説明

カーテンエアバッグ取付構造およびカーテンエアバッグ取付方法

【課題】簡易な手段により、Aピラーの上端部付近またはA1打点付近等からの乗員の車外放出を防止可能なカーテンエアバッグの取付構造を提供する。
【解決手段】カーテンエアバッグ取付構造は、カーテンエアバッグと、カーテンエアバッグの上部に設けられる複数のタブと、タブに連結され、ルーフサイドレール124に沿ってカーテンエアバッグを車体に取り付けるための取付用のボルト穴を有する複数のブラケットとを備え、ブラケットは、ボルト穴114bより上側でタブ106と連結される第1ブラケット114と、ボルト穴112bより下側でタブ104と連結される第2ブラケット112とを含み、カーテンエアバッグの展開時に、第1ブラケット114の位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレール124とのオーバーラップ量が、第2ブラケット112の位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレール124とのオーバーラップ量よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ(横転)時に、乗員保護を目的として車両室内の側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグの取付構造およびその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には高い安全性が求められている。この傾向は世界各国に共通していて、現在では世界各国でエアバッグが車両の安全装置としてほぼ標準装備されている。そして、車両開発に関係する事業者ではさらなる安全性向上が重要な開発テーマとして掲げられていて、これに伴って日々新たなエアバッグが開発されている。
【0003】
車両の安全性の評価基準は各国において異なっていて、各事業者は製造品が多国の評価基準に対応し得るよう開発を行っている。例えば世界最大の自動車保有台数をほこる米国では、NHTSA(米国高速道路交通安全局)によってFMVSS(米国連邦自動車安全基準)が制定されている。NHSTAによって正式に制定されたFMVSS226の基となっているFMVSSの規則策定の通知(NPRM;Notice of Proposed Rule Making:docet number;NHTSA-2009-0183)には「側突時・ロールオーバ(横転)時において、放出緩和システムによりサイドウィンドウを通した乗員の車外放出の見込みを減少させる」という要件が提案されている(FMVSS226)。この要件は、放出緩和システムを成す車外放出軽減対策装置としてカーテンエアバッグを備えることで達成可能である。
【0004】
カーテンエアバッグは、ドア上方に設置されていて、衝撃発生時に車両のサイドウィンドウに沿って膨張展開して乗員の保護を行うエアバッグである。例えば特許文献1に示されるように、通常、カーテンエアバッグはタブとブラケットとを用いて取り付けられている。
【0005】
カーテンエアバッグは、膨張展開した際の圧力持続時間がフロントエアバッグ等よりも長くなっている。側面衝突に続いてロールオーバが発生した場合などは衝撃が発生し得る時間が長いからである。例えば特許文献2には、側面衝突に続いてロールオーバが発生した場合に、乗員が車外側へ飛び出すのを防ぐことができるとする技術が開示されている。
【0006】
なお、米国のNPRM(NHTSA-2009-0183)に定められる車外放出防止性能評価試験において、インパクタは、同NPRM(NHTSA-2009-0183)のV.「Proposed Ejection Mitigation Requirements and Test Procedures」で規定されている。インパクタの衝突目標は、同NPRM(NHTSA-2009-0183)のV.「Proposed Ejection Mitigation Requirements and Test Procedures」、d.「Locations Where the Device Would Impact the Ejection Mitigation Countermeasure To Asses Efficacy」、4.「Method for Determining Impactor Target Locations」で定められるターゲットロケーション(Target locations)に規定されている。これらの打点は、同NPRMで記載されている各ターゲットの打点位置、たとえばA1〜A4、B1〜B4などに示されている各ポイントによって示される。本願において、このA1として示されるポイントを「A1打点」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−105159号公報
