより、耐火ボード34の被保持部34Xに作用する応力が更に分散されるため、耐火ボード34の被保持部34Xの破損、損傷が抑制される。また、第1保持部42Bは円盤状に限らず、矩形でも良い。
【0102】
また、図16に示されるように、板材64を省略し、張出し部60Cで層間塞ぎ材66を直接支持しても良い。この構成では、張出し部60Cを隙間D(図2参照)に沿う板状に形成しても良い。
【0103】
更に、上記実施形態では、構造部材としてのコンクリートスラブ20に保持手段40及び規制手段60を取り付けたがこれに限らない。例えば、図17に示されるように、コンクリート梁138に保持手段40及び規制手段60を取り付けも良い。また、コンクリートスラブ20に限らず、デッキ合成スラブ、デッキ複合スラブ、又はデッキ構造スラブにも適用可能である。また、耐火ボード34は、繊維混入けい酸カルシウム板、石膏ボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード等の柔らかい材料(脆い材料)に限らず、PC板、ALCパネル、押し出し成形セメント板等の固い材料に適用することも可能である。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0105】
10 カーテンウォール用耐火ボード支持構造
20 コンクリートスラブ(構造部材)
34 耐火ボード
34A 表面
34B 裏面
34X 被保持部
38 締結ボルト(保持手段)
40 保持手段
42A 雌ネジ部(保持手段)
42B 第1保持部(保持手段)
44B 第2保持部(保持手段)
48 貫通孔
52 取付孔
60 規制手段
60A 取付部
60B 対向部
60C 張出し部
60D 接触部
60E 支持部
66 層間塞ぎ材
72 接合手段
74 インサートナット(接合手段)
76 ボルト(接合手段)
80 鋼板(規制手段)
90 鋼板(規制手段)
128 当て板(第1保持部)
134 ボルト(保持手段)
136 ナット(保持手段)
138 コンクリート梁(構造部材)
140B 第2保持部(保持手段)
D 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部材の上部に取り付けられ、該構造部材と隙間を空けて配置される耐火ボードの被保持部の表裏面を挟んで保持する保持手段と、
前記被保持部よりも下方で前記耐火ボードの裏面と接触し、該耐火ボードの前記構造部材に接近する方向の変位を規制する規制手段と、
を備えるカーテンウォール用耐火ボード支持構造。
【請求項2】
前記規制手段が、前記構造部材に取り付けられ、該構造部材から前記耐火ボードに向かって張り出して前記耐火ボードの裏面と接触する張出し部を有する請求項1に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造。
【請求項3】
前記張出し部が、前記隙間に設けられる層間塞ぎ材を支持する請求項1又は請求項2に記載の耐火ボード支持構造。
【請求項4】
前記規制手段が、前記張出し部の張り出し方向先端部から上下方向に延び、前記耐火ボードの裏面と接触する接触部を有する請求項2又は請求項3に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造。
【請求項5】
前記規制手段が、前記接触部から前記耐火ボードの下面へ延びて該耐火ボードを下から支持する支持部を有する請求項4に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造。
【請求項6】
前記耐火ボードと前記接触部とを接合する接合手段を備える請求項4又は請求項5に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造。
【請求項7】
前記構造部材がコンクリートスラブであり、
前記規制手段が、
前記コンクリートスラブの上面に取り付けられる取付部と、
前記取付部から下方へ延びて前記隙間に配置され、前記耐火ボードと対向する対向部と、
を有し、
前記張出し部が、前記対向部から前記耐火ボードに向かって張り出している請求項2〜6の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造。
【請求項8】
前記保持手段が、
前記耐火ボードに形成された貫通孔に挿入される雌ネジ部と、
前記雌ネジ部から該雌ネジ部の径方向に突出し、前記耐火ボードの表面と接触する第1保持部と、
前記耐火ボードの裏面と接触する第2保持部と、
前記第2保持部に形成された取付孔を通して前記雌ネジ部に締結される締結ボルトと、
を有する請求項1〜7の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のカーテンウォール用耐火ボード支持構造を備える建物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−190614(P2011−190614A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57757(P2010−57757)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000149136)日本インシュレーション株式会社 (19)
【Fターム(参考)】