説明

カーテン塗工用分散液及びそれを用いた単一層型自己発色性感圧記録紙

【課題】カーテン塗工装置で安定に塗工可能で、カーテン割れが発生しない単一層型自己発色性感圧記録紙製造用カーテン塗工用分散液とそれを塗工してなる単一層型自己発色性感圧記録紙を提供する。
【解決手段】電子供与性染料を内蔵するマイクロカプセルと電子受容性酸性物質を主成分とするカーテン塗工用分散液において、平均重合度が500〜1400かつ鹸化度が76.0〜97.0mol%の部分鹸化ポリビニルアルコールを用いる。この分散液を支持体に塗布して得られた単一層型自己発色性感圧記録紙は、発色性及び耐汚染性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一層型自己発色性感圧記録紙を製造するためのカーテン塗工用分散液及び該分散液を塗布してなる単一層型自己発色性感圧記録紙に関するものであり、更に詳しくは少ない流量でも安定したカーテン状流体が得られ、高速塗工条件下でも破壊することのない安定塗工を可能としたカーテン塗工用分散液及び分散液塗工面の発色性及び耐汚染性に優れた単一層型自己発色性感圧記録紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノーカーボン感圧記録紙は圧力により発色剤を内包するマイクロカプセルを破壊して発色剤と顕色剤とを反応させることにより発色像を形成させることを利用したものである。なかでも、単一層型自己発色性感圧記録紙は支持体の同一面上に発色剤を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを混在させたものである。
【0003】
単一層型自己発色性感圧記録紙に要求される品質的条件は、一般的なノーカーボン感圧記録紙と同じで、発色濃度が濃く、鮮明な画像が短時間のうちに得られ、経時的にも劣化がないこと。さらに、製造工程・各種印刷工程・断裁工程・シート状または巻取状態での保管及び取扱い時において汚れが生じないことであるが、とりわけ単一層型自己発色性感圧記録紙は支持体の同一面上に発色剤を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを混在させることから、汚れ易くなりより注意が必要である。
【0004】
また、単一層型自己発色性感圧記録紙の塗工層の形成方法としては、従来からエアーナイフコーターによる方法が用いられてきた。この方法はエアーによって過剰の塗工液をかき落とし必要量塗工するものである。主にエアーナイフコーターが用いられてきたのは、比較的、高速度(300m/分以上)の塗工が可能であることと、印刷用塗被紙等で従来より用いられてきた方式であること、さらに液の種類をあまり限定しない方式であるからと考えられる。しかしながら、この方法では昨今の更なる高速度(800m/分以上)の要求に対しては、過大なエアーによって粒子径の大きな緩衝剤が選択的にかき落とされる現象、いわゆる分級作用が生じ、結果として支持体上に粒子径の小さな緩衝剤が多くなり発色剤シートの耐汚染性が低下するという問題があった。そこで、塗工液に増粘剤等を加え液粘性を上昇させて緩衝剤の分級作用を防止する方法も考えられるが、エアーナイフ圧に必要以上の負荷を与えるために塗工液を高濃度にすることは困難となっていた。
【0005】
これら上記問題を解決するため自由落下垂直カーテンを形成した、カーテンコーターを用いる方法(例えば、特許文献1〜4参照)が開示されている。この方法は、すでに感材業界で広く行われている塗工方法(例えば、特許文献5、6参照)を感圧複写紙の塗工に適用したもので、エアーナイフコーターに比べ緩衝剤の分級が発生せずにまた高濃度で塗工することが可能な塗工層形成方法である。
【0006】
カーテン塗工液で最も注意すべき点としては、均一で安定したカーテン膜を形成することである。単一層型自己発色性感圧記録用カーテン塗工用分散液では、発色剤を内包するマイクロカプセルと顕色剤、バインダー等が混在する。液の高濃度化を進めると、過剰な増粘や凝集が発生してしまいカーテン膜が形成出来なかった。とりわけ、この増粘現象は電子供与性基をもつPVAの影響が大きいと考えられる。また、液の凝集を防止するために、分散剤、あるいは凝集防止剤を添加する方法も考えられるが、製品品質への影響を考慮すると避けるべきである。一方、固形分濃度が低くなると、粘度は低くなる傾向にあるため、安定したカーテン膜が形成出来ずカーテン割れが発生したり、さらには、乾燥時にカプセルに対して水及びバインダーの移動量が多くなり、カプセルが塗工層表面に偏在しやすく、さらに表面においてバインダーの分布ムラも発生し易くなり、発色ムラや汚れを発生し易くなり、ノーカーボン感圧記録紙としての品質を充分満足しているとは言えないものであった。
【特許文献1】特公昭61−45516号公報
【特許文献2】特公昭61−46187号公報
【特許文献3】特公昭63−239号公報
【特許文献4】特開昭57−39985号公報
【特許文献5】特公昭49−24133号公報