【特許文献2】特開2004−148976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような従来技術では、ドアとサイドウィンドウとの境界ラインであるウェストラインより上にカーテンエアバッグがあると、乗員の車外放出防止性能を充分に確保できない箇所ができてしまうおそれがある。特に、Aピラーの上端部付近またはA1打点付近がその箇所である。この箇所ではカーテンエアバッグにかかるテンション(張力)が弱いため、乗員が車外へ放出されようとするとカーテンエアバッグも共に車外へ出てしまう。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、簡易な手段により、Aピラーの上端部付近またはA1打点付近等からの乗員の車外放出を防止可能なカーテンエアバッグの取付構造およびその取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグ取付構造の代表的な構成は、カーテンエアバッグと、カーテンエアバッグの上部に設けられる複数のタブと、タブに連結され、ルーフサイドレールに沿ってカーテンエアバッグを車体に取り付けるための取付用のボルト穴を有する複数のブラケットとを備え、ブラケットは、ボルト穴より上側でタブと連結される第1ブラケットと、ボルト穴より下側でタブと連結される第2ブラケットとを含み、カーテンエアバッグの展開時に、第1ブラケットの位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレールとのオーバーラップ量が、第2ブラケットの位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレールとのオーバーラップ量よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、緊急時にカーテンエアバッグが膨張展開すると、第1ブラケットの位置では、第2ブラケットの位置よりもカーテンエアバッグがルーフサイドレールにオーバーラップし、カーテンエアバッグに高いテンション(張力)がかかる。これにより、乗員の車外放出を防止することができる。
【0012】
第1ブラケットと第2ブラケットは共通の形状を有し、第1ブラケットは第2ブラケットを上下反転させたものであるとよい。
【0013】
上記構成によれば、ブラケットを上下逆にして取り付けるだけでよく、部品の追加等を必要としない。したがって、コストや労力の増加を招くことなく実現することができる。
【0014】
少なくとも一つの第1ブラケットは、車両のAピラーの上端部領域に取り付けられているとよい。これにより、Aピラーの上端部付近からの乗員の車外放出を防止することができる。
【0015】
少なくとも一つの第1ブラケットは、車両のA1打点の上方に取り付けられているとよい。これにより、A1打点付近からの乗員の車外放出を防止することができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグ取付構造の他の代表的な構成は、カーテンエアバッグと、カーテンエアバッグの上部に設けられる複数のタブとを備え、タブは、ルーフサイドレールに沿ってカーテンエアバッグを車体に取り付けるための取付用のボルト穴を有し、タブは、ボルト穴より上側にカーテンエアバッグとの連結部分が設けられる第1タブと、ボルト穴より下側にカーテンエアバッグとの連結部分が設けられる第2タブとを含み、カーテンエアバッグの展開時に、第1タブの位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレールとのオーバーラップ量が、第2タブの位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレールとのオーバーラップ量よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、緊急時にカーテンエアバッグが膨張展開すると、第1タブの位置では、第2タブの位置よりもカーテンエアバッグがルーフサイドレールにオーバーラップし、カーテンエアバッグに高いテンション(張力)がかかる。これにより、乗員の車外放出を防止することができる。
【0018】
第1タブと第2タブは共通の形状を有し、第1タブは第2タブを上下反転させたものであるとよい。
【0019】
上記構成によれば、タブを上下逆にするだけでよく、部品の追加等を必要としない。したがって、コストや労力の増加を招くことなく実現することができる。
【0020】
少なくとも一つの第1タブは、車両のAピラーの上端部領域に取り付けられているとよい。これにより、Aピラーの上端部付近からの乗員の車外放出を防止することができる。
【0021】
少なくとも一つの第1タブは、車両のA1打点の上方に取り付けられているとよい。これにより、A1打点付近からの乗員の車外放出を防止することができる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグ取付方法の代表的な構成は、複数のタブが上部に設けられたカーテンエアバッグをルーフサイドレールに沿って車体に取付けるカーテンエアバッグの取付方法であって、タブと連結した少なくとも1つの第1ブラケットを、タブと連結した部位より下側にボルト穴を位置させて、車体に取り付けるステップと、タブと連結した第1ブラケットを除く第2ブラケットを、タブと連結した部位より上側にボルト穴を位置させて、車体に取り付けるステップと、を含み、カーテンエアバッグの展開時に、第1ブラケットの位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレールとのオーバーラップ量が、第2ブラケットの位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレールとのオーバーラップ量よりも大きいことを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグ取付方法の他の代表的な構成は、ボルト穴を有するタブが上部に設けられたカーテンエアバッグを、ルーフサイドレールに沿って車体に取付けるカーテンエアバッグの取付方法であって、タブの中の第1タブを、カーテンエアバッグと第1タブとの連結部分より下側に第1タブのボルト穴を位置させて、車体に取り付けるステップと、タブの中の第2タブを、カーテンエアバッグと第2タブとの連結部分より上側に第2タブのボルト穴を位置させて、車体に取り付けるステップと、を含み、カーテンエアバッグの展開時に、第1タブの位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレールとのオーバーラップ量が、第2タブの位置のカーテンエアバッグとルーフサイドレールとのオーバーラップ量よりも大きいことを特徴とする。
【0024】
上述したカーテンエアバッグ取付構造における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該カーテンエアバッグ取付方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡易な手段により、Aピラーの上端部付近またはA1打点付近等からの乗員の車外放出を防止可能なカーテンエアバッグの取付構造およびその取付方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態にかかるカーテンエアバッグ取付構造を例示する図である。
【図2】図1のカーテンエアバッグの展開状態を例示する図である。
【図3】図1のカーテンエアバッグ取付構造の断面の概念図である。
【図4】比較例にかかるカーテンエアバッグ取付構造を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかるカーテンエアバッグ取付構造100を例示する図である。詳細には図1は車両102の右側面を図示していて、カーテンエアバッグ120の膨張展開時を図示している。以下、図1に例示する車両102の右側面用のカーテンエアバッグ取付構造100を参照しつつ説明を行うが、左側面用のカーテンエアバッグ取付構造についても同様の対称な構成を有する。なお本願では、車両の床と天井とを結んだ直線において、車両の中心部から見て、天井方向を「上」、床面方向を「下」とする。この上、下の定義は、必ずしも車両の天井や床面に対して垂直な直線上での方向を示すだけでなく、方向的に「上」「下」方向であれば、当該垂直な直線から傾いていても「上」「下」に含まれる。
【0029】
図1に例示するように、カーテンエアバッグ取付構造100は、タブ(タブ104、106、108、110等)とブラケット(ブラケット112、114、116、118等)とを用いてカーテンエアバッグ(以下、単に「エアバッグ120」と記載する。)を取り付けるための構造である。
【0030】
エアバッグ120が取り付けられる車両102の側面部には、複数のサイドウィンドウ(車両前方からサイドウィンドウ126、128、130)が設置される。各サイドウィンドウ126、128、130の前後方向にはルーフ(天井)を支える複数のピラー(柱)が備えられる。これらは車両102の前方から、Aピラー132、Bピラー134、Cピラー136と称される。Aピラー132は、フロントウインドウガラス(ウインドシールド)の両サイドにあるルーフを支える柱である。
【0031】
エアバッグ120は、例えば、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織したりすることにより袋状に形成される。エアバッグ120には、ガス発生装置であるインフレータ122が接続される。エアバッグ120は、緊急時に、インフレータ122から供給される膨張展開用ガスを受給し、膨張展開して乗員の保護を行う。
【0032】
エアバッグ120は、車両102の衝突時や横転時に膨張する膨張領域140と、膨張せずにかかる膨張領域140を区画する非膨張領域142(図中ハッチングで示す)とを有する。膨張領域140としてのチャンバ140aは、膨張することで乗員を衝撃から保護する。膨張領域140にはチャンバ140aの他に、ガスの通路としてのダクト等が含まれる。
【0033】
エアバッグ120は、巻回された状態または折り畳まれた状態で、車両側面部上方のパネルの内側に取り付けられて収納される。具体的には、エアバッグ120は、Aピラー132およびAピラー132から連続するルーフサイドレール124に沿って取り付けられて収納される。エアバッグ120は、収納された状態で車両室内から視認されないようにトリム等で覆われる。なお、かかる状態については図示を省略している。