【特許文献6】特公昭49−35447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、単一層型自己発色性感圧記録紙を製造するためのカーテン塗工用分散液において、少ない流量でも安定したカーテン状流体が得られ、高速塗工条件下でも破壊することのない安定した塗工液及び発色性、耐汚染性に優れた単一層型自己発色性感圧記録紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、単一層型自己発色性感圧記録紙のカーテン塗工に際し、塗工液のバインダー種に特定範囲の重合度と鹸化度をもつポリビニルアルコールを用いることにより、高速塗工条件下でもカーテン割れが発生せず、安定なカーテンを形成し得る塗工液が得られることを見出した。
【0009】
即ち、電子供与性染料を内蔵するマイクロカプセルと電子受容性酸性物質を主成分とするカーテン塗工用分散液において、平均重合度が500〜1400かつ鹸化度が76.0〜97.0mol%の部分鹸化ポリビニルアルコールを用いることを特徴とするカーテン塗工用分散液である。
【0010】
ここで、該塗工液のポリビニルアルコールの混合比率はマイクロカプセル固形量に対して20〜40質量%であることが好ましい。
【0011】
また、該塗工液のB型粘度は、20℃において100〜300mPa・sであることが好ましい。
【0012】
カーテン塗工におけるカーテンの安定性については、塗工液の静的及び動的粘度、チキソトロピー性、表面張力等、多数の因子が影響していることが見出されているが、実際にはこれらの因子を実験的に細かく変化させながら安定したカーテンが得られる最適条件を設定しているのが現状である。
【0013】
本発明者らは、単一層型自己発色性感圧記録紙のカーテン塗工において、カーテンの安定性と配合処方について検討を行った結果、カーテンの安定性はポリビニルアルコールの種類に大きく依存し、この着目点はこれまでに考慮されていないことが分かった。また、特開平11−179193号公報における実施例に記載の完全鹸化型のポリビニルアルコールを用いて塗工装置の塗工ヘッドでカーテンを形成するため実際に調液してみると、増粘・凝集してしまいカーテンを形成することは出来なかった。
【0014】
さらに、ノーカーボン感圧記録紙としての品質においてもこれら該塗工液が支持体に塗布された単一層型自己発色性感圧記録紙は、発色性、耐汚染性に優れることが分かった。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、少ない流量でも安定したカーテン状流体が得られ、高速塗工条件下でも破壊することのない安定塗工を可能とした単一層型自己発色性感圧記録紙製造用カーテン塗工用分散液及び分散液塗工面の発色性及び耐汚染性に優れた単一層型自己発色性感圧記録紙が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明で用いられるポリビニルアルコールは、平均重合度が500〜1400かつ鹸化度が76.0〜97.0mol%の部分鹸化ポリビニルアルコールを単独又は2種以上併用して用いることができる。尚、ポリビニルアルコールの使用量は、マイクロカプセル固形量に対して20〜40質量%の範囲が好ましい。
【0017】
また、本発明に係わるポリビニルアルコール以外のバインダーとしては、結着能及び皮膜形成能を有する従来より公知の天然高分子物質、天然高分子変性品(半合成品)、及び合成品を用いることができる。天然高分子物質としては、甘藷でんぷん、馬鈴薯でんぷん、小麦でんぷん、タピオカでんぷん、及びコーンスターチ等のでんぷん類、デキストラン、グルカン、キサンタンガム、及びレバン等のホモ多糖類、並びにサクシノグルカン、プルラン、カードラン、及びザンタンガム等のヘテロ糖類等の微生物粘質物、ゼラチン、カゼイン、にかわ、及びコラーゲン等のタンパク質等が挙げられる。
【0018】
また、半合成品としては、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の繊維素誘導体、変性ガム、並びに加工でんぷん等が挙げられる。変性ガムにはカルボキシメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、及びヒドロキシエチルグアーガム等が挙げられる。加工でんぷんには白色デキストリン、黄色デキストリン、及びブリディシュガム等の培焼でんぷん、酵素デキストリン及びシャーディンガーデキストリン等の酵素変性デキストリン、可溶化でんぷんの様な酸分解でんぷん、ジアルデヒドスターチの様な酸化でんぷん、変性アルファー化でんぷん及び無変性アルファー化でんぷん等のアルファー化でんぷん、リン酸でんぷん、脂肪酸でんぷん、硫酸でんぷん、硝酸でんぷん、キサントゲン酸でんぷん、及びカルバミン酸でんぷん等のエステル化でんぷん、ヒドロキシアルキルでんぷん、カルボキシアルキルでんぷん、スルフォアルキルでんぷん、シアノエチルでんぷん、アリルでんぷん、ベンジルでんぷん、カルバミルエチルでんぷん、及びジアルキルアミノでんぷん等のエーテル化でんぷん、メチロール架橋でんぷん、ヒドロキシアルキル架橋でんぷん、リン酸架橋でんぷん、及びジカルボン酸架橋でんぷん等の架橋でんぷん、でんぷんポリアクリルアミド共重合体、でんぷんポリアクリロニトリル共重合体、カチオン性でんぷんポリアクリル酸エステル共重合体、カチオン性でんぷんビニルポリマ共重合体、でんぷんポリスチレンマレイン酸共重合体、及びでんぷんポリエチレンオキサイド共重合体等のでんぷんグラフト共重合体等が挙げられる。