【0034】
図2は、図1のエアバッグ120の展開状態を例示する図である。図2(a)は、エアバッグ120の展開状態の前側を例示する図であり、図2(b)は、図2(a)の破線部Cの拡大図である。
【0035】
図2(a)に例示するように、エアバッグ120の前端には、フロントストラップ144が接続される。フロントストラップ144は他端がAピラー132に連結され(図1参照)、膨張展開したエアバッグ120の姿勢を車両側面部に沿わせるように保持する紐状の部材である。
【0036】
エアバッグ120の上部には複数のタブ(タブ104、106、108、110等)が縫付等により接続される。複数のタブは、エアバッグ120を車両102に取り付ける際に用いる帯状の部材であり、例えばエアバッグ120と同様の基布で形成される。
【0037】
図2(b)に例示するように、タブ104は、ブラケット112の下側に形成された開口部112aに挿入され、連結される。ブラケット112の上側には、パネル締結用のボルト穴112bが形成される。なお、タブ108とブラケット116、タブ110とブラケット118等、拡大して図示していない他のタブやブラケットについても同様とする。
【0038】
図2(b)に例示するように、第1実施形態の特徴の1つとして、複数のブラケットのうちAピラー132の上端部領域または車両のA1打点の上方のブラケット114については、タブ106と連結する開口部114aが上、ボルト穴114bが下となるように上下反転させる。図1に示すように、かかるブラケット114のみが上下逆の状態で各ブラケットのそれぞれのボルト穴(ボルト穴112b、114b等)にボルトを挿入して、Aピラー132やルーフサイドレール124へ締結することでエアバッグ120の取付が実施される。
【0039】
すなわち、本実施形態において、ブラケット112、116、118等のブラケットは通常の方法で取り付けられるボルト穴より下側でタブと連結される第2ブラケットである。Aピラー132の上端部領域または車両のA1打点の上方のブラケット114は上下反転させて取り付ける、ボルト穴より上側でタブと連結される第1ブラケットである。第1ブラケットであるブラケット114は、第2ブラケットと共通の形状のものである。
【0040】
なお、Aピラー132の上端部領域とは、Aピラー132のルーフへの接合領域とその付近を示す。Aピラー132とルーフとの境界は、車両の左右方向においてウインドガラス(サイドウィンドウ126)の上端部とほぼ一致すると考えられる。しかし、車両の構造上、ウインドガラス(サイドウィンドウ126)とAピラー132の上端部が一致しないこともある。本実施形態ではこの一致しない場合を例示しており、Aピラー132の上端部領域として、Aピラー132の上端部が明確に分らない時のタブやブラケットの設置領域を示している。
【0041】
図3は、図1のカーテンエアバッグ取付構造100の断面の概念図である。図3(a)は図1のA−A断面の概念図であり、図3(b)は図1のB−B断面の概念図である。
【0042】
図3(a)に例示するように、タブ(タブ104等)を下側に連結する第2ブラケット(ブラケット112等)をAピラー132またはルーフサイドレール124に取り付ける場合、車両前方においては通常、Aピラー132またはルーフサイドレール124と膨張展開時のエアバッグ120のチャンバ140aとは側面視でオーバーラップしない(重ならない)。これに対し図3(b)に例示するように、上下逆の状態で取り付けられる第1ブラケット(ブラケット114)は、タブ106と連結する開口部114aが上に来るので、Aピラー132の上端部領域(ルーフサイドレール124)への締結位置が同じ場合タブ106をより高い位置で懸垂する。本実施形態では、より高い位置で懸垂されるタブ106が、Aピラー132またはルーフサイドレール124と膨張展開時のエアバッグ120のチャンバ140aとが側面視でオーバーラップするようにAピラー132の上端部付近のエアバッグ120の上部を引き上げる。図3中、Aピラー132またはルーフサイドレール124下端の高さをラインH1、エアバッグ120のチャンバ140aがオーバーラップしている領域を領域H2として図示する。
【0043】
すなわち、第1ブラケット(ブラケット114)の位置では、第2ブラケット(ブラケット112等)の位置に比較して、エアバッグ120のチャンバ140aがAピラー132またはルーフサイドレール124とオーバーラップする。
【0044】
これより、緊急時にエアバッグ120が膨張展開すると、第1ブラケット(ブラケット114)の位置ではチャンバ140aがAピラー132またはルーフサイドレール124と接触するので、エアバッグ120にかかるテンション(張力)が強くなる。したがって、Aピラー132の上端部付近または車両のA1打点の上方から乗員が車外へ放出されるのを防止することができる。本構成は、ルーフサイドレール124に固定される第1ブラケット(ブラケット114)を上下逆に取り付けるだけで実現可能であり、部品の追加等を必要としない。よって、コストや労力の増加を招きはしない。また、エアバッグ120の巻回方式等が特に限定されることもなく、例えば外巻きであるb−ロールのエアバッグ120(特許文献1の図3(b)等に記載の巻回方式)に本実施形態を適用可能である。
【0045】
本実施形態にかかるカーテンエアバッグ取付構造100が有効な理由の1つとしては、Aピラー132やルーフサイドレール124において、複数のブラケット(ブラケット112、114、116、118等)の取付領域が限られていることが挙げられる。取付領域が限られていなければ、ブラケットの取付位置を高い位置に設定してAピラー132またはルーフサイドレール124とエアバッグ120のチャンバ140aとがオーバーラップするように設定することも可能だからである。本実施形態では、第1ブラケット(ブラケット114)を上下逆に取り付けるのみなので、取付領域を変えることなくタブ106をより高い位置で懸垂し、エアバッグ120を上方向に移動させることができる。
【0046】
図4は、比較例にかかるカーテンエアバッグ取付構造200を例示する図である。図4に例示するように、カーテンエアバッグ取付構造200では、タブ(タブ204、206、208、210等)とブラケット(ブラケット212、214、216、218等)とを用いてカーテンエアバッグ(以下、単に「エアバッグ220」と記載する。)を取り付ける。カーテンエアバッグ取付構造200では、全てのブラケットがその下側にてタブと連結する構成であり、本実施形態の構成のように一部が上下逆に取り付けられはしない。
【0047】
比較例のカーテンエアバッグ取付構造200をCAE(Computer Aided Engineering)により評価すると、サイドウィンドウ126消失時のエアバッグ220のA1打点の車外側への突出量(サイドウィンドウ126の位置を基準とする)は100mmと評価された。なお、A1打点とは、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard:米国連邦自動車安全基準)によって定められた、側面衝突時に乗員頭部が衝突すると想定される位置(打点)の中で、最前部のウィンドウの最も前方の打点のことである。
【0048】
これに対し、図1に示す第1実施形態のカーテンエアバッグ取付構造100をCAE(Computer Aided Engineering)により評価すると、サイドウィンドウ126消失時のエアバッグ120のA1打点の車外側への突出量(サイドウィンドウ126の位置を基準とする)は88mmと評価された。したがって、カーテンエアバッグ取付構造100によれば、A1打点付近からの乗員の車外放出防止性能の向上を図ることができることが分かる。なお、第1実施形態のカーテンエアバッグ取付構造100では、第1ブラケット(ブラケット114)はAピラー132の上端部領域かつ車両のA1打点の上方にきている。
【0049】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、タブとブラケットとを用いたカーテンエアバッグ取付構造100について説明した。しかし、ブラケットを使用せず、取付用のボルト穴を有するタブのみを用いてエアバッグ120を取り付けることもできる。本発明はかかる構成にも適用可能である。
【0050】
すなわち、ボルト穴より上側にエアバッグ120との連結部分が設けられる第1タブ(第1ブラケットに相当)と、ボルト穴より下側にエアバッグ120との連結部分が設けられる第2タブ(第2ブラケットに相当)とを使用して、上記第1実施形態と同様にエアバッグ120の取り付けを行うことができる。第1タブをAピラー132の上端部領域または車両のA1打点の上方に取り付けて、エアバッグの展開時に、第1タブの位置では、第2タブの位置よりもエアバッグ120がルーフサイドレール124にオーバーラップするように設定することで、Aピラーの上端部付近またはA1打点付近からの乗員の車外放出を防止することができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0052】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
また、上記実施形態においては本発明にかかるカーテンエアバッグを自動車に適用した例を説明したが、自動車以外にも航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ(横転)時に、乗員保護を目的として車両室内の側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグの取付構造およびその取付方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100、200…カーテンエアバッグ取付構造、102…車両、104、106、108、110、204、206、208、210…タブ、112、114、116、118、212、214、216、218…ブラケット、112a、114a…開口部、112b、114b…ボルト穴、120、220…エアバッグ、122…インフレータ、124…ルーフサイドレール、126、128、130…サイドウィンドウ、132…Aピラー、134…Bピラー、136…Cピラー、140…膨張領域、140a…チャンバ、142…非膨張領域、144…フロントストラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンエアバッグと、