【0019】
また、合成品としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル部分けん化物、及びポリ(メタ)アクリルアミド等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、及びビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体の親水性高分子や、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレンブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、アクリル酸メチルブタジエン共重合体、及びエチレン酢酸ビニル共重合体等のラテックス類等が挙げられる。
【0020】
また、アニオン性ポリマーも、支持体との接着力に優れるため、本発明に係わるバインダーとして併用して使用することも可能である。これらのバインダーは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。尚、ポリビニルアルコール以外のバインダーの使用量は、マイクロカプセル固形量に対し5〜40質量%の範囲が好ましい。
【0021】
本発明で用いられる電子供与性染料を内蔵するマイクロカプセルはインサイチュー法でマイクロカプセル化され、カプセル壁膜材は特開昭51−9079号、同52−66878号、同53−84861号、同54−49984号各公報等に記載されているような耐熱性、耐溶剤性のあるエポキシ樹脂、ポリ尿素、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等の合成樹脂であり、特にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0022】
また、電子供与性染料(発色剤、染料前駆体とも呼称される)としては、従来より一般に感圧記録紙や感熱記録紙等に用いられている発色剤を利用することができ、その代表例としては、トリアリールメタン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ジフェニルメタン系化合物、及びアニリノフルオラン系化合物等が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。具体的な例としては、下記に挙げるものなどがある。
【0023】
トリアリールメタン系化合物及びインドリルフタリド系化合物としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(通称クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルイドンドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、及び3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。
【0024】
ジフェニルメタン系化合物としては、4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、及びN−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等が挙げられる。
【0025】
アニリノフルオラン系化合物としては、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−メチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−(4−メチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−(4−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−(4−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−n−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−n−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−テトラヒドロフラン−2−イルメチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリルメチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−テトラヒドロフラン−2−イル