前記カーテンエアバッグの上部に設けられる複数のタブと、
前記タブに連結され、ルーフサイドレールに沿って前記カーテンエアバッグを車体に取り付けるための取付用のボルト穴を有する複数のブラケットとを備え、
前記ブラケットは、前記ボルト穴より上側で前記タブと連結される第1ブラケットと、前記ボルト穴より下側で前記タブと連結される第2ブラケットとを含み、
前記カーテンエアバッグの展開時に、前記第1ブラケットの位置の前記カーテンエアバッグと前記ルーフサイドレールとのオーバーラップ量が、前記第2ブラケットの位置の前記カーテンエアバッグと前記ルーフサイドレールとのオーバーラップ量よりも大きいことを特徴とするカーテンエアバッグ取付構造。
【請求項2】
前記第1ブラケットと前記第2ブラケットは共通の形状を有し、該第1ブラケットは該第2ブラケットを上下反転させたものであることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ取付構造。
【請求項3】
少なくとも一つの前記第1ブラケットは、車両のAピラーの上端部領域に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンエアバッグ取付構造。
【請求項4】
少なくとも一つの前記第1ブラケットは、車両のA1打点の上方に取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ取付構造。
【請求項5】
カーテンエアバッグと、
前記カーテンエアバッグの上部に設けられる複数のタブとを備え、
前記タブは、ルーフサイドレールに沿って前記カーテンエアバッグを車体に取り付けるための取付用のボルト穴を有し、
前記タブは、前記ボルト穴より上側に前記カーテンエアバッグとの連結部分が設けられる第1タブと、前記ボルト穴より下側に前記カーテンエアバッグとの連結部分が設けられる第2タブとを含み、
前記カーテンエアバッグの展開時に、前記第1タブの位置の前記カーテンエアバッグと前記ルーフサイドレールとのオーバーラップ量が、前記第2タブの位置の前記カーテンエアバッグと前記ルーフサイドレールとのオーバーラップ量よりも大きいことを特徴とするカーテンエアバッグ取付構造。
【請求項6】
前記第1タブと前記第2タブは共通の形状を有し、該第1タブは該第2タブを上下反転させたものであることを特徴とする請求項5に記載のカーテンエアバッグ取付構造。
【請求項7】
少なくとも一つの前記第1タブは、車両のAピラーの上端部領域に取り付けられていることを特徴とする請求項5または6に記載のカーテンエアバッグ取付構造。
【請求項8】
少なくとも一つの前記第1タブは、車両のA1打点の上方に取り付けられていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ取付構造。
【請求項9】
複数のタブが上部に設けられたカーテンエアバッグをルーフサイドレールに沿って車体に取付けるカーテンエアバッグの取付方法であって、
前記タブと連結した少なくとも1つの第1ブラケットを、該タブと連結した部位より下側にボルト穴を位置させて、車体に取り付けるステップと、
前記タブと連結した前記第1ブラケットを除く第2ブラケットを、該タブと連結した部位より上側にボルト穴を位置させて、車体に取り付けるステップと、を含み、
前記カーテンエアバッグの展開時に、前記第1ブラケットの位置の前記カーテンエアバッグと前記ルーフサイドレールとのオーバーラップ量が、前記第2ブラケットの位置の前記カーテンエアバッグと前記ルーフサイドレールとのオーバーラップ量よりも大きいことを特徴とするカーテンエアバッグ取付方法。
【請求項10】
ボルト穴を有するタブが上部に設けられたカーテンエアバッグを、ルーフサイドレールに沿って車体に取付けるカーテンエアバッグの取付方法であって、
前記タブの中の第1タブを、前記カーテンエアバッグと該第1タブとの連結部分より下側に該第1タブのボルト穴を位置させて、車体に取り付けるステップと、
前記タブの中の第2タブを、前記カーテンエアバッグと該第2タブとの連結部分より上側に該第2タブのボルト穴を位置させて、車体に取り付けるステップと、を含み、
前記カーテンエアバッグの展開時に、前記第1タブの位置の前記カーテンエアバッグと前記ルーフサイドレールとのオーバーラップ量が、前記第2タブの位置の前記カーテンエアバッグと前記ルーフサイドレールとのオーバーラップ量よりも大きいことを特徴とするカーテンエアバッグ取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107428(P2013−107428A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252081(P2011−252081)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
【Fターム(参考)】