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−イソペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2,6−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−3−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−3−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(3−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−メトキシアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(3−クロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(2−メトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−イソペンチルオキシカルボニルアニリノ)フルオラン、及び3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0026】
その他、キサンテン系化合物、スピロピラン系化合物、及び各種ジアゾニウム塩化合物等も本発明に係わる発色剤として用いることができる。これらは単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0027】
上記発色剤を溶解するための油溶性液体としては、パラフィン油、綿実油、大豆油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油、魚油、豚脂油、塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリブチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジブチルマレエート、o−ジクロロベンゼン、ジイソプロピルナフタレン等のアルキル化ナフタレン、1−フェニルトリキシリルエタン等のベンジルアルコール誘導体、1−(3,4−ジメチルフェニル)−1−フェニルエタン、及びポリ(1〜4)イソプロピルナフタレン等が挙げられる。
【0028】
本発明のカーテン塗工用分散液には、マイクロカプセル保護材粒子を併用しても良い。マイクロカプセル保護材粒子は、塗工層における発色を意図しない時のマイクロカプセルの破壊を防止するための、即ちマイクロカプセルを保護する粒子である。従って、マイクロカプセル保護材粒子としては、少なくとも本発明に係わるマイクロカプセルの粒径より大きく、かつマイクロカプセル粒子より硬い(押圧等に対して変形し難い)ことが肝要である。本発明に用いられるマイクロカプセル保護材粒子の具体的な例としては、セルロース粉末、でんぷん粒子、メラミン粒子、ポリエチレン粒子、ポリスチレン粒子、及びタルク等が挙げられ、その最大長が5μm以上、好ましくは10μm以上の粒子が良い。
【0029】
本発明に係わる電子受容性酸性物質(顕色剤とも呼称される)としては、上記発色剤と反応して発色する化合物であれば良く、サリチル酸誘導体の金属塩、フェノールノボラック樹脂、無機系固体酸等、またジアゾ化合物に対してはヒドロキシ芳香族化合物等のカプラーとの組み合せ等が知られており、これらの組み合わせを単独、あるいは混合して用いることができる。
【0030】
本発明のカーテン塗工用分散液には、所望により無機や有機の顔料を添加併用しても良く、その具体例としては、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、珪酸、二酸化珪素、水酸化アルミニウム、アルミナ、尿素ホルマリン樹脂、ナイロン樹脂、ポエリエチレン樹脂、及びポリスチレン樹脂等が挙げられる。更に、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、及びカスターワックス等のワックス類等の滑剤を併用しても良い。
【0031】
本発明の単一層型自己発色性感圧記録用カーテン塗工用分散液を構成する各種材料は、攪拌混合され均一な分散液とされた後、本発明で述べるカーテン塗工用液として共される。塗工液の固形分濃度は、10〜50%、好ましくは20〜40%に調製されて塗工される。また、塗工液の粘度もカーテンの安定性に与える条件の一つであり、20℃のB型粘度で50〜500mPa・s、好ましくは100〜300mPa・sの範囲が好ましい。
【0032】
本発明で得られた、カーテン塗工用分散液を上質紙等にカーテン塗工することにより、単一層型自己発色型感圧記録紙が得られる。また、塗工液の塗工量は、乾燥固形質量で3〜10g/m2、好ましくは5〜7g/m2の範囲が好ましい。
【0033】
実施例
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例中、「部」及び「%」は、特に明示しない限り固形分あるいは実質成分の質量部及び質量%を示す。
【実施例1】
【0034】
<40%発色剤内蔵合成樹脂壁膜マイクロカプセルの作製方法>
高沸点炭化水素油:フェニルキシリルエタン(SAS296、日本石油化学(株)製)94部に発色剤:3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド5部とベンゾイルロイコメチレンブルー1部を加熱溶解後、5%スチレン無水マレイン酸共重合体水溶液(pH4.8)120部に高速撹拌しながら該発色剤溶解液を添加し、液温60℃で平均粒径3.5μmとなるように乳化した。
水60部にメラミン12.5部と37%ホルムアルデヒド水溶液16部を添加してpH9.5で加熱溶解し、メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物を得て、上記乳化剤に添加撹拌しながら、75℃で2時間反応させた後、液温40℃以下でpH8.5とし、40%発色剤内蔵合成樹脂壁膜マイクロカプセルを作製した。
【0035】
得られたマイクロカプセルの乾燥質量換算で100部に対し、マイクロカプセル保護材粒子である平均粒径20μmの小麦でんぷん150部(48%分散液)、バインダー成分として、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールP−610、平均重合度1300、鹸化度95.0〜97.0mol%)35部、スチレンブタジエン共重合体ラテックスエマルジョン(DL670、旭化成(株)製)15部、無機顔料として炭酸カルシウム75部、サリチル酸系顕色剤(KC681、荒川化学工業(株)製)25部、及び水を添加し、固形濃度35%のカーテン塗工用分散液を得た。尚、このカーテン塗工用分散液の粘度は、20℃で220mPa・sであった。
【0036】
この分散液を、ヘッド間隙0.3mm、幅1mのカーテン塗工装置の塗工ヘッドを有する塗工機を用い、流量11リットル/分の給液量で、スリット出口より10cm離れた幅900mm、坪量40g/m2の上質紙に、800m/分の速度で連続塗工し乾燥した所、安定なカーテンが形成され、カーテン割れが全く発生することなく塗工が可能であり、絶乾固形分で5g/m2の単一層型自己発色性感圧記録紙を得た。
【実施例2】
【0037】
実施例1のカーテン塗工用分散液で用いたポリビニルアルコールを、平均重合度500、鹸化度86.5〜89.0mol%ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールGL−05)に変更した以外は実施例1と同様に行い、固形濃度35%のカーテン塗工用分散液を得た。尚、このカーテン塗工用分散液の粘度は、20℃で105mPa・sであった。
【0038】
この分散液を、ヘッド間隙0.3mm、幅1mのカーテン塗工装置の塗工ヘッドを有する塗工機を用い、流量11リットル/分の給液量で、スリット出口より10cm離れた幅900mm、坪量40g/m2の上質紙に、800m/分の速度で連続塗工し乾燥した所、実施例1ほどの安定性はなかったがカーテン割れが発生することなく塗工が可能であり、絶乾固形分で5g/m2の単一層型自己発色性感圧記録紙を得た。
【実施例3】
【0039】
実施例1のカーテン塗工用分散液で用いたポリビニルアルコールを、平均重合度1100、鹸化度76.7〜79.3mol%のポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールKM−11)に変更した以外は実施例1と同様に行い、固形濃度35%のカーテン塗工用分散液を得た。尚、このカーテン塗工用分散液の粘度は、20℃で160mPa・sであった。
【0040】
この分散液を、ヘッド間隙0.3mm、幅1mのカーテン塗工装置の塗工ヘッドを有する塗工機を用い、流量11リットル/分の給液量で、スリット出口より10cm離れた幅900mm、坪量40g/m2の上質紙に、800m/分の速度で連続塗工し乾燥した所、安定なカーテンが形成され、カーテン割れが全く発生することなく塗工が可能であり、絶乾固形分で5g/m2の単一層型自己発色性感圧記録紙を得た。
【実施例4】
【0041】
実施例1のカーテン塗工用分散液で用いたポリビニルアルコールを、平均重合度1400、鹸化度86.5〜89.0mol%のポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールGM−14)に変更した以外は実施例1と同様に行い、固形濃度35%のカーテン塗工用分散液を得た。尚、このカーテン塗工用分散液の粘度は、20℃で298mPa・sであった。
【0042】
この分散液を、ヘッド間隙0.3mm、幅1mのカーテン塗工装置の塗工ヘッドを有する塗工機を用い、流量11リットル/分の給液量で、スリット出口より10cm離れた幅900mm、坪量40g/m2の上質紙に、800m/分の速度で連続塗工し乾燥した所、安定なカーテンが形成され、カーテン割れが全く発生することなく塗工が可能であり、絶乾固形分で5g/m2の単一層型自己発色性感圧記録紙を得た。
【0043】
(比較例1)
実施例1のカーテン塗工用分散液で用いたポリビニルアルコールを、平均重合度300、鹸化度86.5〜89.0mol%のポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールGL−03)に変更した以外は実施例1と同様に行い、固形濃度35%のカーテン塗工用分散液を得た。尚、このカーテン塗工用分散液の粘度は、20℃で70mPa・sであった。
【0044】
この分散液を、ヘッド間隙0.3mm、幅1mのカーテン塗工装置の塗工ヘッドを有する塗工機を用い、流量11リットル/分の給液量で、スリット出口より10cm離れた幅900mm、坪量40g/m2の上質紙に、800m/分の速度で連続塗工し乾燥した所、カーテン膜は上質紙上で乱れ、未塗工部を発生させ、商品価値としては低いものであった。
【0045】
(比較例2)
実施例1のカーテン塗工用分散液で用いたポリビニルアルコールを、平均重合度800、鹸化度71.0〜73.5mol%のポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールKP−08)に変更した以外は実施例1と同様に行い、固形濃度35%のカーテン塗工用分散液を得た。尚、このカーテン塗工用分散液の粘度は、20℃で140mPa・sであった。
【0046】
この分散液を、ヘッド間隙0.3mm、巾1mのカーテン塗工装置の塗工ヘッドを有する塗工機を用い、流量11リットル/分の給液量で、スリット出口より10cm離れた巾900mm、坪量40g/m2の上質紙に800m/分の速度で、連続塗工し乾燥した所、カーテン膜は上質紙上で乱れ、未塗工部を発生させ商品価値としては低いものであった。
この時、カーテン膜は上質紙上で乱れ、未塗工部を発生させ商品価値としては低いものであった。
【0047】
(比較例3)
実施例1のカーテン塗工用分散液で用いたポリビニルアルコールを、平均重合度1700、鹸化度86.5〜89.0mol%のポリビニルアルコール(日本合成(株)製:ゴーセノールGH−17)に変更した以外は実施例1と同様に行い、固形濃度35%のカーテン塗工用分散液を得たが、この分散液の粘度は20℃で1500mPa・sと高く、増粘してしまい、カーテン膜は形成出来なかった。
【0048】
(比較例4)
実施例1のカーテン塗工用分散液で用いたポリビニルアルコールを、平均重合度1000、鹸化度98.0mol%以上のポリビニルアルコール(クラレ(株)製:PVA110)に変更した以外は実施例1と同様に行い、固形濃度35%のカーテン塗工用分散液を得たが、この分散液の粘度は20℃で1100mPa・sと高く、増粘してしまい、カーテン膜は形成出来なかった。
【0049】
<評価方法>
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた単一層型自己発色性感圧記録紙を下記に示す試験方法により測定、評価した。
◇発色濃度
得られた単一層型自己発色性感圧記録紙を上質紙と組み合わせ、スーパーカレンダー(100kg/cm2×2回通し)を通して発色させ、マクベス社濃度計を用いて測定した。
◇耐汚染性
縦35cm×横25cmの上質紙に縦15cm×横15cmの単一層型自己発色性感圧記録紙を組み合わせ、その上に3500gの耐汚染評価用の重りを載せ、単一層型自己発色性感圧記録紙を一定速度で引っ張った時の汚れの度合いにより耐汚染性を評価した。発色濃度はマクベス社濃度計を用いて測定した。
◇塗りムラ・未塗工の有無
さらに肉眼によって塗工紙の塗りムラ・未塗工の有無を評価した。
以上の項目について実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1〜4と比較例1〜2を比較すれば明らかであるように、本発明により発色性及び耐汚染性に優れた単一層型自己発色性感圧記録紙を得ることが出来た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与性染料を内蔵するマイクロカプセルと電子受容性酸性物質を主成分とするカーテン塗工用分散液において、平均重合度が500〜1400かつ鹸化度が76.0〜97.0mol%の部分鹸化ポリビニルアルコールを含有することを特徴とするカーテン塗工用分散液。
【請求項2】
該塗工液のポリビニルアルコールの混合比率がマイクロカプセル固形量に対して20〜40質量%であることを特徴とする請求項1記載のカーテン塗工用分散液。
【請求項3】
該塗工液のB型粘度が、20℃において100〜300mPa・sであることを特徴とする請求項1又は2記載のカーテン塗工用分散液。
【請求項4】
請求項1から3にいずれかに記載のカーテン塗工用分散液を支持体に塗布してなる単一層型自己発色性感圧記録紙。

【公開番号】特開2008−143009(P2008−143009A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332329(P2006−332329)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】